昔の茨城弁集
昭和35年〜45年頃の茨城弁集
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 昔の茨城弁集本編はあまりに膨大になってしまっていますので、このページは、茨城弁の代表的な方言や、語源を推察する中で新発見に値(自称)するもの、興味深い方言のうち比較的新しいものを中心集めたものです。茨城弁を知りたい初心者だけでなく、古い標準語が茨城弁に残っているもの等も一部集めました。
 これだけで茨城弁をマスターすることはできませんが、このページの内容を一通り頭に入れたら、発音は別にして今の若い茨城県人より貴方は茨城弁通になるはずです。

あおなじみ、あおにじみ
 青あざのこと、なじみは『滲み』、東北では『あおなじ』。栃木、千葉でも使われる。

あがっ
 【形動】嘘つき、【名】イモリ

あがっあがっーろぐ、あかっーろく
 赤土、関東ローム層/古い標準語の『ほろく』(くずれる、ぼろぼろ砕ける)が転じたものと考えられる。『土』★裏の垣根外(くねそと)さ、土はかたで赤っうろくだが、掃溜(はきだめ)みつしら掘つ込んで置いた處(ところ)だから、其(そ)れが出たと見えんのさ:裏の垣根の外に、土は固い赤土だが、ゴミをしっかり掘って入れて置いたところだから、それが生えて来たらしいのさ

あぎれる
 【動】@飽きる、A呆れる/標準語の『あきれる』は意外でどうして良いかわからない意味が主。土浦では、『飽きる』『呆れる』両方の意味があった。
 良く調べると標準語の『呆れる』と『呆る』は同じ意味で、飽きてしまう意味の『飽きれる』という言葉は無い。従って単に同音異語を混同したようである。

あぐどい、あくどい、あぐでー、あくでー
 【形】@味が濃い、A(服などが)どぎつい/派手な意味が『味が濃い』意味に転じたと思われる、また土浦の日常生活では『派手』はあまり使わなかった。

あっすっあったっ、あっとっ、あったっ、あ、あ、あ
 【副】あたふた

あよ、あーよ、あーよー
 【感】ねえ、あのさあ/話のきっかけにしたり、促したりねだるときに使う話し言葉

あらいまで、あらいまぜ
 食器洗い、台所の片付け/『洗い混ぜる』意味と考えられる、『土』★待(ま)ってれば善(え)えんだなおとっつあ、洗(あら)いまでも仕(し)ねえのにどうしたもんだ

油味噌
 ピーナッツを味噌と油と砂糖で炒めた料理、冷めるとこちこちに固まるが食の進む料理

あます
 @吐く、もどす、A残す、Bのけ者にする意味がる。東北系の訛、標準語の『余す』に意味の一つに『余勢で外にほうり出す』意味があるが強い関係は見出せない。また似た語幹の『浴むす』は『あびせる』意味があるがこれも同様。『上げる』が単純に転じて『あがらがす』→『あがす』→『あます』となったか?。ABは標準語。

いがい、いかい
 【形】【古】大きい、清音なら『厳し(いかし)』が転じた『いかい』【古】そのものが残ったもの、=『えがい』、『えっがい』

ないちゃった、いねーちゃった、いねーちった
 【複】行くのを忘れちゃった

いぎ
 @駅、A往き、B息、C意気、D空気、E生き、F益

いぎもれる
 【複】空気が漏れる、液が漏れる

いぎい、いぎ
 元気なこと、勢い/=『いぎぼい、いぎぼえ』、『生き』『声』のようなイメージで使っていたが実際は『勢い』が最も近い。『意気込み』が訛った可能性もある。

いぎいいー
 【形】元気良い、勢い良い

いぎでもねー、いきでもねー、いぎでもない、いぎもない、いきもない、いぎもねー、いぎもない
 【複】【形】切りが無い様、無駄な様子、もったいない様/『いぎ』は『益』の転と思われるがさらに古い茨城弁に『いぐいもねー』(切りが無い様)があることから『行方』説も考えられる、行方が見えない程量が多い様が転じたものだろう、《駅がないほどの田舎?!?》

いぎびあ
 【動】元気になる、、息を吹き返す、勢い付く/『いぎぼい』がさらに訛ったもの

いぎぼい、いぎぼえ
 元気なこと、勢い、息がある/長く『息が生える』意味がが訛ったと考えていたが、古語の勢いは『いきほひ』と書くため『勢い』が訛った可能性も出て来た。

いぎぼいある、いぎぼいる、いぎぼいあ
 【動】元気になる、、息を吹き返す、勢い付く

いぎぼいだす、いぎぼえだす、いぎいだす
 【動】元気になる、、息を吹き返す、勢い付く

み、い
 沈殿物/誰でも『濁り』の転と考える、『居凝り』(いこごり:残って固まる意味)も捨てきれない、『凝る』には@一か所に寄り集まる、A氷結する意味がある、、またもう一つ汚れる意味の古い標準語『汚る(よごる)』が訛った可能性もある。長塚節の『土』では洪水によって床下に沈殿したものを『泥』(いごみ)と当てている、『土』★後が酷(ひど)くつてな、縁の下でも何でも泥(えごみ)が一杯(え)で、そえつああ掻(か)ん出(だ)せばええんだが:後が酷くてね、縁の下だけではなく他のところも泥が一杯で、そいつは掻い出せばいいんだが

む、い
 【動】にごる、沈殿する/『居凝る』の転と思われるが、汚れる意味の古い標準語『汚る(よごる)』が訛った可能性もある。

いしこい、いしたい、いしけー、いしてー、いしっこい、いしっけー、いしってーいしこい
 【形】【古】しょぼい、ぼろい、ださい、古語の『いしこらしい』『いしこい』が語源と考えられる。もともとは、『もっともらしい、生意気である、えらそうにしている、得意になっている』の意味だが、かなり意味が転じている。ただし、『いしてー』が原型とすれば『石体』(石のようにつまらない意味)の可能性が高い。

いじやげる、いじゃげる
 【動】腹が立つ、むかつく/『意地』が『焼ける』、強調すると『いーじゃげる』と長音表現になる

いしゃる、いじゃる 
 【動】【古】退く、後ずさる、いなくなる、『居去る』かあるいは『躄る・膝行る(いざる)』(物が置いた場所から自然にずれ動く。)等が考えられる。茨城・栃木限定の方言。

いっける
 【動】@載せる、A置く、B倒れる、/@の場合は、栃木・群馬・長野まで分布する、Bの場合は『ひっける』の訛

いっちくたっちく、いっちぐたっちぐ、いっちご、いっちごさっちご
 【形動】服のボタンを掛け違えた状態、ちぐはぐ、互い違い/もともと福井県のわらべうたに『いっちくたっちく たえもんさん たえもはいくらで ごーわんす いっせんごりんで ごーわんす もうちっと もうちっと すからか まからか すってんとん』というのがあるという。これをもとに代表的なわらべうたを混ぜて作られた鬼決めの数え歌に『いっちくたっちく のにく いらく いんじゃ たけのふし ころふし 池のはたの茶わん置いてあぶないものだよ』というのもある。さらにもうひとつあるようで、不思議はどんどん拡がってしまう。確かに『ひとつ、ふたつ』と数えているようにも聞こえる。親が子供のボタンを数えながらひとつづつ手直しする時に歌ったとすると、茨城にだけ方言として残っているのはつじつまが合わない。むしろ語呂の『いっちごさっちご』→『いっちくたっちく』→『いーちくたーちく』というような変化があったのであろう。

いっちゃれる
 【動】壊れる/『潰す』意味の古い標準語(古語)である『つやす』(潰す)にルーツがあると思われる訛

いーのい、いーのいー、いーのえ、いーのえー
 (家の)建物/『家(うち)の家(いえ)』の意味、最初の『家』は概念的な『家』、後の『家』は建物を示す。★ありゃ、いーのいにわすいちった:あら!、家に忘れちゃった、これがおめのいーのいが:これがお前の家かい、おれのいーのいがらおめのいーのいまではとーいがんな:俺の家からお前の家までは遠いからな

いばらき(茨城)とつちうら(土浦)
 茨城人は県が付く場合は『いばらきけん』と一律に発音する。これは、『いばらぎけん』『いばらぎげん』と発音しても清音の場合と区別がつきにくいからである。
 ところが単独では『いばら』(ぎは濁音)と茨城弁の標準ルールに従って話す人が意外に多い。標準語では以前は『いばらけん』(ぎは鼻濁音)と一律に発音されていたが、最近のNHKではきちんと『いばらきけん』と発音するようになった。その経緯は不明である。パソコンは困ったもので『いばらき・いばらぎ』どっちにでも訳せるようになっている。大阪の『茨木』はちゃんと『いばらき』と言われているのに、こんな混乱は県レベルではあまり聞いたことがない。神奈川県下では『秦野(はだの)』なのに『はたの』と言われたり、『長津田(ながつだ)』は『ながつた』と言われたりするように、『土浦』は『ちぢーら』や『つぢーら』、『つぢうら』なんて呼ぶ人もいた。さらに『えばらぎ』なんて言う人までいたから事は複雑である。
 きっと正統茨城弁が存在しないためだろうと思うが、茨城弁らしい言い方は、『いばらぎ』『つぢうら』に軍配が上がると思っている。
 ちなみに、茨城の語源は、第10代天皇の崇神天皇(在位前97〜30)の時代に茨(うばら)の城(き)を築いて土賊を滅ぼした伝説によっているという。この点でも濁音形は間違いと言えるだろう。『うばらき→むばらき→いばらき』

いぼぐ、いぼく
 いぼ、小さく出張ったところ、結び目/単に『いぼ』が訛ったというより、『結う』+『縛』(ばく:縛る)が訛ったものと考えられる。

いぼくたま
 結び目

いんみる
 【動】【古】大変な目にあう/『いんが』は『因果』の意味、古典的言葉の代表

いんね、いんねー
 【慣】要らない/撥音便、日常的に良く使われる言葉

うっちゃる
 【動】【古】捨てる、放る/『打ち遣る(うちやる)』の転、標準語、相撲の『うっちゃり』と同義語

えろいんつ、えろいん
 色鉛筆/『い』を『え』と発音する代表例。最近はさすがに『いろいんつ』が趨勢になっている。

おがんじんおがんじ、おがんじめ
 乞食、今のホームレス/30年代の言葉。順不動で全国の乞食を表す方言を調べると、『ほいど、ほいと、ほえど、ほいとう、ほいた、へんど、へーとー、へんどにん、こんじき、こんじい、きらく、おこもさん、こもつるし、やっこ、ぜんもん、びやどん』等があった。その中で最後に残ったのは、九州の、『くわんじん、かんじん(勧進=乞食)』 であった。勧進は子守唄にも歌われ、寄進を求めて諸国を周った尊いお坊さんでもあり、何故茨城だけに九州方言の影響があるのかが解からない。かつて古代朝鮮との深い関係があった証なのだろうか。もう一つ『願人坊』(がんにんぼう)がある。『願人坊』とは、江戸時代に市中を回って門付け(万歳・厄払い・人形回し・門説経その他)を行なったり、人に代わって祈願やみそぎをした乞食僧を言う。これもかなり有力な語源である。また、道路のことを『おおがん』(往還)と言うので、『往還人』あたりが訛ったのだろうか?。
 ところで最近、千葉や伊豆あたりでも『かんじん』と言うことを知った。やはり『勧進』が語源である可能性が高いようである。
 当時の乞食は、各々の家を回って食べ物を貰って歩いた。中には古着や金を与え、風呂まで入れてあげる人もいた。今のホームレスは殆どが繁華街のゴミを糧としていると言うから『物貰い(ものもらい)』は死語になってしまった。

おしゃらぐ
 お洒落/濁音化、『おしゃらく』は辞書掲載語で関東の女言葉とある。清音なら古い映画等でも聞かれ標準俗語と考えて良い。

おぢる
 【動】@落ちる、A(車を)降りる/『降りる』の訛化、東北系の訛。早くに無くなった。

おっけ、おっけー
 【名】お化け(幼児語)、【形】怖い/『おお、怖い』→おおっこわい→おっこわいおっかいおっけえおっけと転じたと考えるのが自然と思われるが、幼児語としての名詞形もあるので、『怪』『気』に強の接頭語としての『おっ』がついたと考えるのも捨てきれない。

おっこ、おっこー
 億劫/当時の高齢者が使った古い言葉

おっど、おっどう、おっどさん
 いずれも@夫またはAお父さんを表す方言。そうなると夫とお父さんとは実はもとは一緒であったのではないかと思わせる。そこで実際調べてみると予測通り『夫』は『男人:男または男の既婚者』(おひと)を語源だそうだ。

おどめ
 赤ん坊を指す方言。辞書によると『おと』(またはおとご)の意味の一つに『いちばん末の子』と言う意味がある。『おと』は『乙女』の『おと』と同じで幼い意味で、それが赤ん坊の意味に転じたと考えられる。福島方言にも『おど・おと』(赤ん坊)があり、それに茨城特有の『め』が付いたのだろう。

おにんこ、にんこ
 おにぎりのこと。茨城弁では名詞にしばしば接尾語の『こ』をつける。

おばんかだです
 正確には宵の入りに使うため、野良仕事の疲れをねぎらって『お疲れ様』的な意味でも使われる。まれに『おばんかだ』という人もいた。『ばんかだ』は茨城県では夕刻から夕ご飯を食べて落ち着いた頃の時間を表し、それ以降は『よなが』となる。『よなが』は寝る時間であり、この時間帯の訪問言葉は『こんばんは』が使われる。夜半の訪問は多くが緊急の用や折り入っての話、訃報の場合が多いため、どきっとするものだった。

とき、おびどぎ
 『帯とき』のことで七五三を指す。濁音化、半濁音化の典型的な訛。

おびやあぎ、おびやぎ
 お産明け、産後3週間目の祝いのことを指す。『産屋開け』が訛ったもの。段の移動と連母音変形の典型的な訛。この他『乳母車』は『おばるま』と呼ぶ。

おまんじ
 饅頭(まんじゅう)のこと。当時の茨城では拗音がしばしば直音になった。

おりぎ、おりき、おりけ
 霜柱/『降り気』の意味だろう

おんつぁん
 叔父/この『オん』は、『御』ではなく『おじ』が訛ったのであろう。東北弁系訛

かぐし
 ポケット/『隠し』と書く。魅力あることば、清音なら標準語だが死語

〜がっ、〜かっ、〜がっへ、〜かっへ、〜がへ、〜かへ
 【助】@〜(したら)いいでしょう、A(助動詞の無いにつけて)〜(し)ないでしょう、B(形容詞につけて)〜だろう/@ ★やったらがっ、やったらいがっ:やったらいいでしょう。いったらがへな:行ったら良いだろう。A★そーたごどながっ:そんなことないだろう。どごにもながへ:どこにも無いだろう。B形容詞で『い』で終わる言葉に、へ』をつける場合に使われる。『べ』の場合は通常『いいべ』となる。半濁音は濁音で発音されることがある。★いががっ:大きいだろう。うまがへ:美味いだろう。


 【助】@〜の、A〜のもの、〜にあるもの、B〜は、〜ときたら、〜って、C〜分、D〜から、E〜のせい、F〜のか、〜のかな、G〜には、H〜自身、〜にとって、〜には/『が』は鼻濁音・濁音、茨城弁の中で最も用法の難しい言葉の一つ、さらに転じて『〜ん』とも言う、単純に『のの倒語とも言えるがそれほど単純ではなさそう、@A『が』は古い標準語と同じ所属・所有を表す格助詞で『な』は『の』の転、さらに転じて『〜にあるもの』の意味もある。★おれながぐづどごいいったっ:俺の靴はどこにあるんだろう、こりゃだれんつだ、おんこつぇーでっと:これは誰のパンツだ?、ウンチが付いてるよ、いーや、さっきのな地震いががったな、いやあ、さっきの地震は大きかったなあ、おれのくづしたねー、けさのなどごいやった:俺の靴下が無い、今朝履いた靴下はどこに遣った、『土』俺(お)ら家(ぢ)にやねえが、爺(ぢい)な有つたつけな:うちには無いがおじいちゃんのがあったっけ、そごなくれ:そこにある物頂戴、あすこなはいげー:あそこにある物は大きい、Bは@Aが転じてそれ自身を表している、『〜ときたら』の意味が最も近い、=『〜なでは』おめないづもびんぼうぶるやってんだがらしゃあねえなあはー:お前はいつも貧乏揺すりするんだから困ったなあもう、おめなくそのやぐにもたざねー:お前ときたら全く役に立たない、Cこんではひゃぐいんなしかねー:これでは100円分しか無い、ひゃぐいんなかってこおや:百円分買ってこいよ、あるなもってこおや:ある分だけ持って来いよ、Dはおれんだど:次は俺からだぞ、Eこれはおめがなだ:これはお前のせいだ、ぼっこれだのはおめな(せー)だ:壊れたのはお前のせいだ、Fだれにきーだなあいざーなぜんぶしってんだ:誰に聞いたのかあいつは全部知ってるんだ、Gおめなむりだ:お前には無理だ、『〜には』がさらに訛ったもの、『土』★彼等(あつら)な此(こ)んなに出來つこねえんですから:あいつにはこんなに出来っこないですから


 【助】@〜の、A〜のもの、B〜相当分、C〜のせい/@Aの場合は上方落語にも出てくる古い標準語、転じた『〜ん』も同様、★ほいづはおめのが:それはお前のかい、そいつはお前のせいかい?

がばん
 カバン/画板ではなくカバンのこと。茨城弁では珍しく第1音が濁音になっている例、東北地方でもそう呼ぶところがある。

た、かびた
 春先に稲の株が残った田/『株田』の意味か『固まった田』かは不明。

たおごし、かたうない、たうねー、かびたうねーかべたおごし、かべたうない、かべたうねー
 最初の田うない

かーたり、かたり
 水害予防の行事/『川びたり』、12月1日に餅を川に投げる。古くは尻まで川に浸かったのでそう呼ばれる。

たりもぢ、かーたりもぢ
 水害予防の行事の際に川に投げる餅/『川びたり餅』

たまんのー、かべたまんのー
 主として春先に稲の株が残っ稲田を耕う万能、備中鍬/三本刃の鍬、耕運機の導入で殆ど使われなくなる

てる
 【動】カビが生えてる

せる
 被せる/茨城弁らしい半濁音化の事例

かべちぢ、かべど、かべと、かべっと、かべとぢ、かべとちぢ
 粘土、へなつち/『かべ』が原型となり『かび』『かぴ』になったと考えられる。また堅く固まったものを『かべ』と呼ぶ言い方があるので、『壁』が語源かどうかは定かでは無い。

〜がん
 【助】〜(の)せい

ん〜
 【助】@〜の、A〜のもの、B〜は、〜では、C〜相当分、D〜から、【接尾】E/『が』は鼻濁音・濁音、『〜の』がさらに訛ったもの、@ACの場合は上方落語にも出てくる古い標準語、茨城弁の中で最も用法の難しい言葉の一つ、@★おめんぶんはこいだげだ:お前の分はこれだけだ、あーたんではだいだ:あんな物では駄目だ、Bおめんそーだごどやっていーのが:お前はそんなことして良いのかい、Bおめんではまいった:お前には参った、Cこれでひゃぐえんんだ:これで100円分だ、Dほんつはおれんだ:その次は俺からだ

〜かん
 【助】〜から/★おらやだかんね:私は嫌だからね、『土』★先刻(さつき)俺に打(ぶ)つとばされたかんでもあんべえ:さっき俺に殴られたからだろう

がんどねご、がんどーねご、がんどめ
 野良猫、泥棒猫/がんどう(強盗)は標準語だがあまり使われない。

かんめ
 蚊/茨城の代表的な訛り、『め』をつける方言は他の地域にもあるが『か(蚊)』につけるのは珍しい。原型を留めない訛り。

かんめのおやじ
 ガガンボ、ユスリカ/地元ではガガンボは方言と思われている。『ユスリカ』を蚊のお父さんと例えた訛は、日常生活の中で切ってもきれない関係を思わせる。

きだぎ、きたぎ、きだげ
 つば/語源不詳、=『きたげ、くたぎ、くたげ』、『唾』(つばき)の語源を調べると@『唾吐』(つばき)、Aツバ(口・舌・唇)キ(液汁)、Bツ(出ずの上略)ハキ(吐)が代表的である。これに習って『汚い』(きた・くた)『液汁』(き)、『芥』(くた)『液汁』(き)あたりに由来するのだろうか。あるいは『舌』(した)『液汁』(き)だろうか。

きーだごどする
 【動】(身や心に)応えることをする/この表現は茨城弁特有

きたむぎ
 【形動】@着心地、Aひねくれ者/@『着た』『向き』、A『北向き』の意味、Aの場合は相撲界の隠語として残っている古い言葉

ぎっぎっと、ぎーっぎっと
 【副】力を入れる様子を現す、ぎゅうぎゅうと/★ぎっぎっとやんだど:ぎゅうっと力を入れてやるんだぞ

ぎーにゅー、ぎーにー
 牛乳/直音化の例

きやり
 ぎっくり腰/『きやり(木遣り)』はもともと建物を建てる時に重い材木を運ぶことを指す。しかし、他の類似方言から考えると『きやりと』痛い腰というのが妥当だろう。

ぎょおん、ぎょーん
 夏祭り、祇園祭り/夏休みが始まったばかりの7月24日・25日に執り行われた。神輿は字毎に所有し、大人用と子供用(中学生用・小学生用)があった。山車(引き手は未就学児と小学校1・2年)も出て盛況だったが、霞ヶ浦での事故や交通環境の関係でその後無くなってしまったのは残念である。大人用の神輿は、普段神社に納められているが、子供用は各戸が当番制で蔵等で管理した。子供用の神輿は各戸を回り、榊(サカキ)を振りながら『天下泰平悪魔払え(てんかたいへーあぐまはらい)』と言って祈祷すると、お捻りがもらえるので、祭りの最後に全部山分けした後は、夏休みの小遣いに化けた。

きーり
 キュウリ/キュウリは曲がっているのが当たり前。しかし2004年夏〜秋にかけての台風災害での野菜の高騰によって曲がっているものも市場に出回っていると聞いた。キュウリはその名の通り『木瓜』で、種が収穫できる頃は、瓜に近い大きさになることは都会の消費者は誰も知らない。

きる
 【動】来る/高齢者限定の言葉、来るの活用形は、もともとは『か』行1段活用で『きない、きる、き(ー)ば、き(ー)よ』ということになるが、使用するのは高齢者だけで、当時の多くは、『きない、くる、こおば、こおよ』と変則的な活用形になっていた。既に昭和40年頃には茨城弁は崩壊を始めていたことになる。

ぎんちょー、ぎんちょー、きんちょー、きんちょー
 ジンチョウゲ、チンチョウゲ


 【助】〜ごと、〜ぐるみ/『〜ごと』→ど』そ』『〜し』『〜し』、と思われる。★ねっこしひっこぬいだっ:ねっこごと引き抜いたでしょう。標準語の『ごと』の言われ自体が良く解かっていない。

くだぎ、くたぎ、くだげ、くたげ
 唾

くっちゃべる
 【動】べらべらとしゃべる、話をする、無駄話をする/『しゃべる』の強調形+転訛、関東一円から東北に分布

くどい
 【形】(問題などが)難しい、(味が)しつこい、長くてうるさい/標準語の『くどい』は『(問題などが)難しい』意味はない。

くどくるしー、くどっくるしー
 【形】難しく考える様、堅苦しい/『くどくどしい』が訛ったか、『くどい』と『苦しい』の合成語か?、良く使われた言葉

けっく
 しゃっくり

けっくり
 @しゃっくり、Aてっきり/東北系の訛、しゃっくりはもともと『さくる』(しゃっくりする、泣きじゃくる、しゃくる)に由来すると言う。

けづのめどこ
 尻の穴

けっ
 気配、様子、振り、素振り/『振り』、古い言い回し、★しんねえけっりで:知らない振りして、『気振り』、素振りの類語

こいい、こいえ、こえ
 声の音/『声色』(こわいろ)が転じた『こわえ』がさらに訛ったものと考えられる。@最初の『こえ』は『声』だが、え』は声の『色合い』のような意味があった。★なーんだ、おめのこいいはへんだど、かぜでもしーたんだねーのが:なんだい、お前の声は変だぞ、風邪でも引いたんじゃないの?、いーこいいだな、さすがにいだりやのろーまだ:言い声の音だな、さすがにイタリアのローマだ。

らかる、らがる
 糸や紐がからまったりもつれたりすることは、標準語では一般に『こんがらかる』と言うが、これは立派な標準語。茨城弁には、『こらがる』が残っており、清音形はまさしく標準語そのもの。
ごじゃ・ごじゃっ:愚か者

こじーと
 小姑

ごじゃ、ごじゃっ
 栃木・茨城・千葉北部限定の方言。『茨城の方言』(遠藤蛮太郎)では、釈迦の従兄弟のダイバが主唱した『(提婆)五邪の法』を釈迦が認めなかったことから、それが転じたとしている。国内には四国の一部に全く同じ意味の同じ方言がある。
 しかし、茨城弁には、『ごじゃす』『ごじゃらす』『ごじゃれる』等の類似方言があり、『抉らす』(こじらす)が転じたとする説も捨てることはできない。また、言葉の語源は、1説に特定できるものは少なく多くは複数の説が存在するため、『ごっちゃ』『愚者』等もその説の一部になり得るのではないか。

ごだる
 【動】@雑談する、A体が弱る/@は状態表現が動詞になったと考えられる。Aは古い標準語の『こだれる』(傾く、しなだれる、勢いがゆるむ、怠る、弱る)が訛ったと思われる。

こわい、こえー
 【形】とても疲れた様/茨城弁・栃木弁・千葉県北部の代表語、《疲れただけなのに何故恐いの?》、硬い・怖い意味の場合は標準語。身体が疲れて『硬くなった』意味が転じたと考えられる。怖いに該当するのは『おっかねえ』

こわい、こわ
 声の感じ、声色

ささらほさら、ささらほーさら
 散らかっていたり、草ぼうぼう等で手をつけられない状態を示す方言。関東から信州あたりにかけて使われる。『ささら』は古い言葉で細かく切り刻まれたものを意味す。例えば建築用語の『ささら桁』は階段の段板を載せるために細かく加工した側面の板を指す。『ほさら、ほーさら』は『ぼっさら』(ぼさぼさの様)の類義語と推測される。

ささんたづ、ささんだつ、ささりたつ、ささにたつ
 浮かれ立つ、うきうきして上機嫌の状態を意味している。長くルーツが解らなかった言葉だが、『聳り立つ(そそりたつ)』には心が浮かれる意味があるのでそれが訛ったと推測している。(気が)『そそる』と同じ語源を持つと考えられるす。

さむげぼーさま
 鳥肌のこと。東北では『さむげいぼ』(寒気+いぼ)と呼ぶことから さむけいぼ→さむげぼう→さむげぼうさん→さむげぼうさま になったものと推測してういる。県西では『さむさいぼ』と呼ぶそうだ。

とん
 座布団/標準語では『ざぶとん』、泉鏡花の『朝湯』18章に『座布団(ざとん)』の表現があるという。恐るべし茨城弁。

さむしい
 寂しい/古い標準語


 『しが』とは今の茨城県下では県北の久慈川の水の一部が凍って流れる現象を指す。一般に関東北部から東北にかけて凍ったものに関わる方言として『しが』と『すが』がある。ツララを指す地方もあると言う。『すが』『すがもり・すがもれ』に代表されるように、屋根に積もった雪が建物の室内の熱で溶けて、雨漏りと同じ現象になる方言があり、これは建築学の中では特別な専門用語になっている。雪国ではこのすがもりを防ぐため早い時期から高断熱化が進んでいる。雪止めを作るか否かは厳密には屋根の構造荷重をどうみるかにも関係するが、雪の落下による事故に配慮して、特に公共建築では雪は屋根にためるのが原則になっている。
 本題にもどって、『しが・すが』とは何か。標準語圏に近い茨城県北地区の『しが』が重要だ。氷の固まりは古くは『ひ』と発音されたという。東京都西部の『氷川』は『ひかわ』と呼ぶのがそれだ。横浜にある客船『氷川丸』は知らない人はいない。『凍みる』意味も加えて『し』は凍ったものの意味と考えられる。
 そうすると鼻濁音の『が』は何だろう。青森から北海道にかけての代表的方言に『しばれる』がある。凍るほど寒い意味。しもやけを『しもばれる』と言うように、『氷腫れる』意味だろう。そこで、@動詞の語幹の一部だったのではないかという考え方や、A凍った川の意味の『氷河』、B『氷』に所属・所有を表す格助詞『が』がついた等が考えられる。いずれにしても、『氷』の『ひ』を語幹として訛であることは間違い無いと思われる。

しかげ
 仕掛け、遣り方、段取り/濁音化

しー
 茨城県人にとっては何の違和感も無い方言だ、標準語世界の人には全くわからない言葉の代表。
 『祝儀』のなまったもので結婚式を意味する。直音化した訛。当時の仲人は新郎新婦双方に居て、最初は仲人同士の話し合いから始まったと聞いている。また結婚式は自宅で行なわれるのが普通だった。式は新郎新婦双方で執り行われた。お嫁さんは、定番の角隠し姿で黒塗りの『ハイヤー』に乗って新郎宅にやって来た。その時の『がもつ』(賀物)の多寡で嫁方の家柄が値踏みされた。

じーくや
 十九夜講/月待ち講のひとつで、当番の家に女達が集まり、円座を組んで長い数珠をぐるりと回しながら念仏を唱えた。終わると歓談の時間が持たれ、女たちの憩いの場になっていた。子安信仰が主だったらしいが、念仏信仰と一緒になっていたようである。記憶では、その後男達も集まって部落の報告会等の後大宴会になり、いつもの民謡合戦が執り行われた。『ちゃんちきおけさ』になると普段は禁忌である茶碗叩きが堂々と行なわれた。30年代には、子供の私はなにかというと酔っ払い集団の中に呼ばれて、『ひゃっんがいし』を聞かされたが、大人たちばかりが楽しかったばかりではなく普段口にできない刺身のおこぼれにあずかれるので、『じーくや』の晩は楽しみだった。
 土浦には『じーくたぢまぢ、はづがよいやみ』(十九忽ち、二十日宵闇)と言う慣用句がある。

しこ
 【古】醜い格好、でたらめな遣り方/『醜(しこ)』は、醜悪なものをののしって言う場合に使う。相撲の『四股を踏む』の『四股』は『醜』の意味もあり邪悪なものを踏む意味があるという。土浦では多くは連語で『しこたれ』を使った。『ざま(様)』と同じ。

しこざま、しこたれ
 醜い格好・様(ざま)/『醜(しこ)』+『様(ざま)』で似た意味を持った言葉の連語及び古語の『醜(しこ)』と『たれ』(接尾語)の連語と考えられる。

じーさんまいり、じーさんめーり
 数え十三歳(小学校6年生)は男の厄年で、必ず虚空蔵菩薩にお参りをする。標準語世界の人には、13歳の子供がお参りするのにどうして『爺さん参り』と言うんだろうと不思議がられるだろう。

しみじみ
 【副】しっかり、きちんと/標準語の『しみじみ』とは意味が異なる


しゃーねー、しゃーんめ
 【複】しょうがない/『しようがあるまい』→『しょうがあるまい』→『しゃああんまい』『しゃああんめえ』『しゃあんめ』

じゃーぼ、じゃーぼー、じゃんぼ、じゃんぼー、じゃんぼん
 葬式の最も代表的呼称、当時の葬式は土葬だった。午後1時の出棺に先立って最後のお別れをしたあと遺族が石で釘を打つまねをした後、喪主が挨拶。いよいよ六道達が棺を専用の荷車に乗せて墓に向かう。その途上では、太鼓とカネ(鉦)で『ちんちんどんどんちんどんどん』が繰り返し奏でられた。この時の音は言わばチンドン屋の打楽器だを使ったものと考えれば良く葬送の音楽としては違和感があった。葬式は自宅で行なうのがあたりまえで、火葬になった今も葬儀だけは自宅で行なわれる。
 もともと、葬式のドラの音の『じゃんぼん』から転じたと言われる。新潟では葬式のドラを使っているのでと呼ぶそうだ。、土浦では葬式行列の音楽隊は太鼓と鐘を使うので、そのまま茨城訛りで言葉にすると『じゃんぼご じゃんぼご じゃんじゃんぼごぼご』となる。実際、県東南部では『じゃんぼご』と言うそうだ。
 夏目漱石の小説に『坑夫』というのがある。足尾銅山を舞台にした小説だから栃木弁でこのなかに『じゃんぼー』が出てくる。面白いのは前半に茨城県出身の人物が出て来て『芋』を『えも』と発音するくだりまで描かれている。

じゃーぼさ、じゃーぼばな、じゃんぼさ、じゃんぼっな、じゃんぼばな
 ヒガンバナ

じゃーぼじゃんぼ
 葬式の時相互に助け合う組講

じゃーぼまんじー、じゃーぼまんじゅー、じゃんぼまんじー、じゃんぼまんじゅー
 葬式饅頭/『じゃんぼ』は葬式の意味だが、確かに大きな饅頭だった。そこで子供達はこんな歌を作った。『そーしきまんじゅー、でっかいまんじゅー、じゃーんぼまんじゅー、でっかいまんじゅー』

じゃまなか、じゃまのか
 邪魔なことを意味する形容動詞。よく使われた言葉なのに、何故か茨城弁の他のサイトには全く見られない。ところが最近長塚節の『土』にそのルーツを見つけた。『土』には『〜だ』が『〜のがんだ』と表現されています。そうすると『じゃまだ』は『じゃまのがんだ』という言い方になる。まさにこれがルーツだった。その意味でこの方言は明治期の古い茨城弁の名残ということになる。

じゃみ、じゃみる
 物事が途中で駄目になることの名詞形と動詞形の言葉だが、実はこれはれっきとした標準語。辞書掲載語で江戸時代の言葉と言う。『おじゃんになる』とほぼ同じ意味。『じゃみ』と『おじゃん』は同義語。
 当の標準語ではすっかり廃れて、関東の一部の地域に残ったものだが、最近の茨城県でもほとんど使われなくなってしまったと聞く。恐らく『駄目』との競合したためだろう。
 このような古い言葉は、茨城県には沢山残っていた。

じょーかい
 定期的な会合/『常会』の意味

じょーった、じょーんだ、じょーんた、じょんだ
 【複】上手だ、良い子だ

じんちょー、じんちょじんちょき
 ジンチョウゲ、チンチョウゲ

すいがん
 スイカのこと。『冬瓜』を『とうがん』と発音するなら、『西瓜・西瓜』は『すいがん』と発音しても良さそうだが、標準語では何故かそうは言わない。

すいる
 沢山の意味がありる。@添える、A仲間に入れる、B口に入れる、C(器に)入れる、D(言葉を添える)言う、いずれも『添える』に相当するもの。添える→せえる→すえる→すいるというように訛ったと考えられる。

すこい
 倒語現象、『狡い』(こすい)、関東・中部・近畿で使われる広域方言。

すじょ、すじょー
 【形動】素直、性格が良いこと/『性』が『素』である意味

すずめのす
 子供などの髪の毛がくしゃくしゃになっている様子

すてぎもない、すてきもない、すてぎもねー
 【形】@とてつもない、A不相応だ、B普通ではない/『すてきもな・し』。この『素敵・素的』(すてき)は『程度や分量がはなはだしい様』で辞書掲載されている。中里介山の小説『大菩薩峠』に『昔、上(うえ)つ方(がた)に、すてきもない淫乱の後家さんがあって、死んでから後、墓地を掘り返して見たら、黄色い水がだらだらと棺の内外に流れて始末におえなかったと、古今著聞集という本に書いてあるとやら。』、楠山正雄の諸国物語『長い名』に『「ちょうにん、ちょうにん、ちょうじゅうろう、まんまる入道(にゅうどう)、ひら入道(にゅうどう)、−中略−お茶(ちゃ)がすんだら三遍(べん)回(まわ)って煙草(たばこ)に庄助(しょうすけ)。」という、すてきもない長(なが)い名前(なまえ)をつけました。』、佐々木味津三の『右門捕物帖/へび使い小町』に『まこと、伝六太鼓もたたきようによってはすてきもない音の出るときがあるとみえて、いかさまいぶかしい一通を目の前にさし出したものでしたから』とある。辞書にも慣用句辞典にも無い言葉だが、『程度の甚だしい』意味なら古い標準語と思われる。
すてぎもなぐいがい:とてつもなく大きい、おれにはすてぎもねーよめだ:俺には分不相応の嫁だ、そーたにすてぎもなぐやるもんだねー:そんなに無理にやるもんじゃない

すみ
 電池、ライターの着火芯を指します。もともとは『灯心(とうしん)』を『とうしみ』と言い『しみ』が訛って『すみ』と言うようになったようだ。


すんする
 損すること。土浦市発行の『土浦の方言』でも紹介されている。

せぎ
 【古】広さ、余地、坪数/『積』、もともと地面の坪数の意味があった。古い言葉、長塚節は『席』と当てた、確かにイメージ的には『席』が解り易い、彼の天才の故だろう。、『土』★俺(お)ら何も不服いう席(せき)はねえな

せまなか、せまなが、せまのが、せまのか
 この言葉は他のどこの地域にも無い。明治後期の茨城弁に『〜のがんだ』(〜の理由だ)があり、『せまのがんだ』が転じて『せまのが』が生まれたと考えられる。

せやなが、せやのが、せわなが、せわなか、せわのが、せわのかー
 【形動)】忙しい、面倒くさい

せーる
 【動】添える、仲間に入れる、(器に)入れる、(言葉を添える)言う/『添える』、日常的に良く使われる言葉、古くは(言葉を)添えた=言った意味でも使った、★はいぐせーねーどさめっちまーど、早く入れないと冷めてしまうぞ、『土』★爺(じい)げお茶入(せ)えべえ:お爺さんのお茶を入れよう、★そんだって酒っちゃ人の口さ入(せ)える様に出来てんだから、それ証拠にや俺(お)らが口さ入(せ)えりやすぐ利くから見ろえ:だけれど、酒って人の口に入れる様に出来ているんだから、それが証拠には俺の口から入れやすくて(おまけに)利くから見なさい

せんべん
 煎餅(せんべい)/栃木と茨城の方言

そだへ、そーだっへ
 【複】そうだろう、そうでしょう

だいじぶ
 【形動】大丈夫/短縮形

だいだ
 駄目だ、誰だ/良く使われた言葉、★だいだがんな、はあ:駄目だよ、もう、★あれはだいだ?:あれは誰だい?

だす
 【動】あげる/『上げる』は使われなかった。この言葉は、茨城弁の代表語だが、標準語世界で聞くと『隠してある大事なものを取り出してくれてやる』という様なニュアンスで聞こえて、あまり残したくない言葉でもある、ところが、辞書には『客などに、飲食物や金品を供する。与える。金を支払う。』とあり、やや古い標準語と言える。★りょごーみやげめーのいにだしたが?:旅行の土産は前の家に上げたかい?、『土』★勘次(かんじ)さん、はあおつぎこたあ出しても善かねえけえ:勘次さん、もう『おつぎ』は嫁に出しても良いんじゃないの

〜だっべ、〜だべ、〜だべー、〜だっだっー、だっへ、〜だへ、〜だんべ、〜だんべー
 【助】【古】だろう、でしょう/茨城弁の基本中の基本用語、古語の『〜たるべし』に近い。『だべ』は神奈川や千葉の一部のエリアでも使用されている。『だへ』は茨城以外ではあまり聞かない。語源の『だべし』とはニュアンスが異なり、相手の承諾を促すような意味もある。単独でも使う。

〜だっちか
 【複・助】@〜だろうか、A〜だろうとしか/本来の意味が薄まっている

〜だっちけ、〜だっちっけ、たっちけ、〜たっちっけ
 【複・助】〜だったろうと言うことだ、〜だったそうだ/究極の茨城弁と言えそうな言い回し、★あいざーとーどよめにいがながったっちけど:あいつは全く嫁に行かなかったろうと言うことだよ、『土』★五合も飲んだんだっっちけな:五合も飲んだだろうと言うことだ

たませ、たますい
 人だま/『魂(たましい)』、当時はまだ土葬の時代で、人体から出た硫黄や燐が空気の逆転層付近にたまり、夏季の高温の中で低温発火して起きる現象と言われる。当時は、良く『たませが出た』と言って村内が騒然としたものでる。

たんころ
 @口から出す「たん」のこと、A単車(バイク)のこと

〜ちか、〜ちが、〜ぢが、〜ちっか
 【助】〜しか/★ひゃぐいんちがねーのが?:100円しかないの?

〜ぢが、〜ぢーが、〜ちが、〜ちーが
 【助】〜て/標準口語の『〜てか』に相当する、★なんだっちが?:何だって?

ちぐ、ちく
 嘘/茨城と栃木・千葉の一部にしかない方言。古代朝鮮の筑羅島が語源、対馬の近くに巨済島という島があり、古くは『筑羅島』といわれた。この島と対馬の間の海は、朝鮮と日本との潮境にあたり、『筑羅が沖』と呼ばれた。『筑羅』は『ちく』となり、潮境の持つどちらに属するともいえないイメージから転じて『どっちつかず』の意味で使われるようになり、さらに『いいかげん』『うそ』の意味に転化していった(常陽芸文より)。
しかし、『痴句』の意味だったり、『痴愚』(馬鹿)が転じたり、『ちぐはぐ』が訛ったと考えても間違いではないような気がする。ちなみに他県では不揃いの意味で使われているという。まれに『ちと発音する場合もある。また、清音形は土浦で使われることは比較的少ない。以下同様
『土』★いや本当でがす、わしゃ嘘(ちく)なんざいうな嫌(きれえ)でがすから:いや本当です、私は嘘なんかを言うのは嫌いですから
(その他)嘘に関する訛
ちぐだます:【動】嘘をつく
ちぐぬがす:【動】嘘をぬかす/『ちぐぬぐ』より、してやられたという印象が強い。
ちぐぬぐ:【動】嘘をつく/★ちぐだっ:嘘でしょう、ちぐぬげ!:嘘つけ!、ちぐぬいだらべろぬがれっと:嘘ついたら舌を抜かれるよ
ちぐぬぎ:うそつき
ちぐぶづ:【動】嘘をつく/『うそぶく』
ちぐらっ、ちくらっちぐらっ:嘘


 【形動】ちぐはぐ、互い違い/『ぐ』は鼻母音、『ちぐはぐ』の『ちぐ』は『値遇』(出合うこと、めぐりあうこと)、『はぐ』は『反遇(はぐれる)』で、出会ったりはぐれたりする様が転じたとされる他、一揃いの『一具』が『逸れる』が転じたとする説もある。

〜ちげ、〜ちけ、〜ちっけ、〜ちげが、〜ちけが
 【助】〜だって、〜らしい/〜てかい→〜てげ・〜てけ〜ちげ

ちゃーちゃー
 【副】しゃあしゃあと、はずかしもなく、平気で

ちゃぶす、つぁぶす
 【動】潰す/『つぶす』→『つぁぶす』(古い言い方)→『ちゃぶす』、これぞ茨城・栃木限定の方言

ちゃぶれる、つぁぶれる
 【動】潰れる

ちゅぐ、ちゅく
 嘘

ちんりむぐ
 【動】そっぽを向く/訛りの訛りのような言葉、『ちんぷり』は『知らない気振り』の転と考えられる

ちんりこぐ、ちんりこく
 【動】知らない振りをする/

つっこっ
 【副】つべこべ

つっ:はまる・落ちる

潰す
 茨城弁では『潰れる』意味の言葉は『ちゃぶれる』。ところで、強調等の接頭語を伴った、『おっちゃす』『ぶっちゃす』『かっちゃす』『くっちゃす』等の『ちゃす』は『潰す』意味であることを明記して来た。その根拠はまさしく『潰れる』意味の言葉は『ちゃぶれる』を根拠にしたもの。ただやはり推測の領域を出ていないと感じていた。使用実態と実際の言葉から推測したものだ。
 ところが最近、『潰す』意味の古い標準語(古語)である『つやす』(潰す)を発見した。
 Google辞書に『かの入鹿の大臣はてむがを軽するのみならず。国をつやすすげきとたり/幸若・入鹿』とある。
 ここまで来れば、『ちゃす』は『潰す』に語源があると主張しても良いと思う。このサイトの大発見の一つだ。
 長塚節は『土』の中で『毎日苦虫食っ潰(ちゃ)したような面(つら)つきばかしされたんじゃ厭(や)んなっちまあぞ、本当に』という言葉を残した。

ですっぎ、です
 【形動】出ずっぱり、でしゃばり/原型が想像つかない訛、しかし茨城弁では『ぎ』と『り』の発音が近いためと考えられる

でほーらぐ、でほらぐ
 でまかせ、言いたい放題/群馬でも使うという。『法楽』『放楽』は慰みや楽しみのことで『前に出るのが楽しい』意味が転じただろう。

てんき
 晴れ

でん
 転ぶ

とごろが、とごろっが、とごろか、とごろっか
 【副】いいかげんなこと/歴史がありそうな表現だが、語源不明。『心此処にあらず』的な言い回し、良く使われる言葉。★とごろかやってはだめだっ:いいかげんやっては駄目でしょう

どっちがる
 【動】座る/『ちがる』の強調形、=『ぶっちがる』

とっづもねー
 【複】考えもつかない、とてつもない/『途方も無い』が訛ったものと考えられる、★とっづもなぐいがいど:とてつもなく大きいよ

どどみいろ、どどめいろ
 黒っぽい青紫色(内出血の皮膚の色)、プール後の唇の色/本来の『桑の実色』の意味が薄れてしまった例、蚕の生産の減少に伴って消えて行ったのだろう。さすがに群馬では今でも健在のようである。

くろ、とぶぐろ
 戸袋、雨戸の収納場所/清音化、泉鏡花の『朝湯』の一説には、『戸袋』に『とぷくろ』のルビが打たれていると言うから、茨城だけの方言だとは言いがたい。

どぶた、
 深い田んぼ

とろっ
 【動】しょっちゅう、いつも/『常日』(じょうじつ)の訓読みが訛ったと考えられる。長塚節『芋掘り』の一節★おらあまあ獨りで心配なんだよ。眠つても眠れねえことがとろっ日(び)だよ:俺はもう一人で心配なんだよ。眠っても眠れないのがいつもなんだよ。

とろびぐ、とろびる、とろびげる、とろかる、とろける
 あまり使われなくなった標準語の『とろっぺき・どろっぺき』(酔って正体を無くすこと)と関係があるかもしれないが、綻びる(ほころびる)が訛ったものだろう。
 綻びる(ほころびる)→ほころびける→とろびける→とろけるとろかる?、=『うすめれる』

とんくりん、とんょごりん、とんょこりん
 【形動】おっちょこちょい、向こう見ず、間抜け/『突飛』のほか、『頓珍漢』(とんちんかん)、『へんてこりん』、『頓痴気』(とんちき)あたりとも関係がありそうだ。『とんちきりん、とんちくりん』がさらに訛ったものと考えられる

にやにや
 【形動】湿気て柔らかくなった状態、にちゃにちゃ/★せんべんがにやにやだ:煎餅が湿気て柔らかくなってしまった

ぬー、ぬーぼっち、のー、のーぼっち、のぼっち、のぼち
 稲叢(いなむら)

ねずみにひかれる
 【複】【慣】一人きりで寂しいさま/標準語の慣用句では『忽然と姿を消したもの』の意味。

〜ねちゃった、〜ねーちゃった、〜ねーっちゃった、〜ねっちゃった、〜ねーちった、〜ねっちった
 【助】〜しなかった、〜するのを忘れてしまった/★あらー、となりのとーちゃんきのーなぐなったんだどー、しんねちゃったどやー:あらあ、隣のお父さんが昨日亡くなったんだって、知らなかったよ、『土』★此(こ)れつ切(きり)しか持(も)つちや来ねえっちゃった:これっきりしか持って来なかった

のざぐ、のざく
 【動】おえっとなる、吐きそうになる/『のぞさふさぐ(喉を塞ぐ)』意味か?

のぞいる、のぜる、のぜーる
 【動】むせる/『喉に入る』意味

のぞめど、のどめど
 【名】喉、咽頭


 メンコ/メンコ自体が子供の遊びから無くなった。

はな
 @いびき、A鼻元/標準語には『またぐら(股座)』はあるのに『鼻座』が無いのは不思議だ。★はなぐらたででる:いびきをかいてる、はなぐらぶんなぐっちぇ:鼻元を殴ってしまえ

はなめど
 鼻の穴

ーぶぢ
 メンコをやること、メンコ遊び

ーまーし
 メンコを回す遊び/メンコの本来の遊びではなく、『じーえんまーし』丸く平たいものならなんでもできる遊び。

はらっり、はらひり、はら
 下痢/=ーどんどん』、おならを『ひる』のと同じ表現で『腹を』『ひる』と言ったのだろう。

はり、はりあい
 時、機会/『折り』『折り合い』が訛ったか?

はんかーす
 【動】口答えする/この『はんか』は『半可』ではなさそうである。『反歌(はんか)』+『反す(かえす)』の転だとすると出来すぎだろうか

ばん
 夕刻から夕ご飯を食べて落ち着いた頃までの時間/『夕餉(ゆうげ)』が転じたものと思われるが、土浦では時間を表す意味で用いられた。夕刻から夕ご飯を食べて落ち着いた頃の時間を表し、それ以降は『よなが』となる。『よなが』は寝る時間であり、この時間帯の訪問言葉は『こんばんは』が使われる。★ばんのごはん:夕飯

びすばる、すばる、ひすばる
 【動】@落ち込む、A縮こまる、小さくなる、萎れる/『干し』『張る』。『はる』は『強張る』の『張る』と同じ。

びだ
 あぐら/『びだげる』の『びだ』と同じ語源だろう。

びだげる
 【動】甘える、(子供が)地団駄踏む/県北では、『びじゃける』と言う。『媚態(びたい)』や古語の『混く(ひたたく)』は、ごたごたしている、みだりがわしい、締りがない、うかれている等の意味があるがそに由来するかどうかは解からない。『びだ』は平べったい意味や潰れたを表す語幹なので、寝転んで甘える意味かもしれない。

びだこい、びたこい、びったこい、びだっこい、びだっけー
 【形】平らな様、薄べったい/

びだっと
 【形動】平べったい様/★なーにびだっとすわってんだ:どうしてだらしなく座ってるんだ

びだつら、びだっつら
 平べったい顔

びだばる、びだまる
 【動】@病気等で伏せてしまうこと、Aものすごく疲れること、B潰れる、C倒産する/『びだ』(平べったい意味や潰れた意味を表す語幹)『張る』

びっぢがる、っちがる、びぢがる、びちかる、ちかる、ぶちがる、ぶちかる、ぶっぢがる、ぶっちがる、ぶっちかる、っちがる
 【動】座る、地面にどっかりと座る/(席に)『着く』→『つかる』(自動詞)→『ちかる』→『ぶっちかる』と考えてしまうが、千葉県では『ぶしかる、ぶすかる』等と言われることから、『伏す』と関係がありそうだ

ーどんどん
 下痢

ひゃぐ
 物差し/『しゃぐがさらに訛ったものと思われる。

びろぎだす、ろぎだす
 【動】(歯磨き等を)押し潰して出す/『ひしぐ』と関係がありそうだがあまりに音韻がかけはなれている。擬態語からできた動詞と考えられる。

びろげる、ろげる
 【動】(餡や下着などが)はみ出る

びんぼぶる、びんぼーぶる
 貧乏揺すり/標準語では古くは『びんぼう揺(ゆ)るぎ』とも言い、『ぶるい』と『ゆるぎ』のミックス語ともとれる。


ふしめど
 節の穴、節穴/★おめーのめはふしめどだらげだねーのが:お前の目は節穴だらけ(良く見えない)じゃないの

ぶだのしっ
 末っ子のこと

ぶぢ〜
 【接頭】/『打ち〜』または強調語、沢山の訛があるので詳細は『昔の茨城弁集』本編を参照ください。

ぶちこばる
 【動】引きこもる/ぶちこばる

ぶぢます、ぶぢまーす
 【動】ぶっ飛ばす、ぶん殴る、袋叩きにする/『打ち』+『回す』の転、★あいづでは・まったぐ・てーつけらんねがら・いっかいれ・ぶぢまして・やれば・いーんだ:あいつは手が付けられないから1回ぐらい袋叩きにしてやればいいよ

ぶぢみ、ぶぢめ
 打撲傷、打ち身/★ぶぢみには・やっり・めんふら・いぢばん・きぐわ:打身にはやっぱりメンフラが一番効くよ

っ〜
 【接頭】/『打つ』の促音または強調語、=『ぶっ〜』とほぼ同じ使い方だが、やや相手や対象を軽んじてを小ばかにした意味合いが強くさらに汚い言葉。茨城弁特有の訛。、沢山の訛があるので詳細は『昔の茨城弁集』本編を参照ください。

ぶっくす、っくす
 【動】たたき壊す、打ち壊す

ふったがる
 【動】@膨れ上がる、膨らむ、A火が燃え上がる、B腹が一杯になる/『吹き』+『焚く(たく)』の転、おめ、あだまふったがってっと:おまえ、頭がぼさぼさだよ

ぶったす、ったす
 【動】@別のところに置く、A捨てる、B加える/『たす』は『出す』『足す』の転

ぶっちめる、っちめる
 【動】@こらしめる、A勢い良く挟む

ぶっぢゃげる、ぶっちゃげる、ぶっちゃける、っちゃげる
 【動】@打ち明ける、A破ける、B開ける、C器の中身を全部あけ捨てる/『打ち明ける』意味の『ぶっちゃける』は標準口語でも良く使われる。下町言葉。★おめーはそーたよげーなごどやっからっちゃげちったっぺな:お前がそんな余計な事をするから、破けてしまったじゃないか

ぶっとげる、っとげる
 【動】溶ける、(そばなどが)伸びる、(餅などが)どろどろになる、打ち解ける

ぶづばれる、ぶづれる、ぶっれる
 【動】(顔が)むくむ、腫れる

ぶでる
 【動】@内出血する、A何かに当たって傷む、ぶつかった部分が腐る/『打つ』の自動詞形

ぶどげる
 【動】@(そばなどが)伸びる、A(餅などが)どろどろになる、Bふやける/『溶ける』の転か、『解ける』(ほどける)の可能性も、≒『ぶよげる』、★もぢが・ぶどげでんのも・けっこー・うまいなー:餅が溶けてどろどろになっているのも結構美味いね

らっらっ、ら、らんらん
 【副】ぶらぶら揺れる様、怠ける様

ぶよげる
 【動】@(そばなどが)伸びる、A(餅などが)どろどろになる/『ぶよぶよになる』意味、≒『ぶどげる』

ぶんぬぎ
 @他を引き離していること、Aそっくりなこと、B駄菓子屋で売っていたくじ引きの一種/@の場合は『ぶっちぎり』、Aは茨城の代表的方言、型を打ち抜いて作ったものの様にそっくりな意味。ところでこの『だんとつ』は『断然トップ』の意味の俗語で『断トツ』と書く和英混交の新語。Bの場合は、『打ち抜き』の転、『あでくじ』とも言う、駄菓子屋に15〜20程度に区画された大きな箱があり、表面の厚紙に穴を抜いて中のものを取り出した。何が出て来るか解らない楽しさがあった。

、〜ー、
 【助】〜しよう(勧誘)、〜でしょう(推測)、〜ろう(意志)/茨城弁の印象を決定づける代表的接尾語。土浦では最も多用される。調べると福島や千葉でも使われている。多く足音便を伴う動詞を選び、標準語の連用形が『〜よう、〜ろう』になる動詞との相性が良い。『べい』『べえ』が中世後期からの語法とすると、かつて新方言であったものが定着した可能性が高い。しかし、例えば『こう』形の『行く』を『いぐっという言い方をしたとしても間違いだと言うことはできない。また『ろう』形になる『やる』『知る』は普通『やっぺ』『しっぺ』になるが、『やるべ・やんべ』『しるべ・しんべ』とすることもあり、絶対的なルールは無いと言える。
いがっいがっ:、良いと思うよ?、いがっ:良いそうだ、いがっ:良いんじゃないの?、いがっ:良いんじゃないの?(やや丁寧)、いがっ:良いと思うよ?、いがっはー:もう良いだろう?、抑揚によって微妙にニュアンスが異なる。
形容詞との組み合わせは『〜かろう』の意味の『が・か』を介して、『良かろう』の意味の『よがっ・よかっとなる。
〜へ、〜へー
 【助】〜しよう(勧誘)、〜でしょう(推測)、〜ろう(意志)/『〜へ、〜へー』は、『べい』『べえ』が中世後期からの語法とすると、かつて新方言であったものが定着した可能性が高い。ちょっと気が抜ける表現だが、と殆ど同じ意味で使われる。上大津地区ではの次の頻度で使われた。ネット公開されている『新方言辞典稿 増訂版』では『茨城県霞ヶ浦付近の若者の新方言;もともとの言い方はイグンダベまたはイグンダッペ;「ベ」や「ぺ」だと強い感じがするから「へ」に変えたんだという(1991年玉造町史調査で口頭報告)』とあり、茨城県内でも『へ』の普及時期にはのばらつきがあるようだ。
『へ』の用法はオールマイティである一方、マイナーな言葉として扱われている傾向がある。『〜おう、〜こう、〜そう、〜とう』『〜のう、〜ぼう、〜もう』『〜よう、〜ろう』いずれにも接続するのに、どこかに違和感を感じるためか、使用例は多くない。居ながらにして目立たない、でも完全無視はされないような言葉。
そーたごどあんだへが:そんな事あるんだろうか

へごだみ、へごたみ、へこたみ
 窪んだ場所、窪地

へーぶぢ、へーめぶっちゃし、へーめっちゃし
 ハエタタキ

へんてもねー、へんともねー
 【形動】大したこと無い様/この言葉こそが茨城弁の横綱だと思ったりする。標準語に最も近くしかし最も遠い言葉だろう。『返答も無い』より『変哲もない』が訛ったものだろう。昭和30年代の言葉。

ぎだす
 吐き出す

ほぎる、ほきる
 【動】@植物などが育つ、A芽を吹く、B(火が)起きる/『(火が)起きる』意味と同じ言い方なので、単純に『起きる』が転じたか、綿を打ち直してふっかりさせる意味の『ほかす』の自動詞形が転じたか?、東北で使われる同じ意味の『おがる』が使われる。最近、埼玉県のご老人が使っているのを聞いた。

、ほ
 【形動】(作物等が沢山とれて)喜ぶ様、ほくほく【副】沢山


げる
 【動】@(木などが)腐る、風化する、Aぼける/@は『化ける』(ふける)の転、Aは標準語の『暈ける(ぼける)』の転、、はしらがげちゃってっぺな:柱が腐ってるでしょうが

ほちくる
 【動】ほじくる、ほじる/『穿る』の転

ぼっち
 @稲叢、A桟俵、B品物のかたまりの単位(ひとやま)/『帽子』の形状から中央が尖った形状のものを指す。俵の両端の塞ぎ(桟俵)も『ぼっち』という。

ほどんと、ほどんど
 【副】ほとんど/『ほどんと』は茨城弁の代表的訛り形で、清音化と濁音化が同時にある例として理解していた。ところが偶然東京生まれの東京育ち八王寺在住の60代の知人が先日『ほどんと』を使っているのを耳にした。2回聞いたので間違い無い。八王寺は多摩の方言の圏域で実は関東圏の古い方言が残っているのではないかと推測される。調べると関東から東北一円の訛のようだ。

ぼやぼやする
 【複】@蒸し暑い、Aのんびりする/Aは標準語

やする
 【動】怠ける

ほろがす、ろがす
 【動】無くす、ぽろりと落す

まぢ
 @祭り(秋祭り)、A町、B祭日/収穫祭としての秋祭りを指し、11月末頃だった。実際は神事だけで、野良作業が休みとなるので、嫁達はこの日を狙って実家に帰ることが多かった。清音なら古い標準語、その場合『待』と当てられる

まっきゅーろ、まっきろけ、まっきろけっこ、まっきろこ、まっきろこっこ、まっきんきん
 【形動】まっ黄色

まっかり
 【形動】明るいこと、昼間の様、電気をこうこうと付けた様

までる
 【動】@片付ける、しまう、A混ぜる/『まで』の動詞形、@は『纏める(まとめる)』が転じたか?

まるぐ、まーるぐ
 【動】束ねる、紐で結ぶ/これは大変不思議な言葉、野菜などをまとめて束にして結ぶ場合やむしろなどを丸めて紐で結ぶ時も用いた。縄で丸く縛ることからそう言うようになったのだろうか?、関東から東北にかけての農村専用言葉のようである、多摩地方でも使われる、★まるぐまーるぐ:丸くして結ぶ、『土』★商人(あきんど)がまるき直すんだから小さくもなる筈だな

みいこ、みよ、みよこ
 小川、生活排水用の排水路等:小川・小さな用水路/『水』(み)+『こ』(接尾語)または、『澪・水脈・水尾(みお)』(水の緒の意)+『こ』(接尾語)あたりが語源と思われる。別にみよ、みよこ』とも呼ぶので『澪・水脈・水尾(みお)』が最も有力と考えられる。『みお』は、『河・海の中で、船の通行に適する底深い水路、みよ、船の通った跡、航跡』の意味

みくさい、みさい、みくせー、みせー
 【形】醜い

みぶる
 身震い

みんな
 【形動】皆の、全部の

むぎ
 ものの状態、作物の状態/『向き』、★いいむぎだごと:良い天気ですこと、きたむぎいいな:着心地が良いな

むぎどもねー、むきともねー、むぎもねー、むきもねー
 【副】@とてつもなく、A手荒に、B不相応に、C普通でなく

むぎもなぐ
 【副】@とてつもなく、A手荒に、B不相応に、C普通でなく/標準語の『向きもなく』は『その様子も無い』の意味、標準語に無いのが不思議な位の表現力ある訛、★たんぼにざっそうがむぎもなくはいちゃった:田んぼに雑草がとてつもなく生えちゃった

むったい、むってー
 【形動】(小便等が)漏りそうな様

めど、めどこ、めどっこ
 小さな穴/針の孔を『めど』と言うのが転じて小さな穴(孔)の総称になったものと思われる。針の穴は『めど』ならば、今はほとんど針を使わない時代になった。はりめどとおし:糸通し、『土』★大豆打(でえづぶち)にかつ転がった見てえに面中(つらじゅう)穴(めど)だらけにしてなあ:大豆の脱穀の時に転んだみたいに顔中穴だらけにしてなあ

めーみよ、めーめよ、めーみーよ、めーめーよ
 【複】見えないでしょう/★もう、めーめーめーよ:もう、目が見えないだろう

やふ
 建物を壊すこと、解体/『屋』『解し』

ゆっつぉ、りっつぉ、りっつぉー
 辞書では主に茨城県で使われる同じ意味の方言として『ゆっつら』が紹介されている。『つら』は『蔓』(つる)の古語で、『結い蔓』が訛って『ゆっつら』『ゆっつぉ』となったものだろう。=『りっつぉ』

よったがる
 【動】寄り集まる/『寄り』+『集る(たかる)』の転

よにぐ、よにく
 【形動】運が悪い(余計なこと)/利用者のイメージは、『皮肉』のイメージと重なり、『運が悪い』意味で使ったが、実は『余肉』は金属加工業界等では、無駄な部分の意味で専門用語として使っている。そのためこの言葉は日常語に定着しなかった古い標準語が僅かに意味を転じた方言と言える。『よっぱら』の元となった『余腹』に似た語法。ちなみに長塚節『利根川の一夜』の一節では、原語に忠実な意味で使われている、★よにくな奴等だ、わざ/\サヤのところを通りやつて、いめえましい畜生だ:余計なことをする奴等だ、わざわざサヤのところを通りやがって、いまいましい畜生だ(サヤとは当時行なわれた利根川での鮭を獲る際鮭の誘導路として二筋に立て並べた竹の棒の呼称)

ろぐすか、ろくすか
 【副】ろくに/東北系の訛、『ろくにしか』の転か?

んだちけが?
 【複】そうなんだって?

んだっ
 【複】そうだろう

んだちか
 【複】そうだろうか/究極の茨城弁と言えそうな言い回し

んだちけー
 【複】俺が言った通りだろう/究極の茨城弁と言えそうな言い回し
 本茨城弁集は、昭和40年前後の茨城方言を中心に茨城県全域の江戸時代まで遡る言葉を集めたものです。他県の方言との関係を重視し主要なものについては他県の方言も紹介しています。また、近年使われなくなってきた標準語や語源考察、また昭和30年代の風俗・文化等を紹介するために、合わせて標準語も掲載していますのでご注意下さい。
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