昔の茨城弁集
昭和35年〜45年頃の茨城弁集
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◆印:『土浦の方言・続土浦の方言』掲載語。■印:『土浦市史・民族編』掲載語。▲印:『茨城方言集覧』掲載語。印:新編常陸国誌掲載語。印:茨城方言民俗語辞典掲載語。印:茨城弁今昔掲載語。印:物類称呼掲載語。●印:『国立国語研究所・日本語情報資料館・電子資料館・日本言語地図・方言文法全国地図』掲載語。▼印:日本方言大辞典掲載語。印:日本方言辞典掲載語。浪花聞書掲載語。印:俚言集覧掲載語。★印:使用例とその標準語訳。黒太文字:標準語。
茨城弁 標準語訳 備考・解説・使用例
〜ろ 【助】〜(し)ろ 大辞林によると次のようにある。『この語は、東歌・防人歌などの上代東国方言に多くみられる。文末用法のうち、動詞の命令形に付く場合は、命令形の活用語尾「よ」に相当するものとみなされる。近世江戸語以降の上一段・下一段・サ変の動詞の命令形(「見ろ」「落ちろ」「受けろ」「しろ」など)にみられる「ろ」は、この語の遺存したものとみられる』。今では、標準語の口語となった東国言葉。
『称呼』には、『見よといふ事を、奥州南部にてみどうらいと云。南部の方言にてよめる歌に「見どうらい山にちとべこ雪もありこの春がいにさぶうかるべい」。此の歌の見どうらい見よやいの転語にて呼びかけたる詞なるべし。ちとべこちとばかり也。がいと云は尾張邊より東奥まての通称にて古代よりの詞とこそ聞こゆ。又べいとは可(べき)にて歌にはべらとも詠り。徂徠翁のあんべいやうもないといふは田舎詞なりとて今は人の笑ふなれど、源氏物語にも有也といへり。予考るに見よといふことを、東国にて見ろと云。又聞けよ置けよといふを、きけろ をけろと云類ひ 古く云ならはしたる詞にや。津軽にてはちてべこといふも是にをなじ。此の所の童謡に、「あまりさむさにつらひばら、山にちてべこのこる雪、なんせばぢうかいどん」。ここに云所のつらは頬にて「枕草子」頬杖(つらつえ)など云事なり(らん)。俗にほう杖なと云にひとし。なんせばぢうかいどんとはなんとしやうかいなと云事ならんか。又「万葉集」に「草まくら旅のまろ寝の紐(ひも)絶(た)えば吾(あ)が手(て)とつけろこれの針(はる)持(もし)」』とある。
この「万葉集」の歌で『まろ寝』とは丸寝のことで服を着たまま寝ること。
〜ろい 【助】〜(し)ろよ 『ラ行音』で終わる動詞の命令形。『〜ろや・〜ろよ』が訛ったもの。
ほれみろい:それ見ろ。
はいぐしろい:早くしろ。
(〜ろー) 【助】推測の助動詞 近世語。古語の『らむ』に当たる。
現代でも使っているのは、新潟・岐阜・和歌山・島根・愛媛・高知 等である。また詠嘆の『らむ』が変化した形で『ろ、ろー』を使うのは、徳島・愛媛 等である。
ろー 煙管(きせる) 『羅宇(らお)』( 煙管(きせる)の火皿と吸口とを接続する竹管。)が転じたもの。『羅宇( 煙管(きせる)の火皿と吸口とを接続する竹管。)』。ラオスから伝わったためと言う。
長塚節の『土』にも出て来る。
ろーそぐ 蝋燭、ローソク
ろーが 廊下
ろぐ 禄、禄高 濁音化。
ろぐ 物の正しいこと。まじめなこと。きちんとしていること。(広辞苑) 『陸・碌』。
ろぐ:福島。
ろぐ
◎ろく
平らな土地 大辞林には以下の解説がある。
@六・陸:
1)数の名。五より一つ多い数。む。むつ。むっつ。りく。
2)六番目。〔「陸」は大字として用いる〕
A陸・碌:
1)下に打ち消しの語を伴って、物事の正常でないこと、まともでないこと、満足できる状態でないこと、また、そのさまを表す。
ア)(「ろくな」の形で)大した(…ない)。まともな(…ない)。
イ)(「ろくに」の形で)十分に(…ない)。満足に(…ない)。
2)地面などが水平なこと。平坦なこと。また、そのさま。
3)きちんとしている・こと(さま)。
4)気分がくつろいでいる・こと(さま)。
〔「ろく」は「陸」の呉音。水平なさまをいうのが原義。「碌」は当て字〕
長野では土地が傾いていることを『ふろく』と言う。
(ろく) 静岡。
(ろくえ) 毒荏(どくえ) 静岡。アブラギリの別称。
ろぐじぞー 野辺送りの際、門と主要な辻、墓の入口に対で計6本立てるもの 『六地蔵』とは、辞書によると『六道において衆生の苦しみを救うという六種の地蔵菩薩。すなわち、地獄道を救う檀陀(だんだ)、餓鬼道を救う宝珠、畜生道を救う宝印、修羅道を救う持地、人道を救う除蓋障、天道を救う日光の各地蔵の総称。また、延命・宝処・宝手・持地・宝印手・堅固意の六地蔵とする説もある。』とある(大辞林)。
『土浦市史・民俗編』では、六地蔵の具体的な形が説明されていないが、私の記憶では、篠竹の先に提灯をつけたものだった。
ろくしゃぐ
ろくしゃく
ふんどし 『六尺褌』。ふんどしが凡そ1.8mあったのでそう呼ばれる。当時ふんどしを使っていた人は、5人に一人ぐらいだった。
ろくしゃく:神奈川。
ろくしゃぐ
ろくしゃく
六道、葬式で棺をかつぐ役の人 古い標準語の『六尺・陸尺』(力仕事や雑役に従う人夫。かごかき人足や掃除夫・賄方などにいう。)の意味が転じたもの。もともとは『力者』だったという。
ろくしゃく:神奈川。
▽ろくしゃくぼう 天秤棒 『六尺棒』。
『称呼』には『あふこ(物をになふ木なり。両はしとがりたるをいふ。):中国及四国にてあふこと云。長崎にてらこといふ。四国にてさすといふ。江戸にててんびんぼう(物をになふ木にて両の端丸くあふこと形少しかはれり)、京にてのぼうと云。越後にてかたぼうと云。奥の仙台にてかつぼうと云。遠州にてになひぼうと云。大阪及堺或四国にてあふこと云。九州にてろくしゃくぼうと云。肥後にてもっこぼうと云。』とある。これを見るとてんびんぼうのぼうかたぼうかつぼうになひぼうもっこぼうも意味は理解できる。『あふこ』こそ方言に聞こえるが、『あふこ』は実際の発音は『おうこ』であり、『負う木』の意味である。
ろくしょぐくみあい 建築の六つの職人が組織する組合 『六職組合』の意味。
ろくしょのたねおろし 5月6日のことで仕事を休む
ろぐすか
ろくすか
ろぐそご
【副】ろくに 東北系の訛。『ろくにしか』の転か?。
ろくさ:(仕事等が)雑なこと・(話などが)正確でない:新潟。
ろぐすっ
ろぐすっ
ろぐそっ
ろぐすっ
【副】ろくに、ろくろく、ろくすっぽ 『陸そっぽう・碌そっぽう・陸すっぽ・碌すっぽ』
ろくさっ:東京青梅・神奈川・山梨。
ろくさっ:静岡。
ろくさっ:ろくな:静岡。
ろくさっ:ろくに:静岡。
ろぐすっ:宮城・千葉銚子。
ろくずっ:静岡。
ろくすっ
ろくすっ
ろくそっ
【副】ろくに、ろくろく 『集覧:猿』。『陸すっぽ・碌すっぽ・陸そっぽう・碌そっぽう』
ろくすっ:群馬・東京・東京青梅・山梨。
ろくすっ:東京多摩。
ろくすっうやってねえ:ろくにやっていない:埼玉。
ろぐだ
ろぐた
ろくた
【連体】ろくな、ろくろく 『陸な、碌な』。『ろくにてある』。
よぐだごど:ろくなこと:秋田。
ろぐだごどねー
ろぐたごどねー
【複】ろくなこと無い この『ろく』はもともと『陸、碌』と書き、平らなことやきちんとしていることを表す。平らな屋根は建築用語で『陸屋根』と呼ぶ。
ろぐだに
ろぐたに
【副】ろくに、ろくろく 古語の言い回しが残ったと考えられる。
ろぐだま
ろぐたま
◎ろくたま
【副】ろくに、ろくろく 『陸たま・碌たま』。古い標準語。
ろぐだま:千葉銚子。
ろくったま:長野・山梨。
ろくでなし 意地悪な人 標準語の意味は『(「碌」は当て字) 役に立たない者。普通以下の者。のらくら者。』。
ろぐでねー
ろくでねー
ろぐでもない
ろぐでもねー
ろくでもねー
【形】ろくでなし、役立たず、のらくらもの 『陸でもない・碌でもない』。
ろくでない:宮城。
ろくてね:宮城。
ろくでもない:宮城。
ろくでもねえやつ:ろくでなし:埼玉。
ろぐと
ろぐとも
ろぐっと
ろぐっとも
【副】少しも、ろくに
ろぐどー
ろぐどーのひと
六道、葬式で棺をかつぐ人 濁音化。さらしのタスキをつけ草鞋を履く。土浦では穴掘り役も含む。
ろくどー:棺担ぎ4人と穴掘り役2人:神奈川。
ろぐどーせん 葬式の時、棺に入れる六文の銭。 濁音化。『六道銭』。
ろぐなごどねー 【複】ろくなこと無い
ろぐなし
ろぐなしぼー
ろくなしぼー
ろぐなしめ
ろぐなしめー
【形動】@▲ろくでなし、A稼ぎの無い人 @『きちんとしていない者』の意味。『集覧:久』。
A『禄無し』の意味。
ろぐに 【副】ろくに、ろくろく ろぐに:山形。
ろぐすたまに:山形。『す』は強調の助詞『し』の転。
ろぐにすわる
ろくにすわる
【動】楽に座る、胡坐をかく 『陸』(ろく)は、建築業界では水平を意味する。辞書によれば『ろく』は『陸、碌』(気分がくつろいでいること)を意味している。
『俚言』には『ろく:円より転したる辞なるべし。正字の義にや。今はろくと云は、真正の意也。又陸地をろくちといへは是より転せるにや。俗にろくに居るなと云ふは、丈六の略なるべし。平坐をとは、朝家常に称する名目也。唯最勝王経の布施を碌といふは、源秘抄に見ゆ。』とある。ここで『丈六』とは『(丈六の仏像が結跏趺坐の姿をしているところから) あぐら。』の意味である。
ろぐやさま
ろぐやまぢ
月待講のひとつ、毎月26日に行う 本来は『二十六夜様』。
ろぐろぐ 【副】少しも、ろくに 濁音化。『陸陸・碌碌』。
ろぐろぐ:宮城。
ろぐむし 子供の遊び 『六虫』。土浦ではバレーボールの玉を使ったのでドッジボールを発展させたものだと思っていたが最近ウィキペディアに新たな投稿があり、野球の変化したものとされる。やや過激なゲーム。清音ならば全国的にある遊び。一般には軟式テニスのボールを使うとされる。調べるとバットを使う場合と使わない場合があり、ドッジボールと野球のミックスゲームと考えられる。ウィキペディアでは名前の由来は明確に解説されていないが、『懐かしの遊び辞典』を見ると由来が良く解る。
『一定の距離をおいた陣地間で、守り組がボールを投げ合う。他のものは、陣地内にいる。守り組が一回投げると「一虫」、二回で「二虫」。これが、「六虫」になるまでに、他の者は陣地を離れ、他方の陣地に移動しなければならない。他方の陣地に急いで移動する間にボールでタッチされたり、六虫まで移動しないと、攻守交代。読者のSHOJIさんから解説兼感想をいただきました。そのまま転載させていただきます。(やまちゃん)私達のしていた「ろくむし」は、基本的に、攻撃側も守備側も、共に1往復で「1虫」でした。片道は「半虫」で、だから、はじめは「半虫」「イチ虫」「イチ半」「ニ虫」・・・・と進みます。守備側は、いかに早くキャッチボールでの「六虫」を完成させるかがキーで、攻撃側は、同じように走って陣地を往復し、いかに早く「六虫」を完成させるかがキーです。攻撃側が陣地を離れている間は、ボールをぶつけられると、その人間は「殺され」てしまいます。ローカルルールで「じゃまあり」の場合は、死んだ攻撃側の人間は、守備側の人間に触れない限り、キャッチボールを邪魔できることになります。また、「生きている」攻撃者も、陣地を離れているときは、「じゃま」に参加することができます。攻撃側の戦略で、「じゃま」要員と「虫」を稼ぐ要員とにふりわけたりもしました。攻守共に、「4半」まではだまっていることができます。宣言するのは「5虫」からなので、攻守ともに、それまではこっそり「虫」をつみあげます。「5虫」からは必ず宣言しなければならず、そこからの1往復がゲームの佳境となります。たいがい、ボールがぶつかった瞬間と、陣地に入った瞬間のどっちが早いかでもめます。全校生徒が一斉に遊んでいる校庭でやるので、人ごみにまぎれて、こっそり往復を続けるという、ずるいワザを使って、いつも勝利していたのは私です。 ちなみに、ロングバージョンで「12虫」というのもありました。』とある。
ろけっとうお ソウギョ
ろーじ 路地 『称呼』によると『小路(こうぢ)。京都にて称す。江戸にて横丁(よこてう)といふ(但式部小路(しきぶこうち)・藪小路(やぶこうち・浮世小路(うきよしょうち)なと呼有)。大阪及伊勢松坂にて小路(しゃうぢ)と云。勢州山田にて世古(せこ)と云。辻子(づし)。京にていふ。江戸大阪ともにろぢといふ。』とある。
『聞書』『ろうじ』が掲載されている。
ろーじ:庭園:宮城。茶室の庭園は『露地』と言う。
ろじ:裏門:静岡。
ろーず:宮城。
(ろーず) 古びた、またはこわれた商品。また、売れのこり。きずもの。 『ろうず』(古びた、またはこわれた商品。また、売れのこり。きずもの。)。
ろーず:半端者・不出来なもの:静岡。
ろーずもの:商品の損じたもの・売れ残り物:神奈川。
ろーすぐ
ろーすく
ロウソク 『集覧:多』。
ろそく:鹿児島。
ろーずねこ 野良猫、泥棒猫 この場合は『路地猫』の意味だろう。
(ろーせき) 石筆 静岡。
広辞苑に『ろうせき【蝋石】:脂肪光沢と石蝋様触感のある岩石や鉱物の総称。葉蝋石・滑石・凍石などの類。非晶質の緻密状で、化学成分は含水加里礬土(バンド)の珪酸塩。石英粗面岩質の岩石が変質したものと考えられる。』『せきひつ【石筆】:黒色または赤色の粘土を固めて筆の穂の形に製し、管に挟んで書画を書くのに用いるもの。』とある
(ろーせん) (火鉢に使う)灰かき、普通、真鍮製。 福島。
標準語では『漏箭(ろうせん):水時計の漏壺(ロウコ)に立てる、目盛を刻んだ矢。その目盛で時刻を示す。』を言う。
ろっつぉ 稲を束ねる藁 鹿島郡。『結い蔓』の意味。ここまで訛ると原型は想像も付かない。
(ろっんじり) 最後の決心 神奈川。=『どっんじり』
ろっ 放浪すること、逃げ回ること 久慈郡・常陸太田市・那珂郡。
『六法』とは古く(奈良時代)は僧兵、江戸時代には侠客の六団体を指し、本業(農業)を捨てて放浪する意味に用いたと考えられる。
江戸時代には『侠客。旗本奴。町奴。』を意味した。
また江戸時代には『ろっぽうぐみ【六方組】:江戸前期、万治・寛文の頃、江戸で威をふるった侠客の六団体、すなわち鉄砲組・笊籬(ザル)組・鶺鴒(セキレイ)組・吉屋(ヨシヤ)組・大小神祇組・唐犬組の総称。』があった。
ろっーする 【動】放浪する、逃げ回る 『集覧:久・那』。
ろーとる 老頭児、年寄り 標準語。
〜(し)ろな 【助】〜(し)な
ろなー 船の床から艪の上端にかける縄。 『艪縄・櫓縄』。
▽△ろーにん 駆け落ち 徳島でも使われる。
ろは 代金を要しないこと。無料。ただ。 「只」の字を片仮名のロハに分けていう語。
ろは:東京。
ろはだい:【ロハ台】(只タダであるからいう) 公園・遊園地などに設けたベンチ・腰掛:東京。
ろばだ 炉辺
ろーびぎ 『蝋びき』。
あ』(メンコ)の強化方法の一つ。メンコの裏にロウを垂らして重くする方法。一般には、メンコ全体を凸型にすることで、風が下に入らないようにするのが鉄則。
ろぶぢ 炉端 『炉縁』。
(ろをこ 【複】居眠りをする 静岡。
この場合の『ろ』は『艪・櫓:船を漕ぐ用具の一。』の意味。
ろん 櫓杭(ろぐい)、和船の櫓床に設ける小さな杭 『集覧:無記載』。『櫓臍』(ろべそ)。
ろん 斜視 辞書には掲載されていないが、俗語。放送禁止用語。
◎ろん 口論、論争 『論判』。
ろっ:山形・神奈川。
 本茨城弁集は、昭和40年前後の茨城方言を中心に茨城県全域の江戸時代まで遡る言葉を集めたものです。他県の方言との関係を重視し主要なものについては他県の方言も紹介しています。また、近年使われなくなってきた標準語や語源考察、また昭和30年代の風俗・文化等を紹介するために、合わせて標準語も掲載していますのでご注意下さい。
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