茨城弁 |
標準語訳 |
備考・解説・使用例 |
(い) |
− |
方言解読のための必須用語。
1)五
2)五十:ごじゅう。いそ。
3)井・堰
4)気:息(イキ)。
5)居
6)胆:胆嚢(タンノウ)。
7)猪・豬・豕:イノシシ・ブタの総称。特に、イノシシ。
8)寝:ねること。ねむり。
9)藺:イグサ科の多年草。湿地に自生。また水田に栽培。地下茎をもつ。円柱形の茎は細長く地上約一メートル、中に白色の髄がある。葉は退化し、茎の基部で褐色の鞘状をなす。五〜六月の頃、茎の先端に花穂をつけるが、その上部に茎のように高く伸びるのは苞葉。花は小さく緑褐色。茎は花むしろ・畳表、髄は灯心(トウシン)とする。イグサ。トウシンソウ。
10)蜘糸:クモの糸。クモの巣。
11)已:
・すでに終っていること。
・(「以」に通用) それよりの意。
12)以:
・時・所などの基点。…からの意。
・もって、よっての意。
13)伊:
14)夷:
・[礼記王制「東方曰夷」] 東方の未開の異民族。えびす。
・たいらげる、滅ぼす意。
・たいらかなこと。
15)衣
16)位
17)囲
18)医
19)依:(呉音はエ)
20)委
21)威
22)姨:
・妻の姉妹。
・母の姉妹。おば。
・めかけ。
23)畏
24)胃
25)為
26)唯
27)尉
28)帷
29)移
30)偉
31)異
32)彙:たぐい。同類のもの。それを集めること。また、その集り。
33)意
34)違
35)維:
・つなぐこと。
・綱。すじ。
36)慰
37)遺:(呉音はユイ)
38)緯
39)彝:
・中国で宗廟の祭に常用した銅器、すなわち鐘・鼎の類。
・人の守るべき不変の道。常道。
・則(ノリ)。常法。
40)汝:【代】(「し」と同源という。助詞「が」を伴う) 相手を低く見て指す語。おまえ。なんじ。
41)い:【助詞】
・(間投助詞) 体言や活用語の連体形の下に付いてその語を強くきわだたせる。(上代語。接尾語とする説もある) 記中「くぶつつ―石つつ―持ち」。万四「わが背子があとふみ求め追ひ行かば紀の関守―とどめてむかも」。万一○「青柳の糸のくはしさ春風に乱れぬ―間に見せむ子もがも」
・(終助詞)(ヤからエを経て、あるいはヨから転じたとされる)
・(名詞に添えて) 呼びかけを表す。…よ。浄、難波丸金鶏「コレとと様―のふ、とと様と、ゆすれど甲斐もなきがらを」
・命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える。口語では主として男が遠慮のない態度で話すとき使う。狂、萩大名「いやいや、さうもおぢやらぬ―のう」。浄、手習鑑「ソリヤ道理―な、ドリヤ」。「早くしろ―」「なんだ―」「食べるか―」
42)い:【接頭】主として動詞に冠し、語調をととのえ、意味を強める。記中「―這ひもとほり」
43)い【斎】:【接頭】忌み清め、けがれのない、神聖な意を表す。万一一「ちはやぶる神の―垣も越えぬべし」 また『い』と『え』は古くから混乱していたことが読み取れ、関東では茨城方言に代表される |
い |
五十音のア行音の第4音、え |
無理に表現すると『あぃ』『いぁ』『いぇ』『うぃ』『えぃ』となる。『い』と『え』の中間でありながら『ゆ』にも近い発音。
『い』でも『え』でもない音韻。実際は『い』と『え』の中間音で英語の【i】の音。日本語のイ段音は口蓋化するが、口蓋化していない発音と考えられる。
標準語を話す人には正しい発音が『え』の場合は『い』に聞こえ、『い』の場合は『え』に聞こえててしまう図式である。
ちなみにい段とえ段の混同は茨城弁だけでなく標準語にもあり、他の方言にもある。古くは古語の世界にもあり、古語にあるということは、日本語は何が『い』で何が『え』かを混乱している部分があることになる。
『方言と標準語 日本語方言学概説:昭和50年(1975):大石初太郎編・上村幸雄編:筑摩書房』では『イとエを区別せずエに統合』した地域として茨城を位置づけている。逆に『茨城方言民俗語辞典』では、五十音別に方言を解説しているが『エ項』を設けず全て『イ項』にまとめている。どうしてこのようなまるで正反対の見方になるのだろうか。
私は、茨城方言のイ音は確かに口蓋化していないために英語の【i】音に近いがエ【e】音は正しく発音していると考えている。また、『え』が【i】『い』音になることは頻繁にあるが、『い』が『え』になるのは極端に少ない。もし、『い』が全て『え』だとしたら、『や・ゆ・よ』は『えぁ・えぅ・えぉ』の発音にならなければならないがそのようなことはない。言い換えれば茨城県人はヤ行音を発音できないことになる。だとすれば、標準語を話す学者の先生方には【i】音と【e】音が識別できていないとしか考えられない。
ちなみに加藤正信の『方言と標準語』では『イとエを区別せずエに統合』した地域は、茨城以外に青森東部・岩手・宮城・山形の北西部を除いた地域・福島・千葉北部・栃木の南西部を除いた地域・埼玉の北東部の一部地域としている。関東圏でこれに属する地域は東関東方言の地域とぴたりと一致する。 |
◎い
△いー |
@湯、A家、B△結い、C宵、D上、E相性、F柄、G絵 |
@の発音は、標準語のいとゆの間に近い。
A辞書には、『家』を示す上代(大和・奈良時代)からの東国方言として『いひ』があるとある。何と『家』を『いい』と言うのは千年以上も前の言葉がそのまま伝わっていることになる。
視点を変えれば『家』=『い』とは囲われた場所を示す『囲』であり、シェルターでもある。茨城方言の『い・いー』とは語源を忠実に伝える言葉かもしれない。隠れる意味の『往ぬ』にも通じよう。即ち現代語の家とは『居辺(いへ:居る場所)』の意味なのかもしれない。井戸とはまさに『囲処』だともいえる。日本語は漢字を当てると一目瞭然になる典型的な例。
・い:宮城。
・じぇー:福島。何故このような訛になるかは『うぢのい・うぢいえ』が訛って格助詞が無くなって『うぢぇー』となり、さらに訛ったと思われる。
★いーさけーる:家に帰る。『えー』とも聞こえる。
B『ゆい』の逆行同化。農作業を助け合う江戸時代からの相互援助組織。
・いー:群馬・神奈川・静岡・愛知・佐渡島・長野・滋賀・山口・徳島・高知・九州・鹿児島。
・えー:神奈川。
C『宵』の逆行同化。
★いーのうぢにけーっぺ:夕方のうちに帰ろう。
D『うい』の逆行同化。
・いえ:秋田。
E『間・相』の逆行同化。
F★さぶろのいーがとれちった:シャベルの柄が取れちゃった。
G★えーいだなや:良い絵だねえ。。 |
・いー |
【動】言う、(嘘を)つく |
『ゆー』とも聞こえる。標準語のいとゆの間に近い。
★おめがそったごどいーがらあなしがおがしぐなっちゃーんだど:お前がそんな事言うから話がおかしくなっちゃうんだぞ。
★いーごどいーな:良い事言うね。
★ちぐいーんだねーど:嘘をつくんじゃないぞ。 |
・い |
【形】良い |
単音化。
★いがー:良いかい。 |
・い
◎いー |
【感】@応答・応諾、ええ、はい、A問いかけ、ええ |
『い』と『え』の間で『い』に近い発音。かなり鼻に抜ける。
実は古語の流れ。『唯(ゆい)』(応答の言葉。)は、漢音では『い』。広辞苑には『唯唯(いい):敬意を表す答えの声。「はいはい」と答える声。また、「はいはい」とさからわずに従うさま。(古く和語ではヲヲという) 「―諾々(ダクダク)」「―として従う」』と言った。
ハングルの『ええ、はい』を意味する『イエー』も同じルーツと考えられる。
現代日本語の『否』(いな、いや)は、もともと肯定を示す漢語の『唯』に反語が付いた結果と思われる。
この言葉は、英語の『yes』、フランス語の『oui』、ドイツ語の『ya』、イタリア語の『si』とシルクロードを介して間違いなく繋がっていると思いたい。
@★いー、そーぢす:ええ、そうです。
A・いー:神奈川。 |
・〜い
・〜いー |
【助】〜の家 |
=『〜え』。
★おらい:私の家。
★おめらい・おめがい:あなたの家。
★めーのい:前の家。 |
・〜い
・〜いー |
【助】〜へ、〜に |
格助詞。
標準語の口語では『あっち行って、あっちい行って』などと言うことがある。大分でも『こきーいいもんがある』(ここに良い物がある)と言う。
上代古語の基点を示す格助詞『ゆ』にも通じる。 ・〜い:群馬・東京・神奈川・八丈島・長野・大分・沖縄。どこい:どこへ:群馬。
★あそごいいんべ:あそこに行こう。
★どごいいぐんだ?:何処に行くんだい?。
★どっちーいった:どっちに行った。
★そごいー、おめがきっちゃったんだよ:そこに、お前が来ちゃったんだよ。 |
・〜い |
【助】〜よ |
終助詞。
『い』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞。『や』から『え』を経て、または『よ』から変化したとされる。感動その他の語勢を添える(広辞苑)。現代標準語では『〜かい』(軽い疑問・強い反対)を除き死語になってしまった。フーテンの寅さんが時々『そうだいな』と言う『い』と同じ。
現代語ではほとんど使われなくなって来ている。
長塚節の『土』ではしばしば『え』が使われる。京都の舞妓さんが使う『そうどすえ』が今に残る。
・〜い:〜よ:群馬・愛媛。ラ行活用動詞について、『〜らい』(〜(す)るわや)の形を取る。
★はいぐしろい(はいぐしろや・はいぐしろえ・はいぐしろよ):早くしなさい。
★いぐらするい(いぐらするや・いぐらするえ・いぐらするよ):幾らする?。
★んだい(んだや・んだえ・んだよ):そうだよ。
★ちがーいな:違うよな。
★そーだいね:そうだよね。
★だんがやっかい:誰がやるものか。 |
(〜い) |
ラ行活用動詞の活用部の終止形 |
鹿児島。
古語では『〜ゆ』に該当する。 |
・〜いー |
【形】〜易い |
『易易・善い・好い』。標準語の口語でも使われることがある。
★たべいー:食べ易い。
★はしりいー:走りやすい。
★あるぎいー:歩きやすい |
▲いぁいひ |
お灸 |
『焼火』(やいひ)が訛ったもの。『集覧:北』。 |
・いぁいぶ |
【動】歩く |
古い標準語の『歩ぶ』(あよぶ・あゆぶ)の流れ。 |
▲いぁいべ |
【複】歩こう |
『集覧:北』。 |
◎いあはい |
炊き加減の良い飯 |
『良い間(あわい)』。 |
◎いーあわい |
【複】@良い具合、A良い天気 |
『良い間(あわい)』。 |
・いあんばいだね
・いーあんばいだね
・いーあんばいだなや |
【慣】いい陽気だねえ |
− |
・いあんばいでがすね
・いーあんばいでがすね
・いーあんばいでやすね |
【慣】いい陽気ですねえ |
丁寧語。 |
・いあんべ ・いあんべー
◆いーあんべ
・いーあんべー |
【複】【形動】@出来が良いこと、A丁度良い具合、A良い天気、B良い湯加減、C良い味加減、Dいい加減(深く考えず無責任なこ) |
連母音変形。『いいあんべえ』なら江戸言葉。
・いあんべー:東京。
・いーあんべー:神奈川。
★いーあんべやってんだねー:いい加減にやるんじゃない。 |
・いーあんべだな
・いーあんべーだな |
【慣】いい陽気だねえ |
− |
・いーあんべふり
・いーやんべふり |
格好つけ、いいもの振り |
『良い塩梅の振りをすること』の意味。
★いづまでもいーやんべふりしてんなや:いつまでも格好つけているなあ。 |
・いーい |
@【複】良い絵、A【感】いいえ |
=『えーい』。
@★あやー、このあんちゃんいーいかぐごどー:あらまあ、この男の子は、良い絵を描くねえ。
A・いーい:福島。
・えーえ:青森。
★あーそーんでぃすか。いーい。とんでもねーでがんすよ。:ああ、そうですか。いいえ、とんでもないですよ。 |
・いーいー
・いーえー |
【複】良い家、言いやすい |
=『えーいー』。 |
・いーいーが |
【複】【名】良い映画 |
=『えーいーが』。 |
・いーうぢ |
@良い内、A良い家、B(家の)建物、C家の中、家族の間、D宵の内 |
− |
◆いいきび |
【複】【形動】いい気味 |
標準語だがあまり使われなくなってきた。 |
・いいすくめる |
【動】言いくるめる |
『言い竦める』。 |
・いいだしっぺ |
最初に言い出した人 |
標準語.
『言い出しっ屁』。原型は『言い出し屁(いいだしべ)』で、『最初に臭いと言い出した人がおならをした人』の意味。促音化によって濁音語が半濁音になるのは、標準語も同じである。 |
・いいたま |
人をあざけっていう語 |
やや汚いことば。『好い玉』。『玉・珠・球』自体にあざけりの意味がある。
★大した玉だ。 |
◎いーいといし
◎いーいとけん |
【慣】あいこでしょ |
この場合の『じゃんけんぽん』は、『あんしょーいし』と言う。 |
・いーいる |
【動】言い得る、言える |
★おめそーたごどいーいんのが:お前はそんなこと言い切れるのか。 |
(いーうわちち) |
【複】良い天気 |
沖縄。『うわちち』は『上つ気』の意味ではないかと思われる。
・会話例:いいーうわちちやさ。−やさやー。:いい天気だな。そうだな。この事例は擬似現代語に直すと『良い天気やさ。−いやそうやー。』のような言い方であり、西日本方言に近い。 |
・いぇ |
家 |
− |
(いえ) |
上 |
静岡。 |
・〜いぇ |
【助】〜へ |
現代語にあたる『〜へ』はしばしば『〜いぇ』と発音されたのは古語の名残りと考えられる。 |
・いぇー |
【感】はい、ええ |
− |
(いぇー) |
【感】呼びかけの言葉、やあ、よう |
神奈川。 |
・いえぅー |
【動】言う |
− |
(いぇーきんちゅ) |
お金持ち |
沖縄。 |
◆いぇーごめ |
くず米 |
『いぇー』は『間または合』であり熟しきっていない意味。 |
◆いぇーさかずき |
三々九度の盃 |
『合杯・合盃・相盃』の意味。 |
・いぇーさづ |
挨拶 |
・いえーさち:沖縄。 |
・いえし
●いぇーし |
お灸 |
『焼火』(やいひ:お灸)が訛ったもの。 |
・いぇーしばらぐ |
【副】しばらく、随分時間が経っている様 |
『あいしばらぐ』とも言う。『いぇー』は強調の接頭語で、『相』または『合』の転。 |
・いぇーだ |
【複】焼いた |
発音は『ye:da』。 |
◆いぇーっぽ |
実の入っていない稲・麦等の穂 |
『いぇー』は『間または合』であり熟しきっていない意味。発音は『ye:』。 |
・いぇーで |
【複】焼いて |
発音は『ye:di』。
・いえて:岩手。 |
□いえのこ |
同じ家門の子弟。家臣。 |
『家の子』。 |
◆いぇーばせやーした |
【複】ご苦労様でした |
『歩かせてしまいお疲れ様でした』『いっしょに急いで行って(来て)いただいて有難うございました』の意味と思われる。 |
◆いぇーびあい |
歩み寄ること |
『歩み合い』の意味。 |
(いぇーまんちゅ) |
八重山の人 |
沖縄。 |
◆いぇーもみ |
実の入っていない籾、しいな |
『いぇー』は『間または合』であり熟しきっていない意味。 |
●いえなし |
ナメクジ |
・いえなし:茨城県西央部・千葉県南央部。 |
・いえひ
●いぇーひ |
お灸 |
『焼火』(やいひ:お灸)が訛ったもの。 |
・いーえー |
言い争い |
『言い合い』。江戸言葉。
・いーえー:八丈島。 |
・〜いぇる |
【助動】〜できる |
『得る』。自発・可能の意味がある上代では『ゆ』。
|
・いえんかい |
委員会 |
『えいんかい』とも聞こえる。 |
・いえんてー
・いえんてーら |
家の人たち、家族 |
− |
・いお |
魚 |
江戸時代の俗語。古形『いを』。
・いうぉ:宮崎。
・いお:静岡・鹿児島。
・いおぐし:魚串:静岡。 |
◎いおき |
斧、小型の斧 |
『斧』(よき)の転。
語源は『@ヨコキリ(横切)の義。Aヨはヨキの下略。キは木の義。木を切るのに良きの意か。』とあり、特に@が有力とされる。 |
(いおぎ) |
囲炉裏で自在鍵を吊るす魚型の木 |
群馬。=『おーぎ』。
『魚木』の意味だが辞書には無い。『こぶな』とも言う。 |
◎〜いーおぎ |
【複】〜(日)間隔、〜(日)おき |
『間(あい)置き』の意味。東茨城郡の方言。 |
・いーおぐ |
【動】言い残す |
『言い置く』。 |
◎いーおごし |
上棟式の翌日、柱の曲がりなどを直すこと |
『家起こし』の意味。 |
(いおっ) |
遺言 |
鹿児島。自動詞・他動詞表現が曖昧な時代の言葉が残ったと見られる。『言い落つること』の略か。
・おやっの いおく みしけた:親父の遺言を見つけた。
『っの』は、所有格の助詞の『つ』と『の』が混在したことを思わせる。 |
・いーおでんぎですねー
・いーおでんきですねー |
【慣】いいお天気ですねえ |
− |
・いーおでんぎでよーがしたね
・いーおでんきでよーがしたね |
【慣】いいお天気で良かったですねえ |
− |
・いが |
イカ |
・いが:青森。 |
▲いが |
堀、用水路 |
『集覧:猿』。『井川』の意味か。
・いがわ:井戸:鹿児島。 |
・いーが? |
【複】良いかい? |
=『えーが?』。 ・いが:青森。 |
▲いがー |
【形】大きい |
『集覧:久』。 |
◎いがー |
【複】急いで |
那珂郡・新治郡。 |
・いがー
・いがー
▲いかー |
【複】行くよ |
『行くわ』の転。『集覧:真』。清音形は江戸言葉。
・いかー:山梨。 |
・いがあんちゃん
・いがーあんちゃん |
長男、上の兄さん |
『イカのお兄さん』の意味ではない。
・でっかんちゃん:神奈川。
《ちょーなんがいがあんちゃんだらじなんはたごあんちゃんがなー?!?》。 |
・いがあんまい
・いがあんめ |
【複】良く無い、良く無いでしよう |
『良くはあるまい』が訛ったもの。『イカが無い』時も同様に言う。 |
◆いがい
▲■●□△▽いかい |
【形】【古】@▲△大きい、年上の様、背が高い様、A多い、△沢山の、B甚だしい、C多すぎる、余計な |
『集覧:行・久・新・西・真・北・猿・筑・多・鹿・行・多』。=『えがい』・『えっがい』。促音形・長音形は強調語。
『方言地図』によると、関東では茨城県全域と、千葉・栃木の一部にしかないために、茨城の代表的方言と思われがちだが事実はそうではない。東京では早い時期に消滅したと見られる。東北に分布しないのが不思議である。
清音なら『厳し(いかし)』が転じた『いかい』【古】そのもの。『浮世風呂』『浮世床』にもある言葉。
『国誌』によれば江戸時代の常陸国ではすでに方言と認識されていたことになる。
『称呼』によれば、『大いなる事を五畿内近国共にゑらいといひ、又いかいと云。(中略)又いかいは、いかいものといふ時は大成事、いかい事と唱ふる時は多き事也。諸国の通称にや。四国にていかいと云は、いかいお世話、いかいご苦労などと云事のみつかふ。是も大いなる義なり。古には大なるをいかといひしと見えたり。貝原篤信は、いかいといふはいかめしいの略語ともいへり。伊豆駿河邊には、いかいとも又がんかうともいふ。上野にて野風と云、陸奥にてでっかいと云(いかいの轉語か)。仙臺にてをかると云、がいとも云(関東すべていふか)。又づないと云。安房上総及遠江信濃越後にてでこといふ。越後にては、大きし小さしといふをでこしのこしといふ。西国及四国にてふといと云。』とある。この記録は茨城県人にとっては感慨深いものがある。茨城ではかつて大きいことを『でごい・でこい』と言ったのは、周辺地域から影響を受けたのだろう。
『俚言』には『いかい:厳の転じたるにて小大の大又多少の多の意にていふ。「諺草」いかめしいといふを略していかいと云ひいっかいと云は誤りなり。』『いかいぎせい:「異本洞房語園」遊女の言葉に客人の櫂柄が間敷打見えて傾城に対し舞へ歌へといひて其一座いかつに見ゆる人をイカイギセイじゃといふ。今もって勢ひ有る人を義勢といへど、傾城共がいふギセイは底意にそしり笑ふ言葉にして所謂あることなりと。』『いかいこと:厳き事にて事の甚だしきをいふ。転じて物のあまたなる事にもいへり。ギョウサンニ又タクサンニなどの意なり。』とある。
『語源辞典』には『イカはオホ(大)と同源の可能性がある。』としている。
現代語の『でかい』はもともと『どいかい』だったのではないかと思わせる。
『方言地図』では大きい意味の『いかい』は、茨城県全域と、千葉・栃木の一部、静岡県全域と山梨県の一部、福井・滋賀県の全域と岐阜の一部、島根・山口県の一部に分布している。
@・いがい:千葉銚子。
・いかい:茨城・栃木・千葉・埼玉・東京・神奈川・新潟・長野・山梨・富山・静岡・岐阜・福井・滋賀・京都・兵庫・島根・岡山・広島・山口。
・いかさなこと:大きな事:神奈川。
・いきゃー:静岡。
・えがえ:山形。
・おーけー:鳥取・高知。
・おっきー:岐阜。俗語。
・ふとが:鹿児島。
・ふとか:長崎・宮崎。
A・いかい:茨城・埼玉・千葉・佐渡島・新潟・長野・愛知・三重・奈良・岡山・広島・山口。 |
・いがいー
・いがいー |
【複】行けば良い |
− |
・いがいあんちゃん
・いがぃあんちゃん |
長男、上の兄さん |
『大きな兄さん』の意味。 |
・いがいおせわ |
@大変なお世話、A転じて余計なお世話 |
− |
・いがいが |
栗のいが |
− |
・いがいが |
【形動】いがらっぽい様 |
東北では最も濁音化の著しいと思われる山形方言では、このような方言になると清音表現をする。 ・いがいが:青森。
・えからえから:山形。
・えかりえかり:山形。 |
・いがいごど
▼いかいこと |
@大きいこと、A多いこと、Bはなだしいこと、C大げさな話、転じてでまかせ |
茨城では多く大きさを強調する。
『日本方言大辞典』では、『厳事』と当て、『たくさん、たいへんに』の意味で東北・近畿・中国地方まで使われ、狂言記『瓜盗人』にも出て来る古い言葉とある。『方言地図』では『いかい』は、東北には無い事から早い時期に消滅したと見られる。
『広辞苑』では『いかいこと:多いこと。多いさま。』とある。
『大辞林』に『厳(いか)い事:@ だいそれたこと。たいへんなこと。A(副詞的に用いて)たくさん。』とある。 |
・いがいごど
・いかいこと |
【複】大きいねえ |
★いーんや、いがいごどいがいごと。 |
◎いーがいし |
結いで借りた仕事をのお返しをすること。 |
『結い返し』の意味。 |
・いーがいがない
・いーがいねー |
【複】言ってもかいがない。言うだけの価値がない。 |
『言ひ甲斐無し』。=『ゆーかいねー』。滅びてしまった言葉。茨城に残る。『ふがいない。意気地ない。』意味もある。 |
・いがじーちゃん
・いがいじーちゃん |
祖父 |
− |
◎いがいじっち |
祖父 |
幼児語。 |
◎いがいちょちょぺ
◎いがいちょっぱ |
大型の蛾や蝶 |
− |
・いがいてー
・いがいてーら |
年上の人たち、大人たち、背の高い人たち |
− |
◆いがいはなし
▼いかいはなし |
@大げさな話、A転じてでまかせ、ほら、B猥談 |
『日本方言大辞典』では稲敷郡の方言で『卑猥な話』としている。 |
(いがいまし) |
妻が夫より年上な事 |
福岡。『飯匙増』の意味という。 |
・いがお |
笑顔 |
− |
◎いがき |
くもの巣、くもの糸 |
『蜘蛛網』(いかき)の濁音化。新治郡の方言。笊の古形である『笊籬(いかき)』と同じルーツの言葉の可能性が高い。いずれも編んだものであるからである。
・いがき:東北・茨城・島根県隠岐島。 |
◎いがき |
@生垣、A神社や墓地の垣 |
『斎垣』((イカキとも) 神社など、神聖な領域にめぐらす垣。みだりに越えてはならないとされた。いみがき。)。『笊籬』にも通ずる。 |
(いかき) |
笊、笊籬 |
東西対立語の一つ。『いざる』とも言う。現代語の笊は『いざる』が約まったという説が有力である(大言海)。それでは『いざる』の語源は何かというと明快ではない。
『称呼』には『笊籬(いかき):いかき:畿内及奥州にていかき、江戸にてざる、西国及出雲石見加賀越前越後にてせうけと云。武州岩附邊にてせうぎ、安芸にてしたみ、丹波丹後にていどこ、遠江にてゆかけ、越後信濃上野にてぼてといふ。又江戸にてかめのこざるを畿内にてどんがめいかき、芸州にてどうがめしたみ、下野にてひらざると云。又江戸にて御膳籠といふ物を備前にてしまふぐ又小き物をこしをりと云。又関西にてめかごと云を東国にてめかいと云。或 ふご びく又こめあげざる、又其大なるをかまたきと云。』とある。どうやら笊といかき以外は形状や用途による笊の名称を指しているようである。
『称呼』によれば、江戸時代の関東の狭い地域で竹で編んだものを『ざる』と呼んだことが解る。このことから、関東の『ざる』とは、もともとは編んだものではなく桶のようなもので、そこで竹で編んだ『ざる』を『いざる』と言ったものがやがて、略されて『ざる』と言った可能性が高い。そこで樽が浮上する。
この場合の『い』とは何かと考える。イグサにたどり着く。『藺草』(いぐさ)は古くは単に『藺』(い)と言った。すなわち繊維の『維』とおなじ意味である。『経緯』の『緯』と同じ意味。織物の横糸を指す。
一方古語の『掛く・懸く』とは、『@糸・縄などをかけわたす。張る。A縄・ひもなどを他の物のまわりに渡す。B張りめぐらしたり組み立てたりしてつくる。設ける。設置する。古今。』の意味である。
『い』とは横糸が転じて結果として繊維状ののものを指し、『いかき』とはそれを縦糸に『掛く・懸く』意味と思われる。
また、くもの糸は古くは『蜘糸』(い)と言い、それを編んだくもの巣は『蜘蛛網』(いかき)と言った。そうなれば、『笊籬』も『蜘蛛網』も同源で、『いをかきたるもの』すなわち、『維懸け』なのではないか。また、亀の子笊は、『団亀笊』(どんがめざる)とも言い、関西では『どんがめいかき』と言った。『団亀』(どんがめ)とはスッポンのことである。茨城には別に『いがきかご』がある。まさに竹で『維懸けた』(編んだ)籠である。
茨城方言に残る、蜘蛛の巣を指す『いがり』は、間違いなく古代語を伝承している言葉だろう。そうなると『ざる』とはいったい何なのだろうということになる。不思議なことに古語には『ざる』は無く『いざる』である。
飯櫃を茨城では『いご・いーご』と言う。飯籠とも編んだ籠ともとれる。
別に『簣(あじか)』(土・草・野菜などを運ぶのに用いる具。竹・葦または藁などで造り、形は「ざる」に似る。)がある。『編んだ笥』の意味か。
『語源』には『ざる:@古言『いざる』の上略、A『笊籠』の音『さうり』の音転、B『魚目籠』(いさりめこ)、C『さらへ』の義か、D『湯去』』とある。門外漢の理科系の素人が見ても@以外には考えられない。
ちなみに『いざる』とは、『竹を編んでつくった器。ざる。』と広辞苑にある。当てられた漢字は現代では使われない。
・いかき:近畿・兵庫・徳島。
・いっかき:滋賀・京都・奈良・和歌山・香川。
・ゆかけ:静岡。 |
■いがきかご |
墓前に供える竹籠 |
『蜘蛛網籠』(いかきかご)かまたは『笊籬籠』の意味か。『斎垣』にも通ずる。 |
・いがぐ |
【動】@湯がく、A描く |
− |
◎いがぐなる |
【複】大きくなる |
★いーんやこのあんちゃんはいーがぐなったなやー:いやあ、この男の子は大きくなったねえ。 |
▼いがぐり |
いががついたままの栗、いがぐり頭 |
『毬栗』。 |
・いかげや |
鋳掛を業とする者。 |
『鋳掛屋』。
広辞苑に『鋳掛け:なべ・かまなど銅・鉄器の漏れを止めるため「しろめ」などをとかし込んで穴をふさぐこと。』とある。 |
・いーかげる |
【動】話しかける |
・いかける:青森。 |
・いーかげんぶし |
【形動】いい加減 |
いい加減な節がある意味なのか、唄になぞらえたものか、江戸時代に土着した武士のいい加減な農作業を言うのかは不明。 ・いーかげんぶし:千葉・埼玉・東京多摩・東京三鷹・神奈川・山梨。
・いーかげんぼっち:神奈川。 |
・いがさ |
大きさ、サイズ |
★こーたいがさのきんぎょはみだごどねー:こんな大きな金魚は見たこと無い。 |
(いかざー) |
【複】行こう |
静岡。『ざー』は元『ずら・うずらむ』と考えられる。ただし、『行かねば』の意味の『行かずは・行かずば』が残ったとも見られる。
・いかざーもの:行きましょうもの:静岡。
・いかざやい:行くことが出来る:静岡。 |
・いがさま |
いかさま、詐欺、いんちき |
濁音化。 |
・いがさま |
@どのよう、Aどんな人 |
広辞苑に『いかさま【如何様】:@どのよう。A「いかさまもの」の略。いんちき。B【副】(確信をもって推測し、また判断を強調して) きっと。いかにも。さては。なるほど。C強い意志を表して)
どうにかして。ぜひとも。D【感】(相手のことばを肯定して) いかにもそのとおりだ。なるほど。』とある。このうち茨城では@が残り、『如何なる方・如何なる様』の意味である。
@★いがさまにやったってでぎねものはでぎね:どんなにやったて出来ないものは出来ない。
Bその他。
・えがさま:まさか・如何様にしても:山形。
・えがさま:いかにも:山形。 |
・いーがし |
結いで仕事を手伝ってもらうこと。 |
長塚節『芋掘り』では『いひどり』と読んでいる。 |
(いーがしけー) |
【複】言いましてございます |
静岡。 |
・いがした
・いかした |
【複】いかにした〜、どんな〜 |
★いがしたもんだがなよー:どうしたものだろうねえ。 |
▲いがしておいでなはりやんしょ |
【複】行っておいでなさいな |
『集覧:多』。解説には『行ならいらっしゃいの意』とある。
・いかしっておいでなさい:静岡。 |
・いがしない
・いがしねー |
【複】行きはしない、行きゃあしない |
・いかしない:神奈川。 |
・いがず |
【名】たちのわるい人、【形動】たちの悪い様 |
濁音化。『いかず』。
・いがす:悪戯者・意地悪な人:神奈川。 |
・いがす |
【動】なかなかいい。気がきいている。 |
− |
◎いがす |
【動】逃がす、見逃す |
『行かせる』意味。『が』は濁音・鼻濁音 |
(いかす) |
【動】断行する |
神奈川。原型は『行きやんす』か。 |
(いかず・いかずら) |
【複】行こう、行くだろう |
長野・山梨・静岡・愛知。
『ず』は勧誘の助動詞で主に長野で、『ずら』は推測の助動詞で長野・山梨・静岡で使われる。『ず』の変形したと考えられる『ざー、ざーい』もある。『〜だら』は『ずら』が変化したか、『にてあるらむ』意味とも考えられる。山梨に中間形の『どぅら』がある。
『ずら』は広辞苑に『(助動詞「らむ」が「〜うず」に接続した語「〜うずらむ」の省略された形) 推量・疑問の意を表す。〜だろう。』とある。『うず』は@予想、A推量・想像、B意志・決定の助動詞『むず』の変化したもの。このことから『ず』は『むず』が変化したものと見られる。
・いかずか:行こうか:山梨・静岡。
・いかずに:行くだろうから:静岡。
・いかだー:行こう:山梨。
・いかっか:行こうか:静岡。 |
・いーがす |
【複】良いです |
『がす』は、東北・関東共通の古い訛。近世江戸語の『がんす・ごわす・ごっす』の流れ。『よーござんす』がさらに訛ったもの。=『よーがす』、『えーがす』。丁寧語。
《質の良いガス?》。
・いがす:宮城。
・いがすか:良いですか:宮城。
・いがすべ:良いだろう:宮城。 |
(いがす・いがーす) |
【複】居ます |
静岡。元『居がんす』か。 |
(いかすか) |
【複】『行く』の反語 |
近畿。茨城では『いぐがや・いんかや』。
・いかずか:静岡。 |
◎いがすかねー |
【形】いけ好かない |
− |
・いがずぢ |
雷 |
濁音化。 |
・いがずもん |
たちのわるい人 |
− |
・いがせない
・いがせねー |
【複】行かせない |
『が』は濁音・鼻濁音。 |
・いがそー |
【形動】大きそう |
− |
・いがだ
・いかた |
浴衣 |
− |
◎いかた |
筏 |
筏の有力な語源に、@「いかし」と「いた」との結合した「いかいた(大板)」、A浮かぶ板、B浮き棚 がある。 |
◎いかたい |
【形】からい |
鹿島郡。 |
◎いかだかぎ |
筏乗り |
− |
◎いかだまる |
【複】硬直する |
愛媛では下に沈殿するを『いかたまる』と言う。 |
・いがっか
・いがっかい
・いがっかや
・いがっかよ |
【複】行けるかい? |
『が』は濁音・鼻濁音。
『行かれるか。』。現代標準語では可能形は活用形にはなく、可能動詞に変化してしまっているが、この表現はむしろ古語に由来し、助動詞『れる』を伴ったもの。
・いかっか:行こうか:山梨・静岡。 |
・いがっかい
・いがっかや
・いがっかよ |
【複】行けない |
『が』は濁音・鼻濁音。 反語。
★いがっかやー:行けないよ。 |
(いかっか) |
【複】行こうか |
山梨・静岡。
元『行かぬか・行かんか』か。 |
・いがつぐ
・いかつく |
【動】@いかつい格好をする、Aむかつく、いらつく |
@は『いかつい』の動詞化・濁音化。
A大辞林では新語扱いになっている。 |
・いがっしゃい
・いがっしょ
・いがっせ
・いかっせ
・いがっせよ
・いかっせよ
・いがんしょ
・いかんしょ |
【複】行ってらっしゃい、行って下さい |
『が』は濁音・鼻濁音。『行かしゃれ・行かさしゃれ』。
・いがせー:行きなさい:福島。
・いかっしゃい:静岡。
・いかっしゃれ:長野・佐賀。
・いがっせ:福島。
・いかっせ:神奈川。
・いがへ・いがへや:宮城。
・いがんしょ:福島。 |
◆いがった
・いがっちゃ |
【複】良かった |
典型的な東北系の訛り。
・いがった:福島。 |
・いがったなや |
【複】良かったねえ |
・いがったなや:宮城。 |
・いがっちゃ |
【複】行くことが出来た、行けた【複】行けた |
『が』は濁音・鼻濁音。
★あさだらいがっちゃのになんでおめはいがながったんだー:朝なら行けたのにどうしてお前は行かなかったんだい。 |
・いがっと |
【複】行けるよ |
『が』は濁音・鼻濁音。=『いがれっと』。
★おめーいがっか−いがっと:お前は行けるかい−行けるよ。 |
・〜いがっぺ
・〜いがっへ |
【複】〜したら良いでしょう |
半濁音は濁音で発音されることがある。 |
◆いがっぺ
◆いがっぺー
◆▲■いかっぺ
◆いかっぺー
・いがっへ
・いがっへー |
【複】@いいでしょ、A行けるだろう |
半濁音は濁音で発音されることがある。『集覧:北』。原型は『良かるべし』。
@・いがっぺ:千葉。
・いがべ:青森。
・いーだんべ:埼玉。この表現は茨城でも使われるが古い言い方。
★いがっぺなはー:もういいだろう。
★いがっぺよ・いがっぺや:いいだろう。 |
・いがっぽい |
【形】いがらっぽい |
半濁音は濁音で発音されることがある。 |
・いがな
・いがな
・いっがな |
@【連体】どんな、A【副】どうしても |
『如何な(いかな・いっかな)』。
@・いかな:静岡。
・いけな:どのような:宮崎。
・いけんこげんでん・いけんでんこげんでん:どうでもこうでも:鹿児島。
A・いかなまつ:いかにもまあ:鹿児島。
・えっかな:山形。えっかなきくもんでなえ。
★いっがなしょーぢしねー:どうあろうとも承知しない。 |
・いがないがな |
【副】なんのなんの、どうしてどうして |
古い標準語の濁音化。 ・いがないがな:青森。 |
・いーがな? |
【複】いいかな |
濁音化。=『えーがな』。 |
・いがない |
【複】行かない |
『が』は濁音・鼻濁音。 ・いがない:群馬。が行音の濁音化のルールによるのではなく、本来は『いがない』と発音すべきところを、群馬には鼻濁音が無いために濁音となっていると考えられる。 |
・いがない
・いかない
・いがねー
・いかねー |
【形】良くない、いけない |
★『土』:さうだが、それもどういふ筋(すぢ)の錢(ぜに)だか分(わか)らないがそりや使(つか)っちゃいかないんだらうさね。茨城の上流階級の言葉。 |
(いかないきゃー) |
【複】行かないか |
静岡。 |
・いがないちゃった
・いがねーちゃった
・いがねーちった |
【複】行くのを忘れちゃった、行かないでしまった |
『が』は濁音・鼻濁音。
★いんや、わりーごどしたなやー、いがないちゃってー:やあ、悪いことしたねえ、いかないでしまって。 |
・いがなくてもいー
・いがなくともいー |
【複】行かないで良い |
『が』は濁音・鼻濁音。
・いかんともいー:宮城。 |
・いがなごった
・いがなごどだ
・いがなごんだ |
【複】どうした、どうしたの、どういうこと |
− |
・いがなごっても
・いがなごどでも
・いがなごんでも |
【複】どうしても、どんなことがあっても、どんなことでも、どんなにしても |
・いかなこて:まさか・よもや:鹿児島。
・えがなごんだて:山形。関西方言を思わせる。
・えがなごどにも:山形。 |
・いがなごど
▼いかなこと |
【複】どんなこと |
・いけなこつ:鹿児島。 |
・いがなして
・いがにして |
【複】いかにして、どうして |
・いけんしてん:鹿児島。 |
・いがなすっか
・いがなすっかい ・いがなすっかや
・いがにすっか
・いがにすっかい
・いがにすっかや
・いがなすっぺが
・いがなすっぺがい
・いがなすっぺがや
・いがにすっぺが
・いがにすっぺがい
・いがにすっぺがや |
【複】どうしようか |
・いけんすかい:鹿児島。 |
・いがなすれば
・いがなせば
・いがなせーば
・いがにすれば
・いがにせば
・いがにせーば |
【複】いかにすれば、どうすれば |
− |
・いがなすんだ
・いがにすんだ |
【複】いかにするんだ、どうするんだ |
・いけんすけん:鹿児島。 |
・いがなる |
【複】どんな |
=『いがな』。 |
・いがに
・いっがに |
【複】如何に、いかに |
− |
(いーがに・よいがに) |
【複】良い様に |
長野。 |
・いがにが |
【複】どうにか |
− |
・いがにがして |
【複】どうにかして。 |
− |
・いがにして |
【複】@どのようにして。Aどうにかして。 |
『如何にして』。 |
・いがにも
・いっがにも |
【副】いかにも |
良く使われる言葉。
・がにも:静岡。静岡でもかつてはカ行音の濁音化があった事を示している言葉。 |
・いがね
◆▲いがねー |
【複】行かない |
『が』は濁音・鼻濁音。『集覧:西・筑』。
・いかなー:山梨。『行かぬわ』の意味か。
・いがね:宮城。
・いがねー:福島・群馬。
・いがはねぇが:行きませんか:福島。『行きなはらぬか』。
★いがねが・いがねが・いがねーが・いがねーが:行かないかい。
★いぐがいがねがしんね:行くか行かないか(なんて)知るかい。
★おらいがねはー:俺はもう行かないよ。 |
◎いがね
◆いがねー |
【形】良くない、いけない |
『集覧:西・筑』。単に『良くない』が訛ったのではなく標準語の『いける』(することができる、特にうまくすることができる、相当のものである、よい、うまい)の否定形と思われる。
・いーかねー:神奈川。
★〜(したら)いがねが、〜(したら)いがねーが:〜(したら)どう?。 |
・いがねが ・いがねーが |
【複】行かないか |
『が』は濁音・鼻濁音。
・いかないきゃー:静岡。 ・いがねぇーか:福島。
・いがはねーか:福島。 |
・いがねがな
・いがねーがな |
【複】行かないかな? |
『が』は濁音・鼻濁音。 |
・いがねげな
・いがねーげな ・いがねげない
・いがねーげれな
・いがねーげれない |
【複】行かなくちゃね |
『が』は濁音・鼻濁音。
・いがねげね:宮城。 |
・いがねげいげね
・いがねげばいげね
・いがねげればいげね
・いがねげなんね
・いがねげばなんね
・いがねげればなんね |
【複】行かなくちゃならない |
『が』は濁音・鼻濁音。『ね』は長音形もある。 |
・いがねーど |
【複】@行かないよ、A行かないそうだ |
『が』は濁音・鼻濁音。 |
・いがねのがな
・いがねーのがな |
【複】行かないのかな |
『が』は濁音・鼻濁音。 |
・いがばがり |
【副】@どれほど。どれくらい。Aどれほどか。非常に。 |
『如何許り』。 |
◎いがはれー |
用水路の清掃 |
− |
(いかまいか) |
【複】行こうか |
静岡。
本来は、『行くまいか』(行かないだろうか)。 |
▼いがまち |
堰の上 |
久慈郡。『かまち』は川の上流の意味。 |
(いかまる) |
【動】埋まって見えなくなる、川などの水がたまって流れなくなる |
神奈川。
・いかまる:埋まる:静岡。 |
(いがまる) |
【動】みなぎる |
静岡。 |
・いがみ |
@歪み、心が曲がっていること、A敵意 |
Aは『啀む』の擬似名詞形。 |
・いがみっちらす |
【動】@啀む、A人がかみつくようにどなりたてる |
− |
・いがむ |
【動】@啀む、くってかかる、A歪む |
標準語。
@現代語では『啀み合い』程度しか使われない。
・いがむ:宮城。
・いがむ:怒る:福島。
A今では使われない。『い』と『ゆ』の混乱は茨城方言だけでなく標準語にもあることの一例。また、茨城に古い言葉が残る一例でも有る。 ・いがむ:東京・神奈川・静岡。
・べかむ:ゆがむ:佐賀。
・へがむ:ゆがむ:富山。 |
・いがめ
・いがめー |
【複】行くまい |
『が』は濁音・鼻濁音。
『新方言』には『イカメー 「行かないだろう/行くまい」;大分県の若年層で増加;元は「行きめー」が多かった(堀1994)→イカンメー,イキメッカ』とある。これは偶然の一致と見るべきだろう。 |
・いがめ |
イカ |
− |
(いかめー) |
少しばかり |
山梨。 |
(いかめー) |
【形】羨ましい |
京都・兵庫・鳥取・山口・徳島・愛媛。 |
◎いがめが ▲▼△いかめか |
【副】もう少しのところで、間一髪 |
『集覧:西・東・稲』。語源不詳。
山梨の『いかめー』と繋がりがあるかもしれない。 |
・いがめが
・いかめか
■いかめーか |
【複】@行かないだろうか、A良く無いだろうか |
@・いかまいか:行こうか:静岡。
★そーいわげにいがめが:そういう訳にはいかないだろうか。 |
(いかみがる・いかめがる) |
【動】羨ましがる |
中国・四国で使われる。四国では羨ましいを『いかめしい』と言う。 |
◎いがめつける |
【動】睨み付ける |
『啀む(いがむ)』には『@獣が牙をむき出してかみつこうとする。また、ほえたてる。A転じて、人がかみつくようにどなりたてる。くってかかる。』の意味がある。現代語では『啀み合い』程度しか使われない。 |
◎いがめで |
【副】もう少しのところで、間一髪 |
県北部。語源不詳。 |
◇いがめる |
【動】歪める |
標準語の中の訛り。死語。
『聞書』には大阪方言扱いになっている。
・いがめる:静岡。 |
◎いがめる |
【動】睨み付ける |
『啀む(いがむ)』の擬似他動詞形か。 |
(いかめる) |
【動】大きくする |
静岡。『いかい』の動詞形か。 |
・いがもの
・いがもん |
@にせもの。まがいもの。A(主に食べ物について) 普通と違った妙なもの。 |
『如何物』。
@・いかもの:東京。
A・いかもの:東京。 |
・いがものぐい |
常人とちがった趣味・嗜好をもつこと。また、その人。 |
『如何物食い』。 |
・いがよーにも |
【副】どのようにも |
『如何様にも』。
★あよ、おめ、そーたんだらいがよーにもなっぺな:お前ねえ、そんなんだったらどうにもなるだろう。 |
(いから) |
錨 |
静岡。 |
・いーがら |
【複】いいから |
★いーがらはっこー:いいから早く来い。 |
・いがらがす ▼いからかす |
【動】いかめしくする、いからせる |
− |
◆いーからかげん
◆いーからかん |
【形動】いい加減 |
元『よからぬ加減』の意味か。もともと現代語の『いい加減』は『良い加減』と『悪い加減』の意味があるのは、言語としてはおかしな事である。
・いーからかげん:神奈川。
・いーからかん:群馬・神奈川・山梨・静岡。
・いーからん:群馬・東京多摩。『よからぬ』の意味だろう。
・いーかんまーし:神奈川。
・えーからかん:群馬・神奈川・山梨。
・ええからげん:山梨。
・えーかん:かなり:群馬・長野。
・えーかん:大概:静岡。
・えーかんぶし:東京多摩。
・えーかんぺー:群馬。
・えーけん:目分量:神奈川。
・えーけんぺー:群馬。
・えんけん:目分量:神奈川。 |
・いがらっぺー
・いがらっぽい
・いがらっぽぽい |
【形】あくが強くてのどを刺激するような味や感じがする |
半濁音は濁音で発音されることがある。『いがらっぽい、えがらっぽい、えぐい、えごい』。
・いがらい:滋賀・奈良。 ・いがらっぺー:群馬。
・いがらぽい:神奈川。
・えがらえ:山形。 |
・いーがらよりいもがら |
【慣】諺の一つ。家柄だけでは役に立たない意。 |
出島村。『家柄より芋幹』の意味。
『芋幹』とは、『サトイモの茎、すなわち葉柄を日に乾かしたもの。秋に収穫し食用とする。ずいき。』のことで、昔は食用としたが、粗末な食材であるから、『家柄より芋幹の方が価値がある』という例え。 |
・いがり |
錨 |
・いから:静岡。 |
●▼△いがり |
くもの巣、くもの糸 |
『蜘蛛網』(いかき)に通ずる言葉。くもの糸は古くは『蜘糸』(い)と言った。『蜘糸』を『繋く・構く』意味か。県下では久慈郡・那珂郡・勝田市・東茨城郡・新治郡・稲敷郡の方言。
網の類を『すがり・すかり』と言う。『す』には『巣』、『簀』(すのこ)、『簾』(すだれ)があるようにいずれも編んで作ったものである。
『いがり』の『がり』は『すがり』の『がり』と同じ意味と考えられる。
『日本方言大辞典』では、『い』は糸の意味とあり、また類似方言が全国に分布する。
・いがき:東北・茨城・島根県隠岐島。
・いがり:茨城・熊本。 |
◎いがり |
稲刈り前に田圃の周囲2m巾程度の稲を刈り溝を掘って水を抜くこと |
県北部。 |
◎いがり |
オイカワ |
− |
・いがる |
【動】@埋めてある、A生けてある |
『埋かる』。濁音化。
・いかる:山梨・静岡。 |
・いがる |
【動】怒鳴る、荒れくるう |
30年代の言葉。『怒る(いかる)』。 |
(いかる) |
【動】あふれる |
静岡。
古語に『怒る:水面がもりあがり、水があふれる。』がある。 |
・いがる
・いーがる |
【動】良いと思う、嬉しがる、得意になる |
『善がる、良がる』(よがる)の転。 ・いがる:青森。 |
・いがれね
・いがれねー |
【動】行かれない |
『が』は濁音・鼻濁音。
・いかれん:山梨。『行かれぬ』。 |
・いがれぼんぢ
・いがれぽんち |
いかれた男 |
『いかれぽんち』。
広辞苑には『(ポンチはボンチ(坊ち)の転) いかれた男。ふぬけな男。』とある。
・いがれぽんち:宮城。 |
・いがれる |
【動】駄目になる、故障する、壊れる |
濁音化。 |
・いがれる ・いがれる |
【動】行ける |
『が』は濁音・鼻濁音。
★いがれっと:行けるよ。
|
・いがれる ・いがれる |
【動】先を越される、死んでしまう |
『が』は濁音・鼻濁音。『行かれる、逝かれる』。 |
◆いーがわるい
◆いーがわりー |
【複・形】うまが合わない |
『間が悪い』意味。古くは『あぇーがわりー』『いぇーがわりー』。 |
◎いーかん |
【副】しばらく |
『いい加減』が詰まったものか。 |
・いーかん |
【形動】いい加減 |
『良い勘』の意味か。
・いーかん:随分:静岡。
・いーかんまーし:神奈川。 |
・いがん |
【複】如何に |
・いけ:鹿児島。 ・いけん:鹿児島。 |
(いかんかの) |
【複】行きませんか |
静岡。明らかに西日本の影響を受けた言葉。 |
(いかんじょ) |
【複】行きましょう |
静岡。『いかん』は古語の『行かん』、『じょ』は終助詞『ぜよ・でよ』が訛ったと見られる。遠く離れた徳島でも『でよ』を『じょ』と言う。
茨城でも、『それでね』を『そんでよ・ほんでよ』と言い、古くは『そんじよ・そんでぃよ』とも言った。ただし拗音化はしない。 |
・いがんせん
・いかんせん |
【複】どうしようにも。残念ながら。 |
『如何せん』。本来は『如何にせん』(どうしよう。どうしようもない。)で反語の『や』が略されている。 |
・いがんない
・いがんに
・いかんに
・いがんにぇ
▲いかんにえー
・いがんね
・いかんね
・いがんねー
■いかんねー |
【動】行けない |
『集覧:稲・新』。『が』は濁音・鼻濁音。『行かれない。』。現代標準語では可能形は活用形にはなく、可能動詞に変化してしまっているが、この表現はむしろ古語に由来し、助動詞『れる』を伴ったもの。
『いがんにぇ、いかんにえー』は『行かれぬえ』を思わせる。 |
・いがんべ
・いがんべー
・いかんべ
・いかんべー |
【複】良いだろう |
高齢者言葉。本来は『よかんべー』。清音形は関東方言。
・いがんべ:宮城。
・いかんべ:栃木・群馬。 ・いがんべない:良いだろうな:福島。 |
・いがんめ
・いがんめー |
【複】良くない |
よくあるまい→よくあんめえ→いくあんめ→いかんめ→いがんめ。
★あんではいがんめが:あれでは良く無いだろうか駄目だろうか。 |
・いがんめ
・いがんめー |
【複】行けないだろう |
『が』は濁音・鼻濁音。いかれまい→いがれめ→いがんめ。
★そおたこきたねふぐではいがんめど:そのような、薄汚い服では行けないそうだ。 |
・いぎ |
@駅、A往き、B息、咳、C意気、D空気、E生き、F益、G池、H雪 |
@★ちぢーらいぎいぎ:土浦駅行き。 |
▲□いき |
@駅、A△咳、B空気、C□益、D▲池、E雪 |
A・いき:鹿児島。
・いきでせ:息苦しい:鹿児島。
D『集覧:無記載』。
E・いき:長野。 |
◎いぎ |
湯気 |
『民俗』では『息』と当てている。
・いき:宮城・長野・静岡。
・いぎり:福井。
・いきり:富山・石川・鳥取・岡山・山口。
・えき:福島。 |
・いーき |
好い気持ち、好い気分 |
『好い気(いいき)』の意味。標準語では『好い気がする』(好いと思う)という語法の他は、『独り善がりで他人に気を使わないこと。』の意味で使うが『好い気持ちがする』の意味ではなぜか使われない。ところが『悪い気がする』『嫌な気がする』ではそのままの意味で使われるのは面白い。
★いーきしねー:好い気分ではない・満足できない。
★そんではいーきしねーべ:それでは好い気持ちはしないだろう。 |
・いぎ〜
・いき〜 |
【接頭】罵倒の接頭語 |
清音形は広辞苑掲載語。『生き』。
『俚言』によると江戸時代には罵倒語に『生き』『死に』の接頭語をつけたという。『生きずくしょうめ・生きだわけ』(生き畜生め・生きたわけの意味)、『しゅずくしょうめ・しにたわけ』(死に畜生め・死にたわけ)等。また接尾語『め』を付けて『がっきめ・あはうめ・ふんちうめ』(餓鬼め・阿呆め)等。多くは名詞に付く。一方『〜いけ』は形容詞や形容動詞につく。ちなみに、『〜いけ』の項を見ると『いけ:生はいきに収む。(中略)又いましめ言詞也。いけぞんざい、いけすかぬ、いけずうずうしい、いけふとい、いけしゃあしゃあ、いけ真字な、いけありがたい、いけやかましい、いけどうよく、いけこづらのにくい、生憎上の数語皆生憎の生と同しきか。「奴俳諧」月花をいけずくにうは詠いり。』とある。つまり江戸時代にはもともと『生き〜・死に〜』があり、『いけ〜』が生まれた一方、『生き〜・死に〜』が廃れていった図式が見えてくる。
佐藤鶴吉の『近松の国語学的研究』でも、もともとは『いき』で後に『いけ』になったとある。
広辞苑に『生き:卑しめののしる意を表す。「―かたり」「―畜生」』『死に:ののしる意を表す。「―畜生」』とある。
沖縄の若者言葉に『しに疲れた:非常に疲れた』があるという。
・しにうそ:虚言:長野。近世語か。 |
◎いぎあい |
@会うこと、A面会、B出会い |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。『行き会う』の名詞形。『行合い』。標準語では普通他の言葉との複合語をとる。 |
・いぎあー
◆いぎあう
・いきあう |
【動】@出会う、行き会う、A会う |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。単に『出会う』意味でも使われた。標準語世界では、『行き会う』を使う人は高齢者で、普通は『偶然会う』『出会う』を使う。
・いぎあう:宮城・千葉。
・いきあう:岩手・栃木。
・いぎある:青森。
・いきおう:山梨。関西方言に近い音便。
・いぎゃう:山形。
・いきやう:山形。
・いぎやる:青森。
・いけぁる:秋田。
・いこーん:沖縄八重山諸島。
・いぢあう:宮城。
・いちゃゆん:沖縄。
・いっきょう:種子島。
・いっよった:行き会った:長崎宇久島。
★いんや、ちぢーらであいだぐもねーしとにいぎあっちってよー、ひでーめさらった:いやあ、土浦で会いたくも無い人に偶然出会ってさ、酷い目にあった。
★どーだー、いぎあってみねーげー:どうだい、会って見ないかい。
★いぎあいにいぐ:会いに行く。 |
・いぎあーさる |
【動】(思いがけず)行き会う |
・いきあーさる:栃木。 |
◆いぎあし
◆いぎあし |
@出かける時、A行く途中、B出足、C竹馬 |
@いぎあしになってははーおそい:出かけるときになってはもう遅い。
Aいぎあしにでっかせだ:行く途中で出くわした。
Bいぎあしがいー・いぎあしがいー:行くのが早い。いぎあしがはやい・いぎあしがはやい:行くのが早い。いぎあしがわるい・いぎあしがわるい:行くのが遅い。
C語源不詳。 |
・いぎあしに |
【副】@行きしなに、A行く途中で |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎあだりばったり |
【副】成り行きに任せる様 |
濁音化。『行き当りばったり』。
・いきつきばった:神奈川。 |
◎いぎあな |
棺の側面に開ける錐穴 |
『息穴』の意味。 |
・いぎあらす
・いぎあれる
・いぎがあれる |
【動】息巻く |
『意気が荒れる』『息が荒れる』意味。 |
・いぎいー |
【複】【形】生きがよい |
・いきいー・いぎいー・いぢいー:宮城。
・いきさがる:鮮度が落ちる:宮城。 |
・いぎいー |
【複】【形】行き易い |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・〜いぎいぎ |
【助】@〜駅行き、A行きながら、何度も行って |
★いしょーがいぎいぎ:石岡駅行き。 |
・いぎおいごむ |
【動】何かをしようと気勢をあげる。奮い立つ。 |
『勢い込む』。
・いきおう:腹が立つ:福島。
・えぎおる:山形。『勢ふ』。 |
・いぎおいだす |
【動】元気になる、息を吹き返す、勢い付く |
『勢いを出す』意味。 |
・いぎおぼい
・いぎおぼえ |
行った記憶 |
『聞き覚え』と同じ言い方。 |
(いきが) |
男 |
沖縄。 |
・いぎがいー |
【複】【形】生きがよい |
− |
・いぎがいる |
【動】生き返る、元気になる |
『が』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎがぎ
・いぎがき |
生垣 |
・いきがき・いけがき:屋敷林:神奈川。
・うちやしき:屋敷林:神奈川。 |
・いぎがげに |
【複】行き掛けに |
− |
◎いきかご |
ニワトリを入れる竹籠 |
『生け籠』の意味か。 |
◎いぎがさがる |
【複】魚の鮮度が落ちる |
− |
(いきがーした) |
【複】行きました |
静岡。
近世語の丁寧の助動詞『がんす』を残した言葉と見られる。 |
(いきがす) |
【複】行きます |
静岡。
近世語の丁寧の助動詞『がんす』を残した言葉と見られる。 |
・いーきがす |
【複】言い聞かせる |
古語では『言ひ聞かする』と言うので古語の流れと考えられる。=『いってきがす・いってきがせる』。
・いっかす・いっかすっ・ゆっかすっ:鹿児島。:言ってきかせる |
(いきがせず) |
【複】行きましょう |
静岡。近世語を残した明治の静岡方言。
元『行きがんせうずら・行きがんせうずらむ』か。 |
・いーきがせる |
【複】言い聞かせる |
・いっかすっ:鹿児島。 |
・いぎがながい
・いぎがなげー |
【形】長生きな、長持ちする様 |
− |
(いきがはし) |
【複】行きます |
静岡。近世語を残した明治の静岡方言。 |
・いぎがみちかい
・いぎがみちけー |
【形】短命な、長持ちしない様 |
★こんだなそーりはいぎがみちけーな:今度の総理は長持ちしないな。 |
・いぎがもれる |
【複】@空気が漏れる、A液が漏れる |
− |
・いぎがわるい
・いぎがわりー |
【複】@元気がない、A新鮮でない、B気持ちが悪い |
− |
・いきぐち |
@口寄せで生霊を寄せること、A行方不明などでまだ葬式の済んでいない霊 |
『生口』(いきくち)。
★『土』:俺(お)ら生口(いきぐち)寄(よ)せて見(み)てえんだが、幾(いく)らだんべ一口(ひとくち)は。 |
◆いぎぐね
◆いきぐね |
生垣 |
『くね』は生垣を意味するやや古い標準語。 |
◎いぎぐみ |
意気込み |
− |
・いぎくる
・いぎきる |
【動】往復する |
− |
・いぎげーり
・いぎげーり
・いぎけーり
・いぎっけーり |
生き返り |
− |
・いぎけーり
・いぎっけーり |
行き返り、往復 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。
・いぎけーり:宮城。
・いんかえり:宮城。 |
・いぎげる
・いぎげーる |
【動】生き返る、元気になる |
『げ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎごい
・いぎごえ |
@元気なこと、勢い、A息をしている音 |
@『勢い』の意味。=『いぎぼい、いぎぼえ』。
A『息声』の意味。 |
・いぎごいいー |
【形】@元気良い、勢い良い、A生きが良い |
『勢いが良い』意味。 |
・いぎごいだす |
【動】元気になる、息を吹き返す、勢い付く |
『勢いを出す』意味。 |
(いきさがった) |
【複】新鮮さが無くなった |
宮城。 |
・いぎざがな |
生きた魚、鮮魚 |
『生き魚』。 |
◎いぎさづ ▲いきさつ |
勢い |
『集覧:北』。 |
・いぎじ |
意気地 |
− |
・いぎしな |
【複】行くとき、行く途中 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。
広辞苑には『しな:(シダ(時)の転) 動詞の連用形に添えて、…の折、…しがけ、の意を表す。』『しだ(時)(接尾語「しな」の古語) …の際。…する時。』とある。
『行きしにてある(時)』『行きしたる(時)』の意味か。山形の『えぎしまに』は興味深い。
・いきしな:山梨。
・いぎしま:青森。
・いぎすな:青森。
・いきなに:神奈川。
・えぎしなに:山形。
・えぎしまに:山形。 |
・いぎしに |
生死 |
『生き死に』。 |
・いーきしねー |
【複】いい気分がしない、納得できない |
『いい気がしない』。 |
(いきしねー) |
【複】返事をしない |
神奈川。 |
・いぎじねー |
【形】意気地が無い |
『意気地』には『いきじ』の読みもある。『意気意地』『生き意地』の意味か |
・いぎすい |
息をすること |
『息吸い』の意味。 |
◆いぎすかねー
・いきすかねー
・いぎすけねー |
【形動】【形】嫌い |
『いけ好かない』なら標準語である。ところが江戸時代には『生き〜』という接頭語があったという。
・いきすかねー:東京西部。
・いきすぎ:生意気:静岡。広辞苑に『いきすぎ【行過ぎ】:知ったかぶりをすること。やたら通人ぶること。』とある。 |
(いきすぎ) |
生意気 |
静岡。
広辞苑に『行過ぎ:「ゆきすぎ」に同じ。知ったかぶりをすること。やたら通人ぶること。』とある。近世語である。 |
(いきずましー) |
【形】息苦しい |
静岡。『息詰る』の形容詞形か。『息つましい』か。 |
・いぎせぎきる |
【慣】急いで息をはあはあさせる |
『息急き切る』。 |
・いぎせぐ |
【動】息をはずます。ひどく急ぐ。 |
『息急く』。 |
・いぎたくてもねー
・いぎたくともねー |
【複】行きたくない |
近世江戸語に同じ語法の『みたくでもない』(見たくない・見っとも無い・みにくい)がある。
・いきたくでもねー:神奈川。 |
・いぎたづ |
【複】湯気が立つ |
・いきたつ:宮城。 |
・いぎたねー |
【形動】見苦しい、下品なこと |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。
『寢穢ない(いぎたない)』の転。古語では『寝穢なし(いぎたなし)』で眠りをむさぼる意味だった。古典文学でこの言葉を発見した時は感激したものである。『いじきたねえ』の短縮形説もあるようだ。
現代では意味が少し変化しているようであるが『寝穢なし(いぎたなし)』がルーツであることは間違いないだろう。
・いぎたない:行儀が悪い:静岡。 ・いぎたねー:群馬。 |
・いぎちげー
・いぎちげー |
行き違い、手違い |
− |
◎いぎづぎ
・いぎつき |
植物の物の活着 |
『活き着き』の意味。 |
・いぎつきだげ
・いぎつきたげ
・いぎつきだけ
■いきつきたけ
◎いぎぬぎだげ
◎いぎふきだけ |
棺の土葬の際、頭部の上に備える竹 |
『息つき竹』『息抜き竹』の意味。
青竹の節をきちんと繰り抜いて作る。有識者によればはこの竹を通って霊魂が出てゆくという説と、ここから死者が蘇るという説がある。墓参りの際はそこから水を注いだ。土浦市内では頭の部分に立てるが他地域では棺の中央に立てるところもあり、また1本ではなく2本の地域もあると言う。万が一生き返った時のことを考えて作ったものではないのだろうか。土葬が無くなって廃れていく。『さかさだけ』と呼ぶ地域がある。
・いきづえ:神奈川。
・いきぬきだけ:神奈川。 |
(いきつきばった) |
行き当たりばったり |
神奈川。 |
・いぎっきり |
【複】行ったきり |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。
・いっきり:神奈川。 |
・いぎっけーり |
行き返り、往復 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎっけーり |
生き返り |
− |
・いぎっけーる |
【動】生き返る |
・いっきゃがる:鹿児島。 |
・いぎづぐ
・いぎつぐ |
【動】@元気になる、A息をする、B生きている、C行き着く |
C・いきつきばった:行き当たりばったり:神奈川。 |
・いぎつぐひまもねー |
【動】息をつく暇も無いほど忙しい |
『取り付く島も無い』に語呂がそっくりだ。 |
・いぎつけ |
行ったすぐのところ |
標準語の『行きつけ(の店)』とは異なる。『行き着いたところ』の意味。 |
(いきっこなー) |
【複】行かないでいた |
静岡。そのごさらにいきっこなー:その後更に行かないでいた。 |
・いぎっこない |
【複】行くはずが無い |
− |
・いぎっこなし |
【複】行ってはいけない |
童謡『ずいずいずっころばし』で『行きっこなしよ』と言うのと同じ。『行く事無し』の意味か。 |
(いきっつく) |
【動】死ぬ、息が絶える |
山梨。『つく』は『尽く』意味。 |
・いぎってー
・いきってー |
【形動】ほてる様 |
『熱れる』の形容詞形。
★『土』:呼吸(いき)っえてんだよ。 |
・いぎっぱぐる
・いぎっぱぐれる
・いぎっぱごる |
【動】行きそこなう |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
◎いぎっぽい |
【形】勢いが良い、元気が良い |
− |
・いーきづら |
【形動】自慢げ |
『いい気面』の意味。 |
・いーきづらする |
【動】良いと言う顔をする、自慢する |
− |
・いきてー |
【複】行きたい |
江戸言葉。
・いきてー:東京。 |
●いぎでー ●いぎでー
●いぎてー
●いぎてー
●いきてー |
【複】行きたい |
典型的な東北弁の濁音化の訛。
・いぎてー:群馬。 |
・いぎでもない
・いぎでもねー
・いきでもねー |
【複】【形】切りが無い様、無駄な様子、もったいない様 |
『いぎ』は『益』の転。 |
・いぎなし |
【副】いきなり |
使う人が限られた言葉。
・いぎなし:宮城。
・いきなし:群馬・神奈川。
・いきなに:行くついでに:神奈川。 |
(いきなし) |
【複】行かないこと |
静岡。『』の意味か。 |
(いきなしっと) |
【複】行ってはいけない |
神奈川。
『行く(こと)無しそ』の意味か。『そ』は『ぞ』の古形 |
(いきなっと) |
【複】行くな |
神奈川。 |
(いきなーなよ) |
【複】行きなさいよ |
神奈川。原型は『行きなはいなよ』か。 |
・いぎなはる |
【複】行かれる、行きなさる |
『行きなはる』。『ぎ』は濁音・鼻濁音。
★はーいぎなはいよー:もうお行きなさいよ。 |
・いぎなり |
【副】@いきなり、A力任せに、力一杯、B【形動】行き当たりばったり |
標準語の『行き成り』の濁音化。
@・いぎなり・いぢなり:宮城。
・いちがい:新潟。
A・いぎなり:ものすごく・とっても:宮城。
・いきなり:ものすごく・とっても:宮城。
Bの意味は現代では使われない。
・いぎなり:投げやりにする様・遣りっぱなし:神奈川。この場合の『ぎ』は濁音か鼻濁音か不明。
・いきなり:東京都多摩・神奈川・山梨。
・いきなり:ふしだら:神奈川。
・いきなり:乱雑な様・だらしない様:静岡。 |
・いぎなりほーだい
・いぎなりほーでー |
【形動】行き当たりばったり |
『行き成り放題』。 |
(いーきに) |
【副】直ぐに |
静岡。 |
・いぎにい
・いげにい |
生け贄 |
− |
◎いぎぬげ |
@行ったきり帰ってこないこと、A行ったところからさらに遠いところに回ること |
− |
◆いぎのみ |
噛まないで飲み込むこと、一気に飲むこと |
=『おろのみ』。『一気のみ』の転。
・いぎのみ・いぢのみ:宮城。 |
・いぎば |
行き場 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
▲いきばい |
息を張ること、息張ること |
『集覧:多』。『勢い』の語源の一つに『イキハヒ(気暢)、またはイキハヘ(息栄)の義』がある。 |
・いぎはぎ |
息をすること |
『息吐き』の意味。
★いぎはぎくるしー:息が苦しい。 |
・いぎはぐる
◎いぎはぐれる
・いぎはごる |
【動】行きそこなう |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎはしない
・いきはしない |
【複】よもや行ったりすることは無い。 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎはしないが
・いきはしないか
・いぎはしねーが
・いきはしねーか |
【複】よもや行ったりすることは無いだろうか。行きはしないか。 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。古語のお反語表現で私の世代は使うが、今ではあまり聞かない。 |
・いぎはな |
【形動】行く早々 |
=『いぎしな』。『行き端』の意味。『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎばらいる
・いぎばられる
◎いぎばれる
・いきばれる |
【動】叱られる |
『意気を張られる』意味か。『息張る』『息巻く』『息まふ』と同源と思われる。 |
・いぎばる |
【動】@いきむ、A気張る、息巻く、力む、B威張る、C頑張る |
@『息張る』。 ・いぎばる・いぢばる:宮城。
AB『意気を張る、息を張る』意味。標準語では基本的に息む意味だが当時の土浦ではむしろ頑張る意味で使った。農作業等で力仕事が多かったからだろう。
・いぎばる:福島。
・いぎばる:でしゃばる:千葉。
・いばる:力む:群馬。
・いばる:憤慨する:栃木。
・えっけばる:山形。 |
◎いーきび |
いい気味 |
− |
・いーきびかーきびかまいだぢ
◎いーきびかっきびかまいだぢ
・いーきびだーかーきびだ
・いーきびだーかっきびだ |
子供が怪我をしたり失敗したときのはやし言葉 |
『いい気味(きび)』と『皮黍(かわきび)』の語呂を合わせたものだろう。 |
・いぎびあがる |
【動】元気になる、息を吹き返す、勢い付く |
『いぎぼい』がさらに訛ったものだろう。 |
◎いぎひっこめる |
【動】呼吸が止まる |
− |
◎いぎぶい ◆いぎぼい
・いぎぼえ
|
元気なこと、勢い、息がある |
茨城方言集覧には、旧多賀郡の方言に『いきばい』(息を張ること)がある。『息張り』のr音の脱落か、『勢い』の意味、あるいは『息生え』等が考えられるが、『勢い』は古語では『いきほひ』であり、それが転じた可能性が高い。
『勢い』の語源は『語源』に『@イキキホフ(気競)の約イキホフの名詞形。Aイキホヒ(息競)の義。Bイキハフ(息延)の義。Cイキハヒ(気暢)、またはイキハヘ(息栄)の義。Dイキは息、ホヒはニホヒのホヒと同じ活用言。Eそのものに発するイキ(活力)が、盛んに活動してあたりを覆う意。Fイキホホミ(息含)の義。Gイキテキホフ、またはイキホフ(息追)か。息つぎのはやいという意か。Hイキオヒ(生生)の義。』がある。さらに同参考に『イキドホルのイキ、イカル(怒)のイカと同源か。』とある。
この方言は、現代語の語源にも関る言葉でもある。『勢い』の『いき』は、『息』に由来するのか、『い』も『き』もかつては同じだったのかは定かではない。 |
・いぎぼいあがる
・いぎぼいがあがる
■いきぼいがあがる
・いぎぼいあげる |
【動】元気になる、息を吹き返す、勢い付く |
『勢い』を『上がる、上げる』意味。
・いきばえがあがる:福島。
・いぎぼえあげる:@息を吹き返す、A元気になる・たちなおる:千葉。 |
・いぎぼいだす
・いぎぼえだす |
【動】元気になる、息を吹き返す、勢い付く |
− |
・いぎぼったい
・いぎぼってー |
【形動】息が苦しい、狭苦しい |
『息が重たい』意味。 ・いぎぼったい:宮城。
・いきぼったい:宮城。
・えぎぼたえ:山形。 |
◎いぎぼん |
盆の時生存している親 |
『生盆』。
広辞苑に『生見玉・生御霊:陰暦七月の盆の頃、生存している父母に祝物を贈りまたは饗応する儀式・行事。また、その贈物・食物。室町時代以後の文献に現れる。生身魂。生盆(イキボン・シヨウボン)。』『生盆』とある。
・いきぼん:分家した家族が盆に本家に戻り両親に感謝する行事:神奈川。
・いきぼん:八月十五日に嫁が里帰りすること:群馬。
・なべかり:分家した家族が盆に本家に戻り両親に感謝する行事:神奈川。 |
◎いぎぼんがいし |
盆に分家などから届けられたお中元などに対する返礼 |
− |
(いきまー) |
【複】行きます |
静岡。関西言葉の影響か。 |
・いぎまぎ |
勢い、剣幕 |
『息巻く』の名詞形。 |
・いぎまぐ |
【動】息巻く |
濁音化。 |
・いぎみ |
生きている体、生きたままの肉 |
広辞苑に『生き身:生きている体(カラダ)。なまみ。』とある。
茨城では、マムシの『いぎみ』(生きている体、生きたままの肉)は万病に効くとされる。『5月・8月』『5月・8月・11月』は、『ごはっそー』と言う。『五・八・霜』に由来するという。また、5月と8月にはマムシが子を生むので、その時期はマムシに噛まれると命を失うと言われる。 |
◎いぎみたま |
盆の時生存している親 |
広辞苑に『生見玉・生御霊:陰暦七月の盆の頃、生存している父母に祝物を贈りまたは饗応する儀式・行事。また、その贈物・食物。室町時代以後の文献に現れる。生身魂。生盆(イキボン・シヨウボン)。』
・いきみたま・ぼんれー・みたままいり:分家した家族が盆に本家に戻り両親に感謝するする行事:神奈川。 |
・いぎみぢ |
@雪道、A行く道 |
− |
・いぎむ |
【動】いきむ |
『息む(いきむ)』なら標準語。
・いきみ:陣痛:長野・愛媛。
・いちむ:神奈川。カ行音がタ行音に変化するのは東北方言の特徴。 |
・いぎむ |
【動】叱る。 |
『いじる』。
★せんせーがくせーごどいぎんだ:先生が学生を叱った。 |
・いぎめど |
喉、咽頭、気管 |
息をする穴=『いき』+『めど』の意味。=『のどめど』。穴を『めど』と呼ぶのは東国方言。
江戸言葉に『けつめど』(尻の穴)がある。針孔(めど:針の穴)に由来する。
★いぎめどくるしー:息が苦しい。 |
・いーきもぢ |
@良いと思いこむ、A良い人ぶること、B良い性格の様 |
単純に『いい気持ち』なら標準語。
★ほっちのほーがいーきもぢでやっちゃーんだがらしゃーねーよ:そっちの方が良いと思い込んでやっちゃうんだからしょうがない。
★じぶんだげいーきもぢでやればいーどおもってんのが:自分だけ良い人ぶってやればいいと思ってんのかい。
★あいづあいーきもぢなやづだ:彼は性格が良い人だ。 |
・いーきもぢんなる |
【動】@良いと思いこむ、勝手にやる、A良い人ぶる |
単純に『いい気持ちになる』なら標準語。
★じぶんだげいーきもぢんなればいーどおもってんのが:自分だけ良いと思えばいいと思ってんのかい。
★じぶんだげいーきもぢんなってんだもんなー:自分だけ良い人ぶってるんだもんなあ。 |
・いぎもどり |
【複】【名】行き戻り、往復、行って戻ること |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。
★つちーらにいったけがわすいもんしていぎもどりになっちゃった:土浦に行ったが忘れ物をして直ぐ戻る事になってしまった。
=『行き帰り(いぎかえり)』。 |
・いぎもない
・いきもない ◆いぎもねー
・いきもねー |
【複】【形】@切りが無い様、A無駄な様子、B不相応だ |
『いぎ』は『益』の転と思われるがさらに古い茨城弁に『いぐいもねー』(切りが無い様)があることから『行方もない』(ゆくえもない)説も考えられる。行方が見えない程量が多い様が転じたものだろうか。標準語では『益(やく)もない』(何の利益もない。無駄である。)に当たるが『益』は『えき』とも読む。『益無し』の意味
類義語に『むぎもねー、もぎもねー』(【形】@とてつもない、A手荒い、B不相応だ、C普通ではない)がある。
《駅がないほどの田舎?!?》。 |
・いぎもなぐ |
【副】切りもなく、無駄に |
− |
・いぎもれ |
@空気漏れ、A液漏れ |
− |
・いぎゃいー |
【複】行けば良い、いきゃあいい |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎやー
◎いぎゃー
・いきやー
・いぎやう
・いぎゃう
・いきやう
▲いきやあー |
【動】行き会う |
連母音変形。『集覧:猿』。『ぎ』は濁音・鼻濁音。
『いきやあー』は『行きあい会う』を思わせる。
・いぎあう:宮城。
・いきあう:岩手・栃木。
・いぎある:青森。
・いぎゃう:山形。
・いきやう:山形。
・いぎやる:青森。
・いけぁる:秋田。
・いこーん:沖縄八重山諸島。
・いぢあう:宮城。
・いちゃゆん:沖縄。
・いっきょう:種子島。
・いっよった:行き会った:長崎宇久島。
★『土』:行逢(いきや)ったよ。そんだがお前(めえ)どんな塩梅(あんべえ)なんでえ:行き会ったよ。ところでお前どんな具合なんだい。 |
◆いぎやし |
@出かける時、A行く途中、B出足 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎやしない
・いきやしない
・いきゃーしねー |
【複】行くことこそしない。 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎやしないが
・いぎやしねーが
・いきゃーしねーが |
【複】よもや行ったりすることは無いが。行きはしないが。 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎやしないが
・いぎやしねーが
・いきゃーしねーが |
【複】よもや行ったりすることは無いが。行きはしないが。 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぎやす |
【複】行きます |
丁寧語。『ぎ』は濁音・鼻濁音。
・いきゃーす:静岡。 |
・いぎやすか
・いぎやすっか |
【複】行きましょうか |
丁寧語。『ぎ』は濁音・鼻濁音。
『やす』は、『ます。でございます。』の意味で近世の上方語で後に江戸語となった。
・いっちょういかすか:一勝負行きますか:神奈川。『神奈川』では『断行する・強く行動する』の意味で解説されている。 |
(いきゃーへん) |
【複】行きません |
静岡。関西方言に近い。
『行きはせぬ・行きやせぬ』。 |
・いぎやせんか ・いぎやんせんか |
【複】行きませんか |
丁寧語。『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
(いきやり) |
体を休める事、慰労 |
山梨。 |
(いぎゃる) |
【動】仰る |
宮城。『ぎ』は濁音か鼻濁音か不明。『言いある』意味か。 |
・いぎゃれる |
【動】息巻く |
『意気が荒れる』『息が荒れる』意味。 |
・いぎやんしょー
▲いきやんしょー
▲いきやんすべー |
【複】行きましょう |
丁寧語。『集覧:稲』。『ぎ』は濁音・鼻濁音。
『やんす』は、『ます。でございます。』の意味で近世の上方語で後に江戸語となった。 |
(いきょー) |
魚を放っておく籠 |
静岡。
・いきょびく:籠。 |
・いぎよい |
勢い |
『勢い』は、『ikioi』であり、口蓋化した日本語のイ段音のために、『io』は必然的に『yo』に聞こえてしまう。 |
・いぎよいだす |
【動】元気になる、息を吹き返す、勢い付く |
『勢いを出す』意味。 |
・いぎよいよぐ |
【副】勢い良く |
− |
・いぎよぐ |
【副】勢い良く |
『勢い良く』の短縮形というより『意気』+『良く』の方がびったりする。古語の『勢い』は『いきほい』である。 |
・いーぎょおん
・いーぎょん
・いーぎょーん |
夏祭りの初日 |
=『よいぎょおん』。『宵祇園』の意味。
『祇園』は、『gion』であり、口蓋化した日本語のイ段音のために、『gion』は必然的に『gyon』に聞こえてしまう。
《祭りにも良いのと悪いのがあんの?!?》。 |
(いきょびく) |
魚籠 |
静岡。『生き魚魚籠・生け魚魚籠』の意味だろう。 |
(いきらさん) |
【形】少ない |
沖縄。 |
・いぎりぎる
・いぎれぎる
・いぎれきる |
【動】息を切らす、頭に血がのぼる |
− |
・いぎり |
いきれること、むれること、ほてること |
『熱』(いきり・いきれ)。現代では『いきれ』と発音する。 |
◎いぎりまげ
・いぎれまげ |
暑気あたり |
− |
・いぎりひっこむ |
【動】暑気あたりする |
− |
・いぎりょー |
生きている人の怨霊(オンリヨウ)で、祟(タタリ)をするといわれるもの。 |
『生き霊』。 |
・いぎる |
【動】生きる |
・えぎる:山形。 |
・いぎれぽんち |
いかれぽんち |
半濁音は濁音で発音されることがある。 |
◎いぎれ
□いきれ |
いきれること。むれること。ほてること。その熱気やにおい。 |
『熱』。標準語では単独で使われることはない。 |
◎いぎれおする
◎いぎれする
▲いきれをする |
【動】暑気あたりする |
『集覧:無記載』。 |
◎いぎれひっこむ ▲いきれひっこむ |
【動】暑気あたりする |
『集覧:久』。 |
◆いぎれる ■▲▽いきれる |
【動】@▲むしむしして暑くなる、A頭に血がのぼる、夢中になる、いかれる |
『熱蒸れる(いきれる)』。『熱る(いきる)』の状態形。『集覧:久・新・真・北・猿・筑・多・稲』。現代ではあまり使われることはないが名詞形の『草いきれ』はよく使われる。
『熱る(いきる)』(むし熱くなる。ほてる。いきれる。いきまく。りきむ。)は現代では西日本でしか使われない。
@・いきれる:佐渡島・静岡。
A・いきれる:怒る:千葉香取市。
Bその他。
・いぎれる:暴れる・大騒ぎする:千葉。
・いきれる:調子に乗ってはしゃぐ:長野。 |
(いきーわ) |
【複】行こう |
静岡。
関西では『行きなさい』を『いきーな・いきーや』などと言うが、この場合の『わ』とは繋がらない。この場合の『わ』は、助詞『ばや:…としたら…だろうか。』と考えられる。『ば』は元『は』だったとされる。
そうすると、この『いきーわ』は『行ったらどうだろう』の意味だったと考えられる。 |
◎いぎわな |
小鳥を生け捕りにする罠 |
『生き罠』の意味。 |
・いぎわり ・いぎわりー
・いぎわれ
・いぎわれー |
【複】@元気がない、A新鮮でない、B気持ちが悪い |
@A・いぎわれ:宮城。 |
・いぎわれおごす |
【動】苦しくなる、息がつらくなる |
『息が割れたことが起きる』意味。 |
・いぎわれる |
【動】苦しくなる、息がつらくなる |
『息が割れる』意味。 |
・いぎわる |
【動】苦しくなる、息がつらくなる、一生懸命やる |
『息を割る』意味。 |
(いきんげー) |
【複】行け |
神奈川。
『げ』は濁音か鼻濁音か不明。濁音ならば『行かんかい』、鼻濁音なら『行くがええ』か。 |
(いきんげーるか) |
【複】行かれるか |
静岡。『げ』は濁音か鼻濁音か不明。『行くが得るか』か。 |
(いきんさい) |
【複】お行きなさい |
静岡。『行きなされ』。関西方言に近い。 |
(いきんさらんか) |
【複】お出でなさりませんか |
静岡。『行きなさらぬか』。 |
◆いぐ
◆いぐ
▲いく
|
【動】@▲行く、往く、A逝く、B帰る |
『集覧:無記載』。
『いぐ』は目下の調査結果では宮城・群馬・神奈川中央部で使われる。『ぐ』は濁音・鼻濁音の区別は大半の方言書では識別されていないが、一般的には鼻濁音である。ただし、群馬は鼻濁音が無い地域とされる。神奈川にあったということは、かつては関東一円で使われていた可能性が高い。
広辞苑には『ゆく:(奈良・平安時代からイクと併存。平安・鎌倉時代の漢文訓読ではほとんどユクを使い、イクの例はきわめて稀)』とある。ただし万葉集には『いく』が多く見られる。これによれば、東国言葉が多く掲載された万葉集には『いく』が多く見られ、その後『ゆく』が長く使われたが、現代では、東京方言が標準語になったことから、『いく』の方が多く使われる図式が見えて来る。
ちなみに一般的な古語辞典では『行く:@良い、A承知できる』『生く:
iku 』とある。 当時の茨城では概ね併用されたが、『ゆく』の方が丁寧な言い方の印象があった。『言う(』と似た関係にある。現代語では、『行く』は『いく』が多用され、何故か『行く年』の場合は『ゆく』が多く使われる。『集覧』で、『いく』が方言扱いされているのは、明治時代には『ゆく』が望ましい言葉として考えられていたのだろう。
『ぐ』は濁音・鼻濁音の両方があるが古くは鼻濁音である。今でも60歳ぐらいから上は『いぐ』と言う。ちなみに、『いーにいぐ』(家に行く・家に帰る)と言う。カ行で活用する動詞では、撥音化する動詞は他に見当たらないが、『いぐ・いぐ』に限って『いんべ』(行こう・帰ろう)と撥音化する言い方があるように鼻濁音の発音は古語の『往ぬ』との関係を思わせる。すなわち『往ぬべし』の意味である。『行くから』は『いぐがら』『いぐから』『いんがら・いんから』と言う。関西圏では今でも帰ることを『往ぬ』と言う。同じ音韻の『犬の子』(いんのこ)は古くは、『(イヌノコの音便)』とあり、『いぬ』は『いん』に撥音化し得るが『行く』は撥音化し得ない。ちなみに県下には『行く』を『えぬ』という地域があり、明らかに『往ぬ』の流れの言葉であり、それが『いぐ』に訛ったと考えられる。ちなみに群馬では『いぬ』が残っている。そのほか『帰る』滋賀・奈良・広島・香川・愛媛でも使われ、岡山・宮崎では『いぬる』と言う。
茨城県下で『いぐ』と鼻濁音になることが紹介されている文献は、私の知る限り『土浦の方言』しかない。また、茨城方言のネットサイトでは、鼻濁音を表記しているサイトは無い。そのため長く土浦地域の特徴かも知れないと思っていたが、茨城放送の『茨城弁よかっぺ教室』で紹介されている。
余談だが、 英語では相手に対して『行きます』は『I will come.』と言う。ただし、日本人は、相対してかつ、相手の場所にいる場合は『来ます』と言うが、電話や当該地から離れている場合は『行きます』と言う。英語では、距離に関係なく『come』を使う。どうやら、日本語の『行く』と英語の『go』、『来る』と『come』にはニュアンスの違いがあるらしい。
英語の『go』は、『往く・往ぬ』=『死ぬ』に近く、遠くに移動する意味らしい。目指す方向があってそれを目指して行く意味に近い。
また、『move』は日本語の『うつる』に近いが咄嗟の時には『退く』=『のく』より『どく』が使われる。
英語では目の前に居てすでにベッドにいる場合の相手人に対しても『Go to bed.』と言う。この違いは、『寝る』という言葉の行為や解釈によるものと思われる。日本語の『退け』に当たるのは『move』であり、『行け』でもある。
『浪花聞書』によれば、『いにます・いなう・いなんか 何れも帰なり往也』とあり、『往ぬ・去ぬ』は広辞苑にも『行く・来る・帰る・死ぬ・過ぎ去る』((近世後期、上方では四段に活用。関西方言に残る))の意味である。一方、『行く(いく)』は、近世に現れそれ以前は『行く・往く(ゆく)』である。
勧誘形の茨城方言の『いんか・いんが』は、『往ぬか』又は『いぐか・いぐが』が転じる可能性は高いが『いぐか・いぐが』からは転じにくいと考えられる。
これらから、東北から関東で使われる『いぐ』は『往ぬ』が『行く』の影響を受けて生まれた方言と考えられる。また、『ぬ』と『ぐ』の舌の位置はかなり近いのも事実である。
・いぐ:茨城・埼玉・群馬・新潟。
・いぐ:青森・秋田・宮城・福島・茨城・千葉・栃木・神奈川。神奈川では中央部で使われる。
・いげ:行け:福島。
・いげる:行ける:神奈川。
★しょーぼーだんちょーにいげっついわれだらいぐしかあんめー−んだらいぐしかあんめ:消防団長に行けって言われたら行くしかないだろう−なら、行くしかない。
★そろそろいんか?−んだな、はーいんべ:そろそろ行こうか?−そうだな、もう行こう。
★おめはいがめ?−おらいぐど:お前は行かないんだろう−俺は行くぞ。
★ねーちゃんねーできょーしーぎだがら、したぐしてみんなしていんべよ:姉さんの家で今日結婚式だから、着替えて皆で行こうよ。
★おめがいがねんだらおれがいんから:お前が行かないなら俺が行くから。
★どごへもいぎだがねー:どこにも行きたくない。 |
・いぐあんめ |
【複】良くない、良く無いでしよう |
『良くあるまい』。 |
(いぐい) |
杭 |
古語に『ゐぐひ(堰杙):ゐせきに並べて打つ杭』がある。また、『斎杭(いくひ):斎(い)み浄(きよ)めた杭』もある。
・いんぎ:鹿児島。
・いんぐい:熊本。
・えぐい:岩手。
・ゆぐい:池や川端の水と陸の境に立てた杭:高知。 |
◎いぐい |
居候 |
『居食い』の意味。
・いぐい:働かずに食っていくこと:静岡。 |
◎いぐい |
【形】えぐい、いがらっぽい |
− |
・いぐいぐ |
【副】@よくよく、程度の甚だしいさま、Aうんざり、散々、B台なし、目茶目茶の様、B行く行く(ゆくゆく) |
=『よぐよぐ・ゆぐゆぐ』。
『よくよく』は辞書には、『@よくよく【翌翌】:年月日などに冠して、次のまた次の意を表す語。』、『よくよく【翼翼】:Aさかんなさま。多いさま。B整っているさま。C敬いつつしむさま。また、びくびくするさま。』、『よくよく【善く善く・能く能く】:D念には念を入れて。十分に手おちなく。Eきわめてはなはだしいさまを表す。極度に。F万(バン)やむを得ない時にいう語。よっぽど。よくせき。』とある。
『郁郁(いくいく)』は、『G文物の盛んなさま。文章の格調の高いさま。H香気の盛んなさま。』とある。
『幾幾(いくいく)』は、『Iいくつもいくつも。』とある。
『行く行く(ゆくゆく)』は『J行く末。やがて。将来。K(副詞的に) 行きながら。』とある。
茨城方言は、これらをほとんど混同していると思われる一方、古代には識別されていなかった言葉が残った可能性がある。 |
・いぐいっか |
いつ何日、何月何日 |
『幾幾日』の意味。
★あやー、いぐいっかにいったんだっけべがー:あれ、何月何日に行ったんだっけ。 |
・いぐいふめー
・いぐえふめー |
行方不明 |
− |
◎いぐいも |
サトイモ |
『えぐいも』。 |
・いぐいもねー |
【複】【形】切りが無い様、無駄な様子、もったいない様 |
『行方もない』(ゆくえもない)意味。 |
・いぐが
◆いぐがー |
【複】行こうか |
『行くかい』。『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぐがいがめが |
【複】@行くか行くまいか、Aもう少しのところで |
『行くか行くまいか』の意味。『ぐ・が』は濁音・鼻濁音。 |
◎いぐがす |
【動】動かす |
− |
・いぐがら |
【複】行くから |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぐぐ
・いぐく
▲いんぐく |
【動】動く |
『集覧:多』。『いごく』が訛ったもの。
・いぬく:青森。 |
・いぐけーり
・いぐっけーり |
何度も、幾たび |
『幾返り』。
・いくかーり:静岡。
・いくっきゃーし:山梨。
・いっかーり:静岡。 |
・いぐこだねー
・いぐこだーねー |
【複】行くことはない、行く必要はない |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 ・いぐこたーねー:群馬。 |
・いーぐさ |
@言うべきことがら。話の種。また、口に出すことば。言いかた。A言い抜ける口実。B言いがかり。苦情。こごと。もんく。 |
『言い種・言い草』。
@・いーぐさ:山梨。
B・いーぐさ:東京。
★とんだいーぐさだ。 |
・いーぐさり
・いいぐされ |
難癖、言いがかり |
『言い種・言い草』か。標準語の動詞に『言い腐す(いいくさす)』(わるく言う。けちをつける。けなす。)がある。関西でしばしば『〜言いくさって』と言う。この場合は『言い腐る』である。そうなれば、『言い腐り』だろう。 ・いーぐさり:山梨。 |
・いぐじ |
意気地 |
もともとは『いきじ』。
・いくじ:山梨。 |
・いぐじ
・いくじ |
【複】何時 |
『幾時』。高齢者が使った。
・いくじ:群馬・山梨。
・いぐじぶつ:何時になる?:千葉。 |
・いぐじがん
・いぐちかん |
何時間 |
『幾時間』。 |
・いぐじがん
・いぐちかん |
行く時間 |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぐじね
・いぐじねー |
【形】【形動】意気地がない |
・いくじがねー:うっかりした・気が付かなかった:群馬。
・いくじがねー:群馬・神奈川。江戸言葉。
・いくじねー:神奈川。 |
・いぐじはる
・いぐじょーはる |
【複】意地を張る |
・いきじょーはる:神奈川。 |
(いくぜん) |
【複】行くよ |
静岡。元『行くぜよ』か。『行くずら・行こうずらむ』か。 |
・いぐだ
・いくだ
・いぐだい
・いくだい
・いぐだや
・いくだや
・いぐだよ
・いくだよ |
【複】行くんだ |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。軽い命令形の意味もある。
・いくだい:静岡。 |
◆いぐたい |
【形】@いがらっぽい、むずむずする、Aえぐい |
− |
・いーくだす |
【動】@けなす、Aすらすらと言う |
@『言い腐す(いいくたす)』の転。
A『言ひ下す』で標準語。 |
(いくたて) |
なりゆき。いきさつ。 |
近世語。
・いくたて:東京。 |
・いぐたび |
@【形動】何回、A【副】幾たびに |
『幾度』。
@・いくかーり:静岡。
・いくっきゃーし:山梨。
・いっかーり:静岡。 |
・いぐたび |
行く毎 |
『行く度』。『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぐだよ |
【複】行くんだよ |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。軽い命令形の意味もある。
・いくだい:静岡。 |
・いぐたり
◎いくたり |
【複】【古】幾人、何人 |
『いくたり』なら標準語。稀に鼻濁音で話す人もいた。『いくにてあり・いくつにてあり』。
・いくたり:群馬。
・いったい:鹿児島。 |
・いぐづ |
幾つ |
★おめらいぐづになっか−おらろぐじーいぢになっとはー:お前幾つになる?−俺はもう六十一になるよ。 |
・いぐっけ |
【複】行ったっけ |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。
★みぢばだにいだらおれのめーをあるっていぐっけよ:道端に居たら俺の前を歩いて行ったっけ。 |
◎いぐったい |
【形】@いがらっぽい、むずむずする、Aえぐい |
− |
・いぐったり |
【複】幾人、何人 |
稀に鼻濁音で話す人もいた。 |
・いーぐぢ
・いーくぢ |
入口 |
単に『入口』が訛ったと思われるが『家口』の意味も捨てきれない。 |
・いぐちかん
・いくちかん |
@何時間、A行く時間 |
Aの場合の『ぐ』は鼻濁音のこともある。 |
・いぐっつ |
幾つ |
稀に鼻濁音で話す人もいた。
★いがいのはー、はーいぐっづもねーよ:大きいのは、もう幾つも無いよ。 |
・いぐって
・いくて |
【複】良くて |
− |
◎いぐって ■いぐってー ◆いぐてー |
【形】@いがらっぽい、むずむずする、Aえぐい |
− |
・いぐっぺ |
【複】@行こう、帰ろう、A行くだろう、帰るだろう |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。
@の意味はややマイナーな言い方。 |
・いぐど |
【複】@行くぞ、A行くそうだ |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。
@・いくど:山梨。 |
・いぐない
・いぐね
・いぐねー |
【複】良くない |
=『よぐない、よぐねー、よがない、よがねー』。
『新方言』によると『イクナイ 「良くない」;埼玉はじめ首都圏の若者に広がっている新方言;東京でも若者の30%近くが使う;北関東から広がってきたもの;終止形のイイと発音のそろうイクナイの方が合理的といえる;元はヨクナイ,ヨカナイ。』とある。
・いぐね:宮城。 |
・いぐない ・いぐなや ・いぐなよ |
【複】行くなよ |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぐなる |
【動】良くなる |
・いぐなる:宮城。 |
・いぐにぢ
・いくにち
|
幾日、何日 |
現代標準語では、『幾ら・幾つ』は使われるが『幾日』はつかわれないようになった。 |
・いぐにん |
何人 |
− |
(いくのかっちゃー) |
【複】行くのか |
神奈川足柄下郡。
このような表現が関東圏の言葉に残っていたというのは驚くべきことである。
現代語に直訳すれば『行くのかだ』『行くのかである』になる。古形は『行くのかじゃ』か。 |
・いぐはが
・いぐはか |
【形動】どの程度、どれほど |
『幾捗』の意味だが辞書にはない。 |
◎いくぱか |
結い |
『いっばが・いっぱが』がさらに訛ったもの。茨城ではまれに逆促音化する。
『結い仕事』の意味。『結い捗』。 |
・いぐばぐ |
【形動】どれほど。どんなに多く。 |
『幾何・幾許』。文語には残るが日常語で使う人は高齢者だろう。
『はく(何・許)』は『計・量・捗』(はか:@稲を植えたり刈ったり、また茅を刈る時などの範囲や量。また、稲を植えた列と列との間をいう。A 仕事の進み具合。やり終えた量。)の意味に近い |
◆いぐべ
◆▲いぐべー
・いくべー |
【複】@行こう、帰ろう、A行くだろう、帰るだろう |
『集覧:新・西・水』。『ぐ』は濁音・鼻濁音。『いくべい・いくべえ』なら江戸言葉。
@・いぐべ:行こう:福島。
・いくべ:行こう:神奈川。
・いくべー:行こう:埼玉・東京・神奈川。
★はーおそぐなったがらいぐべよ:もう遅いから帰ろうよ。 |
▲いぐべや
◆いぐべよ |
【複】@行こうよ、帰ろうよ、A行くだろうよ、帰るだろうよ |
『集覧:猿』。『ぐ』は濁音・鼻濁音。
@・いくべーよ:行こうよ:神奈川。 |
・いぐぼ
・いくぼ |
笑窪、えくぼ |
・いくぼ:八丈島。 |
▲いぐみ |
@土くれのまざったもの、土にごみが混ざったもの、A冠水のあとの泥 |
『いごみ・よごみ』と同じルーツの訛り。『集覧:北』。
A・えぐみ:神奈川。 |
・いぐむがし |
どれほどの昔。多くの年月を経た昔。 |
『幾昔』。普通一昔は10年程度前を言う。『じーねんひとむがし』と言う。
★はーあそごにいったのはいぐむがしもめーだでや:あそこに行ったのはもう随分昔のことだよ。
★いぐむがしめーだったけがなや:どれぐらい昔だったけかなあ。 |
・いぐよっかはいぐ
・いぐよりはいぐ
・いぐよりはやぐ |
【複】行った途端に、着いた途端に |
『行くが早いか、着くが早いか』。『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いぐら
・いーぐら
・いぐーら |
どれ位の値段・長さ・距離・重さ・数量 |
あらゆる単位のいずれにも使われた。単独で使う場合は現代では、物の値段に限って使われるようになってきている。稀に鼻濁音で話す人もいた。長音形は強調語。
★このおまんじはいぐらだ:このお饅頭は幾ら?。
★おめのせたげはいぐらだ:お前の身長はどれくらいあるの?。
★つぢーらまでいぐらあんだ:土浦までどれぐらいの距離があるの?。
★おめのはがりはいぐらだ?:お前の体重はどれぐらいなの?。 |
(いくら) |
【複】行くだろう |
山梨。元『いくずら』か。 |
・いーくら
・いーっくら |
【副】@いいかげん、A言い合い |
@『良い位』の転。=『えーくら』。
A『言い比べ』の意味。
・いーっくら:長野。 |
・いーくらー ・いーくらう |
【動】@好きなだけ言う、A叱られる |
− |
・いぐらが
・いくらか
・いぐーらが
・いーぐらが |
【副】幾らか、少し |
稀に鼻濁音で話す人もいた。『いくらか』は最近あまり聞かないようになった。
★『土』どうした、幾らか惡いのか。 |
・いーくらかげん
・いーくらかん |
【副】いいかげん |
=『えーくらかげん』。 |
・いぐらがな |
【副】いくら分、何円分 |
★いぐらがなでもかってやっと:幾らでも買ってあげるよ。 |
・いぐらでも
・いーぐらでも
・いぐーらでも |
【副】いくらでも |
濁音化。稀に鼻濁音で話す人もいた。 |
・いぐらにつぐ |
【複・動】幾らになる、幾らの値段が付く |
清音なら古い標準語。
★いぐらについだ:幾らになった?。 |
◆いぐらほど
・いーぐらほど
・いぐーらほど |
【副】どれほど |
− |
・いぐらも
・いーぐらも
・いぐーらも |
【副】幾らも、大して |
濁音化。稀に鼻濁音で話す人もいた。 |
・いぐらもある |
【慣】たくさん有る |
標準語の『幾らも有る』という言い方は、あまり聞かなくなった。 |
(いくり) |
米揚げ笊。こめかしざる。 |
静岡。『飯繰り』の意味か。 |
◎いぐり
◎いぐりぶね |
一本の大木の中をえぐってつくる舟。独木舟(マルキブネ)。彫舟(ホリフネ)。 |
『刳り舟』。 |
◎いぐりっぽ
◎いぐりぼ |
サトイモ |
− |
・いぐる |
【動】刳る |
・いぐる:鹿児島。 |
(いぐる) |
【動】弄る |
静岡。『抉る・刳る・剔る』(相手の弱点や隠されている事実などを容赦なく突く。)意味か。 |
・いーくるげ |
【副】いいかげんに、適当に |
『良い位に』の意味。=『えーくるげ』。古い時代には、『に』を『ぎ』に発音した。この訛は、『良い位に→いーくれーに→いーくれに→いーくれぎ→いーくるぎ→いーくるげ』のような変形があったと考えられる。 |
・いーくるめる |
【動】口先でまるめこむ。 |
『言い包める』。
・いーくめる:山梨。 |
◆いーくれ
◆いーっくれ
◎いーくれー
・いーくろ
|
【副】いいかげん、適当 |
『良い位』の意味。=『えーくれ』。
★いーくれに・いーくれぎ:いいかげんに・適当に。
★いーくれやってんだねーよ:いいかげんにやってんじゃないよ。
★いーくれなおどなになってそったごどやっとごだあんめ:いい加減な大人(いい年の大人)になってそんな事するところじゃないでしょう。 |
◆いーくれかげん
・いーくろかげん
・いーくろかん |
【副】【形動】いいかげん、適当 |
『良い位な加減』の意味。『くれかげん・くろかげん』は『頃加減』が訛ったものだろう。=『えーくろかげん』。 |
・いーくれたーくれ
・いーくれちゃーくれ |
【副】【形動】いいかげん、適当 |
語呂合わせの言葉。 |
・いーくろげ
・いーくろに |
【複】いいかげんに |
『良い位に』の意味。=『えーくろげ』。 |
▲いぐわ |
鍬の代表的なもの(畑の畝作りの必需品) |
標準語。『鋳鍬』(いぐわ)。 |
・いぐんぢ
・いぐんち
・いくんち |
何日 |
『幾日』。 |
・いぐんで |
【複】行くので |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。
・いくんで:静岡。 |
・いげ |
池 |
濁音化。 |
・いげ |
湯気 |
『浮世』にも出て来るので江戸言葉と思われる。
・いげ:八丈島。 |
▲いげ |
【動】行きなさい、行け |
『げ』は濁音・鼻濁音。『集覧:北』。 ・いげ:青森・福島。
・いげ:群馬。
★はいぐいげよはー:早く行きなさいよ、もう。 |
・いげ
◎いげー
・いーげー
●いけー |
【形】大きい |
『いがい・いかい』の逆行同化。
・いけー:茨城・千葉・長野・山梨・福井。 |
・いーげ
・いーけ |
【複】良いかい? |
・いーけー:神奈川。江戸言葉。 |
・いげ〜
・いけ〜
・いっげ〜
・いっけ〜 |
【接頭】卑しめののしる形容詞・形容動詞について強調する語 |
近世以降の語で、近世前期では名詞についた。大きい意味の『厳し』にも通ずる。
・〜えげ:山形。
・えげつら:面を罵る言葉:山形。
・えげこんじょー:根性を罵る言葉:山形。。 |
◎いげーあり
◎いげーありめ |
クロオオアリ |
− |
・いげーあんちゃん |
長男、上の兄さん |
・でっかんちゃん:神奈川。 |
・いげーくぢきぐ |
【複】良く喋る、口答えする、大口を叩く |
標準語の『いけ口』の転と考えられるが『大きな口』も捨てきれない。 |
◎いーげし
◎いーげーし |
結いで借りた仕事をのお返しをすること。 |
『結い返し』の意味。
・いーげーし:群馬。 |
・いげーし |
歳の大きな人 |
『いかい衆』の意味。 |
(いけし) |
【複】行きなさい |
山梨。『行け候』の意味か。 |
・いげしゃーしゃー |
【形動】いけしゃあしゃあ |
濁音化。 |
▲いげす |
池 |
『生簀(いけす)』が訛ったと思われるが、本来は取った魚を生かしておくところ。『集覧:新』。
・いけ:井戸:長野以西。
・いけす:秋田・長野・新潟・岐阜・広島・大分。 |
・いげず |
【名】たちのわるい人、【形動】たちの悪い様 |
濁音化。 |
・いげすかね
・いげすかねー
・いけすかねー |
【形】嫌い |
『いけ好かない』の転。 ・いげすかね:宮城。
・いげすかねー:千葉銚子。
・いけすかね:東京多摩。
・いっすかん:鹿児島。 |
◎いげずぎ |
好色 |
− |
◎いげすばらい |
種井の清掃 |
− |
・いげずやろー |
たちのわるい人 |
濁音化。『いけず野郎』。 |
・いげずるい ◆▲いけずるい |
【形】ずるい |
『集覧:行・久・西・新』。『いけ』は強調の接頭語。辞書不掲載。
『生き〜』の覧に紹介したように江戸時代には様々な言葉に『いけ』をつけて使っていたが次第に使用範囲が狭まったと考えられる。 |
◎いげせーだら |
【形動】大きなお世話 |
『いけ』+『才太郎畑』。 |
・いげぞんぜー |
ひどく粗略にするさま。甚だしく丁重を欠くさま。 |
『いけぞんざい』。
・いけぞんぜー:神奈川。 |
■いげだ |
@沼地の田、A用水地 |
『池田』の意味。 |
・いげーたごど
・いげーたこと |
@大げさな話、Aでまかせ |
『大きな事』の意味。 |
◎いけちゃちゃ ◆いげちゃーちゃー |
【形動】いけしゃあしゃあ |
− |
・いげっか
・いげっかい
・いげっかや
・いげっかよ |
【複】@行けるかい?、A行けない |
『げ』は濁音・鼻濁音。
★そったどごいげっかや:そんなところに行けないよ。 |
(いけっこすい) |
【形】ずるい |
神奈川。『いけ』+『こすい』。 |
・いげったごど ▲いけったこと |
@大げさな話、Aでまかせ、嘘 |
『大きな事』の意味。『集覧:猿』。 |
(いけっちゃ) |
【複】行け |
長野。 |
(いけっちゃ) |
長居する客を帰すためにわざわざ入れ替えて出す茶 |
山梨。 |
▲いーけっと |
【複】良いけれど |
『集覧:稲』。 |
・いげづねー |
【形】@人情味や同情心に欠けている。Aあくどい。露骨でいやらしい。 |
『えげつない』は、今では標準語となっているが、関西方言の『いげちない・いげつない』に由来するという。
『称呼』には『情なきといふ詞のかはりに、大坂及播磨辺にて、いげちないと云ふ。東国にて、むげちなきといひ、又、きせちないと云ふ。江戸にて、むごらしいと云ふ。「涅槃経」に、仏性の者名を無礙者と曰ふとあれば、仏性のなきといふ事なるべし。』とある。ここで、『きせちない』とは『気切ない』意味と考えられる。
・いげつない:神奈川。
・いせちない:我慢できない:神奈川。 |
◎いげっぽ |
つっけんどん |
真壁郡。 |
・いげーてー
・いげーてーら |
@年上の人たち、大人たち、A背の高い人たち |
− |
◎いげどし |
いい年、大きい年 |
『いけ年』『いかい年』。 |
・いげーとしして
・いげどしとって
・いげーどしとって |
【複】【古】いい歳して |
標準語の『いけ年(いけどし)』(年をとったこと、年齢不相応なことをののしっていう語)の訛か。この『いけ』は辞書では接頭語とされているが、茨城弁のように大きい意味の『厳し』が連母音変形して短縮化したと考えても良いように思う。
標準語には『いけずうずうしい』というような接頭語としての『いけ』があるので、学者達は同様に扱っているのだろう。しかし逆に『いけえ年』が標準語に残ったとしてもおかしくはない。
一方、江戸時代には罵倒語には『生き』『死に』の接頭語をつけた記録がある。
・いけどしして:神奈川。 |
(いけどしょー) |
【複】大人気ない |
宮城。 |
◎いげどんば
◎いげどんぼ |
ギンヤンマ |
真壁郡。 |
・いげーなりする |
【複・動】@大仰に振舞う、A(子供を指して)大きな歳になっている |
『いげー』は『大きい』。『なり』は『成り、形、態』。
★『土』:そうら見ろ、大(え)けえ姿(なり)していうこと聽(き)かねえから:そら見なさい。もう大きいのに言うことを聞かないから。 |
・いげない ・いけない |
【複】〜してはならない |
(イケルの未然形に否定の助動詞ナイのついたもので、活用はナイと同型)
@(禁止を表す) 不可である。…すべきでない。A(非難・絶望・拒否・憐憫レンビンなどの意で) よくない。まずい。だめだ。望ましくない状態である。B(体質的に)酒が飲めない。
・いけん:兵庫・鳥取・島根・岡山・広島・山口・愛媛。 |
(いけない) |
【複】生意気 |
静岡。 |
◎いげぬすっと
◎いげぬすと
◎いげぬすとー ▲いけぬすとー |
盗賊 |
近世前期の言葉が残ったと思われる。『集覧:稲』。江戸時代には罵倒語には『生き』『死に』の接頭語をつけた記録がある。 |
・いげね
・いげねー
▲いけねー |
【複】行けない |
『げ』は濁音・鼻濁音。『集覧:無記載』。
・いげねー:群馬。
・いけれん:山梨。
・いけん:山梨。『行けぬ』。 |
・いげね
・いげねー
▲いけねー
|
【複】@いけない、A悪い |
『集覧:無記載』。標準語の『いける』(することができる、特にうまくすることができる、相当のものである、よい、うまい)の否定形。『いけねえ』は江戸言葉。
・いげねー:群馬。
・いけねー:福島・東京多摩・神奈川・静岡。 |
▲いけねやぁーい |
【複】行けない、いけない |
茨城方言集覧では旧猿島郡の方言で『無益・拒否・不審等』の意味とある。 |
■いげはらい |
種籾をひたす池の清掃 |
− |
◎いげぶしん |
用水路の清掃 |
本来は『いがぶしん』ではないかと思われる。 |
(いけべら) |
灰均し |
宮城。『埋け箆』の意味か。 |
◎いけほーずもねー |
【形】途方も無い |
− |
(いけむ) |
【動】力む |
静岡。『息む』か。 |
・いげめ
・いげめー |
【複】行けないだろう |
行けまい→いけめー→いげめー。
★ごんごになんねどいげめー:午後にならないと行けないだろう。 |
・いげめ
・いげめー |
【複】良く無いだろう |
良くあるまい→いぐあるめー→いぐあんめー→いがんめー→いげめー。
★ほれはやってはいげめ:それはやってはいけないだろう。 |
・いげやせん
・いげんやんせん ▲いけんやんせん |
【複】いけません |
丁寧語。『集覧:猿』。『行けやせぬ』。 |
・いげやせん
・いげんやんせん
・いけんやんせん |
【複】行けません |
丁寧語。『げ』は濁音・鼻濁音。『行けやせぬ』。
・いけん:行けない・いけない:山梨。 |
・いげよ ・いげよー |
【複】行け、行けよ |
『げ』は濁音・鼻濁音。
・いけよー:神奈川。 |
・いげら ・いげらー |
【複】行けるよ |
『げ』は濁音・鼻濁音。『行けるわ』が訛ったもの。
・いけらー:山梨。 |
・いげる
・いける |
【動】@(魚を)生ける、A(野菜などを土に)埋ける、B(炭火などを灰に)埋ける、C花や枝をびんなどに挿す、生け花をする、Dいける |
@・いける:静岡。
★いげすにいげっぺ:生簀に生けよう。
A・いくる:鹿児島。
・いげる:青森。
・いける:群馬・山梨・静岡。
★ねーぎちぢにいげっぺ:ネギを土に埋めよう。
B★おぎりおせーしょにへーにいげんだどおめ:熾きを最初に灰に埋けるんだよ、あなた。
D★こりゃいげっと:これはいけるぞ。 |
・いげる |
【動】行ける |
『げ』は濁音・鼻濁音。 |
・いげん
・いーげん |
遺言 |
『遺言』は、江戸時代には『ゆいげん』『いげん』と言われそれが残ったものと考えられる。 |
▲○いご
◎いーご |
飯びつ |
『飯籠』(めしかご)の意味。類似語に『飯行李(いいごり)』がある。
当時の飯びつは、夏は痛み易かったので竹籠でできていた。『集覧:新・真稲・鹿』。
『称呼』に『飯櫃(めしびつ):京にていご、上総・下総・常陸これにおなじ。安房にてあまご、伊勢にてさうな(そうな)といふ。』とある。
・えーご:神奈川。 |
◎いご |
川舟用の切り込み式の船溜まり |
辞書掲載語。
『江:海や湖の一部分が陸地に入り込んだところ。入江。湾。』とあり、この場合の『い』は『江』であることは間違いない。考えて見ると『江』も『入り』もルーツは同じなのかもしれない。
物や形を現す日本語の『こ』を改めて調べると、『籠』『庫』『湖』『壺』『鼓』等がある。動詞の『込む』を連想させる。いずれも中がに空間があり、囲われたものを連想させる。
『ご』の場合は『湖』『滬』((Hu) 中国上海(シヤンハイ)市の略称。市内を流れる蘇州河の下流部を古く滬涜(コトク)と呼んだことに因む。)の意味なのだろうか。ちなみに『涜』とは、けがす意味で現代語では『濁』が近い。
広辞苑に『えご:@(山梨・島根・山口・高知県で) 谷などの水の流れ込んだ所。山の凹地。えぎ。いご。A(徳島・高知・福島県で) 川の入江。B海水の上って来る川。有明海沿岸などでいう。』とある。一方大辞林では方言とはされず、『えご:@山中のくぼ地。A川の流れが入り江となってよどんでいる所。』とある。
これらを考えると『いご・えご』は『入り込んで囲われたところ』の意味の和語で、過去の歴代の学者が敢て漢字を当てなかったマイナーな言葉とも言える。
さらに単純に考えれば、窪んだ場所を『くぼ、くぼみ』と言うように、えぐれた場所を『えご・えごみ』と言い、訛って『いご・いごみ』となったとも考えられる。
・えご:川岸にある魚の隠れる穴:神奈川。
・えごた:山の側面のえぐれたくぼみや川岸が侵食されて洞窟のようになったところ:神奈川。
・えぐみ・えごみ:洪水等のあとに残る泥や川の淀んだところにゴミなどがたまった場所:神奈川。
★いごさがし:川の岸を手探りしてナマズやウナギをとる方法。 |
・いごー
▲いこー |
【形動】利口 |
当時の高齢者言葉。『集覧:新・西』。 |
・いごー
・いごう |
【動】憩う、息う |
『憩う・息う(いこう)』は今や死語に近い言葉。当時は日常的に使われた。
・ゆくーゆん:沖縄。
・よくう:九州。
・よこう:九州。
★ちっといごってがらまだやっぺ:ちょっと休んでからまたやろう。 |
・いーご |
英語 |
★いーごだがらいーごやれや:良い子だから英語(の勉強)やりなさい。 |
・いごい
・いこい |
憩、息い |
当時は、『昼の憩(ひるのいこい)』というラジオ番組が農家の昼の知らせだった。タバコの銘柄にも『いこい』があった。ゴールデンバットに次いで『しんせい』と並ぶ廉価版のタバコだった。収穫を暗示した主に黄色い色で横ストライプの柄だった。 |
◎いごい |
【形】@いがらっぽい、むずむずする、Aえぐい |
A・いごい:埼玉。 |
◆いごいご
・いーごいーご |
【形動】赤ん坊が一人笑いする様 |
幼児語。本来は、『好い児好い児』。転じて笑う様に用いた。『民俗』では単に『にこにこ』としている。
・うぶすなわらい:群馬。 |
・いごいごする |
【動】えぐい様 |
− |
◆いごがす
■▲いごかす |
【動】動かす |
『集覧:多』。近世語。ゆごかす、りごかすと言う人もいた。『居動かす』意味か。
・いごがす:青森・宮城。
・いごかす:福島・静岡。 |
◎いごぐ
◆◇いごく |
【動】動く |
清音形は近世語。『ゆごく、りごく』と言う人もいた。
この訛の清音形は全国的に分布すると思ったら、清音形は辞書掲載されている。長塚節の『土』では農民達は皆『いごく』と発音しているのに巡査は『うごく』と言っていることから、既に当時でも俗語として意識されていたようである。
一方『居退く』(いのく)という言葉がある。古語には『動く』がある。現代語の意味とは別に『居動く』『ゆごく』という言い方もあることから、『居動く(いうごく)』が訛ったと思われる。
広辞苑では、『いごく』は動くの転としているが、『いごく』は、『居動く(いうごく)』が語源ではあるまいか。上代では濁音は無かったから『うこく・いこく』だった可能性がある。『こく』は『転く・倒く』で現代では、『転ける・倒ける』(たおれる。ころぶ。すべり落ちる。ころげ落ちる。)と言うが、『居ながら転ける』即ち『居転く』とは、一定の場所に居てずれる意味とも思われ、それこそ現代語で表現すれば『居動く』意味ではないかと思われる。
一方、『行き』『転く・倒く』とという複合語も考えられる。
『聞書』では『いごく』は江戸言葉、『いのく』は浪花言葉とある。しかし『いごく』は徳島や鹿児島でも使われることから必ずしも東西と対立するものではないようである。
『いごく』は大正末の調布生まれの叔母も使う。
・いごぐ:宮城・神奈川。
・いごく:東京・神奈川・長野・山梨・静岡・徳島・鹿児島。いごかん:動かない:山梨。『いごかぬ』。いごいちょ:動くな:山梨。
・いごく:群馬・徳島・鹿児島。いずれも鼻濁音が無い県。
・えごぐ:山形。
★『土』:動(いご)かねえでろ爺(ぢい)、喰(た)べてえ物(もの)でもねえか。 |
・いごごじわりー |
【形動】居心地悪い |
− |
・いごじ |
意地っ張り |
『意固地、依怙地』。 |
・いごじなし
・いごじねー |
【形動】意気地なし |
− |
・いごじわるい
・いごじわりー
・いごじわれー |
【複】【形】意地が悪い、意地っ張り |
『いごじ』は『意気地』。 |
・いごす
・いこす |
【動】寄こす |
『聞書』には、『寄こせ』の意味の『いくせ、おこせ』がある。
・いこす:佐渡島。 |
(いーこーす) |
【複】言って注意する |
山梨。『言い講ずる』意味か。
・いーこーしたっけが:言い言いしていたものだが:山梨。 |
・いーごだ
・いーごった
・いーこった
・いーごったい
・いーこったい
・いーごど
・いーごどや |
【複】良いことだ、良いねえ |
二回繰り返すことも多い。
・いーごだ:宮城。
・いーごた:宮城。
・いーこた:宮城。いーこたいーこた。
★あーらいーごどいーごど:あら良いねえ。 |
◆いごたい
◎いごったー
◎いごって
◎いごってー
◆いごてー |
【形】@いがらっぽい、Aえぐい |
A・いごってー:福島。 |
(いごっそー) |
頑固で気骨のある男 |
高知の代表的な方言。 |
◎いごっていも |
サトイモなどでえぐみのある芋 |
− |
・いーごど |
言い分 |
古い言葉の『言ひ事』の濁音化。 |
・いーごど |
【複】良いこと、良いねえ |
|
・いーごどきかず |
言うことを聞かないこと |
− |
◎いーごどきかせ
◎いーごどきかせのもぢ |
耳塞ぎ |
常陸太田市。正月14日の儀式。餅を両耳に当て良いことを聞くように唱える儀式。
広辞苑には『耳塞ぎ:同齢者が死んだ際、災いが身に及ぶことを怖れ、鍋の蓋や草鞋・餅・団子などで耳を塞ぐまじない。耳塞ぎ餅・耳団子は、その餅や団子。』とある。
県下では地域によって微妙に異なる。正月14日の儀式として行うところや、訃報があったとき行うところもある。土浦では、訃報があったとき、死者が男のときは左耳、女の時は右耳に当てる。『いしけーみみきぐな。いーみみきげ。(悪い耳聞かない。良い耳聞け。)』などと言う。同齢が死んだときんだとき藁草履の鼻緒を切って十字路に捨てて来るところもある。餅ではなく団子だったりおにぎりのところもある。
以上の情報は全て文献によっており、当時すでに昔そんな儀式があったと聞かされた記憶がある。 県北部では、『いいみみきげ』と呼ばれる。 以上の情報は全て文献によっており、当時すでに昔そんな儀式があったと聞かされた記憶がある。 県下ではこの他『みみふさぎだんご・みみふさぎもぢ・みみふたぎもぢ』等の呼称がある。 |
◆いーごどした
・いーことした |
【複】@ほっとした、よかった、A良い事した |
『良い事した』の意味。
★いんや、あまがっぱもってきていーごどしたでやー。こーたにふってくっとおまーながったもんなーや:いやあ、雨具を持って来て良かったなあ。こんなに降って来ると思わなかったもんねえ。 |
◎いーごはん |
米のご飯 |
『飯ごはん』の意味。 |
・いごひーぎ |
えこひいき |
・よてひき:佐渡島。 |
◎いごみ |
@沈殿物、A洪水等のあとに残る泥 |
誰でも『濁り』の転と考えるが、『居凝り』(いこごり:残って固まる意味)が妥当と考えられる。。『凝る』には@一か所に寄り集まる、A氷結する意味がある、長塚節の『土』では洪水によって床下に運ばれて固まった泥を『泥』(えごみ)と当てている。
一方全国的にある『いご・えご』(入り込んで囲われたところ)の場所の意味だとしたら面白い。
・えご:川岸にある魚の隠れる穴:神奈川。
・えごた:山の側面のえぐれたくぼみや川岸が侵食されて洞窟のようになったところ:神奈川。
・えぐみ・えごみ:洪水等のあとに残る泥や川の淀んだところにゴミなどがたまった場所:神奈川。
★『土』★後が酷(ひど)くってな、縁の下でも何でも泥(えごみ)が一杯(ぺえ)で、そえつああ掻(か)ん出(だ)せばええんだが:後が酷くてね。縁の下だけではなく他のところも泥が一杯で、そいつは掻い出せばいいんだが。 |
・いごむ |
【動】にごる、沈殿する、流れが滞る |
『居凝る』意味。 |
・いごむ |
【動】@じっと座り込む、A風呂に漬かる |
@標準語の『居込む』は『詰めて座る、閉じこめる』。
A『湯』に『込む』(じっとする)意味。 |
◆いーごめ |
くず米 |
『あいごめ』がさらに訛ったもの。古くは『えあーごめ』。『あい』は『間または合』であり熟しきっていない意味。 |
◎いーごめ |
1軒毎 |
『ごめ』は『籠め・込め』でもともとは『もろともにの意。…ぐるみ。…ごと。』の意味だったものが、『毎』(@そのどれも。Aそのたびに。いつも。)の意味に変わったものと思われる。『家籠め』。 |
・いーごむ
・いーごめる |
【動】言葉で人をやり込める |
『言い籠む・言い籠める』。
・いーこめる:静岡。 |
◎いごりぽい |
【形】@いがらっぽい、Aえぐい |
− |
◎いごりぼー
◎いごりぼいも
◎いごりんぼ |
サトイモなどでえぐみのある芋 |
− |
(いこる) |
【動】怒る |
長野。 |
◎いーころ |
【副】沢山 |
− |
・いーころ |
言い合い |
『言い比べ』。 |
・いーころ ◆いーころかげん
・いーころかん |
【副】【形動】いいかげん、加減が良い |
『いーくろかげん』がさらに訛ったものかまたは、『良い頃加減』の意味か。
・えーころ:大概:静岡。 |
・いーころす |
【動】悪口を言う |
・いーこーす:言って注意する:山梨。
・いーころす:山梨。
・ゆいころす:山梨。 |
・いーごん |
遺言 |
古くは『いーげん』と言い、学校教育やテレビの影響で次第に『ゆいごん』に変わって行く。 |
・いーごんだ |
【複】いい事だ |
− |
・いさ |
餌、えさ |
・いさ:神奈川。 |
◎いーさ |
間、あいま |
『あいさ』の逆行同化。 |
(いざー) |
【複】居よう |
静岡。 |
・いざがい |
諍い |
濁音化。
・いさかえ:福島。
・えさがえ・えさかえ:山形。
・えどりやえ:山形。 |
・いーさがずぎ ◆いーさがずき |
三々九度の盃 |
『相盃・合杯・合盃・相盃』』(あいさかずき)。辞書に無い言葉。
『あい』を『えぁ・えゃ・やぃ・えぃ』等の見聞き言葉の時代が成した言葉の代表例と思われる。結婚式なのだから『良い杯』だろうし、『結い杯』があってもおかしくないところにこの言葉の面白さがある。 |
・いさぎいー |
【形】未練がない。平気である。 |
『潔い』の転。 |
■いさくさ |
双方の意思がもつれて打ち解けないこと。頓着。文句。 |
『いさくさ』は『いざこざ』の古形。『いざこざ』には、『苦情、言い分』の意味がある。
・いさくさ:東京。 |
◆いさくさなし |
無頓着なこと(人) |
『いさくさ』は『いざこざ』の古形。『いざこざ』には、『苦情、言い分』の意味があり『文句を言わないこと(人)』の意味が転じたと思われる。 |
◎いさくされ
◎いさくれ |
後腐れ |
− |
(いさこ) |
【動】争う |
鹿児島。『いさかう』のウ音便化した『いさこう』の短縮。 |
◎いさこー |
【形】大人らしい |
稲敷郡。 |
□いさごさい |
【複】お出でなさい |
『国誌』には『去来御座あれなり。』とある。『いざ、御座あれ』の意味。『いざ』は古くは清音だった。 |
■いさざ |
@シロウオ、A■アミ |
@は標準語。ハゼ科の淡水産の硬骨魚に『イサザ』がある。
A東国語か。ニホンイサザアミと呼ばれるアミがあるように、方言とも言いがたい。 |
◎いさざ |
小さい石、砂 |
稲敷郡。アミ類をも言うことから小さなものを指す言葉であることは間違いない。『いささか小さい』意味の接頭語に『いささ』がある。 |
(いささかさっさ) |
ほんの僅かばかり |
山梨。
『ささ』は『小さい』意味なので、『いささかささ』か。『いささか小さい』意味の接頭語『いささ』のルーツと見られる。 |
◎いさざごろひき |
小魚漁の一種 |
『ごろ』はハゼ類を言う。 |
(いさしー) |
【形】久しい |
神奈川・静岡。『相久しい』が訛ったと考えられる。
・いしゃしー:山梨。
・いしゃしく:久しく:静岡。 |
(いさしかぶり) |
【形】久しぶり |
神奈川・静岡。『相久方振り』『相久しかる振り』が訛ったと考えられる。
・いしゃしかぶり:静岡。 |
◎いさだ |
アミ |
北茨城市。東国語か。 |
◎いーさなぶり |
田植を終えた祝い。 |
『飯早苗饗』の意味。 |
◎いざなり |
だらしない格好 |
古河市。 |
□いさは |
斑入りの葉。 |
『斑葉』。
・いさは:神奈川。 |
◎いさば |
漁場、魚市場、乾魚・塩魚などを売る店 |
『五十集』。
・いさば:青森・神奈川。 |
◎いさばぢ |
カツオ漁の餌となるイワシを入れる桶 |
『餌鉢』の意味。 |
◆いさばや |
行商人 |
『五十集屋』。本来は、乾魚・塩魚の商店またはその業の人。江戸時代には魚を商いする人を『五十集師』と呼んだ(俗語考)。
・いさばし:神奈川。
・いさばや:神奈川。
・いさばや:魚の仲買人・鰹節の加工人:静岡。 |
◎いさぶぢ |
網で餌となる小魚やザリガニを捕ること |
『餌打ち』。『餌捕り』の意味。 |
・いさぶる |
【動】揺さぶる |
この『い』は『ゆ』と『い』の中間の発音。標準語の中の訛り。
・いたぶる:東京・神奈川。 |
◎いざまい
◎いざめー |
座っている姿勢、行儀 |
『居住まい』。 |
・いーざまだ |
【複】いい気味だ |
− |
(いさみ) |
鳶職、河岸の男、遊び人など、侠気を以て任ずる者 |
東京。
広辞苑に『いさみ【勇み】:@勇気。気力。はげみ。A勇ましいてがら。B任侠の気概に富み、言動の威勢がよいこと。おとこだて。また、そのような人。』。 |
・いざり |
歩けない人 |
古い標準語。『躄・膝行』。 |
◎いざりかぎ |
炉・かまどなどの上に、上からつるし、鉄瓶・鍋・釜などを自在に上下させる装置の鉤。 |
『自在鉤』。
『いざり』は『居さる・躄る・膝行る』に由来し、ずれる意味。
『かぎ』は現代では『鍵』に特化し、『鉤』が消えてしまった。現代語ではフックに当たる。 |
◎いざりぎ
◎いざりばた |
脚のない古型の布織機。地機。 |
『躄機・居座機』。足のあるものは『はだあし・はだし・はだーし』と言う。 |
◎いさる |
【複】【古】@座ったまま移動する、A物がずれ動く、B退く、後ずさる、いなくなる、C◎隠居する |
@A古い標準語。『居さる・躄る・膝行る』。
BC『躄る・膝行る』の古形の意味の変化。 |
・いざる |
【複】【古】@座ったまま移動する、A物がずれ動く、B退く、後ずさる、いなくなる、C隠居する |
@Aは標準語。もともとは『居さる』。転じて『躄る・膝行る』(いざる)。高知では『座る』を言う。
・いざる:這いずる:静岡。
B『躄る・膝行る』(いざる)の意味の変化。
。
CBの意味の変化。
Dその他。
・いざってやる:行ってやる:静岡。 |
(いざる) |
竹を編んでつくった器。ざる。 |
古語。現代語の笊は『いざる』が約まったという説が有力である(大言海)。それでは『いざる』の語源は何かというと明快ではない。
『称呼』には『笊籬(いかき):いかき:畿内及奥州にていかき、江戸にてざる、西国及出雲石見加賀越前越後にてせうけと云。武州岩附邊にてせうぎ、安芸にてしたみ、丹波丹後にていどこ、遠江にてゆかけ、越後信濃上野にてぼてといふ。又江戸にてかめのこざるを畿内にてどんがめいかき、芸州にてどうがめしたみ、下野にてひらざると云。又江戸にて御膳籠といふ物を備前にてしまふぐ又小き物をこしをりと云。又関西にてめかごと云を東国にてめかいと云。或 ふご びく又こめあげざる、又其大なるをかまたきと云。』とある。どうやら笊といかき以外は形状や用途による笊の名称を指しているようである。
・いじゃる:静岡。
・いじゃろ:静岡。
・いざる:静岡。
・いざろ:静岡。 |
◎いされる |
【動】暑くてむしむしする |
竜ヶ崎市。造語で例えれば『煎される』意味か。 |
・いーさわぐ
・いーさーぐ |
【複】触れ回る、あれこれ言う、言いわめく |
『言い騒ぐ』は辞書には無い。慣用句辞典にも無い。しかし口語では使われる。 |
・いーさんな |
【慣】言いなさるな |
目上の人に言う言葉。『さる』は、広辞苑には『【助動】(室町時代から江戸時代にかけて用いられた。活用は四段型) 四段・ナ変以外の動詞の連用形について、軽い尊敬・親愛の意、または、転じて軽蔑の意を添える。狂、武悪「天の網が来(キ)さつた」。浄、関取千両幟「出さらにや爰(ココ)へ引きずり出す」』とある。 |
◆■▲△▽○いし |
【代】おまえ |
『集覧:行・新・西・北・猿・筑・稲』。
広辞苑では、関東方言とあるが、古語の変遷を表す重要単語でもある。広辞林では単に古語で『ぬしの転』とある。どうやら、少なくとも江戸時代に関東地方で使われた言葉ということになる。
茨城では、『いしゃなにやってんだー』等のきつい一撃の言葉がある。
古語を調べると、『汝(い)』があり、『し』と同源とされる。『汝(なんじ)』時代の前後関係は不明だが、日本語の二人称の呼称は古くは『あ』『い』『な』『わ』の三つがあった。その後、現代語のルーツとなる『あ』の流れである『彼方・貴方(あなた)』、古くは天皇・君主を指した『君』、貴人の敬称であった『御前』が残り、『主』は、姿を消してしまった。この方言は二人称の『汝(い)』の流れか、『ぬし』→『にし』→『いし』と変化したと考えられる。
その中で当時『おぬし』『にし』『いし』をかたくなに現代に伝えているのは、関東では茨城にしかないと思われる。
また、呼びかけの言葉の『あよ』『なよ』のうち、三重では二人称を『あよ』と言うことが解っており、呼びかけの言葉でありながら、相手を指して言う言葉であることは間違いない。
当時はやや侮蔑を含んだ呼称。最近は、悪がきを指す場合もあるという。
古語では『汝』を『い』とも言った。広辞苑には『【代】(「し」と同源という。助詞「が」を伴う) 相手を低く見て指す語。おまえ。なんじ。』とある。この場合の『い』とは、『上』の意味ではないだろうか。そうなれば『いし』とは重語である。
『称呼』には『他(ひと)をさしていふ詞に、畿内にて吾身(あがみ)といふ。東国にておのし又おぬし又そなたなと云。三河にておのさと云(是おのさまの略語なり)。豊前豊後邊にてわごりよ(わごりょ)といふ。畿内及出雲若狭邊にてわごれと云。「太平記」に和殿(わとの)と有。これらの転語歟。上総にていしと云。奥州津軽にてうがと云。また畿内にておどれといひ、対馬にてあやつ・こやつ又そやつなどど云詞は、人を罵る心なるべし。今按に「万葉」にはわぬともわけとも有。我身の事也。又あれとも吾(あ)とばかりも見えたり。あれといふは彼と云にひとし。「狭衣」にあはれあれが身にてだにあらばやと有。又「源氏」にすやつ、「枕草子」にかやつ、「宇治拾遺」にくやつなと有は今いふきやつと云に似たり。またそいつと云は其奴なり。或はそなたはこなたに対していえる詞也。「神代口決」に汝(そなた)之を忘れずと有。和歌には汝(なれ)と詠ぜり。これらのことばのたくひ、かぞふるにいとまあらず。又中品己上の言葉は萬国かはる事なきか。ここに略す。』とある。江戸時代にはすで上総言葉(茨城南部・千葉北部)にであったことが解る。
英語でも一人称は『I、my、me』だが複数形は『we、our、us』で、あ行音が共通語で、日本語の一人称の『あっし、わし』は『I、my、me』『we、our、us』に繋がっているとも考えられる。
・いが:青森。
・いし:山形・宮城・茨城・千葉・東京・新潟。
・いす:宮城。
★なんだいしゃー、とんでもねーやろだな:なんだいお前は、とんでもない野郎だな。 |
・いし |
@電池、Aホチキスの針、Bライターの発火装置 |
Bは標準語。福岡では石炭を、奈良ではすずりを言う。 |
・いじ |
心 |
『意地』。最近は多くは『自分の思うことを通そうとする心』の意味で使うことが多い。しかし、『意地悪』は良く使われる。 |
◆いーし |
お灸 |
『焼火』(やいひ)が訛ったもの。 |
(いーし) |
良い人達 |
山梨。『良い衆』。『し』は現代の『師・士』に通ずる。 |
・いーじー |
家中 |
★いーやゆんべはー、ねどごのふすまあげだっけがー、えげーあおでーしょーがとぐろかいででー、いーじーおーさーぎだ:いやあ、夕べ寝室の襖を開けたら大きな青大将がとぐろを巻いてて家中大騒ぎだった。 |
(いしあら) |
小石交じりの砂地 |
静岡。『石原』の意味。 |
(いじいじ) |
【形】食べたそうな様 |
神奈川。『うずうず』の意味か。 |
・いじいやしー |
【形】卑しい |
『意地卑しい』意味。
・いじいやしー:埼玉・群馬・長野。
・いじいやしー:食いしん坊:神奈川。
・いじっかり:食いしん坊:神奈川。
・いじらし・いじらしー:食いしん坊:神奈川。 |
(いーじぇん) |
【複】良いでしょう |
神奈川。
『良いんでは(ないの)』『良いにてやあるらめ』。 |
◎いじおやぐ |
【動】あれこれうるさく言う、世話を焼く、腹が立つ |
『意地を焼く』意味。 |
◎いしか |
お前達 |
古河市。原型は『いしこう』か。 |
◎いしかい |
【形】@醜い、見た目が悪い、A粗末な様、B出来が悪い、C良くない |
主に見た目が悪い意味である。
『いしこい』がさらになまったものか、そのルーツとも思われる。
九州方言の形容詞の『〜か』にも通じる。 |
◎いじがいねー ▲いじがかいない
◎いじがかいねー |
【形】我慢が足りない、意気地が無い |
『意地が甲斐ない』意味か。『集覧:新』。辞書には『甲斐無し:ききめがない。しかたがない。無益である。』とある。
『俚言』には『かひない:軟弱なる物をかひないと云。又卵をかひとよめば、本(も)と卵の軟弱なるより出たる言なるべし。ないは詞也。』とあり、江戸言葉が源の言葉である。 |
□いじかきをする |
【動】いらいらする |
標準語の『意地にかかる』は『逆らって、是非とも自分の思いを通そうとする。いこじになる。』の意味。 |
・いじかぐ
・いじかく |
【動】いらいらする |
− |
◎いしかーぐぢ |
口うるさい人 |
石岡市。語源不詳。
『石川郎女』に由来するか。『いしこい口をきく人』意味か。『民俗』では『石川口』と当てている。『石川』に当たる過去の著名人は多数あり不明。 |
・いしがげ |
石垣 |
『石崖』。
『いしがけ』なら古い標準語。『石懸け』の意味か。
・いしかけ:神奈川。
・いしがけ:神奈川・山梨。 |
◎いしかづぎ |
若い衆が力比べのため大きな石の担ぎあいをすること |
− |
◎いしがみさま |
男根をかたどった石像 |
古くからある根精信仰に由来するものと思われる。 |
・いじがむ |
【動】いじける |
− |
・いじかむ |
【動】我慢する |
『意地を噛む』意味。 |
・いじがめる |
【動】苛める |
・いじかめる:山梨。 |
◎いじがやげる ■□いじがやける |
【動】腹が立つ、むかつく、□いらいらする |
そのまま、『意地が焼ける』の意味。
本来は『いらいらする』であるが、次第に『腹が立つ』意味で使われるようになったと考えられる。
『国誌』には『いじかやける』と表現されている。
・いじがやける:福島・栃木。
・いじがやける:群馬。
・いじがやける:世話がやける・じれったい:静岡。 |
(いしがんとー) |
沖縄や九州南部で、道路のつきあたりや門・橋などに、「石敢当」の三字を刻して建ててある石碑。中国伝来の民俗で、悪魔除けの一種。いしがんとう。 |
九州南部・沖縄。民族語。『石敢当』。
『せきがんとう』とも言う。 |
(いしき) |
尻 |
『いど・おいど』と関係が深い言葉と思われる。
・いしき:岩手・埼玉・淡路島。 |
・いじきたねー |
【形】飲食物や金品に対する欲が強い |
江戸言葉。
・いじきたねー:群馬・神奈川。
・いじっきたなし:神奈川。 |
◎いしきり |
石蹴り |
− |
・いじくさってる |
【動】精神が腐敗している、節操がない |
『意地が腐っている』。標準語には名詞形の『意地腐』しかない。 |
・いじくさり
・いじくされ |
精神の腐敗していること(人)、節操のないこと(人) |
『意地腐』。長崎ではけちんぼを『いしくじり』と言う。
・いじくされ:青森・岩手。 |
・いじくさる |
【動】精神が腐敗している、節操がない |
− |
・いじくじ |
【形動】いじけた様、いじいじ、ぐずぐず |
・えじくじて:人見知りして:山形。
・よじりくじり:曲がりくねった様:山形。 |
◆いじくそやげる |
【動】腹が立つ |
− |
(いじくねる) |
【動】悪意地を張る |
静岡。茨城にあっても可笑しくない言葉。 |
・いじぐりげーる |
【動】腹が立つ |
『こころが混乱する』意味。 |
・いじぐりごんにゃぐ
・いじぐりこんにゃぐ
◎いじくりこんにゃぐ
◆■いじくりこんにゃく
◎いじりこんにゃぐ |
【形動】弄り回すこと |
・いじぐりこんにゃぐ:千葉銚子。 |
・いじぐりまーす |
【動】弄り(いじり)回す |
『弄繰り回す』。
・いじくりまわす:神奈川。 |
◎いじぐる
▲いじくる |
【動】@いじくる、Aいじめる、もてあそぶ |
『弄くる』。『集覧:西』。現代語ではAの意味で使われることは少ない。
@・いじぐる:福島・千葉銚子。
・いじくる:福島。
・ひじくる・ひちくる:神奈川。
A・いじぐる:福島。
・いじくる:福島・山梨・静岡。 |
・いじぐれ
・いじげ |
ひねくれ者 |
− |
・いじぐれる |
【動】@ひねくれる、いじける、Aいじれる |
@『意地』が『ぐれる』意味。A『いじる』の可能形。 |
・いしぐるまにのる |
【複】小石を踏んで転ぶこと |
れっきとした標準語。今は舗装率が上がり、道で石車に乗ることはまずない。
・いしんぐるま:群馬。 |
◆▲■いしけー |
【形】@醜い、見た目が悪い、A粗末な様、B出来が悪い、C良くない |
『集覧:稲』。=『いしこい』がさらに訛ったもの。 |
◎いーしけーくった |
【複】危険な目にあった。ひどい目にあった。 |
北茨城市。『いーひくった』とも言うことから、『お灸を沢山据えられた』の意味だろう。『けー』は『げー』の清音化。 |
・いじげぎる |
【動】ひねくれる、いじける |
− |
・いじげねー |
【形】@意気地ない、A我慢が足りない |
『意地気ない』の意味。
@・いじっけなし:神奈川。 |
・いじげる
・いじげげる
・いじげげーる
▲いじける |
【動】@ひねくれる、いじける、A▲文字が歪む、B▲草木が寒さ等で元気が無くなる |
『集覧:真・猿』。
B・いじけんぼ:寒がりや:神奈川。
・いじけんぼー:寒がりや:神奈川。 |
・いしけん
・いしけんけん |
石蹴り |
石蹴り遊びの中に片足跳びが含まれる図式が見える。詳細は子供の遊び参照。
・いしきり:茨城
・いしけん:茨城・千葉・栃木。 ・いしきり・いしけん:片足跳び:埼玉。 |
◎いしこ |
小石 |
『石子』。中世・近世には『石子詰め』という処刑方法があったという。
・いしんごづき:喧嘩のとき石で相手を殴ること:群馬。
★いしこだらげ:石だらけ。 |
□▽いじこ |
@幼児を入れておく籠、A保温用の藁の飯櫃 |
『いずめ。いじこ。えじこ。えずこ。つぐら。』。民俗語。
広辞苑に『いずめ:(飯詰か)@保温用に飯櫃(メシビツ)を入れる藁桶(ワラオケ)。A乳児を入れて育てる藁製のかご。いじこ。えじこ。えずこ。』とある。『じこ・ずこ』は『筒っこ』の意味か。それとも、『英児つ囲い』の意味か。
昭和30年代には、東北でこのような風習があるということは聞いたが、当時の茨城では死語であった。その理由は、当時の茨城は大家族で、爺ちゃん・婆ちゃんが子供の世話をするのが一般的であったからである。
Aの意味が東京だけに残っているのは、東京でもかつて、『い』と『え』が混同されていたことが解かる。『い』と『え』の混同は関西には無いから、江戸時代に、京阪語の影響を受けて、矯正されたものと見られる。それでも江戸の下町には長く残り、『おまいさん』は代表的な言葉である。この種の言葉は、身近な江戸落語に残っている。
@・いじこ:静岡・滋賀。
・いじっこ:群馬・神奈川。
・いじっこ:モッコ:長野。
・いじめ:群馬。
・いっこ:青森。
・えじこ:東北・茨城・栃木・石川。
・えじっこ:栃木。
・えずこ:東北。
A・えじこ:東京。
・ゆづと:佐渡島。
Bその他。
・いじこ:モッコ:静岡。 |
◆▲□△▽いしこい
◎いしたい
・いしてー |
【形】@醜い、見た目が悪い、ぶすの様、A粗末な様、B出来が悪い、良くない、ぼろい |
『集覧:行・久・西・真・北・筑・新・稲』。 主に見た目が悪い意味である。
『いしてー』が原型とすれば『石体』(石のようにつまらない意味)の可能性が高い。同じ意味の『へしこい』の『圧し(へし)』には『重石(おもし)』の意味があり、これも石と関係がある。県下には、『危険な、ひどい』意味で使う地域がある。千葉では『粗悪な』意味を『いすたい』、京都ではふびんなを『いしこい』という。県下では更に訛って『いんけい』と言う地域がある。
類似方言に『いしい』がある。群馬・千葉・山梨で『悪い』意味、群馬で『苦しい』意味、千葉で『荒々しい』意味で使われる。本来『いし・いしい』は良い意味で、『美し・美しい』と当てられ、『よい。好ましい。見事である。たくみである。殊勝である。けなげである。神妙である。味がよい。』意味。現代語の『おいしい』の古形とされる。宮城では元気なを、大阪では生意気なを『いしこい』と言う。
『称呼』によると、江戸時代の『わるい』という意味の言葉は、『尾張邊または奥州仙臺にてをぞいと云。(中略)上総・下総にていしいと云。(中略)東国にては、賢き事をも をぞいと云侍る也。又南総にてあしき事を いしいと云 畿内また東武にても味の美なる物をいしいと云。』とある。このことから、現代の茨城方言の『いしこい』は、かつて『いしい』だった事は間違いないだろう。『おぞい』同様同じ言葉が表裏の意味を持つことについて、『称呼』では長々と論じられている。
『俗語』には『いしく・いしが云々・うひやつぢや:赤染め衛門集四「天王寺まうでで云々「立ゐけるあとを見るこそかなしけれいしやその世にあへらましかば」」、今昔物語九「何につけてもいしかりけるものの上手かなと、皆人これをほめける」、同十二「男は御門をはせ出て、洞院をくだりに飛ぶがごとくにして逃さりぬ。院は此奴はいしかりける盗人かなとなと仰せられて、あながち御腹立もなかりける。しかりける」、歸命本願抄に「いしくもさんげして」又「いしいし云々」、此外後世の軍書中にも見え、今の世の鄙土の言にものこれり。其が中にも、今下総の葛飾郡幸手邊にて、幼稚の者を呼にいしが云々と云。此を又京近き国々にては、うひやつぢやと云。此の二つを合するに、いしくはうひうひしくにて、其本は初なる物を愛る方より轉りたる美賞言なるべし。神代紀一書に「国稚地稚」とあるをクニイシツチイシと訓たるを、忌部正通口決に「稚ハ宇比志(ウヒシ)也」と云り。宇比(ウヒ)は伊(イ)と約れれば也。是を見ればイシノトキと之(ノ)を添たるは非なれども、猶是も一つの古訓なるべし。」』とある。つまり、『いし』とは『幼い』または『幼くて可愛い』意味と説く。これは、音ににとらわれて『にし』(主)を起源にした関東方言の『いし』(お前)との混同と思われる部分もあるが、美しい意味の『いし・いしい』と『いし』(お前)は何かつながりがある可能性は確かに捨てきれない。
辞書に掲載された近世語の『いし・いしい』(美し・美しい)は、『良い・味が良い』意味で、現代語の『良し』そのものである。助詞の『や・よ』が『え・い』に変化したのとは逆だが、典型的な音通現象の賜物と思われる。
近世の文献に出て来る『いしこい』は『自慢げでいる人をあなどっていう語。生意気だ。えらそうだ。こましゃくれている。』の意味、『いしこらしい』は、『生意気である、えらそうにしている、得意になっている』でほぼ同じある。どうやら茨城方言の『いしこい』は、千葉方言の『いしい』に通じ、『美味しい』の語源である『いし・いしい』(良い、味が良い)意味が過ぎたる言葉として『良すぎる、遣りすぎる』意味の『いしこい』(いし濃い:生意気である、えらそうにしている、得意になっている)が生まれ、さらに『らしい』を加えて、意味を強調して『いしこらしい』が生まれたと思われる。
『新編常陸国誌』には『悪キコトヲ言フ、シコイト斗モ言フ、古言ナリ、シコ男シコ女の意に同シ。』とあり、一説を唱えている。ここで『シコ男』は『醜男(しこお)』(@強く、たくましい男。Aみにくい男。また、男をののしっていう語。)、『シコ女』は『醜女(しこめ)』(容貌のみにくい女。醜婦(シユウフ)。また、黄泉(ヨミ)にいるというごつい女の鬼。)のことである。ちなみに、『醜』は『鬼』とも当てられ、『@強く頑丈なこと。A頑迷なこと。醜悪なこと。憎みののしったり、卑下したりする場合に用いる。』の意味である。
日本語の『い』『え』『し』『や』『よ』には混乱が見られる。過去の歴史を考えると、『いしこい』は『卑しい』(みすぼらしい)と同源であり、茨城には『いやしこい、やしこい、やしけー』が残る。
すなわち以下のように変化したと見られる。
卑しい→いやしこい→やしこい・やしけー→いしこい・いしけー。
『称呼』では、同じ言葉がなぜか逆の意味になっていると唱えているが、実は『美し(いし)』と『いしこい』は、ルーツが異なると考えた方が正しいと思われる。
古い言葉に『賊(にしもの)』(ぞく・わるもの)がある。常陸風土記に出て来る言葉である。近世語の二人称代名詞の『』が変化した『にし』が『いし』に変化したように、『悪し』の意味の『にし』が『いし』となりそれに『こい』が付いたとも考えられる。事実、悪い意味の『いしい』は群馬・千葉・山梨でも使われる。
その意味で『悪し』と『卑し』は同源なのかもしれない。
@・いしこい:栃木。
B・いしい:悪い:群馬・千葉・山梨。
・いしい:苦しい:群馬。
・いしい:荒々しい:千葉。
・いしこい:粗野で乱暴な:千葉。
・いじし:悪い:鹿児島。
・いしてー:悪い:千葉。
・いしれん:つまらない:鹿児島。
・いすたい:粗悪な:千葉。
Cその他。
・いしこい:元気な:宮城。
・いしこい:ふびんな:京都。
・いしこい:生意気な:大阪。
・いしたこい:汚いものや冷たいものに触ったとき・失敗したときの感嘆詞:鹿児島。
・いしたよ:汚いものや冷たいものに触ったとき・失敗したときの感嘆詞:鹿児島。
・いっしっきー:汚いものや冷たいものに触ったときの感嘆詞:鹿児島。 |
・いじこい |
【形】しつこい、意地悪 |
『意地が濃い』意味。青森では『足手まとい、うるさい』意味。 |
・いじこぐ
・いじこく |
【副】しつこく、意地悪く |
− |
◎いじごだっこ
◎いしこたっこ |
アリジゴク |
擂鉢状の形状を『いじこ』に例えたと考えられる。 |
◎いしごと
◎いーしごど |
【古】結いの仕事、農作業の助け合い |
関東方言と考えられる。
・いーしごと:栃木・神奈川。
・いーしごと:群馬。
・えしごと:栃木。
★あよ、おめ、いーしごどにはわりーしごどはねーっちけどよ、ほんとがー:なあ、お前、結いの仕事には悪い仕事は無いって言うけどさ、本当?。 |
・いじごめる |
【動】苛める |
− |
・いしころ |
石 |
標準語。『石塊(いしくれ)』。 |
◎いしす |
石臼 |
− |
・いじずぐ
・いじずく |
【形動】意地を張ること、意地に任せて |
『ずく』は『力ずく』の『ずく』と同じ。『意地尽』。方言だと思っていたら、広辞苑に掲載されている。
★長塚節『芋掘り』の一節:意地づくでは死んでも負けられねえといふんですからね。 |
・いしずみ |
石炭の古称 |
− |
◎いしたい |
【形】醜い、粗末な様、出来が悪い |
稲敷郡・行方郡。主に見た目が悪い意味である。
形容詞や形容動詞を形成す言葉に『這這の体(ほうほうのてい)』がある。『体(たい)』とは『てい』とも言う。
・いした:汚いものや冷たいものに触ったとき:鹿児島。
・いしたこい:汚いものや冷たいものに触ったとき・失敗したときの感嘆詞:鹿児島。
・いしたよ:汚いものや冷たいものに触ったとき・失敗したときの感嘆詞:鹿児島。 |
・いじたがり |
ひねくれ者、意地っ張り |
『意地集り』の意味。 |
◎いしただぎ
□いしたたき |
セキレイ |
那珂郡の方言。 |
◆いしたで |
束石の上に柱を立てた建物の呼称 |
『石建て』の意味。『ほったで』(掘建て)の対。 |
◎いしつき |
10月10日の収穫の祝いの行事 |
一般に『亥の子』『亥の子祝い』『亥の子突き』は、『陰暦一〇月の亥の日に、西日本各地の農村部で広く行われる刈り上げ祝いの行事。猪の多産にあやかり、また、万病を払うまじないとして亥の子餅を食べ、子供たちが家々の庭先を石や藁束(わらたば)でついて回ったりする。もと、宮中の年中行事として行われた。玄猪(げんちよ)。』とあり、西日本の行事である。 |
・いじっきたねー |
【形】飲食物や金品に対する欲が強い |
・いじっかり・いじっきたなし・いじっきたねー:食いしん坊:神奈川。 |
・いじっくい |
意地っ張り |
・いじっくい:山梨。 |
・いじっけ |
自分の思うことを通そうとする心がある傾向 |
『意地気』の意味。
・いじっけなし:意気地なし:神奈川。 |
◎いじっけ
◎いしっけ
・いしっけー
◎いしっこい
・いしってー |
【形】@醜い、見た目が悪い、A粗末な様、B出来が悪い、C良くない |
主に見た目が悪い意味である。
・いしてー:@ひどい・A作りの悪い:千葉銚子。 |
◆いしっこ
◆▲いしっころ |
石、いしころ |
『集覧:真』。『いしっころ』は俗語として使われる。元『石つころ』か。
・いしっころ:埼玉・群馬・山梨。 |
・いじっこい |
【形】しつこい、意地悪 |
『意地が濃い』意味。 ・いじっこい:青森。
・いじっこ:養子を貰ったあとで生まれた子:群馬。 |
・いじっこになる |
【動】意地になる |
− |
・いじっこく |
【副】しつこく、意地悪く |
− |
(いしっころかたい) |
【形】石のように硬い |
神奈川。 |
・いじつっつぐ |
【動】苛める |
『意地を突っつく』意味。『意地』は『こころ』の意味。
・いじつっつく:子供をからかう:埼玉。 |
(いして) |
【感】あらまあ、あらしまった |
鹿児島。 |
◎いしとび |
敷石または飛び石を伝って行くこと |
『石伝い』。 |
▲□△▽いしなご |
@▲お手玉、Aおはじき |
『集覧:多賀郡・新治郡』。
茨城県下ではお手玉の意味では広域分布、おはじきの意味は那珂郡の方言。那珂湊市では小型の巻貝を言う。
『石投・石子』は、平安時代からある古い言葉。お手玉の古形。『石をまいて、その中の一つを空中に投げあげ、落ちて来る前に、下の石を拾って、ともにつかみとり、早く拾い尽すことを競うもの。いしなどり。いしなんご。なないし。手石。』(広辞苑)。『石子・石投・擲石』。さらに『なんご・石などり』とも言う。
『称呼』には『石投:江戸にて手玉といふ。東国にていしなんご又なつこともいふ。信州軽井沢邊にてはんねいばなと云。出羽にてだまと云。越前にてななつごと云。伊勢にてをのせと云。中国及薩摩にて石なごといふ。』とある。
『俚言』には『なんこ:古へはなごといふ。石なごの略なり。』とある。
『おはじき』はさらに別名『石弾き』と言う。
『石投』は当て字の可能性が高く『石な子・石の子』の意味か。
@・いしなご:福島・岐阜・福井・京都・徳島・愛媛・大分・福岡。
A・いしなご:徳島・高知。
Bその他。
・いしなご:小石:新潟・福井・三重・大阪・京都。 ・いしなご:くるぶし:千葉。
・いしな:石:山形・北陸・岐阜・愛知・近畿。
・ちょーたご:いしなご:佐渡島。 |
◎いしなごとり |
お手玉 |
− |
◆いーしばらぐ |
【副】しばらく、随分時間が経っている様 |
『あいしばらぐ』とも言う。『いー』は強調の接頭語で、『相』または『合』の転。
★いーやいーしばらぐしてがらででくんだもんな:いやあ、随分遅くなってから出てくるんだもんなあ。 |
(いじば) |
石垣 |
静岡。 |
・いじばり
・いじはり |
いじばること。強情。また、その性質の人。いじっぱり。 |
『意地張り』。
・いじばり:宮城。
・いちぱり:いじわる:福島。 |
(いじばりご) |
子のない人が貰い子をした後で生れた実子。焼餅子。 |
宮城。 |
・いじばる
・いじはる |
【動】思ったことをどうしても通そうとする。強情をはる。 |
『意地張る』。『いじはる』は辞書には無い。
・いじばる:宮城。
・いしばる:意地を張る・居座る:神奈川。 ・えしばる:居座る:山形。 |
◎いしび ◆いしぴ ◆いしっぴ |
ヒノキまたはヒノキの中で特に硬いもの、ヒバ |
『ぴ』は『ひ(桧)』が訛ったものだろう。『石桧』の意味。 |
◎いしべー |
石灰 |
『石灰』は『いしばい』とも言う。
・いしべ:鹿児島。 |
◆いしぶぢ ◆いしぶち |
石打ち、石合戦 |
子供の遊び。雪合戦の石番。全国的には『印地打』。5月5日に子供達が川を挟んで行う行事。新治郡と土浦市に残っていた。
昔は各地にあったらしく柏書房がネット公開している『江戸東京歳時記をあるく 第44回:隅田川の印地打』に詳しく紹介されている。
『和漢三才図会』には兵器としての『ふりづんばい』が掲載されている。『和訓栞』には『つぎばい、瓢石をよめり。石を物にかけてつぶてに打をいへり。南都の小童はふりづんばいといへり』とあり『ふりづんばい』の略とされる。
・じんばい。『節用集』にある。
・ずんばい:東京。
・ずんばり:東京。浅草に『ずんばり横町』がある。
・ばえ:つぶて:山形。 |
・いじましい |
【形】@けちくさい、せせこましい。A歯がゆい。可愛そうになる。 |
辞書では漢字が当てられていない。多く連用形の『いじましく』が使われる。 |
・いじめつける |
【動】いじめる |
− |
▼△いじめる |
【動】叱る、責める |
・いじめる:東北・栃木・八丈島・長野・滋賀。 |
・いじもじ
・いんじもんじ |
【形動】もじもじ |
『婬じ(いんじ)』とは遊女を示す言葉。遊女が『もじもじ』するのを示した言葉のようにも思われる。 |
◆▲いしや
▲いしゃ
・いしゃー |
【代】@お前は、Aお前 |
『いし』+『は』の転。侮蔑的な呼び方。『集覧:北』。格助詞が隠れている。
・いしゃ:茨城・千葉。
★いしゃーいしゃが−おれはいしゃだ:お前は医者かい−おれは医者だ(俺は歯医者だ)。 |
(いじゃ) |
【複】行こう |
山梨。
『いざ(行こう)』の下略意味なのか『行くじゃ』の意味なのかは不明である。
広辞苑には『いざ:(人を誘い、または思い立って事をし始めようとする時にいう語) さあ。どれ。いで。』とあり『お出であれ』の意味とも取れる。
・いじゃ:行け:長野。
・いじゃ:お出でなさい:静岡。
・いじゃえー:行きなさい:静岡。
・いじゃござい:お出でなさい:静岡。 |
(いーじゃ・いーじゃん・いーじゃんか) |
【複】良いでしょう |
神奈川。
『良いんでは(ないの)』『良いにてやあるらめ』。
・いーじゃー:山梨。
・いーじゃんか:東京青梅市。 |
(いーじゃんけ) |
【複】良いでしょう |
山梨。
関西の『いーやんけ』と東西が繋がる言葉であり、現代語の『じゃん』にも繋がる。 |
▲いじゃーあり |
歩けないので這って行く人 |
古い標準語の『居さり』が転じた『躄・膝行(いざり)』(膝や尻をついて移動すること、足が立たない人)。『集覧:新・真』。
・いじゃり:千葉。 |
・いじゃがる
・いしゃがる |
【動】【古】退く、後ずさる、いなくなる |
『居去る』かあるいは『躄る・膝行る(いざる)』(物が置いた場所から自然にずれ動く。)等が考えられる。
・いじゃがる:手がかかる:静岡。 ★うしろにいしゃがれ:後ろに下がって。 |
◎いじやぎまぎれ |
悔し紛れ |
− |
・いしゃぐ |
会釈 |
・ごえしゃぐ:山形。 |
◎いじやぐ
・いじやく |
【動】あれこれうるさく言う、世話を焼く、腹が立つ |
『意地を焼く』意味。強調すると『いーじやぐ』になる。標準語の『肝焼く・肝を焼く』に当たる。
様々な文献を見ると『意地を焼く』は『肝を焼く』と似た表現でそれなりに広く使われていた形跡があるが、辞書に掲載されるほど流布しなかったようである。
本来は『いらいらする』であるが、次第に『腹が立つ』意味で使われるようになったと考えられる。
東京でもかつては『意地を焼く』(気をもむ、意地を張る)という言葉があったという。
★『土』:お品(しな)も隨分(ずゐぶん)お前(まへ)ぢや意地(いぢ)燒(や)いて苦勞(くらう)したことも有(あ)るからね。 |
・いじゃげぎる
・いじゃげきる |
【動】すっかり腹が立つ |
『いじやぐ』+『切る』。 |
◆いじやげる
▲いじやける
◆いじゃげる
・いじゃける
◎いじゃやげる |
【動】むかつく、いらいらする、頭にくる、腹が立つ |
『意地が焼ける』意味。もともとは、関東圏の訛と考えられるが、特に茨城訛で頻繁に使われる。強調すると『いーじゃげる』と長音表現になる。本来は『いらいらする』であるが、次第に『腹が立つ』意味で使われるようになったと考えられる。
時に『い』が略される事がある。
・いじやげる:千葉銚子。
・いじやける:茨城・栃木。
★ちーぎしょ、あいづらにゃーはーいーじゃげでいーじゃげでー、どぶさでもおんのめでやっかどおもったどやー:畜生!、あいつ等にはもう全く頭に来て、どぶにでも突き落としてやろうかと思ったよ。
★じゃげっごどじゃげっこどー:頭に来るよ。 |
・いしゃげる |
【動】後ろにずらす、退かす |
『いしゃる』の他動詞形。 |
◎いしゃごろし |
センブリ |
別名『医者倒し』と言う。 |
◆いしゃさま |
医者 |
『お医者様』。 |
◎いしゃさまむし |
テントウムシ |
下館市。 |
▼いじやし
・いじやしー |
【形】卑しい、食いしん坊、意地汚い |
『意地が卑しい』意味。
『日本方言大辞典』でも『意地卑』と当てている。
・いじいやしー:埼玉・群馬・神奈川・長野。
・いじやし・いじらし:いじらしー:食いしん坊:神奈川。 |
(いしゃしー) |
【形】久しい |
山梨・静岡。
・いしゃしかぶり:久しぶり:静岡。 |
◎いじゃしこんぼ でーこんぼ でーこんくったらからかった |
子供の囃し言葉の一つ。食いしん坊をからかう言葉。 |
− |
(いしゃなかせ) |
ゲンノショウコ |
富山・福井・静岡・愛知。
もともと生薬の整腸剤であったが、もともと『ゲンノショウコ』とは『現の証拠・験の証拠:(服用後ただちに薬効が現れる) 』の意味。下痢止・健胃に有効とされる。センブリと同様、日常の整腸剤として使われた民族語と見られる。
・いしゃいらず:新潟。
・いしゃだおし:岡山・徳島。『医者倒し』は標準語ではセンブリを言う。
・うめづる:静岡・三重。
・おみこしばな:富山。 |
・いしゃにかがる |
【複】診察を受ける、治療を受ける |
清音なら標準語だが、『掛かりつけの医者』とは言っても『掛かる』とは言わない。医者や病院は、『行く』『診てもらう』時代になった。 |
□いしゃぼー |
医者を罵る言葉 |
− |
・いしゃら |
お前達 |
本来は『いしら』だが『いし』を『いしゃ』と誤解して使っている表現。 |
・いじゃらがす
◆いしゃらがす
・いしゃらかす |
【動】どかす |
古い標準語の『居さる』が転じた『躄る・膝行る(いざる)』(物が置いた場所から自然にずれ動く)の転。
・いざらかす:岩手。
★じゃまのかだがらあっちさいしゃらがしとげ:邪魔だからあっちに退かしておいて。 |
・いじゃらす
・いしゃらす |
【動】後ろにずらす |
古い標準語の『居さる』が転じた『躄る・膝行る(いざる)』(物が置いた場所から自然にずれ動く)の転。 |
◎いじゃり ▲いじゃーり |
歩けない人 |
古い標準語の『居さり』が転じた『躄・膝行(いざり)』(膝や尻をついて移動すること、足が立たない人)の転。『集覧:新・真』。
・いじゃり:千葉。 |
・いじゃーりー |
【複】性格が悪い、人が悪い、意地が悪い |
− |
・いじゃる
■▲□▼いしゃる |
【動】【古】@座ったまま移動する、A物がずれ動く、B□退く、後ずさる、いなくなる、C隠居する |
『集覧:新・西・真・多』。
@A古い標準語の古い標準語の『居さる』『躄る・膝行る(いざる)』(物が置いた場所から自然にずれ動く)の転か。
・いじゃる:千葉。
・いしゃる:栃木。
BC『失さる』(消える、居なくなる)の転。『動く』が『いごく』に転じたのと同じ図式。
Dその他。
・いじゃござい:お出でなさい:静岡。元『いじゃりござれ』か。 |
・いじゃる
・いじゃーる |
意地悪 |
− |
(いじゃる・いじゃろ) |
笊 |
山梨。 |
・いじゃれ
◆いしゃれ |
【動】どけ |
きつい命令言葉。古い標準語の『居さる』が転じた『躄る・膝行る(いざる)』(物が置いた場所から自然にずれ動く)または『失さる』(消える、居なくなる)の転か。 |
(いーじゃんか) |
【複】良いじゃないか |
神奈川。 |
(いしゅげーし) |
復讐 |
神奈川。古語に『意趣:(イシとも) 恨みを含むこと。うらみ。』がある。 |
・いしょ
・いしょー |
服 |
『衣装』。昭和三十年代までは、着る物=着物=衣装だった。『衣装』には、単に衣服の意味だけではなく、着た様をも意味していたと思う。
・いしょ:宮城・宮崎・鹿児島・種子島。
・いしょー:岩手・秋田・宮城・山形・福島・千葉・宮崎・鹿児島・種子島・沖縄。
・いしょこ:子供の着物:宮城。
・えしょ:山形。
・んしゅ:沖縄。 |
(いじょー) |
【副】@どうしても、A非常に |
神奈川。形容動詞を副詞的に使っているものか。
@・あめがふってくれればいーにいじょーふらない:雨が降ってくれれば良いのにどうしても降らない。 |
・いしょーが |
【固名】石岡(いしおか) |
地名。 |
(いじょく) |
自宅で仕事をする職業。裁縫師・印判師の類。 |
『居職』。
・いじょく:座ったままでする職業:東京。若干の意味のずれがある。 |
・いじょーはる |
【複】意地を張る |
日本語のイ段音は口蓋化しているためY音が含まれ、必然的に生まれた言葉。 ・いじょーはる:静岡。 |
◆いしょーぶるまい ◆いしょーぶるめー |
嫁入り衣装を結婚式の翌日などに近所に披露した当時の風習 |
『衣装振舞』。 |
◎いしら |
【代】おまえら |
『いし』の複数形。
・いしらー:千葉銚子。 |
・いしらい ・いしらいー
・いしらえ
・いしらえー
・いしらげ
・いしらげー |
お前の家、お前らの家 |
− |
(いじらしー) |
【形】忙しい |
神奈川。標準語では『痛々しくかわいそうだ。可憐(カレン)である。』の意味。 |
・いじりあい
・いじりやい |
口論 |
古い標準語と言っても良いが辞書不掲載。
・いじりあい:東京。 |
◎いじりこんにゃぐ |
【形動】弄り回すこと |
− |
◆△○いじる |
【動】【古】弄る、いじめる、なぶる |
古い東国語。
『称呼』には『なぶる:関西にていらふと云。東国にていぢる又いびるといふ。西国にてあつかふといふ。』とある。
・いじょーる:静岡。
・ひじる:宮城。
★いじられる:苛められる。 |
(いじれってー) |
【形】じれったい |
山梨。 |
・いじれる |
【動】いらいらする、じれる、いじける |
・いじれる:山梨。 |
・いじわりー
・いじわるい |
【複】性格が悪い、人が悪い、意地が悪い |
『意地が悪い』。 |
◎いじをやぐ |
【動】むかつく、いらいらする、頭にくる |
様々な文献を見ると『意地を焼く』は『肝を焼く』と似た表現でそれなりに広く使われていた形跡があるが、辞書に掲載されるほど流布しなかったようである。 |
・いす いむ いる |
S、M、L |
− |
◎いずい(いづい) |
【形】@気持がわるい。Aおそろしい。Bいとわしい。Cひどい。Dきびしい。Eわるがしこい。F強烈で強情である。Gわる賢い。ずるい。H◎その他不快感を感じさせるせる様。 |
東北圏では多くは『いずい』と記して意味は『しっくりこない』意味。相馬地域だけ『いづい』と記してほぼ『居づらい』意味で使われているという。
古い標準語に『えずい』(気持がわるい、おそろしい、いとわしい、ひどい、きびしい、わるがしこい:悍(おぞし)の転)という言葉がある。どうやらそれが語源のようである。しかし今ではまず使われない言葉でもある。
H・いずい:窮屈・ちくちくする:青森・岩手。
・いずい:しっくりこない:宮城。 ・いずい:目がごろごろする:北海道。 |
(いすかにちごー) |
【複】大いに違う |
静岡。
古語の『いすか』は『予定が外れること。』とある。形容詞のウ音便は関西的である。 |
・いすかりーた
・いすかりーた
・いすかれーたん |
エスカレーター |
− |
・いすぐ |
【動】濯ぐ(ゆすぐ) |
標準語の中の訛り。『りすぐ』と言う人もいた。
・いすぐ:東京。 |
・いずぐ |
【動】@気持ち悪くなる、A吐く |
=『えずぐ』。『嘔吐く』(えずく)の訛。 |
・いーすぐめる
・いーすくめる |
【動】@言いまかす。言葉でやりこめる。A言いくるめる。 |
『言い竦める』。 |
・いすぐる |
揺する |
− |
◆いすす
◎いすーす
◎いすすだま |
石臼 |
かなり古い言葉。かつての茨城では東北同様『し』が『す』に変化する傾向があったことを証明する言葉。また、逆行同化現象とも言える。
当時はどの家にも必ずあった。繭玉餅を立てる時は石臼に縛り付けた。
・いしょーす:山梨。
・いすす:福島・埼玉。 |
(いずち) |
傷口がなおって肉が盛り上がること |
群馬。 |
◎いすぬげる |
【動】食べ物などの味が無くなる、気が抜ける |
− |
・いすぶる |
【動】揺すぶる、揺さぶる |
・いすぶる:東京。 |
▲□いずまい ◆いずめー |
@座っている姿勢、A行儀 |
標準語では@の意味で『居住まい』。『集覧:多』。
@・いずまい:姿勢:静岡。
A・いずまい:行儀:静岡。
・いずらめ:行儀・座り:宮崎・鹿児島。
・かねのいずまい:金額の大きさ:神奈川。 |
◎いずみ |
藁製の飯櫃を入れる容器 |
『いずめ』。
広辞苑には、民族語で『(飯詰か)@保温用に飯櫃(メシビツ)を入れる藁桶(ワラオケ)。乳児を入れて育てる藁製のかご。いじこ。えじこ。えずこ。』とある。
・えずめ:秋田。 |
(いーずら) |
【複】良いだろう |
山梨・静岡。
訛ってはいるものの古語の直系の言葉。古い茨城方言では『いーどら』。 |
・いする |
【動】揺さぶる |
『揺する』。標準語の中の訛り。
・いする:東京・神奈川。 |
・いずる |
【動】譲る |
標準語の中の訛り。 ・いずる:東京。 |
◎いずんぼ |
泉、池 |
古河市。 |
◎いせ |
− |
『縮縫:(動詞イセルの連用形から)網地を浮子綱(ウキヅナ)などにつけて漁具を作る際、網目をひろげるため網地より短い綱やわくをつけるが、このときの網地の長さと綱の長さとの差をいう。いせが大きいほど網は横に大きくひろがる。よせ。いさり。かきこみ。』(広辞苑)。 |
・いせーいー |
【形】調子が良い、体調が良い |
『威勢がいい』。 |
・いせぎ |
移籍 |
− |
・いせぎ |
遺跡 |
− |
・いせぎ |
@故人が残した財産・領地、A相続人、跡取り |
『遺蹟』。
A『あどいせき』とも言う。
・いせき:神奈川・静岡。
・いせき:長男・長女:千葉・静岡。
・いせき:婿養子:山梨。
・いせき:親戚:神奈川。『姻戚・縁戚』。
・りょーいせき:夫婦養子:神奈川。この場合の『いせき』は『遺蹟』とも『移籍』ともとれる。 |
・いせぎ |
田の用水をせきとめてあるところ |
『井堰』。
・いだい:河水を塞ぎ止めて田に水をひく溝:静岡。 |
◎いせきばらい |
用水路の清掃 |
|
◎いせくせ |
選り好み、言う事を聞かない様 |
『いせ』は『腹いせ』の『いせ』と同じで、『いせ癖』の意味か。 |
(いぜくる・いぜる) |
【動】弄ぶ、いじる |
静岡。 |
◎いせご
◎いせっこ |
養子をもらったあとでできた実子 |
『いせ』は『腹いせ』の『いせ』と同じ。『腹いせ』は広辞苑に『(「腹を居させる」から生じた語か) 怒りや怨みをはらすこと。』とある。 |
■いせこう |
伊勢信仰の会 |
『伊勢講』。
広辞苑には『伊勢神宮を信仰する人々の団体。室町初期より各地に成立。(毎月)一定の日に集まり飲食し、平生より醵金して交代で或いは総員で伊勢参宮し、太神楽を奉納した。伊勢太太(ダイダイ)講。太太講。』とある。 |
■いせこーだ
◎いせだ |
伊勢参りの費用にに当てる田 |
『伊勢講田』『伊勢田』。 |
◎いせごど |
難癖 |
『いせ』は『腹いせ』の『いせ』と同じ。 |
(いせちない) |
【形】我慢できない |
神奈川。 |
◎いせっぱり |
でしゃばり、意地っ張り |
『威勢張り』。 |
◎いせっぱる
・いせーはる |
【動】でしゃばる、意地を張る |
『威勢を張る』意味。
・いしぇはる:宮城。 |
▽いせのり |
布海苔 |
『伊勢海苔』。
・いせぶ:宮城。 |
◎いせも
◎いせもぐ |
セキショウモ |
− |
(いせやのだんご) |
− |
団子と言えば辛口の焼き団子とあん団子の組み合わせは今でも定番である。当時の土浦では団子と言えば『伊勢屋の団子』で土浦の街中に行ったおみやげの代表は今川焼きの『甘太郎』だった。 |
◎いせりがねー |
【複】威勢が悪い |
水海道市。 |
◎いせる |
【動】@ねじる、Aかき集める、B載せる |
@A広辞苑に『いせる:(寄セルの転とも、イは接頭語でセルは「迫る」の意とも)。@いせの方法で縫う。A海波が激しく立つ。』がある。名詞形に『縮縫(いせ)』がある。『平面の布を立体的に仕立てるために、表面には見えないようにこまかく縫いちぢめる方法。袖山(ソデヤマ)や、たびの爪先などに用いる。いせこみ。』の意味である。
・いせる:無理強いする:長野。
・いせる:怒る:岩手。
・いへる:憤慨する・臍を曲げる:青森。
B=『いっける』。 |
・いせーわりー |
【形】調子が悪い、体調が悪い |
『威勢が悪い』意味。 |
◎いそ |
口笛 |
鹿島郡。『嘯(うそ)』。 |
◎いそ
◎いぞ
◎いぞー |
コガネムシの総称 |
『愛想』の意味か。 |
・いーそ
・いーそー |
愛想 |
・いそつける:愛想を尽かす:宮城。 |
◎いそいど |
潜水業者 |
『磯人』。 |
(いーそーぐゎちでぇーびる) |
あけましておめでとうございます |
沖縄。 |
◎いーそざこ |
タナゴ |
『愛想雑魚』の意味か。 |
・いそしい |
【形】勤勉である |
『勤し』。多く連用形で使われる。奈良では元気な、熊本では快い意味。 |
・いそしむ |
【動】つとめはげむ |
『勤しむ』。 |
(磯原節) |
茨城県民謡 |
末の松並 東は海よ
吹いてくれるな 汐風よ
風に吹かれリャ 松の葉さへも (オヤ)
こぼれ松葉に なって落ちる
お色黒いは 磯原生まれ
風に吹かれた 汐風に
啼いてくれるな 渚の千鳥 (オヤ)
末の松並ァ 風ざらし |
◎いそひ |
干潮 |
『磯干』。 |
(磯節) |
茨城県民謡 |
(ハーサイショネ)
磯で名所は 大洗様よ(ハーサイショネ)
松が見えます ほのぼのと(松がネ)
見えます イソほのぼのと(ハーサイショネ)
水戸を離れて 東へ三里
波の花散る 大洗(波のネ)
花散る 大洗
ゆらりゆらりと 寄せては返す
波の瀬にのる 秋の月(波のネ)
瀬にのる 秋の月
三十五反の 帆を巻き上げて
ゆくよ仙台 石の巻(ゆくよネ)
仙台 石巻
泣いてくれるな 出船の時にゃ
沖で艪かいも 手につかぬ(沖でネ)
艪かいも 手につかぬ
潮風吹こうが 波荒かろが
操かえない 浜の松(操ネ)
かえない 浜の松
沖の瀬の瀬の 瀬で打つ波は
みんなあなたの度胸定め(みんなネ)
あなたの イソ度胸定め
荒い波風 優しく受けて
心動かぬ 沖の石(心ね)
動かぬ イソ 沖の石
咲いてみしょとて 沖には咲けぬ
私ャ湊の浜の菊 (わたしゃね)
湊の イソ 浜の菊 |
▲△いそべべ |
イソギンチャク |
『集覧:無記載』。
この場合のべべは『服』か『陰門』だとすれば、単なる方言とも言いがたい。『いそ』は『磯』のほか『愛想』が考えられる。
・いそべべ:山口。 |
◎いぞむし |
カナブン |
『愛想虫』の意味か。 |
(いそもの) |
海磯でとれる貝類 |
静岡。
標準語では『磯近くでとれる海産物。また、海草の類。』。 |
・いーそやす |
【動】誉めそやす |
− |
・いそらごど |
絵空事 |
− |
・いぞん
・いそん |
依存 |
本来は『いそん』だが今ではむしろ『いぞん』の方が多く使われる。 |
・いそんで |
【連】急いで |
撥音便。
・いそんで:八丈島。 |
□いた |
潮 |
地名に『潮来』が残る。『国誌』によると江戸末期にすでに廃れた言葉。 |
◎いた |
上がりがまち、上がり端 |
− |
◎いだ |
親戚 |
古河市。『枝』の意味。 |
・いだ
・いーだ |
【複】@いた、居た、Aあった、【形】B枝、C板 |
A・いだ:青森・福島。
・いた:岩手・秋田・宮城・群馬。 |
・いーだ |
【複】良い、良いんだ、好いな |
高齢者言葉。
2007年正月に土浦で聞いた言葉。『だ』は『である』が転じたから、『良いである』の意味。『良いにてある』。
『たり、なり』は、ルーツは同じと考えられ、その後形容動詞の『たり、なり』活用に変化した。茨城方言の体言を形成する助詞『だ、た』、『たり』が進化した形式ともいえる。 文語や近世語に『かくたるうえは』『かくなるうえは』が良く聞かれる。
・いーだー:山梨。
・いーだに:良いのに:山梨。
★そーたほーがいーだよ:そんな方法が良いよ。
★いーだんべ:良いだろう。 |
・いーだ |
間 |
古くは『いぁーだ』。 |
・いだいげねー |
【形】幼気ない |
・えだえげ:幼気:山形。 |
◆■いだおどし
■いだきり |
枝払い |
・えだぶち:神奈川。 |
◎いだかー |
竹の子の皮 |
『枝皮』の意味。 |
◆いだが ◆いだがー
・いだがい
・いだがや |
【複】@(誰か)居ますか、A居たのか、Bごめんください |
過去形ではない。『居たるか』。
@英語では『Anyone there』。
・いだがい:宮城・福島。
・いたかい:山梨。
・いだがん:福島。 |
◆いだがっぺー |
【複】痛いだろう |
− |
・いだきれ |
板、板切れ |
− |
◎いーだぐい |
間食 |
『間食い』。=『えーだぐい』。 |
◎いだくさ
◎いたくさ |
イラクサ |
『痛い草』の意味。この方言は、イラクサのもう一つの表現と思われる。標準語にならなかった茨城の言葉でもある。 |
◎いだぐする |
【動】@怪我をする、痛いような怪我をする、A痛い思いをする |
『痛くする』。清音なら調布生まれの叔母が良く使う。漢語の『怪我をする』が趨勢を締めて、文法上の誤りは無く、標準語とも言えるだろう。怪我は多く痛みを伴うが『痛くする』の方が痛みが欲感じられる言葉である。 |
△いたぐら |
胡坐 |
稲敷郡。西国言葉。
・いたぐら:滋賀・奈良。
・いたぐら:九州・鹿児島。 |
・いーたぐる |
【動】放言する、言いまくる |
・いたくる:鹿児島。 |
・いーだげ |
【複】存分、好きなだけ |
・いーだげ:青森。
・いーだけ:神奈川。 |
・いだげ
・いだげー |
【複】(誰か)居ますか |
英語では『Anyone there』。 |
◎いだげりゃいだぢのくそつけろ |
【慣】子供のはやし言葉の一つ |
子供が遊んでいるとき、『痛い』と言った子供へのはやし言葉。 |
(いたこ) |
口寄せをする巫女 |
古語『いた』。今では恐山の『いたこ』は誰でも知っているから、もはや方言とは言えないかも知れない。
・いたこ:青森・秋田。
・ゆた:沖縄・奄美大島。 |
(潮来) |
茨城県南東部の水郷の地名 |
広辞苑に『茨城県霞ヶ浦の東端、行方(ナメカタ)郡の水郷の町。鹿島・息栖・香取三社詣での船客が多かった。東北地方から江戸への水運の中継港として繁栄。現在は水郷観光の中心。』とある。
現代語の感覚では『いたこ』とはとても読めないが、古くは、『板来、板久』と言ったとされる。『語源辞典』には、『@イラコ(粗砂)の訛。Aアシタコ(朝来)の転。』とある。 |
□いだごー |
分村 |
『枝郷』の意味。 |
・いたこう |
イタリア人、イタリア軍 |
『イタ公』。 |
(潮来音頭) |
茨城県民謡 |
揃うた揃うたよ踊り子が揃うた
秋の出穂よりよく揃うた ションガーイ
潮来出島の真菰の中で アリャセー
あやめ咲くとはしおらしや ションガーイ
(返し)しおらしや あやめ咲くとはしおらしや ションガーイ
此処は加藤洲の十二の橋よ
行こうか帰ろか思案橋 ションガーイ |
◆いだこっぱ
▼いたこっぱ |
板の切れ端 |
− |
・いだーしー |
【形】気の毒な様 |
『労しい』(いたわしい)。中国では困難なを、大分では多忙なを、青森では惜しいを『いたしい』と言う。長野・岐阜・富山・香川では、こらしめるを『いたしめる』と言う。 |
・いだしがいし
・いだぢがいし |
痛し痒し |
慣用句が訛ったもの。『いたちごっこ』と混乱して『いたちかいし』とも言った。東京人も『いたちかえし』と言う。 |
・いだじぎ
・いたじき |
木製の板を敷くこと、板の間 |
『板敷』。今で言えばフローリングあるいはフローリングを敷いた部屋。。 |
・いだしなぐ
・いたしなく |
【副】致し方なく |
『致しようがなく』の意味。 |
・いだしね
・いだしねー |
【形】致し方ない、しょうがない |
『致しようがない』の意味。 |
・いだずらぼ
・いだずらぼー
・いだずらもん
・いだずらやろ
・いだずらやろー |
悪戯坊主、悪戯者 |
・いたずらぼ:神奈川。
・いたずらぼー:神奈川。
・いたずらもの:神奈川。
・いたずらもん:神奈川。
・いたずらやろー:神奈川。
・いたずらんぼー:神奈川。 |
◎いたずらもの |
不良、ちんぴら |
『悪戯者』には『ならずもの。無頼漢。』の意味がある。 |
(いただきました) |
【慣】ご馳走様でした。 |
これは茨城弁ではなく、長野南部から静岡にかけて使われる方言である。学生時代まかない付きのアパートでに静岡出身の人がそう言っていたのを思い出す。
方言とも言いがたい言葉でもある。言い換えれば文化的なものである。(おいしく)いただきました、(十分に)にいただきました を略した言い方ともとれる。『ご馳走様』は英語では『Thank
you. 』『It was delicious.』と言う。
日本語でも、本当に美味しかった場合『ああ、おいしかった。』等とも言う。『今日は本当にありがとうございました。』と言っても良い。
こうなると、方言には、@単なる訛りとA風俗・文化によって生まれた独特の言語文化の表出したものの場合があるようである。 |
・いだだぐ
◎いだたく
・いたたく |
【動】頂く、戴く |
★はいぐいだでーでくだせーよ:早く貰ってください。 ★こおたにたいへんいだでーちゃってすんませんでがした:こんなに沢山頂きましてすみませんでした。 |
・〜いだだぐ
◎〜いだたく
・〜いたたく |
【複】〜(して)いただく |
− |
・いーただす |
【慣】誤りを指摘する |
何故か辞書にも慣用句辞典にもない。『言い正す』意味。 |
・いだだまらんにぇ
・いだだまらんにゃい
・いだだまれね
・いだだまんね |
【複】いたたまらない、いたたまれない |
・えだだまらんにゃえ:山形。 |
・いだぢごっこ |
いたちごっこ、同事を繰り返して無益なこと |
清音なら標準語。 |
◎いだぢごっこ
◎いたちこっこ |
アリジゴク |
− |
◎いだぢのきんたま |
キツネノエフデ |
− |
□いたちのこしかけ |
サルノコシカケ |
− |
(いたちのみち) |
疎遠、音信不通 |
東京。
広辞苑に『鼬の道・鼬の道切り:鼬が前を横切ると、交わりが絶えたり音信が絶えたりするといって忌む俗信。また、鼬は同じ道を二度通らないという俗信から、往来・交際の絶えること。』とある。 |
◎いだぢめ |
イタチ |
− |
(いたっ) |
【複】行って |
鹿児島。 |
・いだつき |
蒲鉾 |
『板付蒲鉾』の略。
・いたつけ:新潟・長野。 |
・いだっきれ
・いだっこ |
板切れ |
・いたっきれ:群馬。 |
◆いーだっちば |
【複】良いと言ってるのに |
高齢者言葉。普通は『いーんだっちば』と言う。 |
・いだっつら
・いだつら |
悪戯、悪戯者 |
− |
・いだって |
【副】至って |
・いだって:青森。 |
◆いだっぱ
・いだっぱし
■いたっぱし
◎いだっぱぢ
▲いたっぱち
◎いだっぴら
◎いだっぺら
◎いだっぽろ |
板の切れ端 |
『集覧:猿』。『板つ端』『板つ片羅』。県内では『掲示板』を指す地域がある。
・いたっぱち:栃木。
・いたっぺら:群馬・神奈川・山梨。
・いたびっきれ:神奈川。
・いたびっこ:山梨。
★『土』:此(こ)の蒲團(ふとん)は板(いた)っ端(ぱち)見(み)てえなんだよなあ、此(こ)れとった方(はう)が爺(ぢい)は輕(かる)く成(な)ってよかつぺなほんに、さう云(ゆ)っても暖(ぬくと)くなるっちゃええもんだよ、俺(お)ら作日等(きのふら)見(み)てえぢやどうすべと思(おも)ったっきや。 |
◎いだっぱら |
板の表面 |
− |
■いだとり |
枝払い、枝打ち |
− |
(〜いーだに) |
【複】〜(すれば)いいのに |
山梨。 |
・いーだねーが
・いーだねーげ
・いーでぁねーが
・いーでぁねーげ |
【複】良いじゃないか |
★いーじゃねーか。俗語。
|
◎いだのま |
@板の間、A食堂、台所 |
『横座』(居間)の脇の板の間を指し、そこで座って食事をした。台所を広島では『いたば』と言うがこれは標準語。
@・いたまえ:宮城。『板前』は料理場を言う。 |
◎いだばし |
屋外の便所 |
甕の上に二枚の板を渡した屋外の便所。 |
■いだはらい
◆いだはれー |
枝払い、枝打ち |
・えだぶち:神奈川。 |
・いだぶる |
【動】いじめる、ゆする |
濁音化。『甚振る』。『甚振る』は広辞苑に『@激しく揺れ動く。ひどくゆれる。A激しく揺り動かす。B脅迫して、金品をせびりとる。ゆする。』とある。『甚振る』と『揺さぶる』は同源と考えられる。
・いたぶる:神奈川。 |
◎いだべっちょ ▲いたべっちょ |
板の切れ端 |
『集覧:猿』。
・いたびっこ:山梨。
・いたびっこー:静岡。
・いたべっこ:埼玉。 |
・いだましー |
【形】痛ましい |
濁音化。
『いたわしい』には『大切に思う』意味がある。
・いだまし・いたまし:惜しい・もったいない:福島。
・いだましー:惜しい・もったいない:岩手。
・いたましー:惜しい・もったいない:秋田・岩手・宮城・福島。
・いだましがり:物惜しみする人:宮城。
・いだますい:惜しい・もったいない:宮城・山形。
・いたわしー:惜しい・もったいない:岩手。
・いだわす:惜しい・もったいない:青森。 |
(いたまへ) |
板の間 |
宮城。『板間辺』の意味か。 |
・いだまめ |
枝豆 |
− |
◎いだまる |
【動】損をする、困る |
稲敷郡。『痛む』の変化したもの。 |
・いだみーる |
【動】痛み入る |
《板(いだ)で引っ叩かれた(ひっぱだがれだ)時(どぎ)の板(いだ)見える(みーる)?》。
・いだみった:福島。 |
□いだむら |
分村 |
『枝村』の意味。 |
・いだめる
▲いためる |
【動】痛める、いじめる |
=『いだめつける』。『集覧:西』。
・いたみ:病気:九州。
・いたむ:病気になる:九州。 |
・いだや
・いだやー |
【複】居た |
★あーこごにいだやー:ああ、ここに居たよ。 |
◎いだや ▲いだやー |
【複】痛いよー |
『集覧:久』。『痛』(いた)に強調の助詞『や』が付いたもの。 |
・いだりねー |
【形】無作法な様 |
・いたいもなか:鹿児島。
・いたいもね:鹿児島。 |
・いだる
・いたる |
【動】不良じみた行為をする、でたらめを言う |
『与太る』。 |
●いだれ |
よだれ |
・いだれ:栃木・群馬・新潟。 |
◎いだろっけ ▲いたろっけ |
【複】居たろうが、居ますか |
『集覧:猿』。この方言は茨城では珍しい部類に入る。普通は『いだっぺがな・いだっぺげ』と言う。 |
▲いたんこ |
船の踏み板等 |
『集覧:無記載』。幼児語。『板』の意味。 |
◆いだんば ▼いたんば
◎いだんばぢ |
板の切れ端 |
『板の端』が訛ったのは間違いない。 |
・いーだんべ
・いーだんべー |
【複】良いだろう |
茨城では古い言い回し。 ・いーだんべ:東京青梅市。 |
・いぢ
・いーぢ |
一 |
− |
◎いぢあご |
一歩 |
『あご』は『あごむ』(跨ぐ)の名詞形で『歩くこと』の意味がある。茨城と東北の密接な関係を示す代表語。
・あぐ:歩幅:岩手・宮城。
・あご:歩幅:山形。 |
(いちあんだー ) |
適当 |
沖縄。 |
・いぢいぢ
・いーぢいぢ
・いーぢいーぢ |
【副】一々、いちいち |
− |
◎いぢいん |
身内、親戚 |
久慈郡。『一員』『内縁』の意味か。 |
・いぢいん
・いぢーん |
一円 |
− |
◎いぢおぴあ |
シマガツオ |
シマガツオをエチオピアと言うのは、東京市場から入ったもので、昭和8〜9年頃黒田正子がエチオピアの王族に嫁ぐことになり、黒いものをエチオピアと呼ぶのが流行した。また10年ごろにエチオピアとイタリアが戦争をした頃急にシマガツオが捕れるようになり、シマガツオをエチオピアと呼ぶようになったと言う。 |
◎いぢが
◎いぢかー |
鍬入れ、鍬初め |
『一鍬』の意味。1月11日の行事。 |
・いぢがいに
・いぢげーに |
【副】ひっくるめて。おしなべて。 |
『一概に』。
・いっちがいに:静岡。 |
◎いぢがづいっぴ |
元旦 |
『ついたち』を意味する『いっぴ』は大辞林に掲載されている。原型と考えられる『いちひ』は辞書には無い。
ちなみにグーグルで『いちがついっぴ』をネット検索すると701,000件ヒットする。 |
◎いぢがみさま |
市場の神様 |
− |
▲▼△いちかる |
【動】@載る、乗る、A▲座る |
『集覧』では『ゐちかる』(座る)としている。『集覧:新・猿』。
近世語の『居敷かる(いしかる)』(どっかりとすわる。あぐらをかく。膝栗毛六「粽(チマキ)のうへに―・つてじやわいな」)の転。
『称呼』によれば『居る(すはる)といふことを 日向及北陸道又下野邊にてねまるといふ。畿内にていしかる(いじかる)といふ。関東又は泉州境邊にてへたばると云。伊豆にてぎかる(ぎがる)と云。但馬にてへこたれると云。長崎にてをらすと云。土州にていざると云。』とある。何と江戸時代の関西方言の流れの言葉だったことになる。いしかる・いじかる→いちかると変化したのだろう。
@・いちかる:福島・千葉・栃木・群馬・埼玉・東京・新潟・長野。
A・いしかる:佐渡島。
・いちかる:千葉・栃木。 |
■いちくあ
◎いちくあいり
◎いちくあいれ |
鍬入れ、鍬初め |
『一鍬』『一鍬入れ』の意味。1月11日の行事。1月3日のところもある。 |
■いちくあさま |
鍬入れの行事の後、箕の上に載せる鍬と米を入れた一生枡 |
− |
・いーちくたーちく |
【形動】服のボタンを掛け違えた状態、ちぐはぐ |
=『いっちくたっちく』の方がメジャー。 |
・いちくる |
【動】いじくる |
『弄くる(いじくる)』の清音化。 |
・いぢくわ ■いちくわ |
鍬入れ、鍬初め |
『一鍬』の意味。市内ではこのほか『鍬祝い』と呼ぶ地域がある。1月11日、田畑に松の枝を立て、米と餅をあげ、2〜3鍬入れて仕事始めとし豊作を祝う。『土浦市史・民俗編』によると、戦前はその時歌を歌ったという。かすかに記憶のある歌でもある。
『ひとくわさっくりこ ふたくわさっくりこ みつくわめの鍬先で 金銀茶釜掘り出した はいおめでとう』。 |
・いーちけ
・いーっちけ |
【複】良いらしい |
実際の会話では、さらに終助詞またはその複合語『か、が、がー、が、がー、がな、がなー、がな、がなー、がなや、がなーや、がな、がなー、がなーや、がや、がよな、がよなー、がやー、がよ、がよー、がよ、がよー、ど、どー、どな、どなや、どなよ、どや、どーや、どよ、どーよ、どよな、な、なー、なや、なーや、なよ、なよー、なーよ、に、にー、によ、によー、のに、ね、ねー、や、やー、やな、やね、やーね、やねー、よ、よー、よな、よなー、よね、よねー』等が加わることが多いのも特徴である。以下代表的事例表現。微妙なニュアンスで表現が変わる。 |
・いぢげっど
・いちけっと |
エチケット |
『いぢぎっど・いちきっと・えぢぎっど・えちきっと』とも聞こえる。 |
◆いーちけど
・いーちけどな
・いーちけどなよ
・いーっちけど |
【複】良いらしいぞ |
− |
・いーちけな
・いーちけなよ
・いーっちけな |
【複】良いらしいな |
− |
・いーちけや
・いーちけやな
・いーっちけや |
【複】良いらしいよ |
− |
・いーちけよ
・いーちけよな
・いーっちけよ |
【複】良いらしいよ |
− |
・いぢげーに |
【副】一まとめにして、おしなべて |
『一概に』。一般に否定形を伴うが肯定型で使う地域がある。
この言葉を見る限り、群馬でもタ行音の濁音化があることになる。また群馬は鼻濁音が無い地域とされているが、この場合の『げ』は濁音か鼻濁音かは不明であるが、端境地域として、双方が使われる可能性もある。
・いぢげーに:群馬。
・いちげーに:群馬。江戸言葉。
・いづげしょーぶ:全部を一回で運ぶこと:宮城。
・いづげに:全部を一回で:宮城。 |
・いぢげーにいがねー |
【複】一様にいかない、簡単では無い |
『が』は濁音・鼻濁音。 |
◎いちける |
【動】いじける |
清音化。 |
△いちける |
【動】載せる |
近世語の『居敷かる』(どっかりとすわる。あぐらをかく。)の転。また近世の関東方言に『きける』(載せる)がある。
・いちける:千葉・栃木・埼玉・群馬。 |
・いぢご |
イチゴ |
− |
・いぢご
□いちご |
越後 |
・りぇちご:福島。 |
◎いちこ |
@飯櫃を入れる藁籠、A赤ん坊を入れておく藁籠、B盆舟 |
=『いちっこ』。『いずめ。いじこ。えじこ。えずこ。つぐら。』。
神奈川ではでんぐり返しを『いちごっけーり』と言う。
@・いちこ:千葉。
・つぶら:長野。
A・いちこ:千葉。
・いつこ:宮城。
・つぶら:長野。
B高萩市。 |
◎いちこ |
くちよせ。梓巫(アズサミコ)。巫女(ミコ)。 |
『神巫・巫子・市子』。
広辞苑には『生霊・死霊の意中を述べることを業とする女。』とある。
北海道・青森・秋田・岩手では『いたこ』と言うが現代ではむしろこの方がメジャーな言葉で標準語化している。
・いちこ:千葉・神奈川。
・いちっこ:神奈川。
・えちこ:秋田。
・えんちこ:秋田。 |
◎いちこたっこ
◎いちこたっこめ |
アリジゴク |
擂鉢状の形状を『いじこ』に例えたと考えられる。 |
◎いちこやぎ ▼いちこやき |
餅やサツマイモ等を灰に埋めて蒸し焼きにすること、または焼いたもの |
灰に埋める時、掘った形状を『いじこ』に例えたと考えられる。あるいは『神巫・巫子・市子』の儀式に由来するか。
・いちこやき:栃木。 |
・いぢごろ
・いぢころ |
一ころ、簡単に負けること |
濁音化。 |
・いぢじがん
◎いぢちかん
◎いちちかん |
【数】@1時間、A一時(いっとき) |
標準語との近さと遠さを感じさせる言葉。後ろの『ち』は無母音。
@・いぢじがん・いぢちかん:秋田。濁音化は東北方言の特徴の一つだが、清音化と共存するのは秋田しかない。これは江戸の初めにそれまで常陸国を治めていた佐竹氏が厳封の上国替えとなり秋田藩の外様大名となった結果、秋田に茨城方言をもたらしたためと考えられる。
『にじがん・にちかん、さんじがん・さんちかん、よじがん・よんじがん・よちかん・よんちかん、ごじがん・ごちかん、ろぐじがん・ろぐちかん・ろくちかん、ななじがん・ななちかん・ひぢじがん・ひぢちかん・ひちちかん、はぢじがん・はぢちかん・はちちかん、くじがん・くちかん・きゅーじがん・きゅーちかん・きーちかん、じゅーじがん・じゅーちかん・じーじがん・じーちかん』。
Aは江戸時代の言葉を受け継いだもの。 |
・いぢじぐ
・いぢちく
◎いちちく |
イチジク |
− |
(いちちゃーびたが) |
【複】いつ来ましたか |
沖縄。
そのままではさっぱり解からないが、『ゃーびたが』とは、『歩む』の古形『歩ぶ(あゆぶ・あよぶ)』の複合語で、『歩びにてあるか』『歩びたりか』の意味と考えると理解できる。
英語でも『come』と『go』の定義は曖昧であり、慣用的に識別されているとも言え、一方、日本語では『行って来ます』という不思議な慣用語がある。『行って来ます』とは、そのまま、『行って来ます』だが、『行来ます』という表現とも思われる。 |
・いぢぜん |
一膳 |
・いっぢぇん:鹿児島。
・いっでん:鹿児島。 |
■いぢぜんめし |
シャモジでご飯を一回だけ盛ったもの。忌まれる。 |
『一膳飯』。 |
◆いぢだん |
@馬に載せて運ぶ荷物の単位。俵二俵。一駄。A草・麦・小麦などの単位。六束を言う。 |
@『駄』は、広辞苑『馬一頭に負わすだけの重量。三六貫。わが国の近世では本馬(ホンマ)で四○貫または三六貫を一駄の重さとする。』とある。
A・いちだ・いちだん:神奈川。 |
・いぢだんもにだんも |
【連体】さらに一段と |
『一段と』を強調した言葉。≒『にだんもさんだんも、じーだんも』。 |
◎いちっこ |
@飯櫃を入れる藁籠、A赤ん坊を入れておく藁籠 |
=『いちこ』。『いずめ。いじこ。えじこ。えずこ。つぐら。』。
@・いじっこ・えじっこ:弁当を入れる背負い袋:神奈川。
・いちっこ・えちっこ:弁当を入れる背負い袋:神奈川。
A・いじっこ:群馬。
・いちっこ:神奈川。 |
(いちっこ) |
易者、女の易者 |
静岡。 |
◎いちっこやぎ ▲▼いちっこやき |
餅やサツマイモ等を灰に埋めて蒸し焼きにすること、または焼いたもの |
『集覧:猿』。
・えじっこやぎ:囲炉裏の熱い灰で芋などを焼いたもの:福島。 |
・いぢっころ
・いちっころ |
一ころ、簡単に負けること |
|
・いぢでー |
一生、一代 |
・いっで:鹿児島。 |
・いぢでーじ |
一大事 |
・いちでーぢー:沖縄。このような江戸言葉に類似するものが沖縄にもあることは興味深い。『大』はハングルでも『でー』と言う。例えば『大韓民国』は『でーはんみんぐっく』と言う。 |
(〜いちに・〜いとに) |
【複】〜うちに |
山梨。逆行同化したと見られる。 |
・いぢにさんにぢ |
− |
意味は通じるが、通常は『一二日』・『二三日』と言う・ |
◆いぢにぢさんげー ■▽いちにちさんげー |
【形動】一日中 |
仏教用語の『散華』(仏を供養するために花を蒔く法要、読経しながら列を作りハスの花をかたどった紙を撒き散らす法要)に例えたか?。
・いちにちさんがら:群馬。
・いちにちさんげー:東京多摩。
・いちにちひがらし:神奈川。
・いちにちひょーらく:静岡。 |
◎いぢにぢまいにぢ |
毎日毎日 |
− |
・いぢにん |
@一人、一人の人メンバー、A社会的に地位のある人 |
@古語では一人の人を『いちにん』と言った。思えば古くは『社会のいちにん』などと言った。今では『社会の一員』である。
また現代では、人数を数える場合はまず『いちにん、ににん』とは言わない。これはかつて西洋化に従って和語の数え方に変えて生まれた言葉だろうが、今では単に数字を数えるだけになってしまった。
A古語では、右大臣や天皇を指した。 |
・いぢにんめ
・いぢにんめー |
【形動】一人前 |
・いちにん:神奈川。 |
◎いぢのほし |
北極星 |
− |
(いちばのきやぁっぽ) |
嘘 |
神奈川。
『その場限りの蓋:嘘』の意味か。 |
(いちはやい) |
【形】一番速い |
静岡。
現代では副詞形の『逸速く』しか使われないが、古くは『逸速し』があった。 |
・いぢばん |
一番 |
・いっち:鹿児島。
・いっちゃん:東京。
・いっちょー:神奈川。
・いっちん:鹿児島。
・いっつん:鹿児島。
・いづばん:青森。 |
◎いぢばんうない
◎いぢばんおごし
◎いぢぶねー |
田の最初の耕起、荒起し |
− |
◆いぢばんがぎ
◎いぢばんかぎ
◆いぢばんぐさ
・いちばんぐさ
◎いぢばんたのくさ
■いちばんたのくさ
■いぢばんどり |
田植え後1番目の除草 |
『一番掻き』『一番草』『一番取り』。 |
◆いぢばんぎり |
麦畑の最初の中耕 |
− |
◆いちばんだま |
最初に成った西瓜 |
『一番玉』の意味。 |
・いぢばんばが
◆いちばんばか |
稲刈りで最初に刈り始める場所、その行為 |
『一番捗』の意味。=『おにばが』。
最初に稲刈りをする人は熟練者とされる。東茨城郡では、田の耕起を3人でする場合、一番未熟な者を『さんばんばか』と言う。
★せーしょにいねかりやんなぁいぢばんばがだがんな−んだらおれぁばがだねーがらやんね:最初に稲刈りやるのは一番馬鹿(一番捗)だからな。−なら俺は馬鹿じゃないからやらない。 |
・いぢひとり |
@一人の人、メンバー、A唯一の人 |
@★いぎのごったのはいぢひとりだどよ:生き残ったのはたった一人だとよ。
A★とーせんすんのはいぢひとりしかいめ:当選するのはたった一人しかいるまい。 |
・いぢべー
▲いちべぇー |
【副】人一倍、ひとしお |
『一倍』。『集覧:無記載』。 |
◆いぢぼーない
◆いぢぼーねー |
水田で荒起しの後で最初に耕すこと |
− |
・いぢまーいん
・いぢまーえぃん
・いぢまーえん |
一万円 |
二万円以上も同じ言い回しになる。 |
◎いぢまぎ
◎いぢまげ |
【古】一族、一家 |
濁音化。『一巻』。『まけ(一族、血統、すじ)』(類)。茨城の方言はこの言葉に関する限り、どうやら濁音化していることが茨城方言たる所以であるらしい。
国立言語研究所では、1970年に『社会構造と言語に関する基礎的研究(2)』を著し、『マキ・マケと親族呼称』と副題をつけて調査結果が出ている。それを加えた類似語は以下の通りである。
(同属)
・いちぞく:一族。
・いちまき:一巻:神奈川・山梨。
・いちまく
・いちまけ:群馬・神奈川。
・いちみょー:神奈川。
・いちもん:一門。
・いちもんいっとー
・いっきょ
・いっか:一家。
・いっけ:一家:神奈川・長野。
・いっけん
・いっと:一党・一統:神奈川。
・いっとー:一党・一統:神奈川。
・いっとーうち
・いっぱ:一派。
・とっけかぶ
・いっけうち
・うちうら
・うちま
・えっけまつい
・えんか:縁家:神奈川。
・えんかうち:神奈川。
・えんじゃ:縁者。
・えんじゃまつい
・おまっしゃ:神奈川。
・おやく:秋田・神奈川。
・おやこ:青森・岩手・山形・千葉・群馬・埼玉・神奈川・八丈島・石川・福井・山梨・長野・静岡・愛知・滋賀・京都・三重・兵庫・島根・広島・鹿児島。現代では普通に考えれば単に『親子』と考えてしまうが辞書にもあるように、結びつきの大きな代表語として使われ、それが親類の意味に発展したと思われる。
・おやく:静岡。
・おやこ:親戚:山梨。
・おやこし・おやごし:福岡。
・かうち
・かぶ
・かぶうち
・かぶち
・かぶない
・しまぎ:青森。
・しんぞく:親族。
・しんどく
・しんるい:親類。
・しんるいまき
・つる
・つるい
・どーけ:同家。
・ばっけ:末家。
・ひっぱり
・ひっぽー
・ひとまき:神奈川。
・まく:群馬。
・まき:神奈川。
・まけ:福島・栃木・神奈川。
・まつい
・み:神奈川。
・みうち:身内。
・やうち
・るい:類。
(血筋・血統)
・いえすじ:家筋。
・いっとー:一統・一党。
・えすじ
・けっとー:血統。
・すー
・すーき
・すじ:筋。
・すじめ:筋目
・すず
・すじのけ
・すじみち
・そん:孫。
・ちすじ:血筋。
・つる:蔓:神奈川。
・とー:党・統。
・まき
・まつい
・もっとー |
(いちまん) |
糸満市のこと |
沖縄。 |
(いちむ) |
【動】息む |
神奈川。 |
・いぢもぐいっさん |
【副】一目散 |
『一目』+『逸散・一散』。 |
・いぢもんなし |
【形動】一文無し、お金が全く無いこと、貧乏なこと |
『一文無し』。 |
◎いぢやかざり ◆いぢやまづ |
一夜松 |
濁音化。大晦日に飾る門松は忌み嫌われ、全国的なもの。 |
(いちゃつく) |
【動】狼狽する |
『いちゃつく』には『あれやこれやと、ぐずぐずする。ごたごたする。』の意味がある。 |
◎いぢやみそ |
作りたての味噌 |
− |
◆いぢやむがい
◆いぢやむげー |
大晦日に門松用の松を刈りに行くことで忌み嫌われる |
濁音化。『一夜迎え』。 |
◎いぢやもぢ |
大晦日に餅をつくこと。忌まれる。 |
− |
・いぢゃもん |
いちゃもん、言いがかり |
− |
(いちゃりばちょーでぇー) |
出会えば兄弟 |
沖縄。『行き会えば兄弟』の意味か。
カ行音がタ行音と交替する傾向は茨城を含めて東北方言に顕著であるが沖縄にもある。 |
・いぢよ
・いぢよー
・いちよー |
【副】一応 |
・いちよう:沖縄。
必然性のある訛り。日本語のイ段音には、『y』音が含まれ、『itiou』は必然的に『itiyou』『ityou』と聞こえる。 |
・いちょー |
【形動】異常 |
− |
◎いぢょーいも
◎いちょーいも |
ヤマイモの一種。 |
− |
・いちょきちゃ |
おはじき |
『常磐沿線』掲載語。『石おきしゃご』の意味と考えられる。 |
◎いちょっぱ
◎いぢょーまんのー |
水田用の万能鍬で刃先がイチョウの葉のかたちをしたもの |
− |
・いぢよーに |
【副】一様に |
濁音化。
・いっぢょい:鹿児島。 |
・いぢら |
辺り、位置 |
『位置等』の意味と考えられる。 |
(〜いちら) |
【助】〜儘・任・随(まま) |
山梨・静岡。
否定を伴う。『いちり』と同源と見られる。
・そのいちら:そのまま:静岡。 ・ほのいちら:そのまま:山梨。
・やまへいったいちらかえらない:山へ行ったまま帰らない:静岡。 |
・いぢらぐ |
【古】一段落 |
『一落』のこと。清音なら標準語だが死語。 |
(いちらつ) |
ひととおり、あらまし、一件 |
東京。いちらつをお聞きになりませんか。
広辞苑に『一落:@一段落のこと。A事件。一件。B一度没落すること。』とある。 |
・いぢり |
一里 |
− |
(〜いちり) |
【助】〜きり |
静岡。
否定を伴う。『いちら』と同源と見られる。
標準語の『限り:(「で(は)ない」を伴って) その範囲に該当しないことを示す。』と似た同じ用法。
・そのいちり:それっきり:静岡。
・それいちりあわない:それっきり会わない:静岡。 |
・いぢりづが
・いぢりつか
・いちりつか |
一里塚 |
濁音化+清音化。
《その塚をいじると何か良い事があるのかも》 |
・いぢるい |
同類、親類 |
『一類』。
・えぢろえ:山形。 |
・いぢんち |
@一日、A一日中 |
@いちんち:神奈川。 |
・いぢんちさんげ
◆いぢんちさんげー |
【副】一日中 |
仏教用語の『散華』(仏を供養するために花を蒔く法要、読経しながら列を作りハスの花をかたどった紙を撒き散らす法要)に例えたか?。
・いちんちがひょーらく:静岡。『ひょーらく』は『漂落:おちぶれること。』か。
・いちんちさんげん:神奈川。
・いちんちひがさら:静岡。 |
・いぢんちじー
・いぢんちじゅー |
【副】一日中 |
・いちんちじゅー:神奈川。 |
・いぢんちひがら |
【副】一日中 |
『日がな一日』。
・いちにちひがらさ:神奈川。
・いちにちひがらし:神奈川。 |
・いっちらおっちら |
【副】えっちらおっちら、やっと歩く様子 |
− |
・いづ |
【代】何時(いつ) |
現代語からすれば濁音化していることになるが、現代語の『何』にあたる古語は『いづ』と書き、『何方(いづかた)』(どちらの方向・方面。どちら。)『何処(いづこ・いづく)』が残されている。 ・いづ:青森。
★いづがらだがなー:いつからだろう・いつからだかねえ。 |
・いづあだり |
いつ当たり、いつ頃 |
− |
◎いづいづ
◎いついつ |
【代】何時(いつ) |
濁音化。 |
◎いづいっか
◎いづのいっか |
【代】何月何日 |
− |
・いづいっか |
【複】いつ(なら)居るの? |
− |
◎いつおる |
【動】乗る |
石岡市。『いっかる』との関連性は見出せない。『居座る』意味か。 |
◎いっか |
親類 |
『一家』の意味。 |
・いづが
・いーづが
▲いーつか |
【副】いつか |
『集覧:猿』。
現代標準語では主に未来を指すが、茨城では過去を含めて言う。
・いっか:先頃・さる時:東京。
・いっちゃ:鹿児島。一厘の意味でも使う。 |
◎いっか |
@【代】いつ、何日に、【副】何日か、幾日か、何日間 |
『幾日』(いくか)。
・いっか:群馬・山梨。
★とうきょーさいったのいっかだ?:東京に行ったのはいつだっけ?。
★とーきょーさいっかいったんだ:東京に何日間行ったの?。
★あっちに居(ゐ)ればえゝが幾日(いっか)でも明(あ)けると炊(た)かれっちやっても仕(し)ゃうねえかんな。 |
・いっか |
【数】五日 |
− |
◆いっか
◆いっかー
・いっかい
・いっけ
・いっけー |
【複】@居るかい、A要るかい |
この標準語訳はやや古い言い回しで、今なら『居る?、要る?』だろう。 |
・いっがい
▲◇△いっかい |
【形】大きい |
『集覧:真』。『いかい』の促音化。
『いっかい』は、『聞書』に京言葉とある。また、井原西鶴の作品にも出て来る。
・いっかい:関東・静岡・三重・滋賀・福井。 |
・いっかいぽっきり |
【形動】1回だけ、いっかいこっきり |
− |
・いつかうぢ |
以前 |
・いつかじゅー:神奈川。 |
・いっかうぢ |
一家内、一族内 |
− |
・いづかが
・いづがか
・いづががが
・いづかがに
・いづがかに
・いづがかっか
・いづかかにか
・いづかかんか |
【副】いつか |
『何時か彼か』。
・いつかかつか:宮城。 |
・いっかがる |
【動】@掛かる、A載る |
− |
・いっかげる |
【動】@掛ける、A載せる |
− |
・いっかさる |
【動】載る |
− |
・いっかせる |
【動】載せる |
− |
・いづかだ
・いづかだごろ
・いづっかだ
|
【代】何時(いつ)、何時頃 |
『何時方』『何時方頃』の意味。
★いづかだだったがきたっけど:いつだったか来たよ。
★はじまんのはいづかだだ:始まるのは何時(なんじ)だい。
★いづかだごろがにきたんだっけがよー、わがんねんだいはー、しゃーんねよなー:何時頃かにきたんだけどさあ、解らないんだよ、仕様がないよねえ。 |
・いづがっか
・いづーがかっか |
【副】いつか |
・いづがかづが:秋田。 ・いづがかつか:宮城。
・いつかかつか |
・いっかってぐ |
【動】乗って行く |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。
★こーんきさいっかってげなー:耕運機に乗って行きな。 |
・いっかど |
【形動】ひとかど、一人前 |
『一廉、一角』(ひとかど)の湯桶読み。古い言葉。
・いっかど・えっかど:埼玉。 |
(いっかど) |
【副】一応、すっかり、全く |
神奈川。 |
・いっがな |
@【連体】どんな、A【副】どうしても |
『如何な』(いかな、いっかな)。濁音化。
Aは死語に近い標準語の濁音化。 |
・いづがに |
【副】いつだったか、いつか |
− |
・いっかに |
【代】いつ、何日に |
『幾日に』(いくかに)。 |
・いづがのひに |
【副】いつだったかの日に、何時の日か、ある日 |
− |
・いづがは〜 |
【複】いつかは〜 |
− |
・いづがひに |
【副】いつだったかの日に、何時の日か、ある日 |
『何時かの日に』。
・いつがひに:いつ:東京。
★いずがひにゃーなおっぺー:いつの日か治るだろう。 |
・いっかも |
【副】何日も、幾日も |
『幾日も』(いくかも)。 |
・いっがもしんね
・いっかもしんね |
【複】居るかもしれない |
=『いるがもしんね』。 |
・いっかもない
・いっかもねー |
【複】何日も無い |
『幾日も(いくかも)無い』。
・いっかもない:何とも無い:静岡。 |
・いっから |
【複】@居るから、要るから、B行くから |
A・いっから:東京。 |
・いっからがる |
【動】載っている、乗っている |
− |
・いづがらだがな
・いづからだかな
・いづっからだがな |
【複】いつからか |
★あだらしぐなったのはいづがらだがなや:新しく変わったのはいつからだろうな。 |
・いっがる
◆■▲△いっかる |
【動】@載る、掛かる、A△乗る、B座る |
『集覧:行・久・西・真・新・北・筑・東・稲・鹿・猿』。
@A同義語の古語の『載す』との関連は見出せない。『居つかる』あるいは『居にてある』意味と考えられる。古語の『い繋る(いつがる)』(【自四】(イは接頭語)
糸でからげつづる。つながる。万九「紐の児に―・り居れば」)とは異なるようである。『活かる・埋かる』の即音形なのだろうか。また『結い付ける』の擬似自動詞とも思える。
・いっからい:乗るよ・載るよ:群馬。元『いっかるわい』と考えられる。
・いっかる:福島・千葉・埼玉・群馬・長野。
★くるまさいっかれな:車に乗りな。
B近世語の『居敷かる』(どっかりとすわる。あぐらをかく。)の転。
・いっかる:栃木。
Cその他。
・いっかる:転倒する:長野。 |
◎いっかる |
【動】言いつけられる |
『言いつかる』。 |
■いづぎ
◎いづき |
@裁縫塾等で住み込みの生徒、A居付く事、B落ち着き |
@『居着き』の意味。
A・いつき:自分の村の者:神奈川。
B・えづぎ:おちつき・座り:山形。
★いづぎわりー:落ち着きが無い。 |
・いーづぎ
◆いーつぎ |
@【古】言い伝え、村内の口頭での伝言、A相続すること、相続人 |
@『言い継ぎ』。
・いーつぎ:群馬・神奈川。
A『家継ぎ』。 |
◎いっき |
【形動】@一気にする様、A一人でする様 |
@・いっき:直ぐに:鹿児島。
・いっきに:直ぐに:静岡。
A現代語ではほとんど『一気』の意味だが、茨城では、『一騎』の意味でも使う。 |
・いっきーし
・いっきーしゅ |
一級酒 |
− |
◎いっきだぢ |
独り立ち |
『一騎立ち』の意味。 |
・いっぎに
・いーっきに
・いっきーに |
【副】@一気に、A一人で |
− |
・いっぎのみ |
一気のみ |
濁音化。 |
・いっきびかっきびかまいだぢ
・いっきびだーかっきびだ |
子供が怪我をしたり失敗したときのはやし言葉 |
『いい気味(きび)』と『皮黍(かわきび)』の語呂を合わせたものだろう。 |
◎いーつぎまーし |
村内の口頭での伝言 |
− |
・いーつぎまーす |
【動】伝言する、言い伝える |
『言い継ぎ回す』意味。 |
・いっきゃー
◎いっきゃう
◎いっぎょー |
【動】行き会う |
『行きつ来会ふ』意味か。
・いっきゃう:福島。いっきゃった:行き会った:福島。
・いっきょー:福島・鹿児島。 |
◎いっきゃり |
【副】@一気に、Aまっしぐらに、Bいきなり |
『一気遣り』の意味。 |
・いっきゃーれる |
【動】あばれる。さわぐ。 |
− |
◎いっきょー
◎いっぎょー |
面会 |
稲敷郡。 |
・いっぎょい |
勢い |
・いっぐぉい:鹿児島。
・いっげ:鹿児島。 |
・いづぐ
◆いづく |
【動】@住みつく、嫁ぎ先に落ち着く、A来てそのまま帰らずにいる、B落ち着いてその場に居る、Cご飯が鍋の底にくっ付く |
『居着く』の濁音化。
Cの意味が独特。
・えづぐ:山形。 |
・いっぐ
・いっく |
【動】行く、行って来る |
− |
・いーつぐ
・いいつぐ |
【動】伝言する、言い伝える |
『言い継ぐ』。 |
・いーつぐ |
【動】相続する |
『家を継ぐ』。 |
・いっぐら
・いっくら
・いーっくら |
【副】ゆっくり |
★いっくらしてげー・いーっくらしてぐどいーや:ゆっくりして行きなさい。 |
・いっぐら〜
▲いっくら〜
・いーっくら |
【副】幾ら〜 |
『集覧:西』。
・いっくら:群馬。
★いっぐらが・いっくらが:いくらか。
★いっぐらがも・いっくらがも:少しは・いくらも(ない)。
★いっぐらでも・いっくらでも:いくらでも・いくらも(ない)。
★いっぐらほど・いっくらほど:いくらどれほど。
★いっぐらほども・いっくらほども:いくらでも・いくらも(ない)。
★いっぐらも:いくらでも・いくらも(ない)。 |
・いーっくら |
言い合い |
『言い競べ』。 ・いーっくら:群馬。 |
・いっくり
・いーっくり |
【副】ゆっくり |
・いっくり:静岡。 |
・いっぐる
・いっくる |
【動】行く、行って来る |
・えっくりかえっくり:行ったり来たり:山形。
★いっぎやーす:行って来ます。
★おれがいっくっから:俺が行って来るから。
★んだらいっくるよー:じゃあ、行って来るよ。
★『土』:そんじゃ、おとっつあ俺行っ来っから:それじゃあ、お父さん俺行って来るから。 |
・いっくれ
◆いーっくれ
◎いーっくれー |
【副】いい加減、十分、いい位 |
・いっくれ:青森・岩手。 |
・いっげー |
【形】大きい |
− |
◎いっけ |
@一つの家、家族、A同じ家系の人々、同族 |
『一家』。
A・いっけ:神奈川。
・いっけしんるい:一族一門:東京。同義語の繰り返し。
・いっけん:高知。 |
◎いっけうぢ |
一族 |
『一家内』の意味。
・いっけうち:群馬・岡山・香川・九州。
・いっけしょ:新潟。『一家衆』。 |
・いっけでぐ |
【動】載せて行く |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
◆いーつけど
・いーっつけど |
【複】良いらしいよ |
− |
◆いっけ |
【複】@居ますか、A必要ですか、B居た |
− |
(いっけ) |
最初 |
神奈川。 |
・いーっけ |
【複】@良いかい?、良いんだって?、A良かった |
@★ほんでいーっけがー:それで良いんだっけ?。
★ほんとにいーっけがよ:本当に良いんだって?。
A『良いけり』。
・いーっけ:静岡。
★ぜーぶんいーっけわ:随分良かったよ。 |
・いっけーこっきり
・いっけーぽっきり |
一回だけ、一回こっきり |
当時の土浦では『一遍』は殆ど使われなかった。
・いっけーこっきり:神奈川。
・いっぺんこ・いっぺんこっきり:神奈川。 |
・いっけでぐ
・いっけてく |
【複】乗せて行く、載せて行く |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いっけどぐ
・いっけとく |
【複】乗せて置く載せておく |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
◎いっけなが |
一族 |
『一家中』の意味。 |
◎いづける ◆▲▽いつける
◎いっける |
【動】言いつける |
短音化。『集覧:行・真・新・西・那・猿・稲』。
★『土』★学校(がつこ)の先生げ姉訴(えつ)けてやっから、腹痛くったって我慢してるもんだ:学校の先生に言いつけてやるから(な)、腹が痛くたって我慢しているものだ。 |
◆▲□△▼いっける
◎いっけーる |
【動】@載せる、乗せる、A置く、B倒れる |
@『結い付ける』『上に置く』の意味か。
『日本方言大辞典』によれば、江戸・常陸言葉である。
牛馬に物を載せる場合縛り付ける必要があるため、『結い付ける』意味が、やがて『載せる・乗せる』『置く』に変化したと見られる。 ・いっける:福島・茨城・千葉・栃木・埼玉・群馬・東京・神奈川・長野・静岡。長野では『持ち上げる』意味もある。
・いつける:福島・長野・静岡。
・いっちける:栃木・埼玉・群馬。
・えっける:埼玉。
・けける:山梨。
・ひける:神奈川。
・ゆける:岡山。
A@の転。
Bの場合は『ひっける』の訛。 |
・いっけろ |
【動】載せろ、置け |
− |
◎いっけんごめ ■いっけんごめら |
一軒ごとに、一軒残らず |
『籠め・込め』(もろともにの意。〜ぐるみ。〜ごと。)。 ★『土』:水浸(みづびたし)に成(な)った家(いへ)さは役場(やくば)から一軒毎(えつけんごめら)に下(さ)げ渡(わた)しになったんだよ。『下げ渡し』とは『官府から民間に下付するもの』のことでここでは食料品を指す。
★『土』:隣近所(となりきんじよ)一軒毎(えっけんごめら)役(やく)にや立(た)たねえだから、いや本當(ほんたう)だよ、俺(お)ら十五日(んち)下痢(くだ)って癒(なほ)ったが俺(お)ら強(つよ)かったかんな、いや強(つえ)えとも全(まった)く。酔った卯平の自慢話を語った一節。農民はデリケートである。ガラスの心臓を持ってるようなところがある。愚痴と慢心が共存する。もっともこれは都会の病めるサラリーマンの酒の場の日常風景にも見られる。 |
◎いっけんつぼ |
村八分 |
− |
▲△いっこ
◎いっころ |
子犬 |
『集覧:久・多・猿』。
・いっこ:福島。 |
・いっこ |
【副】一向 |
・いっこ:千葉。 |
◎いーっこ |
@言い合い、A良い子、B結い |
@・いーっこ:山梨。 |
◆いっこぐ
・いっこぐもん |
頑固者 |
『一国(者)・一刻(者)』。
・いっこっ:鹿児島。
・いっごどもん:鹿児島。 |
(いっこーさいこー) |
埒が明かない様 |
佐渡島。『一向』(少しも。全然。全く。完全に。)の語呂合わせ言葉か。 |
・いっこしき |
【副】まるっきり、【形動】駄目な様 |
『一向しき』。『しき』は強調の助詞。
・いっこーしき:東京。 |
・いーっこする
・いーっころする |
【複】言い合いをする |
− |
・いっこっつ
・いっこっづ |
【複】一個ずつ |
− |
・いーっころ |
言い合い |
『言いい競べ』の意味。 |
・いーっころす |
【動】悪口を言う |
『言い殺す』意味。 |
・いーっこんなる |
【複】@言い合いになる、A良い子になる |
− |
・いっこに |
【副】一向に |
短縮形。
・いっこ・いっこじゃ:鹿児島。 |
・いっこねー |
【複】居るはず無い |
・いっかねー:山梨。 |
・いーっこねー |
【複】@良いはず無い、A言うはずない |
− |
・いっこも |
【副】一向に、少しも、全く |
・いっことん:一向:鹿児島。
・いっこも:徳島。
★このばげづそごがぬげででいっこもはいんねえ:このバケツ、底が抜けてて一向に入らない。 |
・いっこもねー |
【複・形】@全く無い、A一つもない |
− |
・いっこらいっこら |
【副】えっこらえっこら |
− |
◎いっころばす |
【動】煎る |
− |
・いっこん |
@一杯の酒。
Aひとたび盃をさすこと。転じて、酒のふるまい。 |
『一献』。 |
・いっさいがっさい |
【副】全部、なにもかも |
標準語。
・いちりくもっかい・いっかいもくさい:宮城。 |
・いっさいかまーねー |
一切構わない |
本来は『委細構わない』(事情がどうかにかかわらない)という語法のはずだが、『一切』の意味で使う。 |
・いっさいっさ |
【副】ゆさゆさ |
− |
◆いっさぎ |
一番先 |
『一先』の意味。標準語の『一先(ひとまど)』はひとまずの意味。 |
・いっさぎに |
【副】最初に、優先的に |
『一先に』の意味。標準語の『一先(ひとまど)』はひとまずの意味。
・いっさきに:宮城。 |
・いっさら
・いっすら |
【副】一層、殊更に、なおさら、ひたすら |
広辞苑に『一層:@程度が一段と加わること。ひときわ。さらに。Aむしろ。いっそのこと。』『殊更:@特にいちじるしいこと。特別であること。Aわざわざ。わざと。故意にBとりわけ。別して。』『尚更:前にまして。いっそう。ますます。』『頓・一向・只管(ひたすら):(一説にヒタはヒト(一)と同源)@ただそればかり。ひとむき。いちず。ひたぶる。切に。A程度が完全なさま。すっかり。まったく。』とある。
『ひとすら』を『一すら』と言ってもおかしくは無い。
また、文献には無いものの、茨城には同じ意味の『ひとさら』(一層・殊更に・ひたすら)がある。これは『一更』の意味とも取れる。 ・いっさら:全く:山梨。
・いっそ:ちっとも:長野。
・いっそに・いっそら:更に・少しも・一向に:静岡。
・いったち:なおさら:静岡。
・いったら:なおさら:静岡。 |
・いっさんで |
【副】みんなで |
古い標準語の『一山』。 |
・いっさんに |
【副】一散に、一目散 |
標準語。
・いっさんめー:神奈川。
・えっさんに:山形。 |
・いっしけん
・いっしけんめ
・いっしゅけん
・いっしゅけんめ |
一生懸命 |
『一心懸命』の意味か。
・いっしっぺ:鹿児島。
・いっしゅっぺ:鹿児島。
・いっせっぺ:鹿児島。 |
・いっしふらん |
一心不乱 |
− |
◎いっしゃ
◎いっしゃー |
【複】お前、お前は |
− |
・いっじゃげぎる
・いっじゃげる
・いっじゃーげる |
【動】腹が立つ |
かなり強調した言い回し。 |
・いっしゅんじ
・いっしゅんとぎ |
【形動】一瞬 |
『一瞬時』の意味。『一瞬』と『瞬時』の合体語か?。 |
・いっしょ |
【副】いつまでも、常に、いつも |
『一生』の意味ともとれるが、日常的に用いられたので『一所懸命』の一所の意味に近い。 |
(いっしょ) |
【形動】同じ |
『一緒』。当時『連れ立つこと・同時』の意味はあったが『同じ』意味では使わなかった。
別に『一所』(@一つの場所。一ヵ所。A同じ所。B一つになること。相伴うこと。一緒。)がある。 |
(いっしょきいー・いっしょこい・いっちゃよー) |
【感】汚いものや冷たいものに触ったときの感嘆詞 |
鹿児島。 |
・いっしょぐた
・いっしょくた |
【形動】一緒に、乱雑にまとめて |
『一緒くた』。『くた』は『朽・腐・芥』。
・いっしょくた:東京・神奈川。
・いっしょごた:神奈川。 |
・いっしょぐたん
・いっしょくたん |
【形動】一緒くた、乱雑にまとめて |
清音形なら俗語として使われる。 |
◎いっしょけめ
◎いっしょけん |
【形動】一生懸命、一所懸命 |
− |
・いっしょけんめ |
【形動】一生懸命、一所懸命 |
− |
◎いっしょばぢ |
弁当箱 |
『一升鉢』の意味。 |
◆いっしょーまぎ
◎いっしょまぎ |
水田四畝に一升の種籾で作った苗を植えること |
・いっしょーまき:田畑の広さを表す。一升の種の蒔ける広さ。:群馬。
・いっちょーごせなえ::一町の田圃に田植えをするとき五畝の苗代を目安に植えること:神奈川。 |
◎いっしょーもぢ
◎いっしょもぢ |
生後1年目の儀式、一升餅 |
『一升餅』『ころばし餅』と呼び、東日本の風習とされる。 |
・いっしょーまっしょー |
【形動】一生 |
『一生末生』または『一生末世』の意味だろう。 ・いっしょーまっしょー:神奈川・山梨。 |
・いっしんなる |
【複】必死になる |
『一心になる』が訛ったものだろう。あるいはh音の脱落か?。
・いっしんとーし:頑固者:青森。 |
・いっすいき
◎いっせーき
◎いっせぎ |
1周忌 |
・いっすいき:東京・神奈川・山梨。 |
・いっせぎ |
一番、主席 |
『一席』。濁音化。 |
・いっせんもない |
【複】全く持ち合わせが無い |
やや古い標準語。『一銭もない』。 |
(いっせん・いっせんや) |
床屋 |
鹿児島。
広辞苑に『一銭剃:(一人一銭(一文)で、月代サカヤキをそり、結髪をしたところから) 近世初期、髪結いの称。とこや。一文剃。いっせん。』とある。 |
・いっそ |
【副】@ひときわ。さらに。Aむしろ。いっそのこと。 |
『一層』の短縮化。
・いっそ:いつでも:宮城。
・いっそー:ばかり:宮城。 |
・いっそぐ |
− |
『束』は百を表す単位。江戸時代の隠語に由来する。 |
(いっそく) |
【動】動く |
神奈川。 |
◎いっそくたん |
【接】いっそのこと |
− |
(いっそに・いっそら) |
【副】更に、少しも、一向に、ちっとも |
長野。
・いっそ:ちっとも:静岡。 |
▲いっそのくされ |
いっそのこと |
近世語。『集覧:東・稲』。
『膝栗毛八』に『いめへましい。いっそのくされ、是からどこぞ遊びにつれてあよびなせへ。』とある。
『いっそのこそあれ』の意味か。
・いっそのかー:静岡。
・いっそのくさり:静岡。 |
◎いっそのくそ
・いっそのこそ
・いっそのごそ |
【接】いっそのこと |
・いっそんこて:鹿児島。 |
・いっそのごど |
【接】いっそのこと、むしろ、かえって |
濁音化。 |
・いづぞや |
【副】いつの頃であったか。先頃。かつて。 |
『何時ぞや』。
★いづぞやはおせやになりやした:先日はお世話になりました。 |
(いったー) |
君達 |
沖縄。茨城では『いしら』。 |
・いーつたい |
言い伝え |
− |
・いったい
・いってー |
【副】絶対、全く、一体 |
当時『絶対』はあまり使われておらず、『いったい』を使っていた。標準語の『一体』には『そもそも、もともと』の意味があり、それが転じたのだろう。東北の一部でもそのような使い方をしているという。40年前後に『絶対』に矯正したのを覚えている。
一方明治期の小説には『一体』の意味で『全体』(辞書掲載)を使っているのが面白い。
・いって:青森。
・いってー:福島。
・えったって::青森。 |
・いったいぜったい
・いってーぜってー |
【副】絶対、一体 |
本来『一体全体』の意味だが、古くは『絶対』の意味で使われた。標準語の『一体』には『そもそも、もともと』の意味があり、『そもそも絶対』の意味。 |
・いったいった |
【副】よたよた |
− |
・いづだが
・いづだがな
・いづだがな |
【複】いつか、いつだか、いつだったか |
★あんとぎゃいづだがなやー、おめおべーでめー:あの時はいつだったかなあ。お前覚えていないだろう。
★いづだが:何時なの。 |
・いづだがに |
【複】いつか、いつだかに |
清音なら標準語だが最近は余り聞かない。 |
・いづだがの |
【複】いつかの、いつだかの |
清音なら標準語だが最近は余り聞かない。 |
・いづだがも |
【複】いつだったか、あの時も、いつだかも |
清音なら標準語だが最近は余り聞かない。 |
・いっだごっちゃねー
・いったごっちゃねー |
【慣】言ったこっちゃない、それ見たことか |
− |
(いったち・いったら) |
【副】なおさら |
静岡。 |
(いったってばよー) |
【複】行ったのに |
神奈川。これは、方言ではなく単に汚い言葉である。 |
△いったはった |
【形動】あっという間の様、またたくまの様 |
・いったはった:神奈川。
・いったはった:福島。
・えったはった:山形。 |
・いったべ
・いったべー |
【複】@行っただろう、A言っただろう |
茨城では古い言い方。
@・いったべー:東京。 |
(いっだまし) |
根性、気合 |
鹿児島。 |
・いづだら |
【複】いつなら |
★おめげにいぐのいづだらいがっぺ:お前の家に行くのはいつならいい? |
(いつだら) |
【複】常に、いつも |
山梨。 |
・いづだりとも |
【複】いつでも |
『いつにてありとも』『いつなりとも』。
・いつだり:岩手。 ・いづだりかづだり・いつだりかつだり・いったりかったり:いつでも・好きな時に・無計画に:宮城。
・いづだれ:時間を決めずに:青森。
・いっでんかっでん:いつでも・しょっちゅう:鹿児島。
・いつもかつも:宮城。 |
◆いったりきたり |
【形動】五分五分の様 |
稲敷郡では『結婚後の里帰り』の意味。 |
・いっだん |
【副】@一旦、A一段 |
@★いっだんけーるわ:一旦帰るよ。
A★いっだんとつおぐなったな:一段と強くなったね。 |
・いったんべ
・いったんべー |
【複】@行っただろう、A言っただろう |
茨城では古い言い方。 |
(いっち) |
一番 |
『一・逸』。辞書掲載語。柳樽初『堪忍のいっちしまいに肌を入れ』。浮世風呂『我子をしかるのが一番(いっち)能うござんすよ。』。殆どが西日本に分布し、東日本では江戸だけで使われた珍しい言葉。
・いっち:東京(江戸)・新潟・長野・静岡・岐阜・愛知・福井・三重・奈良・大阪・中国全域・四国全域・福岡・佐賀・長崎。
・いっちゃん:大阪・三重・兵庫。 |
・いっちがばっちが |
【慣】いちかばちか |
|
・いっちがる
▼△いっちかる |
【動】@座る、A載る、乗る |
『いちける』の自動詞形。近世語の『居敷かる』(どっかりとすわる。あぐらをかく。)の転。
@・いっちかる:福島。
A・いっちかる:栃木・埼玉。 |
◎いっちぐ |
【複】【動】入れて行く、入れて置く |
− |
◆いっちぐだっちぐ
・いっちぐたっちぐ
◎いっちくたっちぐ
◎いっちくだっちく ◆いっちくたっちく
・いっちご
・いっちごさっちご |
【形動】服のボタンを掛け違えた状態、ちぐはぐ、互い違い |
『いっちご、いっちごさっちご』は『行って来い』『行って来い去って来い』の転とも思われる。
『いっちくたっちく』をネット検索すると24000件ヒットする。
福井県のわらべ歌に『いっちくたっちく たえもんさん たえもはいくらで ごーわんす いっせんごりんで ごーわんす もうちっと もうちっと すからか まからか すってんとん』というのがあるという。これをもとに代表的なわらべうたを混ぜて作られた鬼決めの数え歌に『いっちくたっちく のにく いらく いんじゃ たけのふし ころふし 池のはたの茶わん置いてあぶないものだよ』というのもある。さらにもうひとつあるようで、不思議はどんどん拡がってしまう。確かに『ひとつ、ふたつ』と数えているようにも聞こえる。親が子供のボタンを数えながらひとつづつ手直しする時に歌ったとすると、茨城にだけ方言として残っているのはつじつまが合わない。
沖縄のわらべ歌にも『いっちくたっちく(一つ二つ) じゅうにが(十二に) ふいがー(巻いた) ちくむく(デコボコ) ちんぼらが(巻き貝が) うどぅんぬ(屋敷の) くしんじ(裏側で) ふーるがやい(ウンコをした)』がある。題名はそのまま『ひとつ、ふたつ』である。子供の数え歌らしい。
『俚言』に『いっちくたっちく、たいの女たいが娘、梶原源八助六おんのきあれ。たいどのたいどのたいが娘梶原とも。いっちくたっちく太右衛門殿のおとひめがゆやておされてなく声きけばちんちんもんからちんちんもんからおひゃりこひゃりこ。』とある。何の解説も無いが、これも数え歌の類なのだろう。
ネットのとあるサイト『わらべうた〜大人も子どもも遊んで学ぼ〜』には『いっちくたっちく たえもんさん たえもはいくらでごわんす いっせんごりんでごわんす もうちっと もうちっと すからかまからか すってんどん/参考:「0・1・2歳児クラス編 いっしょにあそぼうわらべうた」コダーイ芸術教育研究所著/※たえも・・・里芋の大きいもの。※いっせんごりん・・・一銭五厘、円に換算すると0.015円。』が紹介されている。
別のネットサイト『いっちくたっちく|和漢百魅缶』に『いっちくたっちく:大阪の丼池あたりに明治の10年頃あらわれたと言う豊年節(いっちくたっちく)を唄いながらピョイピョイ飛び跳ねる顔がものすごく青白い小坊主姿のおばけ。☆
莱莉垣桜文 附註 豊年節は片足飛びの童歌がもとになっているもので主に往来で飴屋などが唄っていた歌。その歌の文句はこんなようなもの。「ほうほう法螺の貝 いっちくたっちく太右衛門さん乙姫さまがね ちんがらもんに追われて鳴く声きけばね ほうほう豊年じゃ豊年じゃ豊年じゃ」和漢百魅缶』とある。
ウィキペディアには『いっちくたっちく節(いっちくたっちくぶし)は、明治時代の流行歌、童謡である。西南戦争の後に流行した童謡である。歌詞は「いつちくたつちく竹橋の、赤いシヤツポの兵隊さん、なに食ふ、お芋を食ふ、サツマ芋食つて、プツプツプー」。歌い出しは、鬼決めの歌の「いつちくたつちく太右衛門どんの乙姫様は、湯屋で押されて泣く声聞けば、ちんちんもがもがおひやりこおひやりこ」に由来する。』とある。
2010年7月11日、山梨県の方から『投稿ではないのですが、「いっちくだっちく」という言葉を調べようとして入ったサイトで、このような地道な記録を続けておられるお方がおられることに驚き、賛辞を送りたく書き始めました。現在山梨北部(正確には八ヶ岳南麓の北杜市)には首都圏からの移住者が多く暮らしています。ある日誰かの言った「いっちくだっちく」が、その愉快なひびきから笑いを呼び、かつ他の誰も知らないことばであるのを不思議に思いました。意味は昔の茨城弁で説明されていることと同じで、日本橋生まれ・長野奈良井宿に縁のある二人の方が良く使っていたということでしたが、今度機会があったらルーツを聞いてみたいと思ったことでした。今月末には土浦を始め茨城県南に住む四人の初老の男性が来訪の予定で(我々も2年間つくばに住んでいました)、このサイトのことも話題に、話に花が咲くことでしょう。ありがとうございました。』のメールをいただいた。
これらを総合すると江戸時代のどこかの地域で生まれた童歌が、様々な形で全国に伝わり、片足とびの童歌にもなり、茨城では片足とびの跳び方が『服のボタンを掛け違えた状態、ちぐはぐ、互い違い』の意味に転じたのだろう。
・いぐっちぐ:山梨。 |
◎いっちくだっちぐ
◎いっちくたっちぐ |
あれこれ、いろいろ |
県内広域で使われるが、土浦では別の意味。 |
・いっちくる |
【複】【動】行って来る |
− |
・いっちげる
▼△いっちける |
【動】載せる、乗せる |
・いっける:福島・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・長野。
・いつける:福島・長野・静岡。
・いっちける:栃木・埼玉・群馬。
・えっける:埼玉。
・ゆける:岡山。 |
・いっちごたっちご
◎いっちこたっちこ |
アリジゴク |
鹿島郡。 |
◎いっちーさん |
富山の薬売り |
『越中さん』の意味。 |
◎いっちねんぢ
・いっちねんぢー |
一年中 |
− |
■▲いっちまー |
【複】行ってしまう、いっちまう |
『集覧:行・真・新・水』。
・いっちもう:山梨。東日本では珍しいウ音便。 |
▲いっちまい
・いっちめ
・いっちめー |
【複】行ってしまえ、出て行け |
標準語の『いっちまえ』に該当。『集覧:東』。『いっちめえやがった。』は落語に出て来る。 |
◎いっちもっち |
【形動】もじもじ |
− |
・いっちゃ |
【複】@入れた、A言った、B行った |
@・いっちゃ:福島。 |
・いっちゃー |
【複】行ってしまう、行っちゃう |
− |
(いっちゃー) |
【複】行きましょう |
山梨。 |
(いっちゃー) |
酔っ払い |
沖縄。この場合の『ちゃー』は『ちゅー』がさらに訛ったと考えられ『酔い人』の意味か。 |
・いっちゃごっちゃねー |
【慣】言ったこっちゃない、それみたことか |
− |
・いっちゃっちゃった |
【複】行ってしまった。 |
『行きにてありてあった』の意味。
・いたったった:神奈川。 |
・いっちゃーど |
【複】行ってしまうぞ |
・いっちゃーど:神奈川横須賀市。 |
・いっちゃーどな
・いっちゃーどや |
【複】行ってしまうぞ |
− |
・いっちゃらがっぺ |
【複】@行ったらいいだろう、A言ったらいいだろう、B入れたらいいだろう |
− |
・いっちゃれる |
【動】壊れる、潰れる |
『潰す』意味の古い標準語(古語)である『つやす』(潰す)にルーツがあると思われる訛。『よっちゃれる』がさらに訛ったもの。
おっちゃれる→よっちゃれる→いっちゃれる。 |
・いっちょ |
@ひと勝負、ひと仕事、A【感】さあ |
『一丁』。
・いっちょ:一つ:鹿児島。
★いっちょやっか:さあ(一勝負)やるかい。 |
・いっちょー |
【副】一応 |
− |
・いっちょー |
@土地の面積の単位。10反。A距離の単位。一町は60間。約109メートル強。 |
『一町』。尺貫法の単位。
@一町歩とも言う。現代でも使われる。
A丁とも書く。 |
・いっちょー |
【形動】最上の様 |
神奈川。 |
▲いっちょぎり |
忌日に老人達を招き集めて行なう仏事 |
『集覧:稲』。 |
◆いっちょぐ |
【動】@入れておく、A言っておく |
A=『りっちょぐ』。 |
・いっちょぐい |
偏食 |
・いっちょぐい:青森。 |
◎いっちょーこぎ
◎いっちょこぎ |
櫓が一艇の小型の船 |
− |
◎いっちょまい
◆いっちょーまい
◎いっちょめー
◆▽いっちょーめー |
【形動】一人前 |
『一丁』は『夫役一人分』であり、『一人前』の意味。『一丁前』。
・いっちょまい:福島。
・いっちょーまえ:宮城。
・いっちょめ:宮城。
・いっちょめー:福島・群馬。
・えっちょまえに:福島。 |
・いっちょまいこぐ
・いっちょめーこぐ |
【動】一人前のつもりになる |
・いっちょめこく:福島。 |
・いっちょまーり |
一回り |
『いっちょ』は『一丁』。 |
・いっちょまーる
・いっちょめーる |
【複動】挨拶回りをする |
『一丁回る』『一丁参る』。 |
・いっちょも |
【副】一向に、少しも、全く、一つも |
『一丁も』の意味。
・いっちゃっん:鹿児島。
・いっちゃん:鹿児島。
・いっちょも:徳島。
・いっちょん:大分・福岡・長崎・鹿児島。 |
・いっちょら
△いっちょーらい |
【形動】一張羅、たった一つの晴れ着 |
・いっちょびら:鹿児島。
・いっちょらい:群馬。
・いっちょーらい:群馬・神奈川・静岡。主に西日本の方言。 |
・いっちらいっちら
・いっちらおっちら
・いっちらこっちら |
えっちらえっちら、えっちらおっちら |
− |
◎いっちり |
【副】沢山、十分、みっちり |
稲敷郡。m音の脱落。 |
・いづづ |
【数】五つ |
− |
・いっづ
・いーっづ |
【代】いつ |
・いっつ:青森。 |
(いっづい) |
【複】いつまで |
鹿児島。
・いっづいとんの:いつまでも・長い間:鹿児島。 |
・いっつぇん |
一銭 |
・いっしぇん:静岡。 |
・いっつぇんもねー |
【複】全く持ち合わせが無い |
『一銭も無い』。 |
・いっつぉ |
【複】要るよ、居るよ、有るよ |
− |
・いっつが |
【副】@以前、Aとっくに |
『何時か』。
@・いっつか:静岡。 |
・いっつがむがし |
【副】@以前、Aとっくに |
− |
■いっつげる
■いっつける |
【動】@結びつける、A載せる、乗せる、B言いつける |
@の場合は『結い』+『つける』。=『ゆっつげる』。
・いつける:埼玉・新潟・長野・群馬・愛知・兵庫。
・えっつける:埼玉。
A@と同源と思われる。 ・いっける:福島・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・長野。
・いつける:福島・長野・静岡。
・いっちける:栃木・埼玉・群馬。
・えっける:埼玉。
・ゆける:岡山。
B・いっつける:東京・神奈川。 |
◆いーつったって
・いーっつったって |
【複】良いと言ったって |
− |
・いづっつ |
【数】五つ |
・いづっつ:青森。 |
・いっつね |
常々 |
− |
・いっづも
■いっつも
・いーっづも
・いーっつも
・いづも
・いづもー
・いづーも
・いーづも |
【副】何時も |
『いっつも』『いーっつも』は俗語でも使われることがある。標準語ではイントネーションの高揚が『い』『つ』になるが茨城弁では多く『も』にある。
・いっつも:青森。
・いづもかづも:いつでも:青森。 |
(いっつら) |
【複】行っただろう |
神奈川・山梨。『行きつらん』。
広辞苑に『(「てむ」「つらむ」「つべし」などの形で) 完了した結果を確信をもって推量する。きっと〜してしまう(だろう)。必ず〜した(だろう)。』とある。 |
・いーっつら |
言い方 |
『言い面』。 |
・いってあった |
【複】@行った、行っていた、A言った、言ってあった |
★なんだおめ、そごには、はーいってあったっぺ:何だよ、お前は。そこには行っただろう。 |
・いっていぎまーす
・いっていぎやーす |
【慣】行って来ます |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いっていぐ
・いってぐ |
【動】行く、出かける |
『行って行く』意味。『ぐ』は濁音・鼻濁音。不思議な訛だが、『行って来る』の場合は『来る』に焦点があるのに対して『行って行く』は『行く』こと即ち『出る』に焦点がある。 |
・いってきがす
・いってきがせる |
【動】言い聞かせる |
− |
・いってきたい
●いってきてー |
【複】行ってみたい |
『行って来たい』。 |
・いってきないげ
・いってきないけ |
【複】行って来ないかい? |
女性言葉。 |
・いってきねーが
・いってきねーげ
・いってきねーけ |
【複】行って来ないかい? |
男性言葉。 |
・いってきよー
・いってきよーよ |
【複】行って来よう |
女性言葉。 ・いってきよー:東京。高齢者。 |
・いってきらっしょ
・いってきらっせ |
【複】行ってらっしゃい、行って下さい |
『いってこらせえ』『いってこらっせえ』。
・いってきらんしょ:福島。
・いってこせ:行って来い:福島。丁寧語ではない。
・いってこらんしょ:福島。 |
・いっでぐが
・いってぐが |
【複】行こうか |
変則的な訛。=『いってんが』。『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
・いってぐっがら
・いってくっから |
【複】行って来るから |
清音形は江戸言葉。 |
・いってくら
・いってくらー
・いってくるわ |
【複】行って来るよ |
『いってくらあ』は江戸言葉。 ・いってくら:東京。
・いってくらー:東京都青梅市。 |
・いっでご
・いってこ
■▲いってこー
・いってこーや
・いってこーよ |
【複】行って来い、行って来いよ |
『集覧:久』。元『行って来よ』。
・いってこー:東京青梅市・山梨。 |
(いってこず) |
【複】行って来よう、行こう |
静岡。
中部地方に残った古語・近世語の流れ。『ず』は意志・勧誘・推測の助動詞『ずら・うずらむ』が変化したもの。 |
・いってすける
・いってつける |
【動】一緒に行く、連れて行く |
東北系の訛。
『行って助ける』『行って仕える』意味か。ただし、『付ける・附ける・着ける・就ける・即ける』には『@服従させる。味方にする。従わせる。Aあとにつづかせる。つづける。B尾行する。追跡する。あとを追う。Cつきそわせる。かしずかせる。』の意味がある。 |
(いってに) |
【副】たびたび、ちょいちょい |
神奈川。 |
・いってまいります |
出掛けの挨拶 |
誰でも知っている標準語としての言葉だが、当時のテレビ番組の子供達は、『行って来ます』と言っているのには違和感があった。当時の土浦では誰もが丁寧語としての『行って参ります』を語っていたことになる。 |
・いってみる |
【動】行く、試す、帰る |
− |
・いづでも
・いーづでも |
【複】いつでも |
・いっでん:鹿児島。 |
・いってんが
・いんてんがー |
【複】行こうか、帰ろうか |
− |
◎いってんがってん |
【感】行くぞ。さあ来い。 |
新治郡。 |
◆いってんべ
▲いってんべー |
【複】@行こう、行ってみよう、A行ってるだろう、B帰ろう |
@=『いってみっぺ』。『集覧:行・久・新・北・猿・稲・鹿・西』。
・いってんべ:宮城。
★『土』:俺(お)ら行(い)ってんべ、よきも行(い)って見(み)ろなあ。
A=『いってっぺ』。
・いってんべ:宮城。 ・いってんべお:行ってるだろうよ:宮城。 |
◎いっとー |
一族 |
『一党・一統』の意味に近い。
・いっと:神奈川。
・いっとー:神奈川。 |
・いっど
・いっと |
【複】要るよ、居るよ、有るよ |
『いるぞ』の意味。『ぞ』は奈良時代には清音だった。 |
・いっと
◎いっとー |
【形動】【副】一番 |
『一等』。 ・いっと:千葉。
・いっとー:群馬・東京青梅市・静岡。
★ほれがいっとさぎだ:それが一番先だ。 |
・いっとさいご
・いっとーさいご |
一番最後 |
・いっとーさいご:東京青梅市。 |
・いっとさいしょ
・いっとーさいしょ |
一番最初 |
『一等最初』。
・いっとーさいしょ:群馬・東京。 |
・〜(して)いっとぎ |
【助】〜(して)いる時 |
『居る時』が転じたと考えても間違い無いが、『一時(いっとき)』が残ったことも考えられる。 |
・いっとぎ |
@わずかの時間。暫時。いちじ。暫く、A同時。 |
『一時(いっとき)』。濁音化。
@・いっとき:東京・新潟・静岡・石川・高知・知・大分・佐賀・鹿児島・種子島。
・いっとち:沖縄。
・いっとっ:鹿児島。
・えっとぎ:山形。 |
・いっとぎま |
【形動】ちょっとの間 |
『一時(いっとき)間』の意味。 ・いっとぎま:青森。
・いっときま:岩手。
・いっとごま・いっとこま:東北。 |
・いっとぎゃ |
【複】@一時は、A居るときは、要るときは |
@・いっときゃ:鹿児島。 |
・いっとぎよろごび
◆いっとぎよろこび |
ぬか喜び |
『一時喜び(いっときよろこび)』の意味。 |
・いっとご |
@居るところ、A1箇所 |
− |
・いっとごしょざーる |
笊の1種、1斗5升入りの笊 |
《いっとごしょってあげねーどもぢゃがんねっつのはほんとーがー?!?》。 |
・〜(して)いっとご |
〜(して)居るところ |
− |
・いっとざーる
◎いっとーざる |
笊の1種、1斗入りの笊 |
− |
・いづどなぐ
・いづどもなぐ |
【副】何時ということもなく、何時の間にか |
『何時となく』。 |
(いっとっばっかい) |
【複】暫くの間 |
鹿児島。『一時ばかり』の意味か。 |
(いっとーで) |
【複】言ったのですか?、行ったのですか? |
山梨。 |
◎いづな |
想像上の小さい狐。通力を具え、これを使う一種の祈祷師がいて、竹管の中に入れて運ぶという。 |
大辞林によれば『飯綱:@飯綱使いが用いる想像上の小動物。狐の仲間とされる。東北地方と関東・中部地方の一部でいう。A飯綱使いのこと。』とある。また広辞苑に『飯綱使い:管狐(クダギツネ)をつかって術を行うこと。また、その人。長野県飯綱(イイヅナ)山の神からその法を感得したという。』とある。 |
◎いづなつかい |
飯綱使い |
− |
・いづなりとも |
【複】いつでも |
− |
・いづなんどぎ |
(何時何時)いつなんどき |
濁音化。
・えづなんどぎ:山形。
★いづなんどぎなにがあっかわがんねがらきょーつげろ。 |
・いづにない
・いづにねー
・いづにもない
・いづにもねー |
【複】平生とはちがったさま |
『何時にない』。
・いづになぐ:いつもと違って:青森。 |
◎いづのいっか |
【代】何月何日 |
− |
・いづのか |
【代】【古】@何日、Aいつか |
・いつのか:八丈島。
★きょーはいづのかだ−いぢがづいっぴだ:今日は何日だ−一月一日だ。
★いづのかとしだがいったいな:いつの年だったか年行ったよね。 |
・いづのかまに
・いづのかまーに
・いづのこまに
・いづのまかに |
【副】【古】何時の間にか |
・いつのかまに:東京・静岡。
・いづのこまにが:宮城。
・いづのこめに:青森。
・いづのこまに:宮城。
・えづのこまに:山形。 |
・いづのがむがし |
【副】いつかむかし |
− |
・いづのひ |
何日 |
『何時の日』。
★りょこーはいづのひだっけ:旅行はは何日だっけ。 |
・いづのひが |
【副】何時の日か |
− |
・いづのひまに |
【副】いつの間に |
『何時の暇に』。 |
▲いっぱ |
【形動】立派 |
『集覧:多』。 |
■いっぱ |
同族、一族 |
『一派』。 |
・いっぱ |
【数】一束、一把 |
農作物の束は、『いっぱ・いぢわ、にわ、さんわ、よんわ、ごわ、ろぐわ・ろっぱ、ななわ、はぢわ、きゅうわ・きーわ、じっぱ』と数える。 |
・いっばい |
【副】沢山、一杯 |
★くぢぎりいっばいつぇーでくれや:ぎりぎりいっぱいまで注いでちょうだい。 |
(いっぱい) |
二合五勺の量 |
宮城。『一杯枡』は二合五勺入りの枡を言う。 |
■いっぱいぢゃ |
訪問先でお茶を一杯だけ飲むこと。 |
忌まれる。 |
・いっばが
▲いっぱが
◎いっぱか |
仕事を助け合うこと |
『いっ』は『結い』。『ぱが』は『捗・計・量』(稲刈りの範囲や量)のこと。『結い捗』。『集覧:猿』。 |
・いっばし
■▲▽いっぱし |
@一人前。ひとなみ。ひとかど。A(副詞として) 一人前に。ひとなみに。 |
『一端(いっぱし)』。『集覧:猿』。
・いっぱし:群馬・東京・東京多摩。 |
(いっぱする) |
【複】さよならする |
埼玉。 |
・いっばぢ
・いっぱぢ |
一人前。ひとなみ。ひとかど。 |
『一端(いっぱし)』。
・いっぱち:東京多摩。 |
・いっび
・いっぴ |
【数】一日(ついたち) |
半濁音形は大辞林に掲載されている。広辞苑には無い。茨城弁では公用語に近いが、標準語圏でも使われることがある。しかしNHKのアナウンサーは絶対使わない。
一般に日にちの呼称は、『ついたち、ふつか、みっか、よっか、いつか、むいか、なのか、よおか、とおか』と言い、その後は漢語読みの『にち』が使われる。
仮に漢語読みで『いちにち(いちんち)、ににち(にんち)、さんにち(さんち)、よんにち(よんち)、ごにち(ごんち)、ろくにち(ろぐんち・ろくんち)、ななにち・しちにち(ななんち・しぢんち・しちんち)、はちにち(はぢんち・はちんち)、くにち(くんぢ・くんち・きゅうにち』、『じゅうにち(じんち、じーんち、じゅーんち、じゅーにぢ)』という言い方を想定すると茨城弁ではおおらかに自由に使われていたことを思い出す一方、どこまでが標準語かわからなくなってしまう。
その結果、なぜ『いっぴ』と言うのか説明できないことになる。
★きょーはいっかだ−いっぴだ:今日は何日だい−1日だ。
★いぢがづいっぴ:一月一日。じーがづじーんぢだ:十月十日だ。 |
・いっぴづけーじょー |
ホオジロ |
鳴き声が『一筆啓上つかまつる』と聞こえる。その他県下では、ホオジロの鳴き声として、『一筆啓上ししめくろ』『一筆啓上じじめじろ』『一筆啓上ちちめくろ』『一筆啓上火の用心』がある。 |
・いっぴゃぐいん |
@百円、A何百円 |
@百を『いっぴゃく』というのは江戸時代の言い方の名残り。
A『幾百円』。 |
・いっびらー
・いっぴらー
・いっぴらう
・いっぴろう |
【動】選り分ける |
『選り拾う』意味。 |
・いっぷぐ |
一休み、休憩 |
『一服』。 |
(いっぷく) |
少しの間 |
神奈川。 |
(いっぷくいっつい) |
両親の揃っていること |
東京。 |
◎いーっぷし |
言い方 |
『言い節』の意味。半濁音は濁音で発音されることがある。
・いーっぷし:神奈川。
・ものいーっぷし:群馬・神奈川。
・ものいっぷり:長野。 |
◎いっぷしん |
意地っ張り |
北茨城市。 |
◆いーっぷり |
@良いと思いこむ、A良い人ぶること、B言い方 |
B標準語の俗語。『言い振り』。
・ものいっぷり:長野。 |
(いっぷーりゅー) |
風変わりな様、変わり者 |
静岡。
・いっぷりゅー:東京三鷹。 |
◎いっぺ |
一緒 |
稲敷郡。『一遍』が転じたと考えられる。 |
・いっべ
・いっべー
・いっぺ
◆いっぺー
・いーっぺー |
【複】@居るだろう、A必要だろう |
今では『いっべー』などと発音する人はいないが、当時は普通に使われた。 |
◎いっぺ
◆いっぺー
・いーっぺー |
【副】@沢山、A一杯 |
@・いっぴゃー:静岡。 ・いっぺ:青森・福島・神奈川。
・いっぺー:宮城・福島・千葉・群馬・東京・神奈川・沖縄。江戸言葉。
・いっぺー:非常に・甚だしく:鹿児島・沖縄。 ・いーっぺー:八丈島。
A・いっぺー:福島・群馬・神奈川。江戸言葉。
Bその他。
・いっぺー:とても:沖縄。
・いっぺこっぺ:あちこち:鹿児島。 |
・いっぺーいがっぺな
・いっぺーいがっぺね
・いっぺーやっか
・いっぺーどーだ |
【慣】一杯いいでしょう、一杯やる?、一杯どう? |
− |
・いっぺーかせらいだ ■いっぺーかせられた |
【動】一杯食わされる、騙される |
− |
◎いっぺぎり |
一回ごと、毎回 |
北茨城市・高萩市。 |
・いっぺーくー |
【動】@騙される、A沢山食べる |
@・いっぺーくー:群馬・神奈川。 |
・いっぺーくわす |
【動】一杯食わす、騙す、沢山食わせる |
− |
(いっぺーこ) |
相子 |
神奈川。 |
(いっぺこっぺ) |
あちらこちら、方々 |
鹿児島。 |
◎いっぺじゃっぽ |
鳥打帽 |
真壁郡。『射つ部シャッポ』の意味か。 |
・いっぺーつける |
【複・動】@(ご飯等の)お代りを盛る、A酒を注ぐ |
− |
・いっぺに |
【副】一遍に |
− |
(いっぺーぶつ) |
【複・動】仕事を始める |
神奈川。 |
(いっぺん) |
一回 |
『一遍』。茨城ではあまり使われなかった言葉。現代ではあまり使われない。 |
(いっぺんこっきり) |
【副】一回だけ |
神奈川。 |
◆いーっぽ |
実の入っていない稲・麦等の穂 |
古くは『えあーっぽ』。『いー』は『間または合』であり熟しきっていない意味。半濁音は濁音で発音されることがある。 |
▲いっぽい |
【形】厳しい、恐ろしい |
『集覧:多』。 |
・いっぼぐ
・いっぽぐ |
一服、休憩 |
− |
・いっぽど |
よっぽど |
− |
・いっぽんぎ |
一途に思いこむ性質。また、純粋でまじりけのないこと。 |
『一本気』。 |
・いっぽんせんこー |
葬式のときの線香の上げ方。 |
『一本線香』。常陸太田市では、これを忌むことが『民俗』で報告されている。
一般に亡くなってから49日までは、一本線香・1本蝋燭・1本花にするのが伝統的とされる。1本線香にするのは、線香の煙が成仏するための道しるべとなるので、そうすると言われる。
一方、普段の線香は一般に二本又は三本にするのが一般的だが、土浦では二本が一般的である。 |
・いっぽんだぢ |
ひとり立ち、自立 |
『一本立ち』。 |
◎いっぽんば |
コクワガタ |
猿島郡。 |
・いっぽんばな |
花瓶に花を1本だけ挿すこと。 |
『一本花』。標準語では『死者の枕元に立てる樒(シキミ)。亡霊の依代(ヨリシロ)。』を言う。常陸太田市では、これを忌むことが『民俗』で報告されている。
土浦市でもかつてそのようなことが聞かれたが、さほど強く忌まれなかった。 |
・いづまでが |
【複】何時までも |
古語の係り結びに由来すると考えられる。
・いつまでか:神奈川。 |
・いづまでも |
【副】いつまでも |
濁音化。
・いっづいでん:鹿児島。 |
・いづも |
【副】いつも |
濁音化。=『いっつも、いーっつも、いっづも、いーっづも、いづーも』。 |
・いづもかづも |
【副】いつも |
・いつもかつも:宮城。 |
・いづもがら
・いつもから
・いづもっから |
【副】常日頃(つねひごろ)、普段から |
− |
・いづもごど |
常々あること、いつものこと |
『何時も事』。 |
・いづもにないごど
・いづもにねーごど |
いつにも無いこと、普段無いこと、 |
清音なら標準語の古い言い回し。 |
・いづやら |
【複】いつのことだろう、いつか、いつぞや |
『いつやら』。 |
(いつら) |
【複】いつのことだろう、いつか、いつぞや、いつ頃 |
静岡。
『いつにてあらん』『いつにてやあらん』。 |
◎いーづら |
@◎内面(うちづら)、A言い方 |
@『家面』の意味。
A『言い面』の意味か。 |
・いーつらのかー |
(自分や他人の失敗・不幸を嘲笑的にいう時のことば) とんだ恥さらし。割の悪い目にあったこと・人。 |
『好い面の皮』。
・えーつらのかー:静岡。 |
◎いーづらはなし ◆▽いーづらはらし |
@内面(うちづら)の悪い人、内弁慶、A感情が顔に出る人 |
@『家面晴らし』意味か。
A『言い面』『腫らし』または『触らし』が転じたと考えられる。 |
・いーづらはらす |
【動】感情を顔に出す |
− |
□いつり |
かやぶき屋根の下地の竹 |
広辞苑に『桟(えつり):屋根のたるきの上にササ・オギなどを横に並べ、葺下地(フキシタジ)とした材。』とある。 |
◎いつんぼ |
水田の一種。 |
真壁郡。『谷津』がなまったと思われる。この言葉によれば、『谷』と『井』は同源の可能性がある。英語でも、『field』には『野』の意味と囲われた場所の意味が有る。 |
・いで |
湯手、手ぬぐい |
・いぢぇ:鹿児島。 |
◎いで |
猿 |
『猿』。 |
・いで
・いでー |
【形】@痛い、A居たい |
@・あでぁ:岩手。あでぁんじぇ:痛いよ。もともとは『あいでぁ』で感嘆詞の『あ』が含まれていると考えられる。
・いたか:鹿児島。熱い意味でも言う。
・いで:宮城。
・いて:鹿児島。熱い意味でも言う。
・いてー:神奈川。江戸言葉。
★おーいでーごど、おめしとのあしふんのぼってっと:ああ痛い、お前人の足を踏んづけているよ。
★ゆびきっていでがった:指切って痛かった。
《いでえ(痛い)どぎは、病院にいでえ(居たい)んだ?!?》。 |
・いでーかいー
・いでーだのかいーだの |
【感】病床にある人が言う言葉、痛いとか痒いとか |
・いでかい:宮城。 |
◎いてきち |
陰茎 |
東茨城郡の方言で江戸時代の言葉でも有る。『得手』にちなんで人名化した、『得手吉』の意味と思われる。下だけは得意だというような意味だろう。 |
◎いーでぐ |
【複】歩いていく |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。 |
◆いでくて
・いでくって |
【複】痛くて |
東北弁系の訛。 |
・いーでーさんぼ |
【形動】言いたい放題 |
『言いたい三宝』。
・いーてーさんぼー:山梨。
・ゆいてーさんぼー:山梨。 |
・いでいだ
・いでだ
・いでーだ |
【複】居た |
『居ていた』意味。
★ちゃんとあそごにいでだど:ちゃんとあそこに居たよ。 |
(いてずら) |
悪戯 |
静岡。 |
・いでっ
・いでで
・いででで |
【感】痛い! |
中には息の続く限り続ける人『いでででででででででででででで−−−−』、『いで』を繰り返す人、『いでいでいでいでいでいでいでいで−−−−−』、そのような時は大した事が無いことが多い。
★いでっつーどぎがいーぢばんいでーみてーだ:『いでっ』と言う時が一番痛いみたいだ。 |
・いでで
・いでいで
・いでーで |
居て |
『居ていて』の意味。
★あすごにいででもみーながったのがー:あそこに居ても見えなかったのかい。 |
・いでってで
・いででーて |
居ていながら |
『居ていて』+『て』の意味。茨城特有の方言だと思っていたら山梨に酷似する方言があった。
・いててえて:山梨。
・いてててえ:居ておりながら:山梨。 |
◎いでば |
自分が得意とする漁場 |
− |
・いでます |
【動】お出でになる |
『出で座す』。本来尊敬語であるが、茨城では皮肉をこめて、使う場合が多かった。
・おいでます:静岡。 |
・いでーめ |
痛い目 |
− |
・いでやる |
【複】居て遣る、居てあげる |
★そばにいでやんねどかーいそだっぺな。 |
▲●いでる |
【動】凍る |
やや古い標準語の『凍てる』の濁音化。『集覧:久・新・真・多』。明治期編纂の茨城方言集覧では多地域にあったものが、昭和の調査では、県北の一部にしか残っていなかったことになる。
・いてる:風化する:静岡。 |
・いでる |
【動】茹でる |
・いづる:鹿児島。 |
◎いーでる |
【動】@家を出発する、A家出する、B◎開いている |
− |
・いでる
・いでいる
・いでーる |
【動】居る |
『居ている』意味。関西弁にも『いてる』がある。
★そごにいでっから:そこに居るから。
★だまっていでろばいーんだど:黙って居れば良いんだぞ。
★おめ、なんだよ、そごにいでだってしごどになんめな:お前はなんだい。そこに居たって仕事にならないだろう。 |
・いでろ |
【複】居なさい |
『居ていろ』の意味。関西では『いてなはれ』。
★すわってーいでろよ。:座って居なさい。 |
●いど
◎いと |
@井戸、A糸、B江戸 |
@『北相馬郡』。このような清音化は、全県にあると思われる。正しくは清音化ではなく古代語の名残と考えられる。
『と』とは、『処、所、門、戸』の意味であり、場所や囲われた部分を意味する。いずれも発音は全くおなじで平坦に発音される。糸を『いど』と発音するのは、方言地図で調査されており、茨城県下のほぼ全域に渡る。良く見ると栃木県に面する県西部の一部のみ清音である。濁音化するのは栃木県ではほんの一部に限られる。東北でもほぼ全域で濁音化することから、茨城方言が東北方言に分類されるのがうなずける。
A・いとそ:静岡。
B『井』とは広辞苑に『@泉または流水から用水を汲み取る所。常陸風土記「社(モリ)の中に寒泉(シミズ)あり。大―と謂ふ」A地を掘り下げて地下水を汲み取る所。井戸(イド)。常陸風土記「新に―を掘らしめしに、出泉(イズミ)浄く香(カグワ)しく」B《堰》 「いせき(堰)」に同じ。』、『江』とは『海や湖の一部分が陸地に入り込んだところ。入江。湾。』とある。 |
(いと) |
糸、縫い糸 |
方言地図では『いど、えと、えど、ぬいそ、ぬえそ、ぬえと、ぬえど』が紹介されている。このうち『いど、えと、えど』は東北圏の訛りであり、茨城を除く関東エリアではほぼ皆無と言ってよい。また、『えと』は新潟の福島県寄り、長野の新潟寄りで使われ、東北との関係が深いことを思わせる。ここでも茨城方言が東北弁と深い関係にあることを伺わせる。 |
(いと) |
間 |
神奈川・長野・静岡。
中部方言と見られる。『暇・遑(いとま)』がつまったか。長野では『そのうち』の意味もある。 |
◎いーどー |
親戚 |
『家統』の意味。 |
・いーど
・いーどー |
【複】良いよ、良いぞ |
・よかど:鹿児島。 |
・いーと
・いーとー |
【感】えーと |
イントネーションは『2241』。当時の新方言。鼻に抜けるので『えいーと・えいーんと』とも聞こえる。 |
・いどあしー |
【形】嫌だ、煩わしい |
『厭わしい』。 |
・いどが
・いどがー
・いどか
・いどかー
・いどっか |
井戸のあるところ、井戸端、井戸の囲い |
『側(かわ)』には、物の一方の面を表す他、『周辺』、『端』の意味がある。さらに『が』『か』には『処』の意味もある。ex.『縁側』。
『井側』とは『井戸側。また、井戸。』の意味である。また『井戸側』とは『井戸の側壁の土石がくずれ落ちるのを防ぎ、また危険を防止するため、その周囲をかこったもの。』のこと。 |
・いどがー
・いどがわ |
江戸川 |
− |
◎いどがみさま
◎いどがみさん |
@井戸の神様、A井戸野中に入れるフナ、B井戸替えのとき井戸の中に入る人 |
井戸には神様が宿ると考えて来たのは茨城だけではない。日本人は古来から井戸にはことさらに畏敬の念を持ってきた。
井戸を埋めるとたたりが有るとも言い伝えられている、そのため、古井戸を埋める時は通気口を設ける人が今でもいる。 |
◎いどがみさまのいぎぬぎ |
古井戸を埋める時の通気口。 |
かつては、お棺の息抜き竹同様、竹の節を抜いて井戸に立ててから埋めた。 |
・いーとぐ |
【複】言い聞かせる、説得する |
『ぐ』は濁音・鼻濁音。『とぐ』とは、『説く』の意味である。御伽噺の『伽』と同じである。 |
◎いどくぼ |
アリジゴク |
常陸太田市。 |
・いどご |
従兄弟 |
・いどご:宮城。 |
◎いどこ
◎いどこいわし
▲いとこはんだ |
【複】@イワシとカツオが一緒に狂っている、Aカツオに追われて水面に盛り上がったようになっているイワシ |
『集覧:無記載』。
『従兄弟半』とは、『従兄弟違い:自分と父母のいとこ(自分といとこの子)との間柄。』の意味。
@・いとこはん:従姉妹と従兄弟・その兄弟姉妹の間柄:静岡。
・いとこはん:従兄弟の子:奈良・岡山。
A・えどこ:カツオやサバなどに追われるイワシの群れ:神奈川。『餌所』の意味か。 |
(いどこ) |
居間 |
山梨。
『居所:居るところ。居場所。座席。住居。』の意味か。 |
・いーどご
◆いーどこ |
良いところ、良い場所 |
− |
◆いどこが |
井戸の枠 |
『こが』は『箍(たが)』のこと。 |
・いどごじる ▲いとこじる |
瓜、小豆等の雑物を入れた味噌汁 |
『集覧:稲』。
『従兄弟汁』の意味。『従兄弟煮』は辞書掲載されている。広辞苑には『アズキ・ゴボウ・ダイコン・芋・豆腐・クワイ・焼栗などを堅いものから追い追い入れて煮込み、味噌で味をつけた料理。(「追い追い」と「甥甥」をかけたものという) 』とある。昔は全国にあったと思われる。
『民俗』では『呉汁・醐汁』(水に浸して柔らかくした大豆をひいた「ご」(豆汁)を入れた味噌汁。)としている。
『俗語』には『従兄弟汁』『従兄弟煮』双方が掲載されている。広辞苑説の他、大豆と小豆を指して従兄弟と呼んだとある。
・いとこじる:栃木・神奈川・山梨・石川・京都・三重。
・いとこに:神奈川。
・いとこ・いとこもち:もち米と餅粟を混ぜてついた餅:神奈川。 |
◎いどごつがり
◎いどごつげー |
いとこ同士の結婚 |
『従兄弟つがい』の意味か。広辞苑には『つがり(連・鎖・縋):(ツカリとも)@つらなりつづくこと。A糸でからげつないだもの。Bくさり。』とある。 |
・いーどごとごやのいんのした |
【慣】 |
行く所を尋ねられた時、はぐらかして、『いい所』に代えて『いいとこ床屋の縁の下』と言う。これは全国的なものらしい。
・いーとこばんば:群馬。 |
◎いどこーや |
糸専門の藍染屋 |
『糸紺屋』。『紺屋』は『こうや』とも言う。 |
・いどごね
△いどこね
・いどごろね
◆いどころね |
うたた寝、ころびね、かりね |
この言葉は東北を除き全国にあるにもかかわらず、何故か標準語にならなかった言葉の一つである。『居所寝』の意味。類義語の『きどころね』は『着所寝』で着たままその場所で寝る意味だが、これは東北・北海道を含め全国にある。
『いどころね』は埼玉・群馬・東京・神奈川・新潟・長野・山梨・静岡・岐阜・愛知・愛媛・高知・愛媛・高知・大分・宮崎・鹿児島で、『きどころね』は、北海道・東北全県・茨城・千葉で、『いどころね』『きどころね』両方使うのは栃木・新潟である。これによると必ずしも東西で別れるものではないようである。
・いどこね:新潟・長野・山梨・高知・大分。
・いどころね:茨城・栃木・埼玉・群馬・東京・神奈川・新潟・長野・山梨・静岡・岐阜・愛知・高知・愛媛・高知・大分・宮崎・鹿児島。
・いどね:神奈川。 |
・いどごん
◎いどこん
・いどごんにゃぐ
・いどこんにゃく |
糸こんにゃく、白滝 |
正しくはコンニャクを薄く切った物を蕎麦などと同じように細く切ったやや太く褐色いものを糸蒟蒻と呼び、コンニャク芋を一旦粉にし水で練ったものをトコロテンのように突き、湯に浸して固めた細いものを白滝という。
一般には、西日本で『糸蒟蒻』と呼ばれ、東日本で『白滝』と呼ばれる。その意味で茨城のこれらの呼称は上方語に由来すると言えよう。現代では『糸蒟蒻』も『白滝』も同じ製法で、白くないものはヒジキを混ぜたり着色したものもあり複雑化しているという。
ちなみに、コンニャク芋を粉にする技術は、江戸時代の茨城県山方町の農民中島藤右衛門で、それまでは季節のものだったコンニャクが1年中製造する事ができるようになったと言う。
広辞苑では読みを『いとごんにゃく』としている。 |
◎いどさらい
・いどされー |
井戸掃除、井戸替え |
辞書には『井戸浚え』とある。
1月16日と7月16日は『大斎日』でその日に合わせて井戸の掃除をした。誘拐は『人攫い』で何故井戸掃除が『井戸浚え』なのかは不明。『浚う・渫う』は五段活用または下二段活用、『攫う』は五段活用の動詞で、『井戸浚い』もあってしかるべきだが辞書には無い。『浚う・渫う』は五段活用が廃れたということか。 |
・いどーしー
・いーどーしー |
【形】いとおしい |
『愛しい(いとしい)』とも言う。古語では『いとほし』。現代では可愛らしい意味で使われるが、近世では不憫な・可愛そうなの意味で使われた。現代でも岐阜・富山・鳥取で可愛そうなの意味で使われる。 |
・いどじだい
・いどじでー |
江戸時代 |
《井戸時代であったっけ?!?》。 |
(いとじり) |
、陶磁器の底部 |
静岡。『糸尻』。 |
◎いどだで |
日除けのために背中につけるござ |
『糸経』(いとだて)は、広辞苑に『たてを麻糸で、よこを藁(ワラ)で織ったむしろ。旅行などに、日除(ヒヨケ)・雨覆(アマオオイ)として着用。』とある。
・いとだて:鮎籠の荷造りで荷の上から薦を掛けたもの:神奈川。 |
・いどだでにする
・いどたでにする |
【複】拠り所にする、盾にする |
『糸立て』にする意味か。糸立ては辞書に無い。このことから『いど』とは『拠(よんどころ)、拠り所』の意味か、
『俗語』には、『いとだて:薦を鹿略に編たるを糸立てと云は、蠶(蚕)かひのえひらより出たる名なるべし。』とある。
『えひら』とは『箙(えびら)』(矢を入れて携帯する容器。武具の一種で、衛府の随身(ズイジン)や武士が腰につけて使用。逆頬(サカツラ)箙・葛(ツヅラ)箙・柳箙・竹箙などがある。)とあり、現代の『蔟(まぶし)』の古形と思われる。 |
◎いどだま |
糸巻き |
『糸玉』の意味。 |
◎いどっける |
糸繰り機、糸車 |
『糸繰り』が訛ったと思われる。 |
◎いどづな |
釣瓶縄(つるべなわ) |
『井戸綱』の意味。
・えどづな:千葉。 |
・いどっぱだ
・いどっぷぢ
・いどっぺだ |
井戸端、井戸の辺り |
− |
(いとど) |
【副】(イトイトの転)@いよいよ。ますます。さらにいっそう。A(いっそう甚だしい別の事態が加わることを示す) その上さらに。さもなくても…なのに、なお。 |
山梨。古語。 |
(井戸と水道) |
− |
昭和30年代の土浦市の井戸は、@釣瓶井戸、A車井戸、B一般の井戸で手押しポンプを供えたもの、C掘りぬき井戸(噴き井戸)で溜めがある井戸に分けられる。昭和40年前から、鋳物の手押しポンプが普及し始め、間もなく電動モーターのポンプに代わる。昭和40年頃の我が母の実家は、まだ釣瓶井戸で喉が渇くたびにいちいちバケツで水をくみ上げた。掘りぬき井戸(噴き井戸)で溜めがあるところでは、いつも新鮮な水が流れ、そこにコイやフナを活けているところがあった。それを『井戸の主』と言う。『鯉が生きていりゃあ人間にげーはあんめー』というような発想だろう。実際今でも大手のメーカーで工場の排水側溝に鯉を放流している会社があるが、それだけで安全性の指標になるものではない。
我が家では、最初は井戸に手押しポンプがあり、その頃は、風呂の水は『風呂汲み』をしないと風呂には入れなかった。この作業が大変なことは誰でも想像がつく。
間もなく流し脇に手押しポンプが移されたが、巨大な水瓶はその脇に置いたままだった、何故かと言えば、長時間使っていないとポンプの封水が切れてしまい、呼び水が必要になることがしばしばあったからである。呼び水は柄杓(ひしゃく:ひやぐ)を使って手押しポンプの上から注いで『がちゃこんがちゃこん』と柄を押し下げる。そのため手押しポンプは『がちゃこん・がちゃぽん・がちゃこんぽんぷ』と呼ばれた。
昭和42年、我が家に電動ポンプがやって来た。米びつ程度の大きさなのに、『きゅいーん』というような音を出しながらけなげに働いてくれた。茨城なので当然日立製である。上半分がオレンジ色で下がアイボリーだった。それを境に我が家の生活は文化生活時代を迎える。 |
・いーどな |
【複】良いねえ |
『えーどな』とも。『だめだわ』とセットでしばしば使われる必須用語。
《いーどなどーなーどーなー、いーどなどーなーどー?》。 |
◎いーどなが |
親戚 |
『家統仲』の意味。 |
◎いどのぬし |
噴き井戸の溜めの部分に活けるコイやフナ |
− |
●いどば |
井戸 |
− |
・いどばだ |
井戸端 |
− |
◎いどはらい |
井戸掃除 |
− |
・いどま |
@休む間。用事のない時。ひま。Aそれをするのに必要な時間のゆとり。B休暇。C離縁。 |
『暇・遑』。
・いと:間:静岡。 |
・いどまごい |
休みを申し出ること。離縁の申し出。 |
『暇乞い』。
・いとまげ:鹿児島。
・いとまげー:神奈川。 |
・いどまに |
【複】間に |
濁音化。『暇に』。 |
・いどみぢ |
進むべき道 |
広辞苑に『いとみち【糸道】:@三味線・琴などのひき方。また、そのわざ。A常に三味線をひく人の、左の食指の爪端に弦の摩擦によって生じた凹み。いとづめ。』とある。
『挑む道』が訛ったか。
・いとみち:三味線の手ほどきをすること:東京。 |
・いどめ |
@厭目、いとめ、A糸目 |
濁音化。
@・いとめ:東京。 |
・いどめめず
◎いとめめず
◎いどめんめず |
イトミミズ |
− |
・いーどもー |
【複】良いと思う |
『思う』を『もう』というのは辞書掲載語。
★やんねーでいーどもーのが:やらなくて良いと思うのかい。
★いーのめーでいーどもーど:家の前で良いと思うよ。
★いーどもーもんかーどいーど:良いと思う物を買うと良いよ。
★いーのいーでいーどもーよ:俺の家で良いと思うよ。 |
・いーども
・いーどもや |
【複】良いとも |
『いいともや』は古い標準語。
・いいどこじゃねぇ:良いよ・いうにおよばない:長野。
★いーどもや:良いよ。
《いーどもどーもーどーもー、いーどもどーもーどー?》。 |
・いーどよ |
【複】良いって、良いよ |
− |
(いいとよい) |
(好いと良い) |
『い』と『よ』は不思議に関係が深い。『い』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞で、古くは『や、よ』だったとされる。
古語には『美し(いし)』(良い、うまい、巧みだ、けなげだ)がある。現代口語では『良い』は全く使われない。どうやら『美し(いし)』と『良し』が一体になって現代語の『良い・好い(いい)』になったと考えられる。
『良し』が『いい』に変化する過程には『よひ』の表現がある。これから、日本語の『い』『し』『ひ』には、混乱の過程がうかがえる。 |
(「い」と「ゆ」の交代) |
− |
本来区別されるべきものだが、標準語の『行く:いく・ゆく』にもあるように、『い』と『ゆ』は交代する傾向が高い。
『交代』とは国語学の専門用語で、『音通』(五十音図の同行または同段の音の転換。)とも呼ばれている。
方言では、標準語にあるもののほかさらに交代が起きることが多い。 |
◎いーとり |
長男、跡継ぎ |
『家取り』の意味。 |
◎いーどり
◎いどり |
結いで作業を手伝ってもらうこと |
− |
◎いーとんぼ |
イトトンボ |
下妻市。米粒に例えたと思われる。栂の一種に『コメツガ』がある。 |
◎いな |
ボラの稚魚 |
『鯔』。 |
・いな |
稲の古形で複合語として用いられる |
− |
▲いなー |
兄 |
『集覧:無記載』。本来は『せな・せなあ』である。接頭語としての『い』は広辞苑に@『主として動詞に冠し、語調をととのえ、意味を強める。記中「―這ひもとほり」』、A『斎:忌み清め、けがれのない、神聖な意を表す。万一一「ちはやぶる神の―垣も越えぬべし」』とある。Aの用例だとすれば兄に対する畏敬の念をもって使った言葉となる。 |
・いな |
【形】かわったこと。妙なこと。ふしぎなこと。 |
『異なり』の連体形。 |
◎いーな
◎いーなめ |
アイナメ |
− |
・〜いな |
【助】 |
『い』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞。『や』から『え』を経て、または『よ』から変化したとされる。感動その他の語勢を添える(広辞苑)。古い言葉だが茨城弁に生きている。
★んだいな:そうだねえ。 |
・いーな |
【複】言うな |
志賀直哉の『暗夜行路』にも出て来る古い言葉。
この表現は現代の『嘘つけ。』の言い方に似ている。
・いーな:神奈川。 |
・いーない |
【複】@言えない、A言うなよ |
@旧仮名遣いの『言へない』の影響か?。
★『土』:腹の立つ時分は憎い奴だと思つても後悔する時が無いとも言いないしね。
A『いーなや』がさらに訛ったもの。『い』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞。『や』から『え』を経て、または『よ』から変化したとされる。感動その他の語勢を添える(広辞苑)。
『聞書』には『いひなへ』がある。『言うなえ』の意味である。
・いーなっつぉー・いーなっと・いーなんと:神奈川。 |
(いなう) |
【動】担う、荷う |
静岡。静岡では語頭の子音が消える事がある。 |
◎いなおさめ |
後産の始末 |
『胞衣(えな)納め』の意味。 |
・いーなおす |
【動】言い直す |
近年の若い人は『言い換える』と言う。 |
(いなおり) |
− |
『居直り』とは紛争に伴いしばしば使われる言葉です。排水の陣を意味する言葉ですが、『辞典』によると、鹿児島・硫黄島では、『引越し』の意味です。もともと『直る』『治る』とはまっすぐになったり、是正される意味です。夢を持った感覚での『居直る』は未来がありますが、逆の感覚になると同じ言葉でも意味が全く異なることになるようです。
日本語の定義はいつでも曖昧で、これもその事例ですね。
★あー、こごにーいすわってからいづでもづでもこーよ:ここに座ってるから何時でも来てよ。
★んだいな、おれもそろそろいなおんねげなんね。はーとしだしな。そうだね。俺もそろそろ隠居しなけらばならないね。 |
◎いなが |
柄の長い柄杓 |
『柄長』の意味。 |
・いなが |
田舎 |
鄙びたところは、現代では『田舎』と当てられるが、田舎とは、そのまま『田圃のある住まい』の意味であり言い得て妙である。
一方、『いな』とは、稲の古形であるから、『稲処』ではないかと誰でも思う。また、田舎の者は世間を知らないから『井の中』と思ってしまう。さらに『井』には『水』の意味があるから、水のある場所を『井な処』と言ってもおかしくはない。また都会人にとっては、『異な処』かもしれないである。
すなわち、現代の『田舎』の定義とは、水があり、田圃があり、稲があり、都会とは隔絶された場所と定義すれば良い。あとは、茨城流に濁音化するだけである。 |
◎いなかけ |
稲架 |
『稲掛け』。
稲の語源は、『い』であり、加工したものが『飯(いい)』であり、飯の元を『稲(いね)』と言ったのではないか。今でも餌は『餌:え』と言う。 |
・いながっぺ
◎いながっぽ |
田舎の人を馬鹿にしていう語 |
『田舎っ兵衛』『田舎っぽう』。濁音化。田舎の人を馬鹿にして言う言葉。 |
(いなかぶ) |
稲を刈ったあとの株。 |
『稲株』。
・いなしぶ:静岡。
・いなしぼ:静岡。
・いなっかぶ:茨城。『稲つ株』。 |
◎いながめ |
お産後、胞衣(えな)を入れて納める瓶 |
多賀郡。『胞衣(えな)瓶』の意味。土台の下に埋めたという。 |
◎いなぎ
◎いなげ |
赤子の宮参りの時、産衣の上に着せる衣服。 |
『胞衣着』(えなぎ)。 |
◎いなぎ |
子馬 |
西茨城郡。 |
・いーなぎこ |
家なき子 |
日本でで昭和60年に公開されたフランス映画。当時中学校の体育館で観賞するまでは、『いつも家で泣いている子』だと思っていた。 |
(田舎の生活) |
− |
都市住宅と田舎の家の根本的な違いは、明らかに生活のプライバシーに関わる部分と環境作りの違いにある。都市部の平均的な家は閑静な住宅街を除き100uの敷地に総二階の100uの家を作るのが典型的である。そのような住宅では、プライバシーと住空間に求められる豊かさは明らかに相反する。
土浦の田舎の敷地は、小さくても300u、平均で1000u?、大きな家になると2000〜3000uはある。屋敷には目線を遮る生垣があるのがあたりまえで、庭を中心とした仕事・生活空間で隣戸の視線はまったく気にならない。私の当時の生活は、二階に部屋があり、裳階(もこし)屋根だったので、布団はその屋根に干した。バルコニーなどに干すより絶対屋根上で干した方が早い。私は、その干した布団の上でよく昼寝をした。目をつぶって開くと世の中が全て青くなっていた。
一方では、個々の職能に応じた生活騒音は、日常生活の風物詩でもあり、特に季節毎に行なわれる農作業に伴う庭仕事の音は、誰もが認める生活騒音でもあった。
敷地内には日常に必要な野菜や根菜類まで栽培でき、築山を初め花々で飾られる。すこし歩けば季節を感じさせる野山がどこにもあるのに、屋敷の風景を飾るために皆が季節の花々を植える。そのような生活と、都会の生活を比較したら、明らかに田舎の生活に軍配が上がる。 |
(いなぐ) |
女 |
沖縄。二重の段の変化。 |
・いなぐなっちぇー
・いなぐなれ |
【複】どこかへ行け、出て行け |
『居なくなってしまえ・居なくなっちゃえ』『居なくなれ』の意味。 |
◎いなげ |
赤子の宮参りの時、産衣の上に着せる衣服。 |
− |
・いなげどまぐはり |
稲毛と幕張 |
昭和40年前後の土浦市手野町では、『青年会・婦人会・敬老会』などを組織し、毎月僅かな貯金を積み立てて毎年1回の旅行を楽しんだ。
都会では点と点の付き合いしか無いが、当時の土浦ではこれらの組織を通じて男達は酒、女達はおしゃべりを通じて緊密なコミュニティが保たれていた。 |
◎いなげんざ
・いなけんざ |
赤とんぼ |
清音形は『本草啓蒙』掲載語。いずれも古い東国語。『稲とんぼ』の意味。 |
・いなご |
リンパ腺、リンパ腺炎、ぐりぐりができること |
私の祖母は、若い頃唾液腺に『野毛』が入り、数々の病院を回ったあと、千葉大学病院でやっとその原因が解り手術で摘出した。
当時の茨城方言は古語が色濃く残り、『異な子』なのか、『稲子』なのか今となっては不明である。
恐らく、当時の農作業の中で、様々な雑菌が入り、リンパ腺が腫れることが多かったのではないかと思われる。私も一度だけ足の付け根にぐりぐりができたことがある。普段は痛みはないのだが、触ると痛いのである。
現代では、無菌生活だから、聞いたことが無い。
・いんご:千葉。 |
◎いなこ
◎いなっこ |
イナゴ |
− |
◎いなこ
◎いなっこ |
ボラの稚魚 |
『鯔(いな)』。 |
・いなこぎ |
稲扱き |
稲の古形は『いな』である。 |
・いなごど |
変なこと |
『異なこと』。
・いなこと:山梨・静岡。 |
◎いなごめ |
イナゴ |
− |
◎いなさ
□いなさかぜ |
南東方向の強風、たつみかぜ |
標準語だが広辞苑には中国・四国以東で使用とある。台風時期の強風。県下では地域のより方向が異なり、東・南東・南南東・北東・東北東・北・南等の場合がある。
柳田国男は『風位考』でその語源を『イナは海、サは風。』としている。これにより『いなさかぜ』は重複言葉という事になる。
・南東風:北海道・岩手・宮城・福島・茨城・千葉・東京・神奈川・静岡・八丈島・愛知・三重・和歌山・大阪・兵庫・淡路島・山口・四国全県。
・南南東風:茨城・小豆島。
・南風:宮城・福島・茨城・静岡・高知。静岡では『いなさー』と言う。
・西南風:宮城。
・北風:茨城。
・北東風:岩手・茨城。
・東北東風:茨城・高知。
・東風:岩手・茨城・千葉・静岡。
・東南東風:徳島。
また、茨城では『春に吹く冷たい風』の意味の地域がある。
★いなさときたかぜかりかしなし:春に東南の風が吹くと翌日は北風が吹くという諺。
★いなさのおいこみ:急に強くなる南風。
★いなさのもちこし:日中から翌朝まで吹く南風。 |
▲△いなし
・いーなし
▽いなしめ |
ナメクジ |
『家無し』の意味。それにしても見事な表現の方言である。『集覧:新・西・真』。
同義語の『いえなし』は『日本言語地図』では、茨城県西央部と千葉県南央部に分布している。その他、『なめし・なめら・のろひき』(ぬめぬめした意味)、『だいろ』『まいまいくじ』がある。
『称呼』には『なめくじり:常陸にてはだかまいぼろ、越後にて山なまこと云。山中には大さ五六寸許のもの有と也。』とある。
『本草和名』には『奈女久知』と表現されている。
『俚言』には『なめくぢ:「本草啓蒙」なめくぢ(周防讃岐仙台)、なめくど(美作)、なめたれ(出雲)、へり(越後)、たいろう(信濃)、めやめやつぶり(肥後)、はだかまいぼろ(常陸)、本草の蛞蝓和名抄のなめぐち也。』とある。
・いなし:福島・栃木。 |
・いーなし |
【複】物言いなし、文句なし、異議なし |
『言い無し』の意味。 ・いーなし:言わない事:静岡。 |
(いなしぼ) |
稲株 |
静岡。 |
・いーなす |
【動】@ことさらに言う。Aそうでないことをもっともらしく言う。 |
『言い做す』。 |
・いーなずげ |
許婚者、いいなずけ |
濁音化。 |
◎いなせ |
勢い、虚勢 |
広辞苑に『鯔背:(一説に、江戸日本橋魚河岸ウオガシの若者が髪を「鯔背銀杏(イナセイチヨウ)」に結っていたところから)粋(イキ)で、いさみはだの若者。また、その容姿や気風。』とある。
・いなせ:粋:静岡。 |
◎いなせわるい |
【複】感じが悪い、気持ちが悪い |
北茨城市。 |
◎いなだいし |
花崗岩の一種 |
建築用語でもある。笠間市稲田で産出するためそう呼ばれる。 |
(いなだく) |
【動】戴く |
静岡。 |
・いーなづげ |
婚約者 |
許嫁(いいなづけ)。この言葉は今でも使われるが次第に薄らいでいる。
語源には諸説あり、『語源辞典』には『@ゆひなふづけ(結納付け)の約転、Aイミナヅケ(忌名付)のなまりか。結婚の際、夫となる男性が妻となる女性を呼ぶ忌み名を付けることから。Bナヅケはナツケの義か。』とある。
このような、基本的な日本語の由来が今でも解明されていないのは驚く。
私の記憶では、『諭す』(さとす)ことを、『言ってなつける。』と言ったと記憶している。『手なずける』という言葉もある。辞書には『懐く(なつく・なづく)』がある。
また、『いー・ゆい』は茨城では明らかに『結う』連用形である。そうなれば、許嫁(いいなづけ)とは、『言い・結い』『手懐ける』意味となる。
許嫁(いいなずけ)という当て字をしたのは誰かは、目下不明であるが、『許』(ばかり)とは、限定の副助詞でもある。即ち『嫁』に当たる『なづけ』は明らかに当て字である。 |
▲いなっころ |
犬 |
当時の高齢者言葉。『集覧:猿』。本来は『犬子・犬児・狗児(えのころ)』。現代では『いぬころ』。
『猪・豬・豕(い)』とはイノシシをさすが、『い』は『居』であり、犬もいつも家に居る動物と考えられる。
イヌはいつもあたりに居る動物『いぬるもの』だとすれば、イヌは今では『居る奴』で、イノシシはそのうち特別なもので、イヌの王者の意味だろう。 |
◆いなっさま
◎いなっしゃま |
稲荷神社、稲荷様 |
・いなりさま:狐:福島。 |
・いーなっと |
【複】言うな |
・いーなっつぉー・いーなっと・いーなんと:神奈川。 |
●いなっぴかり
・いなっびがり |
稲妻 |
− |
◎いなつま |
稲妻 |
語源は『稲の夫(つま)』。 |
◎いなにちょーさんだ |
赤ん坊がひとり笑いをすること |
勝田市。
・いなにあやされる:千葉。 |
◎いなばか |
胞衣(えな)を墓に埋めること |
古河市。『胞衣(えな)墓』。 |
◎いなばせ |
@虚勢、A素早い行動 |
@稲敷郡。A行方郡。
『ばせ』とは『体言について、その様子や状態の意を添える。』(広辞苑)こと。そうなると、『稲ばせ』(稲の状態)の意味で、稲の状態をことさらに良く言う意味なのだろうか。一方、『ばせ』には『米俵の両口に当てるわらのふた。桟俵。俵ばす。』(広辞苑)とあるが、関係が見出せない。
類似語の『いなせ』は『(一説に、江戸日本橋魚河岸ウオガシの若者が髪を「鯔背銀杏(イナセイチヨウ)」に結っていたところから)粋(イキ)で、いさみはだの若者。また、その容姿や気風。』(広辞苑)とある。
もともと『馳せる』には、『掛け合う』(交渉する。談判する。)意味があり、稲を対象に談判するとなれば、虚勢も出てくる。 |
・いなびがり
●いなぴかり |
稲妻 |
『稲光』。『いなつるび、いなたま』とも言う。 ・いなびがり:宮城。 |
◎いなぶら |
稲叢(いなむら)、稲塚 |
・いなばらぼっち:神奈川。
・いなぶら:神奈川。
・いなぶら:正月四日に門松や正月飾りを積み上げたもの:神奈川。
・いなぶらぼっち:神奈川。 |
◎いなほ |
繭玉 |
日立市・岩井市・行方郡。
繭玉は、本来繭の豊かな収穫を願うものだが、稲豊作の意味もあったことをうかがわせる方言。 |
◎いなぼっち
◎いなぽっち |
稲叢(いなむら)、稲塚 |
『ぼっち』は一般には『法師』と当てられるが、帽子のように先のとがったものや、物を積み上げて山状になったものを言う。 |
(いなみ) |
南 |
静岡。 |
◎いーなみ |
@家並み、A◎一軒ごと、家毎 |
A古河市。『いーごめ』がさらに訛ったと考えられる。 |
◎いなむし |
@イナゴ、Aイネカメムシ |
@東茨城郡・行方郡。A新治郡。 |
・いなもの
・いなもん |
妙な物 |
『異な物』。
・いなもん:山梨。 |
・いーなや
・いーなよ |
【複】言うなよ |
『や』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞。『や』から『え』を経て、または『よ』から変化して『い』に変わったとされる。
『聞書』には『いひなへ』がある。『言うなえ』の意味である。原型は『言うなや』と考えられる。 |
・いなやろう |
変な野郎 |
『異な野郎』。 |
・いなよー |
具合が悪い様、妙な様 |
『異な様』。 ・いなよー:山梨。 |
・いなーら |
稲藁 |
『いな』は『稲』の古形。今でも『稲作(いなさく)』が残っている。『いなわら』の転。 |
(いーなりきなり) |
自由気まま |
神奈川。 |
(いなりこー) |
座ったまま動かないこと |
『稲荷講』と『座って動かない狛犬』をかけた言葉と見られる。 |
◎いなりごはん |
稲荷鮨、お稲荷さん |
− |
・いーなりごんべ
・いーなりごんべー |
【慣】言いなりになる人への侮蔑言葉 |
『言い成り権兵衛』の意味だろう。歴史的な経緯は不明。
・いーなりごんべー:群馬。 |
・いーなりさんぼ |
言われ放題 |
『言い成り三宝』。 |
・いーなりしでー
・いーなりほーでー |
【複】【副】言われた通りにやること |
『言いなり次第』『言い成り放題』の転。茨城弁の法則から、『ゆーなりしでー、りーなりしでー』と言う場合もある。 |
(いなる) |
【動】癒える |
古語では『癒ゆ』。『癒えなる』の意味か。
鹿児島。 |
◎いなわら |
稲藁 |
『いな』は『稲』の古形。今でも『稲作(いなさく)』が残っている。 |
(いーに) |
【副】互いに |
静岡。『相に』。 |
◆いーにぐ |
【副】生憎 |
=『えーにぐ』。古くは『えあにぐ・えゃにぐ・あやにぐ』。
★いーにぐいーにぐがねー:生憎良い肉が無い。 |
・いーにもなにも
・いーにもなんにも |
【慣】良いとか悪いとか言うのではなく、とにかく |
・いーにもなんにも:山梨。 |
◎いぬ |
お前、貴様 |
那珂湊市。『うぬ』が訛ったもの。 |
・いぬいっちけー
・いぬえっちけー |
【固名】NHK |
《犬はエッチですか?》。 |
・いぬかぎ
・いぬくそかぎ |
泳法の一つ、犬掻き |
− |
◆いぬぎ |
エノキ |
− |
・いぬぎ
■◆△▽いぬげ |
@カビの一種、Aイヌノヒゲ、Bマツバイ |
『犬毛』の意味。 |
・いぬくそ |
犬を卑下する呼称 |
− |
・犬供養 |
− |
広辞苑に『犬供養:栃木県で、難産で死んだ犬の供養をすると人の出産が軽くすむといって、女が集まって行う供養。』とある。
茨城では、@お産で死んだ犬の供養、A妊娠したときにする犬の供養、初産で実家に帰るときにする犬の供養、C女達が犬を供養する会。年に2回であったり、2年に1回であったり、寺に集まったり、甘酒をふるまうところもある。 |
◆いぬげはいる ■いぬげがはえる |
【動】カビが生える |
− |
◎いぬこ
・いぬごろ ◆いぬころ |
子犬 |
成犬を指すことがある。『いぬころ』は映画などでも耳にする。
・いんころ:佐渡島。 ・えんこ:犬:秋田。 |
・いぬごろし
・いぬころし |
野犬殺し |
戦前戦後、たんぱく質が少ない時代には、犬や猫は貴重な蛋白源だった。明治生まれの祖父は生前に『赤犬はうまいが猫肉は臭い』と言っていた。
・いぬころし:野犬捕獲人:群馬。 |
・いぬしし |
猪、イノシシ |
・いぬしし:東京。 |
◎いぬっこ
◎いぬっころ |
子犬 |
『ころ』は、万葉集の時代に使われた『子等・児等』が訛ったもので、上代東国方言とされる。現代語では『エノコログサ』に残る。『えのころ』とは犬の子の意味で別に『えのこ』(犬子・犬児・狗)とも言う。
成犬を指すことがある。
・いぬっこ:宮城。
・いぬっころ:神奈川県横浜市緑区川向町。
・いぬっころ:犬:埼玉。 |
・いぬっぱしり |
犬走り、建物周辺に設けた土間コンクリート |
『犬走り(いぬばしり)』。今では建築専門用語。半濁音は濁音で発音されることがある。古くは地面に砂利等を敷き叩いてかためた場所。日常的な通路になる他、外壁を汚さない目的、将来の改修工事の際の足場用地盤となる。住宅では滅多に設置されない。 |
◎いぬのきんたま |
@イヌノフグリ、Aオオイヌフグリ、Bキツネノエフデ |
− |
・いぬば |
犬歯 |
− |
◎いぬめ |
犬 |
・いぬめ:八丈島。 |
・いね
・いねー |
【複】居ない |
否定形。『居る』は『おる』とも言うがその場合は古くから謙譲語である。古語では『あり』である。『あ・い・お』は日本語の根源的な言葉らしい。
人称代名詞の古語がア行音・ワ行音に集中しているのも面白い。
東国に顕著な否定の助動詞『ない』の古形『ぬ』に準じて、『居ぬ』となり、それに命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞『え』がついた『居ぬえ』が、江戸語の『いねえ』に変化したと考えられる。
・いん:山梨。 |
◎いーね |
稲 |
− |
・いーね
・いーねー |
【複】言えない |
東国に顕著な否定の助動詞『ない』の古形『ぬ』に準じた、『言へぬ』となり、それに命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞『え』がついた『言へぬ』が、茨城流の『言ひぬえ』と訛り現代に至ったと思われる。亜流として『いーに、いーにー』がある。言い換えれば、『言へぬえ』が江戸で『いえねえ』に変化し、茨城で『いーねー、いーにー』に変化したと考えられる。
★『土』:それだが腹の立つ時分は憎い奴だと思つても後悔する時が無いともいひないしね:そのことだが腹が立つ時には憎い奴だと思っても後悔する時が無いとも言えないしね(地主のおかみさんの言葉なので訛が少ない)。 |
◎いねあげ |
脱穀のための小田掛け棒から稲を下ろし、稲を持ち帰ること。 |
『稲揚げ』の意味。 |
・いねあら |
稲藁 |
=『いなーら』。 |
・いねかぎ
・いねかげ |
− |
刈った稲を小田掛け棒に掛けること。 |
◎いねかりがま |
稲刈り専用の鎌 |
− |
■いねかりぼだもぢ |
最初に稲刈りをした時に作るぼた餅 |
このほか県内には、『いねかりはじめのもぢ』と言って餅を搗く地域がある。 |
・いねぐなる |
【複】居なくなる |
・いねぐなる:宮城。 |
・いねげー
・いねーげー |
【慣】(誰か)居ませんか |
− |
◎いねこ |
イナゴ |
勝田市。 |
◆いねご |
@イナゴ、Aリンパ腺炎 |
A・いねご:埼玉・神奈川。
・いのご:神奈川。 |
◎いねごがねまる
◎いねごまる |
【複】リンパ腺が腫れる |
『ねまる』は『腫れる、できものができる』意味。 |
・いねこぎ |
稲扱き、脱穀作業 |
濁音化。
『称呼』には『稲扱(いなこき):京江戸共にいねこきと云。畿内にてごけたおしと異名す。』とある。 ・いねこぎ:宮城。
・いねこきいわい:稲扱きが終わった祝い:神奈川。
・かなくだ:鹿児島。
・せんば:鹿児島。 |
◎いねだな |
稲架 |
久慈郡。
・いねだな:東京・栃木。 |
・いねたば
・いねったば |
稲束(いなたば) |
− |
◎いねっかぶ |
稲の株 |
− |
◎いねつけ |
収穫した稲を馬や耕運機に積み込むこと |
− |
◎いねのー |
稲叢(いなむら)、稲塚 |
− |
◎いねむし |
イナゴ |
鹿島郡。 |
▲いの |
犬 |
当時の高齢者言葉。『集覧:真』。 |
・いーの
・いーのー |
結納 |
・いーの:神奈川。
・いーのー:神奈川。
・いーれ:。鳥取・大分。『結入れ』。
《結納は何回やってもいーのー?。》。 |
・いーのい
・いーのいー
・いーのえ
◆いーのえー |
@私の家・家族、Aあなたの家・家族 |
『家(うち)の家(いえ)』の意味。最初の『家』は概念的な『家』、後の『家』は建物を示すか、またはその逆か。主格が省かれた言い方と考えられる。
★ありゃ、いーのいにわすいちった:あら!、家に忘れちゃった。
★これがおめのいーのいが:これがお前の家かい。
★おれのいーのいがらおめのいーのいまではとーいがんな:俺の家からお前の家までは遠いからな。 |
・いーのうぢ |
@(家の)建物、A家の中、B宵の内 |
− |
・いーのかー |
【複】良い物を買う |
− |
・いーのが
・いーのがー |
【複】良いのかい |
− |
・いーのが ・いーのがな |
@良い物、A家の人 |
A・えーのが:山梨。 |
・いのがす
・いのかす |
【動】動かす |
『うごかす』→『ゆごかす』→『いごかす』→『いのがす』。
『いのく』の他動詞形。 ・いのがす:青森。
・いのかす:神奈川・静岡。
《胃のガスは早く動かさないと?!?》。 |
・いのぎ |
エノキ |
− |
◎いのぎ |
産着 |
『胞衣着』(えなぎ)。 |
・いのぐ |
絵の具 |
− |
・いのぐ
・いのく |
【動】@動く、A移る、立ち退く |
@全国に遍在する方言。そうなると『動く』とはもともとは『居退く』(〓その場から離れる。たちのく。)かもしれないと考えたりする。
『聞書』では『いごく』は江戸言葉、『いのく』は浪花言葉とある。しかし『いごく』は徳島や鹿児島でも使われることから必ずしも東西と対立するものではないようである。
原型は、本来動かない『居る・ゐる』があり、それが『転く・倒く』意味を『いこく』と言い江戸期の『いごく』に残ったと思われる。それが現代の『うごく』に繋がったと見られる。
『語源辞典』での意味は『物事の位置・状態が別の所に変わる』とあり、語源は、盛り上がる意味の『うごもる、うごなはる、うごもつ』と同じ語幹、『うごめく』(虫などがもぞもぞうごく)説が有力らしいが、現代標準語をベースにするからそうなるのではないか?。『物事の位置・状態が別の所に変わる』=『居退く』の方がずっと自然だ。
文献はともかく、鼻濁音の『ご』と『の』はいかにも音通しそうである。関西の分布状況は確認できていないが、江戸の後期の言葉は、江戸時代初期の関西言葉であったことが解っており、現代の『動く』のルーツは『いのく』なのかもしれない。これは、東北や関東周辺の地域にもあることからほぼ間違いないだろう。
・いのく:青森・神奈川・山梨・静岡。
・いのかない:動かない:神奈川。
・えのく:静岡。
A清音なら古い標準語。『居退く』。 |
◆いーのくれねー |
【複】あまり良いものはあげられない |
この方言には文化的な背景があると思われる。
★(古)これくんねが?−あーそれが、いーのくれねーどもだすぺ:これもらえない?−ああ、それ?、あまり良いものじゃないけどあげるよ。
★(新)これくんねが?−あーそれが、あんまりいーもんだねーけんとおめにやっぺ:これもらえない?−ああ、それ?、あまり良いものじゃないけど上げるよ。 |
◆いーのげ ▲いーのげえー |
【複】良いのかい |
『集覧:稲』。 |
◆いのげ |
カビ |
『いぬげ』がさらに訛ったもの。 |
◆いのげはいる |
【複】カビが生える |
− |
◎いのこ |
10月10日の収穫の祝いの行事 |
『亥の子』。 |
■いのこうぢ
◎いのこつき
■いのごぶぢ
|
10月10日の収穫の祝いの行事 |
『亥の子打ち』の意味。
一般に『亥の子』『亥の子祝い』『亥の子突き』は、『陰暦一〇月の亥の日に、西日本各地の農村部で広く行われる刈り上げ祝いの行事。猪の多産にあやかり、また、万病を払うまじないとして亥の子餅を食べ、子供たちが家々の庭先を石や藁束(わらたば)でついて回ったりする。もと、宮中の年中行事として行われた。玄猪(げんちよ)。』とあり、西日本の行事である。
一方、東日本では『十日夜(とおかんや・とおかや)』と言い、『陰暦一〇月一〇日の夜。また、関東・中部地方でその日に行われる刈り上げの行事。田の神が山に帰る日とされ、案山子(かかし)上げをしたり、子供が藁束で地面をたたいて回ったりする。』とある。
茨城では、西日本の名称の『亥子(イノコ)』の流れを残しながら、行事の中身は東日本の『十日夜』を残していることになる。
また、別の流れの田の神とは稲作の神様でもあり、また『御釜様』(竈の神様)でもある。田の神様は、2月10日に降りてきて、10月10日に帰ると言われる。10月10日には、餅やぼた餅を作ったり、夜遅く餅を作ると娘が縁遠くなり、早くつくと早く嫁に行けるとか、餅二枚を箕に入れて臼にのせたり、荒神様に餅を供えたり、お釜様に黄な粉のお握りを12個供えるところもある。この日の餅は、山に帰る他の神様に持たせるとか、カエルが出雲大社に背負っていくのだと言われる地域が有る。カエルが餅を運ぶのを見たり、餅をつく音を聞いて、大根が羨ましがって首を伸ばしてよく育つとも言われる。この日の餅を食べると病気が治るという地域がある。日にちは異なるが、久慈郡では『いんむすびのおはぎ』、新治郡等では、『いんむすびのぼたもぢ』、東茨城郡では『いんむすびのもぢ・いんむすびもぢ』と言う
この日の晩、子供達は家々を回って藁鉄砲で庭の地面を叩き、お捻りをもらったり餅やご馳走を食べた。藁鉄砲は、藁づとだったり、石に縄をつけたものだったり、サトイモのずいきだったりする。さらに、縄の先端に『いぼくたま』を作ったり、サトイモのずいきを芯にして縄を巻いたりして工夫した。そのため、真壁郡では『いもただぎ』と言う。
『土浦市史・民俗編』には『おいのこ、おいのこ、旦那様のおいのこ』『旦那様のおっぺのこ』『えのこ、えのこ旦那様のえのこ、大麦当たれ、小麦当たれ、蕎麦当たれ』『銭が儲かるようポンポンなれよ。』等と様々である。男根を示す『へのこ』との関係もあると言われる。『むじなっぱたき』とも言う。
このとき子供達が唱える県内各地の呪文は以下の通りである。
・行方郡:いのこだ。いのこだ。こんやはどごのいのこだ。だんなさまのいのこだ。おめでたい。おめでたい。
・行方郡:いのこなー。いのこなー。だんなさまのいのこなー。ぜにもかねももーがるよーに、さんよーぼったりしょ。もーいちどおまけにさんよーぼったりしょ。
・鹿島郡:いのこだ。いのこだ。これはどこのいのこだ。だんなさまのいのこだ。ぜにもかねももおがるよーに、どんだりしょ。どんだりしょ。もーひとつどんだりしょ。(「どんだりしょ。」は「さんよーぼったりしょ。」とも言う。)
・新治郡:じゅーがつとーかのもちおぐれ。もちがなければぜにおくれ。こむぎあだれ。さんかくばったそばあたれ。
また新婚の家の前では別の言い方があるという。
・行方郡:よめさま。よめさま。おいのこ、おめでたい。
・真壁郡:おーむぎあだれ。こむぎあだれ。さんかくばって、そばあだれ。
本来、収穫祝いなのに、子供達の言葉は、収穫を願っている言葉である。しかも、旦那様の亥の子を特定して言っている。亥の子から『陰の子』すなわち『へのこ』を暗示している可能性も有る。稲敷郡に残された、「どんだりしょ。」「さんよーぼったりしょ。」は、謎の言葉であるが、九分九厘男根のある状態を指していると思われる。
また辞書には、行事とは関係なく小児の魔よけとしての『いんのこ(犬の子)』があるという。
ちなみに、土浦市以外では『亥の子』を十五夜に行うところがあり、鳥追いの行事で行われる地域がある。『あわのとり、あわんどり』と言う。十五夜に行う例では長塚節の『月見の夕』に描かれている。『手頃に藁を束ねて繩でぎり/\卷いて、そいつを擔いては家々の庭へ行つて力一杯に叩きまはるのである、その叩くと共に、「大麥小麥、三角畑の蕎麥あたれ」とみんなで聲を揃へて叫ぶのであつた、卷藁のなかへ芋がらの干したのを入れると音がいゝといつて拵へて貰つたことであつた、今叩いて居る子供等もいかに樂しいことであらうと思ツた。』とある。『大麦も小麦も三角畑の蕎麦も当たり年になってほしい。』という意味だろう。その言い回しが記憶に残っているのは何故だろう。
関西の『亥の子』も関東の『十日夜』も呼称こそ異なれ、収穫祝いと子宝に恵まれることを願った行司であることは間違いないようである。『カエルが餅を運ぶのを見たり、餅をつく音を聞いて、大根が羨ましがって首を伸ばしてよく育つ』などは、多産をイメージさせる言い伝えとしか思えない。
この行事一つとってみても、昭和30年代までは、古い行事や慣習が良く残されていたが、昭和40年代になると高度成長に伴う合理化・簡略化の波によってだんだんすたれて行った。
・だいこんのとしとり:群馬。 |
◎いのこぐさ |
エノコログサ |
− |
◎いのこのもぢ
◎いのこもぢ
◎いんこのもぢ |
@10月10日、A10月10日の収穫の祝いの行事、B10月10日の収穫の祝いのときに搗く餅 |
・いのこのぼたもち・いのこぼたもち:十または十一月の初亥の日に供えるぼた餅:神奈川。 |
▲いのころ
・いのっころ |
犬 |
当時の高齢者言葉。『集覧:新・多』。本来は『犬子・犬児・狗児(えのころ)』。現代では『いぬころ』。 |
◎いのしけー |
カワニナ |
稲敷郡。『命貝』の意味。飢饉の時食料にした名残と考えられる。 |
◎いのぢ |
エノコログサ |
久慈郡。『命』の意味。飢饉の時食料にした名残と考えられる。 |
◎いのぢあわ |
@エノコログサ、Aイヌアワ、Bメヒジワ粟 |
『命粟』の意味。飢饉の時食料にした名残と考えられる。 |
◎いのぢあわでもでりゃほよー |
諺の一つ。 |
『いのぢあわ』は主にエノコログサを言う。『命粟でも出りゃ保養』の意味。エノコログサは雑草なので直ぐ刈られるが、穂が出ればつかの間でも世の中を見たことになるという意味。働いてばかりいる人に、たまには外に出て目の保養をしなさいという諺こと。 |
◎いのぢがい |
カワニナ |
稲敷郡。飢饉の時食料にした名残と考えられる。 |
◎いのぢぐさ |
@エノコログサ、Aイヌビエ |
飢饉の時食料にした名残と考えられる。 |
(いのちをしまう) |
【動】命を失う |
東京。
『命を終わりにする・命を隠す』意味と思われる。 |
・いーのばす |
【動】いろいろに言って時を延ばす |
古語の『言ひ延ぶ』の流れ。消えてしまった言葉。
『俚言』には『いひのぶる:女のためし日をいひのべつつ後のHをまてといひしかば。』とある。俚言集覧は寛政9年(1797)に著され後に明治33年(1900)に再編纂されたから、明治後期にHの俗語があったことになる。HはしばしばHIPのHとされたが、改めて辞書を調べると『(「変態」のローマ字書き hentai の略) 性に関する言動が露骨なさま。』とある。 |
・いーのひがり
・いーのひかり |
農家向け雑誌「家の光」のこと |
− |
・いーのひと |
家族 |
『家人』。
★だれがいーのひとはいねのげー:誰か家族はいないの?。 |
・いーのべる |
【動】言う |
繰り返し言葉。 |
◆いーのめ
◆いーのめー |
家の前 |
・いのめ:宮城。
・いんのめ:宮城。 |
◆いーのめーのあがとんぼ |
【慣】内弁慶 |
赤とんぼは、家の前ではすいすいと元気良く飛ぶのに隣に移ると急に大人しくなったような飛び方をすることに例えて、他の家や場所に行くと態度が小さくなる人を言う。
・えのめのがんばりこ:青森。 |
◎いのもの
◎いーのもの
・いーのもん |
家族、一族 |
『家の者』の意味。 |
◎いのる |
【動】呪う |
北茨城市。 |
◎いば |
席 |
『居場』の意味。 |
◎いーばー |
飼料 |
筑波郡。『飼葉』の転。 |
(いーばー) |
いい気味 |
沖縄。 |
・いーっばい
・いーっぱい
・いーぱい |
【形動】いっぱい |
・いーぱい:静岡。
《良いパイがいーぱいあんの?!?》。 |
◆いはいもぢ
■いはいもち
◆いへーもぢ |
後継ぎ(長男) |
位牌は長男が譲り受けることや葬式のとき長男が位牌を持つことからそう言うのだろう。 |
◎いーぱか |
個人1軒だけの墓 |
『家墓』の意味。
・いえばか・えーばか・やしきばか:個人所有地内の墓:神奈川。 |
・いばーぎ |
茨城 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。 |
◆いーはじかぐ |
【動】大変恥ずかしい思いをする |
− |
◎いーばせました ◆いーばせやーした |
【感】ご苦労様でした |
『歩かせました。』の意味。
・おえーばせしました:神奈川。
・おえーばせました:神奈川。 |
◎いーばっしょ
・いーばんしょ |
【感】おいでなさい |
『お歩きなさい』の意味。 |
▲いばなく |
【動】(馬が)いななく |
『集覧:久・猿』。
古い標準語では『嘶ふ』(いばう)・『嘶ゆ』(いばゆ)・『嘶える』(いばえる)とも言う。
『語源辞典』に、『嘶える』(いばえる)は、『@イは馬の鳴き声の擬声。バユはホユ(吠ゆ・吼ゆ)の転。Aイバアフの転。』、『嘶く』(いななく)は『@イは馬の鳴き声の擬声語。イナクと同語。ナナクはノナク(之鳴く)の転。Aイナは馬の鳴き声。Bナナクはナガナク(長鳴)。イはその声。Cナナクはナナク(張鳴)。イは馬声。』とある。これから、『嘶える』と『嘶く』の合成語か、『いばひなく』意味と考えられる。
・いぼくる:怒る:新潟・長野。
・いぼつる:すねる:新潟・長野。
・いぼる:すねる:福島・群馬・新潟。
・いぼる:(馬が)いななく:高知・長崎。
・いぼる:怒ってどなる:長崎。
・いぼる:馬が発情する:愛媛。
・いぼをつる:怒る:群馬・新潟。 |
・いーはやす |
【動】誉めそやす、言いふらす |
『言い囃す』。 |
◎いばらい |
用水路の清掃 |
− |
・いばらぎ
・いばらぎ |
茨城 |
『ぎ』は濁音・鼻濁音。
何故か『茨城県民の歌』を歌う場合は濁らない。古くから東北系の方言は鼻にかかる『ずうずうべん』と定義されたが、茨城人は(私も含め)、『し』を『す・ず』と言う方言だと思っていた。
茨城方言すなわち茨城弁も全く同じである。その中で茨城を意味する『茨城』の『き』が『き』なのか『ぎ』なのか『ぎ』(鼻濁音)なのかが近年議論されている。事の問題を投げかけたのは、早くからネット上で茨城弁を『茨城王−イバラキング』で青木氏が訴えたが、そのキャッチフレーズは『いばらぎじゃなくていばらき』であるが、古い茨城弁では『いばらぎだなくていばらぎ』が正しいのである。
ちなみに、茨城の語源は、第10代天皇の崇神天皇(在位前97〜30)の時代に茨(うばら)の城(き)を築いて土賊を滅ぼした伝説によっているという。万葉集10巻防人の歌には『茨城郡(うばらきのこほり)』が書かれている。この点でも濁音形は間違いと言えるだろう。『茨城郡(うばらきのこほり)』は、現在の東茨城郡・西茨城郡・新治郡に当たり、常陸国府が置かれていた。茨城は古くは『うばらき』『むばらき』と言った。
ところが、茨城の地元ではカ行音とだ行音は語頭を除くと濁音化するという方言の大原則がある。
茨城では、単語のアクセントが存在しないことから、カ行音の鼻濁音と濁音の識別は必須で柿は『かぎ』と言い、鍵が『かぎ』とならないとコミュニケーションに支障を来たす。
ところが、もともと鼻にかかる『ずうずうべん』を使う関東では珍しい地域である。『行く』という言葉は『いぐ』となるが『いぐ』が生きている。『いばらぎ』と『いばらぎ』は全く違うのである。
茨城の方言ルールからすれば『いばらぎ』が正しく『いばらぎ』は間違いである。即ち、『いばらぎ』だなくて『いばらぎ』が正しいのだが、歴史的には『いばらき』が正しいのである。 |
いばらき(茨城)とつちうら(土浦) |
− |
茨城人は県が付く場合は『いばらきけん』と多くの人が発音する。これは、『いばらぎけん』と発音しても『ぎ』が無母音のため清音の場合と区別がつけにくいからである。
ところが単独では『いばらぎ』(ぎは濁音)と茨城弁の標準ルールに従って話す人が意外に多い。標準語では以前は『いばらぎけん』(ぎは鼻濁音)と一律に発音されていたが、最近のNHKではきちんと『いばらきけん』と発音するようになった。それでも相撲の放送で力士を出身を紹介するときは、今でも『いばらぎけん』が使われている。
その経緯や理由は定かにされていないが、もともと茨城方言は濁音化する傾向があることと、鼻に抜ける発音から、『いばらぎ』の発音が他県の人の耳に『いばらぎ』と聞こえてしまうことは否定できないだろう。一方で宮城県は、鼻濁音で発音されるのは、より『ずうずう弁』の度合いが大きかったためとも推測される。
茨城方言を最も早くネット上に紹介し、単行本を発行されている青木氏の『いばらぎではなくていばらき』が、茨城弁を語るキャッチフレーズになっているが、実際は逆で、古くは『えばらきでゃーなぐってえばらぎだんべー』『いばらきだなくてーいばらぎだどー。いばらきだなくてーいばらぎだっぺよー』となる。現代では『いばらきではなくていばらぎだよ』であろう。
パソコンは困ったもので『いばらき・いばらぎ』どっちにでも訳せるようになっている。大阪の『茨木』はちゃんと『いばらき』と言われているのに、こんな混乱は県レベルではあまり聞いたことがない。
ところで、神奈川県下では『秦野(はだの)』なのに『はたの』と言われたり、『長津田(ながつた)』は『ながつだ』と言われたりするように、『土浦』は『ちぢーら』や『つぢーら』『つぢうら』なんて呼ぶ人もいた。さらに『えばらぎ』『えんばらぎ』なんて言う人までいた。正しい発音を知っていながらそう言うのである。我が甥はは小学生の時の国語の時間に土浦の読みを『つちーら』と書いて減点されたという。
『茨城県』『茨城県人』となると『いばらぎきん』『いんばらぎきん』『いばらききんじん』『えんばらぎきんじん』のように聞こえることもある。文字で可能な限り忠実に表現すれば、『えぃんばらぎけぃんじん』だろうか。
きっと正統茨城弁が存在しないためだろうと思うが、茨城弁らしい言い方は、『いばらぎ』と『つぢうら』に軍配が上がると思っている。 |
・いばらぎきんちじ |
茨城県知事 |
− |
・いばらぎきんみんのうだ |
茨城県民の歌 |
1.
そーらにーわあつーぐーばー
しいろーいくぼー
のーにわーみーどーりーおー
うーづーすーみずー
こーのだいぢにうーまれー
あーがるーぐーいーぎーるー
よーろごーびーがー(わー)
あーすのきーぼおーお
まーねーぐのーだー
いばらぎー いばらぎー あ(わ)れらーのいばーらぎー
2.
ゆーだがーなーみーのーり
うーみーのざぢー
うーめのほーまーれ(ほーがーれ)にかーおーるくーにー
こーのかーぎーりないー恵みをうげでー
おーしーぐー励むーいどなみがー
あーすの郷土をつーぐーるのだー
いばらぎー いばらぎー あ(わ)れらーのいばーらぎー
3.
せーぎおーひらぐー げえーんしのしー(原始の火)
寄ーせる新潮(にいじお:にーじお)鹿島灘(かーしーまーなーだー)
このあだらしいひがりおかがげー
みーんなで進む足なーみーがー
あすの文化をきずぐのだー
いばらきー いばらぎー あ(わ)れらーのいばーらぎー
(実際は標準語で歌われるのですが、話言葉に直すとこうなります。) |
(茨城の三ぽい・水戸の三ぽい) |
茨城県人や水戸の気質を例えていう慣用句 |
茨城人は、怒りっぽい、飽きっぽい、忘れっぽい、水戸人は、理屈っぽい、骨っぽい、怒りっぽいと言われる。 |
・いばらっきん
・いばらっけん |
茨城県 |
訛りが生まれる理由を証明する典型的な方言。関西方言のように『き』にアクセントがあれば話しやすいが、平坦に発音すると促音化した方が発音しやすい。 |
・いばらっきんちじ
・いばらっけんちじ |
茨城県知事 |
− |
・いーはり |
良い機会 |
茨城弁の重要語と理解しているが、いまだ標準語との関係が見出せない。h音脱落の逆の現象なのだろうか。 |
・いばりくさる |
【動】いばりやがる |
関西的な言い方。 ・いばりくさる:神奈川。 |
(いばりする) |
【動】小便する |
神奈川。『ゆばり』は小便の古形。『いばり』とも発音する。 |
・いばりぼー
・いばりんぼ
・いばりんぼー |
威張る人 |
・いばりっかー:静岡。
・いばりっと:神奈川。
・いばりんぼー:神奈川。
・こすっかー:静岡。
・ちょぽっかー:静岡。 |
◆いーひ |
@お灸、A天気の良い日 |
@『焼火』(やいひ)が訛ったもの。=『やえひ』。
Aは標準語。 |
●いび |
●指 |
『い』と『ゆ』の混同の典型例。全国に遍在する訛。古形『および』。
・いび:群馬・東京・神奈川・八丈島・長野・山梨・静岡。橘正一の『方言学概論』には、関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州に分布するとある。方言ではないとされる言葉。類似の訛りの例として以下が挙げられている。
・あんどんよし:行灯。『片言』に『行灯:二字ともに唐音なるがゆへにあんどんよしと云り。』とある。
・えべす:恵比寿。
・おほかめ:狼。
・きにょう・きんにゃう・きんのう:昨日。
・じゃうり(じょうり):草履。
・たのき・ふるだのき:狸・古狸。
・てのごひ:手拭。古語。
・ひゐゆふ(糸偏に広の字)・ひふさす(出納):紐(ひぼ)。原本印刷不鮮明のため。 |
□いび |
@□海老(えび)、Aヌカエビ |
− |
◎いび |
ヤマブドウ |
『葡萄(えび)』。 |
・いびー |
【形】煙たい |
『いぶい』がさらに訛ったもの。逆行同化。 ・いびー:群馬・神奈川。 |
◎いーびあー |
【動】歩みあう |
− |
◆いーびあい |
歩み寄り、歩み合い |
古くは『えあびやー』。『歩み合い』の意味。
・えーびえー:神奈川。 |
◎いびいも |
サトイモの一種 |
広辞苑に『蝦芋:京都市東寺付近特産のサトイモの一品種。小芋の形はエビに似て、軟らかく甘美。京都の名物料理「芋棒」ではこの芋を用いる。』とある。 |
◆いびおだ |
川魚漁でエビをとるための粗朶 |
− |
◆いびがに |
アメリカザリガニ |
『蝦蟹(えびがに)』 |
・いびがね |
指輪 |
『指金』。
・いっがね:宮崎・鹿児島。
・いーびーがにー:沖縄。
・いびがね:広島・福岡・長崎。
・いびかね:香川。
・ゐびがに:沖縄宮古島。 |
・いびぎ
◎いぴき |
鼾(いびき) |
− |
◎いびぎかぐ |
【複】鼾をかく |
− |
◎いーひくった |
【複】痛い目にあった |
直接訳すと『お灸を食らった』意味になる。 |
◎いびぐも |
オニグモ |
真壁郡。 |
・いびぐる |
【動】いじりまわす、いびりまくる |
・いびくる:群馬・長野・山梨・大分。 |
◎いびこーげ
◎いびこーろげ |
カマドウマ |
真壁郡。 |
◎いびさいとっつぁま
◎いびしおや |
烏帽子親 |
− |
・いーびーしー |
A,B,C |
東北あたりだと『えーびーすー、えびす、恵比寿』に聞こえる。 |
◎いびしご |
烏帽子児 |
− |
◎いびじめ |
注連縄の一種 |
『海老注連』(えびじめ・えびしめなわ)。 |
◎いびす |
いびつ |
勝田市・行方郡。 |
◎いびすこー |
恵比寿講 |
− |
◎いびすさま |
@恵比寿様、Aクジラ |
− |
◎いびたる |
【動】居座る |
『入り浸る』。 |
◎いびだれ
◎いびたれ |
@居座ること、座ったままなにもしないこと、A座ったまま酔ってお漏らしすること |
@『居浸れる(いびたれる)』。
・いびたれ:だらだらして仕事をしないこと:京都。
A・いたびり:座ったままで失禁すること:山梨。倒語か。
・いびたれ:寝小便・大小便を漏らすこと:静岡。
・いべた:座り小便:東京多摩。
・えびだり:山形。 |
◎いびたれこぐ
・いびたれる |
【動】@居座る、座ったままなにもしないこと、A座ったまま酔ってお漏らしする |
@『居浸れる(いびたれる)』。 |
・いびづ |
【形動】いびつなこと |
『歪(いびつ)』の濁音化。『ゆびづ』とも言った。『飯櫃』が楕円形であったことに由来すると言う。
・いびつ:強情:山形。
・いびつ:苦情:宮城。
・いびっけ:神奈川。
・いびんつ:長野。
・びっけー:神奈川。
・びっつ:神奈川。
・びっつー:神奈川。
・びっつく:神奈川。 |
◎いびつおげ |
桶の一種 |
− |
・いびっさま
・いびっさん |
恵比寿様 |
− |
◎いびったれ |
@居座ること、座ったままなにもしないこと、A座ったまま酔ってお漏らしすること |
@=『ながっちり』。『居浸れ』の意味。
A・いびったれ:寝小便:東京。 |
・いびったれる |
【動】@居座る、座ったままなにもしないこと、A座ったまま酔ってお漏らしする |
『居浸れる(いびたれる)』なら標準語。死語。 |
▲いびづる
◎いびっつる |
山葡萄 |
『集覧:稲』。エビツルの転。エビツルは山葡萄とは異なる。
もともと葡萄は『えび』とも言い漢字はそのまま当てられる。辞書には『葡萄(えび):@ぶどう。エビカズラ・エビヅルの類。A赤の濃い色。エビカズラの実の熟した色に似るからいう。B織色の名。経(タテ)は赤、緯(ヌキ)は薄紫。C襲(カサネ)の色目。表は蘇芳(スオウ)、裏は縹(ハナダ)。(桃華蘂葉)』とある。
・えび:葡萄:山梨・岐阜。
・えびこ:山葡萄:愛媛。
・えびそ:山葡萄:三重。 |
・いびちゃいろ |
蝦茶色 |
− |
・いびぬぎ |
指貫 |
・いびぬき:指輪・指貫:神奈川。 ・いびぬき:指貫:静岡。
・いびぬき:手袋:熊本。
・しごとゆびわ:宮城。 |
◎いびのこ |
混血児 |
筑波郡。『夷・戎(えびす)の子』の意味。 |
◎いびのこ |
@エビヅル、Aヤマブドウ |
− |
◆いびはめ |
指輪 |
『指嵌め』。
・いびはめ:指輪・指貫:神奈川。
・いびはめ:指輪:静岡。 |
◎いびまご |
エビの卵を乾燥させ加工したものでフリカケとして利用する |
『海老真子』の意味。 |
・いびや |
指輪 |
・いびがね:中国・九州。 |
◎いびら |
@ゆでた麺の水を切る平たい笊、A川魚漁の網の一種 |
『箙(えびら)』(矢を入れて携帯する容器。武具の一種で、衛府の随身(ズイジン)や武士が腰につけて使用。逆頬(サカツラ)箙・葛(ツヅラ)箙・柳箙・竹箙などがある。)の転。 |
◎いびりもの |
野菜炒め |
− |
▲△▽いびる |
【動】@△火にあぶって焼く。炒める。Aしいたげ苦しめる。△いじめて困らせる。さいなむ。 |
古い標準語。漢字は当てられていない。『集覧:猿』。
@標準語では『焼く』意味ではあまり使われなくなった。
・いびる:岩手・神奈川。
・いびる:茹でる:静岡。
A今では『いびり出す』程度しか使われない。
語源辞典では、『燻る』を他動詞的に用いた語とある。『揺る(いぶる、ゆぶる)』にも通ずる言葉。
以下の全国の方言を見ると茹でる・もてあそぶ・ゆだねるを除くと『指』の動詞形を思わせる。『指』を使って指図したりいじったりすることを考えると『いびる』とは『指る』が相応しいのではないかと考えたりする。さらに『弄る(いじる)』ことの意味は『指先でなでたりひねったりする』とあり、『いびる』も『いじる』も『指る』(ゆびる)が語源ではないかと考えたりする。
・いびる:岩手・群馬・東京多摩・山梨・静岡。
・いびる:いじる・さわる:長野・山梨。
・いびる:からかう:山口・高知・大分。
・いびる:もてあそぶ:群馬・長野・島根・大分・宮崎。
・いびる:ゆだねる:岐阜。
・いびる:修理する:山梨。
・いびねる:ひねくる:宮城。
・いびねる:しつこくする:岩手。 |
▲いびる |
【動】煙る、くすぶる |
『燻る』(いぶる)。『集覧:猿』。 |
・いびわ |
指輪 |
・いっがね:鹿児島。
・いびわ:東京・八丈島・山梨。 |
・いふー |
【形動】普通とちがった風習や様子。風変り。 |
『異風』。
・いふーなー:変な:沖縄。『異風なる』。 |
◎いーぶ |
【動】歩く |
本来は『歩む』意味。 |
・いぶい
●いぶくさい
・いぶくせー |
【形】煙たい |
『燻す』の擬似形容詞形。
・いぶい:栃木・東京青梅。
・いぶくさい:きなくさい・こげくさい:静岡。
・いぶっくさい:神奈川。
・えぶくさい:焦げ臭い:山形・福島。 |
・いぶがしー |
【形】訝しい |
・いぶいぶしい:長野。 |
◎いーふぐし |
家の解体 |
『家解し』の意味。=『やふぐし』。 |
・いぶぐる |
【動】怪しく思う、敬遠する |
『訝る』(いぶかる)の転。 |
・いぶぐろ
・いぷくろ |
胃袋 |
濁音化。 |
◎いぶし |
烏帽子 |
− |
・いーぶし |
言い方 |
『言い節』の意味。 |
◎いぶしおや |
烏帽子親(えぼしおや) |
烏帽子名をつける親。仮親の一つ。 |
◆いぶしご
・いぼしご |
烏帽子児(えぼしご) |
烏帽子親から烏帽子を被せられ、烏帽子名をつけられた者。元服子。元服の儀式がやや姿を変えて当時も一部に残っていた。長男だけに限られたと記憶している。13歳から15歳前後に行なわれた。 |
◎いぶしん |
用水路の清掃 |
『井普請』の意味。 |
(いぶす) |
【動】(けぶらせて苦しめるところから) いじめて困らせる。いびる。(広辞苑) |
『燻す』。
・いぶす:それとなく気がつくように言う・嫌味を言う:山梨。
・いぶす:あてこする・それとなくいじめる:静岡。 |
◎いぶすこー |
恵比寿講 |
− |
・いぶせったい
・いぶせってー
◎いぶたい
▲いぶったい
◆いぶってー
◆いぶてー |
【形】煙たい、鬱陶しい |
『集覧:北』。『燻す』から生まれた方言と考えられる。
古語に『鬱悒し(いぶせし)』(@(恋しさ、待ち遠しさなどのため)気分が晴れず、うっとうしい。Aいとわしく、きたない。むさくるしい。B恐ろしく、気味がわるい。)がある。同源と思われる。群馬では危険な、長野では大変なを『いぶせー』と言う。
『俚言』には『きぶつさし:気塞がる意。いぶせしとも云。武家にては平士の扶来米を給せらるる者をいふ。』とある。類似語で『気ぶっせい』((キブサイの訛) 気づまりなこと)がある。
『いぶせし』の語源は『語源辞典に』に、@燻すと同根か、A『いぶ』は『いぶかる・いぶかし』のイブ、『おほ(おぼ)ろか』のオボと同源、B鬱悒狭 とある。
・いぶせったい:静岡。
・いぶせったい:むさくるしい:静岡。
・いぶせってー:東京・東京多摩。
・やぶせったい:神奈川・長野・山梨・静岡。
・やぶせってー:長野・山梨・静岡。 |
◎いぶつ |
歪 |
− |
・いーふらがす
・いーふらかす
・いーふーらす |
【動】言いふらす |
『言いふらす』に対して擬似他動詞形にして意味を強めたと見られる。
・いーふらかす:長野。 |
・いーふり |
@良いと思いこむ、良いつもり、A良い人ぶること、B気取ること、C言い方 |
標準語になぜ『良い振り』をするという言葉が無いのか不思議だ。Cは標準語では『いいぶり』。
B・いーふり:神奈川。
・いーふりす:青森。 |
◎いーふりこぐ |
【動】@良いと思いこむ、A良い人ぶる、B格好を付ける、気取る |
・いふりこぎ:格好を付けること・見栄っ張り:青森。
・えふりこぎ:格好を付けること・見栄っ張り:秋田。 |
・いーふりする
・いーっぷりする |
【動】@良いと思いこむ、A良い人ぶる、B格好を付ける、気取る |
半濁音は濁音で発音されることがある。 |
(いぶる) |
【動】@ゆり動かす。ゆする。ゆさぶる。A十分に燃えず煙が出る。けぶる。くすぶる。 |
『い』と『ゆ』は茨城では音通するが、他県に限らず標準語でも同じ歴史をたどってきたことが良く解る。
@『揺る(いぶる、ゆぶる)』。現代では長野・福井に残る。栃木では、愚痴や不平を言う意味。
・いぶる:ゆり動かす:長野・福井。
A『燻る』。
・いぶる:山梨。
Bその他。
・いぶる:日が当たる:静岡。・ |
・いーふるがす |
【動】言いふらす |
『言いふらす』に対して擬似他動詞形にして意味を強めたと見られる。
=『いーふらがす』。 |
・〜いべ |
【複】(形容詞のく活用につけて)〜だろう |
形容詞のく活用に付く。本来は古語のかり活用『〜くあるべし・〜かるべし』に付く。その場合は即音便+『ぺ・へ』、撥音便+『べ』となる。
★よかんべ・よかっぺ・よかっへ→いいべ:良いだろう。 |
・いーべ
・いーべー |
【複】いいんじゃない、いいでしょう |
古くは『よがんべ・よかんべ』。標準語も良いが『いい』に変化した。
長音形の『いいべい・いいべえ』が本来の東国方言。
『新方言』によれば『「いいだろう」;東北と関東の大部分でもともとはヨカンベーまたはヨカッペと言っていた;今関東や東北/北海道の各地で若者がイイベに単純化している;終止形にベをつけるだけなので助詞と同じで使いやすい;東北北部では老人も使っているから南下しているわけ;なお中間段階にイカンベ/イカッペ,エカンベ/エカッペがあった。』とある。
このサイトのコア期間として、昭和35年から45年を設定しているが、当時は『よがっぺ・よがんべ』『いいべ・いがっぺ・いがんべ』は共存していたが、むしろ撥音形の『よがんべ・いがんべ』は高齢者言葉だったと記憶している。
・いーじぇん・いーじゃ・いーじゃん・いーじゃんか:神奈川。 ・いーべ:青森。
・いーべー:福島・東京多摩・神奈川。
★いーべな:いい・いいんじゃないの・いいでしょう。
★いーべよ:いいよ・いいんじゃない・いいでしょう。
★はやぐいげばいーべな:早く行けばいいんじゃないの。 |
◎いーべ |
【複】@歩け、行け、A歩こう、行こう、B行ったろう |
@『歩ぶ』の命令形。
A・いばい:宮城。『歩むばや』。
・いべ:宮城。『歩むべし』。
B北茨城市。 |
・いへいへ
・いへらいへら
・いへーらいへら |
【副】にやにや笑う様、へらへら、、おかしくもない事にしまりなく笑うさま、えへらえへら |
− |
・いーべが |
【複】いいだろうか |
・いーべが:宮城。 |
◎いべす |
恵比寿 |
− |
◎いべすこ |
恵比寿講 |
− |
◎いべづ
▲いべつ |
いびつ |
当時の高齢者言葉。『集覧:北』。 |
◎いべづる |
エビヅル |
鹿島郡。 |
◎いべつる |
ヤマブドウ |
鹿島郡。 |
◆いへーもぢ |
家督を継ぐ人、長男 |
『位牌持ち』の意味。
・いへーじょ:出身地:神奈川。広辞苑には『いはいじょ【位牌所】:位牌を安置する所。』とある。
・いへもづ:宮城。 |
・いーべや
・いーべよ |
【複】いいだろう |
・いーべや:宮城。 |
▲いべやあいる
◎いべやいる
◎いべーる |
【動】いななく |
『集覧:猿』。古い標準語では『嘶ふ』(いばう)・『嘶ゆ』(いばゆ)、『嘶える』(いばえる)とも言う。『い』とは馬の鳴き声だとされる。『いなく』とも言う。
『嘶ふ』(いばう)は、現代語では『威を張る』にも通じ、『吠える』にも通じ、『吠える』の古形は『吠ゆ』(ほゆ)である。そのため『いばゆ』とは『い吠ゆ』の意味の可能性もある。 |
◎いへらわれー |
薄ら笑い、せせらわらい |
北茨城市。 |
◎いーぼ |
相棒 |
− |
(いぼう) |
【動】灸のあとがただれる。 |
『いぼる』とも言う。近世語。
・いぼう:傷が化膿する:長野。
・いぼう:傷がはれる:富山。 |
◎いぼがいる
◎いぼがいるめ ●いぼがえる |
ガマガエル(ヒキガエル) |
『疣蛙』。 |
◎いぼがいろ |
ツチガエル |
『疣蛙』。 |
▲●▽いぼかき
●いぼかきむし
◎いぼかっきり
▲いぼかり ●いぼきり
●いぼきりむし
◎いぼくいむし
◎いぼとり
◎いぼむし |
カマキリ |
『蟷螂』。
標準語の別名は『トウロウ、イボムシ、イボムシリ、イボジリ、イボウジリ、イボツリムシ』と辞書にある。『いぼかき』:『集覧:無記載』。『いぼかり』:『集覧:行・多』。
『釈名』には、『いぼじり:人のいぼをしりて、食うものなり。順和名にはいぼむしりと訓ず』とある。
左記の方言は、順に『疣掻き』『疣掻き虫』『疣掻き切り』『疣刈り』『疣切り』『疣切り』『疣切り虫』『疣食い虫』『疣取り』『疣虫』の意味であることは間違いない。
そのため、『釈名』で言う『いぼじり』とは『疣知り』ではなく『疣擦り』ではないかということも考えられる。
・いぼいぼむし:福島。
・いぼくい:千葉・大分。
・いぼくいむし:千葉。
・いぼくらい・いぼくらいむし:神奈川。
・えぼくい:千葉。 |
◎いぼかっきり |
痩せた人 |
鹿島郡。カマキリに例えたものだろう。 |
・いぼぐ
・いぼく |
いぼ、小さく出張ったところ、結び目 |
@単に『いぼ』が訛った、いぼ→いぼっこ→いぼく、A『結う』+『縛』(ばく:縛る)が訛った、B結わく→ゆわき→ゆぼき→いぼく、等が考えられる。
原型は『結い疣』と考えられる。
『疣(いぼ)』の語源の最も有力な説に『飯粒(いいぼ・いひぼ)』(@めしつぶ。A「いぼ」の古形。)がある。
土浦では良く使った言葉である。
・いぼこ:片結び:宮城。 |
・いーほぐし |
家の解体 |
『家解し』の意味。=『やほぐし』。 |
(いーほぐす) |
【動】言葉で攻撃する。反対する。 |
『言ひ解す』。現代では、新潟・長野に腹を立てる意味で『いぼくる』が残る。 |
・いぼくたま |
結び目 |
=『ゆぼくたま』。『疣の玉』『結わく玉』の意味か。 |
◎いぼげーる
・いぼげーるめ
◎いぼげーろ
◎いぼげろ
◎いぼんげーろ |
ガマガエル(ヒキガエル)、ツチガエル |
『いぼげーる、いぼげーろ』は神奈川では『イボガエル』を言う。『疣蛙』は、学名ではなく、ヒキガエル・ツチガエルの別称でもある。 |
◎いぼしおや |
烏帽子親(えぼしおや) |
烏帽子名をつける親。仮親の一つ。 |
◎いぼしご |
烏帽子子(えぼしご) |
烏帽子親から烏帽子を被せられ、烏帽子名をつけられた者。元服子。元服の儀式がやや姿を変えて当時も一部に残っていた。長男だけに限られたと記憶している。13歳から15歳前後に行なわれた。江戸時代には『えぼしこ』と言った。
静岡では私生児を『いぼっこ』と言う。 |
●いぼたがえる |
ガマガエル(ヒキガエル) |
・いぼたがえる:群馬。 |
(いぼつり) |
ひとから非難されいじける様 |
長野。 |
(いぼきる・いぼつる) |
【動】怒る |
長野。
・えぼつる:機嫌を損ねる:長野。 |
◎いぼなー |
田植えの間隔を測る縄 |
『疣縄』の意味。 |
◎いぼーない |
田の二度目の耕起 |
『えぼうない:(茨城県で) 田の二度目の耕耘(コウウン)。下起(シモオコシ)。』がさらに訛ったもの。 |
◎いぼむすび |
結び目を疣のように突き出したもの |
『疣結い』。『蠅頭』とも言う。垣根等の結びに使う。
・えぼむすび:千葉。 |
◎いぼる ▲いぼれる |
【動】お灸の痕がただれる |
『集覧:久・新』。
近世語に『いぼる』(灸(キユウ)のあとがただれる。いぼう。浮世風呂三「おめへ灸がいぼつたの」)がある。
茨城では蒸れることを『いもれる』、(天候が)蒸すことを『おもれる』と言う。
『重る(おもる)』(病気が重くなる。)との関係も無視できない。
・いぼる:灸が化膿する:静岡。
・えぼつる:機嫌を損ねる:長野。
・えぼる:神奈川。 |
(いぼれ) |
小溝 |
静岡。 |
・いほん |
絵本 |
− |
◎いま |
用水路 |
『江間』(えま)の転。 |
◎いーま |
合間 |
− |
・いまいっこ |
【副】もうひとつ、いまいち |
死語となった古い言葉の残存と思われる。『いま、一向』。
★いまいっこくれや:もう一つ頂戴。
★いまいっこだな:いまいちだね。 |
・いまいま |
【副】今の今、たった今、今すぐ |
『今今』。
★いまいまんなってなんでそったごどゆってんだ:今になってどうしてそんなこと言ってるの?。 |
・いまうぢ
・いまうぢに |
【複】今のうちに、間もなく、そのうちに |
・いまぢに:青森。
・いまづに:宮城。 |
・いまがいま |
【副】今の今、たった今、今すぐ |
やや古い標準語と言える。
★長塚節『芋掘り』の一節:兼が一人で歸るならおら今が今でもゝどすよ:兼が一人で帰るなら俺はたった今でも(兼を)戻すよ。 |
・いまかだ
▲いまがた |
@今しがた、ほんの少し前、A今ごろ |
『集覧:多』。『今方』(いまがた)ならやや古い標準語。
・いまもと:静岡。 |
・いまがじぶん |
今ごろ、こんな時間 |
『今の時分』の意味。『が』は濁音・鼻濁音。鼻濁音なら古い標準語と言っても良い。
・いまかじぶん:山梨。 |
・いーまがす |
【動】言いふせる。 |
『言い負かす』。 |
・いまがに
・いまかに |
【副】そのうち |
− |
・いまがーやぎ |
今川焼き |
・いまがーやぎ:千葉。 |
◎いまがり |
【副】すこし前 |
− |
・いーまげる |
【動】事実や道理をゆがめて言う |
『言い曲げる』。 |
■いーまご |
エビの卵 |
音の脱落。=『いびまご』。 |
・いまころ
・いまごん
・いまごん
・いまこん
・いまっこん |
今ごろ |
『いまころ』は多くの茨城人が方言と思っていない表現。しかし古い時代の清音発音が残ったの可能性もある。
★いまころになってそったごどゆったっておせーよ:今ごろになってそんなこと言ったって遅いよ。
★いまごんなってはーおせーよ:今ごろになっては、もう遅いよ。
★こごについだなきのーのいまっこんだ:ここに着いたのは昨日の今ごろだ。 |
◎いまさか |
大福餅 |
鹿島郡。
広辞苑に『今坂餅:餡(アン)を包んだ小判形腰高形の餅。多く紅・白に分ち、白餅には赤小豆漉(コシ)餡、紅餅には白練
餡を包む。江戸時代、七五三(シチゴサン)の祝いの贈答用とした。』とある。 |
◎いまさごろ |
【副】今ごろ |
『今し頃』。 |
・いまさっぎ
・いまさっき |
【副】すこし前 |
− |
◎いまし
・いまーし |
たった今。今となって。今頃。 |
『今し』。
・いまーし:栃木。
・いましゃー:今では:山梨。『今しは』。 |
◎いまし ◆いましむぎ
・いむしむぎ |
一度煮て水にさらして発芽を促進させた麦 |
『咲まし麦(えましむぎ)』。冬蒔きの麦は温度が低いので発芽しにくいことから行なわれる農法のひとつの呼称。 |
・いましがだ
▲いましがた |
【副】たった今 |
『集覧:多』。『今し方』。方言と認識されやすい言葉と見られる。
・いましがた:東京・静岡。 |
◎いましこし
・いましこーし |
【副】もう少し |
− |
◎いましごめ |
残った種籾を煎ったもの |
水海道市。 |
・いましごろ |
【副】今ごろ |
『今し頃』。
・いますごろ:宮城。 |
◎いましざる |
咲まし麦(えましむぎ)を入れる笊 |
− |
◆いましとづ |
【副】もうひとつ、いまいち |
− |
▲いましに
◎いまーしに |
【副】そのうちに、今のうちに、今に |
『集覧:真』。『今しに』。
・いまずに:宮城。 |
・いまじぶん |
【副】今時分、今ごろ |
標準語。 ・いまじぶん:群馬。 |
◆いましとづ |
【副】もうひとつ、いまいち |
− |
・いましむ |
【動】戒める |
『戒む』。 |
(いましゃー) |
【複】今では |
山梨。 |
◎います |
水・湯などに浸してふやかす |
『咲ます(えます)』。 |
◎いまーす |
川の屈曲 |
高萩市。 |
・いますぐま |
【形動】もうすぐ、あっというま |
『今直ぐ間』の意味。 |
・いますこし |
【副】もう少し |
若い人は使わない言葉。
・いますこす:宮城。
・えもすこし:長野。 |
・いますんま |
【形動】もうすぐ、あっというま |
この『すんま』は『寸』『間』を連想させる。 |
・いまただいま
・いまたでーま |
【複】たった今、只今 |
繰り返し言葉。江戸時代からあるもの。
・いまたんでやま:静岡。明治の静岡には東北弁に見紛う言葉があった。 |
◎いーまぢ |
過ち |
・いーまち:怪我:福島。 |
◆いまちっと
◆いまちんと |
【副】いま少し |
『いまちっと』は、やや古い標準語。=『いまっと』『まっと』。
・いまちっと:山梨。
・いもちっと:神奈川。 |
・いまっかだ |
@今しがた、ほんの少し前、A今ごろ |
@『今方』(いまがた)。 |
◎いまっから |
【副】今から |
=『いまがら』。典型的促音表現。
★『土』:そんじゃ俺(お)ら今っからでも曳ける丈(だけ)曳くべ:それじゃあ、私は今からでも(野菜を)抜けるだけ抜こう。 |
◆▲いまっころ
・いまっこん |
【副】今ごろ |
『集覧:久』。元『今つ頃』か。 |
・いまっさら |
【副】今更 |
広辞苑には『今更:@今になって、また。A(もうどうしようもない)今となって。(もはや手遅れの)この期(ゴ)に及んで。B今はじめて。』とある。
『今になって更に』の意味であることは間違いないことから、『今の更に』の意味の『今つ更』の意味とも思われる。勿論、江戸言葉に見られる強調方言とも考えられる。
・いまっさら:山梨。 |
(いまっしゃった) |
【複】いました |
私の甥が幼い頃に覚えた昔話を語るときに使った言葉。カセットに録音した記録もある。恐らく『いまっした』(『し』は有母音)と義姉が発音していたのではないかと思っている。今の時代にこんなことは無いだろうが、私の母と同じ新治村の出身だったので、この茨城弁集の収集には大変大きな貢献をしていただいた。 |
・いまっど ◆■▲いまっと |
【副】もっと |
『集覧:真』。
『まっと』(もっと)。『まだ』を『未だ(いまだ)』と言うのと同じ。死語になった標準語。
・いまっと:岩手・宮城・福島・栃木・群馬山梨・静岡。
★『土』:蔵(しま)つて置いて、俺(お)らいまっと大(えか)く成つてから着べかな:しまって置いて、俺はもっと大きくなってから着ようかな。
★いまっとたべろな:もっと食べなさい。 |
・いまーな |
芋穴 |
当時は南斜面の山林などに深さ2m内外の穴を掘りそこにモを貯蔵した。『も』を曖昧に発音するので『いまあな』に聞こえる。=『いむあな』 |
・いまに
◎いまーに |
【副】そのうち、間もなく |
『今に』。
・いまに:さよなら:山形・福島。
・えんまに:青森。 |
◆いまのぢ
・いまのーぢ |
【副】今のうち、そのうち |
− |
・いまのま
・いまのまー |
【形動】今のうち、そのうち |
★こいづあ、いまのまにそーりだいじんになっかもしんねーど:こいつはそのうち総理大臣になるかも知れないぞ。 |
・いまのよ |
今の時代 |
『今の世』。 |
・いまぱいー ▲いまぱえー |
【副】あとで |
『集覧:久』。 |
・いまひごろ |
普段 |
− |
◆いまひとづ |
【副】もうひとつ、いまいち |
− |
・いまぶん |
今頃 |
『今時分』が略されたと思われるが定かではない。
★『土』:ええ、今分(いまぶん)ぢゃ、さうだに惡(わ)りいっちこともねえが。 |
(いまもと) |
【副】今、今方 |
静岡。 |
・いまよー |
【形動】今風、現代風 |
『今様』。 |
・いまーり
・いーまーり |
あたり、家の回り |
『居回り』『家回り』。 ・いまーり:神奈川。 |
・いまわ |
死際、臨終 |
『今際・今わ』。多く『いまわの際』と重複して使われた。 |
(いまわり) |
付近 |
東京。『居周り』の意味。 |
・いまーらい |
イモ洗い |
− |
・いまーらいぼー |
イモ洗い専用の棒 |
サトイモを洗う時に用いる。
県下ではこのほか『いもこしり・いもこすり』がある。 |
◎いまんて
・いまんてー |
今の人、若い人 |
複数形は『いまんてら・いまんてーら』。 |
▲いみ |
弓 |
『集覧:無記載』。『集覧』では『えみ』。
・いみ:青森・静岡。 |
・いーみ |
@家見、A新築祝い |
A『家見舞』の略。
・いえみ:神奈川。
・えーみ:神奈川・山梨・静岡。 |
◎いみあげ |
忌明け |
− |
・いーみざぎ |
歩崎(あゆみざき) |
旧新治郡にある地名。 |
(いみし) |
【形】厳しい、癇の強い |
鹿児島。 |
(いみそーれー) |
【複】お入り下さい |
沖縄。『入りぞあらむ』『入りそあらむ』意味か。 |
◆いーみぢ |
かなりの距離 |
《良い道だどもったらとんでもねー、遠くてがだぼごみぢだ》。 |
(いみっ) |
【動】増える |
鹿児島。 |
◎いーみみきげ |
耳塞ぎの行事 |
広辞苑には『耳塞ぎ:同齢者が死んだ際、災いが身に及ぶことを怖れ、鍋の蓋や草鞋・餅・団子などで耳を塞ぐまじない。耳塞ぎ餅・耳団子は、その餅や団子。』とある。
県下では地域によって微妙に異なる。正月14日の儀式として行うところや、訃報があったとき行うところもある。土浦では、訃報があったとき、死者が男のときは左耳、女の時は右耳に当てる。『いしけーみみきぐな。いーみみきげ。(良くない話は聞くな。良い話を聞け)』などと言う。茨城には動詞に『みみきぐ』(@耳にする、評判を耳にする、A耳が聞こえる)がある。同齢が死んだとき藁草履の鼻緒を切って十字路に捨てて来るところもある。餅ではなく団子だったりおにぎりのところもある。
当時はすでに形骸化していて、1月14日だったと思うがまねごとで遊んだ記憶がある。
県下ではこの他『いーごどきかせ・いーごどきかせのもぢ』等の呼称がある。 |
・いみやー |
【動】嫌い合う |
『忌み合う』。 |
・いみやぎ |
忌明け |
− |
・いみる |
【動】嫌がる |
『忌む』。 |
◎いむ |
【動】栗等が熟してはじける |
『笑む、咲む』(えむ)の転、
★『土』:おやっ、此(こ)の栗(くり)は笑(ゑ)んでんだなはあ:おやっ、この栗は熟しているんだなもう。 |
・いむ |
【動】嫌う |
『忌む、斎む』。死語に近い標準語。 |
・いむあーらい
・いもあらい |
MRI |
これは昔の茨城弁ではないが、『MRI』を『いむあーるあい』と発音し『むあ』の音便が『ま』、『るあ』が音便が『ら』となれば『いむあらい』となって標準人には間違いなく『いも洗い』と聞こえるだろう。 |
◎いむし |
@麦を煎ったもの、A種米を蒸して干したもの |
『飯蒸し』『煎り蒸し』『咲まし』の意味か。
@新治郡。
A鹿島郡。
・いむし:米を煎って味付けしたもの:千葉。 |
・いむす |
【動】麦を一度煮て水にさらして発芽を促進させる |
『咲ます(えます)』。 |
・いめ
・いめー |
【副】居ないだろう |
『居るまい』の転訛。 |
・いめ |
夢 |
『夢』の古形。万葉集にもある言葉。『寝(い)の目』が語源とされる。古くは『目』は見ることを意味した。
・いみ:沖縄。茨城でもこのように聞こえることがある。
・いめ:秋田・佐渡・石川・岐阜・広島・山口沖縄。
★いんや、りんべはかーちゃんのいめみっちゃって:いやあ、昨晩は母さんの夢を見てしまって。 |
(いめ) |
内気 |
鹿児島。 |
◎いーめー |
【形動】曖昧 |
− |
・いーめー |
【形動】有名 |
− |
◎いめいまし
・いめーまし ◆いめーましー |
【形】いまいましい |
『いめえましい』は『俚言』にも掲載される江戸言葉。
『膝栗毛八』に『いめへましい。いっそのくされ、是からどこぞ遊びにつれてあよびなせへ。』とある。
・いみゃーましー:静岡。
・いめーましー:東京・山梨。
・めーましー:東京多摩・東京青梅。
★『土』:無くっちゃ遣らんねえからって喧嘩吹(ふ)っ掛けるっちんだから嚊(かかあ)も忌々敷(えめえがし)がって居たが先が不法なんだから駄目でさね:ない物は遣れないって喧嘩を吹きかけるっていうんだから、女房もいまいましがっていたが、先方が道理に合わないことをしているんだから駄目ですね。
★長塚節『芋掘り』の一節:それぢやおれだつていめえましかんべえ:それでは俺だっていまいましいだろう |
・いめいめ |
【副】@必ず必ず。きっときっと。決して決して。A少しも。更々。 |
『ゆめゆめ』。ゆめ(努)を重ねた語。禁止・否定などの語を伴う。『い』と『ゆ』は音通する。
古語では『つとめて。精出して。』の意味でも使われた。 |
(いめし) |
夕食 |
鹿児島。『い』と『ゆ』は音通する。
『夕飯』が訛ったと考えられる。 |
(いめじん) |
人見知り、恥ずかしがりや |
− |
・いめにも |
【副】夢にも |
− |
・いめほどにも |
【副】夢にも |
− |
・いめーましー |
【形】いまいましい |
・いみゃーましー:静岡。
・うまいましー:静岡。 |
◆いも |
サツマイモ |
芋といえばサツマイモのこと。ジャガイモを蒸かして塩を載せて初めて食べたのは40年過ぎだったと記憶している。サツマイモと異なるあっさり感が新鮮だった。県西部ではサトイモを指す。 |
(いも) |
【副】もう、あと |
神奈川。 |
(イモで知る方言文化) |
− |
方言地図では『イモ』が何を指すかを全国調査している。それによれば、『イモ』の場合全国レベルでもはっきり分かれるのが興味深い。
一方、『イモ』とは古来サトイモ又はヤマイモを指したという。
サトイモはもともと南方系の植物で稲より古くから栽培されていたという。陰嚢がイモに例えられるのは間違いなくサトイモの姿によるものと思われる。茨城県は東西に二分され、東はサツマイモを指し、西はサトイモを指す結果となっている。土浦ではサツマイモを言う。サトイモを『イモ』と言うのは、関東以西に分布し、栃木・群馬南部・埼玉・東京・神奈川・静岡・岐阜南部・九州の沿岸部を除く地域である。
ジャガイモを指すのは福島以北の地域と、新潟・富山・群馬北部・山梨・長野・岐阜北部・近畿山陰の限られた地域寒冷地に限定される。ジャガイモはアンデス原産で、1530年スペイン人がヨーロッパに持ち帰り、日本に持ち込まれたのは秀吉の時代(慶長年間/1596〜1614年)というから、当時としてはスピード伝来だったろう。
サツマイモは少し遅れて中国から沖縄を継由して1705年に鹿児島に伝わったといわれ、関東に現れたのはそれから30年後とされる。サツマイモを『イモ』と言うのはその名の通りまず九州だろうと思ってしまうが、九州では大半がサトイモを指し、サツマイモは沿岸部に分布する。関東でも沿岸部ではサツマイモを指す。全国的には多く南方または沿岸部海岸部に分布する。千葉県では全県でサツマイモを指す。
これらを整理すると、日本の『イモ』とはもともとは、ヤマイモ・サトイモを指し、ヤマイモはそのまま『山の芋』、サトイモは『里のイモ』と言ったと考えられ、そのことから、サトイモは早くから人工的に栽培されていたのではないかと考えられ、イモの原点はヤマイモだったのかもしれない。
ジャガイモ・サツマイモの伝来にともなって、対象が変化していったと考えられる。栽培気候や地質等によって主に生産されたイモがその土地の代表語になったのではないかと推測され、ことさらに興味深いものではない。
ちなみに、ヤマイモを『イモ』と言う地域は、秋田県で比較的多く使われるものの全国でもわずかな地域にしか残っていない。
『語源』では、『いも:@ウモの転。A子を持つからイモ(妹)となぞらえた。Bオモ(母)の転呼。Cウヅムからでたウムの転。土に埋めて蓄えるから。また、ウヅマリミ(埋実)の義。Dウマシの転。Eイモのイとはイキ(息)、イノチ(生)、イカル(怒)などのイと共通で内在する力を言う。モはモモ(桃・股)、モミ(籾)のように、丸みのある実、丸い実を言う。イモはモが本体で、内容が充実した丸いものを言う意味になる。』とある。
これらから、『イモ』とは、『生物・威物』とも言え、『良い物』とも言える。 |
・いもあな |
芋を冬季に貯蔵するために地面に彫った穴 |
地中は年間を通じて安定した温度環境を確保できる。そのため当時は芋穴を掘って天然の温蔵庫として使った。我が家の芋穴は南斜面にある屋敷林の中にあった。近くに『じーとば』が沢山花咲いていた。穴の直径は凡そ1メートル。底部は芋の貯蔵量を増やすためにフラスコ型をしていて広がっていた。深さは2〜3メートル。
我が家では豚を飼育していたので、その餌として『しろいも』を栽培し貯蔵していた。サイロまで作った。『しろいも』はとても食用になるものではなかったが、乾し芋にするといい味になる。その後、豚の飼料は調合された既製品ができてあえてイモを栽培する必要が無くなった。今でも、茨城県内の著名な観光地で冬季に乾し芋をみかけることがある。正調茨城弁では、『かんそいも』だがんなや。
・いもぐら:神奈川。神奈川では横穴の穴倉が多い。 |
◎いもあらいぼー |
主にサトイモを洗う棒 |
手で持つ部分と洗う部分の小枝を20cm程度残して作った棒。 |
◎いもかす |
あばた |
水戸市。『疱瘡(いもがさ)』は天然痘の古名でそのあとのあばたをも指す。『もがさ・いも』とも言う。
『瘡』は『滓』に音通し、茨城では瘡蓋を『かすぷた』、そばかす・あばたを『しぶかし・しぶかす』などと言う。 |
◎いもぐし
◎いもざし |
茹でたサトイモを串に刺して味噌を塗ったもの。 |
土浦の上大津地区では、当時すでに囲炉裏はほとんど無くなっていた。明治末期の『おーにし(かぜ)』で民家の大半が焼かれたからである。
標準語では『串刺し:芋を串で刺し貫くように、人を槍で突き刺すこと。くしざし。田楽(デンガク)ざし。』(広辞苑)とある。『いもざし』の料理は、かつてはどこにでもあったのではないかと思わせる言葉。 |
◎いもこしり
◎いもこすり |
主にサトイモを洗う棒 |
− |
■いもさんや |
10月23日の行事 |
土浦市。 |
▲▽いもし |
漬物石 |
『集覧:新・北』。『重し』が訛ったか『石重し』の意味か。 |
◎いもし |
種籾を蒸して乾燥してから石臼で突いて煎って砂糖と醤油で味付けしたもの |
|
◎いもじ |
女の腰巻 |
『湯文字』。
・いもじ:神奈川・静岡。 |
◎いもしいり |
− |
水郷地方。解説が無いが『いもし』と似たものと思われる。 |
◆いもしごめ |
苗代に蒔き残った種籾を蒸して乾燥してから石臼で突いて殻をとった米 |
≒『いましごめ』。
『咲まし麦』に習って『咲まし米』の意味で使ったものと思われる。『いましむぎ、いむしむぎ』から推測すれば『いましごめ、いむしむぎ』になるはずだがそうならないのは、かなり限られた地域で使用された訛と推測される。
良く考えると苗代で発芽できなかった種籾まで集めて石臼で突くとは大変な労力であり、当時の農家がいかに米を大事にしていたかが解る。戦後20年の日本は高度成長時代を迎えていたが、上大津食料事情は驚くほど良くなかったので、ご飯茶碗に一粒の米粒すら残すことは許されなかった。残したものなら親父の拳骨が待っていた。だから当時の子供は多くは食べ過ぎぎみだった。お客が来た時などに母親がたまたま米の量を間違えた時の満腹にならないひもじさを身体で覚えていた。兄弟は少なくとも3人で多ければ7〜8人の時代、10人兄弟もいたから、食べ物にまつわる幼い頃の思い出はどこの家でも、酒の肴やお茶の話題になる。 |
・いもしとづ
・いもしとつ |
【副】もうひとつ、いまいち |
・いも〜:いま〜:神奈川。
★いもいっこでぁーいもしとづだっぺ:芋一個では今ひとつだなあ。 |
・いーもーす
・いーもーしやす |
【複】申し上げます |
へりくだって自分の名前を言う場合にも使われた。 |
◎いもただぎ |
藁鉄砲 |
真壁郡。十五夜に使われる。 |
◎いーもぢ |
米で作った餅 |
『飯餅』の意味。 |
◎いもつきみ |
芋名月、中秋の名月 |
− |
(いもっこじ) |
込み合うこと |
神奈川。 |
◎いもど
・いもーど |
妹 |
『いもと』なら古い標準語。 |
・いもっば ◆いもっぱ |
サトイモの葉 |
− |
・いもひとづ ▲いもひとつ |
【副】もうひとつ、いまいち |
『集覧:北』。 |
◆いーもみ |
実の入っていない籾 |
古くは『えあもみ』。
《いーもみだっつがら買って来たらながみがへーってねー》。 |
◎いもむすび |
結びの一つ、最も簡単なもの。後で解くのが難しい。 |
『芋結び』の意味。辞書には無いが、農業や造園などで使われる。対語は『綾結び』。 |
・いもめいげつ
・いもめーげづ |
芋名月 |
中秋の名月の別名。辞書には、『旧暦八月十五夜の月。芋を月に供えるからいう。』とある。
これに対して『豆名月』は辞書に『旧暦九月十三夜の月。枝豆を供えるからいう。栗名月。のちの月。十三夜。』とある。 |
◎いももぢ |
イモを混ぜてついた餅 |
− |
◎いもらす
◎いもらせる |
【動】蒸らす |
− |
◎いもれる |
【動】蒸れる |
|
・いーもん |
善人、良い人、善玉 |
・いーもん:山梨。 |
・いもんかげ |
衣文掛け(えもんかけ) |
『い』と『え』の混同、今では殆どの人がハンガーと言う。
《よほどいい物をかけんのかなあ?》。
・いもんかけ:埼玉。 |
・いーもんずぎ |
@良いものだけを好む人、Aえこひいき、えこひいきな人 |
A・いーもんずき:神奈川。 |
・いや
・いやあ
・いーや
・いーやー |
@【感】やあ、いやあ、A【名】否・嫌・厭 |
『いや』は辞書には『【感】@驚いた時、感嘆した時などに発する声。や。狂、雷「― ―、ことのほか痛いものぢやよ」。「―はや」A呼びかけや言いはじめに発する声。やあ。狂、宗論「―のうのう」Bはやす時の掛け声。やあやあ。「―、会津磐梯山は」』とある。
標準語では、多く近世で使われた言葉で、今では『やあ』が多く使われる。
一方、名詞・感嘆詞としての『いや』があり、辞書には『好まないこと。欲しないこと。きらうこと。承諾しないこと。日葡「イヤナコトジャ」。「仕事が―になる」@好ましくないさま。不快なさま。また近世、接頭語として「―気質(カタギ)」「―風(フウ)」などとも用いた。一代男七「御存じの―男にあひ申候」。「―な臭い」→いやに。【感】否定の気持を表す語。いいえ。いえ。いな。著聞一六「―田におきては、はやくとられぬ」。「―、そうでもない」』とある。
@★いーやまいったまいった:いやあ、参った。
A・いーや:鹿児島。 |
・いーや |
【感】良いねえ |
・いーやいーや:いい加減な様:神奈川。
★そりゃあいーや:それは良いねえ。 |
・いーやー |
【動】言い合う |
− |
(いやー) |
家 |
沖縄。 |
◎いやい
◎いやいひ |
お灸 |
古い標準語の『焼火』(やいひ:お灸)の転。 |
◎いやいひばな |
ヘクソカズラ |
稲敷郡。広辞苑に『アカネ科の蔓性多年草。各地の山野・路傍などに普通。葉は楕円形。全体に悪臭がある。夏、筒形で、外面白色、内面紫色の小花をつけ、果実は球形、熟すと黄褐色となる。ヤイトバナ。サオトメバナ。古名、くそかずら。漢名、牛皮凍。』とある。 |
・いやいや |
【感】@やれやれ、いやはや、Aいえいえ |
@『弥弥(いやいや)』(いよいよ。ますます)の流れと思われる。 ・いやいや:宮城。
★こんで、いやいやだ:これで、やれやれだ。
Aは標準語だが、『いえいえ』より否定の意味合いが強く感じられるのか、ビジネス世界ではあまり使われなくなってきている。 |
・いーやいーや |
【感】良いねえ |
− |
・いやいんでいぐ |
【複】歩いて行く |
− |
・いやがらし |
嫌がらせ |
− |
・いやがらす |
【動】意地悪する、嫌にさせる |
− |
(いやーぐまい) |
ひきこもり |
沖縄。『家篭り』の意味か。 |
▲いやし |
農家で藁屑を庭または野原で燃やすこと |
『焼き火』の意味。『集覧:北・猿』。 |
・いやしー |
【形】食い意地が張っている様 |
標準語の『卑しい(いやしい)』とは少し違って限定された意味で使われる。
・いやし:神奈川。
・いやしー:宮城・福島・神奈川。
・いやしこ:食い意地が張っている人:宮城・福島。 |
(いやじー) |
【形】嫌な |
山梨。 |
(いやじがる) |
【動】嫌がる |
山梨。 |
・いーやしき
・いーやしぎ |
家屋敷 |
− |
・いやしこい
・いやしっこい
・いやしけー
・いやしっけー |
【形】卑しい |
・いやしっぺー:貧しい:神奈川。 |
・いやした |
【複】居ました |
江戸時代までさかのぼる言葉。丁寧語。
広辞苑には『〜やす:@動詞の連用形について、軽い敬意を表す。お…になる。A動詞の連用形について、丁寧の意を表す。…ます。B「で」の下について、丁寧の意を表す。…であります。やんす。』とあり、このうちAの意味。 |
・いやしたが
・いやしたがー |
【複】@居ましたか、A居ますかるの、Bごめんください |
『いやしたか』。丁寧語。日常語では『いだがー』。
・えーすたが:居ますか・ごめんください:宮城。茨城方言の『いやしたが』を介して訛ったと考えられる。
いやしたが→えやしたが→えやすたが→えーすたが |
◆■いやしっぽ
◆いやしんぼ ▲いやしんぼー |
食いしん坊 |
『集覧:無記載』。=『やしっぽ・やしぼ・やしんぼ』。
・いやしこ:宮城・福島。
・いやしごろ:鹿児島。
・いやしんぼ:神奈川。
・いやしんぼー:神奈川。
・いやすこ:宮城。 |
■いやす |
【動】あやす |
単なる訛。長野ではタバコをふかす・くゆらすことを言う。和歌山では返すを言う。 |
・いやた
・いやたい
・いやたよ |
【複】嫌だ |
祖母が良くつかった言葉だがこれは方言では無い。『嫌たり』『嫌にてあり』の意味で、むしろ現代標準語の方が特殊形と言える。
例えば現代語の『です』は『「で候(ソウ)」の約とか、「でござります」の転とかいう』と曖昧に扱われているが、『〜にて候』と断定したい。
祖母はときどき『〜です』を『〜てす』と言った。
・いやたくなった:嫌になった:静岡。
・いやったいやれ:嫌なことよ:静岡。 |
・いーやだす |
【動】伝言する、言い伝える |
『言い渡す』(決定や命令を(下の者に)告げ知らせる。宣告する。)。
・やだする:苦情を言う:長野。幼児語。
・やだこねる:苦情を言う:長野。幼児語。 |
▲いやだんべー |
【複】嫌だろう |
『集覧:稲』。関東方言。 |
・いやっだいよー
・いやったいよー |
【複】嫌だよ |
祖母が良く使った言葉。
・いやったいやれ:嫌なことよ:静岡。
|
・いやったらしー |
【形】いやらしい |
俗語。『いやにてあるらし』。 ・いやったらしー:東京多摩。 |
・いやっちほど
・いーやっちほど |
【複】嫌という程、沢山 |
『えいやっと』の流れなのか『嫌という程』なのか不明。 |
・いやっちゃ |
【複】叱られた、言われた |
東北にも同様の方言がある。『言われた』という意味。 |
・いーやっと |
【副】@どっさり。たくさん。うんと。A力を尽して。辛うじて。やっとのことで。 |
『えいやっと』。 |
・いやづら
・いゃづら |
【代】やつ等 |
− |
・いーやでる
・いやでる |
【動】言い当てる |
・やでる:青森・岩手。 |
・いやどーも
・いーやどーも
・いーんやどーも |
【慣】まいったねえ、たいへんだねえ、ありがとう、そうかい |
相手の言葉に同意したり、感嘆したりした場合の受け答えのほか、挨拶言葉としても使われる。標準語の口語でも挨拶言葉として使う人がいるが、茨城ではオールマイティに使う人がいる。
中には『やどん・やどーん』等に訛ることもある。
★こんではいぐらいいわげしたってちぐにきまってっぺよ−いやどうも:これではいくら言い訳したって嘘は明らかですよ−いや参った。
★どぶさつっぺっちった−いやどーも:どぶにはまっちゃった−いやあ、大変だったねえ。
★これおめにだすがら−いやどーも:これお前にあげるよ−どうも有難う。
★どーもどーも/いやどーも:(どうも)こんにちは/(こちらこそかえって)こんにちは。
★『土』:俺(お)れか、いやどうも捩(ねぢ)れてんにもなんにも。 |
・いやなあに
・いやなに |
【感】 |
★どうもあんがとござんした−いやなーに:どうも有難うございました−いや大した事無いですよ(どういたしまして)。 |
(いやにのー) |
【複】嫌ですよ |
静岡。 |
・いやね
・いやねー |
【複】言わない |
− |
▲いやーのる |
【動】 時日が予定より延び遅れること |
『集覧:多』。『あい伸る』意味。名古屋弁に負けない連母音変形。 |
◎いやーば |
藍の葉 |
稲敷郡。 |
・いやはー
・いーやはー
・いやはや
・いーやはや
・いーやはーや |
【感】全くもう、いやもう |
★いやはーめーった:いやはや参った。
★はーとっくにおわってんのがどおもったらいやはやだ:もうとっくに終わってんのかと思ったら全くまだまだだ。
★まったぐもーいやはやだ:全く散々だ。 |
◎いゃーひ |
お灸 |
古い標準語の『焼火』(やいひ:お灸) |
◎いやびあい |
歩みあい |
− |
◎いやーぶ |
【動】歩く |
・えぶ:群馬。 |
・いーやぶる |
【動】@悪口を言って相手を傷つける。A言い負かす。B秘密を漏らす。 |
『言い破る』。 |
・いやまや
・いやまーやー |
【感】全くもう、いやもう |
古い言い回し。『いやまあ』『や』の意味。 |
・いーやる |
【動】@言って遣る、A言い合う |
@は標準語の『言い遣る』。Aは『言い合う』の転。 |
・いやれる |
【動】言われる、しかられる |
単純に『言われる』が訛ったと考えられるが、『叱られる』意味が強い。
・いぎゃる:仰せられる:宮城。
・いやれる:福島。
・いわれもーす:仰る:宮城。
・いわれる:つっこまれる:神奈川。
★いやいやれちゃっていやれちゃって:いやあ、叱られて叱られて。 |
・いやわりーごど
・いーやわりーごど
・いやわりーごどわりーごど |
【慣】いやあ、どうも有り難う |
★のっぺいっぺつぐったもんだがらおめげにやっぺどもってもっできたんだわ−いやわりーごどわりーごど:のっぺい汁を沢山作ってしまったんで、お宅にあげようと思って持って来たんですが。−いやあ、どうも有難う。 |
・いやれ |
【感】呼び掛ける時、相手の注意をひく時、ふと心づいた時、困った時、他に同情する時などに発する声。 |
『やれ』が訛ったもの。 |
◎いやんでいぐ |
【複】歩いていく |
稲敷郡。 |
◎いやんばい
・いーやんばい |
【複】【形動】@出来が良いこと、丁度良い具合、良い天気、良い湯加減、良い味加減、Aいい加減(深く考えず無責任)、適当 |
『良い塩梅』の転。『塩梅』は古くは『えんばい』と読み、『いいえんばい』と発音してみると、この方言の発音は、古い発音が残ったと推測できる。
・いやんばい:埼玉。
・いーやんばい:新潟。 |
・いーやんばいだなー
・いーやんばいだねー
・いーやんばいでがんすね
・いーやんばいでやすね
・いーやんばいでやんすね |
【複】出来が良いなあ、丁度良い具合だなあ、良い天気だなあ、良い湯加減だなあ、良い味加減だなあ |
後半の語句は丁寧語として挨拶にも使われる。
|
・いやんべ
◆いーやんべ
・いーやんべー |
【複】【形動】@出来が良いこと、丁度良い具合、良い天気、良い湯加減、良い味加減、Aいい加減(深く考えず無責任)、適当 |
『良い塩梅』の転。
・いやんべ:宮城。
・いやんべー:山梨。 |
・いやんべにしろ
・いーやんべにしろ
・いーやんべんしろ |
【慣】@いい加減にしなさい、A適当に終わりなさい |
− |
◎いよ |
魚 |
『魚(いお)』の転。
・いゆ:沖縄。
・いよ:八丈島。 |
・いよー |
硫黄 |
・いよー:千葉。
・よー:長野。 |
・いーよー |
栄養 |
− |
・〜いよ
・〜いよー |
【助】〜よ |
S表現。命令・勧誘・希望表現を示す【終助】または感動・詠嘆を示す【間投助】『や』が『い』に変化して【終助】『よ』がついたもの。西日本の『やよ』に通ずる言葉。
★んだいよ:そうだよ。 |
・いよいよ |
【副】本当に、確かに、やっと |
やや古い標準語。現代では主に『決定的な事柄がもうじき起ると予想されるさま。』の意味。
・いよいよ:島根・香川・愛媛・高知。 |
・いーよーぎだねー |
【慣】いい陽気だねえ |
− |
◎いよぐし |
魚串 |
・おぐし:神奈川。 |
・いーよーなの |
【複】【名】良い物 |
『良いような物』。標準口語でも使う。 |
◎いよみ |
魚群の見張り役 |
− |
・いら |
鰓(えら) |
・いげ:静岡。 |
・いら |
@刺(とげ)、A魚の背びれの刺 |
やや古い標準語。
@・いら:鹿児島。 |
・いら
・いーら |
【複】@居るよ、A要るよ |
『居る・要る』→『いるわ』→『いーら』。
@★みーねーどおもったらこごにいら:見えないと思ったらここに居るよ |
(いーら) |
【複】良いだろう |
山梨。元『いいずら』か。 |
◆▲いら
◎いらー
◎いーら |
【副】えらく、すごく、沢山 |
近世語の『偉・豪(えら)』が訛ったもの。『集覧:久・真・北・猿・稲』。
・いら:埼玉・東京武蔵村山。
・いらける:むさぼるように食べる:秋田。 |
◎いらい |
【形】@偉い、A甚だしい、沢山、Bひどい、とんでもない |
『えらい。』古くは『いらえ・えらえ』とも発音した。
@・いらい:群馬。 |
・いらいめさらー
◆いらいめさらう |
【複】ひどい目に会う |
− |
・いらいら |
@刺(とげ)、A魚の背びれの刺 |
繰り返し言葉。 |
・いらいら |
【形動】ちくちく |
『苛苛』。
・えらえらて:ちくちくと:山形。
・えらえらする:いがらっぽい:宮城。 |
◎いらいらぐさ
□いらいらくさ |
イラクサ |
− |
(いらう) |
【動】借りる |
古語。『借ふ』。
・いらう:山梨・静岡。 |
・いらぐ |
【副】偉く、甚だしく、ひどく |
− |
◎いらげ
・いらそ
・いらそー |
【形動】偉そうな様 |
− |
(いらしゅん) |
【動】貸す |
沖縄。古語『貸す(いらす)』。 |
・いらだづ |
【動】いらいらする。いらだつ。 |
『苛つ』。
・いらける:いら立つ:青森。『苛ふ』。
・いらつ:いら立つ:福井・大阪・三重・和歌山・岡山・徳島。『苛ふ』。 |
・いらだでる |
【動】気をたかぶらせる。いらいらさせる。 |
『苛立てる』。 |
◎いらっさま |
お稲荷様 |
新治郡。『いなっさま』がさらに訛ったもの。 |
・いらっせ
・いらっせよ |
【慣】いらっしゃい |
【助動詞】『し』が変化したものが付いたもの。広辞苑には『助動詞「しゃる」の命令形「しゃれ」が「しゃい」に、次に「せえ」に、さらに「し」と転化したもの。四段活用の動詞の未然形に促音「つ」の伴った形に接続する。「しゃる」の表した尊敬の意はなくなり、ほぼ対等の相手への命令を表す。』とある。
意味としては『せらる』に該当する。 |
◎いらっぱきらっぱ |
選り好み |
北茨城市。『選らば、嫌わば』の意味。 |
・いらぶ |
【動】選ぶ |
《伊良部が選ばれたら偉ぶるかも?》。 |
・いらぶる |
【動】偉ぶる |
『えらぶる』と発音すると、むしろ強調形になった。 |
◎いらむし |
イラガの幼虫 |
『刺虫』。 |
(いらりゃーせん) |
【複】居られない |
静岡。
本来は『居られはせぬ。』で方言の要素は殆ど無いが、関西言葉である。古い俗語と見られる。 |
(いらんせんしょ) |
【複】余計なお世話 |
静岡。 |
・いらんに
・いらんにぇ
・いらんね
・いらんねー |
【複】居られない |
・いれん:山梨。可能動詞形なので新しい方言か。『居れぬ』。方言の要素は殆ど無いが、関西言葉である。 |
・いり |
襟 |
− |
▽いり |
@▽後ろの部分、奥、地形の奥まった部分、A西の方角にある親戚 |
@『入り』が転じて奥に入った部分の意味になったと考えられる。『内裏』にも通ずる。
・いりこ:宮城。
・いり:東北・茨城・群馬。
・いりのま:奥座敷:茨城・宮城。
・いりやま:谷間の奥:長野。
・えり:奥の方:宮城・福島。
・えり:山の奥:山形・新潟。
・えり:奥座敷:宮城・福島。
・えーりのうぢ:奥の家:山形。
A西を『いり』と言うのは沖縄方言である。 |
(いり) |
@場所・土地やある社会などに、はいること。Aはいっていること。またその容量。B日や月が没すること。C彼岸・土用などの始まり。最初の日。D収入。みいり。E(「要り」とも書く)費用。かかり。 |
『入り』。和語の一つだが、いずれも漢語に押されて、A以外は使うことが少なくなった。
@は『土俵入り』ぐらいでしか使われない。
・いりあと:動物の足跡:熊本。 |
◎いり |
囲炉裏 |
『いるり』がさらに訛ったもの。 |
・いりあい
▲いりいー
▲いりえー |
夕暮れ |
古語『入相』。『集覧:猿』。
・いりえー:沖縄。
・いりば:夕日:富山。 |
◎いりあし |
@入った時、A転じて彼岸の入り |
− |
・いりあーせ |
入れ合わせ、埋め合わせ、償い |
− |
◎いりうと |
二度目の婿、後家の婿 |
本来は『入人(いりびと、いりうど)』(いりむこ。) |
■いりかげもぢ |
2月8日に行う子供のための行事。 |
『襟掛け餅』。7歳以下の子供が対象となる。子供の年齢より一つ多い餅を麻紐や藁に通し、子供の襟に掛ける。
県内では地域によって様々で、数が決まっていなかったり、2月6日に行うところや、『いりかげだんご』と呼ぶところもある。 |
◎いりがま |
鉄製の焙烙 |
『煎り窯』の意味。 |
・いりがーり ・いりがーり
・いりかーり
・いりかわり |
入れ替わり |
『入り替り』。 |
・いりがーりたぢがーり |
入れ替わり立ち代り |
・えりがわりたぢがわり:山形。 |
・いりぎれー
・いりぎれー
◎いりきれー |
選り好み、好き嫌い |
『選り嫌い』の意味。 |
◆いりぐい |
釣りの入れ食い |
− |
・いりぐぢ
・いりぐぢ
◎いりくち |
入り口、玄関 |
明治頃までは、入り口は『いりくち』と発音されていた。 |
◎いりくち |
彼岸の入り |
古河市。 |
・いりぐってる |
【動】ひねくりまわしている、入り組んでる |
標準語には『入り繰り歌』(ひねくりまわし過ぎてぎこちなく、情も言葉も整わない歌。)がある。 |
・いりくび
・いりっくび |
うなじ。くびすじ。 |
『襟首・領頸』。 |
◎いりこ |
@山の奥、A入り江 |
− |
・いりごのみ |
選り好み、好きなものだけを選ぶこと |
=『より好み』。 |
・いりごむ |
【動】@無理にはいる。おしわけてはいる。A潜入する。Bいりくむ。こみいる。C入れ込む、熱中する |
@AB『入り込む』意味。
★なーんだがいりごんでるみでーだがらおれはけーるわ:なんだか分け有りみたいなんで僕は帰るよ。
C入れ込む。 |
▽いりごめ |
炒った米 |
『炒米』。今で言えばスナック。 |
◎いりし |
婿入り、2度目の婿、後家の婿 |
『入り衆』または『入り主』の意味か。 |
・いりずみ |
火にあぶって湿気を去り、火のつきやすいようにした炭。 |
『炒炭』。 |
■いりそめ |
新築の家に入居すること |
『入り初め』の意味。 |
・いりだし |
出し入れ、金の出入り、交換 |
− |
・いりだしかんじょー
・いりだりかんじょー |
収支 |
− |
▲いりだり |
出し入れ、金の出入り、交換 |
『集覧:猿』。集覧には『やり取りなしに交換すること』とある。 |
(いりちー) |
炒め物 |
沖縄。 |
・いりちがい |
入れ違い |
古い標準語。『入り違い』。 |
◎いりっこ |
山の奥 |
− |
◎いりでま |
職人が施主の家でする賃仕事 |
『入手間(いりでま・いれでま)』(手間仕事の賃銭)。 |
・いりーど
・いりーと |
2度目の婿 |
『入人(いりうど)』( いりむこ)の転。
・いりっと:入村者・嫁・婿:神奈川。
《2回目のもごさんだがらこんだはイリートだっぺっちのはふんとがー???》 |
・いりとぐぢ |
入り口 |
沢山ある戸口の中で入る戸口の意味か。
・いいとぐっ:入り口:鹿児島。 |
◎いりのま |
奥の間 |
『入りの間』の意味。 |
・いりにいる |
【動】隙間無く入る、丹念に事を成す |
古い標準語ではないかとも思われるが、まだ明らかになっていない。 |
・いりびーた
・いりびーたん |
エレベーター |
《むがしゃ、イリビータンガールっつのがいだっけよなー。なーんだがー、はづおんがー、ぜーぶんういにいったりしたにいったりー、えばらぎのしとらがゆーのどはちがーんだいなー。イリビータンガールだがらだっぺが。》 |
◎いりぼがい
・いりぼげ |
祝い事、酒宴 |
『入りほかい』の意味で、『ぼげ』は『寿ひ・祝ひ・賀ひ(ほかい・ほがい)』が訛ったもの。 |
・いりまぎ |
襟巻き、マフラー |
− |
◎いりよー |
経費 |
『入り用』(入費。費用。)。
現代語では、主に『いりよう【入り用】@入費。費用。Aある用事のために必要なこと。にゅうよう。』の意味で使う。
・いりよー:小遣い銭:東京。 |
・いーりょーじ |
自宅で病気を治すこと |
『家療治』の意味。
・いえりょーじ:東京。辞書には無いが標準語と見られる。 |
・いりよーねー |
【形】必要ない |
『入り用ない』。 |
▲いりり |
囲炉裏 |
『集覧:真』。『入り裏』の意味も考えられる。 |
・いりわげ |
入り訳、事情 |
濁音化。
・いりわけ:東京。 |
・いりわげる |
【動】選り分ける |
− |
▲□いりわり |
仲人、仲裁人 |
『集覧:多』。『入り割り』の意味。 |
◎いりわり |
けじめ |
行方郡。 |
◎いりわり |
@仲人、A仲裁 |
− |
・いりわり |
入り訳、事情 |
古語。 ・えりわり:山形。 |
・いりわる |
【動】横から割入る |
『入り割る』意味。 |
・いる |
【動】@入る、A要る(要する)、B(果実が)みのる。熟する。 |
@古い標準語で今では単語で使われることは稀。『這い入る』が転じた『入る(はいる)』を用いるのが一般的。
★ひびがいる・ひびいる:ひびが入る。
★ながにいったらどーだ:中に入ったらどうだい。
★『土』こんだこさ大丈夫だ、先(せん)にゃどうして罅(ひび)なんぞいったけかよ。
A漢語に押されて『必要』という言い方が主流になったが、まだまだ『要る』は必要な言葉である。
★そーたとぎにいんだよ:そんなときに要るんだよ。
B標準語。 |
・いる |
【動】ある |
もともと日本語では人も物も存在する意味の『あり』が使われた。現代語の『居る』に当たるのは古語では『をり』であるが別に『ゐる』もあり『ゐる』には『@(かすみ・雲などが)かかる。ずっとそこにある。A(氷・つららなどが)生じる。出来てそこにある。B(草などが)生える。』の意味があった。時代の経過と共に『をり』が『ゐる』に変化していったため、混乱が生じたのであろう。明治以降、動かずにいることを人や動物では『居る』、動かない物の場合は『有る』に矯正したのではあるまいか。あるいは、『居てある』意味も考えられる。関西では今でも『いてはる』と言う。
・いる:青森・岩手・秋田・宮城・群馬。 |
・いる |
【動】選る(える) |
− |
(いる) |
【動】揺する |
東京。
『ゆる【揺る】』が訛ったと考えられる。 |
・いーる |
【動】入る |
★おれがいーっからいーよ:俺が入るから(お前は)いいよ。 |
・いーる |
座り込む |
『居入る』。 |
・いーる |
【動】癒える |
− |
・いるか |
ゆるいさま。緩やか。 |
『緩か』。
・いるせー:静岡。 |
・いるこい |
【形】緩い |
− |
・いるみでだ
・いるみてーだ |
【複】居るみたいだ |
★ながにいるみでだど:中に居るみたいだよ。 |
・いるむ |
【動】緩む |
・いろむ:熟する:富山・岐阜・愛知。 |
▲いるめ |
犬 |
『集覧:久』。『いぬめ』がさらに訛ったもの。 |
(いるもの) |
入れ物 |
静岡。『入るるもの』の訛りか。 |
□いるり |
囲炉裏 |
囲炉裏は当て字で、中世から『いろり、いるり、ゆるり』が文献に現れる。
・いるぎ:秋田・福島。
・いるき:神奈川。
・いるり:福島・群馬。
・すぶと:岩手。
・ゆるり:神奈川。 |
◎いれ |
沖から陸に吹く風 |
北茨城市。対:『だし、だしのかぜ』。 |
・いれ
・いれー |
【副】えらく、すごく、沢山 |
− |
◎いれきれ |
選り好み、好き嫌い |
『選り嫌い』の意味。 |
▲いれこ |
船の艪杭(ろぐい)の頭を入れる孔。 |
『集覧:無記載』。 |
・いれごむ |
【動】@無理にはいる。おしわけてはいる。A潜入する。Bいりくむ。こみいる。C入れ込む、熱中する |
@AB『入り込む』意味。
C入れ込む。
・いれこむ:疲れる:和歌山。 |
◎いれーさま |
お偉い様 |
− |
◆■▽いれし ▲▽いれしゅ |
婿入り、2度目の婿、後家の婿 |
『入り衆』または『入り主』の意味か。『集覧:多・稲・鹿・久・新・行』。 |
・いれだし |
出し入れ、金の出入り |
− |
・いれべーた
・いれべーたん |
エレベーター |
★いれべーたににもづいれべどもったけんとが、いがすぎでひーんにどよ:エレベーターに荷物を入れようと思ったら、大きすぎて入らないってよ。 |
◆いれーめさらー |
【動】ひどい目に会う |
=『ひでーめさらー』。 |
◆いれもん |
入れ物、容器 |
俗語。
・いるもの:静岡。 |
・いれる |
【動】いらだつ |
『炒れる』。近世語。 ・いれる:宮城・愛知。 |
・いれる |
【動】揺れる |
★まーだいれでっと:まだ揺れてるよ。 |
◎いろ |
@性交、A情人、恋人 |
『色里・色町:遊女屋や芸者屋が集まり、遊興のために人々の集まるところ。色里。遊郭。花柳街。』等の言葉がある。
西洋語の『エロス』とは間違いなく関連がある言葉と思われる。
@『色事』が転じたものだろう。
・いろ:千葉。
Aはやや古い標準語。
Bその他。
・いろ:白装束:神奈川・静岡・熊本。
・いろくま:白装束:神奈川。 |
(いいろう) |
【複】いいだろう |
新潟。
新潟は方言区分では東日本方言に属するが、立地から関西言葉の『ええやろ』の影響を受けたか。 |
・〜いろい
・〜いろいろ |
− |
色を示す形容動詞にはほとんど『〜いろい』をつけた。『あがいろい、あおいろい、みどりーろい、きみどりーろい、きーろい、だいだいろい、ちゃいろい、くろいろい、ぐんじょいろい』さらに『あがいろいろ、あおいろいろ、みどりーろいろ、きみどりーろいろ、きーろいろ、だいだいろいろ、ちゃいろいろ、くろいろいろ、ぐんじょいろいろ』等『色』が重複することもあった。
日本語の色を表すす言葉は、何故か不規則である。色を表現する言葉は形容詞だから、現代では接尾語の『い』を伴い古くは『し』のはずだが全てはそうではない。これはどうやら日本語の発生にもつながる重要な言葉のルールでもある。色の形容詞は@単に接尾語『い』がつくもの、A接尾語『いろい』がつくもの、B何もつかず形容動詞として使われるものがある。具体的に@は『あかい・あおい・しろい』、A『きいろい・ちゃいろい』、B『だいだい・むらさき・みどり・きみどり・おうどいろ・はいいろ』等と言う。実は日本の色を表す言葉は膨大にあり、殆どBの語法で使われる。何故@とAが不完全なのかは歴史と言葉に対する作り方の感覚があるにあると思われる。つまり@のルールを採用すると『黄色い』は『きい』となり『茶色い』は『茶い』となってしまう。恐らく先人達はそれを音によって使い分けたのではないかと思われる。 |
・いろいた
・いろいな
・いろいんた
◎いろいんな |
【連体】色々な |
語源を思わせることば。
・いらんた:静岡。タリ活用を残した言葉。
・いれんな:神奈川。 |
(いろう・いらう) |
【動】 |
@広辞苑には『弄う(いらう)』(@もてあそぶ。いじる。さわる。Aからかう。おもちゃにする。B手入れをする。修理する。)『綺う・弄う(いろう)』(かかわりあう。干渉する。扱う。)とあり、大辞林には『弄う(いらう)』(@いじる。もてあそぶ。A手を加える。手入れする。Bからかう。)『綺う・弄う(いろう)』(@かかわり合う。世話をやく。A干渉する。口を出す。B争う。さからう。C触れる。さわる。いじる。)とあり、権威ある辞書でも微妙に異なる。
『弄う(いらう)』も『綺う・弄う(いろう)』現代ではほとんど使われず、西日本に残る。方言化したものは複合語形をとっている。
・いらばかす:じらす:鹿児島。
・いらばかす:からかう:大分・鹿児島。
・いらばかす:いじめる:香川。
・いらまかす:からかう:岡山・広島。
・いれくる:ごまかす・騙す:福岡・熊本。
・いろべる:もてあそぶ:香川・徳島。
A古語『借ふ(いらう・いろう)』。
・いろう:山梨・静岡。 |
・いろぐ
◎いろご |
絵の具 |
単に訛ったか『色具』、あるいは『色粉』の意味とも言える。=『いんご』。 |
◎いろくさった |
【連体】色々な |
岩井市。『えらく雑多』の意味か。 |
(いろこ) |
フケ |
古語。『鱗』と書く。広辞苑には『雲脂・頭垢:皮脂腺の分泌物が乾燥し、皮膚に灰白色の鱗状となって付着するもの。頭部に多く生じる。いろこ。うろこ。』とある。実態は、その他の頭皮病が生む瘡蓋を指しているのではないかと思われるが、鱗のように剥がれることから例えた言葉と考えられる。
この言葉は日本の南北の端にあり『方言周囲論』を証明するものである。
『語源』には『@フケ(浮垢)の義。Aフケ(陳化)の義か。Bフルアカムケ(古垢剥け)の義。Cフコ(鮒甲)の義。Dコケ(苔)の転。』とある。
・あが:青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島・新潟。
・あか:新潟。
・あたまのかす:宮城。
・いこ:鹿児島。
・いら:大分。
・いらこ:鹿児島。
・いりき:沖縄。
・いりけ:奄美大島。
・いりこ:宮崎北部・種子島。
・いりね:沖縄。
・いれこ:宮崎。
・いろこ:岩手・秋田・宮城・福島。
・うるこ:秋田・種子島。
・うろこ:青森・岩手・秋田・宮城・茨城・島根県隠岐・宮崎・鹿児島。
・うろご:宮城・山形。
・おろこ:宮城。
・かす:宮城。
・きい:宮崎北部。
・くけ:山形・神奈川の一部・佐渡の一部・岐阜の一部・高知の半分・鳥取西部・島根東部。
・こけ:高知・鹿児島・宮崎の一部。
・ねむし:熊本。
・ふげ:青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島・千葉・栃木。 |
◎いろこ |
染め粉 |
『色粉』の意味。 |
◆いろさし |
(顔などの)色あい、いろどり |
標準語。『色差し』。
・いろさし:顔色:静岡。
・えろさし:山形。 |
◎いろちょこ |
クレヨン |
『色チョーク』が転じたもの。 |
◎いろっこ |
絵の具、色紅 |
『色粉』の意味。 |
◎いろと |
妹 |
『常陸風土記』にある上代語。古語辞典には『いろど・いろと:いろおとに変化した形。「いろ」は同母の意の接頭語。同母の兄から見た弟、姉から見た妹。』とある。 |
◎いろね |
姉 |
『常陸風土記』にある上代語。古語辞典には『いろね:「いろ」は同母の意の接頭語。同母の弟から見た兄、妹から見た姉。』とある。 |
・いろは |
平仮名 |
− |
(いろはにほへと) |
五十音の古形。 |
いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそつねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせすん。
(色は匂へど 散りぬるを 我が世誰そ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず。) |
・いろばい
・いろばえ |
色合い |
『色』+『映え』?。古い言葉。
・いろっぺ:青森。 |
・いろめ |
@色目、A色合い |
Aはあまり使われなくなった標準語。 |
・いろめがねをかげる |
【複】偏見がある |
『いろめがね』はもともとサングラスのこと。濁音化。 |
▲いろんな |
【連体】色々な |
『集覧:猿』。
・いろんな:東京。 |
◎いろんな |
@色っぽい女。美人。A情婦。いろ。 |
那珂郡。『色女』。 |
・いーわ
・いーわー
・いーわい
・いーわや |
【慣】良いねえ |
いずれもやや古い標準語と考えられる。
・いーわい:福島。
★こりゃいーわな:これは良いねえ。 |
・いわいる
・いわえる |
【動】結わえる |
− |
◆いわぐ |
【動】結ぶ |
『結わく(ゆわく)』。
平成の若者言葉に『いばく』がある。『暴力をふるう』の意味という。もともとの意味は『鞭や細い棒で強く叩くことを』という。
『いばく』は一説に関西方言の『しばく』に由来するとあるが、例えば『いばく』とは『結わき掃く』、『しばく』とは『苛めて縛り付ける』のようなニュアンスなのかもしれない。
『縛る』には『縄などでからめいましめる。捕縛する。』の意味があり、古くから『縛る』には、縛る等の暴力行為によって相手を痛めつけるニュアンスがあった。
『結わく(ゆわく)』は、手先で結ぶニュアンスが強いが単に縛る意味もあるから、『いばく』とは、『結わく(ゆわく)』と同源とも思われる。
・いわく:栃木・群馬・東京。
★そったらわりーごどすんだらー、かどのしーのぎにしばりつげでやれー。そーせばあんげーこごろにしみっぺよ:そんな悪いことをするんなら、門にある椎の木に縛り付けてあげなよ。そうすれば、案外効くだろうよ。
★ほごをちっといわかないど、ほづれっちまーよ・ほこちっといわかないと、ほつれっちまーよ:そこを、少し結ばないと、解れてしまうよ。 |
◎いーわげる |
【動】@断る、A言い訳を言う、B区別する |
標準語の『言い分ける』が転じたとも考えられるが、『言い訳する』意味に近い。 |
・いわさんな |
【慣】言いなさんな |
『言いさるな』の意味。
・いわしっと:し静岡。
・いわっと:静岡。 |
◎いわしなべ |
遠い親戚、古い親戚 |
本来は、江戸時代に使われた『鰯煮た鍋』でそれが形を変えて茨城に残っているもの。
『民俗』には、『イワシを煮た鍋は何度洗っても臭いが残る。』と補足がある。 |
・いわずばいい
・いわずんばよし |
【慣】言わなければ良い |
これは単に古い言葉。 |
・いーわだす |
【動】伝言する、言い伝える |
『言い渡す』(決定や命令を(下の者に)告げ知らせる。宣告する。)。 |
(いわっしゃる) |
【複】おっしゃる |
神奈川。文法的な間違いは無い。 |
・いわった
・いわっちゃ |
【複】言われた |
− |
◎いわって
・いわっちぇ |
【複】言われて |
− |
◎いわっぱげ
◎いわばけ ▲いわはけ |
岩の絶壁 |
『集覧:無記載』。広辞苑には『はけ:(関東から東北地方にかけて) 丘陵山地の片岸。ばっけ。』とある。 |
◎いわへび |
小型のヘビ、ヒバカリ |
− |
◎いわまぜ |
イワイソメ、イワムシ |
− |
◎いわまづ |
イワヒバ |
清音形ならイワヒバの別称。 |
・いーわや |
【慣】良いよ |
古い標準語と考えられる。現代標準語ではそのニュアンスを表現できない。 |
・いわれ |
遺言、謂れ、過去のしきたり、理由 |
− |
・いわれない
・いわれねえ
・いわれはない
|
【形】理由が無い |
『謂れは無い(正当な理由・根拠がない。不当である。)』意味。 |
・いわれない
・いわれねー
・いわんに
・いわんにぇ
・いわんね
・いわんねー |
【動】言えない |
『言われない』は口語では死語になりつつある言葉。文語の『言われぬ』の口語形。
★『土』:去年(きょねん)はそんでも其處(そこ)らへ玉蜀黍位(たうもろこしぐれえ)作(つく)れたっけが、此(こ)れ、邪魔(じゃま)だとも云(い)はんねえしなあ。 |
(いわれもうす) |
【動】仰る |
宮城。
広辞苑に『ます(申す)【他四】(マウスの約)@「言う」の謙譲語。栄華月宴「嘆かしげに―・し給ふ」A他の動詞に添えて謙譲の意を表す。更級「天照御神を念じ―・せといふ」』『ます【助動】:(マヰラスルからマラスル・マルスル・マッスル・マスル・マスという変化を経た語。「います」から転じた「ます」や「申す」から転じた語形と混合。古くは特殊なサ変・四段の両活用があり、両者が混同して現在の活用となった。従って古くは未然形に「まさ」、終止・連体形に「まする」、命令形に「ませい」を用いることもあった)
動詞・助動詞の連用形について、謙譲・丁寧を表す。現在、仮定形の「ますれ」に「ば」のついた形はあらたまった挨拶や書簡などを除いてはあまり用いられず、「ましたら」を多く用い、命令形は「いらっしゃいませ(まし)」「なさいませ(まし)」「くださいませ(まし)」などのように尊敬・謙譲を表す語とともに用いられる。「まし」は古くからあるが、ややくだけた言い方。』とある。 |
▲いわをぶつ |
【動】土塊を投げる |
『集覧:新』。 |
◎いん |
猿 |
沖言葉の一つ。『猿』を獲物が『去る』にかけ、忌んで、『えん』または『往ぬ』としたか。 |
・いん |
犬 |
・いん:宮崎・沖縄。 |
・いん |
縁 |
茨城方言では、縁をおしなべて『いん』と言う。しかし、標準語の『因』も『縁』も『ゆかり』をしめす言葉である。これから、日本語の『い』は、『え』と同義であったのではないかという仮設が成り立つ。
逆説的に言えば、漢字が伝わった後、それまであった和語を類似の漢字にあてた可能性がある。
古い言葉に農家の互助組織である『結い』も見逃せない。また、家もまた『ゆえ』に由来する可能性が高い。先祖から受け継いだものであるからである。 |
・いんい |
【感】いいえ |
元『否や、否よ』で、『否い、否え』を経て生まれたと見られる。
・いんえ:東京・静岡。 |
◎いんか |
親戚 |
多賀郡・那珂郡。『縁家』の意味と考えられる。 |
・いんが
・いんがー
◆いんか
・いんかー
|
【複】行こうか、帰ろうか |
撥音化。=『いぐが』。『いんけ』の方が改まった言い方。『行くか』は標準語。『往ぬか』が訛ったと考えられる。
★いんかどもーんだけんとどーだっぺ:行こうと思うんだけれどどうだろう。
★いんかどおもってだ:行こうかと思ってた。 |
◎いんが |
因果 |
日常的に使われた。 |
◎いんがー
◎いんかー |
縁側 |
・いがわ:宮城。
・いんがー:福島。 |
▲いーんか |
【形動】僅か |
『集覧:多』。『集覧』では『えーんか』である。『わーんか』がさらに訛ったと思われる。 |
・いーんが |
【慣】良いのかい |
『いーのが』の撥音便。 |
(いんかえり) |
往復 |
宮城。 |
◎いんがす |
【動】動かす |
『いごがす』がさらに訛ったもの。 |
・いんがたがり |
【古】不幸な人 |
『因果』+『集り』。 |
(いんがとしたひと) |
四角張った人、厳格な人 |
宮城。 |
◆■▲△▽いんがみる |
【動】【古】大変な目にあう |
『いんが』は『因果』(前世での悪業により現在の不幸があること)の意味。古典的言葉の代表。『集覧:猿・稲』。
・いんがみる:栃木・埼玉。
・えんがみる:福島・栃木。
★『土』そうだともよ、こらおつうでも無くつちや育たなかったかも知んねえぞ、それこそ因果(いんが)見なくっちゃなんねえや、なあおつう:そうだとも、これはおつうでもなければ育たなかったかも知れないぞ、それこそ酷い目に遭わなくちゃならないよ、ねえ、おつう。 |
・いんがら
・いんから |
【複】@居るから、A要るから、B行くから、帰るから |
@・いんから:東京。さらに『い』が無くなって『んから』とも言う。
B・いんから:宮城。
★おらはーいんから:僕はもう帰るから。 |
◎いんがる |
【動】(人の気を)引こうとする |
那珂郡。『艶がる(えんがる)』(艶な様子をする。人の気をひくふうをする。)。 |
□いんがわ |
縁側 |
昔はどこの家にもあったもの。うららかな日は臨時の接客スペースに早代わりしてしまう。冬場は特に重要でここが簡単な作業スペースや裁縫スペースに変わった。 ・いがわ:宮城。 |
・いんき |
インク |
『インク』自体が死語になってしまった今、その昔『インキ』と呼んだ時代があったなんて解らない世代が多くなった。しかし今でも大手塗料メーカーの『大日本インキ』は健在である。 |
・いんぎ |
縁起 |
・いんぎ:神奈川。 |
・いんぎいー |
【形】縁起が良い |
− |
・いんぎかげる |
【動】因縁をつける |
『いんぎ』は『縁起』のこと。 |
◆いんきばな |
ムラサキツユクサ |
花びらの色素で紙がインクのように染まるのでそう呼ばれる。当時私は『いんきくさい』とは『インク臭い』意味だと思っていた。
・いんきぐさ:ツユクサ:群馬。 |
◎いんぎゃ |
縁起 |
北茨城市。縁起がそのまま『いんぎゃ』になっているのではなく、格助詞が隠れているもの。もともとは『縁起が』の意味。
★いんぎゃーわりー:縁起が悪い。 |
(いんきゃわるい) |
【複】嫌だ |
静岡。 |
◎いんきょ |
@分家、別宅、A隠居 |
@・いんきょ:神奈川・静岡・京都・奈良・三重・和歌山・大分。
・いんきょや:神奈川。
A旧民法では、高齢になると財産を子供に渡し、その時、別に小ぶりの家を建て隠居した。その家を隠居(いんきょ)と呼んだ。
Bその他。
・いんきょ:次男:和歌山。
・いんきょ:月経:鹿児島。 |
・いんぎょ |
印鑑、印 |
『印形(いんぎょう)』の転。 |
◎いんきょかぶ |
隠居すること |
県広域で使われるが、土浦市では言わない。
・いんきょかぶ:若者組の50歳以上の構成員:神奈川。 |
◎いんきょや
◎いんきょごや |
隠居先の建物 |
− |
◎いんきょぶんけ |
次男以下を連れて隠居すること |
県北から県西部・水海道市。 |
◎いんきょま |
隠居先の建物 |
勝田市。 |
◎いんきょまご |
隠居の際連れて行く孫。 |
主に県北部。 |
◎いんきょむすこ |
隠居の際連れて行く次男以下の息子。 |
県北から県央部にかけてあった風習。 |
◎いんきょむすめ |
隠居の際連れて行く次女以下の娘。 |
県北から県央部にかけてあった風習。 |
▽いんきょめん |
隠居した人が長男に相続せずに自分のものに留保した土地 |
県内広域で使われる。標準語では『隠居領』。『隠居前』の意味か。
・いんきまめん:あてにしない狭い土地:群馬。
・いんきょまえ:神奈川。
・いんきょめん:群馬。
・いんきょめん:隠居して楽な生活をしている人・そのような格の人:静岡。 |
◎いんきょよめ |
@隠居するときに連れて出た末っ子の嫁、A本宅で同居している次男の嫁 |
久慈郡・西茨城郡。 |
・いんぎわりー
・いんぎわれー |
【形】縁起が悪い |
・いぎわりー:宮城。 |
◎いんぎん |
インゲン豆 |
・いんぎん:埼玉。
・いんぎんまめ:神奈川。
・えんげんまめ:神奈川。 |
◎いんぎんぶぐろ
□いんきんぶくろ |
袴 |
『慇懃袋』の意味。
・いんぎん:寺の住職:香川。
《おれも、かいー陰金ぶぐろもってっけんと、それのごどがー?》 |
・いんきんりょーよーめがね |
遠近両用メガネ |
《『いんきんりょーよーめがね』っちゃ、》陰金どあどなにがめーんだー。せーぎんは、ちー陰金なんちのがあるらしーがらー、ちー陰金ど、陰金がめーっからがー。ほんでもちー陰金きんっちゃ、なんだっぺ。陰金になるめーをゆーのがー。んだけんとよおめ、陰金がいーぐらみーだってよー、かいーのはなおんねどなー。》 |
◎いんぐがす |
【動】動かす |
− |
・いんぐぐ
▲いんぐく |
【動】動く |
『集覧:多』。 |
◎いんくつねー |
【形動】偏屈 |
茨城では『あーたへんくつねーがんなー』などと言う。『あんな偏屈(な人は、他に)無いからな。』の意味である。この例は『へんくつねー』が訛ったと考えられる。 |
◎いんぐみ |
縁組、縁談 |
血統を言う地域も有る。 |
(いんぐり) |
背が低く太っていて格好の悪い様 |
静岡。『ずんぐり』が訛ったか。 |
・いんぐりたんぐり |
【副】順繰りに |
『じんぐりたんぐり』がさらに訛ったと思われる。。 |
◎いんぐる |
【動】えぐる |
− |
・いんげ
・いんげー
◆いんけ
・いんけー |
【複】@行くかい? |
『いぐげ・いぐけ』がさらに訛ったもの。 |
◆いんけ
・いんけー |
【複】行った、行きつつあった、歩いていた |
『往にけり』。現代口語では表現が難しい。
『け』は『けり』の流れ『過去の事実が後のある時まで存続していることを客観的に述べる。〜していた。〜した。』の意味。現代でも『遣ったっけ』などと言う。元『遣りたりけり』。
★でーのはだげでうねうなってだら、となりのちゃーちゃんがもんくいーいーがっこにいんけわ:(手野の上の)高台の畑で畝を耕していたら、寿さんが文句を言いながら学校に向かって歩いていたよ。
★『土』:そんだから過多(げえ)に飮(の)むなっちんだ、なんておつぎに怒(おこ)られおこられ行(い)んけわ:だから飲むなって言ってるんだなんて、おつぎに何度も怒られながら行きつつあったよ。 |
・いーんげ
・いーんけ |
【慣】良いのかい |
『いーのげ』の撥音便。 |
◎いんげる |
【動】(めんこを)をひっくり返す |
北茨城市の方言。古い言葉に『いのく(射退く):矢を射かけて、敵を遠ざける。』がある。 |
・いんけん |
【形動】@無関心、ご無沙汰、(A陰険) |
@は『遠見』の意味。 |
▲いんげん |
根本、源 |
『淵源』。『集覧:無記載』。 |
◎いんこ |
大便 |
茨城方言の代表語は『おんこ』。=『えんこ』。
標準語の『うんこ』は、ウンチをするときの気張る音の『うん』に『こ』がついたとされる。座る意味の幼児語『えんこ』も力を入れる時の『えい、えん』に『こ』が付いたのは間違いないだろう。『えん』は茨城では『いん』でもある。 |
・いんこ |
@エンスト、A座ること |
@『えんこ』。
A幼児語。 |
・いんこ
◎いんこー |
縁故 |
− |
・いんこ |
子犬 |
・いんこ:犬:福島。
・えんこ:犬:秋田。 |
◎いんご |
絵の具 |
那珂郡。『いろご』がさらに訛ったもの。 |
・いんごー |
頑固で無情なこと、むごいこと |
『因業』。
・いんごー:東京・長野。
・いんごーくさい:剛情一徹な様・東京多摩。
・いんごーもん::頑固者:神奈川。
・いんごーやろー:頑固者:神奈川。
・えんごー:解らない事:静岡。 |
◎いんごがす |
【動】動かす |
− |
◎いんこぢづ |
打ち出の小槌 |
高萩市。『こぢづ』は『小槌』の転。 |
▲いんこする |
【動】座る |
幼児語。『集覧:西』。=『えんこする』。 |
・いんこする |
【動】エンストを起こす |
=『えんこする』。 |
・いんこだねー |
【複】行くことはない、行く必要はない |
撥音便。江戸言葉なら『いくこたあねえ』。 |
◎いんこめ |
子犬 |
− |
・いんこらしょ |
えんこらしょ |
− |
◎いんざ
◎いんざっぱげ
◎いんざぼっち |
さん俵 |
『円座・円坐』。 |
・いんじ |
エンジュ |
− |
◎いんしー |
火薬 |
『煙硝(えんしょう)』(硝酸カリウム)または、手筒花火で有名な『遠州』が訛ったもの。 |
◎いんじぐんじ
・いんじくんじ |
【副】@いじけた様、いじいじ、ぐずぐず、A曲がりくねっている様、くねくね |
『いじくじ』がさらに訛ったもの。
A★『土』:大(えけ)え青大將だから畜生縮まって屈曲(えんぢぐんぢ)した時や引つ掛かつて仲々(なかなか)動(いご)かねえだ:大きい青大将だから縮まって曲がりくねった時には引っ掛かってなかなか動かないんだ。 |
◎いんじゃやげる |
【動】むかつく、いらいらする、腹が立つ |
− |
▲いんしゅー |
火薬 |
『集覧:新』。『煙硝(えんしょう)』(硝酸カリウム)または、手筒花火で有名な『遠州』が訛ったものか。
・えんしゅ:鹿児島。
・えんしゅー:静岡。
・えんす:鹿児島。 |
◎いんず |
緑豆、やえなり |
『文豆・緑豆』(ぶんどう)は緑豆とエンドウを言う。豆はダイズにもあるように唐音で『ず』と言い、漢音では『とう』と言う。 |
◎いんすい |
精液 |
『淫水』。 |
・(インスタントラーメン) |
− |
インスタントラーメンは、今では世界のファーストフード化しているが、最初は『チキンラーメン』と呼ばれ、袋には赤だったか黄色だったかの横縞が描かれたものだった。当時のラーメンは主に『支那蕎麦』と呼ばれた。『チキンラーメン』は揚げ麺そのものに味が付いていて、麺をそのままどんぶりに入れてヤカンで沸かした熱湯を注げば出来上がった。そのうちそのまま齧っても食べられる事を知って私はよく齧って食べたことがある。そのうち、そのまま齧って食べられるラーメンが駄菓子屋に登場する。
当時の日本は池田内閣の時期で高度成長期であったから、物価はどんどん上がった。私の記憶では、昭和30年代のラーメンは180だったと記憶する。アイスキャンディは5円、アイスクリームは10円、アンパンは10円、そして間もなく15円になった。少年マガジン・少年サンデーに代表される少年雑誌は40円だったが、50円に跳ね上がった。東京オリンピックの時代である。当時の小学生の子供の小遣いは、一日10円か15円、大学卒の初任給は3〜4万円、1ドル360円の時代だった。
当時のインスタントラーメンは農家にとっては、便利な食材だった。陽のあるうちは時間との戦いだったから、家から遠い田畑に行く時は弁当が多かった。野原で食べる弁当は冷たくとも季節の風や花々に囲まれた環境にあるから、それなりのものだったが、やはり暖かいことにこしたことはない。その意味で、インスタントラーメンは当時の農家の昼の食事に革命をもたらし、どの家でも50センチ角ほどあるインスタントラーメンのダンボール箱が1・2箱は常備されていた。
その後、子供用として麺が最初から解してあるものもあって小さな袋に入れられたものが普及した。それは間もなくポテトチップスにとって変わる。粉スープとして味付けが別になったのは昭和40年頃だったと記憶する。
1980年代に仕事でサイパンで1年半を過ごしたが、その時、ハングル文字のインスタントラーメンがサイパン最大のスーパーである『ジョーテン』にうず高く積まれているのは驚きだった。
今、サラリーマンの初任給を20万とすると、当時は七分の一から五分の一で、ラーメンが百円台だったことは納得できる。 |
◎いんする |
【動】座る |
幼児語。『えんこする』。 |
・いんそ |
塩素 |
★このぷーるにゃいんそがへーってでーばえぎんがしんちってっがらいーんそーだ:このプールには塩素が入っていてばい菌が死んじゃってるから良いのだそうだ。 |
・いんそぐ |
遠足 |
当時は『えんそぐ』と発音すると訛って聞こえたものである。 |
◎いんぞぐ |
【形動】結婚は縁に左右される様 |
『姻族』(婚姻によりできた親戚。配偶者の血族、すなわち夫からみて妻の父母兄弟の類。民法では三親等内の姻族を親族としている。
『姻族』を慣用句的に使っている方言。 |
◆いんだ |
【複】@要るんだ、A言うんだ、B居るんだ |
@★しごどやっとぎにいんだよ:仕事する時に要るんだよ、
A★そーいんだっけべ:そう言っただろう、
B★ほれ、ほご、ほごだよ、ほごにいんだよ:それ!、そこ、そこだよ、そこに居るんだよ |
・いんだがいねーんだがわがんね |
【複】居るのか居ないのか解からない |
− |
・いんたぐ
◎いんたく |
隠宅、隠居 |
− |
◎いんたづ |
煙突 |
現代の『煙突』は、明らかに漢語である。また『煙(いん)』も漢語が訛ったもの。『たづ』は『立つ、立ち』を思わせ、『煙立て』の意味だろう。
所謂重箱読み・湯桶読みとは、和語と漢語が混乱した時代の名残であろう。
・えんたつ:東京・神奈川・静岡。 |
◆いーんだっちば
・いーんだちゅば
・いーんだっちゅーば |
【複】良いと言ってるのに、良いんだってば |
− |
・いーんだっぺが |
【複】良いんだろうか |
− |
◆いんだねーが
・いんだねーげ
・いんだねーの |
【複】@居るんじゃないの、A必要じゃないの |
− |
・いーんだねーが
・いーんだねーげ
・いーんでぁねーが
・いーんでぁねーげ |
【複】良いんじゃないか、良いじゃないか |
− |
・いーんだねーの |
【複】良いんじゃないの |
− |
・いんだよ |
【複】@要るんだよ、A居るんだよ |
A・いんだよ。今では俗語。 |
・いんだら |
【複】@要るなら、A居るなら |
現代標準語では、『いるなら・いるのなら』にあたる。『いんなら』もある。
現代の辞書はでは、『いるなら・いるのなら』の識別を詳しくは説明できてない。 |
(いんだら) |
@助平、Aだらしがない人、B浮気女 |
神奈川。『因陀羅』に由来するか。
A・いんだら:無秩序:東京多摩。
・いんだら:静岡。 |
・いんだらもぢ |
転ばし餅 |
− |
・いんだん |
縁談 |
− |
(いんちき) |
@ばくちで、相手の眼をぬすんで不正を行うこと。A一般に、ごまかし。不正なこと。無責任。(広辞苑) |
広辞苑には『(安斎随筆、印地鎗の図説に見える、遠江国小笠郡の方言で、餌を用いない釣針のことをいうインチキ(「餌エ無き鉤チ」の転)からか。また、イカサマのイや穴一・一六勝負のイチなどに、排斥・軽侮の意をもつ接尾語チキがついたものとも考えられ、未詳)』とあり、語源は特定されていない。 |
◎いんちゃ |
【形】小さい |
那珂郡。 |
■▲いんつーふつー |
音信不通 |
当時の高齢者言葉。『集覧:猿』。『銀子・員子(いんつう)』は銭を指す。『音通不通』の意味。 |
◎いーんて
◆いーんてー |
家の人たち、家族 |
『家の手合』の意味。
★おめのいーんてーはいぐにんだ:お前の家族は何人だい。 |
(いんでんし) |
なめし革で袋物を造る事を職業にする人 |
東京。 |
・いんと
・いーんと |
【副】座るさま、でんと |
幼児語。標準語の『えんこ』は辞書に解説が無いが、擬態語の『えん』に『こ』がついたと考えられる。また座ったり、力を入れたりする時『よっこいしょ』『よっこらしょ』は『えんこらしょ』とも言う。民謡にもある『えんやこらどっこいしょ』は誰でも知っている。不思議なのは辞書に無いことである。日本の辞書業界=学術界ではことのほかこのような言葉が無視されているようである。いずれも感嘆詞『えい』が原型であることは間違いない。 |
・いんと
・いーんと |
【副】@力を入れる様、A沢山 |
『うんと』。 |
・いんとする
◎いーんとする |
【複】座る |
幼児語。『えんこする』。 |
・いんとづ |
煙突 |
− |
◎いーんとはなーひっかぶせ |
【感】 |
児童語。『いー』(はい)と返事をした人を囃す言葉。直訳すると『強く鼻を被せろ』。 |
・いんな
▲いんなー |
【複】@居るな、A居るね |
『集覧:久』。
@★ひとのめーにいんなよ:ひとの前に居るんじゃないよ。
A★あそごにいんな:あそこに居るね。 |
◆▲いんない |
【複】いらない |
『要らない(いらない)』。撥音便。『集覧:久・際・真・北・多・稲・鹿』。関東方言。 |
◆いんなが
△いんなか
◆いーんなが |
【複】【名】@家の中、A身内、親族 |
撥音便。
@・いんなが:宮城。
・いんなか:栃木。
A『縁中』の意味もあるかもしれない。 |
◎いーんながつきあい
・いーんながつきえー |
親戚づきあい |
− |
・いんながったら |
【複】いらないなら |
=『いんないがったら』。古語が現代語と異なり、『いる』と『ある』が区別された。 |
・いんながべんけー |
内弁慶 |
『い』とは囲われたところ、『い』は『え』に通じ、囲われたところは『うち(内・家)』である。
・いべんけー:長野。
・うちなかべんけい:栃木。
・ところべんけー:青森。
・ゆりなたべんけー:佐渡島。『囲炉裏端弁慶』。 |
(いんなら) |
【副】直ぐに |
京都。 |
☆いんにゃ |
【感】@☆いや、Aいや、いやあ、やあ、もう |
@否定の言葉。『否』(いな・いや)。江戸言葉。『いんや』『否や』『否にや』の意味か。
いなにや→いんにや→いんや→いんにゃ か。
・いんぎゃ:静岡。
・いんに:静岡。
・いんにゃ:岩手・宮城・群馬・山梨・静岡・島根。
・いんにゃー:神奈川。
・いんね:いいえ:長野・山梨・静岡・鳥取・広島。山梨は中央構造線の東側であるが、西側の影響が見られる。『否え』『否なりえ』の意味か。
・いんね:もう沢山:長野・山梨。
『俚言』には『いんや:インニャともイイヤとも云。にや反ナ。』とあり江戸言葉である。『否にや(あらむ)』が訛ったのだろう。
A感嘆詞。本来は『や・やあ』に由来すると考えられる。 |
◎いんにん |
遠慮 |
広域で使われることから、『隠忍』(じっとがまんすること。表にあらわさないでこらえること。)の意味が転じたと考えられる。。 |
・いんにする
・いんにんする |
【動】我慢する、隠しこらえる |
『隠忍する』。
・いんにんする:嫌う:栃木。 |
・いんね
◆■いんねー |
【複】いらない |
撥音便。日常的に良く使われる言葉。『要らぬえ・要らねえ』が原型と見られる。 ・いんね:福島・栃木。
・いんねー:福島。 |
◎いんねご |
夕方出かけるとき額に鍋の墨口紅を付けること |
『犬の子』。 |
◎いんねーづぎ |
近隣 |
新治郡・稲敷郡。
この方言の由来解釈は難しいが、『縁内の付き合い』だろうと思われる。 |
◎いんのきょーだい |
義理の兄弟 |
『縁の兄弟』の意味。 |
・いんのげ
・いんのげー |
【複】(誰か)いませんか |
他人の家に行った時の声かけ。 |
・いんのくそ |
イヌの糞 |
遥か離れた九州に同じ方言があるのは興味深い
・いんのくそ:宮崎。
★どでのういのいんのくそ(土手の上の犬の糞):気位の高い人を罵る言葉。 |
◎いんのこ |
赤子の額につける呪いの鍋墨。 |
『犬の子』。
古い風習の名残り。県下では勝田市に残る。赤子が始めて外出する時や、夜外出する時に、赤子の額につける鍋墨。山に行っても狐に化かされないと言われる。
『俗語』によれば、江戸時代には、子供が怯えたとき、『いんのこいんのこ』と言ってなでたといわれる。また怯える子供には犬の字を書いて寝かせたと言われる。
広辞苑に『いんのこ【犬の子】:(イヌノコの音便)@邪を払うために子供の額に「犬」の字を押すまじない。A子供がおびえた時などに唱える呪文の詞。』とある。
・えんのこ:子犬:山梨・静岡。
★『四十八癖』:おっと狗子々々(いんのこいんのこ)。 |
・いんのした
・いんのひた |
縁の下 |
・いんのした:神奈川。 |
◎いんばねすやろー |
頭の悪い人を罵る言葉 |
古河市。『いんばねす』は『インバネス:(スコットランド北部にある地名から) 男子用ケープ付の袖無し外套。幕末から明治初年にかけ
て輸入され、和装用コートとして流行。とんび。二重廻し。』のことと思われ、『袖無し』と『然で無し(そでなし)』(@いけない。不都合である。また、薄情である。A尋常でない。悪い。)をかけたと考えられる。 |
・いんぴ |
土を掘るスコップに似た農具 |
『円匙(えんぴ)』。スコップと異なり、円筒を切り取った形状をしている。深い穴を掘るのに適している。『えんし』が訛ったもの。
ところが、これは、間違いらしく、大辞林では『野営用のシャベル。主に旧軍隊で使われた語。』とある。 |
・いんびぎ
◆いんぴき |
親類の関係、或いは縁故のあること。縁辺。 |
『縁引』。古い標準語の転。 |
・いんびづ
・いんぴづ
・いんぴつ |
鉛筆 |
『づ』と発音するの場合の『ぴ』は有声音でしっかりと発音される。
かつての鉛筆は質が良くなかったため、掠れることが多かった。今のように用途に応じた規格の無かった時代の話である。その当時は掠れることが多かったので、鉛筆は舐めてから書くものだった。実際は気休めで、濡れているので一時的にこく見えたと思われる。
その後、鉛筆には鉛が含まれているので舐めてはいけないということになったが、実際は鉛は含まれていなかったらしい。
・いんびつ:神奈川。
・いんぴつ:神奈川。
・いんぺつ:神奈川。
・えんべつ:神奈川。
・えんぺつ:神奈川。 ★おめ、いんぴづなめだっぺー:お前は誤魔化したろう。 |
・いんぴづけづり |
鉛筆削り |
その当時は小刀を使って削るのが普通だったが、間もなくカツオブシ削りをヒントにした小型の新商品が現れた。刃物が組み入れられたもので、莢の中に新品の鉛筆を差し込んで回すと自然に削れるものである。これは今でも使われている。 |
◎いんぴつのしんとぎ |
トクサ |
− |
・いんびづどぎ
・いんぴづとぎ |
鉛筆削り |
− |
(いんぴん) |
【形動】気難しい様 |
宮城。
・いんぴんかだり・いんぴんかたり:気難しいことを言う人・へそ曲がり。
・いんぴんもの:気難しい人。 |
◎いんぷつ |
鉛筆 |
− |
◆▲いんべ
・いんぺ
◆■▲いんべー |
【複】@行こう、帰ろう、A行くだろう、帰るだろう |
@『集覧:行・久・多・新・北・猿・鹿・西・真』。茨城県全域に分布する。古語の『往ぬ(いぬ)べし』が訛ったとも考えられる。『いぐべ・いぐべ』『りんべ』と言う場合もある。茨城では『いんぺ』はややマイナーな言い方。
・いんべ:福島。
・いんべー:福島。
・いんぺ:福島。
★はやぐいんべよ:はやく行こうよ。
★いんべいんべ:行こう(強調形)。 |
・いんべ |
夕べ、昨晩 |
『ゆんべ』がさらに訛ったもの。 ・いんべ:神奈川。 |
◎いんぺき |
親類の関係、或いは縁故のあること。縁辺。 |
『縁引』の転。 |
・(いんべーだー) |
− |
テレビゲームの起源は、昭和50年代に遡る。
最近、『インベーダー』という言葉は聴かない。英語ではそのまま『invader』で『侵略者。侵入者。特に、SFで、地球外からの侵入者。』の意味である。ところが最近リバイバルがあるらしい。
昭和50(1975)年頃、全ての喫茶店のテーブルは、ブラウン管が内蔵され、今のテレビゲームの走りを担った。『インベーダーゲーム』である。
事のの起源は不明だが、『名古屋打ち』なる言葉やテクニックが流行った。これこそ『インベーダー』の攻略の基本である。 |
・いんべはー |
【複】もう行こう、もう帰ろう |
《ベン・ハーが訛ったみてーだ。》 |
◆いんま |
船だまり、掘割り |
『江間』(えま)と当てられる。地名に多い。 |
▲いんま |
絵馬 |
『集覧:猿』。『集覧』では『えんま』である。 |
▲いんまおー |
美濃柿 |
『集覧:多』。『集覧』では『えんまおー』である。 |
◎いんまこーろぎ
◎いんまこーろげ |
カマドウマ、エンマコオロギ |
− |
◎いんまさまのあかつらがゆ |
正月15日に作る小豆粥 |
− |
■いんまさまのいんにぢ |
1月16日と7月16日 |
『閻魔様の縁日』。 |
▲いんめ |
@犬 A海老 |
当時の高齢者言葉。『集覧:多』。 |
・いんめ
■いんめー |
【複】要らないだろう |
要るまい→いるめえ→いんめえ→いんめ。
★おめにゃーはーいんめがらおれがもらっとぐど:お前にはもう要らないだろうから俺が貰っておくよ。 |
・いーんめ
・いーんめー |
家の前、前庭 |
− |
☆いんや
・いーんや
・いーんやー |
【感】@☆いや、Aいやあ、やあ、もう、B労働で力を入れる時の掛け声、えんや、えいや、Cほめはやす声。えいやあ。えいや。やんや。 |
『否や、否よ』と見られる。
・いんえ:東京・静岡。
@否定の言葉。
『俚言』には『いんや:インニャともイイヤとも云。にや反ナ。』とあり江戸言葉である。『異にや(あらむ)』『否や』に由来すると考えられる。
・いんや
★いんやちがーど:いや、違うよ。
A・えんや:静岡。
★いーんやまいった:いやあ、参った。
★いんやのうだはいんやいーごど:エンヤの歌は、いやあ良いね。
B★いんやっとやっちーよ:えいやっとやっちゃえよ。
C現代では『やんや。』しか使われない。このあたりの言葉になると方言と標準語の識別は難しい。 |
■いんやこら
・いんやこーら |
【感】@えんやこら、A■杭打ち作業 |
− |
・いんやはー
・いんやはや
・いんやはーや |
【感】全くもう、いやもう、いやはや |
− |
・いんやらや
・いんやらやっと
・いんやらやど |
【副】辛うじて。ようやくのことで。 |
『えんやらやっと』。
・えんやっと:静岡。
・えんやらやっと:静岡。 |
◎いんやらや |
人夫 |
− |
・いんりょ |
遠慮 |
・えんじょ:静岡。 |
・いんりょしーしー |
【副】遠慮しながら |
− |
■いんるい |
親戚 |
『縁類』。 |
− |
− |
− |