昔の茨城弁集
昭和35年〜45年頃の茨城弁集
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◆印:『土浦の方言・続土浦の方言』掲載語。■印:『土浦市史・民族編』掲載語。▲印:『茨城方言集覧』掲載語。印:新編常陸国誌掲載語。印:茨城方言民俗語辞典掲載語。印:茨城弁今昔掲載語。印:物類称呼掲載語。●印:『国立国語研究所・日本語情報資料館・電子資料館・日本言語地図・方言文法全国地図』掲載語。▼印:日本方言大辞典掲載語。印:日本方言辞典掲載語。浪花聞書掲載語。印:俚言集覧掲載語。★印:使用例とその標準語訳。黒太文字:標準語。
茨城弁 標準語訳 備考・解説・使用例
(な) 【代】@私、Aお前 『己・汝』。
茨城では呼びかけの言葉に『あよ、あーよ』『なよ、なーよ』があるが、各々『我・吾』『己・汝』に終助詞『よ』が付いた言葉が残ったと考えられる。
:お前:青森・新潟。
なー
なー 児童語。『せな、せなあ』が約まったものだろう。
なー:千葉。
なー 【動】綯う おれなーなーべ:俺が縄を綯うよ。
〜な 【助】〜は、〜が 格助詞。
指定の助動詞で続く体現が隠されている可能性もある。同様に続く体言が隠されている『〜な、〜のが詰まった可能性もある。
〜な:三重・佐賀・長崎。
はななねー:花が無い。
おめなどーした:お前はどうした。
〜な 【助】〜の 格助詞。
『〜なる』意味。指定の助動詞とも考えられる。上代からある。『まなこ』の『な』と同じ。広辞苑には『(格助詞「の」の転) 体言と体言とを接続して連体修飾を表す。』とある。

『新方言』には『〜ナハズダ 「(ここが入口)なはずだ」;伊豆半島散在。』とある。
〜な:山形。
〜んな:宮城。あんだんな:お前の。おれんな:俺の。
おらなたびはどごにいったっ:俺の靴下はどこに行ったんだろう。
さいきんなこどもはけんかもしねーでだいだ:最近の子供は喧嘩もしないで駄目だ。
おめなほーではやんねのがー:お前の方ではやらないの?。
★『土』:そんぢゃ、此(こ)の側(そば)な小屋(こや)ぢやあんめえ
〜な 【助】@〜の、〜のもの、A〜分、B〜の(〜)、体言の省略形 格助詞。
古い格助詞『な』は『の』と同じ。また古い格助詞『が』の意味を『な』が受け継いだと見られる。
@・〜な:秋田・宮城。
おれぁなもあ:俺のものもあげる:秋田。
おれのなもあ:俺のものもあげる:秋田。
がっこーのなかりる:学校のものを借りる:秋田。
いっぽんごせんのなさんぼんかりる:1本五銭のものを3本借りる:秋田。
おめのなはいげー:お前のものは大きい。
(〜な) 【助】〜に 格助詞。
広辞苑に『上代東国方言で動作や作用の目標を表す。「に」の訛か。万一四「安努(アノ)―行かむと」』とある。
〜な:沖縄。『やでぃんな(きっと)アメリカな留学し』。
〜な
〜なー
【助・複】〜には 格助詞の複合語。
『な』は、上代東国方言で万葉集にもある言葉。動作や作用の目標を表す。『に』が転じたとされているが、『には』の逆行同化と理解すると解り易い。『万一四「安努(アノ)―行かむと」』。
そごなとっくにいった:そこにはとっくに言った。
そーたなーやってねーな:そんなには遣ってないね。
〜な
〜なー
【助・複】〜のは 格助詞の複合語。
連母音変形。若干伸ばす言い方をする。江戸言葉。茨城では単音のことが多い。
いすのきてなくなーたいそーのどがでえー:ウグイスが来て鳴くのは大層のどかで良い:青森。
みるなーうだでー:見るのは面倒だ:山形。
★『土』:菜っ葉(なっ)の漬けたなどうしたんべ:菜っ葉を漬けたのはどうしたんだろう。
★『土』:おっかゞ無(な)くなつて困(こま)んな汝(われ)ばかしぢゃねえんだから。
★『土』:そうえ者(も)なさうえ者よ:そういう者はそういう者よ。
★『土』:勘次(かんじ)さん等(ら)見(み)てえなな、ありゃ勘定(かんぢやう)にゃへえんねえもんだんべか;勘次さん(なんか)みたいなのは、あれは勘定に入らないものなんだろうか。
★『土』:櫛(くし)とったな此處(ここ)に居(ゐ)たよう
〜な 【助動】〜だ 終助詞。
『〜にてある、〜なり』の意味で古語の流れ。
茨城では『とんなごって』(とんだことで)が代表語。
『な』は、広辞苑には『指定の助動詞「なり」の連体形「なる」(一説、終止形「なり」)が撥音便となって、その「ん」の表記されなかった形。伝聞推定の助動詞「なり」、推定の助動詞「めり」につづく時に現れる。』の流れと考えられる。古い言葉の『〜なり』に当たると考えられる。民話等でしばしば聞かれる『〜(したそう)な』が具体例として残る。
一方『だ』は広辞苑に『(いわゆるナリ活用形容動詞の語尾とされるものは、この助動詞と認めて差支えない) 主に体言に接続する。活用語につく場合には間に「の」を挟むことが多いが、未然形・仮定形ではじかにつくことが多い。(デアルの変化した形で室町時代に生れ、関西の「じゃ」に対して関東で盛んになった。「でも」「だが」「だから」「だって」「なら」等の接続詞を派生する。連体形「な」は多く「の」「ので」「のに」へ続く。未然形は「う」に続く用法のみで、その「だろう」を一助動詞として別に扱う説もある)@事物を断定し、または解説する。A体言に連体形「な」のついた形や活用語に、「のだ」(音便「んだ」)の形で接続して、相手の未知のことを解説・教示し、また強く決意を表明する。B終止形「だ」を間投助詞のように挿入して、強調を表す。』とある。すなわち『だ』は『な』から生まれたということである。
標準語では今でも時々『だのに』が使われるのは、その名残りということになる。
茨城方言に残る標準語より使用範囲の広い『〜だら』(〜なら)は、必然性があって生まれた言葉と言える。また、『た・だ』と『な』はしばしば混同され、『そーたごど・んたごど』(そんなこと)、『あーたごど』(あんなこと)、『こったごど・こったらごど』(こんなこと)が使われるのは、『な』が『だ』に移行する過程でさらに進化したとも言える。
『聞書』には江戸で『何しやがるんだ』を『なにしやるな』と言ったある。
この例は、現代では多く関西で使われる言い方でもある。疑問の終助詞の様にも見える。が古語の『なり』の流れであることは間違いない。
〜な:静岡・香川・徳島。
〜なー:鹿児島。
どーゆーな:どういうものだい:山形。
〜なに:〜のに:山形。『〜であるに』のナリ形。にさむえなにきてくだって:こんなに寒いのに来て下さって:
なんしょんな:何をしているんだ:徳島。
みるなが:見るのか:山形。
それだのに:それなのに。
〜な
〜なー
【助動】〜ぬは、〜(し)なけれは 『〜(し)なければ』の意味。
〜なん:関西。
〜な 【助】〜な 禁止の終助詞。
はーやんなよ:もう遣るなよ。
〜な 【助】〜な 意志を示す終助詞。
ややぞんざいな言い方。
★『四十八癖』:お茶が出来たからあがれな。
はいぐやれな:早くやれな。
★『土』:今(いま)だから何時(いつ)までも保(も)つよ、さうしてお前(めえ)も力(ちから)つけろな。
〜な
□〜なー
〜なーー
〜なーーー
【助】〜な、〜なあ、〜ね、〜ねえ 詠嘆の終助詞。茨城では、尻上がりに発音されるが、標準語の二倍も三倍も長くなる場合がある。
〜なーー
〜141
〜なーーー
〜1441
現代語の『ね』は近世語の『ない、なえ』が訛ったとしか思えない。
関西では『ね』はあまり使われず、『な、なー』が趨勢を示す。関東ではややぞんざいな言い方になる。茨城ではもっぱら『な、なー』が使われる。
古い言葉の『汝(な)』(あなた、お前)が残ったとも考えられる。
〜うんた:山口。『のう、あなた』。
〜な:福島・群馬・三重・徳島。
〜ない:山形・福島・新潟・和歌山・大分・宮崎・熊本。八丈方言共通語。原型は『〜なや』
〜なし:福島。
〜なす:青森。んだなす:そうだね:青森。
〜なた:佐賀。『なあ、あなた』。
〜なや:宮城・茨城。
〜なん:愛知。
〜に:〜ね:静岡・長野。
〜にゃー:奈良。
〜にょ:奈良。
〜ねぁー:宮城・島根。
〜ねす:青森。
〜ねや:高知。
〜のい:富山。
〜のー:青森・山形・群馬・埼玉・富山・三重・京都・兵庫・奈良・広島・山口・徳島・香川・愛媛・長崎・大分 等。
〜のし:和歌山。
〜のす:青森。
〜のーた:山口。『のう、あなた』。
〜のら:奈良。
〜のれ:兵庫。
〜のわ:宮城。
〜のわい:佐賀。
〜のん:愛知。
〜のんし:茨城。
〜のんた:山口。『のう、あなた』。
なあ:ねえ。
あのな・あのなあ
なーよ:ねえ。『な』は古くは『汝』の意味だったと考えられる。
おまいな:お前なあ。
えーなあ:良いなあ。
〜な
〜なあ
【接尾】人を表す語につき、親愛の意を添える。 上代語。
せな・せなあ:長男・兄(女が、兄弟・恋人・夫などを親しんで呼ぶ称の場合は、上代語。)。
なあ 【感】感嘆・呼びかけ、または、念を押したりする意を表す語。 なぁー:東京多摩。
□△○☆ない 地震 『なゐ』。古語そのもの。転じて『なえ』となる。県下では鹿島郡に残る。この場合の『なゐ』は地面が『萎える』意味だろう。
『称呼』によると『地震(ぢしん):関東及北陸道にてぢしんといふ。西国及中国西国にてなゐといふ。日本天智天皇記:是春地震(このはるなゐふる)と有。』とある。
地震の古語は『ない・なえ』である。現代語との共通語を見出すのは難しい。唯一考えられるのは『綯う』で『よりをかけて、多くのすじをまじえ合せる。あざなう。よる。』がある。すなわち『綯う』とはねじったりひねったりすることである。この言葉を理解出来る人は、きっと縄を綯う方法を知っているはずである。
つまり、古語の『ない・なえ』は、『綯う』の名詞形で、『ねじれたりよったりする様』と言え、現代語の『成る』にも通じる言葉である。物類称呼によれば、関東では江戸時代にすでに地震と言い、西国では『なゐ』と言ったことになる。ここでは、江戸言葉が漢語を取り入れて進化し、関西は遅れていたことになる。
じない:長野。
ない:岩手・山梨・富山・京都・広島・山口・高知・愛媛・宮崎。
なえ:大分・宮崎・鹿児島。
ねー:沖縄。
ない ない:長野。
(ない) 【代】何 鹿児島。
〜ない
〜なえ
【助】〜な、〜なあ、〜ね、〜ねえ 『集覧:北』。東北を中心に使われる。
感嘆の終助詞『な・なあ』+強調の終助詞『い・え』。=『〜なえ』『〜なや、〜なーや、〜なーやー、〜なやー、なよ、なーよ、なよー、なーよー』
茨城では『〜なや・〜なやー』がメジャー。
当時は良く使われた言い回し。否定形ではない。
広辞苑には広辞苑に『ない【接尾】:(形容詞型活用) な・し(文語ク活用型活用)性質・状態を表す語に添えて、その意味を強め、形容詞をつくる。「甚だしい」の意。「うしろめた―・し」「苛(イラ)―・し」「切―・い」「はした―・い」「せわし―・い」』とある。標準語では特定の形容詞でしか使われないが、地方では形容詞を選ばず広く使われる。
『〜なや』『〜なよ』が変化したもの。現代語の『ね』が『ない』に変化したとは考えにくく、『〜なえ』を経て現代語の『ね』『ねえ』の原型の可能性を思わせる。
標準語にある『せわしない』等の言い方はもともとは『せわしなや』であったろうと思われる。
この『い』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞。『や』から『え』を経て、または『よ』から変化したとされる。感動その他の語勢を添える(広辞苑)。現代標準語では『〜かい』(軽い疑問・強い反対)に使われる『い』を除き死語になってしまった。現代でも茨城を含めて『〜かや』が使われる。今では、あまり聞かなくなったが、『嫌だい、嫌だーい』などという言い方は、主に児童語として昭和30年代のテレビで普通に使われた。最近はとんと聞かない。
『新方言』には『イカナキャナイ 「行かなければいけない」;八王子の若者がいう(住民報告1995);仙台あたりと同じ言い方』とある。これは、新しく生まれた言葉ではなく、一部にくすぶって残った言葉が復活したものと見られる。
民謡『常磐炭坑節』の囃し言葉に『は やろ やったない』がある。
現代標準語では消えてしまった言葉。
〜うんた:山口。『のう、あなた』。
〜な:群馬・三重・徳島。
〜ない:宮城・山形・福島・八丈島・新潟・静岡・和歌山・島根・大分・宮崎・熊本。原型は『〜なや・〜なよ』おかしない:可笑しい:静岡。おいでない:静岡。
〜なし:福島。
〜なす:福島。
〜なた:佐賀。『なあ、あなた』。
〜なや:宮城・茨城。
〜なん:愛知。
〜に:〜ね:静岡・長野。
〜にゃー:奈良。
〜にょ:奈良。
〜ねぁー:宮城・島根。
〜ねえ:長野。やかましねえ:やかましいねえ:長野。
〜ねや:高知。
〜のい:富山。
〜のー:青森・山形・群馬・埼玉・富山・三重・京都・兵庫・奈良・広島・山口・徳島・香川・愛媛・長崎・大分 等。
〜のし:和歌山。
〜のす:岩手。
〜のーた:山口。『のう、あなた』。
〜のら:奈良。
〜のれ:兵庫。
〜のわい:佐賀。
〜のん:愛知。
〜のんし:茨城。
〜のんす:岩手。
〜のんた:山口。『のう、あなた』。
いそしない:忙しい:青森。
さびしない:寂しいね:福島。
そーだない:そうだね:福島。
おらいがないがんな:俺は行かないからな。
そーだない:そうだな・そうだね。
そーだっない:そうだろうね。
んだっない:そうだろうね。
★『土』:あれも今じゃ大層(たえそう)ええ塩梅(あんべい)でがしてない。四人目(よったりめ)漸(やっ)とそんでも男でがすよ。:彼も今では随分いい具合でしてね。(子供は)四人目ができて(困ったが)それでもやっと男ですよ。
〜ない 【接尾】性質・状態を表す語に添えて、その意味を強め、形容詞をつくる。 広辞苑に『ない:(形容詞型活用) な・し(ク活用型活用)「甚だしい」の意。』とある。事例として『「うしろめたなし」「苛(イラ)なし」「切ない」「はしたない」「せわしない」』が挙げられている。
もともとは性質・状態を表す語に体言と体言とを接続して連体修飾を表す格助詞『な』に感動・詠嘆を示す終助詞『や』が付いた『〜なや』『ない』に変化したと考えられる。
幼気(いたいけ)ない。『いたいけだ』。
しだらない:だらしない。『しだらである』。
素敵(すてき)もない。『素敵だ』。
切(せつ)ない。『切である』。
忙(せ)わしない。『せわしげである』。
はしたない。『はしたである』
勿体(もったい)ない。『勿体である』。
(〜ない) 【助】〜(し)なよ、〜(し)なさい 他者への願望・要求・勧誘の意を表す終助詞『な』に命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞『い』が付いたもの。『い』は『や、よ』が変化したもの。元『〜なや・〜なよ』。江戸の『〜ねえ』に当たる。
〜ない:静岡・大分・宮崎。おいでない:お出でなさい:静岡。
〜ない
〜なえ
【助】否定の助詞 江戸時代は東国語で、明治以降標準語となる。本来は『〜ぬ』である。西日本では訛って『〜ん』が使われるが、一部の言葉に限って東日本でも『〜ん』が使われるが、高齢者言葉である。
『称呼』には『すべて東国にて、「見えぬ」「しらぬ」なと云、にの字を延て、「見えない」「しらない」といふ。ナイの反(かへし)なれば、是も即の字の拗音と見るべし。歌にも「松も昔の友ならなくに」とは、友ならぬにと云 の字を延べたる物歟。その他此例ををし。』とあり、『ぬ』の拗音としている。
広辞苑には、『なう:(上代東国方言。否定の助動詞「ない」の原形という。活用なは・○・なふ・なへ・なへ・○) 否定を表す。…ない。万一四「夫(セ)ろにあはなふよ」「昼解けば解けなへ紐の」』とある。江戸言葉の『ねえ』と現代語の関係は、なへ→ない→ねえ 、なへ→ねえ→ない の二つのルートが考えられるが、実際は、なへ→ない・ねえ だったのだろう。ただし、上代東国の全ての地域でこれが使われた証拠はどこにもない。
一方、言葉の発生・変化は、1本の道だけとは限らない。
東国で否定の助動詞『ぬ』が全く使われなかったかといえば、そうではなかったはずである。近世に使われた助詞の『え』(文の終りについて、その陳述の意を強める。近世、多く遊女・町娘などが用い、親しみの意を表す。)が否定の助詞『ぬ』について『〜ぬえ』が訛ったのではないか。『称呼』の『ナイの反(かへし)』とは、通常はあまりない逆音便の意味を言っているのだろう。現代語の『(終助詞)い』は、『(ヤからエを経て、あるいはヨから転じたとされる)』とある。 現代語の『〜ない』『〜ぬえ』『〜ぬい』(辞書不掲載)が転じたとしか思えない。江戸語のべらんめえ口調の『〜ねえ』こそ『〜ぬえ』の名残だろうという仮説が成り立つ。あるいは終助詞『な』に反語『なや』がついた『なや』が変化したとも考えられる。
また、この言葉には、『故』(ゆえ・え)が隠れているようにも思われる。『縁』とは『えん・え』とも読む。広辞苑に『縁(えにし)』とは『(字音の韻尾の n に母音 i を添え、「に」で表記したもの) 因縁。ゆかり。ちなみ。えん。伊勢「木の葉ふりしく―こそありけれ」』とある。現代語の『そういえば』は『そう言えば』と書くが、実は『故』『縁』も意味は同じのようである。古くからある『結い』もルーツは同じだろう。ここから、『様(よう)』もルーツは同じでは無いかといいたくなる。関西弁に『そないな』(そんな)がある。まさにそのままの言葉である。
『どないしてんねん・どないしてんねや。』がある。『どうしたの、どのような理由でしたの』の意味である。言い換えれば、造語で『どんなようにしてしまったのや、どのようにしてるんだよ、どのようにしたんだや、どのようにしたんだい』となる。『な』『ね』『だ』『で』は音通した言葉ということになる。関西言葉も関東言葉も実は当たり前だが、ルーツは同じなのである。
『ない』は、広辞苑に『(活用は形容詞型) 動詞、動詞型活用の助動詞の未然形に付いて否定を表す。近世上方語には無く、江戸など東日本に多いが、終止形の例が多く活用の発達は遅い。仮定条件には「ないければ」が多く用いられた。』とある。
ここで、禁止の『な』と『ぬ』の関係を見る必要がある。関西でも禁止の命令形は『な』を使う。東国語も同じである。終止形が問題である。この議論は今後のさらなる調査が必要と思われるが、高所に立って見れば関西も関東も大きな差異は無いとも言える。
気になるのは、現代の標準語の存在である。日本語のルーツは、歴史を見れば関西方言であることは明らかである。現代標準語は、参勤交代制のもと、諸国の言葉が入り混じってできた言葉で、明治の関東の狭い地域で使われた進化した=訛った言葉でもある。関東周辺域に西国方言とされる数多くの言葉がある事実からもそれを立証できる。
また『な』は広辞苑に『【副】@動詞の連用形(カ変・サ変では古い命令形の「こ」「せ」)の上につけて禁止の意を表す。…するな。A「―…そ」の形で動詞の連用形(カ変・サ変は古い命令形の「こ」「せ」)を挟んで、相手に懇願してその行動を制する意を表す。禁止の終助詞「な」よりも意味が婉曲である。どうか…しないでおくれ。どうか…してくださるな。万二「放ち鳥荒び―行きそ君まさずとも」。源夕顔「あが君、生きいで給へ。いみじき目―見せ給ひそ」』とある。
また『な』には状態を示す意味もある。『〜にてある』に由来する。『し』は、形容詞を形成する接尾語だから、続けば肯定形のはずである。ところが日本語の『なし』には今でも不思議な表現が残っている。例えば『せわしい』『せわしない』である。肯定・否定が一緒なのである。これで本当にコミュニケーションができるのでしょうか。
関西では、『せなあかんでー』などと言いながら、一方では『しはしない』を『せえへん』などと言う。サ行音がハ行音に変わるのは東北の西部にもある。
〜なー:静岡。なにもしらなー:何も知らない:静岡。
〜なえ:山形・福島・静岡。しらなえ:知らない。
〜なえし:山形。丁寧語。『〜ない候』。よまなえし:読みません。
〜ない
〜ないー
【助】〜の家 『な』は現代語の格助詞『の』に当たる。
こーちゃんない:こうちゃんの家。
ないがった 【複】無かった
〜ないがっちった
〜ないがっちゃった
【複】〜(し)ないでしまった 『〜なくありてしまった』の意味。
(ないがね) 不具者 鹿児島。
(ないぎさー) 【複】出来そう 沖縄。
ないくさ 苗代に生えた雑草
ないくさとり 苗代の雑草取り
〜ないげれ
〜ないげれば
〜ないけれ
〜ないければ
【複】〜なければ 現代では消えてしまった表現。清音形は江戸時代の東国語。『ない』は、広辞苑には『【助動】(活用は形容詞型) 動詞、動詞型活用の助動詞の未然形に付いて否定を表す。近世上方語には無く、江戸など東日本に多いが、終止形の例が多く活用の発達は遅い。仮定条件には「ないければ」が多く用いられた。おあん物語「くびもこはいものではあらない」。浄、宵庚申「急(セ)くことはあらない」(浜松の武士の詞)。梅暦「いふ事を聞くのは否、聞ないければ、あの通りいぢめて」。膝栗毛六「何だかかだか、さつぱり分らなくなつて」。人、春色恋廼染分解「何も吾儕がしなければならないといふ訳でもありませんが」』とある。
確かに当時の先生の中には『あらない』(あらぬ)を連発する人がいた。『せない』(せぬ)という言葉も聞こえた。
『ないければ』は訛って『なげれ・なげれば・ねげれ・ねげれば・ねーげれ・ねーげれば』が良く使われた。
江戸の古い言葉が茨城には脈々と受け継がれている。
(ないけん) 具合 神奈川。
(ないこ) 相子 神奈川。『御相子』が訛ったか。
(ないごっ) 何事 鹿児島。
(ないごて・なんごて) 【複】何事に 鹿児島。意味は明治時代の訳なので、現代では、『どうして』すなわち『何事にて』の意味と思われる。
(ないざ・ないだ) 渚(なぎさ)、海岸 静岡。
『渚』は万葉の時代から変わらない言葉。『海(う)な境』の意味か。
『ないだ』は後の『灘(なだ)』につながるのかもしれない。
ないじゃぐる 【動】泣きじゃくる 清音の名詞形は辞書に掲載されている。イ音便。
ないしょ
ないしょう
@▲居間で囲炉裏がある部屋、寝室に使う部屋、納戸、A土間に面している部屋、広間 『集覧:久』。
古い標準語の『内緒・内所(ないしょ)』『内緒・内証(ないしょう)』には、@表向きでない場所。奥向きのところ。特に、台所。勝手。A遊女屋の主人。また、その居間。(大辞林)とある。
ないしょ:台所:宮城・静岡・徳島・大分。
ないしろ 苗代
(ないぜん) 【複】無いぜ、無いぞ 静岡。元『無いぞや・無いぞよ』か。
(ないたけ) 【副】なるべく、なるたけ 鹿児島。
ないだってほいだって
ないだってほえだって
ないでもほいでも
ないでもほえでも
ないだりほいだりしたって
ないだりほえだりしたって
【複】いくら泣いても、何をどうしても、絶対 同義語の繰り返し。『泣いても吠えても』。
(ないちゃー) 内地(本土)の人、沖縄以外の日本人 沖縄。
〜ないぢゃった
〜ないちゃった
〜ないちった
〜ないんちった
〜ないんちゃった
【複・助】〜(し)なかった、〜(し)ないで終わった、〜(するのを)忘れてしまった さらに『〜ないん』形もある。
古語の感覚からは『〜ずにてありたり・〜ぬにてありたり。』が浮かぶ。『ちゃった』の語源を思わせる神奈川方言に『〜(し)てあった』がある。『〜てあった』は間違いなく完了表現であり、今でも使われる言い方である。
この方言の原型は『〜ないであった』と考えられる。
〜ないちゃった:福島。
〜ないんちゃった:福島。
ないちゃった:行かなかった。
〜ないちゃっちゃった
〜ないちゃっちった
〜ないちゃっちゃっちゃ
〜ないちゃっちっちゃ
〜ないっちゃった
【複・助】〜しないで終わった、〜するのを忘れてしまった さらに『〜ないん』形もある。
最初の『ちゃ』は、格助詞『て』が『ちぇ』を経て『ちゃ』に変化したもの。2番目の『ちゃ』は『しまう』意味の『ちゃう』の転。最後の『ちゃ』は『〜た』の転と考えられる。ただし頻繁に使われたものではない。
ないっす 【複】無いです 『で』抜き言葉。今では大学の体育会系言葉。しかし、実は古い言葉でもある。
〜ないでおわった
〜ないでしまった
【複・助】〜しないでしまった、〜するのを忘れてしまった 茨城では本来『〜ないちゃった・〜ないちった・〜ねーちゃった・〜ねーちった』
『新方言』には『〜ナイデシマッタ:(昨日は)〜ないで終わった。東北・北関東(1996)。』とある。中央から入った新語で当該地では方言として扱われているものと考えられる。
(ないでしょまきさたなふ) 【複】なんですきなの 沖縄。
ないでる 【複】@泣いている、鳴いている、A萎えてる @・ねぁーとる:愛知。
〜(し)ないでる 【複】〜(し)ないでいる 動詞の未然形につく。
ないどご 苗床 稲の苗床のほか、屋敷内に作った野菜類のための手作りの苗床も指す。多くは3月頃に作った。巾1間、長さは任意で、まず周辺に半間毎に杭を打ち高さ60cm内外に揃え、竹の胴縁を二重に渡してから頂部に3寸巾の小巾板の貫を二重に廻した後、その間に藁をしっかり詰め込んで縄で胴縁にしっかり固定する。仮設の箱のようなものを作る。
そこに『やま』でさらって来た『まづざら』を何層かに分けてたっぷりと水を吸わせながら何度も踏みつける。最後に鶏糞と豚や牛の肥えを敷くと早速発酵が始まって湯気が出て来る。そこに敷き藁を敷き、その上に去年から寝かせておいた堆肥を7〜8cm程度敷いた後、仕上げの客土として篩いにかけた堆肥に必要な科学肥料混ぜて4〜5cm程度の厚みに敷いて完成する。ほぼ丸1日の作業である。
霜が心配される期間は、割竹を30cmピッチ程度にアーチ型に渡しそれにビニールシートを被せた。
最初に敷いた『まづざら』は、初夏には堆肥となり、次の年の苗床の客土にも利用する。今思えば長い間に考え出された持続可能なリサイクルシステムであった。
ないとり 苗取り
〜ないな 【助】〜(する)なよな、〜(するんじゃ)ないぞ 〜ないな:群馬。
はーやんないな:もうしないよな。
ないない 【名・副】@内輪、A内心 『内内』。
@・なぁーなー:東京多摩。
ないない 無いこと 幼児語。
ないはごび 苗運び
ないないちゃんちゃん 【感】おしまい 幼児語。
ないばわら
ないわら
稲を束ねる縄 『苗把藁』の意味。
ないびらぎ 田植えの初日 『苗開き』。
ないぶぢ 田植えの際、苗の束を所定の場所に投げて配置すること、またはその役 『苗打ち』。
『打つ』には『投げる』の意味がある。
ないぼろ
ないほろ
カタツムリ 『集覧:稲』。
カタツムリの異名は、『マイマイ、マイマイツブリ、マイマイツブラ、マイマイツブロ』がある。『マイマイツブロ』が訛った『まいぼろ』がさらに訛ったと思われる。
ないぼろ:茨城・栃木。
ないま 苗代 広辞苑に『苗間:(関東・中部地方で) 苗代(なわしろ)。』とある。
なえば:神奈川。
なえま:神奈川・静岡。
なま:千葉。
なーま:群馬・千葉。
(ないません) 【複】ありません 静岡。『ない申さん』か。
〜なぃや
〜ないや
【助】@〜(し)ないよ、A〜(する)なよ 古い言い回し。
おらいがねがんなぃや:俺は行かないからな。
〜なぃや
〜なぃやー
〜ないや
【助】〜な、〜なあ、〜ねえ 『〜なや』『〜ないや』。もともと標準語の『な』に当たる助詞に強調を示す『や』がついた『なや』が訛った『〜ない』に再度『や』がついた言葉か、単に『なや』の発音上の表現の可能性がある。『〜なよや』の意味ともとれる。
(ないもせんに) 【複】ありもしないのに 静岡。解説では@の意味。『ない申さんに』か。
(ないら) 骨が柔らかく直立できない者 佐渡島。
広辞苑に『内羅:馬の内臓の病。転じて猫などにもいう。日葡「ナイラク(内羅苦)」。柳樽八「読めまいと―薬に馬を書き」』とある。
ないる 【動】萎える 『萎える』には『@気力・体力がぬけ、ぐったりする。また、手足がきかなくなる。A衣服などが長く着たためにくたくたになる。Bしおれる。しなびる。』の意味がある。氷が解ける場合等にも使われる。
(〜ないん) 【複】〜なさいまし 静岡。元『〜なや・〜なよ』か。
(ないん) 【複】出来る 沖縄。
〜ないんちゃった
〜ないんちゃっちゃ
〜ないんちった
【複・助】〜しないでしまった、〜するのを忘れてしまった
(なえ) 地震 『なえ』は漢語と思われ、さらに古くは『ない』で、これが漢語にたまたま近い和語だったのではないかと思われる。
〜なえ 【助】〜な、〜なあ 『〜なや』『〜なよ』が変化したもの。
〜なえ 【助】〜ねえ 実質的に前項と同じ言葉。現代語のルーツと思われる言葉。
(なえ 【動】足が不自由で正常な歩行ができない。びっこをひく。 沖縄。古語『蹇ぐ』。
なえしろ 苗代 標準語では普通は『なわしろ』と言う。広辞苑には『(ナハはナヘの古形、シロは四方を限った区域) 水稲の種を蒔いて苗を仕立てるところ。水苗代・陸苗代および両者を折衷した折衷苗代などがある。なえしろ。』とある。
なえぶぢ 田植えの際苗を各所に配ること 『苗打ち』の意味。日本語の『打つ』には『投げる』の意味がある。
なえま 苗代 『苗間』。
広辞苑に『なえま:(関東・中部地方で) 苗代(なわしろ)。』とある。
なえば:神奈川。
なえま:神奈川。
なま:千葉。
なーま:群馬・千葉。
なお 【副】なおさら 『猶・尚』。
なおがし
なおかし
【副】なおさら 『猶かし』。清音なら古語。当時普通に使っていた言葉。『なおさら』の『なお』と『さぞかし』の『かし』。
なおか:新潟・長野。
なおかだ
なおっかだ
【形動】なおさら、さらに なおかと:三重。
なおさら
なおさらかだ
【形動】なおさら、さらに 『なおさら』と『なおかだ』がミックスしたような言葉。
なおしも 【副】なおさら、なおのこと やや古い標準語。
△なおす 【動】@改める、A故障を直す、病気を治す、B正しくする、Cもとに戻す、D整理する、片付ける 標準語の本来の意味は、『正常な状態にする』『変更する』他かなり広い意味をもつが、最近は意味が限定して使われている。標準語では『正しくする、整理する、もとに戻す』意味では使われなくなっている。
方言地図によると、『片付ける』意味で使うのは、近畿・中国・九州などで、関東圏で使うのは、茨城・千葉・神奈川の一部に限られる。
B・のーす:静岡。
D・なえす:始末する・処置する:神奈川。
なおす:千葉・神奈川・静岡・近畿・中国・九州・鹿児島。
なおすら 【副】なおさら
なおのかだ
なおのこど
【副】なおさら、なおのこと、特に 文語的な表現。標準語の『尚の事(なおのこと)』も最近あまり耳にしない。
なおと:神奈川。
なーおび @葬式の時六道役が締める縄の帯、A井戸攫いのとき締める縄帯 火葬になってから廃れる。『縄帯』。
なーおめ 【感】なあお前
◎なおる 【動】(家畜等)が元気になる、丈夫になる 『直る・治る』。広辞苑には『@もとのように正しく(よく)なる。望ましい状態にもどるA(境遇・地位・身分などが) もと通りになる。改まってもとのようになる。B改まって正しく(よく)なる。つくろい改められる。C故障が除かれ、正しく機能する。D(「治る」とも書く) 病気や怪我がよくなる。E正しくすわる。また、しかるべき位置に着座する。Fもとの姿勢にもどる。G仮の地位から正式の地位につく。H乗物・劇場などで上級の席に移る。I(斎宮の忌詞) 死ぬ。』とある。このうち現代口語で使われるのはCDぐらいだろう。Fは学校等の整列の際使われる『なおれ』にしか残っていない。
なおる:兄が亡くなり弟が兄嫁と結婚する:群馬。
なおる:引越しする:長崎・宮崎・鹿児島。
(なおる) 【動】殴る 長野。他に『くらせる・こく・どーづく・どやす・はきすえる』とも言う。
なか 第二子 『中子』の意味。八丈島では次女を言う。
〜なが
〜なか
【接尾】名詞や形容詞につけて形容動詞に変える 標準語には無い表現。ここでは、接尾語としたが、『な』は語幹で、標準語にもある『か』(【接尾】状態を表す体言を形づくる。「さだ―」「ひそ―」「ゆた―」)である可能性もある。また『生半』(なまなか)ように中途半端な意味の『半』の可能性もある。
せわなか:面倒な様。
じゃまなか:邪魔な様。
〜なが 【連語】〜のものか? 『〜のか』。
これおめなが:これはお前のものか?。
〜な 【助】】@〜の、〜のもの、A〜分、B〜の(〜)、体言の省略形 『〜のの転。二重の格表現。
ながい
ながいー
【複】仲いい ながえ:青森。
〜な
〜ないー
【助】〜の家 二重の格表現。
さっしゃんないー:寿さんの家。
ながいび
なかいび
ながえび
なかえび
中指 なかいび:広域方言。八丈島。
なかえび:関東・長野。新潟に顕著。
ながいーよ
ながいーよ
【慣】家の中にどうぞ 『(家の)中が良いですよ』が直訳。
《俺とお前は仲いいんだからながいいよ?!?》。
いもん 長屋門
ながうど
なかうど
仲人 旧仮名遣いをそのまま読んだのではなく、古語の『なかびと』の流れと考えられる。現代では『なこうど』と発音する。
ながうない
なかうない
稲田の二番耕起、2番うない 『中耕』。
(なかえ) 次の間 鹿児島。
『中居・仲居』。
〜な
〜なえー
【助】〜の家 二重の格表現。
おもで 瓜実顔 おもて:神奈川。
がぎ 仕事着の一種 広辞苑には『長着:足首のあたりまである丈の長い着物。』とある。
がぎ:丈の長い男用の仕事着:神奈川。
ぐなる 【複】横になる まる:青森。
くなる:福島。
(なかげんかん) 玄関に入って式台から上がったところの部屋 神奈川。客間の意味と考えられる。これは、方言ではなく生活感覚を表す民族語であろう。
(なさー・なっさー) 他人の家でいつまでも居残る人 神奈川。『長尻』(ながじり)。
(なし) 流し、流し台 当時の流しは、いわゆるキッチンセットが開発される以前で、人研ぎ(人造石:テラゾー/モルタルに豆粒大の大理石等を入れて硬め磨き出したもの)の流しを使っていた。概ね巾90cm、奥行き60cm、深さ20cm程度の簡易なものだった。我が家では貝殻が入っていてきらきら光ったものだった。
流しは、今では『流し台』にかろうじて残るが台所を意味するキッチンが、流し台の別称にもなって、今では死語になりつつある。
:神奈川。
:青森。
台所 現代標準語では『流し台』を指す。台所は『流し元』と言った。
(なし) 梅雨 辞書掲載語。『流し』と書く。風が吹き雨をもたらす気象現象を『流し』という言葉に込めたと思われる。『し』と『せ』の違いは、日本語の動詞の成立過程の中で、上一段活用と下一段活用の課程が残っていると思われ、興味深い。
また、現代語の『梅雨』は、主に江戸を中心とした関東語であったのではないかと思わせる。
高知・大分・長崎・宮崎・鹿児島・沖縄。
さー:長く降る雨:静岡。
:夏の南寄りの風:山形・千葉・新潟・静岡・伊豆諸島。
:五月ごろ吹く南風:千葉。
:西風:静岡。
:西南の風:秋田・新潟・千葉・八丈島・静岡・伊豆諸島。辞書掲載語。
ながせ:四国全域・大分・福岡・佐賀・長崎・熊本。
ながせ:夏に吹く強い風:岡山。
せ・ぼんな:土用の頃降り続く雨:愛知。
:長雨のように降る雨:滋賀。
:夏の南寄りの風:山形・千葉・新潟・静岡・伊豆諸島。
:西風:静岡。
:西南の風:秋田・新潟・千葉・八丈島。
(〜なし) 【複】〜続け 静岡。兵隊が通りだ:兵隊が通り続けだ。
広辞苑に『ながし【流し】:能楽などの囃子(ハヤシ)で、大鼓・小鼓・太鼓が一種類の打音を連続して打ち流すこと。』とある。


しか
しっか
流しのある場所に近いところ、流しのある側 『が』『か』は『処』。
じがん 長時間 『長い時間』が詰まったと思われる。
じげ
◆■じけ
しけ
長雨 『長時化』の意味。
じげ:梅雨:千葉。
じけ:千葉。
なかじけ:東京多摩。
しけ:山形・宮城・静岡・熊本。
しっ
しっ
しばだ

流しのある場所、台所 『流し端』の意味。
じばん 長襦袢(ながじゅばん)、和服用の下着で長いもの 『襦袢』は当て字でもともとは『じばん』と発音し、ポルトガル語と言う。和服用の下着で長いもの。茨城弁が古い発音を残している一つの例。
じばん:埼玉。
◆■▲しま
ひま
いつまでも長居するひと、長尻、長腰 『集覧:北』。
『しま』は『暇』(時間を示す)のことで『時間が長い』意味。
ずぼん ズボン 『半ズボン』(対)。『ズボン』はもともと外来語でフランス語やアラビア語の影響という。
ながだ 不仲 『仲違い』。
ながだぢ 双方の間に立って事を取り持つこと。 『仲立・媒』。
だな
△☆なたな
だん
たん
野菜包丁 『集覧:猿』。
『菜刀』。
たな:近畿・福井・香川・徳島。
ながち 仲たがい 『仲違い』。
ながちけ 長雨 『長時化』の意味。
なかつさい
なかっさい
主に次男(第二子)。 『中つ兄(せ)』の意味。長音化と逆音便。
なかっさい:静岡:中つ子・仲子。
なかっしゃー:山梨。
なかっせ:山梨。
ちり 長居する人 『長っ尻』。『長尻』(ながじり)の転。
さー:神奈川。
っさー:神奈川。
っちり:青森・秋田・群馬・東京・山梨。
っつぃり:秋田。
ながっさまり 板ばさみ 『中挟まり』の意味。
ょろい 【形】ひょろ長い っちょろい:静岡。
なんっちょい:静岡。
ながっべ
ながっ
なかっ
ながっへ
ながへ
【複】無いだろう 『あんめ』。原型は『無かるべし』。

ーり
長湯 『長入り』の意味。
【形】長い
そい 【形】長細い やや古い標準語。
らしー
ろしー
【形】長細い 『集覧:新』。
(〜なつら) 【助】〜(し)ながら 静岡。『ながら』と『がてら』が合わさったか。
(なてん) 丈の長い半纏 神奈川。『なばんてん』とも言う。
ながど
ながと
中戸、部屋と部屋の間の戸 『なかど』なら建築用語。障子、板戸等があった。
どまり 長く滞在すること 現代なら『長期滞在』『長逗留』。
ながなが
ながながー
なーがなが
なーがなーが
【副】なかなか
びづ 衣服を入れる大型の櫃 『長櫃』。竹で編んだもので蓋がついていた。
ひばぢ 長火鉢 当時はどこの家にもあった木製の火鉢。客間に置いた。灰皿もついていた。
おぎろ:山形。
ぶしょろ:山形。
ひま 長時間、長居
ひょろい 【形】ひょろ長い っちょろい:静岡。
ひょろい:宮城。
べろい:岩手。
がぺろい:宮城。
なんっちょい:静岡。
ほそい 【形】長細い 広辞苑には無く大辞林に掲載。
んぼそい:静岡。
ながま
△▽なかま
@仲間、A友達、B親戚 『親戚』の意味で使われたのは30年代。『同類』の意味の拡大使用。
@・ながば:宮城。
なかば:福島。
B・なかま:茨城・千葉・埼玉。
(ながま) 客間 宮城。
広辞苑には『中の間:民家で、土間から上がったすぐの部屋。』とある。
ながまっずれ
ながまはずれ
仲間外れ なかまっずれ:神奈川。
ながまはじぎ
ながまはじげ
ながまはずし
仲間外れ、爪はじき 『爪はじき』と『仲間はずれ』の合成語のような訛。
なかまっじき:埼玉。
なかまをぬく:仲間はずれにする:神奈川。
ながみ 中身
▽なむし ヘビ 『長虫』。忌み言葉。
むし:埼玉・東京・静岡。
(なむじり) 仕事着 宮城。
もぢ 長持ち 『へや』の押し入れに長持ちが必ず置いてあった。当時は、嫁入りの際の長持ちの数が話題になった。今や博物館にしかない言葉。
ながやど 花嫁が嫁入りする際途中で休憩する家 広辞苑に『中宿:婚礼のときに花嫁が婚家に入る前、いったん入って休息する家。』とある。
ちゅーやど:神奈川。

やもん
長屋門 住居や物置を兼ねた長い家屋で屋敷の入口にある建物。多く、庄屋等の実力者の家にある。
(なかゆくい) 休憩、中休み 沖縄。『中憩い』の意味か。
(なかよー) 西南 静岡。漁師言葉。
ながよしこ
ながよしっこ
仲良し 児童語。
みんなながよしこにすっなー:みんな、仲良しにしようね。
はー、いまがらながよしっこだ:もう、今から仲良しだね。
〜なよた
〜なよーた
〜なよな
〜なよーな
【複】〜の様な
〜なよに
〜なよーに
【複】〜の様に おめなよにゃでぎね:お前のようには出来ない。
ながよしこよし 仲良し 『仲好し小好し』。標準語にもかつてはこのような強調の語呂合わせ言葉があった。
@長い丸太、Aモウソウダケの竿 『長い』『柄』か。
@・なる:長野・静岡・岐阜。
A・:長い竿:青森・秋田。
ながら
なから
【副】およそ、だいたい、ほとんど 古い標準語の『半ら』(なから)は『途中で、半分で、半ば』の意味。
ちゅーらに:簡単に・ちょっとには:山梨。
なから:なかなか・そこそこ:東京。
なから:静岡。
なから:途中で:高知・長崎・鹿児島。
なからで:そろそろ:栃木。
なから:埼玉・群馬・新潟・長野。
なから:だいたい:埼玉・山梨。
なからかんなり:かなり良い様:静岡。
ながらなまじ:中途半端・いい加減:山形。
なからなまじ:中途半端・いい加減:岩手・秋田。
なっから:ほとんど:埼玉。
〜ながら 【助】〜だから 古い言葉の『〜なるから』の転。この場合の『な』は広辞苑に『指定の助動詞「なり」の連体形「なる」(一説、終止形「なり」)が撥音便となって、その「ん」の表記されなかった形。伝聞推定の助動詞「なり」、推定の助動詞「めり」につづく時に現れる。』の流れと考えられる。
んながらやなんだど:だから嫌なんだ。
〜な 【助】〜ながら 『〜ながらにして』の短縮形か。『共に。あわせて。』の意味。
〜な:〜のついでに・しがけに:神奈川。いきならよってんべー
〜ながらに:八丈島。。
【動】@自発形、A受動形、B可能形 『投げる』の特殊語法。
@『投げる』の自発形。
こーな:中腰になる:長野。
えんーになってんのはなんだっ:縁側に置いてあるのは何だろう。
A・:栃木。
だれがになった:誰かに投げられた。
B★おめになっか:お前に投げられるか。
だれもなんめ:誰も投げられないだろう。
れかんじょー
れかんちょー
妊婦や産褥で亡くなった場合の供養方法 『流れ灌頂』。一般には『流れかんじょう』と発音する。
『川施餓鬼』とも言うが、その場合は一般に水死者の供養を指す。妊婦や産褥で亡くなった人は成仏しにくいと言われるため行なわれる。4本の竹と卒塔婆を人通りの多い小川に立て経文を書いた赤布を張り渡す。そばに柄杓を置いておき、遺族が朝夕水をかけるほか、通行人にもかけてもらう。そのようにして、赤い色が褪せたり、穴が開いたり、経文の文字が消えれば成仏できたとされる。
全国的にある慣習だが、無くなってしまったところが多いと聞く。
かーかんじょー・かわかんじょー・かわざらし:神奈川。
れかんじょー:神奈川。
れかんちょー:群馬・神奈川。
ながろー 【複】無いだろう
ながんべ
ながんべあ
ながんべや
【複】無いだろう 古い言い方。原型は『無かるべし』。
なかべー:青森。
ながんべーあ・ながんべあら:山形。
(な 谷、崖 静岡。
広辞苑に『なぎ【薙】:山で、薙ぎ落したように崩れた地点。』。
なぎげーる
なぎーる
なぎけーる
なぎっかいる
なぎっけーる
【動】ひどく泣く。泣き入る。 『泣き返る』。
なぎすする 【動】泣きじゃくる
なぎだぐなる 【複】泣きたくなる なぐだぐなる:宮城。
なぎつめる
なぎっつめる
【動】泣きじゃくる、泣き尽す なきつめたでる:弱音を吐く:岩手。
なぎづら
なぎっつら
泣き顔、泣き面 なきんづら:神奈川・静岡。
(ななたそで) 巻き袖の袖先が長刀の刃のような形のもの 神奈川。
なぎぬぐ
なきぬく
【動】泣きじゃくる、散々泣き続ける 『泣き抜く』意味。『なぎになぎぬぐ』とも言う。
★『土』:俺(お)らもこんで嚊(かかあ)に死(し)なれた當座(たうざ)にゃ此(こ)れも役(やく)に立(た)たねえから泣(な)きぬいたよ
なぎびち
なきびちょ
なぎぶぢ
なきぶち
泣き虫、泣きべそ 『集覧:多』。
『泣き味噌』。
なきびちょ:宮城・茨城。
なきびっちょ:宮城。
なきぶー:すすり泣き:静岡。
なきべちょかく:泣きべそをかく:青森。
なきんび:神奈川。
なげっつ:青森。
なきぶぢけむじ
なぎぶぢけむし
なきぶちけむし
泣き虫毛虫 泣き虫を罵倒する言葉
なぎぶぢやろ
なきぶちやろー
泣き虫野郎
なぎべそ 泣き虫、泣きべそ なきべす:鹿児島。
なけべす:鹿児島。
なけべっそ:鹿児島。
なぎべそかぎ 泣き虫
なぎべそひっかぐ 【動】泣きべそをかく 茨城弁らしい強調表現。
なぎみそ
なぎめそ
泣き虫、泣きべそ 古い標準語の『泣き味噌』。
なきったれ:山梨。
なきみし:山梨。
なきみそ:静岡。
なきめそ:福島。
なきんび:神奈川。
なきんびー:神奈川。
なきんびんび:神奈川。
なきんべー:神奈川・山梨。
なぎみる
なぎをみる
【複】自分の行為の結果、泣くような目にあう。悲しい目にあう。 『泣きを見る』。
なきをみせる:甚だしく苦痛な思いをさせる:東京。
おめそーたごどやったらなぎみっと:お前はそんなことをしたら、酷い眼に合うぞ。
海岸、海辺 『海際』(うなぎわ)または『波際』の意味。
(なきゃー) 中の間、囲炉裏のある部屋 静岡。
やむ 【動】凪ぐ 『凪ぎ止む』意味。
やむ:新潟。
なぎりぼーちょー 野菜用の包丁 『菜切り庖丁』。
【動】凪ぐ
れる 【動】押し流される 勝田市の方言。『薙ぐ』(横ざまに払って切る、また、倒す。)の転。
れる:あふれる:埼玉。
れる:気がおさまる・気が落ち着く:群馬。『和ぐ・凪ぐ』の擬似自動詞形か。
なぐ
なーぐ
なーく
【動】泣く
なぐ
なく
【動】溶ける 『茨城のことば』にある言葉。下記の用例を見ると、『萎える・萎ゆ』(気力・体力がぬけ、ぐったりする。また、手足がきかなくなる。)なのではあるまいか。
★塩がないて使いもんになんねー。
★アイスクリームがないちゃった
なくこわし ヒルガオ 『集覧:無記載』。
『なべこわし』が訛ったもの。誤記の可能性もある。ヒルガオは別名『なべわり』といわれ、家の中にヒルガオを持ち込むと鍋が壊れるという言い伝えがある。標準語の『鍋破(なべわり)』は、ビャクブ科の多年草で有毒なのでいましめとしたのだろう。
なぐさる
なくさる
【動】無くなる、死なれる 『無いようにされる』意味。
なくせる:無くす:静岡。
なくされ
なくさん
【慣】出て行け、立ち去れ、行ってしまえ 『集覧:久』。
『亡くなれ・無くなれ』の意味。茨城方言集覧では『生きて帰ることなかれの意』とある。
なくさん:宮城・茨城。
なくっしゃった 【複】無くしちゃった 標準口語。
〜なぐっていで
〜なくてーで
【複】〜ないでいて 〜なくてえて:〜でない状態で :山梨。
なぐなす 【動】【古】無くす 『無くなす』。清音なら古い標準語。
なくなす:東京。
せーふなぐなっしゃった:財布を無くしちゃった。
なぐなる 【動】無くなる、亡くなる なぐなる:宮城。
なぐす
なーぐす
【動】無くす、亡くす、失う、落す なくせる:静岡。
なぐする
なーぐする
【動】無くす、亡くす、無いようにする 清音・単音なら標準語。

なん
難くせ 『集覧:新』。
集覧では『難しいこと』とある。
(なた) 【副】沢山 静岡。
〜(し)なぐちゃった
〜(し)なくちゃった
【助】〜しないでしまった、〜するのを忘れてしまった あでなかがなくちゃってどどがながった:宛名を書かないでしまって届かなかった。
〜なくっちゃ
〜なくっちゃあ
【助動】〜なくては 『集覧:新』。
〜(し)なぐどいー
〜(し)なくといー
【複】〜(し)ないほうが良い 『〜(し)ないと良い』意味。
やんなくといーよ:やらなくても良いよ・やらない方が良いよ。
なぐなす 【動】無くなる 『無くなす・亡くなす』。『無くする』と同じ語法。
なくなす:東京。
〜なぐば 【助】〜しなければ 濁音化。
なーくびる 【動】縄で縛る 『なーでくびる』。『括る(くびる)』は古い標準語。
なぐほど
なーぐほど
【副】泣くほど、心から



波、うねり、大波 『集覧:無記載』。
広辞苑には『波座(なぐら):(宮城・茨城・静岡・和歌山県で) 波のうねり。また、沖の高波。』とある。ここまで広域だと方言とは言いがたい。
:魚の群れ:神奈川。
:宮城・福島・神奈川・静岡・和歌山。
:福島・神奈川。
なぶら:神奈川。
らがす 【動】殴る らかす:静岡。
らかす:ぞんざいに扱う:静岡。
(なられる) 【動】飲食する 神奈川。
りし 大雑把にする仕事 りし:神奈川。
【動】投げやりに事をする 『集覧:新』。
『殴る』。投げやりにする意味の『殴る』は、最近は『書き殴る』等の連語でしか使われない。
『なぐる』『なぐれる』には古くは『@横ざまにそれる。A売れ残る。Bおちぶれる。C身を持ちくずす。』の意味があった。投げやりの意味はそれに由来するのだろう。『凪ぐ』との関係もあるのかもしれない。
なぐっ:投げる:鹿児島。
りし:神奈川。
:早く食べる:神奈川。
:大胆に歩く:神奈川。
:投げ落とす:神奈川。
:他の人の畑をかまわずに通る:神奈川。
(なくる) 【動】成す 鹿児島。
(なれ) 名残 静岡。
広辞苑に『:使い終って不用になったもの。売れ残り。なぐれもの。』とある。
〜なぐれ
〜なぐれば
【助】〜しなければ おめやんなぐれ:お前が遣らないと。
なぐれる
なくれる
【動】無くなる 『集覧:久』。
『なぐねる』がさらに訛ったもの。
無くなる→なくねるなくれる
(なーくんちゅ) 宮古の人 沖縄。
〜なげ
〜なけ
【助】〜だけ たったそんなげが:たったそれだけか。
〜な
〜な
〜な
【助】〜の家 『〜な(〜の)が家』が訛ったもの。
〜なげ
〜なげば
【助】〜(し)なければ、〜(し)なくては、〜(し)なくちゃ 古語の流れ。『無け』は、形容詞ナシの古い未然形・已然形。=『〜ねげ、〜ねげれ』
〜なかん:岐阜・愛知。原型は『〜なあかん』か。
〜なんば:山形。
やんなげなんね:やらなければいけない。★やんなげればやんねーほどばがになっちまーど:やらなければやなないほど馬鹿になっちゃうよ。
やんなげばだいだ:やらないとだめだ。
いがなげばおごられっと:行かないと怒られるよ。
いがなげばいがなくともいーど:行かないなら行かなくても良いよ。

【形】長い なげ:鹿児島。
:青森。
:青森・福島・神奈川・山梨。俗語。江戸言葉。
なんか:鹿児島。『ながか』
なん:静岡。
なん:宮城。
ごむ 【動】投げ込む なんくむ:鹿児島。
なんこむ:鹿児島。
〜なげなく〜 【助】〜(し)なければ やんなげなくなんね:遣らなければならない。
なげなし
なけなし
【連体】あるかないかわからないぐらいであること。ほとんど無いこと。 『集覧:新』。
やる 【動】放って置く、うっちゃらかす 『投げ遣る』。名詞形は使うが動詞形は最近めったに聞かない。
【動】@放り出す、A諦める、B捨てる 全国的に『捨てる』意味で『投げる』を使う方言が聞かれるが、実は『放り出す』意味であって方言とは言いがたい。
@・:放り出す:宮城・岩手・福島。
B・:捨てる:北海道・青森・岩手・宮城・福島。
【動】おだやかになる。風・波が静まる。 『和ぐ・凪ぐ』。
『俗語』によれば江戸時代の俗語でもある。
:死ぬ:神奈川。
〜なげれ
〜なげれば
【複】〜(し)なければ、〜(し)なくては、〜(し)なくちゃ 〜なげれば:山形。
いがなげれよ:行かないとね(行きなさい)。
やんなげれだいだ:遣らないとらないとだめだ。
おめやんなげれーだいやんだー:お前が遣らないなら誰が遣るんだい。
〜なげれなんね
〜なげればなんねー
【複】〜(し)なければならない 〜なえなんなえ:山形。
(なけんない) 【複】泣き得ない 神奈川。

◆▲なー
むし

なー
イナゴ 『集覧:多』。
『イナゴの佃煮』は当時の貴重な蛋白源の一つだった。夏には良く『なーとり』をした。袋は何を使ったかは覚えていないが、恐らく麻の頭陀袋だったろう。中で跳ねるし口を開けると逃げられるし結構大変だった。
なー:埃:千葉。
(な 靄、霞 静岡。
(なご) 【複】長く 鹿児島。
形容詞のウ音便は、古語の特徴だが現代では西日本に残り、東日本には無い。
なーこー 鹿島郡。
『せな、せなあ』が約まり接尾語『こ』がついたものか、『公』の意味か。
なごす
【動】残す
なごーど
なごーどおや
なごーどさま
仲人 ちゅーにんおや・なこーどおや:神奈川。
なこーどん:群馬。
なごーどしょーべー 仲人を商売のようにする人
なごる
【動】残る 標準語では名詞形の『名残(なごり)』しかない。
なざ 五六町以内の海、浅瀬 『集覧:無記載』。
『灘』が訛ったと考えられる。
なざ:海の岸に近いところ:神奈川。
なーざ:なぎさ:岡山。
(なーさ) 【形動】少し 静岡。
(なさかわららねー) 漠然として正体がつかみにくい 神奈川。
古語に『なさか:汚名・世間の悪評』がある。
なさげね
なさげねー
【形】情け無い なさけにゃー:広島。
なすない:静岡。
なさせもぢ 繭玉
〜なさっか 【助動】〜なさいますか 『なさるか』が訛ったもの。
いぎなさっか:行かれますか。
きなさっか:来られますか。
やんなさっか・やりなさっか:やりなさいますか。
たべなさっか:食べなさいますか。
〜なさって 【助動】〜なさって 現代標準語ではあまり使われなくなった言い方。原型は『なさりて』。
おひけえなさって:お静かになさってください(任侠の挨拶言葉)。
おいでんなさってくださいよー:お出でになって下さいよ。
〜なさる 【助動】〜なさる 動詞の連用形に付く。現代口語ではあまり使われなくなった言い方。
〜なさる:熊本。
〜なさんな 【助動】〜なさいますな。〜なさいますね。 敬語。『なさるな』が訛ったものだがくだけた標準語でもある。今でも使われる事がある。
〜なさんな:群馬。
すーたごどゆーなさんな:そんなこと言いなさいますな。
下らない事を言いなさんな
○☆なじ
なじー
◆▲なじゃ
【副】何故 現代語の『何故』に繋がる言葉。
『何故』の意味の『なじ・なじょう・なじか』は標準語で古い歌の歌詞などにもある。
『称呼』には『なぜと云事を、薩摩にてなじかいと云。古き歌に「大和かいあじかを関東べい都ござんすいせをりやります」。西土にて、あじかをと云も、なじかいといふにひとし。総州及東奥にて、あぜといふ。江戸にて、なぜといふ。京にて、なせにとと清(すみ)ていふ。案になぜとは胡(なんぞ)也。とがめたる言葉也。万葉に「あぜそもこよひよしろきまさぬ」なと詠り。古き詞なり。』とある。ここで『あぜ』は上代東国方言。またさらに、『称呼』には『いかやうにもといふを、伊予にてどうばりと云。土佐にてはどうまれかうまれなといふ。按に土佐にてどうまれかうまれと云はどうもあれかうもあれなり。予州にていふどうばりは是もどうまれの転語也。東国にてなでうあでうなどいふはいかやうなといふ意也。「紫日記」になでう女のまなぶみとあり。』とある。
『俚言』には『なぜ:「貞丈随筆」俗語になせと云は、なに也。なに転してなしとなる。と音相通。なじ又転してなぜとなる。と相通。古き物語の冊子に、なじかは以ってたまるべきといふ語あり。なじかなにかと云事也。』とある。
以上から、『なし・なじ』は『何』が『何故』に変化する過渡期の言葉という事が解る。一方類義語の『何で(なんで)』は『何にて、何故にて』の流れと考えられる。
なし:福岡。
なじ:新潟・静岡。
なじらね:どうですか:新潟。挨拶言葉。
〜なし 【複】形容詞を形成する接尾語 本来は否定を示すはずが、現代日本語では断定の強調形を示す言葉がある。
これは、古来からあった感嘆の終助詞『な』に『候』が変化した『す・し』が付いたとしか思われない。さらに、現代形容詞の語形を受けて『〜ない』という言い方も現代に残る。
また、終助詞『や・よ』『い・え』に変化したから、『なや・なよ』『ない・なえ』を経て古形に戻り『なし』に変化したとも考えられる。。
せわしなし・せわしない:忙しい。これ以上忙しいことはない。
すてきもない:この上ない。これ以上素晴らしいことは無い。
(〜なしか) 【複】〜に値する分しか 静岡。ごせんなしか:五銭しか。
『な』は元『が』と見られる。同じ意味の格助詞である。茨城の『〜しか』『〜なしか』に当たる。
なーしーきた
なーしにきた
なんしーきた
【複】何をしに来たの。
なしきり
なしけし
帳消し 『成し切り』『成し消し』の意味。
なじした
なじーした
なじった
なじにした
なじんした
【慣】どうしたの? 『なじ』は、古語の『何(なじ)』そのもので、『なじょした』にも繋がっている古い言い回し。
なじすんだ?:どうする?。
なじしたい?:どうした?。
なじすっ
なじすべ
なじょすっ
なじょすんべ
なじんすべ
【複】どうしよう 原型は『なじにすべし』。
なじする
なじょする
【慣】どうする?
なじた〜
▲◆なした〜
なしたー〜
なーした〜
【複】どのような〜 『集覧:西』。
『なし』は古語の『何(なじ)』の転。江戸時代の俗語では『なし』が使われたという。本来は『なじな』。標準語は『なじょう』を介して『なぜ』に変わった。
なしたの:どうしたの:北海道。
なしたまー:何と言うことか:兵庫。
なんした:神奈川。
なしたなごどでけーってきたんだっ:どの様な事で帰って来たんでしょうか。
なじた
なしたー
なーしたー
【複】どうだい?、どうした? 『どーしたい』『なじった』
なんした:神奈川。
なしたって 【複】どうして なしたって:宮城。
なしたでる 【動】@立派に成長させる、A達成させる 『成し立つ』の他動詞形。濁音化。
なじたな〜
なしたな〜
【連体】どのような〜 なったら:青森。
なじだのかじだの 【複】なんだかんだ、あれこれ 『何てふ彼てふ』。
なんててくゎんてて:島根。『何と言ひたり彼て言ひたり』。
なじたふー
なしたふー
【複】どういう風
なじたわげ
なしたわげ
【複】どうした訳
なしづぎ 臨月 『生し月』の意味。
なしつげる
なしつける
なしっつげる
【動】@なすりつける、人のせいにする、A決着する @『擦り付ける』。
A『成しつける』意味だろう。
なじった
なじったー
【慣】どうした? 『集覧:稲』。
なじった
なじったー
【複】どのような
△☆なして
なーして
【副】どうして、何故 『何』の古形は『な』。
なえ:山梨。
なーしい:どんな様子か:東京都大島。
なしけ:鹿児島。
なして:岩手・秋田・山形・宮城・福島・新潟・島根・岡山・鹿児島。辞書掲載語。関東圏だけが欠損している言葉。茨城には残る。
なーして:福島。
なしてよ:どうしてだ:青森。
なすけ:鹿児島。
なすて:青森・宮城。
なすてだや:どうしてなの:宮城。
なすてや:どうして:宮城。
なにして:宮城・神奈川。
なんして:福島・神奈川・長野・新潟。
なんしに:青森。
なひて:島根・広島・山口。
なじと 【複】どう、何と 『なじ』に格助詞『と』がついたもの。
なじともねー
なしともねー
【複】何でもない、大したこと無い、何の味もしない
なじに
なじにして
なじん
なじんして
【副】なんで、なぜ 『集覧:新』。古語。
なじに:青森。
なじにも 【副】どうにも はーなーじにもなんね:もう、どうしようもない。
◆■▲なじにもかじにも 【副】どうにもこうにも、どうしても 『集覧:行』。
あいづはなじにもかじにもなんね:あいつはどうにもこうにもならない。
なじみ 打ったときのあざ
(なじみ) 情婦 広辞苑には『@馴染:なれ親しむこと。なれ親しんだこと。また、そのもの。A長年連れそった夫または妻。B同じ遊女のもとに通い馴れた客。吉原では、三度目以降の客をいう。』とある。
岩手・宮城・淡路島・山口・福岡。アイヌ語の『ナンチミ』は淫売婦を言う。
■▲なじゃ 【副】何故、どういうわけで、何ぞ 『集覧:多・稲』。
古い標準語の『なじょう』の転。『なんじゃ』と同源。
なじゃ:福島。
ほったごとやってなじゃしんだ:そんな事してどうするの。
なじゃした 【複】どうした? 高齢者が使った言葉。
なじゃすっ
なじょすっ
なじょすべ
【複】どうしよう 『なじゃ』は『何じゃ』。『なじょ』は古い標準語の『なじょう』の転。
△なじょ
□○なじょう
【副】何故、どういうわけで、どんな 古い標準語の『なじょう』((ナニ(何)テフの約)@【連体】何という。どういう。いかなる。A【副】(下に反語を伴って) なんとして。どうして。いかで。なんじょう。なじょに。)。古くは『なでふ』と表記した。
『称呼』には『なぜと云事を、薩摩にてなじかいと云。古き歌に「大和かいあじかを関東べい都ござんすいせをりやります」。西土にて、あじかをと云も、なじかいといふにひとし。総州及東奥にて、あぜといふ。江戸にて、なぜといふ。京にて、なせにとと清(すみ)ていふ。案になぜとは胡(なんぞ)也。とがめたる言葉也。万葉に「あぜそもこよひよしろきまさぬ」なと詠り。古き詞なり。』とある。ここで『あぜ』は上代東国方言。またさらに、『いかやうにもといふを、伊予にてどうばりと云。土佐にてはどうまれかうまれなといふ。按に土佐にてどうまれかうまれと云はどうもあれかうもあれなり。予州にていふどうばりは是もどうまれの転語也。東国にてなでうあでうなどいふはいかやうなといふ意也。「紫日記」になでう女のまなぶみとあり。』とある。
『俚言』には『なぜ:「貞丈随筆」俗語になせと云は、なに也。なに転してなしとなる。と音相通。なじ又転してなぜとなる。と相通。古き物語の冊子に、なじかは以ってたまるべきといふ語あり。なじかなにかと云事也。』とある。『何ぞよ』が訛ったとも考えられる。
なじょ:秋田・岩手・宮城・山形・福島・新潟。
なじょー:山形。
なじょだり:どうでもいい:岩手。
なじょもなじょも:どういたしまして:新潟。
なじょすたらいがんべ:どうしたらいいだろう:宮城。
なじょだ:なぜだ:宮城。
なじょーだ:なぜだ:福島。
なじょだべ:どうしてだろう:宮城。
なじょってもなえ:何でもない:山形。
なじょなごんだ:どういう事だ:山形。
なじょにがなんねのすかや:何とかならないでしょうか:宮城。
なじょらね:どうだね:新潟。挨拶言葉。
なぞすたらいかんべ:どうしたらいいだろう:宮城。
なぞだ:どうだ:宮城。
なぞだべ:どうだろう:宮城。
なっちょー:静岡。
なっちょだい:どうだい:長野。
なじょうことかあらん:どういうことがあろうか。何の差支えがあろうか。
なじょうことなし:なんということもない。平凡である。
なじょのごだねー・なじょのごどはねー・なじょのごどもねー:何てこと無い・大した事無い。
なじょしんだ:どうするんだ。
なじょにもなんね:どうにもならない。
なじょが 【複】どうか、どうにか なじょがしたが:どうかしたかい。
なじょがしてんな:どうかしてるな。
なじょがしてやんねげばなんめ:何かしてあげなければなるまい。
なじょした
なじょした〜
なじょしたい
なじょしたや
【複】どうした?、どうした〜 なじょしたい:福島。
なじょすた:どうした:宮城。
なぞすた:どうした:宮城。
なじょして
なじょって
なじょにして
なじょんして
【複】どうして、何故 なじょして:福島。
なじょすて:どうして:宮城。
なじょーて:岩手。
なじょにして:山形。
なじょんして:山形。
なぞすて:どうして:宮城。
なじょしんだ
なじょすんだ
【複】どうするの?
なじょすっ
なじょすっへ
なじょすべ
なじょすんべ
【複】どうしよう なじょすっ:宮城・福島。
なじょすっない:福島。
なぞすっ:どうしよう:宮城。
なじょする
なじょんする
【複】どうする なじょすっけな:どうするつもり・どうしたらいい:宮城。
なじょする:宮城・福島。
なじょにしる:どうする:山形。
なじょんする:福島。
なぞする:どうする:宮城。
なじょだ 【複】@何故、Aどうした、どうだ、どんな なじょだ:宮城・福島。
なじょだごどした:どうした。
なじょだが 【複】@何故か、どうしてか、Aどうだい A・なじょだが:岩手。
なじょだのかじょだの 【複】なんだかんだ、あれこれ 『何てふ彼てふ』。
なじょった 【複】どんな、どうした 『なじょした』の転。
なじょったんべー:どうしたのだろう:福島。
なじょったい:どうしたの。
なじょったがー:どうだい。
なじょったがなったんだんめな:どうにかなったんじゃないだろうね。
なじょったい 【複】どうしたの 『なじょしたや』『なじょたりや』が訛ったもの。
なじょったい:福島。
なじょったが 【複】@どうだか、Aどうしたの @・なじょったか:福島。
なじょでもねー
なじょーでもねー
【複】何でもない あんじゃーねー:山梨。
あんじょーでもねー:神奈川。
なじょな
なじょーな
【連体】どんな 『方言学概論』には『なじょうな(どんな・どういう):東北(青森以外)・関東(埼玉・東京以外)・新潟・長野・静岡。』とある。京都の古語に『なぢふ』がある。
なじょな:宮城。
なじょーな:東北(青森以外)・関東(埼玉・東京以外)・江戸・新潟・長野・静岡。
なぞな:どうして:宮城。
なっちょな:長野。
なっちょーだ:長野。
なじょなごどがあったのが:何かあったのかい。
なじょに
なじょん
【複】どんなに、どんなふうに なじょに:宮城。
なぞに:宮城。
なぞにがなんねのすかや:どうにかならないのかい:宮城。
なじょにが 【複】どんなにか、どうにか、何とかして あんじょーにか:神奈川。
なんちょーにか:山梨。
なじょにしたや
なじょんした
【複】どうしたの?
なじょにしっ
なじょにすっ
なじょんしっ
なじょんすっ
なじょんすっへ
なじょんすべ
【複】どうしよう
なじょにしる
なじょにする
なじょーにする
なじょんする
【複】どうする?、何にする? 『集覧:新』。
なじょにも
■▲なじょーにも
なじょんも
何としても、どうにも 『集覧:新』。
あじょーにも:群馬。千葉。
あじょーにも:もしも、万が一にも:埼玉。
あんじょーにも:山梨。
あんちょーにも:山梨。
なんちょーにも:何とか:山梨。
なじょにもなんね:どうにもならない。
なじょにもかじょにも 【副】どうにもこうにも、どうしても なじょぬもかじょぬも:宮城。
なんじょにもかんじょにもなんねー:どうにもならならない:宮城。
なじょの 【連体】どうゆう、何の、どんな なじょのごどがあってもまげんだねーがんな:どんな事があっても負けるんじゃないぞ。
なじる 【動】責める、非難する、詰問する 今やほとんど聞かなくなった言葉。
ひとんごどなじってばがしでおらいーにけーちゃーど:人の事を責めてばかりで私は実家に帰るよ。
なーしろ 苗代 長音形になるのは、古形『なはしろ』に由来。
しろ:静岡。
なしろ:秋田・福島。
なーしろ:青森・福島・千葉・静岡。
なーしろあ 苗代の種まきが終わったこと。仕事は休み嫁は里帰りする。 東茨城郡。
なーしろぐみ @ナワシログミ、Aウグイスカグラ @田畑の境界木として空木(ウツギ)と並んで植えられた植物。刺がある。ナツグミと異なり果実はあまりおいしくない。痩せ地に適応する。
なーしろこさい
なーしろこせ

なーしろこせー
なーしろこっせー
なーしろしめ
苗代を作ること 『苗代拵え』の意味。
なーしろやし 苗代に入れる肥し。大根を入れる。 なえしろだいこん:肥料にする大根:神奈川。
なじんした 【複】どうした?
なじんして〜 【副】どうして〜
なしんなる 【複】中止になる、無くなる 『無しになる』意味。
なす ナス 関東では、あたりまえのように茄子はナスだが、関西ではナスビである。
■▲□△なす 【動】@▲(子供を)生む、(卵を)生む、A成し遂げる、成功する、Bする、遣る @『生す』。竹取物語でも使われる古い言葉。広辞苑に『生す:@(そこに存在しなかったものを新たに)つくりあげる。A産む。Bある行為をする。行う。する。Bなしとげる。仕上げる。C高貴の人がある事を行う。D別のものとする。別の状態にする。Eあるものを他にあて用いる。F(「…を―・す」の形で) …となる。G(形容詞連用形、または助詞「に」「と」などをうける動詞「思う」「見る」「聞く」などの連用形について) 「そのように思う(見る・聞く)」などの意を表す。H(動詞連用形に複合して) 故意に…する。ことさら…する。』とあり、古くは『成す』『為す』を含めて『生す』だったことが解かる。オールマイティの英語のDOに近い言葉。
なしゅり:奄美大島。
なしゅん:沖縄。
なす:青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島・茨城・千葉・栃木・八丈島・新潟・奄美大島・沖縄。
なす:魚が卵を生む:新潟。
なすん:沖縄八重山諸島。
おぼこなす:子供を生む:宮城。
おどめなす:子供を生む。
ぶだころなす:豚の子供が生まれる。
こをなした:子供が生まれた。
A『成す』。
B『為す』。
▲△なす 【動】▲返す 『集覧:新・猿』。
『済す』。広辞苑には『@義務を果す。完納する。A借りたものを返す。返済する。』とある。
なす:秋田・山形・福島・埼玉・群馬・長野・静岡。
なやす:静岡。元丁寧語の『なしやす』か。
ねーす:神奈川。
(なす) 【動】なさる なす:なさる:愛媛。古語。『なすって』(なさって)などとも言うのは古形の名残だろう。
〜なんす:熊本。
(〜なす) 【助】〜なあ、〜ねえ 終助詞『な』+『す』。
広辞苑に『す【候】:サウラフ(候)の略サウのさらに転じたもの。閑吟集「嵐では無げに―よの」』とある。
〜なす:福島。
なすいつける
なすける
【動】擦り付ける、他人のせいにする 『擦り付ける』。
なすぐる
なすぐりつける
なすける
なすつける
なすっける
なすっつげる
【動】擦る、擦り付ける、他人のせいにする なすぐりつける:千葉銚子。
なすくる:鹿児島。
なずぎ
△なずき
頭、額 清音ならやや古い標準語。『脳、髄』(なずき)。さらに古くは悩や脳髄を指したという。
なじき:福島。
なずぎ:青森・福島。
なずき:青森・山形・岩手・宮城・福島。
なずき:額の痛み:宮城。
なずぢ:宮城。
なつき:福島。
〜なすっか 【助】〜なさいますか 敬語。江戸言葉。本来は『なさるか』。
いぎなすっか:行かれますか。
きなすっか:来られますか。
やりなすっか:やりなさいますか。
たべなすっか:食べなさいますか。
〜なすって 【助】〜なさって 江戸言葉。
おひけえなすって:お静かになさってください(任侠の挨拶言葉)。
ごめんなすって:失礼します。
あさはいぐきなすったそーで:朝早くお出でになったようで。
なすばち すり鉢 『集覧:西』。
『なすり鉢』が訛ったと思われる。
(なすび) 茄子、ナス 関西語。関東では『なす』
様々な議論があるが、『なすび』とは『なすの実』の意味だろう。
恐らく、植物としての『茄子(なす)』が原形で、その実をかつて『なすび』と言ったものが、関東では、『び』を省いて『なす』と言ったと考えられる。
なずむ 【動】@難渋する、滞る、Aこだわる、執着する、B馴染む、慣れ親しむ、C患う、病む 『泥む・滞む』。
なずらえる 【動】@見立てる、擬する、A真似する 『準える・准える・擬える』。
なすりつげる
なすりつける
【動】擦り付ける、他人のせいにする なすりっつける:群馬。
なすりっこ なすり合い なすりっこ:山梨。
なする 【動】@ぬりつける、すりつける、A罪や責任を他人に負わせる、Bなぞる 『為す』から生まれたか。
@・なする:神奈川・鹿児島。
B標準語には無い。@の意味が転じたか。
なする:神奈川。
おめ、このしたいなすってえろつけろな:お前は、この下絵をなぞってから色を付けなさい。
(〜)なする 【動】『する』の尊敬語、時に侮蔑の意味を込めることがある 『為さる』(なさる)。古形『なす』の名残か。時代劇でも聞かれる言葉だが何故か辞書不掲載。江戸言葉。
いぎなすったが:行かれましたか。
ごめんなすって:失礼します。
〜なすんな 【助】〜なさいますな、〜なさんな 敬語。古い言い方。江戸言葉。今でも使われる事がある。
なせ
なぜー
@斜め、斜面、A筋交い 『なぞえ』が訛ったもの。古い言葉。
@・なせ:茨城・栃木・埼玉・群馬・東京・神奈川。
なせー:神奈川・山梨。
なそえ:佐渡島。
Bその他。
なぜ:雪崩:新潟・長野。
なぜこける:屋根から雪が落ちる:福島。
なで:雪崩:山形。
なぜぐる 【動】撫でまくる なぜくる:撫でる:静岡。
〜なせーやす 【複】〜なさいます 江戸言葉の『なさいやす』の音便形。江戸言葉にはさらに訛った『なせんす』が使われた記録がある。さらに訛って『なせーやし』とも言う。
やっておくんなせーやし:遣っておくれなさいませ。
なぜる 【動】撫でる 標準語。『撫ぜる』。現代では『撫でる』の方が一般的。
茨城では『さする』の方が一般的。日本語のザ行音はダ行音と音通し、多くザ行音がダ行音に変化した歴史がうかがえる。
なぜる:青森・福島・群馬・東京。
なぜる:掃く:静岡。
〜なぞ 【助】〜なんか、〜など 『〜何ぞ』。日本語のザ行音はダ行音と音通し、多くザ行音がダ行音に変化した歴史がうかがえる。
〜なぞ:神奈川。
なぞい
なそい
なぞえ
@斜め、A斜面、B筋交い 古い標準語の『なぞえ(斜め)』。
『民俗』では『すじちがい』と誤解している。『筋交い』は『筋違い』とも書くからだろう。
以下は今ではいずれも違和感のある言葉だが、もともとは『なぞえ(斜め)』に発していることは間違いないだろう。雪崩にも通ずる言葉でもあろう。
@・なせ:緩い勾配:長野。
なせー:なだらか・傾斜・勾配:神奈川。
なそい:鹿児島。
なぞえ:東京。
なそえ:佐渡島。
のせ:静岡。
A・なぞえ:静岡。
B・なぞえ:東京。
Cその他。
なぜ:雪崩:新潟・長野。
なぜこける:屋根から雪が落ちる:福島。
なで:雪崩:山形。
なでー:なだらか:山梨。
なぞいる
なぞえる
【動】@見立てる、擬する、A真似する 『準え・准え・擬え』の動詞形と思われるが辞書には無い。
なぞいる
なぞえる
【動】斜めに切る 『集覧:稲』。
古い標準語の『なぞえ(斜め)』の動詞形。
なぞえる:山形。
なぞらえる 【動】@見立てる、擬する、A真似する 『準える・准える・擬える』。
なぞり
なぞり
などり
下に敷いて写し取ること
なぞる
などる
【動】@すでに書いてある文字などの上をなすって書く、Aそっくりまねる、写し取る 自動詞形と考えられる『準える・准える・擬える』があるが、これには漢字は当てられていない。『などる』は訛りと考えられるが、『読本・美少年録』に『做書(せいしよ)の折には爪形して、その上をなどらせしを。』とある。
日本語のザ行音はダ行音と音通し、多くザ行音がダ行音に変化した歴史がうかがえるが、この場合は原型が現代に残ったようである。
などる:静岡。
なだ 鉈(なた) 濁音化。薪割より柄が短く刃の部分は長い。細めの丸太を割ったり杭先の加工に使う。
なだ 『集覧:久』。
涙の語源は諸説あるが、有力なのは@ナキミダリ(泣き水垂り)(大言海)、Aナキミヅ(泣き水)でツとタは通ず(日本釈名)、Bナミは泣き水の義、ダは語尾 説がある。この場合の『なだ』は、『泣き垂り』の意味とも思われる。
なだ:岩手・宮城・茨城。江戸時代の奴言葉でもある。
なだぐゎ:沖縄。
△なだ 浅瀬 『灘』は波が荒いところを言い、有力な語源は@ナダカ(波高)(日本釈名)、Aナミタツ(浪立つ)の約、Bナは浪、ダは間で浪の立つ所の意 とある。
逆に『なだ』には古語で平滑・平穏の意味がある。
なだ:海面・沖:千葉・神奈川・静岡・島根。 
なだ 久慈郡の方言。
なた:野糞:栃木。
なだげ
なだけ
【複】どれだけ 『集覧:行』。
『何』は古くは『な』と言った。『何丈』の意味。
なだげー 【形】名高い なだけー:福島。
なだまめ ナタマメ 『鉈豆・刀豆』。
なだら
なだらが
【形動】なだらか 『なだ』には古語で平滑・平穏の意味がある。
なだれ 斜めに傾くこと 『傾れ』。雪崩と同源。
うちゃだれる:傾く:福井。
なちた〜
なちった〜
【連体】どのような〜 『なじた、なした』がさらに訛ったもの。茨城方言らしい訛り。本来は『なじな』『なじにてある』意味。
なちたごどになったんだっ:どういうことになったんだろう。
なちたふーだい:どんな具合だい。
なちたー 【慣】どうした? 『集覧:西』。
本来は『なじにてある』
なちたごど
なちたこと
【複】何てこと、何ということ 『どんな』に変わる『なじた、なした』が変化した『なちた』に『事』がが付いたもの。本来は『なじにてあること』
なちて 【慣】どうして
(なちもの) 魚の腸の漬物 佐渡島。『魚漬物漬』の略とされる。『魚』は『な』とも読む。
(なちゅん) 【動】泣く 沖縄。
なづ
なーづ
なづ:千葉。
(なっかー) 仲間 静岡。
なづがしー
なづっかしー
【形】懐かしい
なっから 【副】およそ、だいたい、ほとんど 古い標準語の『半ら』(なから)は『途中で、半分で、半ば』の意味。
なっから:群馬。
なづぎ 自分の名前が気に入らない女は、19歳の1月19日だけ名前を変えて良い風習がある。 『名月』。
なづぐ
なつく
【動】慣れ親しむ、子供が甘える、ペットが懐く 『懐く』。
かつては人間間の関係を中心に指したが、今では殆ど人間に対して動物が懐く意味で使われるようになってきている。
なづぐ・なんづぐ:青森。
なづく:東京。
なづげる
なつける
【動】手懐ける、懐かせる 『懐ける』。
なんづげる:青森。
なつける 【動】名づける
(〜なっこー) 【複】〜(せ)ずに、〜(し)ないで 静岡。
古語由来の言葉と見られる。『〜(し)なく来て』か。
(なっしょ) 寺男、所化また僧侶の弟子 佐渡島。『納所』。
なったい 【複】〜(に)なりたい
なったき 【形動】なりきった様 多く否定的な意味で使われる。
〜(に)なったきーする
〜(に)なったきんなる
【助】〜(に)なったつもりになる
なったげ
■▲なったけ
【副】なるべく、なるたけ 『集覧:行』。
なったけ:鹿児島。
〜なっちー
〜なっちぇー
〜なっちゃい
【複】〜(に)なりたい 『〜なってー』がさらに訛ったもの。なりたい→なったいなってー・なっちゃい
〜なっちって 【複】〜なんて言って
(なっちょら) 【副】ざっと 静岡。
なっづぐ 【動】慣れ親しむ、子供が甘える 『懐く』。
なっつげる 【動】@塗る、Aなすりつける 『擦り付ける』。
なづっこい 【形】懐っこい 濁音化。
〜なってー 【複】〜(に)なりたい
(〜(に)なってがらばり) 【複】〜になってしまったら 宮城の方言。『〜になってしまったからだけに』の意味か。
なーってごどねー
なーってごどもねー
【複】何てことない
〜なってって 【複】〜なんて言って
なっど
なっと
納豆 納豆は茨城の名産。今でも高齢者の納豆の発音は『なっど』。中高年層である程度標準語を話せる人でも良く聞くと僅かに濁る。
なっとや:納豆屋:東京。
なっどはらいっべーくーが:納豆を腹いっぱい食べるかい。
〜なっと 【複】〜(に)なると 江戸言葉。標準語の口語でも使われるが方言的な印象が強く、一般に『〜なると』が使われる。
ところが、『〜なったら』『〜なって』『〜なっては』は今ではそれ以外に言い方が無いのは現代語の矛盾がある。『〜なったら』『〜なって』は『なりたらば』『なりて』である。
茨城方言と現代標準語には、僅かなずれがある。東京方言では多く『〜なんと』と言う。
あさんなっと:朝になると。
■▲なっ 葉を食料にする野菜、野菜の葉 『集覧:猿』。
『菜つ葉』の意味。『菜っ葉』。標準語だが野菜と言うようになった。明治期の教育では望ましくない言葉だったとされたことが解る。
なっ:青森・福島・群馬・神奈川。
なっづげ 白菜の漬物 なっづげ:宮城。
なっのこやし 【慣】掛け声ばかりで仕事をしない人 菜には、掛け肥えをすることから、掛け声ばかりで仕事をしない意味に例えたもの。
なっふぐ
なっふく
作業着 『菜っ葉服』。調べるとこれは旧国鉄の古い作業着が緑色だったことからそう呼んでいるという。
なっふく:埼玉。
なっべ
なっ
なっへ
@(実が)なるだろう、A(何とか)なるだろう 原型は『なるべし』。
なで 【副】何故 辞書には『なんで』の約とある。江戸時代の言葉。
古語の疑問形は『何(な)』なので単純に約とは言えない。『何で』『何故』は『何にてある』が訛ったものだろう。
日本語のザ行音はダ行音と音通し、多くザ行音がダ行音に変化した歴史がうかがえるが、この場合は原型が現代に残ったようである。
なで:神奈川・長野・山梨・静岡。
なーで
なーて
畦道 『縄手・縄手道・畷』。
(なでぎね) 棒杵 鹿児島。
なでぐる
なでくる
【動】@撫でまわす、A塗りつける @・なぜくる:静岡。
なでぐる:福島。
なでくる:山梨・静岡。
A・なでくる:静岡。
なでつける
・なでる
【動】髪をとかす 『撫で付ける』『撫でる』。
(「な」と「た・だ」の音通) 所謂形容動詞の『ナリ活用・タリ活用』が代表的である。
伝聞表現の複合終助詞『〜そうな・〜そうだ』もある。
現代標準語は、この『なり・たり』のあり方を語法に応じて限定的に使っている不思議な言葉でもある。
茨城では、標準語の語法に加えて、例えば連体詞『こんな、そんな、あんな、どんな』は『こ−た、そーた、あーた、どーた』などと言う。
(「な」と「ね」) 【助】 『ね』は、茨城ではめったに使われず、一部の女達が使った。
広辞苑では『:@(間投助詞) 文節の切れ目、また文の終止した所に用いて、軽く詠嘆し念を押す気持を表す。万四「妹も我もいたく恋ひむ―会ふよしを無み」。伎、好色伝授「これ―鮎と申します」。「いらっしゃい―」「あげなさい―」A(終助詞)活用語の未然形に接続して文を終止させる。B自分の意志を表す。…しよう。万四「妹に会はず久しくなりぬ行きて早(ハヤ)見―」。万五「ことことは死な―と思へど」C他者への願望・要求・勧誘の意を表す。…したい。…しよう。…ください。万一「家聞か―告(ノ)らさね」。万一七「道の中国つみ神は旅行きもし知らぬ君をめぐみ給は―」。万一九「網取りに取りてなつけ―涸れず鳴くがね」D活用語の終止形に接続して、一途に禁止する意を表す。平安時代には主に男が目下に対して用い、女は「な…そ」を用いた。万五「いたづらに吾を散らす―酒に浮べこそ」。源桐壺「われ亡くなりぬとて口惜しう思ひくづほる―」。浮世床二「イヱイヱもう必ずとおかまひなさいます―」。「それを言う―」E活用語の連用形に接続して、命令を表す。…なさい。浮世風呂四「コレサコレサおてんばどん。マアだまん―よ」。「早くし―」F(格助詞「の」の転) 体言と体言とを接続して連体修飾を表す。記上「瓊(ヌ)―音(ト)」G上代東国方言で動作や作用の目標を表す。「に」の訛か。万一四「安努(アノ)―行かむと」』。さらに、『:【間投助詞】文節の切れ目について、相手に念を押し、または軽い感動を表す。浮世風呂三「わたくしは―、おつかさんにねだつて―、あのウ路考茶を―、不断着にそめてもらひました」。「いいです―」「無事でいて―」』『:【感】親しみをこめて呼びかけ、または念を押すのに用いる語。ねえ。滑、素人狂言紋切形「人さまに御損をかけては今日様へすみませぬ。―、左様ではござりませぬか」。「―、そうでしょう」』とある。
これらの辞書データを見ると、『ね』は近世以降の語で、『な』が原型であった事が推定される。
これらから、『ね』の原型は、『な』で、元は終助詞が加わった、『なや・なよ・ない・なえ』で今では各地の方言として残っている。
(なとーん) 【複】出来た 沖縄。
なーなー ご飯 鹿島郡。幼児語。
なーな:葉の幼児語・花の幼児語:神奈川。
(なな) 【複】そのような 神奈川。原型は『そんなな』『そんなのは』か。
〜なな
〜ななー
【複】〜なのは ★『土』:うむ、そんでも俺(お)ら見(み)てえなな、滅多(めった)持(も)ってるもなねえかんな
〜なな
〜なーな
【助】@〜(す)るなよ、A〜(し)ないな @否定の助詞『な』に終助詞『な』が付いたもの。
A否定の助詞『ない』が訛った『な』に終助詞『な』が付いたもの。
はーやんなな:もうやるなよ。
いーごだがらやんなーな:いい子だからやらないな。
なーない @縄綯い(なわない)、A仕事始め @『綯う(なう)』は標準語で(縄や糸を)よること。縄は生活の必需品であった。
A1月4日、早朝に起きて藁を木槌でたたき代掻き用の縄を作る。
なーないき 足踏式製縄機、縄を綯う一部金属製の機械 金属部はくすんだ緑色をしていた。
なーないしょーがづ 仕事始め 1月4日、早朝に起きて藁を木槌でたたき代掻き用の縄を作る。
ないぞめ:神奈川。
ななくさ 七草粥 ななくさげー:群馬。
ななじ 七時 現代では日常語では使わないが、一部の専門世界では、一時との誤聴を避けるために使われる。
ななず・ななんず:青森。
なくてななくせ 【慣】多かれ少なかれ人には癖がある。 慣用句には『無くて七癖あって四十八癖』がある。
〜なな
〜ななや
〜ななよ
【助】〜(する)な 禁止の終助詞『な』に感嘆の終助詞『な』が付いてものか。『〜(す)んなな』と言う場合もある。
広辞苑に『なな:@(完了の助動詞ヌの未然形ナに願望の助詞ナを添えた語) …てしまおうよ。…てしまいたい。万二「君により―言痛(コチタ)かりとも」A(上代東国方言。否定の助動詞ズの古い未然形ナに助詞ニの転ナを添えた語) …ずして。…ずありつつ。万二○「我が手触れ―土に落ちもかも」』がある。
はーやんなな:もうするな。
ななくせもはぢくせも
ななくせもやくせも
【副】癖の多い様、癖の強い人 『無くて七癖あって四十八癖』を受けた慣用句。
なーなす 【動】名を成す、有名になる
ななづぼし 北斗七星 『七つ星』。
ななちぶし:沖縄。
ななづまい 七歳未満の子供。 『七つ前』の意味。久慈郡・土浦市の方言。
ななづまいはかみのうぢ 【慣】七歳未満の子供は、普通の大人とは違うという意味 七歳未満の子供は、まだ神様の手元にあり、この世の世界の人間にはなりきっていない意味。
久慈郡では、7歳前に死んだとき、縁の下や家の近くの畑に埋めたという。長塚節の『土』に描かれた、勘次の妻おつたが、自らの手で堕胎した子を近くの畑の木の下に埋めたのも風習によるものと思われる。
なーなーど 【副】なあなあの関係で、馴れ合いの関係で
ななくさ
ななくさ
七草粥 『が』は鼻濁音。
ななくさ:群馬。
ななめ
ななめ
ななめか
ななめかー
斜めの方、斜めの方向
ななめかだ、
ななめっかだ
斜めの方、斜めの方向
ななめ
ななめ
斜めの方向にあるもの、斜めのもの なんだー。せっかぐたでどいだのになんでななめなになってんだやー。おがしーべー。:どうして?。せっかく立てて置いたのにどうして斜めになっているんだろう。おかしいだろう。
ななめちょ
ななめっちょ
斜めの方向にあるもの、斜めのもの
なに 【代】あれ 広辞苑には『物事をどんなものだとは、はっきり定めずに指し、また名がわからない物事を指すのに用いる語。南海寄帰内法伝平安後期点「何ナニをか俗途と謂ふ」。「―を笑うの」「改めて言うのも―だが」「おい、―はどうした」』とある。
あー、それはなにしたがらおわんだ:ああ、それはそうしたから終わりだ。
なにはどーしたんだっ:あれはどうしたの。
なに
なーに
@【副】それが何であれ、一向に、A【感】念をおしたりする時に問いかえしたり相手の言葉を軽く打ち消したりする時に使う語。 @★いやなに・いやなーに:どう致しまして(いや、それが何であれかまわない)。
A・なーにん:静岡。
なーに、いんね:いや、要らない(それが何であれ要らない)。
なーにな、これでえーんだ:まあな、これでいいんだ(それが何であれ、これで良いんだ)。
なにお
なにょー
【感】なんだって!、何を(言うんだい)! 堪忍袋の緒が切れた時の言葉。
なにおがいわんや 【感】驚き呆れて言葉も無い。論外だ。 『何をか言わんや』。
『何を言おうか、何も言えない。』
なにが
なにーが
なにがー
【副】@何か、Aどうか @現代では多く『なんか』が使われる。当時は、標準口語の『なんか』は、新鮮で垢抜けて聞こえた。ただし『なんだ』は使われた。
なにがいっか:何か居る?・何か要る?。
なにがにつげで:何かにつけて・何かというと。
なにーがかっかがそごにいんだよ:何彼にかそこに居るんだよ。
なにがかんかゆーなや:あれこれ言うねえ。
Aなにがすっとおめらふっとんでくっ:どうかするとお前なんか飛んで来るじゃないか。    
なにがが
なにがか
なにーがか
【副】何か、あれこれ 『何か彼にか』の意味。原型は『なにがかにか』と考えられる。ネットを調べると『何かかがおかしい』『何かかが解らない』等が引っかかる。
なにががゆってっと:何か言ってるよ。
なにががが
なにがかっが
なにがかっか
なにーがかっか
【副】何か、あれこれ 『何か彼か』。死語になった言葉。
はらへってんだけんとなにがかっかねーが:腹が減ってるんだけど何か無い?。
あんじゃげせづめーしたのにまーだなにがかにかゆってるみてだど:あれだけ説明したのに、まだあれこれ言ってるみたいだよ。
なにがかにが
なにがかにか
なにーがかにか
【副】何か、あれこれ 『何か彼にか』の意味。
なにがかにが:秋田。
なにがかんが
なにがかんか
なにーがかんか
【副】何か、あれこれ 『何某彼某』(なにがしかがし)・『某某』(なにがしくれがし)の流れと思われる。あるいは『何か彼にか』の意味。原型は『なにがかにか』と考えられる。
なにかかんか:山梨。
なにがかんかおがしーんだな:何かがおかしいんだな。
なにしが
なにしか
【副】何か 標準語の『なにがし』は、@曖昧な数量、Aしかるべき人、B不特定の代名詞等だが、それが発展して『何か』という意味のオールマイティ語になったと考えられる。
なになし
なになし
【副】何気なく、何となく、あれこれ考えずに 古い言葉。『なにかなし』とも言う。
なになんきんとうなすかぼちゃ 言葉尻をとらえてからかうことば 『何が南京唐茄子カボチャ』。江戸時代に流行った地口(洒落言葉)の一つ。
なにがに
なにかに
【副】なんやかんや、あれこれ、なんだかんだ 多くの人が『何かに』と思っているが、実は『何彼に』。現代標準語では『何彼につけて』という語法しか残っていない。
なに
なにでー
【感】どうしてだい 原型は『なにだや』
なに
なにやー
【複】他に何があるのだろうか(ありはしない)、いったい何を言ってるの 『が』は濁音・鼻濁音。『や』は反語の係助詞。
あに:違う:東京。
なにかやら 【副】何やら 古い標準語と考えられる。『何彼やら』。
なにがよーがこごのがとーが 【慣】何か用か 九日十日 落語にも出て来る江戸時代に流行った地口(洒落言葉)の一つ。
なになぐ
なになく
【副】何気なく、何となく 『なにげなし』の連用形。
なに 【副】何故、どのように 『何が故に』『何が様に』。
最近の若い人たちが『何気なく』の意味で使っている『なにに』は『何気なく、意外に、知らぬ間にさりげなく』の意味でこの方言とは異なる。
『新方言』には『ナニゲニ:何気なく。首都圏の若者の一部が最近言う。発生理由はいくつか考えられる。@ケナゲ/オボロゲなど〜ゲニという活用をとることば(形容動詞)があることの類推とも考えられる。A惜シゲニ/ウレシゲニ、クルシゲニなど、一部の形容詞(多くはもとのシク活用に属し、感情/感覚などを意味するもの)は規則的に〜ゲニという形をとり、さらに進んでキラクゲニのように一部の形容動詞にも規則的に〜ゲニが付くようになったので、本来形容詞と関係ないナニにも〜ゲニがついて、ナニゲニという語が作られたと考えられる。Bまた「せわしない=せわしい」のように「ない」が無意味に使われることがあるので、「なく」が取れて、他の副詞と同じ「に」がついたとも考えられる(1993)。「ナニゲデ、ナニゲノツモリ」とも。「ありげに」の逆(1986)。』とある。
(なにけも) 【副】少しも 静岡。
なにこぎやがる
なにこぐ
なにこぐんだ
【複】何を言いやがる、何を言う、何を言うんだ 『何を扱く』。
なにこく:東京多摩。
なにしたって 【複】何をしても、どうしたって、どうしても、何をやっても なにすたって:岩手。
なにしやんだ
なにしやんだい
なにしやんでー
なにしゃーんだい
なにしゃーんでー
【感】何しやがるんだ 江戸言葉では『なにしやがんでえ』。
『聞書』には江戸で『なにしやるな』とある。この場合の『な』は現代では『だ』である。江戸でも、『だ』を『な』と使っていたことが解る。
なにすてんだ 【複】何してるんですか 昭和30年代の言葉。
なぬすてけづかる:宮城。
なにすんでー
なーにすんでー
【複】何すんだい、何をするんだい 江戸言葉では『なにすんでえ』。
なにせ 【副】なにしろ 標準語。原型は『何をせよ』。
なにだ 【複】なんだ
なにだが
なにだか
【複】何か、何だか、何かを
なにっか 何か 促音化の典型例。当時は、標準口語の『なんか』は、新鮮で垢抜けて聞こえた。
なにっか:いろいろと:山梨・静岡。
★『土』:それから善(え)えだの惡(わり)いだのつて膨(ふく)れたり何(なに)っかすんぢやねえぞ、なあ。
なにっかかにっか なんやかんや 促音化の典型例。『何か彼にか』の意味。
〜なにっかする 【複】〜何かする、〜なんてする 促音化の典型例。
★『土』善(え)えだの悪(わり)いだのって膨(ふく)れたり何(なに)っかすんぢやねえぞ:良いだの悪いだのって怒ったりなんかするんじゃないぞ。
なにっかど 【副】色々と、何かと
なにで 【複】何を使って、何によって 現代では『なんで』や『何を使って』と言う。原型は『何にて』である。
なにに 何のために、何をしに 一見言葉が略されているように見えるが、古い言葉でもある。
(なにばこも) 【副】幾ばくも、何程も 宮城。『何ばくも』の意味か。
広辞苑によると『幾』は『@数量・程度のわからぬ意をあらわす。A数の多い意をあらわす。』の意味、『何』は『@物事をどんなものだとは、はっきり定めずに指し、また名がわからない物事を指すのに用いる語。Aある物事をあげたうえで、その他を一まとめにして指す。』とあるが、数量を問う『幾つ』と『何個』は同じ意味である。『幾ばく』は『幾何・幾許』と書き、
なにほど 【副】@どれほど、Aどんなに、B(否定語を伴い)とるにたらない なにほど:福島。
@・なにばこ:宮城。
なにほどつえーのがどおもったらてーしたごどねー:どれほどれほど強いのかと思ったら大したことない。
A★おめがなにほどがんばったっていねものはい:お前がいくら主張しても行けないものは行けない。
B★あいざーなにほどのごどもねー:あいつは大したことない。
なにもかにも 何もかも ないもかいも:鹿児島。
なにやってぃんだおめ
なにやってぃんだおめー
なにやってんだおめ
なにやってんだおめー
なーにやってんだおめ
なーにやってんだおめー
なーにやってんだおめーー
なにやってんだおめは
なにやってんだおめはー
なーにやってんだおめはー
なーにやってんだおめはーー
【複】お前は(いったい)何遣ってるんだい 標準語のイントネーションは以下のように概ね2種ある。
おまえなにやってんの:問いかけ。
233511113
おまえなにやってんの:問責の言葉。
2335111111
茨城方言では様々である。また、主格がしばしば最後に来る。
抑揚を数字で示した場合、見かけ上見かけ上同じであっても、微妙に使い分けまた聞く側も感じることが出来る。高低の差は標準語と変わりは無いが、概ね緩やかなイントネーションとなる。以下のイントネーションは恐らくネイティブでないと理解できないだろう。このようなニュアンスはの違いは学術書には全く解説されていないので、本サイトの最も特徴的なものである。緩やかに中音から低音に下がる場合は、淡々とした言い方だが、高音から低音に移ったり、低音から最後の音の一音前が高音になり、最後に低音になるパターンは標準語には見られない。
茨城方言は、文字だけでは表現出来ないのである。
なにやってんだおめ
444444441):きつく問責する言い方。
333333331):淡々とした言い方または問いかけの言い方。
222222441):淡々とした言い方または問いかけの言い方。
111111441):淡々とした言い方または問いかけの言い方。まれに問責する言い方。
111111141):淡々とした言い方または問いかけの言い方。まれに問責する言い方。
なにやってんだおめー
4444444441)きつく問責する言い方。
3333333331):淡々とした言い方または問いかけの言い方。
2222222441):淡々とした言い方または問いかけの言い方。
1111111141):淡々とした言い方または問いかけの言い方。まれに問責する言い方。
1111111441):淡々とした言い方または問いかけの言い方。まれに問責する言い方。
なーにやってんだおめ
4444444441):問責する言い方。
3333333331):少し小馬鹿にしたり淡々とした言い方または問いかけの言い方。
2222222441)淡々とした言い方または問いかけの言い方。まれに問責する言い方。
1111111441):飽きれた意味を含む強く問責する言い方。
なーにやってんだおめーー
444444444441):強く問責する言い方。
333333333331):少し小馬鹿にしたり淡々とした言い方または問いかけの言い方。
111111111141):強く問責する言い方。
なーーにやってんだおめーー
4444444444441):最上級の強く問責する言い方。
3333333333331):小馬鹿にしたり淡々とした言い方または問いかけの言い方。
1111111111141):飽きれた意味を含む最上級の問責する言い方。
なにやぶし
なにゃーぶし
@浪花節、A情が深いこと @・なにやぶし:群馬。
なにやら 【複】@何か、A何だろうか @は今でもよく使われる。
A『何にやあらん』。
なにやらかにやら あれこれ、何やらからや、何やかや 『何やら彼にやら』の意味で古い言葉と考えられる。万葉言葉に『かにかくに』がある。
なにゅー 何を なにゅーやんだよ:何をするんだい。
なによう 【複】何用、何の用 最近あまり聞かなくなった標準語。今では少しきついか、あるいは慇懃無礼で、『何の用』の方が丁寧に聞こえる。当時は、普通に使っていた。
なによーだっ:何の用ですか。
なによ
なにょ
なにょー
【複】何を なにょー:山梨・静岡。
なにんが
なにんか
【副助】何か なにん:何が:山梨。
なだ 濁音化。
なぬが
なぬか
七日 『なぬか』は七日の古形。
★『土』七日(なぬか)ばかり働(はたら)えてそれでも二両は残ったかんな:七日ばかり働いて、それでも二両ばかり残ったからな。
□なぬし 町人の長 『名主』。
広辞苑には『@(村名主) 江戸時代、郡代・代官の支配を受け、または大庄屋の下で一村内の民政をつかさどった役人。身分は百姓。主として関東地方での称で、関西では庄屋といい、北陸・東北では肝煎(キモイリ)といった。里正。A(町名主) 町役人の一。江戸時代、都市で町奉行などの支配を受け、町年寄の下で町方の民政を行なったもの。身分は町人。京都では雑色(ゾウシキ)といった。』とある。
なーねー 縄綯い
〜なの
〜なーの
【助】〜なり、〜だの 列挙する時の助詞。
なのがいり
なのが
家を出てから七日目に帰宅すること。忌まれる。 『七日帰り』。初七日を連想させるためと考えられる。
なのがしょー
なのかしょー
七草粥(1月7日) 手野では、ヌルデの『ざかまた』を切ってきて七草粥を食べ、これに胡麻札を立て豊作を祈った(土浦市史・民俗編)。
むいかどしこし:正月七日を七日正月といいその前日を年越しとして祝うこと:東京。『むいかとしこし【六日年越し】』。
なば
なーば
なーべ
田下駄 高下駄を『たがっと言うように下駄は『げだっと呼ぶ。恐らく下駄の歯の『歯』の意味だろう。当時はまだどこの家でも見かけたが、深田での作業は重労働なので、レンコン栽培に切り替えられすでにあまり使われなくなっていた。
『称呼』には『かんじき(かじき):畿内にてなんばといふ。今按にかじきはくろもじの木をたはめて輪となし縄にてあみ革の紐をつけ大さ壱尺ばかりあるもの也。北越及奥羽なとにて雪靴をはき、かじきを結ひ付て、道路を踏みかたむるのに用ゆ。畿内にて なんばといふは 深田の泥の上を行ものにて 是則かじき也。』とある。近畿と茨城が繋がっていることが面白い。このこのことから納得の行く語源が必ずあるはずである。これは『苗歯』または『縄歯』あるいは『苗歯』の意味なのだろうか。
なーば
なー
なーばわら
なーわら
稲を束ねる縄 『稲把』『稲把藁』の意味。
なーばし @縄梯子、Aしょいこ
〜なはい 【複】『なはる』の命令形。 『なさい』または『なはれ』が訛ったもの。近世語。今では関西・四国・九州地方に残る。茨城では、明治・大正から昭和初期生まれの人が使っていた。
東日本では明治の静岡で著しく残っていた。
〜なはい:静岡。
〜なはいや:〜なさいよ:愛媛。
〜なはりがし:〜なさいませ:静岡。
〜なはりがした:〜なさりました:静岡。
〜なはりがせ:〜なさいませ:静岡。
〜なはれがし:〜なさいませ:静岡。
〜なはれやせ:〜なさいませ:静岡。
〜なへんし:静岡。およんなへんし:お寄りなさい。
〜なーれ:静岡。
まだきておぐんなはいやー:また来ておくれなさいよ。
いっいやっておくんなはいよー:酒を召し上がって下さいよ。
(なばえ) 木の切株から生えた芽。ひこばえ。 『なばえ【蘖】』。
なーはせる 【動】名を馳せる、有名になる
〜なはりやんす 【複】〜なさいます 近世語。
〜なはれやせ:〜なさいませ:静岡。
〜なはりやんしょ
〜なはりやんせ
【複】〜なさいませ
〜なはる 【助動】〜なさる(敬語) 近世語。『なさる』が訛ったもの。今では関西・四国・九州地方に残る。茨城では、明治・大正から昭和初期生まれの人が使っていた。
〜なー:鳥取。
〜なはる:愛媛・熊本。
〜なはんした:〜なさった:静岡。きなはんした:お出でなさった:静岡。元『来なはりやした』か。
〜なーる:奈良。
〜なーれ:〜なされ:静岡。
〜なれる:岐阜。
〜なんす:熊本。
〜はっかし:なさいますか:福島。
〜はる:山形・富山・福井・岐阜・三重・滋賀・京都・大阪・奈良・長崎。動詞『す』の未然形『せ』+助動詞『らる』:『せらる』の変化した『さる』が訛ったもの。
はいぐやんなはいよ:早くしなさいよ。
なばわら
わら
稲を束ねる藁 『稲把藁』の意味。
(〜なひゃーんと) 【複】〜(し)なさい 静岡。元『〜なはらぬと』『〜なはれぞ』か。
なびる 【動】@塗る、Aなすりつける 『嬲る(なぶる)』が訛ったとしか考えられない言葉。
@・なびくる:山梨。
なびる:東京多摩・埼玉・神奈川・山梨。
A・なびる:神奈川。
なびろめ 名を披露すること。転じて県下では様々な民族儀式の呼称となる。 『名広め・名披露目』。
標準語では『芸人が芸名を得た時、または商人が開店の時、その名を世間に披露すること。』の意味。土浦では、@結婚式で花嫁が隣組の婦人に人に茶うをすすめること、A半紙に花嫁の名を書いて配る等がある。
(なーふぁ) 那覇市のこと 沖縄。
なふきん @ナプキン、A女性の生理用具 @辞書には単に『ナプキンの訛り』としているが、これは日本語の布巾にナプキンを重ねたもので地場転置(本サイトで定義した現象名)の例である。
当時は、戦後の混乱の中で、何もかも受け入れられる体制にあったと思われる。そもそも、食事をするときにどうして口を拭く道具が必要なのか、皆が疑問に思っていたはずである。
なぶる 【動】ひやかす、からかう なぶる:触る:岐阜。
(なーひん) 【副】もっと、さらに 沖縄。『尚程』の意味か。
(なーふぁんちゅ) 那覇の人 沖縄。
(なべ) 【形動】曖昧な様 神奈川。
古語に『並へ(なへ):(「なべ」と濁音に読む説もある):一つの事実に伴ってもう一つの事実を認めた意味を表す。』がある。
(なへ) 地震 江戸時代の慶安頃の言葉。本来は『なゐ』
なーべ なーび:沖縄。
◎なべざ 囲炉裏端の主婦の座 『鍋座』(囲炉裏(イロリ)端の主婦の座席。嬶(カカ)座。鍋代(ナベシロ)。)。
なべすぎ
なべすき
鍋敷き 藁で手作りしたもの。ほぼ円座と同じもの。
なべくさ
なべこわし
なべづる
なべばな
なべぶっちゃげばな
なべわり
なべわりばな
ヒルガオ、ハマヒルガオ 茨城では、ヒルガオを家の中に持ち込むと鍋が壊れるという言い伝えがある。
標準語の『鍋破(ナベワリ)』は、ビャクブ科の多年草で有毒なのでいましめとしたのか、うっかり鍋弦に使うと弦が切れるので使ってはいけないとしたかは解らない。ちなみにナベワリは『舐め割り』(葉が有毒なので舐めると舌が割れる)が転じたと言う。
△○なべづる 『称呼』には『尾張の土人鍋づるという。』とある。
なべづる:茨城・愛知。
なべぶだ
なべ
なべっ
鍋蓋 なべぶた:エイの仲間:神奈川。
(なーべーらー) ヘチマ 沖縄。
(なべをゆー) 【複】曖昧なことを言う 神奈川。
(〜なへんし) 【複】〜なさい 静岡。
上方的である。元『〜なはいやし・〜なへえやし』か。原書では『へんし』で文節表現されている。
なま 波と波の間 『集覧:無記載』。
『波間(なみま・なみあい)』が転じたもの。
なま 刺身 当時は魚を生で食べるのは、日常にはなく、冠婚葬祭等の儀式でしか口にできなかった。
なま〜 【接頭】@名詞に冠して、未熟、不十分、世馴れない、手を加えずそのまま、などの意を表す。A用言に冠して、すこし、どことなく、などの意を表す。B動詞の連用形から転じた名詞に冠して、中途半端で不十分である意を表す。(広辞苑) 現代では『生』と当てられている。
今では@『生放送』『生半可』、A『生ぬるい、生暖かい』、B『生煮え』などが良く使われる。
近松作品では『なまあつし、なま小癪、なまこび、なま推参、なまづら、なまとしよる、なまぬかる、なま見られぬ、なまめんどう』などがある。
〜なま 【助】〜よ 感嘆を示す終助詞。間投助詞とも考えられる。『〜なもう』。
現代では『まあ』『もう』は単独ではも感嘆詞として使われることが多い。
夏目漱石の『坊ちゃん』の愛媛方言で有名になった『〜なもし』と同源と考えられる。
橘正一『ナモシの分布』では語源は『ナ申し』としているが、現代語を中心に考えれば感嘆の終助詞『なあ』に感嘆詞の『もう』がつき、それに近世で使われた終助詞『し』がついたとも考えられる。
『なもし』は京阪の言葉が標準語とされた時代の大阪言葉とされ、全国には類義語が数多くある。『なあし、なあーむし、なあもうし、なーも、なあもうし、なあもし、なあんし、ないし、ないしゃ、なおんす、なさ、なし、なす、なっし、なっす、なむ、なむし、なも、なもー、なもし、なもん、なんし、なんしょ、なんす、にーし、にし、にせ、ぬーんし、ぬす、ねぁす、ねぁんす、ねいし、ねーしー、ねさ、ねさー、ねし、ねす、ねすー、ねすか、ねんし、ねんす、のいし、のいせ、のうし、のーしん、のーせ、のーぜ、のし、のしゃ、のっし、のもし、のんし』等である。『なます』もある。
『称呼』に『なさいます。なんす。:島原にては、なますか、なませなどといふ』とある。これらが全て同じ語源を持つ言葉とは思われないが、ほぼ同じ意味で使われる。『なも、なもー』は現代語に通ずる。ちなみに『なもし』系の言葉は一時期は関東では欠落しているとされたが、群馬県利根郡では『そうだね』を『そうだむし』と言うという。また、同じ橘正一『人形の方言』の巻末に、『本誌2月号の「ナモシの分布」に常陸や甲斐にはナモシ系が無いように書いたが実は有ったから補っておく。「江戸時代語研究」の「初期の江戸語」参照。』とある。
なまあ 厚揚げ
なまい 名前
なまいい まだ十分に癒えていないこと 『生癒え』。
(名前) 茨城の名前の特徴は、やはり『い』と『え』の混乱にある。苗字は多くが漢字なので、役所の方で正しい読みがふられることが多いが、平仮名の名前は、そのまま戸籍に登録されたため、変則的な名前が多かった。右側の名前は実際にあった名前も含む。
・えがわ(江川):ー・い
・いいづか(飯塚):いいつか(土浦では今でも清音)。
・いがわ(井川):
・いりえ(入江):えりー・いりー
・いわまつ(岩松):ゆわまづ・ゆわまつ
・えんどう(遠藤):いんどー
・えぐち(江口):ぢ・え
・えつこ(悦子):いづご・いつこ・いっこ・えっこ
・えみ(恵美):いみ
・えんじょうじ(円城寺):いんじょーじ
・かずこ(和子):かつこ・かっこ
・かずみ(和美):かつみ
・かつえ(勝恵):かづい・かつい
・ケネディー:ケネデー
・こいけ(小池):こいげ・こえげ・こえけ
・こいずみ(小泉):こえずみ・こえつみ
・ちえこ(千恵子)・ちえ(千恵):ちーこ・ちー
・さとう(佐藤):さど・さと・さどー
・じゅんこ(純子):じんこ
・すえこ(須恵子):すいこ・すいっこ
・すみえ(澄江):すみい・すみー
・たかし(隆史・隆):たがし
・つちや(土屋):ちぢや・つぢや
・どい(土井):どえ
・とびた(飛田):
・とみえ(富江):とみい・とみー
・はなえ(花江):はない
・ひさし(寿):ふさし
・ひじかた(土方):ひじかだ・ひちかた
・まえかわ(前川):まいかわ・めえかー・めーかー
・まりえ(真理江):まりい・まりー
・みえこ(三枝子):みいこ・みーこ
・みつえ(光恵・美津枝):みづい・みつい
・みつい(三井):みづえ・みつえ
・やえこ(八重子):やいこ
・よしえ(芳江):よしい
(なーまえ) 【複】なあお前 静岡。
なまかー @生皮、A怠け者 『なまかは』
A・なまかー:静岡。
なまーぎ
なまかーぎ
なまわぎ
なまかわぎ
なまかわき
十分に乾いていないこと 『生乾き』(なまがわき)。
なまかーき:東京青梅。
なまかわ 生皮、怠け者
なまぎぎ
◎なま
なまきき
なま
@十分に聞きとらないこと、A▲生意気、ちょっと聞いて知ったふうをすること。聞きかじること。 『集覧:稲』。
『生聞き』。
なまげんき 見かけだけの勢い 辞書には無いが古い言葉と思われる。
なま 生臭いこと、いかがわしいこと
なまぐら
なまくら
怠け者 『鈍ら』。あまり使われなくなってきている標準語。
なまーる 【動】硬くなる
なまご ナマコ なまご:青森。
なまじ
なまじい
なまじり
なまじりかー
【副】なまじっか、出来もしないのにする様 古い標準語。『憖じ・憖じい』。『か』は反語が残ったと見られる。
なまじ:ついでに:静岡。
なましー:生煮え:山梨。『生し』。
なまじか:静岡。
なまじっか:静岡。
(なまじさー) 恥知らず 沖縄。
なまず
なます
@魚や貝あるいは獣の生肉を細かく切ったもの、またそれを、調味した酢にひたした料理、A野菜を細かく刻んで三杯酢やゴマ酢などで和えた料理
なますくわず
なますくわす
不漁 『集覧:無記載』。
『なます』は、釣り漁で最初に釣った魚を言う。
なまずるい 【形】ずるい、狡賢い
なまたれ 怠け者 なまだら:宮城。
なまつかう 【動】狡猾に物事を行なう、ずるする 『集覧:久』。
なまっかーぎ
なまっかわぎ
生乾き(なまがわき) なまっかわき:山梨。
なまっこ @生、A未熟な事、B生意気、ずるいこと
なまっこー 【形】ずるい、狡賢い 『集覧:久』。初版では『なまつかう』である。
なまづらつかい:ずるい人:神奈川。
なまったるい
なまったりー
なまったれー
【形】なまぬるい、簡単にできる様、怠けている様
なまったれ 怠け者
なまっちゃりる
なまっちゃれる
【動】やけにおしゃれする
なまっちょろい 【形】徹底していない、厳しさが足りない 俗語。
なまっちろい 【形】少し白い、変に白い、未熟である、弱弱しい なまっちろい:東京。
なまづら
なまっつら
面をさらに卑しめていう語。いきづら。 『生面』。
(なまづらつかい) ずるい人 神奈川。
なまつーれ 【形動】普通な様 『並通例』の意味。
(なまどる) 方言を丸出しにして喋るアイドル 関西弁丸出しのお笑いは珍しくなく、かつては、『てなもんや三度笠』が1960年代のテレビで人気番組だった。落語は、上方と江戸に二分され、古くから上方落語はテレビで全国放映されていた。
お笑い芸人では、栃木弁の『U字工事』や茨城弁の『赤いプルトニウム』が人気であるが、最近は、リポーターが方言丸出しで淡々と語るのが、新鮮な時代になった。
ウィキペディアには『2007年、MBSラジオ「ゴチャ・まぜっ!」に出演していたグラビアアイドルの青島あきな(宮崎県出身・東京都在住)が、共演していた有野晋哉から「ナマドル」と命名された。』とある。
2010年3月15日の朝日新聞朝刊23面で、『方言「売り」の時代』が記事になった。ここでも『なまドル』が紹介されている。
アイドルに相応しい器量良しの若い女性が、恥しがらずに方言を淡々と語る意外性が受けているものと見られる。
なまなが
なまなか
【形動】生半可 濁音化。『生半』。
なまにー
なまにい
なまね
なまねー
生煮え なまにちゅく:静岡。
なまはが
なまはか
【形動】生半可
なまはん 【形動】生半可 標準語。『生半』(なまなか)。
なまはんか 【形動】生半可 標準語。『生半可』。『集覧:稲』。茨城方言集覧に掲載されているのは、当時の新語か、望ましく無い言葉とされたものと思われる。意味は『なまなかと言ふいう意』とある。当時は『生半』が主流であったことが解る。
なまはんじゃぐ 【形動】中途半端、生半可 清音なら標準語。『生半尺』。
なまはんじゃく:静岡。
なまふざげ 【動】甘い気持ちでふざけること 清音なら俗語。『なま』は未熟な意味。
なまふざげる 【動】甘い気持ちでふざける 清音なら俗語。
なまふざけた:ふざけた:東京。
なーまぶし 縄を使ったまぶし 間もなく紙を使ったハニカム型のまぶしに変わった。
なまへんじ 気のない返事、上の空の返事 なまへんじ:埼玉。
なまみず 煮沸していない水 衛生管理が行き届かなかった時代の言葉。
なまら 【形動】おおよそ 『新方言』に『ナマラ :大変。北海道の若者(1983)、新潟市の若者も同じ意味で使うことがある。ただし新潟市近郊三島郡の老人が「だいたい,半ば」の意味で使うので、その影響も考えられる。』とある。
なまら:非常に:北海道。
なまら:神奈川。
なまらへんじ:生返事:神奈川。
なまらはんじゃく 【形動】中途半端、生半可 『なまら』は『生』に接尾語の『ら』が付いたものと考えられる。『なまはんじゃく、なからはんじゃく』とも言う。
ながらはんちゃぐ:岩手。
なまらはんじゃく:新潟・福井・福岡。
なまらはんじゃく:未熟:福島。
なまりべー 鉛で作ったベエゴマ
なまる 【動】(天気が)凪ぐ なまる:天気が下りぎみになる:静岡。
(なまれ) 草地 静岡。
なみかず 【形動】人並みのさま
なみぎ 並木 なみぎ:千葉。
まづなみぎ:松並木。
なみしゃ シマヘビ
なみた 涙の古形。
(なみだそうそう) 【複】涙がぼろぼろ零れ落ちる 沖縄。歌の歌詞としても有名な沖縄方言。
なみだっ 【形】涙もろい なみだっ:東京。
なみつーれ 【形動】普通な様 『並』+『通例』。似た言葉の繰り返し。
なみやぶし 浪花節
(なみよけ) 寒いときに漁師が船上で着る綿入れの半纏 神奈川。
なーむしろ 縄むしろ、筵 筵を編むことはそんなに難しいことではなく『むしろだい』を使えば子供でも作れる。座位の作業を前提に低い『うまがた』の(正面から見ると門型)貫に沿って30cm程ピッチで麻紐やシュロ紐をまるめたものが付いているだけである。
そこに横糸として綺麗に選った藁を据えて縦糸を交互に抑えれば、いつの間にか筵が出来上がる。
(なむない) 【複】役に立たない。ごく普通の。無名の。 静岡。『名もない』『何も無い』か。
◎なむら 魚の群れ 『魚群』(なぶら。なぐら。ふむら。おおね。)。
:神奈川・静岡・三重・和歌山。
なぶら:神奈川・静岡・和歌山・三重。
なめら:東京都大島・高知。
なめ 名前 なめ・なめこ:青森。
なめー 名前 江戸言葉。
なみみゃー:静岡。
なめー:神奈川。
なめかーがす
なめっかがす
【動】溺愛する 『舐めては乾く』様を表現したものだろう。
なめがだ
なめ
なめかだ
なめかた
茨城県内の地名 『行方』。標準語ではしばしば『なめた』と発音される。
なめーぎ 生意気 なめーき:神奈川。江戸言葉。
なめく
なめくじり
□なめくじら
なめくち
ナメクジ 『集覧:稲』。=『いーなし』
『なめくじり』は、ナメクジの別称。江戸時代の辞書である越谷吾山『物類称呼』によると当時の常陸国では『はだかまいぼろ』と呼んでいたと言う。
全国にある方言にはこのほか、『まめくじら、まめくじ、なめらくじ、はだかなめくじ、はだかなめと、はだかめーめー、はだかだいろ』(日本語源大辞典)等があるという。
◆■▲△▽なめこい
なめけー
【形】なめらかな様、滑るさま 『集覧:稲』。
『滑』+『こい』。
なめこい:福島・栃木・千葉。
くぢがなめこい:よくしゃべる。
なめすする 【動】液状の飲み物や食べ物等を直接すすったり食べたりすること
なめずる 【動】@舐めまくる、A馬鹿にする、B可愛がる 標準語の『舐めずる』は、舌で唇を舐め回す意味。
@・なめずりあるく:舐め回す:神奈川。
なめずる:静岡。
なめする:舐める:神奈川。
A・なめずる:佐渡島。
なめっくじ
なめっくじら
なめっこじ
ナメクジ なめっくじ:群馬。
なめっくじら:山梨。
なめっこい
なめっけ
なめっけー
【形】なめらかな様 『集覧:猿』。
標準語では古い言葉ではあるものの『すべっこい』が該当する。そうすると逆にキノコの『ナメコ』は『スベコ』にならないといけない。果たしてどっちが訛なのか解からなくなる。
なめっこい:福島・東京・山梨。
なめらっけー:神奈川。
(なめった) 水田 静岡。
なめら シマヘビ 『集覧:久』。
なめら:静岡。
なめらがす 【動】@舐める、A馬鹿にする
なめりじ ナメクジ 『集覧:稲』。
なめりみぢ
○□なめりみち
滑りやすい道 『称呼』には『道路のぬかりを、関西にてしるいと云。東国にてぬかりと云。(中略)又道のすべるを常陸にてなめり道といふ。案に是に似たる事有。俗に猿すべりと云木有。歌に猿なめりとよめり。』とある。
なめる 【動】滑る 古い標準語。茨城では多く複合語を形成する。
つんなめる:滑って勢いよく倒れる。
なも
なーも
【複】何も なも:いいえ:青森。
なも:青森。
なもかも:何もかも:青森。
なもきでね:何も聞いて無い:青森。
〜なーもー 【複】〜ねえ、〜なあ 愛媛方言の『なもし』と同義語。
〜なも:長野・岐阜・愛知。
〜なもし:愛媛。
〜のも:福岡。
(〜なもし) 【助】〜なあ 橘正一の『ナモシの分布』によれば以下の大半が『ナモシ』系に該当する。『し、す』は『候』が原型と考えられるから、『シ』を取れば現代語の『びっくりしたなあもう』の、『なあもう』と同じである。そのため、橘正一が唱える説は強引さを感じてしまうが、仮に音形が異なるものを除いて『なむ〜、なも〜』だけを取り上げても、北は東北から九州まで分布するのである。
そうした視点で見ると標準語の『ね、ねえ』は極めて特殊な言葉であるとも言える。
以下の事例は、書籍を中心に様々な言い方をい方を集めたものだが、原型は『な』で東日本を中心に『ね』に変化し、西日本を中心に『の』に変化したものに別の助動詞・助詞が付いてできた言葉であることは間違いない。
橘正一は語源は『な申し』としているが、私はもっと単純に考えて『〜なもう候』しかないと考えている。どうやら『も』は強調語で無くても意味は同じなのである。そう考えると以下の日本各地の方言の言わんとする意味が見えて来る。あとは、『な』が『の』に変わっても仕方が無いし、『し』は無くても意味は同じである。
ただし、歴史的には、丁寧語の典型的な表現として、語尾につけた『候』(そうろう・そう)が重要である。『ます』の原型は『申す』だが、『です』『で候』である。終助詞としての近世の『し・す』は、現代語の『さ』に当たり、全国の方言にその名残を残している。
また『候』は、『さふらう・さぶらふ』とも言い、『侍』に通ずる。
別に、『なむ:(完了の助動詞ヌの未然形ナに、推量の助動詞ムのついた形) 動詞の連用形に接続して未来の推量・決意・勧誘・可能・適当の意を表す。それらの意が動かす余地のないものだという強めをナが受持つ。後に「なん」となる。@…てしまうだろう。きっと…するだろう。A…してしまおう。必ずや…しよう。B…することができよう。C…してはどうか。…しなさい。D…の方がよい。…のが適当だ。』に近世の終助詞『し・す』が付いた、『なむし・なむす』が残ったとも見られる。ただし、『なむし・なむす』は辞書には無い。
『俚言』には『もさ:(中略)或は猛者の音なり。愚按坂東もさとは、今関東べえといふが如し。又もさは今、どさあといふが如し。とさあとは音のなまりたるを云なり。今も助語のもさといふ言をつけていふ也。何だもさ何たもさあなど云。』とある。これからも、『もさ』とは『申し候』が訛ったものだろう。現代語の『ます』に通ずる。
〜いむし:群馬。『い』は『や』が変化したもの。
〜うんた:山口。『のうあなた』。
〜えか:石川。
〜えね:富山・石川。
〜だのせ:〜なんです:青森。
〜ない:山形・福島・新潟・八丈島・和歌山・大分・宮崎・熊本。原型は『〜なや』
〜ないし:宮城・長野。
〜ないしゃ:宮城・長野。
〜なえ:茨城。
〜なおんす:山形。
〜なさ:岩手。
(なもし系)
〜なし:青森・秋田・山形・福島・福井・長崎。
〜なーし:愛知・滋賀・愛媛・高知・長崎。
〜なす:青森・岩手・山形。
〜なた:佐賀。『なあ、あなた』。
〜なーち:鹿児島。
〜なっし:山形。
〜なっす:岩手・山形。
〜なのせ:〜なんです:青森。
〜なはん:岩手。
〜なむ:長野。
〜なむし:岩手・宮城・愛知。
〜なーむし:岩手・長崎。
〜なも:長野・岐阜・愛知・三重・徳島。
〜なもー:愛知。
〜なーも:愛知。
〜なもし:岩手・宮城・愛知・愛媛。
〜なーもし:滋賀・長崎。
〜なーもーし:滋賀。
〜なもん:愛知。
〜なや:宮城・茨城。
〜なん:愛知。
〜な:秋田。
〜なんし:山形・愛知。
〜なーんし:愛知。
〜なんしょ:長野。
〜なんす:岩手・秋田・山形。『なむす』が訛ったと見られる。
〜に:静岡・長野。
〜にし:三重・長崎。
〜にーし:長崎。
〜にせ:三重・奈良。
〜にゃー:奈良。
〜にょ:奈良。
〜ぬす:青森。
〜ぬーんし:千葉南部。
〜ね:首都圏・京都。何故か京都だけは進んでいる。『ねん』の方が新しいとされる。東西交流の中で、東の『ね』が西に伝わり、後に『ねん』に変化したと見られる。
〜ねぁー:宮城・島根。
〜ねぁす:秋田。
〜ねぁんす:宮城。『なり候』。
〜ねえ:山形・首都圏。
〜ねさ:青森・秋田。
〜ねさー:青森。
〜ねし:山形。
〜ねーし:滋賀・愛媛・長崎。
〜ねーしー:静岡。
〜ねす:秋田・宮城。『なり候』。
〜ねすー:青森。『なり候』。
〜ねすか:秋田。『なり候か』。
〜ねーた:山口。『ねー、あなた』。
〜ねもし:京都。
〜ねや:高知。 『なりや』
〜ねん:山形・京都・大阪・兵庫。『なので』。『なんでやねん』:どうしてだね:大阪。
〜ねんし:愛知。『なり候』。
〜ねんす:宮城。『なり候』。
〜のー:青森・山形・群馬・埼玉・富山・三重・京都・兵庫・奈良・広島・山口・徳島・香川・愛媛・長崎・大分 等。
〜のい:富山。
〜のいし:愛媛。
〜のいせ:三重。
〜のーか:石川。『なりけり』。
〜のーかい:石川。『なりけりや』。
〜のけ:石川。『なりけり』。
〜のきゃ:石川。『なりけりや』。
〜のし:山形・新潟・愛知・三重・奈良・和歌山・淡路島・高知・福岡・佐賀。
〜のーし:愛知・三重・和歌山・愛媛・高知・長崎。
〜のしゃ:福岡。
〜のーしん:静岡。
〜のす:山形。
〜のーせ:高知。
〜のーぜ:高知。
〜のーた:山口。『のうあなた』。
〜のっし:高知。
〜のっす:岩手。
〜のも:福岡。
〜のもし:愛知・愛媛。
〜のら:奈良。『のだ』の意味とも思える。
〜のれ:兵庫。『ので』の意味ともとれる。
〜のわい:佐賀。『のー、お前』。
〜のん:愛知。
〜のんし:山形・茨城・千葉南部・静岡・愛知・和歌山・愛媛・高知。
〜のんた:山口。『のうあなた』。
〜ほー:熊本。
〜みー:奈良。
〜むし:埼玉・群馬。
〜んも:福岡。
なーもじり 縄綯い
なーもっこ 縄を編んで作ったもっこ
なもねー
なーもねー
【複】何も無い なーもなーも:どう致しまして:石川。
なもねー:見事な:山梨。
なんもなんも:どう致しまして:北海道・青森。
〜なもんで 【助】〜(のこと)なので 『〜だもんで』
じざーとーぢゃんにちぐぬいで、そごにいったころなもんだがらー、とーぢゃんがうっせーんだわ:実は、お父さんに嘘を言って、そこに行った頃のことなので、お父さんがうるさいんだよ。
なーやー 真壁郡・稲敷郡の方言。
兄は『せな、せなあ』と言う。
なーやー:茨城・千葉。
なーや
なーやー
【感】あのね(おいお前、あなた)、なあ 『あーよ・あよー』
なぃ:福島。
なや:宮城。
なーやい:静岡。
〜なや
〜なーや
〜なやー
〜なやーー
〜なーやー
〜なーやーー
【助】@〜なあ、〜ねえ、A〜(する)なよ 『集覧:西』。
『〜なや』は古い標準語とも言える。『や』は古い標準語にある強調の助詞。以下イントネーションの一例。長音ほど強調した言い方になる。高い4音はさらに高い5音になり、声がひっくり返る事もある。
〜なや
〜31
〜なやー
〜241
〜なやーー
〜1141
〜なーやー
〜1141
〜なーやーー
〜11441
〜11141
関西では『や』は断定の終助詞としても使われ、多く『〜やな』が使われる。
@感嘆の終助詞『な・なあ』に感動を示す終助詞『や』がついたもの。『なや』『ない・なえ』を経て現代語の『ねえ』に変化したとも考えられる。
〜うんた:山口。『のう、あなた』。
〜な:群馬・三重・徳島。
〜ない:宮城・山形・福島・八丈島・新潟・静岡・和歌山・島根・大分・宮崎・熊本。原型は『〜なや・〜なよ』おかしない:可笑しい:静岡。
〜なーいー:静岡。元『〜なーやー』と考えられる。
〜なし:福島。
〜なた:佐賀。『なあ、あなた』。
〜なや:宮城・茨城・栃木。
〜なやー:栃木。
〜なーや:静岡。
〜なーやい:静岡。
〜なーやー:宮城。
〜なん:愛知。
〜に:〜ね:静岡・長野。
〜にゃー:奈良。
〜にょ:奈良。
〜ねぁー:宮城・島根。
〜ねや:高知。
〜のい:富山。
〜のー:青森・山形・群馬・埼玉・富山・三重・京都・兵庫・奈良・広島・山口・徳島・香川・愛媛・長崎・大分 等。
〜のし:和歌山。
〜のーた:山口。『のう、あなた』。
〜のら:奈良。
〜のれ:兵庫。
〜のわい:佐賀。
〜のん:愛知。
〜のんし:茨城。
〜のんた:山口。『のう、あなた』。
いんやべぃんちゃーずはいいなや:いやあ、ベンチャーズは良いねえ。
なにやってんだなやーー:(いったい)何を遣ってるの。
A否定の助動詞『ない』の命令形『な』に感動を示す終助詞『や』がついたもの。現代語では『なよ』に当たる。
〜なやな 【助】〜(する)なよな はーやんなやな:もうするなよな。
なよ
なーよ
なよー
なーよー
なーよーー
【感】あのね(おいお前、あなた)、なあ、ねえ 『あーよ』『あよー』より古い表現。標準語も含め、古い言葉の『己・汝(な)』(あなた・お前)が残ったと推測される。この『な』は中国語・韓国語にもつながる言葉と言われる。直訳すれば『お前よ』。青森・新潟ではお前を『なー』と言う。
青森では今でも『お前』を『な』と言う。
八丈方言では『のう・なぉ』に当たる。以下典型的な茨城方言のイントネーション。第1音が1音で4音に続く場合は強調形で、5音になって声がひっくり返るほど高い場合は最も強調した言い方になる。
なよ
 31:淡々とした言い方。
なーよ
 331:淡々とした言い方。
 141:やや強調した言い方。
なよー
 331:淡々とした言い方。
 241:やや淡々とした言い方。
 141:やや強調した言い方。
なーよー
 3331:やや淡々とした言い方。
 1141:強調した言い方。
なーよーー
 11141:最も強調した言い方。

なぃ:福島。
なーよー:静岡。
なーよ、となりのとっつぁんそーゆったのにー、おめーはゆーごどきかねーきが?:ねえ、隣のお父さんがそう言ったのにあんたはその通りにできないの?。
★『土』:此(こ)んでもなよ、おつかゞ地絲(ぢいと)で織(お)ったんだぞ:これでもなあ、母さんが地糸で織ったんだぞ。
〜なよ
〜なーよ
〜なよー
〜なーよー
【複】〜な、〜ね、〜ねえ 感嘆の終助詞『なあ』に感動を示す終助詞『よ』がついたもの。=〜ない、〜なえ、〜なや〜なーや、〜なーやー、〜なやー。禁止の意味の『なよ』とは異なる。
近世語の『〜ない、〜なえ』原型の『〜なや』『〜なよ』『〜ない、〜なえ』『ね、ねえ』に変化したと考えられる。
この『い』は、命令・疑問・断定など種々の文の終りについて語勢を添える終助詞。『や』から『え』を経て、または『よ』から変化したとされる。感動その他の語勢を添える(広辞苑)。現代標準語では『〜かい』(軽い疑問・強い反対)を除き死語になってしまった。
『新方言』には『〜ナヨ:ねえ。栃木県足利付近の若い男子に多かった(1956)。』『〜ネーヨ:ねえ。栃木県足利付近の若い女子に多かった(1956)。』とある。『〜ねーよ』『〜なよ』の女言葉と言える。以下の方言も、西日本『ね』の発生が『なや・なえ』であることを示している。『な』は古語の『なり』に由来する。東日本では『たり』が発展し、『〜だい・〜だよ』に変わる。
古い言葉の『己・汝(な)』(あなた・お前)に終助詞『よ』が付いたとも推測される。三重の『〜なれ』も古い二人称『なれ』と見られる。
〜なーよ:東京武蔵村山。
〜なれ:三重。
〜ね:〜なよ。『「うまかちゃんぽーん、はよ来〔こ〕んねー」』(長崎)。
〜ね:〜だい・〜だよ。『なんね、今日〔きょー〕は』(長崎)。
ぜーぶんいっーかったなよー:随分一杯買ったねえ。
なよなよ 【副】弱弱しい様 当時は良く使われた言葉。
うんなうんな:鹿児島。
うんなくりうんなくり:鹿児島。
なーより 縄綯い
ならー 【動】習う ならる:青森。なられ:習え。
〜なら 【接尾】〜達 『〜の等』の意味。これは万葉集の時代の東国語『のら』(のら【接尾】親愛の意を表す。万一四「いも―に物言はず来にて思ひかねつも」)の流れ。『〜なる等』の意味。
□ならい
◎ならいかぜ
北西の風、北北西の風 東日本共通の訛りとする辞書がある。広辞苑には『冬の強い風。三陸から熊野灘に至る海岸でいう。方位は地域により異なる。』とある。冬に山並みに沿って吹く風。
柳田国男は『風位考』でその語源を『山並みと同じ方向に吹いてくる風の意で、ナラはナラブ(並)、ナラウ(習)のナラと同じ。』としている。
『方言学概論』には、『ならいは元禄時代の京阪語だったが、今日は、豊後を除けば東日本に限られる。』とある。全国の方位は以下の通り。
北風:千葉・神奈川・八丈島・静岡・大分。
北東風:岩手・千葉・東京・神奈川・伊豆大島・静岡・愛知。
東風:山形・東京・静岡・愛知。
南東風:静岡。
南風:静岡。
西風:岩手・宮城・福島・千葉。
北西風:宮城・茨城・東京・静岡・愛知。
北北西風:茨城。
また、八丈島では北東風を『ひしならい・こーむなれー・ひらならい・ひらんならい』、北西風をを『かわむらならい・ひらんなれー』と言う。
ならがす
ならかす
【動】@(音を)鳴らす、●鼾をかく、A(自転車など)を勢い良く飛ばす 『鳴らす』の転。
@・ならかす:神奈川・山梨。
(ならし) 衣類を掛けるために、土間の壁にそって、また寝室などにつるして置く竿。みせ竿。かけ竿。そぞ。ならし竹。 『均し・平し』。
ならし:鹿児島。
ならしもぢ
ならせもぢ
豊作を祈願するための餅、繭玉もち 『まいだまもぢ』
1月15日(14日)の風習。カマドか、土間に伏せた臼を置き、2m程度のクヌギやナラなどを縛り付け、その枝に紅白の餅を付ける行事。その他、仏壇や神棚、大黒柱、牛馬の小屋等の要所に小型のものを用意した。
豊作を祈願して作物毎に形をまねて作り、蚕の場合は蚕型に作るのが本式だそうだが、土浦では普通の円盤型で台所に祭ったことから、米の豊作が主眼だったようである。古くは、繭型だったとされる。
その後、減反政策とレンコンに適した土地柄だったことから無くなっていった。保存食代わりにもなって、時期が過ぎると子供のおやつ代わりになり楽しみな時期だった。19日に枝を払う。
(ならちゃ・ならちゃわん) 蓋付の飯茶碗。奈良茶粥を盛るのに用いたことからいう。(広辞苑) 『奈良茶・奈良茶碗』。
ならちゃ:鹿児島。
ならっぢゃわん:鹿児島。
〜ならっしょ
〜ならっせ
〜ならっせー
【慣】〜なさって下さい 『ならっせえ』『しょ』『せえよ』が訛った形。
〜ならっしゃいまし:〜なされませ:静岡。
おやすみならっしょ:お休みなさい。
ならばる 【動】並ぶ 古い表現。『並べる』の擬似自動詞形。
ならばる:栃木。
ならほど 【感】なるほど 『集覧:猿』。『〜にてあらむほど』の意味か。
ならほど:埼玉・神奈川。
(なられる) 【複】 『成る・為る』の尊敬形。
〜なれる:岐阜。
ならんね
ならんにぇー
【複】(しては)ならない 『集覧:稲』。
やってはならんにぇ:遣ってはならない。
▽なり @形、服装、身なり、格好、状態、Aそっくりそれに従う意を表す。するとおり。まま。 『形・態』。
熟語『なりをひそめる:@物音をたてず静かにする。沈黙を保つ。A表立った動きをやめる。』の『なり』は『鳴り』であり、意味が異なる。日本語はかつて文字・漢字が無かったから、『形・態』と『鳴り』は元は同源だったのではないかと思われる。
動詞の『なる』『生る・成る・為る』『慣る・馴る・狎る・熟る』『鳴る』があり、各々現代では別の意味が当てられているが、古代の日本語では、同じ意味だったのではないか。英語では『become』は最も近い。
@・なり:宮城・山形・東京。
★『土』:そうら見(み)ろ、大(え)けえ姿(なり)していふこと聽(き)かねえから。
A・〜なりに:〜のまま:青森。
なりあい 恋愛、恋愛結婚 『成り合い』の意味。『成り合ふ』の名詞形。
なりあい:群馬。
なりあう 【動】恋愛する 『成り合ふ』(いっしょになる。一つになる。親しくなる。なれあう。)。
なりおど 太鼓や鐘などが鳴る音 『鳴り音』。辞書には無い。
なりおと:宮城。
なりおどひびーできた:(祭りの太鼓の)音が響いてきた。
▽なりき 果物のなる木、果樹 『生り木』。
なりぎ
なりーぎ
成り行き なりき:ぞんざい:静岡。
なりぎ
なるぎ
乗り気 『気が成っている』意味(その気になる)もあるかもしれない。
まったぐなるぎんなってねー:全く乗り気になっていない。
なりきぜめ 小正月の行事。柿などの果樹の豊作を祈願する。 『生木責め』。
広辞苑には『果樹に頼んだりおどかしたりして豊熟を誓わせるまじない。刃物を持って木に向かって「成るか成らぬか」または「成すか成さぬか」と問い、木の陰で「成ります成ります」と木に代って言う。』とある。『きまじない【木呪】』とも言う。
水戸市に残る。果樹の幹に傷をつけたり、ヌルデの棒でたたいたりする。
なりきぜめ:群馬・神奈川。
なるきぜめ:神奈川。
なりきん 急に金持ちになること、またはその人 『成金』。『貧乏成金』。
なりくろ
なりくろくいころ
なりころ
インゲンマメ 『どじょーいんん』
なりこ
なりっこ
形、服装、状態 『形・態』+『こ』。
なりっこ:神奈川・静岡。
(なりっこ) よく怒声を上げている人 神奈川。
なりしん 果物等がなる最盛期 『成り旬』の意味。
なりそめ 馴れ初め
なりっ
なりっ
なりぼー
なりんぼ
なりんぼー
なれんぼ
癩病患者 広辞苑に『なりんぼう【癩坊】:俗に、ハンセン病の人。』とある。
なりんぼ:福島。
なーりんぼー:静岡。
(なりまくどーする・なりまくる) 【動】大声で怒鳴る 神奈川。
なりもの
なりものー
なりもん
果物、収穫物 『生り物』。
なりじもく:果物:長野。
なりずもく:果物:長野。
なりもの:果物:静岡。
なりもーせ 繭玉餅 原型は『(正月になり申す会)』すなわち、正月の儀式の意味と考えられる。
本来は正月の行事。明治以降、旧正月の行事になったと思われる。
なりもっせ 小正月の『成り木ぜめ』の行事の掛け言葉。 『歳時記』に掲載。
なりやい @恋愛、Aぐる
〜なりやした
〜なりゃした
〜なりやんした
〜なりゃんした
【複】〜なりました 丁寧語。近世語または近世語の変化したもの。
〜なりやした:福島。
〜なりやしめーが 【複】〜なりはしまいか なりやしめー:ならないだろう:埼玉。
〜なりやしめーがどおもって
〜なりやしめーがどもって
【複】〜なりはしまいかと思って
(なる) 【動】叫ぶ 神奈川。
(〜なる) 【動】なさる 『成る・為る』。
〜なー:島根。
〜なる:神奈川・長崎・宮崎。
〜なる
〜なーる
【助】〜にある 今では文語世界にしか無い語法。今では『〜なる』が残ったのか、『〜にある』が訛ったかは定かでない。
あすごなるよ:あそこに有るよ。
なるい 【形】緩い、おだやか、はっきりしない 古い標準語。『緩い』。
なるい:群馬・静岡。
なるい:弱い:山梨。
(なるう) 【動】習う 鹿児島。
(なるき) 丸太 静岡。『生り木』に由来するか。
□なるこ 田畑を荒らす鳥をおどし追うのに用いる具。小さい板に細い竹管を糸で掛け連ねたものを縄に張り、引けば管が板に触れて音を発する装置のもの。引板。 『鳴子』。
(なるた) 丸太 静岡。
なるたげ
なるったげ
なるったけ
【副】成る丈、なるべく、できる限り 『なるたけ』ならやや古い標準語。『成り丈』とも言う。
なりたけ:東京・山梨。
なるったけ:群馬・東京。
◎なるへそ 【感】なるほど 古い俗語。
なるへそ:静岡。
なーるほど
なるほと
【副】なるほど 会話中の相槌の言葉。
なりほど・なりほと:青森。
なるめど 【感】なるほど 茨城弁の流行語か。
なれー
なれーかぜ
冬の太平洋側の季節風、冬の東北の風 『ならい』が訛ったもの。
なれあい
なれいー
@恋愛、Aぐる Aは標準語。
なれあいけっこん 恋愛結婚 できあい:神奈川。
なれあい:神奈川。
なれこ 慣れっこ 広域方言。
なれこ:山形・群馬・愛知付近。
なれしき:山形。
なれこい
なれっこい
【形】人懐っこい なれこい:宮城。
なれーもの 習い事 『習い物』。
(なれる) 【動】腐る 佐渡島。『慣れる・馴れる・狎れる・熟れる』。
現代では『馴鮨・熟鮨』に残る。『くされずし』とも呼ばれる。
なわしろ 苗代 標準語の中の訛り。『なわ』は『苗』の意味。
(なわた) 魚の内臓 佐渡島。『魚腸』の意味。
なわで
なわて
あぜ道、畦 『縄手・縄手道・畷』。
なわない
なわないしょーがづ
なわないしょうがつ
なわねー
なわねーしょーがづ
仕事始め(1月4日) 1月4日、早朝に起きて藁を木槌でたたき代掻き用の縄を作る。
なわもじり 縄綯い 『集覧:久』。
やや古い標準語。
(なん) 鹿児島。
(〜なん) 【助】〜なの 群馬。関東では群馬にしかない。
〜なん 【助】〜の 『〜な』が更に訛ってそう言う場合がある。
こっちなんほー:こっちの方。
〜なん
〜なーん
【助】〜な、〜ね この発音は意外に難しい。もともと茨城県人自体が『なん』とは発音していないからである。他の訛にもしばしばある鼻に抜ける発音を思い起こす必要がある。標準語世界の方は鼻の穴を大きく開けるようなイメージで語らないと難しいだろう。『な』『なあ』と言いながら『〜なん、〜なーん』と聞こえるようになれば完璧。
〜なん:福島。
(なんか) 【複】何か 当時の茨城の主流は『なにが』。上大津地域では標準語の『なんか』は垢抜けた新鮮な言葉に聞こえた。原型の『何か』の濁音形がことさらに守られた。ただし、『〜なんか』は濁音化することはあっても不思議だが使われた。
さらに、『〜なんてよ』が訛った『〜なんちょ』は茨城方言の白眉とも言える。
〜なんが
〜なんか
【助】〜なんて、〜など 〜なーか:静岡。
なんか 【形動】わがまま、【名】我がまま者 『南華』は、広辞苑に『@(「荘子」に寓言が多いからいう) うそつき。変人。A(遊里語) ばか。愚者。野暮天。』とあるが関連は見出せない。『難関』の意味か。
A・なんか:暴れ者:静岡。
なんか:子供の強情のこと:静岡。
なん 【形】長い 強調語。
なん:静岡。
なんかいかめ 【形動】何回かのうち この場合の『か』は副助詞で『多く不定を表す語と共に用いられて不確実な意を表す。』の意味。
なんかいもさんかいも
なんかいもひゃっかいも
【副】何回も
なんかいり 【副】何回 『返り』には回の意味がある。
(なんかかる) 【動】もたれる、寄りかかる 鹿児島。『投げ掛ける』の自動詞形。
なんがかんか
なんかかんか
【副】なにやらかんやら、何か 『何か彼にか』の意味。
なんがし
なん
何がし ないがし:鹿児島。
なんがし:鹿児島。
なんがしが
なんがしか
なんしか
なんしらが
何がしか、何か なんかしらっか:長野。
なん
なんかち
【形動】気難しい様、【名】気難しい人、難物 『集覧:猿』。
茨城方言集覧では『気難しきこと』とある。『難勝ち』の意味。接尾語の『勝ち』は鼻濁音で発音するが、古くは清音だった可能性がある。
なんかち:悪戯:静岡。
なんかぢーと
なんかっちーと
【複】何かというと
△なんかん
◎なんかんもの
手に余ること(人)、困り者、わがまま 『難関者』。
なんかん:埼玉・千葉。
なんかんもの:山形・佐渡島。
なんかんうま
なんかんま
なんかんんま
あばれ馬 『集覧:猿』。
『難関馬』の意味。
なんかんうま:佐渡島。
なん 難儀、容易ならないこと、困難なこと 標準語では口語から消えつつある。一般には関西弁と考えられている。土浦では日常的に使われた。
なん:岩手。
なん:苦労:宮崎・沖縄。
なん:疲れること・面倒なこと:沖縄。
なん:難儀をする:三重。
なんする:苦労する。
なん
なんきゃ
なんしゃ
海岸、海辺 『海際』(うなぎわ)または『波際』の意味。
(なんぎゃあん・なんぎゃん) 投げ網 鹿児島。
なんきん 大角豆(ささげ) 『集覧:真』。
なんきん:カボチャ:香川。
(なんきんむし) 南京虫 DDTでノミ・シラミが駆逐された時代だったが、それでも稀に南京虫が集っている子供がいた。その家は今思えば随分不健康な環境にあり、山林の中にひっそりと暮らしていた。当然トイレは汲み取りで台所や浴室の排水は山林に垂れ流していた。昼間もなお暗い環境にある家に入ると饐え臭い臭いとカビ臭い臭いがどっと押し寄せた。子供は男3人兄弟だったが、ある日その末っ子がぼりぼり頭を掻くので『ノミでもいんだねーのが』と言ったら、長男が『ナンキンムシにくわれでしょーねーんだよ』と返って来た。おそるおそる髪の毛を分けて見ると、ちょうど米粒ぐらいの丸くて平べったいものが髪の毛の根元のあちこちについていた。昭和30年の後半のことである。
ナンキンムシは本名を『トコジラミ』と言い、繁殖力や環境適応力が旺盛で場所を選ばず、乾燥にも強いため今でも繁殖していると言う。
なんきん
なんきんむすび
南京結び もやい結びに似た締め方で、車の荷造り等で使われる。しっかり締められる一方簡単に解くことができる。農村生活では不可欠。何故か辞書には無い。
(なんり) 【形動】のどかな様、のんびりした様 のん:茨城・群馬。
(なんくるないさ) 【複】なんとかなるさ 沖縄。
(なんくゎー) カボチャ、南瓜 沖縄。『南瓜(なんか)』。
なんけーもさんけーも
なんけーもひゃっけーも
【副】何回も なんけりもさんけりも:宮城。
なんけーり 何回 『何返り』。
なんけり:宮城。
◆▲なんこ
なん
なんことり
@おはじき、Aお手玉 『集覧:多・稲』。
茨城方言集覧では『手玉』と解説されている。『手玉』は古くは女の子が遊ぶ玉類の総称だったようである。標準語では『 遊戯の一種。碁石・小石または細かに折った杉箸などを握って差し出し、人にその数をあてさせるもの。』とある。『何個』。したがってお手玉を指す茨城方言の『なんこ』はお手玉の古形の呼称そのものが残ったものである。
『称呼』には『石投(いしなご):江戸にて手玉といふ。東国にて石なんごなつこともいふ。信州軽井沢邊にてはんねいばなと云。出羽にてだまと云。越前にてななつごと云。伊勢にてをのせと云。中国及薩摩にて石なごといふ。』とある。当時の代表語は石投(いしなご)であり現代のお手玉は単に江戸限定の方言だったことになる。
『俚言』には『なんこ:古へはなごといふ。石なごの略なり。』とあり、『何個』は当て字であることになる。なんは江戸時代にお手玉を指した近世語である。
@・なん:山形。
なんこ:福島・茨城・千葉・和歌山。
A・なっこ:お手玉:埼玉。
なん:お手玉:埼玉。
なんざ〜 【副】何か〜、何と〜 『何ぞや』の転訛。
なんざあったのげ:何かあったのかい。
〜なんざ
〜なんざー
【助】〜なぞは、〜なんか 原型は『〜なんぞは』。
〜なんざ:群馬・東京。
〜なんざー:群馬・静岡。
あーたごどなんさなんちこったねー:あんな事なんてなんて事無い。
★『土』:お内儀(かみ)さん本當(ほんたう)ですともね、わしあ嘘(ちく)なんざお内儀(かみ)いひあんせんから
★『土』:俺(お)らなんざ、腹(はら)さ藏(しま)って置(お)くから盜(と)られっこなしだ:俺なぞは、腹にしまってあるから(みんな食べてしまうから)、取られっこない。
なんじぇ 【副】何で、何故 なんじぇだっ:何でだろう。
なんしきた
なんしーきた
【複】何しに来た? 格助詞の欠落。
なんしきた:埼玉。
なんしーきただ:何をしに来たんだ:山梨。
なんじーする 【動】難渋する
(なんした) 【複】どうした 神奈川。
(なんして) 【複】どうして、何故 福島・神奈川・長野・新潟。
なんしにきた
なんしんきた
【複】何しに来た?
(なんじゃ) 沖縄。古語由来とされる。
(なんしゃ) 【複】何しに来た? 福島。
なんじゃ 【慣】何だ 高齢者言葉。時代劇でも聞かれる古い標準語。『じゃ』は断定を示す助動詞。
なぬっしゃ:宮城。
なになんじゃがわがんね:何が何だか解らない。
(〜なんじゃー) 【複】〜しか 静岡。『〜などでは』の意味の変化。
なんしゃー
なんしゃーんでー
【複】何をするんだ、何をしやがる
なんじゃかんじゃ 【副】あれこれ、つべこべ、なんだかんだ
なんじゃのかんじゃの
なんじゃのこんじゃの
【副】あれこれ、つべこべ、なんだかんだ
□なんじゃもんじゃ アブラチャン 広辞苑には『(関東地方で、その地方には見られない種類の大木を指していう称。千葉県香取郡神崎(コウサキ)町神崎神社境内のもの(くすのき)、東京都明治神宮外苑のもの(ひとつばたご)が名高く、その他筑波山のもの(アブラチャン)、山梨県鶯宿峠のもの(りょうめんひのき)などが知名。あんにゃもんにゃ。)』とある。
なんじゃら 【複】なにやら、何だか なんじゃら:岐阜。
なんしゃんだ
なんしゃんだい
なんしゃーんだ
なんしゃーんでー
【感】何しやがるんだ
〜なんしょ
〜なんしょー
〜なんせ
【助動】〜して下さい 古い言葉。高齢者(主として女性)が使った。丁寧語。
江戸言葉では『なんす、ねんす、ねんしょ』が使われた。『なんし』もあった。
『ならっせえ』『なんしょ』『ならっせよ』『なんせよ』が訛った形。
広辞苑に『なんす:(ナサリマスの転か。活用、なんせ・なんし・なんす・なんす・なんし(せ)) 遊里語。一般にも一部に通用。動詞および動詞型活用の助動詞の連用形につき、尊敬の意を表す。また時に「なさる」の意の動詞としても用いる。なます。』とある。この原型は『なられあんす』『なりあんす』か。
〜なんしょ:福島・栃木・群馬・長野。
たべなんし:食べなさい:福島。
おありんなしょ・おあんなんしょ:お召し上がり下さい。
おげぁーんなんしょ・おげーりなんしょ・おけーんなんしょ:お帰りなさい。
きなんしょ:来て下さい。
おぎなんしょ:起きて頂戴。
なんしろ 【接】なにしろ 俗語。
あんしろ:山梨。
なんしろ:山形。
なんしろかんしろ 【接】なにしろ、あれこれ、何でもいいから なんしょかんしょ:静岡。
なんしろかんしろ:山梨。
なんしろかんしろわりーのはおめだ:とにかく悪いのはお前だ。
なんしんきた? 【複】何しに来た?
なんしんだ 【複】何をするんだ
(なんずら) 【複】何だろう 静岡。古語が残ったもの。
なんせ
なーんせ
【副】なにせ、なにしろ なんせ:神奈川。
(なんせったっせ) 【複】何と言っても 神奈川。
なんぞー
なんぞーばい
なんぞーべー
【形動】何倍もある様 『何増』『何増倍』の意味か。
なんぞ 【複】@何か、Aどんな、どういう、どうして、B〜なんか、〜など、C何事ぞ 古語にはD(反語の意で:何ぞ〜らむ) なんとして、どうして、の使い方があった。
@★なんぞがあったみてーだな:何かあったみたいだな。
A
いまこんなんぞやってきーだってしゃーんめ:今頃、どうだって聞いたってしょうがないだろう。
B・〜なんず:群馬。
★『土』:こつちなんぞぢゃ、後(あと)幾(いく)らでも出來(でき)らあな。
C・なっど:どうして:三重。
D・その他。
なんぞ:謎:鹿児島。
(なんぞ) 鹿児島。
なんぞい
なんぞや
【複】何ですか、どうしてですか 『何ぞやあらむ』の後略。
なんどいや:何ですか:兵庫。
(〜なんだ) 【複】〜(し)なかった 動詞の未然形につく。過去の否定形。『〜ぬなりたり』。
岐阜の友人がよく使う言葉。現代では中部から西日本にかけての方言。ただし浮世風呂には『〜なんだ』があり江戸では使われていた。近世には江戸でも使われたがその後東国廃れたと見られる。茨城でもかつては使われた。
〜なんだ:山梨・長野・静岡・石川・岐阜・愛知・和歌山・鳥取・徳島・香川等。
いかなんだ:行かなかった。
やらなんだ:遣らなかった。
せなんだ:しなかった。
すんませなんだ:すいませんでした・有難う。
〜なんた 【助】〜なんて 『〜などとは』が訛ったもの。
なんだいが
なんだえが
【複】何だろう 『へ』の発生のルーツと考えられる。
なんだいさこんだいさ
なんだいさんこんだいさん
【感】どうしたの? 筑波山の『男体山』に語呂合わせしたか日光の『男体山』に語呂合わせしたかは不明。流行語か?。
なんだいさ:福島。
なんだいな
なんだいのー
【複】あのね、あのねー 『あれだいな・あれだいのー』。言葉に詰まった時の言葉。『なんだいのー・あれだいのー』は高齢者の言葉。
なんだいのー:群馬。
〜なんだいな
〜なんだいのー
【複】〜なんだよね 『〜なんだいのー』は高齢者の言葉。
なんだいべー 【複】何だろう、何なんだろう 『集覧:鹿』。
当時の高齢者言葉。原型は『なんだやべえ』
なんだが 【複】何だか なんだが:山形。
なんだが
なんだがー
なんだか
なんだかー
【複】どうしたんだい ★『土』:此處(こゝ)に居(ゐ)たよ、そんなに喚(よ)ばらなくったってえゝから、何(なん)だかおとっつぁは:ここに居るよ。そんなに呼ばなくてもいいから。どうしたのお父さん。
なんだかだ 【副】なんだかんだ 標準語だが死語になりつつある。
なんたかた:青森。
なんだがな
なんだがな
なんだなー
なんだなー
【慣】どうしたんだろう、何だろう、何なんだろう、何か こーたあさはやぐになんだ:こんなに朝早くなんだい。
なんだなよ:何だろう。
あさっからなんだなもってきたど:朝から何か持って来たぞ。
かーちゃんなんだなゆってっと:母さんが何か言ってるよ。
なんだげ
なんたげ
なんたけ
どれほど、どれだけ、何程 否定を伴う。
なんだけの:どれほどの:東京。
おめはなんだげのしとがしんねけんと、そーたごどゆえんのが:お前はどれだけの人か知らないけれど、そんな事言えるのかい。
なんだげのこどもねー
なんたけのこともねー
【複】なにほどのこともない、大した事無い
なんだこーたの
なんだこったの
【慣】なんだいこんなの、なにこれ なんだこったのふてっちぇ:なんだいこんな物、捨てちゃいなさい。
なんだこっちゃねー 【複】たいしたこと無い
なんだごどだ
なんたごどだ
なんだこった
なんたごった
【複】何てことだ、何たることだ
なんだこれー 【複】何だこれ、何これ 口語で使われるが、イントネーションが異なる。
なんだこれー、なんだー:何これ。何なの。『1111141、1114』。4音は裏声になってしまうぐらい高い音。
なんだし
なんだす
なんだせ
【複】何をしているんだい、なんだい この『し』は、『す』の変化したもので、 @広辞苑に『:【終助詞】現代語の「さ」に当る。浮世風呂四「自然とおとなしくなるからじやまにもならねへ―」』とあり、A大辞林に『す:【間投助】〔近世江戸語〕文末(まれに文中)にあって、軽い確認の気持ちを表す。「かういい心持ちに酔つたところを湯へ入つて醒すは惜しいもんだ―/滑稽本・浮世風呂 4」「はて湯のふりで稽古に行つて―、銅壺の湯で手拭をしめして帰(けえ)る人のやうにやあいくめえ―/滑稽本・素人狂言紋切形」』とある。
『なんだせ』『なんだすえ』が変化したものはで関西の『なんだっせ』に通ずる。。
なんだそーだの
なんだそーたの
【複】@何なのそれ、Aなんだいそれは
なんだっけ
なんだっけな
なんだったっけがなー
なんだったけかなー
【複】どうしたの、何だったの? なんだっけな:宮城。
なんだったら 【副】何なら 標準語。
なんだったら:群馬。
なんだっちごどなぐ
なんだっちゅごどなぐ
なんだっつーごどなぐ
【複】なんとなく、なんといことなく
なんだっちごどね
なんだっちゅごどねー
なんだっつーごどねー
【複】どうということはない なんだっつーごどねー:福島。
なんだっちゅってんだ
なんだっちってんだ
なんだっつってんだ
【複】何だって言ってるんだい、何だって言ってんだい
なんだっちゅんだ
なんだっちんだ
なんだっつんだ
【複】何だって言うんだい、なんだってんだい なんだっつんだ:宮城。
なんだっちゅんだっ
なんだっちんだっ
なんだっつんだっ
【複】何て言ってるのだろう 江戸言葉なら『なんだってえんだべえ』。
なんだって 【複】何故、何で なんだってそーたごどすんだ:どうしてそんなことするの。
なんだっべ
なんだっ
なんだっ
なんだっへ
なんだっへー
なんだへ
なんだへー
【複】何だろう なんだっが・なんだっがや:どうしてだろう。
なんだっなやー:どうしてなんだろう。
なんだっ:もうどうしてなの?。
なんだっ:そうだろう・それでいいだろうよ。
★『土』そんなこと云(ゆ)わねえったって泣いてんのに何だっな。おとっつあ:そんな事言わなくったって(いいんじゃないの)、泣いてんのに、どうしてだい。お父さん。
なんだべが
なんだっ
なんだっへが
なんだへが
【複】何だろうか
なんだっこれ 【複】これはなんだろう
なんだっはー 【複】何なの、もう。
なんだっまず 【慣】まあ、なんでしょう 茨城弁の代表的慣用語。
なんだでもねー 【複】何でもない、知らぬ振り
なんだど 【複】何だと、何だって?、何て言ってるの?
なんだどおもー 【複】何だろうと思う 標準語のままの『何だと思う』意味もある。
★『土』袋なんぞ又何だと思ったよ:袋なんてまた何だろうと思ったよ。
なんだどって 【副】何だって、どうして 『何にてあるぞとて』の意味。
なんだどって:宮城・福島。
なんだどっていまんきたんだっ:どういう理由で今頃来たんだろう。
〜なんだどやー
〜なんだどよー
【複】〜なんだとよ 『〜なんだとよ』は、現代の標準語ではぞんざいな言葉。江戸言葉でもある。
『よ』は『や』が変化したとされ、『〜なんだとや。』は古い言い方である。
茨城では語尾は多く長音化する。
茨城ではニュアンスが使い分けられ、『〜なんだどやー』は、やや主張する意味合いが強く、『〜なんだどよー』は伝聞に主眼が置かれた表現である。『や』が『よ』になったとしても、反意の意味は確実に残されていることになる。
なんだな 【複】なんだね はくだけた標準語。
なんだな 【複】何か ながになんだなへーてんな:中に何か入っているな。
なんだなが
なんだのが
【複】@何か、A何なのか @★なんだのがはへーっているはずなんだ:何かは入っているはずなんだが。
なんだのがあったんだきっと:何かあったんだきっと。
A★なんだながなー:どうしたんだろうなあ。
なんだなが
なんだのが
【複】どうか なんだのがしたのが?:どうかしたのか?。
なんだのかんだの 【副】あれこれ、なんだかんだ 標準語。
なんだべ
なんだべー
【複】何だろう 茨城では『ぺ』が主流となり今では古い言い方。
なんだべ:宮城・福島。
なんだべー:福島。
なんだべか:なんだろうか:山形。
なんだべまず 【複】何だろう 茨城では『ぺ』が主流となり古い言い方。
なんだべまず:宮城。
なんだもねー 【複】何もいえない様、手がが付けられない様 なんだもね:宮城・福島。
なんだもねー:とても・たいへん:宮城。
なんだや
なんだやー
【複】なんだい。何なの、なんだよ 『何だよ』の原型。
なんだよ
なんだよー
【複】なんだよ、なにやってんの? 標準口語では『な』にアクセントがあるが、茨城弁では『だ』や『よ』にがイントネーションがあり標準語の抑揚と全く異なる。
なんだよな
なんだよなー
【複】(前置きに)なんといったらいいか
なんだら
なんだらー
【複】なんなら 『何に(拠り)てあるならば』『何にてあらば』『何たれば』。
★『土』:なんだら一つ手傳(てつだ)あなんちゃ有(あ)りやしめえし、それからはあ、此方(こっち)も頼(たの)んもしねえ:『なんなら一つ手伝う』なんて(言うことは)有りはしないだろうし、それからもう、こっちも頼みもしないが。
なんだら
△◇なんたら
【副】@何とか、どうにか、Aなんとなく、なんだか、Bなんとやら、何か、C何という、なんたる、D何にも、Eどれほど、そこぶる 広辞苑に『何とやら:1)なんとか。どうにか。2)なんとなく。なんだか。3)はっきりしない物事を示したり、婉曲に言ったりする時に使う語。』、大辞林に『なんたら:1)(連体)「なんたる(何)」の転。なんという。2)(副)〔「なんとやら」の転〕名称や内容がはっきりしないさま。』とある。DEの意味は標準語には無い。
@何とか。どうにか。
なんたら:長野・岐阜・愛知。
Aなんとなく。なんだか。
Bなんとやら。何か。
なんたら:長野・岐阜・愛知。
C何という。 なんたる。
なんたら:東京・静岡。
なんだら:宮城。
なんたらこきたねべんじょばだ:何という(何て)汚い便所だ。
なんたらごった:何と言うことだ。
D何にも。
なったら:決して:宮城・秋田・新潟。
なんたらにもなんね:何にも(なんとやら)ならない。
おれにはなんたらでぎねー:俺には何も出来ない。
E・なんたら:東京三鷹・静岡。
なんたらがんばったがしんねー:どれほど頑張ったか知れない。
Fその他。
なんたら:何故:神奈川。
(なんたら) 【副】すこぶる 静岡。
なんだら
なんたら
【感】どうしたの なんたら:岩手。
なんたらや:どうして:岩手。
なんだらかんだら
なんたらかんたら
【副】あれこれ、なんだかんだ 清音なら標準語だが死語になりつつある。
なんたらごった @【慣】何てことだ、A【複】何か、何のことか、どういうわけか なんたらごったがちーしんなったど:どういうわけか中止になったって。
なんたらごったっ:どういうことだろう。
なんたらごって 【慣】何故、どうして なんたらごってそーなっちまったんだ:どうしてそうなっちゃったんだい。
なんたらごどに 【複】なんのために、何の目的で、何かのことに なんたらことに:山梨。
なんたらごどにつか−んだ:何に使うの?。
なんたらごどにもなんね:何にもならない。
なんたらごどになったらどーすんだ:何か起きたらどうすんだい。
なんたらどって 【複】何だって 『なんだどって』
なんたらどっつーんだっ:(いったい)何だって言うんだろう。
なんたらもねー 【形】大した事無い なんたらもない:静岡。
なんだり 【慣】@あれこれ、A何なり、B〜とか、〜など @・なんだり:青森。
A★なんだりどゆってくれればゆーごどきぐがら:何なりと言ってくれれば言う事を聞くから。
B・ゆでーみずでーなんだりすこしけすねか:お湯でも水でも良いから少し下さい:青森。けすねか:呉れはしないか。
ひっでーだりなんだりすっからいげねんだど:ひっぱたいたりとかするからいけないんだよ。
なんだりかんだり 【副】あれこれ、なんだかんだ、何なりと なんだりかんだり:青森。
なんだりかんだり:いい加減:青森。
なんだりかんだり:なんでもかんでも・何なりと:宮城。
なんだーれー! 【慣】驚きの言葉 『だーれー!』。標準語なら『何あれ』『なんだいあれ』と言う意味だが、それに該当する茨城弁は『なんだ?』。この言葉はそんな生やさしい表現ではなくかなり強い言い方。『だ』は場合によると北朝鮮の発音と同じように唾が飛ぶ位の強い言い方になる。
なんだんだ 【複】何なんだ
なんだんべ
なんだんべー
【複】何だろう なんだんべー:埼玉。
なんち
なんちー
【複】@〜なんて、〜なんか、A何と言う @・〜なんち:鹿児島。
おめなんちきれーだ:お前なんて嫌いだ。
A・なんち:静岡・鹿児島。
なんちごったっ:何ということだろう。
★長塚節『芋掘り』の一節:なんちい馬鹿だんべえなあ:なんて馬鹿なんだろう。
(なんぢぇん・なんでん) 【複】@ひょっとすると、恐らく、A何でも 鹿児島。
なんちげ
なんちーげ
なんちけ
【複】何だって?、何て言ってたっけ? なんちけあれ:あれは何て言ったっけ。
なんちごだね
なんちこだね
【複】大したこと無い、何ということはない なんちゅーこたーねー:群馬。江戸言葉。
なんちごった
なんちこった
なんちーこんだ
【複】何てこった、何とということだ、どうゆうことだ なんちゅーこんだ:群馬。江戸言葉。
★『土』:何(なん)ちこったか恁(こ)んな騷ぎではあ行くも出来ねえで、わしや昨日)帰(けえ)って来た處(ところ)なのせえ:どういうものかこんな騒ぎで、もう行くことも出来なくて、私は昨日帰って来たところなのさ。
なんちごど
なんちーごど
なんちこと
なんちたこと
なんちったごど
何てこと、何ということ なんちこったっ・なんちたこったっ:何てことだろう!。
なんちったけがなー 【複】なんて言ったんだっけかなあ
なんちったって 【複】なんと言ったって、なんてったて なんせったっせ:何と言っても:神奈川。本来は『何添えたって』。
〜なんちって 【複】【助】〜なんて言って、〜なんちゃって なんててくゎんてて:何やかやと言って:島根。『何て言ひて彼て言ひて』。
なんちってんだ 【複】@何て言ってるの?、A何十点だい?
〜なんちゃ
〜なんちゃー
【助】〜なんて、〜ということは 『〜なんぞは』『〜なんざ』が変化したか『〜なんてや』の意味と考えられる。
なんぞは→なんざ・なんざあ→なんつぁ・なんつぁーなんちゃ・なんちゃー
なんちゃごど:なんてこと。
やだっちゅーごどりーなんちゃよっどこわがったんだっ:厭だと(いう事を)言うということは、随分疲れていたんでしょう。
★『土』:土方なんちゃ碌(ろく)な奴等(やつら)は居(え)ねえっていうからどうしたかと思ってな:土方なんて碌な奴らが居ないって言うからどうしたかと思ってね。
★『土』:さうでござんせうかねお内儀(かみ)さん、わたし等(ら)また明(あ)けても暮(く)れても無(ね)え足(た)んねえの心配(しんえ)ばかししてんだから、さういことねえ人(ひと)は心配(しんえ)なんちやねえんだとばかし思(おも)ってたんでござんすよ、ねえ本當(ほんたう)に
★『土』:なあにっちんで俺(お)れ毎日(まいんち)酒(さけ)ん飮(の)んだな、酒(さけ)飮(の)んぢや惡(わり)いなんて醫者(いしゃ)なんちゃ駄目(だめ)だなかたで
なんちゃごど 【複】何のこと、なんということ、何かのこと 『なんぞのこと』。
なんちゃごった:なんてこった。
〜なんちゃって 【助】〜なんて言って 標準口語の新語。
なんぢゃない
なんちゃない
なんぢゃねー
なんちゃねー
【複】@どうってことない、何てことない、何のことは無い、何でもない、A何の考えも無い 『なんちごどない・なんちごどねー』。『なんぞのこともない』『何ということはない』と考えられる。
古くは『何にてやあらむ』(何だろうか、何でもない)。
なんじゃーねー:山梨。
なんたーねー:山梨。
なんちゃ:何も:香川・愛媛。
なんちゃやないわい:大した事は無い:愛媛。
★『土』:なあに俺(お)らあどうもかうもねえんだ、彼(あ)の野郎奴(やらうめ)はあ、何(なん)ぢやねえ、俺(お)れこと邪魔(じやま)なんだから、俺(お)らあ俺(お)れだと思(おも)ってっから管(かま)やしねえ、俺(お)れ食(く)はせる物(もの)惜(を)しくって仕(し)ゃうねえんだから、俺(お)れ家(うち)の物(もの)一粒(ひとつぶ)でも減(へ)らさねえやうに外(ほか)に行(い)ってりやええんだんべ、俺(お)れえそれから、俺(お)れことさうだに厭(や)なんだら自分(じぶん)で何處(どこ)さでもけつかった方(はう)ええ、厭(や)だら後(あと)から來(き)た者(もの)出(で)ろっち氣(き)なんだから
〜なんちゃない
〜なんちゃねー
【複】〜なんてとんでもない しとがせっかぐはいぐきたのにつったってるなんちゃねーど:ひとが折角早く来たと言うのに突っ立ってるなんてとんでもないよ。
なんちゃも 【複】何でも、どれほども、どうにも、何も なんちゃもねー:何でもない。
なんちゃもいがねー:どうにもならない。
なんちゃら 【複】何とやら、なんたら なんちゃら:大阪。
〜なんちゃーれる 【複】〜なんて言われる ★『土』:學校(がくこ)へ遣(や)っちや半年(はんとし)たあ云(ゆ)はんねえから、下手(へた)んすっと今(いま)の子奴等(こめら)にや遣(や)り込(こ)められっちゃからおとっつぁ此(こ)れ知(し)つてつかなんちあれたつて、困(こま)らなどうもなあ。
なんちゅー 【複】何と言う 『集覧:新』。俗語。
なんちゅー:福島・静岡。
なんちゅごだね
なんちゅごったねー
なんちゅこったねー
なんちゅーこったねー
【複】大したこと無い、何ということはない
なんちゅーげ
なんちゅーけ
【複】何だって?、なんて言ってた?
なんちゅごった
なんちゅこった
なんちゅーこった
なんちゅーこっちゃ
【複】何てこった、何ということだ
なんちゅったって 【複】なんと言ったって、なんてたって
〜なんちゅって 【助】〜なんて言って
〜なんちよ
〜なんちよー
【助】〜なんてさ
〜なんちょ 【助】〜なんて 茨城方言の白眉とも言える言葉。『〜なぞ』『〜なんてよ』の意味。
そおたごどなんちょでぎね:そんなことなぞできない。
あすぶなんちょゆってらんめ:遊ぶなんて言っていられないだろう。
なんちん 【複】何と言う
なんちんだ 【複】@何だって?、A何て言うの? こいづはなんちんだー:これは何ていうの?。
〜なんつぁ
〜なんつぉ
【助】〜なぞ、〜なんか、〜なんぞ、〜なんて、〜などと 『〜なぞは、〜なんぞは』。
おめのかおなんつぉみだぐね:お前の顔なんて見たくない。
★土浦の民話:河童に食われた狸:全ぐ、娘っ子引きずりごむなんつぉ、どおだ河童だが、勘弁なんねえ:全く、女の子を引きずり込むなぞ、どんな河童だかねえ。勘弁ならない。
なんつーが
なんつーがかんつーが
【複】何と言うか
〜なんっかする 【複】〜何かする、〜なんてする 多くは否定形を伴う。
なんつげ
なんつけ
文句を言うこと、難癖をつけること 『難付け』の意味。
なんつーげ
◆■なんつーけ
【複】何だって?、なんて言ってた?
なんつげる
なんつける
【動】文句を言う、避難する 『難をつける』。
なんつごだね
なんつごだねー
【複】大したこと無い、何ということはない、何てことない
なんつーごど 【複】なんということ、なんてこと なんつーごったっ:何てことだろう。
なんつったって 【複】なんと言ったって 俗語。
なんつもんだ
なんつもんだい
【複】どういうものだい、何というものだい なんつもんだい:宮城。
なんで
なんて
何で、何故、どうして、なんのために 清音形は高齢者言葉。茨城ではかつて高齢者がこのような発音をした。さらに『なんてなの』などと言った。これは、『何にてやあるらむ』を受けた古い言葉の流れと思われる。
なんで:東京・神奈川。
なんで
なんでー
なーんで
なんでなんで
なんでや
なーんでや
なーんでやー
【複】(それどころか)どう致しまして、それどころか(こちらこそ有難う) 『何にてやあるらめ』の意味。省略形。『どうして』(それどころか)と同じ意味。『何で』は『どうして』のくだけた言い方だから、『何で』に『それどころか(こちらこそ有難う)』の意味があってもおかしくは無い。
冒頭に『いや、いーや、いーんや』が付く事も多い。
いや、なーんでやー:いいえ、どういたしまして。
いーや、なんでなんで:いいえ、どういたしまして。
なーんて 【複】たいそうまあ。なんと。 『何て』。
なんで
なんでー
【複】何だい、何だよ 『なんでい、なんでえ』なら江戸言葉。若年層の女性言葉の『なんでー』もまた江戸言葉の流れなのかもしれない。『どうして』の意味ではない。
現代語では『何だい』『何で』『どうして』は意味は同じでも、使うシチュエーションが異なる。これは、『何だい』の原型は『何だや』『何だよ』で単独で用いることと、やや突き放した意味を含む。『何で』はルーツが古く『何にて、何(な)にて』であり、『どうして』は、『如何して』と当てられるが当て字と思われ、『どれ』の古形『いずれ』に発し『いずれにして』の流れと考えられ、やや婉曲的な言い回しである事を自然に意識して使っているものと思われる。また、『何で』『どうして』はいずれも省略形で、口語的な使われ方である。
茨城方言では、あくまで『何だや』『何だよ』をルーツにした『何だい』を使う場合も、『なんで、なんでー』を使うところに標準語との違いがある。
『何ぞや、何ぞえ』が訛った可能性も極めて高い。
なんだし:何だね山形。『し』は念を押す近世語の助詞。
なんでこれー:何これ。
★『土』:何(なん)でえ姉等(あねら)
なんでが
なんでがー
【複】何でか、どうしてか 当時は『どうして』は使わなかった。
なんで〜か 【複】どうして〜か、〜ではないよ 『何ぞ〜か』。古語の反語表現の流れ。今では使う人は少ない。
★『土』:何(なん)でとめるもんか:どうして膿むものか・膿まないよ。
なんでがだ?
なんでがんだ?
【複】どうしてだ?、どういう訳だ? 独特の言い回し。直訳すると『どうしてかだ?』。
なんでがっちど
なんでがちーど
なんでがっちゅーど
なんでがっちったら
【複】どうしてかって言うと、どうしてかって言ったら
なんでがで 【複】何かで 『「何でか」で』の意味。
おがしーな。なんでがでぶづげだんだっぺが、わがんねーんだいな、これ:おかしいなあ。何かでぶつけたんだろうけど、解らないんだよね、これが。
★『土』:そんぢやお内儀(かみ)さん他人(ひと)の錢(ぜに)なくしたのなんぞ發見(めつ)けても知(し)らねえ容子(ふり)なんぞして、後(あと)で遣(や)んな盜(と)つた見(み)てえで變(をかし)な時(とき)や、何(なん)でかで落(おつ)ことした丈(だけ)の物(もの)でもやればそれでも違(ちげ)えあんすべね:それじゃあ女将さん、人がお金を失くしたものなんか見つけても知らない振りなどして、後で返すのは盗んだみたいで、恥ずかしい時には、何かで落とした(金の)分の物でも返せばそれでも(少しは)違うんでしょうね。。
なんでがでー
なんでかでー
【複】どうしてだい? 直訳すると『何でかだよ。』。
なんでかで
なんでかんで
【副】@どうしても、何としても、【複】A何を遣っても無理だよ 『なんでもかんでも』の短縮形。本来は『何でも彼でも(なんでもかでも)』。
@・なんでかんで:宮城・福島。
B・なんでかんで:いずれにしても:山梨。
なんでがんでー 【複】どうしてだい? 独特の言い回し。『でー』は『だい?』。直訳すると『どうしてからだい?』になってしまう。
なんてごどねー
なんてごどもねー
【複】@どうってことない、何てことない、A何の考えも無い 『なんてえりこともない』の意味。
なんでも〜 【接 】詳しくは知らないけれど〜、なにか〜 『何にても』。聞きかじった話をする時の言いだし文句。標準語。=『何か〜』。
なんでもかんでも 【複】なんでもかでも、どうしても、是非、全部 =『なんでもかでも』。
なんでもかんでも:山形。
なんでもなぐ 【複】理由も無く、なんとなく、平気で、何も無く
なんてもんだねー 【慣】言葉で言い表せない様
(〜)なんてもんだねー 【慣】(〜)なんてもんじゃない 単独でも用いて『甚だしい』意味に使うこともある。
なんでぃや
なーんでや
なんでや
なんでやー
【慣】何でもない(どういたしまして)。 関西方言に似た言い方。古語の反語の『や』が残ったもの。 反語が残る言い方。『何にてや(あるらめ)』。
あんとござんしたなんでや:有難う御座いました−どういたしまして。
なんでよ 【慣】どうしてよ、なんでだよ 標準口語で使われる。やや下卑た表現。
なんでやねん::どうしてだね:大阪。
なんでんかんでん
なんでかんで
【副】@なんでもかでも、Aどうしても なんでかんで:福島。
〜なんど
〜なんと
【助】〜なぞ、〜なんか、〜なんぞ、〜なんて、〜などと 清音形はやや古い標準語。濁音形は江戸言葉。
〜なんと:福島。
あめになんとまげね:雨になんか負けない。
すったもんなんといんね:そんな物なんて要らない。
なんど 【複】@何か、Aどんな、どういう、どうして、B〜なんか、〜など、C何事ぞ、何だと 古語にはD(反語の意で:何ぞ〜らむ) なんとして、どうして、の使い方があった。
なっど:どうして:三重。
なんどぅ:何だと:青森。
なんどいや:何ですか:兵庫。
なんとがかんとが
なんとかんとが
【副】なんとか、やっと、是非、なんやかんや
なんどぎ
なんんどぎに
どのような時、いつ 『何時』『何時に』。
いづなんどぎなにあっかわがんねど:いつなんどき何があるか解からないぞ。
なんどぎも どのような時も、いつも なんどきも:宮城。
いづなんどぎもはなさずもっていだんだわ:どのような時も離さないで持っていたんだよ。
なんとなし
なんとなしに
【副】何となく あまり聞かなくなった標準語。
なんとも @(打消の語を伴う) なにごととも。なにものとも。A何分にも。まことに。いかにも。全く。
なんともかんとも
なんとかんとも
【副】どうしても、なんとしても なんとなんと:山形。
なんともはー
なんともはーや
【複】何ともはや
(なんどんかんどん) 【副】度々 鹿児島。
なんな 刃物、包丁 幼児言葉。
なんな
なんない
なんなや
なんなやー
なんなよ
なんなよー
【複】なんだい 『何なり』『何なりや』の意味。関西方言とも繋がる。
なんな:長野。
なんなえ:何だい?。
なんながよー:どうしたんだろう。
なんなちけ:何だって?。
なんなっ:何だろう。
なんない 【複】ならない なんない:静岡。明治の静岡では方言と解釈された言葉。
(なんない・なんの) 【感】いいえ 静岡。
『否否』が訛ったかあるいは単に『ならない』『ならぬ』の意味か。
なんなー ご飯 鹿島郡。幼児語。
なんに 【複】何のために、何をしに 『何に』。
なんにいったんだ 【慣】何しに行ったんだい ★『土』:そんぢゃ何(なん)に行(い)ったんだ。
〜なんに
〜なんにぇ
〜なんね
【助動】〜(しては)ならない 単独でも使われる。
なんにが
なんにか
@何か、A何にか、何かに、何のためにか、B色々 ★@こーたもんでもなんにがなっかな:こんなものでも何か役に立つかな?。
なんにがあったのげ:何かあったの?。
A★これなんにがすんのが:これは何かに使うの?。
なんにがぶっけっちった:何かにぶつけちゃった。
なんにすんだ? 【複】@何するんだい、A何に使うの?、何にすんの?、何のためにするの?
なんになるもんだねー 【慣】何にも成らない
なんにも 【複】何も、何にでも、何においても 『何にも(なににも)』。『何にても』。
なんにもくぢだししてー、うっせーんだわ:何にでも口出しして、煩いんだよ。
★『土』:そりやさうにも何(なん)にもよ、他人(たにん)でせえこんで軟(やつ)けえ言辭(ことば)でも掛(か)けられつと、後(あと)ぢや欲(ほ)しく成(な)るやうな物(もの)でも出(だ)す料簡(れうけん)にもなるもんだかんなあ:それは全くその通りだ。他人でさえ柔らかい言葉でも掛けられると、後になれば欲しくなるような物でも、(場合によっては人に)あげる気分にもなるからなあ。
なんにゃかんにゃ なんやかんや
なんね 【副】何故 『なんで』が訛ったもの。
何なるや・何なるよ→何なるえ・何なるいえ→なにねい・なにねえ→なんね。
〜なんね
〜なんねー
【複】〜ならない 〜なね:〜ならないが:青森。
〜なんなえ:山形。
〜なんね:群馬・長野。
〜なんねー:福島。江戸言葉。
〜なんねが:〜ならないか。
〜なんね:〜ならない
やんなげなんね:遣らなくてはいけない。
ならぬ→ならぬや・ならぬよ→ならぬえ→ならねえ→なんねえ。
(何年何月何時何分何秒) 【慣】 子供がつい約束を破った時、『いつそんなこと言った、何年何月何時何分何秒?』と言い張って相手を牽制した。流行語か?。そして負けじとしての答えは『親父・多分・心臓病または親父・澱粉・画鋲』。
なんのかんの 【複】なんのかの 標準語の俗語。
なんのきあんだ
なんのきだ
【複】どういう積りだい? 《木の種類を聞いているわけではない》
なんのきなぐ 【複】なにげなく、何も考えないで 濁音化。
なんのきなし 【複】何も考えないこと 『何気なし』と同じ。
なんのきなしに
なんのきもなぐ
なんのきもなくて
なんのきもなしで
・なんのきもなしに

なんのきもねーで
【複】何も考えないで、何の積りも無く、何気なく 漢字で書けば『何の気無しに』。標準語との境界線は不明。『何気なく』と同じ。
・なんのきもない 【複】何も考えない、何の下心も無い 辞書には無い。『何気なし』と同じ。
なんのくそ 【形動】大した事無い 『集覧:真』。
古い標準語の口語の『なんのこそ』。
なんのごだね
なんのごだーね
なんのごだーねー
【複】たいしたことではない。取り上げて問題とする程のことではない。 『何の事はない』。『なんのこたあねえ。』なら江戸言葉。
なんのこったい 【複】何の事だい 近世からある俗語。
なんのこれしき 【慣】この程度らなんて事は無いで 近世からある俗語。
なんのじ
なんのじー
【複】案の定
なんのじょ
△▽なんのじょー
【複】案の定 古来から『なに』と『あに』は音通する。
一方、『なにといふ』が訛った『何でふ(なんじょう)』(@【連体】なんという。どういう。【副】A(反語の意味に用いて) なんとして。どうして。B必ず。)の流れと考えられる。一見異なる言葉の『なんじょう』(うまく。具合よく。)は、『味良く』が訛ったのではなく『何でふ(なんじょう)』に由来すると考えると、反語と必然の意味で使われる図式が見えなくもない。
なんのじょー:宮城・福島・新潟・八丈島。
なんのせーだらかんのせーだら
なんのせーだりかんのせーだり
【慣】責任を言い逃れる様、あれこれ、なんのかの、何かのせいだと言って
なんのせかんのせ
なんのせーかんのせー
【慣】責任を言い逃れる様、あれこれ、なんのかの、何かのせいだと言って
なんのまぐにも 【慣】どんな会合にも、どこにでも 『どごのまぐにも』。『まぐ』は『幕』の意味で会合や様々な機会を示す。
なんのまね 【慣】どういうつもり
なんのまねしても 【慣】どんなことをしても
なんば
なんぼ
田下駄 『集覧:猿・真』。
なんば:かんじき:佐渡島。
(なんばた) 鉱夫 佐渡島。
『始めに鉱頭夫が信州南畑から来たりし故に鉱夫をなんばたものと云いしにおこる。』とあり、戦国時代の後半に直江兼続が佐渡で鉱山を開いたことに由来するのだろうか。
なんばわら 稲を束ねる縄 『苗場藁』の意味。
▲●□△▽なんばん
なんばんらし
トウガラシの異名 『集覧:多』。
全国的にはかなり偏っており、関東周辺にループ状に広がる。関東では茨城県北部と群馬・神奈川の西部に限られる。
なんばん:群馬・神奈川西部・静岡。
・なんばんきび:トウモロコシ:静岡。
なんば・なんばん:トウモロコシ:滋賀。『南蛮黍』の略。
(どごの)なんばんめだ 【複】どこの家の何番目の子供だい 聞かれたら、屋号を言って何番目の子供かを言えば良い。
(なんぶしせん) 【複】どうしても 鹿児島。
なんぶのしゃげのはなま 【慣】でしゃばって引っ込みがつかないこ 南部の鮭は、網に頭を突っ込んで鼻が曲がっていることから、でしゃばって引っ込みがつかないことを言う。
☆なんぼ
なんぼー
【副】@いくら、何分(なにぶん)、何回、いくつ、A随分、どれほどか、甚だしく 『集覧:多』。
一般には上方語とされるが江戸の滑稽本にも見える。明治以降東京では使われなくなり地方に残ったと見られる。
『何分』が訛ったと考えられる。『なにほど』が訛ったという説もある。
@・なんぼ:北海道・青森・岩手・秋田・山形・宮城・福島・栃木・埼玉・神奈川・山梨・三重・島根・香川。
なんぼー:岩手・宮城・神奈川・山梨・大阪。
なんぼしべー:幾らだろう:福島。
なんぼっしゃ:幾らだ:宮城。
なんぼーぶん:幾ら分:静岡。
なんぼもない:いくらもない:山梨。
なんぼやったってでぎねー:いくらやっても出来ない。
A★『土』:何程(なんぼ)すれっからしなんだんべ兼(かね)さんは、他人(ひと)のこと本當(ほんたう)に。『他人(ひと)のこと』の後には『からかって』が略されている。
なんぼが 【複】@いくらか、Aどんなにか @・なんぼか:山梨。
A・なんぼが:宮城・山形。
なんぼか:福島。
なんぼ 【複】どれだけ、いくら分
なんぼしたって
なんぼしても
【複】@いくらしたって、Aどうしても A・なんぼしても:宮城。
なんぼだって 【複】いくらだって
(なんぼっしゃ) 【複】いくらですか 宮城。『なんぼ候や』。
なんぼでも 【複】いくらでも あんぼーでも:山梨。
なんぼでも:沢山:島根。
なんぼーでも:山梨。
なんぼ〜でも〜 【複】いくら〜でも〜(否定形) 一般には上方語とされる。=『いぐら〜でも〜』
なんぼしたって:いくらなんでも:岩手。
なんぼなんだって
なんぼなんでも
【複】いくらなんでも なんぼなだって:秋田。
なんぼなんでも:秋田。
なんぼにも 【複】@いくらにも、A何にでも、B何分(なにぶん)にも、どうしても 『集覧:多』。
一般には上方語とされる。
B・なんぼにも:福島。
★『土』:石坂(いしざか)だから畜生等(ちきしやうら)がくたりがくたりはあ、なんぼにも歩(ある)かねえな。
★『土』:そんでもまあ到頭(たうとう)遁(に)もしねえで居(ゐ)らったんだから、家(うち)でも持(も)ってかれたものからぢや運(うん)がええのせえ、まあ晝間(ひるま)はなんちっても方々(はうばう)見(め)えてええが、夜(よる)なんぼにも小凄(こす)くってねえ
なんぼな
なんぼの
【複】いくらの、どれほどの なんぼの:青森。
じぶんごどなんぼのもんだどおもってんだっ:自分のことをどれほどの人間だと思っているんだろう。
なんまいだ
なんまいだなんまいだ
なんまいだぶ
南無阿弥陀仏 全国的にある方言。幼児語としても使われる。
『なんまんだ』とか『なんまんだぶ』などとも言われる。
なんまんさん:仏:幼児語:鹿児島。
なんまいだぼ
なんまいだんぼ
なんまいなんぼ
数珠繰り
(なんみー) 波の上 沖縄。
〜なんめ
〜なんめー
【助】〜なるまい、〜ならないでしょう
なんめら 【形動】なめらか
なんも 【複】何も 俗語。
なんもかも
なんもかんも
【副】何もかも 俗語。
なんもね
なんもねー
【複】何も無い なんもねー:埼玉。
なんやぇー 【複】なんだい? 『集覧:久』。
原型は『何やい・何やえ』。古い言い回し。関西方言にも通ずる貴重な言葉。
なんやい:静岡。
なんやかんや
なんやらかんやら
あれこれ、何やらからや、何やかや 辞書不掲載だが標準口語。『なにやかや』。
なんやら 【複】@何であろうか。何か、Aなんとなく。なんだか。 『何やら』。
 本茨城弁集は、昭和40年前後の茨城方言を中心に茨城県全域の江戸時代まで遡る言葉を集めたものです。他県の方言との関係を重視し主要なものについては他県の方言も紹介しています。また、近年使われなくなってきた標準語や語源考察、また昭和30年代の風俗・文化等を紹介するために、合わせて標準語も掲載していますのでご注意下さい。
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