昔の茨城弁集
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◆印:『土浦の方言・続土浦の方言』掲載語。■印:『土浦市史・民族編』掲載語。▲印:『茨城方言集覧』掲載語。印:新編常陸国誌掲載語。印:茨城方言民俗語辞典掲載語。印:茨城弁今昔掲載語。印:物類称呼掲載語。●印:『国立国語研究所・日本語情報資料館・電子資料館・日本言語地図・方言文法全国地図』掲載語。▼印:日本方言大辞典掲載語。印:日本方言辞典掲載語。浪花聞書掲載語。印:俚言集覧掲載語。★印:使用例とその標準語訳。黒太文字:標準語。
茨城弁 標準語訳 備考・解説・使用例
【助】@〜に、A〜の 格助詞。『に』と『ね』の中間音だが、『ぬ』にも聞こえる。東北方言と共通。今では高齢者しか使わない。
@★ほごぬあっつぉ:そこに有るぞ。
A茨城ではウ段音とオ段音が交替する。しかし、現代語の格助詞『の』の古形は『ぬ』である。
そごらにかっっとぐがらなぐなっちゃーんだど:あちこちに放っておくから無くなってしまうんだぞ。
ぬー 稲叢(いなむら) 『ぬーぼっち』の短縮形。『集覧:稲』。=『のー、のーぼっち』
刈り取った稲は小田掛けして1週間から10日干した後、屋敷に運び込む。脱穀した藁は、そのまま藁すぐりをして庭に干して様々な用途に使われる。それ以外の藁は再度田に持ち込み、主に肥料用に円形に積み上げた。
稲架は一般に穂のついた稲を干したものを指し、稲叢(稲村)は穂の付いた稲を干したものと、脱穀した後の稲藁を積み上げたもの双方を指すことが多いようだが厳密な区別は無い。一般には稲塚を指している。
茨城では一般に稲架は『おだ』と言い、稲叢は『のー』『のーぼっち』と言う。いずれも江戸時代の文献に見られる。『おだ』は広辞苑にも掲載されている言葉である。
『野』を『ぬ』と呼ぶのは2種類ある。広辞苑には『@(ノの母音交代したもの) 上代語、特に東国方言で、野(ノ)。万二○「千葉の―の児手柏(コノテガシワ)の」A「野(ノ)」の意味に用いた万葉仮名「努」「怒」などを、江戸時代の国学者がヌと誤って訓(ヨ)んだことから作られた語。』とある。
この方言の場合は間違いなく『野』の意味だろう。ところが、群馬・長野では『にゅう』という。広辞苑には『(東北・中部地方で) 刈稲を円錐形に高く積み上げたもの。にゅう。』とある。また、青森・秋田・岩手・新潟・山形・富山・長野・山梨では『にょ・にお』という。そのため『新穂』の説がある。
(ぬー) 【感】喧嘩の時に使う言葉。何だよ。何? 沖縄。茨城なら『なぬー・なにょー』
■▲▽ぬいそ 縫い糸 標準語。『縫苧』。『集覧:新』。
:鹿児島。
ぬいとす:木綿糸:群馬。
ぬいて 【複】脱いで 連用形。
『脱ぐ』は、上代は『ぬく』で、平安時代以降は濁音化する。連用形の『ぬきて』が『ぬいて』とイ音便化したものが残ったと考えられる。
ぬいて:八丈島。
ぬいど
ぬいいど
縫い糸 ヌイト:木綿糸:アイヌ語。『縫苧』が訛ったのではないかとされる。
ぬえつける 【動】縫い付ける
ぬが ぬが:青森。
ぬが〜 【接頭】或る語に冠して、こまかい、頼りない、はかない、などの意を表す。 ぬがよろごび:糠喜び。
ぬがばだらぎ:無駄な仕事。
【動】拭う
ぁー 【複】@脱ぐよ、A▲拭うよ 『集覧:久』。
ぬがあめ きわめて細かい雨。霧雨。こぬかあめ。 『糠雨』。
ぬがあめ:千葉。
ぬが
△▽ぬか
零余子(むかご) 濁音化。『ぬかご』は『むかご』の古形。当時は、二つの言い方があったので混乱した。現代標準語は訛りによって出来た事の証し。
ぬか:青森。
ぬがす
■▲ぬかす
【動】@ぬかす、言いやがる、嘘をつく、A抜く、追い抜く @『吐かす』(ぬかす)。清音なら標準語。『集覧:西・新』。
ぬがす:宮城。
ぬかす:山形・群馬・神奈川・山梨・静岡。
A清音なら標準語。『追い抜かす』。
ぬがす:宮城。
ぬかす:神奈川。
ぬがす
■ぬかす
【動】@除く、抜き取る、A追い抜く 『抜く』の他動詞形。
@・ぬかす:栃木。
A・ぬかす:群馬。
【動】逃がす
ぬがぞーきん 糠雑巾 『糠雑巾』は何故か辞書には無い。当時の学校では床磨きの必需品で競って磨いたものである。
ぬがづげ 沢庵漬け、糠漬け
ぬかだ
ぬがた
深田 ぬかった・ぬかりった:湿田:神奈川。
ぬまた:湿田:神奈川。
ぬかっ

がぽ
【形】(稲などで)ちくちくすること、むずがゆい 『のい・のい』がさらに訛ったもの。『集覧:北』。
(ぬなう) 【動】 時が経つ。ながらう。 『流なふ』。広辞苑には『【自下二】(上代東国方言か) 「のがなう」とも。万一四「立(タ)と月(ツク)の―・へ行けど」』とある。
ぬがり
ぬがりみ
ぬがるみ
ぬかるみ 濁音化。
『泥濘(ぬかり・ぬかりみ・ぬかるみ)』。現代語では『ぬかるみ』しか使われない。『泥濘』は当て字と考えられる。
『称呼』には『道路のぬかりを、関西にてしるいと云。東国にてぬかりと云。(中略)又道のすべるを常陸にてなめり道といふ。案に是に似たる事有。俗に猿すべりと云木有。歌に猿なめりとよめり。』とある。
『ぬ』は『沼』を連想させる。
ぬかっちゃり:静岡。
ぬがり
ぬがりだ
深田 『泥濘り』『泥濘りり田』の意味。
ぬがり 抜かり、手抜かり ぬがったごど:山形。
ぬがり:山形。
ぬがる 【動】@ぬかる、道が泥深くなる、A油断して失敗する 濁音化。
@『泥濘る』。『俚言』には『泥濘る』に関して長々と解説がある。やはり『沼』を挙げている。
Aの『抜かる』は標準語の中では特殊形である。
ぬがるむ 【動】ぬかるむ、道が泥深くなる 濁音化。『泥濘む』。
うたる:山梨。
ごちゃる:長野。
ねたる:長野。
のたる:長野。
ぬぎ ぬき:八丈島。
ぬきんだれ:雨だれ:千葉・山梨・静岡・鹿児島。
ぬぎ 建築用語。
ぬぎー 【形】暖かい ぬき:暑い:鹿児島。
〜ぬぎ
〜ぬき
【助】〜の木 上代東国では『野』を『ぬ』と言ったように『の』は多く『ぬ』と発音した可能性があり、茨城方言でも『の』を『ぬ』と発音することが多い。標準語にも事例がある。
ぬきあ 出過ぎ者、でしゃばり 『集覧:猿』。単に『抜け上がり』の意味と思われる。
ぬぎあしさしあし 抜き足差し足
ぬぎうづし 一部の写し取り 今なら部分コピーである。
ぬぎうづす 【動】一部を写し取る
ぬぎぎり
ぬぎきり
山林の伐採 『抜き切り』の意味。
ぬぎした
ぬぎのした
▲▽ぬきのした
@軒端、A軒下 『集覧:新』。
A・ぬきうち:群馬。
◆▽ぬぎば
▲△ぬきば
@軒端、A軒下 『のぎば』。『集覧:稲』。『軒端』。
@・えんのき:静岡。
ぬきば:神奈川・八丈島・鹿児島。
ぬくば:鹿児島。
ぬぎば
ぬきば
ぬぎばすずめ
スズメ ぬぎば:千葉。
ぬきば:千葉。
のきば:千葉。
ぬぎやしさしやし 抜き足差し足
(ぬきんだれ) 雨だれ 静岡。
ぬぐ 【動】@脱ぐ、A抜く
ぬく 【動】脱ぐ
ぬぐ
☆ぬく
【動】(嘘を)つく 『抜く』には、騙す意味がある。
ちぐぬぐ:嘘をつく。
ぬぐい
▲□△▽◇ぬくい
ぬげー
【形】暖かい 『温い(ぬくい)』ならやや古い標準語。『温し(ぬくし)』が転じたもの。一般には上方語とされる。『集覧:久・多』。
『俚言』には『ぬく:温也。地名温井あり。』とある。
現代語では他の言葉の台頭に押され消えつつあるが全国広域に残る。現代では『ぬくぬく』が残る。
ぬき:鹿児島。
ぬぐい:青森・福島。
ぬくい:秋田・岩手・福島・千葉・群馬・・東京青梅・神奈川・長野・山梨・三重・京都・九州・鹿児島。
ぬくか:鹿児島。
ぬっか:暑い:宮崎・鹿児島。
(〜ぬくい) 【接尾】難い 静岡。
ぬくたい
ぬぐでー
◆▲ぬくてー
ぬぐどい
ぬぐとい
■△▽ぬくとい
【形】暖かい、暑い 『集覧:西』。
古語の『温とし』。近世語の『温とい』(ぬくとい)。『ぬくとい』は、標準語圏では廃れているが、周辺圏に今でも生きている。ただし、東北には無い。
ぬくたい:三重・和歌山。
ぬくとい:栃木・埼玉・群馬・東京多摩・神奈川・中部全域・長野・山梨・静岡・福井・京都・三重・和歌山・京都・兵庫。
ぬくとき:『片言』掲載語。
ぬくとし:『書言字考』掲載語。
ぬくてー:群馬・神奈川・八丈島・静岡。
★『土』:おとっつあ、暖(ぬくて)えんだよ
ぬぐだまる
ぬくだまる
□△ぬくたまる
【動】暖まる ぬぐだまる:青森・岩手。
ぬくだまる:青森。
ぬくたまる:青森・秋田・岩手・群馬。
ぬくとぐなる 【動】暖かくなる
ぬくとばっこ ひなたぼっこ ぬくとばっこ:千葉。
ぬくとばっこ:日当たりの良い土地:千葉。
ぬくとぼ ひなたぼっこ 『集覧:西』。
ぬぐどぼっこ
ぬくとぼっこ
ぬぐどぼっち
▲▽ぬくとぼっち
ひなたぼっこ 『集覧:新』。
ぬくとんぼ:静岡。
ぬぐどまる
ぬくとまる
【動】暖まる 『集覧:多』。
『温まる』(ぬくまる)。
ぬくたまる:岩手。
ぬくとまる:千葉・佐渡・長野・山梨・静岡・愛知。
★『土』:そんぢゃまあよかった。何(なに)しても蒲團(ふとん)へ寢(ね)かせた方(はう)がええな、暖(ぬくと)まりせえすりゃ段々(だんだん)よくなっから
ぬぐどみ
ぬくとみ
日向、陽だまり
ぬぐどめる
ぬくとめる
【動】暖める ぬくためる:岩手。
ぬくとめる:千葉・佐渡・長野・愛知。
ぬくともる:京都。慶安時代。
ぬぐぬぐ 【副】あたたかいさま、不自由のないさま。 濁音化。
ぬぐぬぐって:良い思いをして:青森。『ぬくぬくして』。
ぬくぬく 【副】決断力に欠ける様、あいまいに、ぐずぐず 『集覧:真』。
集覧には『因循のこと』とある。
ぬぐまる
ぬくまる
【動】暖かくなる やや古い標準語の『温まる』(ぬくまる)。
ぬぐめる
△◇ぬくめる
【動】暖める やや古い標準語の『温める』(ぬくめる)。全国広域にのこる。
ぬくめる:大阪。
ぬげ 馬鹿 『抜け・脱け』。
ぬげおぎる
ぬげおきる
【動】@起きる、目を覚ます、A十分な睡眠をとらないまま途中で起きる 近い言い回しで、『ねでおぎる』というのが東北にあるそうだ。ほぼ同じ意味だが昼寝する意味もあると言う。
いーま、ぬげおぎで・でできたどごだ:(寝ていたが途中で)起きて出てきたところだ。
ぬげ 抜け駆け ぬげ:青森。
ぬげさぐ
▽ぬけさく
頭の弱い人、間抜け者 濁音化。『抜作』で人名にちなんだ言葉か。別に『温(ぬく):(形容詞ヌクシの語幹) 遅鈍な者をののしっていう語。のろま。』がある。
ぬけさき:鹿児島。
ぬげさく:岩手。
ぬけさく:神奈川・山梨。
ぬけもの:静岡。
ぬっきゃん:鹿児島。
さる 【動】逃げられる
ぬげじり 手抜かり、置いてきぼり 『抜け尻』の意味。『尻抜け』とほぼ同じ。
ぬげすけ
ぬけすけ
頭の弱い人 『集覧:真』。
『抜助』で人名にちなんだ言葉。
ずりまーる 【動】逃げ回る
ずる 【動】逃げる
ぬげでる 【動】肝心な事を忘れる、気が利かない 濁音化。『抜けてる』。『抜け出る』意味もある。
ぬげどーろ 新盆の家でその年と翌年門口にたてる灯篭
ぬげね

ぬげねー
ねー
【動】(服などが)脱げない、抜けない
ぬげみぢ 抜け道、近道 『抜け道』。
ぬげめね
ぬげめねー
【動】抜け目無い ぬげめね:青森。
ぬげもの
ぬげもん
のけ者 『抜け者』。
◆▲ 【動】逃げる 『集覧:多』。比較的古い表現。
:東北・青森・福島・茨城・群馬。
:青森・福島。
ぬげる 【動】抜ける
▲▽ 【複】逃げろ 『集覧:多』。
ぬさばる 【動】のさばる ぬさばる:宮城。
ぬさる 【動】乗る、乗っかる 『のさる』がさらに訛ったもの。
ぬさる:岩手・宮城・福島。
(ぬされ) 【複】来なさい 静岡。
ぬし @尾の切れたアオダイショウ、A家の中に入って来るヘビ 『主』の意味。
ぬしゃ 【動】@お前、Aお前は @・ぬさ:宮城。
ぬし:お前:群馬・神奈川・山梨・鹿児島。
ぬさら:お前達:宮城。
ぬっしゃら:お前達:宮城。
A『主は』が訛ったもので格助詞が隠れている。
ぬさ:宮城。
ぬすくらい
ぬすくれー
ぬすっくれー
摘み食い 『盗み食い』。
ぬすくらえ:福島。
(ぬすくる) 【動】塗る 鹿児島。
ぬすっこみ
ぬすっとみ
覗き見、盗み見
ぬすった
ぬすっちゃ
【複】盗んだ 『集覧:久』。
(ぬすっちょ) 横着者 鹿児島。
ぬすっと
ぬすっと
服や動物の毛に付着する種を持つ植物、付着動物型植物 『どろぼー・どろぼーさ』
◎ぬすと
ぬすとー
ぬすびど
盗人 『集覧:多』。
ぬいど:鹿児島。
ぬくと:静岡。
ぬしと:鹿児島。
ぬすと:山形・鹿児島。
ぬすびど:山形。
ぬすぶと:青森。
ぬすまった
ぬすまっちゃ
【複】盗まれた 茨城弁ではしばしばラ行音が省かれる。
★長塚節『芋掘り』の一節:おすがら内の土藏ん所(と)け置いたの今朝盜まったんだか何んだかねえんだ:そうしてから家の土蔵のところへ置いたのが今朝盗まれたのかどうか無いんだ。
ぬだ
ぬた
料理のの一種。広辞苑には『魚肉や蔬菜などを酢味噌で和(ア)えた食品。ぬたあえ。ぬたなます。かきあえ。毛吹草六「此度は―に取あへよ紅葉鮒」(重頼)』とある。
ところが、『ぬた』には別の意味がある。@沼地。湿田。にたのた。散木「おくろ崎―の根蓴(ネヌナワ)ふみしだき」。どろ。ひじ。転じて、猪(イノシシ)の臥床(フシド)。夫木二七「あみける―にやつれてぞふる」Aぬたはだ:鹿の角の表面にある波紋。ぬた。〈和名抄一八〉。
これを見るとどろどろしたものを『ぬた・のた・ぬま』と呼んだようである。すなわち『の・ぬ』がそれを代表しているようである。
 一方『のたうつ・ぬたうつ』も同源のようである。
どうやら擬態語のようで、このような言葉は、全国に散在することが多い。
ぬた:粘土:静岡・長野。
ぬた:エダマメを潰して砂糖をまぶしたもの:福島。これをつけた餅を『ぬたもち』と言う。宮城では『ずんだもち』と言う。
ぬたすり:泥だらけ:神奈川。
のた:泥:長野・徳島・長崎。アイヌ語の『ヌタッは沼を指す。
ぬだうぢまーる 【動】のた打ち回る
ぬだうづ
ぬたうつ
【動】のたうつ 古い標準語。
ぬだぐる
ぬだくる
△ぬたくる
ぬたつける
【動】塗りまわす、塗りつける 『ぬたくる』(絵の具、墨等をむやみになすりつける、べたべたと塗りつける)。
『ぬたくる』には『@泥の上をもがいてころびまわる。のたくる。ぬたうつ。Aうねりまわる。』の意味がある。
また『ぬた』は『@沼地。湿田。にた。のた。Aどろ。ひじ。転じて、猪(イノシシ)の臥床(フシド)。』の意味がある。
『ぬた、のた』には、泥の意味がある。
ぬだぐる:宮城・山形。
ぬたぐる:福島・山梨。
ぬたくる:長野・静岡。
ぬだぐりつける:こすり付ける:宮城。
ぬたすり:泥だらけになること:神奈川。
ぬたする:泥だらけになる:神奈川。
ぬたば イノシシが砂をあびる場所 広辞苑に『ぬた場:猪・鹿など大型の獣が泥をあびる場所。狩猟者の間では、そこに山の神がいて、祈ると獣があらわれるとされている。』。
ちなみに広辞苑には『ぬたうつ:@猪が草の上にころがって体に泥をつける。もがきころげる。のたうつ。Aだらしなく寝ころがる。B軽んずる。あなどる。』とある。
ぬた:神奈川。
ぬたうち:イノシシが湿地で体に泥を塗るために転がること:神奈川。
ぬたーうつ:イノシシが湿地で体に泥を塗るために転がる:神奈川。
ぬたば:栃木・神奈川。神奈川では寝る場所も言う。
ぬだばる
ぬたばる
【動】@腹ばいになる、A横になる、B死ぬ 『のたばる』がさらに訛ったもの。
@・ぬだばる:秋田・宮城。
ぬたばる:宮城。
ぬだる 【動】@這う、やっと歩く、A倒れる、B苦しむ、のたうつ @A『のたる』の転。
ぬだり:四つん這いで歩く事:千葉銚子。
B『のたうつ』の転。
(ぬちぐすいやさー) 心の薬 沖縄。
ぬっかげる 【動】載せ掛ける
ぬっかる 【動】乗っかる
ぬっくい 【形動】暖かい様、ぬくぬく ぬっくい:群馬・東京青梅。
ぬっくとい:静岡。
ぬっくぬっく 【形動】暖かい様、ぬくぬく
ぬっくら
▲△☆ぬっくり
【副】@悠々とした様、ぬっと立ち上がるさま、A暖かい様 『集覧:猿』。
(ぬつけー) 馬鹿者 静岡。
ぬっこい 【形】暖かい 『のっこい』
ぬっすり
ぬっそり
【副】@悠々とした様、Aぬっと立ち上がるさま 『のさり、のそり、のっそり』。
『俚言』には、『ぬっすり:入寸:シブトキ貌也。人まぜもせずなと雙紙には書り。』とある。
(ぬっそる) 【動】仰け反る 鹿児島。
ぬったぐる
ぬったくる
【動】塗りまわす、塗りつける 『ぬたくる・ぬりたくる』(絵の具、墨等をむやみになすりつける、べたべたと塗りつける)の足音便・濁音化。
にちゃぐる:神奈川。
ぬったぐる:千葉銚子。
ぬったくる:東京青梅・長野。
ぬった 【動】(蛇が)動く様、のたくる 『のったる』
ぬったり 【副】@悠々とした様、Aぬっと立ち上がるさま、B暖かい様 秋田では一生懸命を言う。
ぬっちゃ 塗師屋 『集覧:新』。
ぬっちゃ 【複】濡れた 濡れた→ぬったぬっちゃ
ぬっちゃ:福島。
ぬっちゃぐる 【動】塗りつける にちゃぐる:神奈川。
ぬっつげる
ぬっつける
【動】@▲塗りつける、他人のせいにする、A縫い付ける @『集覧:新』。
ぬっつける:岩手。
A・ぬつける:宮城。
ぬって 【複】脱いで 連用形。『脱ぐ』は、上代は『ぬく』であり、『ぬきて』を経て『ぬって』と促音化しても不思議ではない。
ぬっと 【副】のろい動作で、時には薄気味悪く、目の前に不意に現れるさま。また、大きな物がつかみどころなく立っているさま。 『ぬうっと』。
ぬっ
ぬっ
ぬっじる
のっぺい、のっぺいじる 『集覧:稲』。
『能平汁・濃餅汁』。
ぬっ 【形】しまりのない様、のっぺり 『ぬっぺらぼう、ぬっぺらぼん、ぬっぺらぽん』があるのに『ぬっぺら』が無いのは不思議だ。
ぬっらぼう 【形動】平らな様、のっぺらぼう 古い標準語。『ぬっぺらぼん、ぬっぺらぽん、のっぺらぽん』とも言う。
ぬっへり 【形動】平らな様、のっぺらぼう 副詞の『ぬっと』が形容動詞に変化する際の過渡的な言葉。『俚言』にも掲載されている言葉。『ぬっへい』とも言ったという。
ぬっ
ぬっ
【形】しまりのない様、のっぺり 古い標準語。
ぬっ:一面に:秋田。
(ぬっもる) 【動】温もる 鹿児島。
ぬのご
△▽ぬのこ
ぬのこつっ
布子、綿入りの着物 『布子』。
ぬのこ:埼玉・群馬・石川・福井・滋賀。
(ぬぶ) 【動】述べる 鹿児島。
ぬぶる 【動】踏む 『のぼる』
ぬぶる:岩手・八丈島。
ぬーぼっけ
ぬーぼっち
稲叢(いなむら) 『集覧:稲』『集覧:新』。
『野ぼっち』の意味。=『のーぼっち』
『野』を『ぬ』というのは辞書には上代語または上代東国方言とあり、古い言葉でもある。
刈り取った稲は小田掛けして1週間から10日干した後、屋敷に運び込む。脱穀した藁は、そのまま藁すぐりをして庭に干して様々な用途に使われる。それ以外の藁は再度田に持ち込み、主に肥料用に円形に積み上げた。
稲架は一般に穂のついた稲を干したものを指し、稲叢(稲村)は穂の付いた稲を干したものと、脱穀した後の稲藁を積み上げたもの双方を指すことが多いようだが厳密な区別は無い。一般には稲塚を指している。
茨城では一般に稲架は『おだ』と言い、稲叢は『のー』『のーぼっち』と言う。いずれも江戸時代の文献に見られる。『おだ』は広辞苑にも掲載されている言葉である。
特に頂部の雨よけの山形の部分を指して『のーぼっち』と呼ぶこともある。『帽子』の訛り。『ぬーぼっち』と言う人もいた。千葉県北部にかけて使われる。
農作業用の帽子は、『ぼっちさ』と言い、広域に使われる方言である。頂部が尖った平たい円錐状の帽子で東南アジアに共通のものである。
『のー』には『新穂』の説がある。それが正しいとすれば、新穂(にいほ)帽子→にほぼっちにょーぼっち・におぼっちにゅーぼっちぬーぼっち(→のーぼっち)と訛ったことになり、茨城のこの言葉は最も訛りが進んだ言葉となる。江戸では稲村である。江戸に最も近い常陸国がこのようなルーツを経てで最も大きく訛ったとは考えにくい。
ぬまった 深田 『沼田』。
ぬまっ
ぬまっ
ぬまっ
沼の周辺
ぬまる 【動】どぶなどにはまる 『のめる』の転。
(ぬみりとかす) 【動】倒す 鹿児島。
ぬめ 滑る場所 ぬめ:静岡。
ぬめっこい
ぬめっけー
【形】ぬめぬめしている、ぬるぬるしている 『滑り(ぬめり)』+『こい』。
『絖(ぬめ)』は『繻子織(シユスオリ)の絹布の一種。地薄く表面滑らかで、光沢に富む。天和(16811684)年間、京都の西陣で明(ミン)国製にならって初めて製出、のちに桐生でも製織。絵絹として用いたときは絖本(コウホン)という。』、『滑(ぬめ)』は『銭貨の裏面の文字のない方。なめ。』と広辞苑にある。
ぬめっこい:山梨。
ぬめり ぬめること、粘液 『滑り』。
『なめ』と同じ意味。ただしキノコのナメコは何故かヌメコとは言わない。また、『ぬめり』を『なめり』とは言わないが、『滑り歩く(なめりあるく)』(うろうろと歩きまわる。ぬらりくらりと歩く。)という言葉がある。
『称呼』によると江戸時代には、銭貨の裏面の文字のない方を『ぬめ』といったとある。
ぬめる 【動】@(風呂を)埋める、差し水をする、A倒れる @『埋める』『ぬるめる』『伸べる』の転。
ぬべる:高知・福岡・佐賀。
A『のめる』の転。
△ぬめる 【動】滑る 『滑る(なめる)』とも言うから『なめ』と『ぬめ』は同源だろう。
ぬめる:静岡・鹿児島。
(ぬらか・ぬり・ぬれ) 【形】鈍い 鹿児島。
☆ぬらくら
ぬらっくら
【副】のらくら、のらりくらり
ぬらつぐ
☆ぬらつく
【動】ぬるぬるする
ぬらっと 【副】ぬるっと 近世には『ぬらりと』と言った。
ぬらぶー
ぬらぼー
宿無し、遊び人 『集覧:多』。
『野良坊』の意味。『野良』を『ぬら』と言うのは江戸時代の誤読とされる。また『野』を『ぬ』というのは辞書には上代の東国方言とあり、古い言葉でもある。
しかし、『ぬらくら』の存在を考えると単に擬態語の可能性もある。
ぬらぬら なめらかですべる様、ぬるぬる ぬらぬら:山形。
ねろねろ・ねろんねろん:山形。
(ぬらーゆん) 【動】叱る 沖縄。古語『罵る(のる)』の流れ。『罵りよる』意味か。
ぬらら
☆ぬらり
☆ぬらりくらり
【副】のらくら、のらりくらり 近世には『ぬらりころり、ぬらりひょん』とも言った。『ぬらりひょん』は『瓢箪鯰(ヒヨウタンナマズ)のようにつかまえどころのない化物。』の意味もある。
ぬらりくらり:埼玉。
ぬりー 塗り絵
ぬりー 【形】ぬるい、暖かい ぬりー:神奈川・八丈島。
ぬりぐる 【動】塗る、塗り捲る ぬりくる:東京。
ぬりたぐる 【動】塗り捲る 濁音化。『塗りたくる』。
ぬりたぐる:山梨。
ぬりたくる:東京青梅。
◆ぬりで ヌルデの別称 ぬでんぼー:群馬。
ぬりでんぼー
ぬりてんぼー
塗ったように垢がついた人 『集覧:新』。
『手棒』(てぼう・てんぼう)は、『指や手首のない人』の意味だが罵倒言葉として解釈されてそれに『塗り』がついたものだろう。
◎ぬる @粘液、ぬるぬるしたもの、納豆のネバネバ、Aアオミドロ 『のろ』。標準語ではものの表面のぬるぬるしたものを指し、アオミドロや納豆のネバネバはぬるとは言わないが同源だろう。
ぬる 【動】乗る 『集覧:久』。段の変化。
ぬる:福島。
ぬる〜 【接頭】 『温い』に由来する接頭語。事例は少ない。
ぬるあったがい
ぬるあっだげー
【形】ぬるい
△ぬるい 【形】@お湯などが温い、A遣り方が手ぬるい、Bのろい 『微温い』。
誰でも使う標準語だが、広辞苑には『@少しあたたかい。なまあたたかい。(液体が)十分な熱さではない。Aゆるやかである。のろい。Bおおようである。鈍い。きびしくない。はげしくない。』とある。
また『鈍い』(のろい)は『@おそい。はかどらない。A動作や頭の働きがおそい。おろかである。にぶい。B女にあまい。色におぼれやすい。』とある。これによれば、『温い』も『鈍い』も動作や行動・温度等のめりはりが無い様と言え、かつては同じ意味だった可能性がある。
ぬるい:にぶい・のろい:長野・新潟・岐阜・大阪・香川・宮崎・鹿児島。
ぬるいふろ 【慣】出られないこと 昔、『でろれん祭文・でろれん(門付(カドヅケ)の説経祭文の一種。法螺貝(ホラガイ)を吹き、短い錫杖(シヤクジヨウ)を鳴らしながら語り、合(アイ)の手に「でろれんでろれん」という。でろれん。)』(広辞苑)という説教祭文があった。『祭文読(さいもんよみ)』(歌祭文を語って銭を乞う遊芸人。さいもんかたり。)とも言う。そこで『温い風呂』と掛けて答えは『祭文読』と答える。その心は『でろれん(出られん)』と言う。
ぬるえ
ぬるけー
◆▲ぬるっこい
ぬるっけー
ぬるこい
【形】ぬるい 『集覧:多』。
ぬるこい:岩手・山形。
ぬるっけー:神奈川。
ぬるぬたい:神奈川。
ぬるたい
ぬるたこい
ぬるだっけー
ぬるたっけー
ぬるだっこい
ぬるたっこい
ぬるてー
ぬるったい
ぬるってー
【形】ぬるい 『ぬるい』の『体』の意味とも言えるし、典型的な田舎言葉の『ぬるいだ』に由来する可能性もある。
鹿児島方言の『〜たい』からは『温きにてある。』すなわち『ぬるいだ』が変化した可能性が高い。
『温い』に対して『体』を意味する形容詞を形成する接尾語に加えて、その傾向がある『濃い』の意味の接尾語が付いた言葉で、関東では古くからあった表現だと思われる。
ぬるたっこい:東京青梅。
ぬるたっけー:東京青梅・神奈川。
ぬるっと 【副】どろどろした様、液状のものが出て来る様 『のろっと』
ぬるっと 【副】ぬるぬるするさま、滑る様、ぬるりと 何故か辞書に無い。
ぬるでんぼー ヌルデ ぬでんぼー:群馬。
ぬるぼったい
ぬるぼってー
【形】ぬるい
ぬるま @ぬるいこと、A▲のろま、馬鹿 やや古い標準語。
@『ぬるま湯』の略。現代では全自動給湯になっていつでも最適温度の風呂に入れるようになってしまった。
ぬるま:群馬。
A標準語の中の訛り。『集覧:久』。
このふろまーだぬるまだ:この風呂はまだ温い。
ぬるまこい
ぬるまっけー
ぬるまっこい
【形】@ぬるい、A動作が鈍いこと、馬鹿 やや古い標準語
ぬるまっこい:栃木・埼玉・東京多摩・長野。
ぬるまったい
ぬるまってー
【形】ぬるい ぬるぬたい:神奈川。
ぬるまったい:神奈川。
ぬるまってー:群馬。
★『土』俺(お)ら方(ほ)の井戸(いど)見(み)てえに柄杓(ひしゃく)で汲み出すようなんぢゃ、ぼかぼかぬるまったくって:俺の方の井戸みたいに柄杓でくみ出すようなのは、ぽかぽか温くて。
ぬるみ
ぬるめ
@ぬるま湯。A河の流れなどのゆるやかなところ。よどみ。 広辞苑では『微温』と当てられている。
@県下では県北から西部にかけて『稲代の周りの水路(この水路で水を温めてから稲代に入れる)』を指す言葉を『ぬるめ』と呼ぶ。
『み』とは古くは水を表す言葉なので『温水(ぬるみ)』の意味と、場所を表す『み』と合わさったたことが考えられる。
A・ぬるみ:淀:島根。
ぬるめゆ 温い湯
ぬるめる 【動】お風呂をぬるくする、うめる 最近の風呂はは、全自動化して、ぬるめる(うめる)必要がなくなり、言葉自体を使うことが少なくなった。
ぬれー 【形】ぬるい ぬれ:青森。
ぬれしずぐ びっしょり濡れること 濁音化。『濡れ雫』。
ぬれしずく:静岡。
ぬれそぼつ 【動】びしょびしょに濡れる 『濡れ濡つ』。終止形を使うことは少なかった。
ぬれしょぼたれる:東京・神奈川。
ぬれだぐ
ぬれだご
ぬれだこ
【名・形動】ずぶ濡れの様 この『たご・たこ』は、『汗だく』の『だく』が転じたものと思われる。『濡れだく』の意味。
ぬれだこ:岩手。
ぬれぼっかい
ぬれぼっけ
濡れっぱなし
(ぬわとい) 鹿児島。
ぬんで
ぬんでんぼー
ヌルデ
ぬんで 【複】脱いで 連用形。
茨城では他に、『磨(と)んで、漕(こ)んで、注(つ)んで、嗅(ん)で、抜(ぬ)んで』などがあるが、標準語ではそうは言わない。このような傾向は秋田方言とぴたりと一致する。全て連用形でイ音便化する動詞である。明快なルールである。
標準語の連用形で撥音化するのは、ナ行・バ行・マ行五段活用動詞だけなのである。理由は良くわからないが、ナ行の場合はN音が含まれるので解かり易いとして、連用形活用部の『バ・マ』の共通性は唇が閉じるという事だけでありそれ以外は解からない。
(ぬんびゃがる) 【動】伸び上がる 鹿児島。
ぬんめり 【副】滑らかな様 山梨では『ぬんめりな肌』という言い方があり、名詞的に使われ、滑らかな意味があるという。
 本茨城弁集は、昭和40年前後の茨城方言を中心に茨城県全域の江戸時代まで遡る言葉を集めたものです。他県の方言との関係を重視し主要なものについては他県の方言も紹介しています。また、近年使われなくなってきた標準語や語源考察、また昭和30年代の風俗・文化等を紹介するために、合わせて標準語も掲載していますのでご注意下さい。
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