昔の茨城弁集
昭和35年〜45年頃の茨城弁集
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◆印:『土浦の方言・続土浦の方言』掲載語。■印:『土浦市史・民族編』掲載語。▲印:『茨城方言集覧』掲載語。印:新編常陸国誌掲載語。印:茨城方言民俗語辞典掲載語。印:茨城弁今昔掲載語。印:物類称呼掲載語。●印:『国立国語研究所・日本語情報資料館・電子資料館・日本言語地図・方言文法全国地図』掲載語。▼印:日本方言大辞典掲載語。印:日本方言辞典掲載語。浪花聞書掲載語。印:俚言集覧掲載語。★印:使用例とその標準語訳。黒太文字:標準語。
茨城弁 標準語訳 備考・解説・使用例
(〜ら) 【助動】〜だ 新潟。
詠嘆を表す助動詞『らむ』が変化したものか、西日本方言の『や』の影響か。あるいは単にダ行音がラ行音に変化したか。
〜だすけ:〜だから。
〜だっけ:〜だから。
〜らか:〜なのか。
〜らすけ:〜だから。
〜らっけ:〜だから。
〜らてやら:〜だとか。
〜らば:〜であれば。
〜られ:〜だぜ。男言葉。
〜られい:〜だぜ。男言葉。
〜らろ:〜だろう。
〜らろっか:〜だろうか・でしょうか。
〜らん:〜なの。
〜らーすけ:〜だから。
〜ろ:〜だろう。
〜ろも:〜だけれども。
(〜ら) 【助動】〜だろう 推測の助動詞『らむ』が変化したものか。
〜ら:山梨・静岡。
〜らか:〜だろうか:静岡。
〜ら 【助】@〜等、〜達、A単数の相手をぼかしたり、相手を含めた複数の対象に拡大して指す助詞 最近はテレビの司会者でもなければ使われない言葉。せいぜい使われるのは『あいつ等』ぐらいか。
@は標準語だが、茨城弁では頻繁に使われる。
おめー(お前)→おめら・おめーら(お前達)。
あいづら・あいつら:あいつ等。
おどごら・おとこら:男達。
おんなら:女達(標準口語では使われないがニュース等では使われる文語的な言葉)。
おれら:俺達(標準語ではほぼ死語と言って良い)。
A単数でありながら『等』を使うことが多い。広辞苑に『おおよその状態を指し示す。万一六「弥彦(イヤヒコ)神のふもとに今日―もか」』とある。現代でも『そこらがおかしい』と言う。茨城方言では『今日ぐらい』を当時きょうら・きょうらあだり』と言った。昭和30年代の茨城県土浦市上大津地域は、万葉時代の言葉を残していたことになる。関西でも『東ら、西ら』などと言う。
人称代名詞の場合は『〜など、〜なんか』の意味。
おめら・おめーら:お前など。お前なんか。
おれらなにはむりだ:俺のような人間には無理だ。
★『土』:勘次等(かんじら)懷(ふところ)はよかつ:勘次なんかはふところ具合は良いだろう。
★『土』:勘次(かんじ)さん等(ら)それでも穀類(こくるゐ)はなかなか有(あ)る容子(ようす)だね
〜ら 【助】〜り、〜と 「り」は副詞や状態を示す名詞を形成する接尾語または、状態を示す格助詞とも言えるが、標準語には定義が無く状態を表す名詞や副詞の一部となっている。現代語の「しっかり」の古形は「確と」、「みっしり」の古形は「緊と」だから、この茨城の助詞は、明らかに「と」「り」に代わるものである。
茨城方言では『り』も『ら』もほぼ同じ意味で、同じ言葉に等しく使われる。擬音語等と組み合わせることもある。
『新方言』には『ポーンラ:ポーンと。群馬県東部(1993)。』とある。
どすーら:どすんと。
ばぐーり:ぱくりと。
みっしら・みっちら・:みっしり・みっちり。
ゆっくら:ゆっくり。
〜ら
〜らー
【助】@〜るわ、A〜(て)いるわ ラ行活用動詞に伴う。元『〜るらむ・〜るらん』か。
@『〜るわ』の逆行同化か。詠嘆の助動詞『らむ・らん』の流れか。
〜らー:東京・静岡。
あらー:有るよ:武蔵村山。
くらー:来るよ:武蔵村山。
よーぐみーら:良く見えるよ。
★『土』:こつちなんぞぢや、後(あと)幾(いく)らでも出來(でき)らあな。 ★『土』:其(そんな)こと云(ゆ)ったっ位(くれえ)、打(ぶ)ん擲(な)らっら篦棒臭(べらぼうくせ)え。
★『土』:それ、底(そこ)の方(はう)へ廻(まは)って零(こぼ)れらな
A『るわ』の逆行同化とも言えるし、『(て)いる』が訛った俗語の『(て)らい』が転じた『(て)らあ』とも言える。
〜らー:群馬。
〜らい:群馬。
やってらやってら:やってるやってる。
よーぐべんきょしてら:良く勉強してるね。
★『土』:へへえ、此(こ)ん畜生奴(ちきしょめ)こんでも怒(おこ)ってらあ
@Aは実質的に同じとも言える。
視点を変えて、古語には、(1)【助動】完了・存続の助動詞「り」の未然形。万一五「西の御厩(ミマヤ)の外(ト)に立て―まし」、(2)【助動】口調を整え、また親愛の意を表すために添える語。狂、比丘貞「聞き馴れた声で表に物申すと有る。案内とはたそ―」がある。(1)は万葉集の時代からある言葉である。静岡では今でも『〜(している)ら』と言う。信州方言の『〜ずら』の『ら』も同様のルーツだとすると、茨城方言の『〜ら』は、ラ行活用形の動詞に『ら』がついた『るら』が転じた可能性もある。
また、古語の助動詞『らむ』は、推量・原因・理由・伝聞等に意味があるが、近世には詠嘆を示す語法があったという。広辞苑には『詠嘆を表す。時代が下っての用法。謡、安宅「旅の衣は篠懸の露けき袖やしをるらん」』とある。まさにラ行活用形の動詞に『ら』がついた『るら』のルーツとも言える。
〜ら
〜らー
【助】〜れば、〜なら 俗語の『〜りゃあ』(辞書不掲載)の転。
やらいーべ:やれば良いだろう。
(接尾語の「ら」) 『つらら』や『けら』、植物の『タラ』魚の『タラ』、亀の『甲羅』『鱗(こけら)』等がある。『けら』は蛾の怪獣『モスラ』にも通ずる。
そこで『ら』の接尾語的な言葉を調べると、『羅:つらなること。並ぶこと。』、『等:など。なんど。』とあり、『羅』と『等』には意味の共通性が見られる。
『鱗(こけ)』は『こけら』とも言う。この場合の『ら』は『羅』で、連なる意味なのだろう。
茨城方言でも二人称を『おめ・おめー』(お前)と言い、複数形は『おめら・おめーら』と言うが、漠然とした単数の二人称を同様に言う。明日当たりを『あしたら・あしたらあだり』とも言う。お前の家を『おめらい』と言う。
どうやら『羅』と『等』は、連なる意味と、複数の意味が転じて、『辺り、その程度』の意味で使われているようである。連なったものは複数であり、『辺り、その程度』に通ずる。
『そこら』とは、『@その近辺。そのあたり。Aその程度。』の意味である。つまり和語の『ら』とは、連なったり並んだりする複数形を示すことになる。
最後に残る、動物や植物を示す『ら』が注目される。これも、単独の指示語に対して複数の意味を示したものと思われる。
この推測から言えば、昆虫の『けら』は得体の知れない不思議な昆虫の意味の『怪ら』ではないかと思わせる。
らい 近世語。
らい:関東では茨城・栃木・群馬・埼玉・東京の一部に残る。
〜らい 【助】〜の家 『〜等』の『家』。通常使われる標準語の『〜等』は、複数を示すが、古い言葉では、『@方向・場所を示す。A親愛の意を表す。ろ。』があり、この場合は方向・場所を示しているのだろう。ex.『ここら』。
〜らんち:静岡。
おらい:俺の家
らいあめ 夕立 『雷雨』の意味。筑波郡付近の方言。
(らいか) 広さ 静岡。
◎らい 雷魚、カムルチー 標準語だが湖に面していない地域の方には縁の無い魚。
らいさま
らいさん
『雷(らい)』+『様(さま)』。江戸時代(1603)に刊行された日本−ポルトガル辞書の『日葡辞書』に雷を『らい』と言ったことが記録されている。東関東から東北にかけて分布する方言。古い言葉でもある。
土浦では『らいさま』の方がメジャー。
『俚言』には『らいさま:岩代にて雷をいふ。』とある。
らいさま:福島・栃木・千葉・埼玉。
らいさん:栃木。
らいさま
らいさん
入道雲、雷雲
らいしー 来週
らいじんさま 民俗行事の一つ @3月15日に節分の豆を食べる。A6月19日にする祭り。
らいじんさまのき 落雷で枯れた木 この木は切らない。
(ライスカレー) 当時の土浦では、カレールーのスパイスが少なかったためか、ほくほくのカレーライスにソースをかけて食べるのが習慣だった。時に醤油をかけることもあった。
〜らいだ 【助】@自発、A可能、B尊敬、C受身 『〜られた』。
ラ行活用動詞の自発・尊敬・可能・受身表現。『い』は、古語の助動詞『ゆ』の流れ。
A★しぜんにしらいだ:自然にできた。
B★こらいだ:来られた。
C・〜らいた:〜られた。『〔会いたくない友だちに〕来〔こ〕らいた』(熊本)。
やらいだ:遣られた。
らいだま 昼花火 音だけの花火。『雷玉』の意味。一般には号砲・段雷・万雷(ばんらい)等と呼ばれる。
古くはお昼の合図に上げていたが間も無くサイレンに変わり、運動会等の催し事の始めの連絡サインに使われた。所謂『どん』。
らいでんぼく チャンチン 『俚言』には『らいでんぼく:丹波・常陸の方言で京のチャンチンを云。』とある。『雷電木』と呼ばれる木は全国各地に様々にあり、雷除けにしたものと思われる。
らいどー
らいとー
来年の祭りの頭屋 『頭屋』とは広辞苑に『部落の祭礼の神事宿。また、その家の主人。古くは世襲であったが、限られた家だけで交替しているところが多い。一般に、寄合の世話役にもいう。当屋。』とある。
〜らいね
〜らえね
【複】〜(でき)ない 『〜られない』。=『〜られね』のr音の脱落。
『新方言』には『デライネ :出られない(状況可能)。山形県庄内の若い世代で、語源はデラレナイ。レのr脱落の形で、以前はデラエネと発音されていたが,連母音でアエがアイに変化してできた(1994)。』とある。
らいひ 雷魚 『雷魚(らいひい)』。
らいぼく 落雷した木
〜らいやすか 【助】〜られますか 敬語。
きらいやすか:来られますか。
らいゆ 夕立 『雷雨』の意味。
らいよげ 雷を避けるためのもの 県下では、@避雷針、A竿の先に鎌をつけて軒先に出したり、クワの葉の付いた枝を軒先に刺す。B苗代にたてる竹または篠。
らいよび 避雷針 避雷針は、本来雷を誘導するものであるから、この呼称は実態に合った方言。
らいよん ライオン 『クレオン』とは逆の表現。逆行同化。必然性のある訛り。
らいよん:群馬。
らいらぐ 気が大きく朗らかで小事にこだわらないさま 『磊落』。
〜らいる 【助】@自発、A可能、B尊敬、C受身 東日本一円の方言。可能動詞の原型と考えられる。
られる→らいるれーる→れる。
A・〜らいる:宮城。
C・〜らいる:宮城。
〜らいだ:〜られた。
〜らいで:〜られて。   
〜らいんち 〜の家
〜らいんて 〜の人たち
〜らえ 【助】〜の家 『〜等』の『家』。
おらえ:俺の家
らえさま らいさま→らえさま→れーさま
らえさま:千葉。
らえねん 来年 らえねん:千葉。
らおや キセル職人 『Lao・羅宇』とは、広辞苑には『@インドシナ半島中央部、メコン川中流域を占める人民民主共和国。一三五三年にランサン王朝が興起。一八九三年以来フランスの保護領。一九四五年独立。住民の大部はタイ族で仏教徒。言語はタイ語派に属するラオ語。面積二四万平方キロメートル。人口三八七万(1988)。首都ヴィエンチャン。ラオス。(ラオスから渡来した黒斑竹を用いたからいう)A 煙管(キセル)の火皿と吸口とを接続する竹管。ラウ。』とある。
らう:キセルの竹の部分:神奈川。
〜らがす
〜らかす
【助動】使役または他動詞を形成する助動詞 標準語ではカ行活用形の動詞にのみある表現で、『退かす』『溶かす』『散らかす』等がある。これは、文語の使役の助動詞『す:使役を表す。…させる。…せる。万七「白玉を手には纏(マ)かずに箱のみに置けりし人そ玉なげかする」。古今夏「夏山に鳴くほととぎす心あらば物思ふ我に声な聞かせそ」。伊勢「そこなる人にみな滝の歌よます」』がついたものとも考えられるが、『散らかす』は該当せずいずれも一つの動詞として扱われている。『可能動詞』という定義はあるが『使役動詞』は無い。
茨城では、主に『らがす・らかす』形をとり、使役または他動詞を形成する助動詞ように使われる。
〜らがす:宮城。
ならかす:鳴らせる。
あまえらかす・あまやらがす:甘やかす。
いしゃらがす:退かす。
こじらがす:拗らせる。
こりらかす:懲りさせる。
はしらがす:走らせる。
はならがす:離す。
標準語には類似表現に『遣らかす(やらかす)』があり遣るのぞんざいな言い方。この場合『する・食う・飲む』の意味が当てられている。その他『出来す(でかす):@出てこさせる。また、出来るようにする。こしらえる。Aしとげる。はたす。うまくやる。』、『為出かす(しでかす):してしまう。やってのける。しいだす。多く、その行為がよくない時に使う。』等がある。
〜らがせる
〜らかせる
【助】〜させる、〜らせる 意図的にする意味を含む。清音形は標準語でもあるが、標準語では使用範囲が限られている。茨城弁では使用範囲が広い。標準語では『働か・せる』等。
何故このようになるかは調査中。語幹と語尾の解釈が異なるのだろうか?。
におらがせる:匂わせる。
らぐ らっくに:楽に:青森。
らぐ
らぐじん
らくじん
財産家 『楽人』の意味。
らくじん:山梨。
らぐざ @足をくずすこと、A結婚式の後くつろいだ宴席 『楽座』の意味だろう。
らぐざする:足をくずして座る。
らぐさ
らくさ
楽なこと、ずるいこと 『さ』は、接尾語で『その表す性質・状態・心理そのもの、またその程度などを表す』もの。標準語では『悪さ』と同じ語法。消えてしまった古い時代の言葉と思われる。
らぐさか
らくさかげん
楽なことの程度
らくだ 売春婦 『駱駝』は@形ばかり大きく品質の劣るもの、A炭・蝋燭などの下等品、B夫婦または男女が連れだって歩くことの意味。
『落堕』は、僧が戒律を破って妻帯することとあり、いずれも怪しげな言葉である。『集覧:多・久・新・稲』。
『俚言』には『らくだ:常陸にて淫買婦をいふ。』とある。
らくだ:酌婦:静岡。
らぐだ
らくだ
メリヤス らくだ:埼玉。
らぐだいなー
らーぐだいなー
【複】楽だよね らっきゃ:楽だ:兵庫。『楽や』の意味。
(らくぢゅー) 【接尾】その中の全て、〜中 千葉銚子。
『らくちゅう【洛中】:京都の市中。京中。』に由来すると思われる。
らぐでー 落第
らぐにする
らぐんする
【複】くつろぐ、正座しないで座る らっくりする:のんびり気が休まる:新潟。
らぐになる
らくになる
らぐんなる
【複】死ぬ 『千秋楽』とは広辞苑に『@雅楽曲の一。唐楽に属する盤渉(バンシキ)調の曲。舞のないもの。A能「高砂」の終りにある文句。付祝言(ツケシユウゲン)に用いる。B(法会などの最終日に千秋楽を奏したからとも、演能の最後に千秋楽を謡ったからともいう) 演劇・相撲などの興行の最終の日。千歳楽。C最後。終り。』とある。もともとは雅楽に発した言葉だが、別にこの日は『楽日、楽』とも呼ばれ、最後になることを『楽になる』と言ったとされる。一説には江戸時代に『楽になる』が『くらになる』に転じ、現代の『お蔵入り』『お蔵』に繋がったとも言われる。
その意味でこの方言は雅楽に発した終わりになる意味の『楽になる』が現代の茨城に伝えられていると考えられる。
らぐよー @【名】楽なこと、A【形動】楽な様 @『楽用』の意味。『楽様』の意味。当時の高齢者言葉。
〜ら 【助】〜の家 『〜らいえ』が転じたもの。
〜らさる 【助動】@自発、A可能、B尊敬、C受身、D受動使役 多く自発・可能・受動使役として使われるが、使役形の『せる』に対して自発・可能・受身・尊敬を示す古語の『らる』と同様に使っているものと思われる。
五段活用動詞の場合に『さる』形となり、一段活用・カ変・サ変動詞のばあいは、『〜らさる』形となる。『〜さる』参照。
特殊形に『さらる』がある。『出来る・遣られる。』意味である。もともとは『さらさる』だったと考えられ簡略化されたと見られる。
ところで、江戸語に『臥さる』などと言う言葉がある。また、『呼ばる』という言葉もある。これらは、古語の『らる』と同様、現代では使われない表現だが、茨城に残っている。
事例として以下がある。ただし、他動詞の自発形は『自然に〜する』意味となり、無理に訳さず、可能・受動使役のみ示す。また、自発形の場合『自然に、ひとりで』が合わせて加えられる場合もある。また、自発形は偶発的に発生する意味でも使われる。以下の訳は順に自発・可能・受動使役である。
@AB
かんがえらさる:−・考えられる・考えさせられ。
きらさる:−・来れる・来させられる。
きらさる:−・切れる・切らされる。
けらさる:−・蹴られる・蹴られる。
しらさる:−・出来る・遣らされる。/する。
しらさる:−・知ることができる・知らせられる。
たべらさる:−・食べられる・食べさせられる。
とーらさる:−・通せる・通される。
みらさる:−・見れる・見せられる。
やらさる:−・遣れる・遣らされる。
@自発形。
〜やーさんねー:群馬。
〜らさる:栃木。
★『土』:此(こ)ら駄目(だめ)だ、焦臭(こくさ)くしっちやった、酒(さけ)沸(わか)すのにゃ畢(を)へねえどうも氣(き)をつけなくっちゃ、酒(さけ)と茶(ちゃ)はちっとでも臭味(くさみ)移(うつ)らさんだから
A可能形。
となりにうづらさっか:隣に移れますか。
B尊敬形。
きらさった:いらっしゃった。
C受身形。
D受動使役形。
やらさった:遣らされた。
らしゃきり
・らしゃきりばさみ

らしゃばさみ
ラシャ切り鋏 広辞苑には『ラシャ【raxa ポルトガル・羅紗】:羊毛で地(ジ)の厚く密な毛織物。室町末期頃から江戸時代を通じて南蛮船、後にオランダや中国の貿易船によって輸入され、陣羽織・火事羽織・袋物などに用いた。今は毛織物全般のことをもいう。「―の服地」』とある。
最近の一般人日常生活で使うことはまず無い。ハサミは単に挟みだからである。現代では挟みを使うのはせいぜい紙やちょっとした紐を切るぐらいで、特に植物が好きな人は選定挟みは欠かせない程度である。
昭和30年代の『挟み』は、まだまだ『和挟み』が使われ、てこの原理は無視されていた。『ラシャ切り鋏』とは洋挟みの一種で、西洋から伝わった厚手の生地を和挟みに比べて難なく切れる挟みの総称であった。
『挟み』の文化は、今ではむしろ食文化に残っている。
〜らす 【複】〜させる おぼえらす:覚えさせる。
たべらす:食べさせる。
やらす:遣らせる。
〜らせらいる
〜らせらっる
〜らせられる
【複】〜される 使役形の可能形。現代の標準語では、ラ行五段活用の動詞に限って『らせる』が使われ、その使役形と考えられる。
たべらせられる:食べさせられる。
おどめにはいぐたべらせろ:赤ん坊に早く食べさせなさい。
いーんやめんどくせーしどやらせらいでー、はーこわくてしゃーんねや:いやあ、面倒な仕事を遣らされて、もう疲れてしょうがないよ。
★『土』:どうした赤(あけ)え手拭(てねげ)被(かぶ)らせらったんべえ。
〜らせる 【複】〜させる 使役形。
標準語では連用形に『せる』をつける。その中でラ行5段活用の動詞は、『遣らせる、乗らせる』等見かけ上『らせる』となる。茨城方言では標準語の活用形を使う場合と、ラ行5段活用の動詞以外も『らせる』形をとることが良くある。
これは、使役形の活用を『らせる』形に統一しようとした合理化の賜物と思われる。似た表現が八丈方言にもある。
これらは、単に標準語が訛ったのではなく、古い日本語を受けて、地方の方言のルールによった言葉と考えられる。
例えば、標準語のラ行五段活用動詞『刈る』の使役形は『刈らせる』で『刈りさせる』とは言わない。ところが、『食べさせる』とは言っても『食べらせる』とは言わない。
『らせる』と『させる』は助動詞の一つだが、標準語では、用法が特化してしまっているが、茨城では、特化させないで使われていると思われる。
(五段)
・移らせる。
・遣らせる。
(上一段)
いらせる:居させる:八丈方言共通語。『遣らせる』に準じた語法と思われる。
みらせる:見させる。
にらせる:煮させる・似させる。
(下一段)
たべらせる:食べさせる。
らせる:下げさせる。
(カ変)
きらせる:来させる。
らち 田植えの苗と苗の縦巾の間隔 『埒』。
田植えの縦幅は『らち』という。『らち』は、標準語では『馬場の周囲の柵(サク)。物事のくぎり。』を言う。横の間隔は『さく』と言う。
一人で植えられる巾を『ひとはか』(通常8株)と言う。
らち:稲の株間・仕事の量:東京多摩。
らち:田の草取り・苗の間引き:神奈川。
〜らぢ 【助】〜の家 『〜らうぢ』が短縮したものと考えられる。
らぢがあがねー 【複】埒が明かない らちあかん:山梨。
らちくちもない
らちくちもねー
【複】埒もない、つまらない、理屈に合わない、乱れている 『集覧:猿』。『埒』とはもともと『馬場の周囲の柵』で、転じて『囲い、限界』を意味し、『埒口もない』こと。
『浮世』(31P):いやはや、埒口は無(ね)へぞ。
らちくちもない:東京。
らぢもね
らぢもねー
らちもねー
【複】つまらない、理屈に合わない、乱れている 『埒もない』。濁音化+連母音変形。『集覧:多・新』。=やっちもない・やっちもねー』
広辞苑には『埒もない:順序が立たない。乱雑である。つまらない。もとは「らっしもない」。』とある
やちない:高知。
らぢね:見境無い・解からない:青森。
らぢもない:岩手。
らちもない:宮城。
らちもない:福島。
らぢもなえ:山形。
らづもねー:宮城。
らっけもない:類も無い:神奈川。
らっしもねー・こらっしもねー・やっちもねー:岡山
らっしょもない:愛媛。
らっちもない:岩手。
らっつねー:宮城。
(らっかい) 【形動】乱暴 静岡。
(らっかい) 【副】沢山 静岡。
〜らっか
〜らっかい
〜らっかえ
【助】〜できるかい?、〜できない。 古語の助詞『らる』の現代語形。
らっか
らっかー
らっかせ
らっかまめ
落花生。ピーナッツ。
らっかだ 竹馬
らっき
らっきー
らっきょ
ラッキョウ 『集覧:猿』。
らっき:静岡。
らっきゅー:神奈川・静岡。
(らっきゃー) 【副】大層 静岡。
らっきやろ
らっきょやろ
らっきょやろー
罵倒語 『ラッキョウ野郎』なのか『楽境野郎』なのか定かではない。
(らっけもない) 【複】類無い 神奈川。
〜らっさい 【助動】〜らっしゃい 丁寧語。直音化。
〜らっしぇ
〜らっしぇー
@【助動】〜らっしゃい、A【複】〜らせる、〜らしちゃえ @『〜らっせ』の転化。
A使役形。
〜らっしゃい 【助動】@〜しなさい、Aやるなら〜してみなさい @命令語。意味が成り立てばかなりの数の動詞と組み合わされるはずが、現代ではほとんど『いらっしゃる』しか使われない。『いらっしゃる』は、『【自五】(イラセラルの転)(1)「居る」「在る」「来る」「行く」の尊敬語。(2)(用言に「て」「で」の付いたものに接続して) 「ている」「である」などの尊敬語。「先生は御多忙で―・います」』とあり、変化して動詞またはたは連用語(〜して、〜って)につく『らっしゃる』(ラセラル)は汎用性があるが固定化した表現である。以下は、文法上の間違いは無いが最近の標準語では殆ど聞かない言葉。むしろ、地方で使われる。
きらっしゃい:お出でなさい。
やってみらっしゃい:やって御覧なさい。
それみらっしゃい:それ見なさい。
Aきつい言葉にあたる、新しくて古い言葉。『やるなら勝手にしてみなさい』の意味に近い。
いづまでもやってらっしゃい:いつまでもやってなさい。
尚、「しゃる」は、単独では、さらに変化して、広辞苑に『助動詞「しゃる」の命令形「しゃれ」「しゃい」に、次に「せえ」に、さらに「し」と転化した。「し」は、四段活用の動詞の未然形に促音「つ」の伴った形に接続する。「しゃる」の表した尊敬の意はなくなり、ほぼ対等の相手への命令を表す。』とある。
〜らっしゃー
〜らっしゃう
【助動】〜らせてしまう、〜らせちゃう ラ行活用動詞につく。
おわらっしゃいよ:終わらせてってしまいなさいよ。
あいづにやらっしゃーべ:あいつにやらせてしまおうよ。
〜らっしゃる 【助動】〜(しな)さる 〜らす:〜らせらる・〜らっしゃる。『あしたは来〔こ〕らすよー。』(熊本)。
〜らっさん:〜らせらぬ・らっしゃらない。『富貴ちゃんおらっさんとですか?』(熊本)。
〜らっせる:〜らせらる・〜らっしゃる:愛知。
〜らっしょ 【助動】〜らっしゃい 主として女性言葉。丁寧な命令語。ラ行活用動詞の場合に使われる。『〜らっせよ』が変化したと考えられる。
おらほにもきらっしょ:家の方にも来て下さいよ。
たべらっしょ:お食べなさい。
みらっしょ:御覧なさい。
おぎらっしょ:起きなさい。
やらっしょ:おやりなさい。
ねらっしょ:お休みなさい。
かえらっしょ:お帰りなさい。
らっしょ:お上がりなさい。
きらっしょ:お召しなさい。
やめらっしょ:お止めなさい。
かえらっしょ:お帰りなさい。
〜らっせ
〜らっせー
【助動】〜らっしゃい 丁寧語。『集覧:新』。
『〜らせえ』の促音化。
【助動詞】『し』が変化したものが付いたもの。広辞苑には『助動詞「しゃる」の命令形「しゃれ」「しゃい」に、次に「せえ」に、さらに「し」と転化したもの。四段活用の動詞の未然形に促音「つ」の伴った形に接続する。「しゃる」の表した尊敬の意はなくなり、ほぼ対等の相手への命令を表す。』とある。
〜らし:長野。
〜らっせ:福島。
〜らっせん:岩手。
のぼらっせーよ:上がってください:神奈川。
おらほにもきらっせよ:家の方にも来て下さいよ。
みらっせ:御覧なさい。
(らっそく) @蝋燭、A松脂(マツヤニ)蝋燭 『蝋燭』。
らっそく:茅に布を巻いたものを芯にしてハリモミの樹脂を塗りつけたもの:神奈川。灯火に用いるのは同じなので民族語と言える。
〜らった
〜らっちゃ
【助動】@自発、A可能、B尊敬、C受身 『〜られた』。
B・〜らった:尊敬の助動詞:福島。
よーぐきらったな:よくいらっしゃいました。
C・〜らった:熊本。
『新方言』には『ホメラッタ 「ほめられた」;最上』とある。
★『土』:盜(と)らった上(うへ)に恁(か)うして暇(ひま)潰(つぶ)して、おまけに分署(ぶんしよ)へ出(で)て怒(おこ)られたり何(なに)っかすんぢや、こんな詰(つま)んねえこたあ滅多(めった)ありあんせんかんね。
★『土』:どうして汝(わ)りや、櫛(くし)なんぞ取(と)らったんだ
★『土』:此(こ)ら見(み)せらんねえんでさ、此(こ)れ見(み)られっと何程(なんぼ)寄(よ)せて見(み)ても當(あた)んなくなっちやってね、自分(じぶん)で居(ゐ)ねえ間(ま)に見(み)らっても屹度(きっと)知(し)れんでさ
らっちゃがね
らっちゃがねー
【複】決まりがつかない、かたがつかない 『埒が開かない』の訛。『ら』はさらに訛って『や』に変化する。=やっちゃがないやっちゃがねー』
埒が開かない→らちあがねーらっちゃがねーやっちゃがねー
かちゃくちゃね:気持ちが落ち着かない:青森。『片付かない』の意味の可能性もある。
ちゃちもない:静岡。
やちゃくちゃね:秋田。
らっちゃくっちゃ:滅茶苦茶・いい加減:福島。
らっしもねー・こらっしもねー・やっちもねー:岡山。『埒も無い』。
らっしょもない:愛媛。『埒も無い』。
らっちもねー:山梨。『埒も無い』。
らっちゃねー:山梨。『埒も無い』。
らっちょもねー:下らない:長野。『埒も無い』。
らっちゃぐっちゃねー 【複】決まりがつかない、かたがつかない 広辞苑に『らち【埒】:@馬場の周囲の柵(サク)。A(ラッシ(臈次)の転か) 物事のくぎり。』『臈次:@臈(ロウ)の次第。法臘(ホウロウ)の位次。Aものごとの順序。秩序。』『臈次も無い:順序が立たない。乱雑である。だらしない。らちもない。』『らっしくちもない【臈次口も無い】:「臈次(ラツシ)も無い」に同じ。』とある。
らっちゃくっちや:滅茶苦茶・いい加減:福島。
らっちゃぐっちゃなぐなる:埒が明かなくなる。
らって
らってー
【形動】乱雑に積み上げること、無造作な様 乱堆(らんたい)。辞書には明治期の言葉とある。
〜らって
〜らっちぇ
【助】@自発、A可能、B尊敬、C受身 C★さがなににらっていじゃげだ:魚に逃げられて腹が立った。
らっ ベエゴマの種類。上から見ると円形で背の高いものを指す。
らっ
(らっずぼん) 末広がりのズボン 当時流行したラッパ型のズボン、グループサウンズ全盛の時代でもあった。ちなみにズボンはフランス語の『jupon』(本来は「女子の下裾着」の意))に由来するという。もとを正せばポルトガル語由来の『襦袢』(じゅばん・じばん)と同源のようである。
(らっち) 大風 静岡。
らっふぎ ほら吹き (類)『ラッパを吹く』。
らっふき:神奈川。
(らっらんく・らっんらんく) 【形動】乱雑 静岡。
広辞苑に『らっらん【乱飛乱外】:乱れているさま。また、乱暴なさま。らっらん。』とある。
〜らづる(〜らずる) 【助】〜しまくる 様々な動詞に付いて強調する助詞。標準語の場合は動詞の数が限られ『ら』は入らない。
〜らっる 【助】@自発、A可能、B尊敬、C受身 ラ行活用形動詞の訛り。古語の助詞『らる』が促音化したもの。古い言い回し。
@かがったが:書けたかい。
A★『土』:威張(えば)らっる理由(わけ)ぢやねえが、俺(お)ら俺(お)れでやんべと思(おも)ってんだから
B ★『土』:なあに俺(お)れ、蜀黍(もろこし)伐(き)った時(とき)にゃ勘辨(かんべん)しめえと思(おも)ったんだっけお内儀(かみ)さんに來(き)らったから我慢(がまん)したんだ
C★あいづにやらっちゃ:あいつに遣られた。
〜らな
〜らーな
【助】〜(す)るよ 『〜るわな』が転じたもの。
★『土』:それ、底の方へ廻って零(こぼ)れらな:それ、底の方に廻って零れるよ。
(〜らむ)〜ろう 広辞苑には『【助動】(活用は不完全な四段型) アリの要素と助動詞ムとが結合したものと考えられる。平安中期以降「らん」となり、鎌倉時代以降「らう」という形になる。動詞・助動詞の終止形(ラ変は連体形)を受ける。
@現在の推量を表す。今ごろは…しているだろう。万一「くしろつく手節(タフシ)の埼にけふもかも大宮人の玉藻刈るらむ」。源帚木「今宵人待つらむ宿なむ怪しく心苦しき」
A動作の行われる理由・原因・場所などを推量する意を表す。
B理由・原因が示されているのを推量する場合。…というわけで…なのだろう。…なのだろう。万一○「桜花時は過ぎねど見る人の恋の盛りと今し散るらむ」。古今秋「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」。源夕顔「なほざりにこそ紛らはし給ふらめ」
C原因・理由が示されず「何処」「何故」「いつ」などの疑問語が使われる場合。古今恋「わび果つる時さへもののかなしきはいづこをしのぶ涙なるらむ」。源明石「飽かず思さるるにも、月頃、など強ひても聞きならさざりつらむとくやしう思さる」
D理由・原因・疑問語が省略されている場合。どうして…なのだろう。古今春「春の色のいたりいたらぬ里はあらじ咲ける咲かざる花の見ゆらむ」。古今恋「山の井の浅き心も思はぬに影ばかりのみ人の見ゆらむ」
E時を超越した一般的事実の推量を表す。…だろう。万九「雪こそは春日消ゆらめ心さへ消え失せたれや言も通はぬ」。古今雑「世を捨てて山に入る人山にてもなほうき時はいづち行くらむ」。徒然草「みづからはいみじと思ふらめど、いと口惜し」
F伝聞による事実であることを示す。…とかいう。万二「古に恋ふらむ鳥はほととぎすけだしや鳴きし吾が思へるごと」。竹取「蓬莱といふらむ山に逢ふやと浪に漕ぎ漂ひありきて」。源玉鬘「このおはしますらむ女君、筋ことに承ればいとかたじけなし」
G詠嘆を表す。時代が下っての用法。謡、安宅「旅の衣は篠懸の露けき袖やしをるらん」
H室町時代には完了の「つ」と接続して「つらん」「つらう」となり、過去の推量を表す。江戸時代にも「つろ」と短縮して現代口語の「…たろう」に相当。蒙求抄一○「恵文以前には空仮の沙汰ありぞしつらう」。浄、生玉「定めし昨日請取つろ」』とある。
茨城方言では、主に『べ、べー、ー、へ、へー』が使われる。
〜ららー 【助】〜られるよ 『〜られるわ』が訛ったもの。
ぶんなららー:殴られるよ。
(らり) 【形動】ちりぢりに離れ散ること。めちゃめちゃになること 『乱離』『乱離骨灰・羅利粉灰』。『らりこはい』とも言う。
らりこっ:東京。
らりにする:乱雑にする:神奈川。
〜らる 【助動】@自発、A可能、B尊敬、C受身 古語の助詞『らる』。茨城では活用形は独特に変化する。終止形を使うことは殆どど無い。多く即音便や撥音便を伴う。ただし、古語が忠実に残っているわけではなく活用形は不規則である。
広辞苑に『【助動】らる:(活用は下二段型) 上一段・下一段・上二段・下二段・カ変・サ変の動詞の未然形に接続する。室町時代には終止形「らるる」、命令形「られい」が現れる。江戸時代に入ると下一段活用型「られる」が現れ、浄瑠璃などには四段活用型の例も見える。室町・江戸時代にはカ変・サ変では連用形「き」「し」に接続する例もある。口語形は「られる」
@自発を表す。
いづのまにがしらった:いつのまにかしてしまった。
A可能を表す。
おめにやらんのが:お前に出来るのかい。
おれにしらっかやー:俺に出来るかよ。
いがっか・いがれっか・いげらっか:行けるかい(行かれるか)。
いがんね:行けない(行かれない)。
あしたきらっか:明日来れるかい。
B平安時代以後、尊敬を表す。
せんせがきらいだがらこしかげにさーれな:先生が来られたから椅子に座りなさい。
B受身を表す。西大寺本最勝王経平安初期点「箭に心を射られたるが如く」。源蓬生「世に用ひらるまじき老人さへ」』とある。
やづめにぶんならっちゃ:あいつにぶん殴られた。
〜られやすか 【助】〜られますか 敬語。
きられやすか:来られますか。
〜られる 【助動】@自発、A可能、B尊敬、C受身 近年の標準語では、特に可能形に限って『ら』抜きの『れる』になり可能動詞と命名されている。茨城では可能動詞は使われない。
現代でも『られる』を使うのは、『ふるさと』によると少なくとも、山形・島根・長崎・熊本があることが解かっている。
広辞苑には『られる:(活用は下一段型) 上一段・下一段・カ変・サ変の動詞、助動詞「せる・させる」の未然形に接続。(口語のサ変は「さ」に「れる」が接する形の方が多い) 文語形は「らる」。@自発を表す。A可能を表す。近世までは否定表現が多い。B軽い尊敬を表す。「せられる」や尊敬の度合の高い「させられる」は古風な文脈に使われる。C受身を表す。自動詞・他動詞いずれの下にも用いられる。(1)自分以外のものの動作が自分に何らかの影響を及ぼす意。(2)自分以外のものの動作で、迷惑を蒙る意を表す。』とある。
A・〜られん:〜できない:愛媛・高知。
きられっか:来られるかい・来れるかい。
(らんか) 檀家 静岡。
らんいる
らんかいる
【動】失敗する、面食らう、困る 『集覧:北・猿・真』。『乱階(らんかい)』(@騒乱の起るきざし。A順序を越えて位階を進めること。越階(オツカイ)。)の動詞形か『乱が入る』『乱返る』意味と考えられる。古い形容詞に『乱がしい・乱がはし』がある。
らんえる:参る:千葉野田。
らんき
らんけ
【形動】気が荒い様 やや古い標準語の『乱気』。
らん 雷魚
らんいっ 歯並びの悪い歯 『乱杙歯』。
だんぎ:乱杙:鹿児島。
たんぐい:乱杙:鹿児島。
らんぎ:乱杙:鹿児島。
らんいば:虫歯:埼玉。
(らんく・らんーく) 【形動】騒がしい様、乱雑 静岡。
広辞苑に『らん(「らっぴらんごく」の略) 乱暴。また、乱雑であるさま。』とある。
〜らんさい
〜らんしゃい
〜らんせ
〜らんせー
〜らんしょ
〜らんしょー
【助】【助】〜らっしゃい このうち特に『〜らんしゃい』は、標準語の『らっしゃい』と異なり、きつい言葉として使われることが多い。『やるなら勝手にしてみなさい』の意味に近い。新しくて古い言葉、
〜らんしょ:福島。
(らんさわ めちゃくちゃな騒ぎ 東京。『乱騒ぎ』。
らんちきさー @大騒ぎ、A痴話喧嘩 『乱痴気騒ぎ』。
らんさわ:東京。『乱騒ぎ』。
らんちきさー:埼玉。
らんちく:物が乱れた様:岩手。
☆らんちょーし 乱調子、調子が悪い様 古い標準語。『本調子』と対。
らんてー 【形動】乱雑に積み上げること、無造作な様 乱堆(らんたい)。辞書には明治期の言葉とある。
◆■▲らんと
らんとー
らんとば
らんとーば
墓場 『集覧:西・稲・真』。
『卵塔、蘭塔』とは『六角または八角の台座の上に卵形をした塔身を載せた石塔。わが国では禅僧の墓などに用いる。無縫塔。』を言う。
だんば:佐渡島。
なんとー:千葉。
やんとら:青森。
やんとれ:青森。
らんと:福島。
らんとー:千葉・神奈川。
らんとーやま:神奈川。
らんとーば:栃木・千葉・群馬・新潟・長野・愛知・島根。神奈川。
らんとーば:子供だけを埋葬する墓地。
らんとーやま:神奈川。
らんば:宮城・福島・佐渡島。
らんとばな ヒガンバナ
(〜らんな) 【助】〜(す)るな 福島。『〜らるな』の意味。
〜らんに
〜らんにぇ
〜らんね
〜らんねー
【助】〜できない、〜られない 可能の助動詞『れる』の否定形。『〜ない』が『〜に』に訛るのは、茨城と福島だけである。
〜らんに:福島。
〜らんね:宮城。
おれはいらんね:俺は行けない。
わすらんに:忘れられない。
しゃべらんね:話せない。
らん 断髪 『集覧:無記載』。
(らんん) 談判 静岡。
◎らんあぶら 灯油、燈油 辞書には無いが、古い言葉。
(らん ランプ 静岡・鹿児島。
らんぼもん 乱暴者
らんみゃぐ 乱れてすじみちの立たないこと 『乱脈』。
(らんれも) 【複】誰も 静岡
 本茨城弁集は、昭和40年前後の茨城方言を中心に茨城県全域の江戸時代まで遡る言葉を集めたものです。他県の方言との関係を重視し主要なものについては他県の方言も紹介しています。また、近年使われなくなってきた標準語や語源考察、また昭和30年代の風俗・文化等を紹介するために、合わせて標準語も掲載していますのでご注意下さい。
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