本茨城方言大辞典をご覧になる際は、以下を必ずお読み下さい。茨城方言が後世に正しく伝えられることを目指して、以下の点にご注意下さい。
1)サイトの内容の引用について
当サイトの内容がネット上で引用されることは、禁止しません。ただし、学術研究等での引用はご遠慮下さい。特に当サイトが引用した著名文献についての内容は、転記ミスや誤記が全く無いとは言えません。
もし、学術研究等で引用される場合は、必ず原本を参照して下さい。また、原本の参照をされない場合は、その引用部分について事前に必ずご一報下さい。
2)当サイトの基本方針
当サイトは、投稿によるサイトとは異なり、語句の意味や語源の解説には、相応の文献を参照し、また十分な時間を割いて正確性を旨としています。
しかし、茨城方言は、現代標準語と異なり、意味については茨城県内でも様々な使われ方がされています。これは、現代標準語でも似た傾向があり、辞書を片手に日本語を話す人はいません。そのため、微妙なニュアンスの違いは、あり得ます。しかし、少ない言葉を頼りに意味を解説するのと異なり、当サイトは膨大な資料をもとに総合的に判断し、解説するようにしています。
それでも、解釈を変えざるを得ないことがしばしばあります。そのため、常時改定していることをご理解下さい。
3)正確性を目指して
もし、当サイトの内容を引用された場合は、必ずご通知下さい。またその後も定期的に内容をチェック下さい。
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◆表の背景の凡例 |
背景色 |
内容 |
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@現在でも多世代に渡って使われていると考えられる現役の方言、Aまたは茨城県人が方言に間違えやすい標準語及びB標準語の俗語や流行語・現代新語。C単なる濁音化や連母音変形等はこれに含める。標準語世界の人が聞いても意味が解る言葉。 |
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@若年層ではあまり使われなくなっていると思われる方言。A物や風俗・習慣を示す場合でそれ自体が当時に使われていたが今では無くなったものを含む。B茨城県に限らず他地方でも広域に使われている方言を含む。C簡単な説明で標準語との関係を理解し意味が理解できるものを含む。 |
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東日本方言またはそれに類するもの。 |
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@高齢者を中心に使われていた方言または、A使う人が少ない方言。B物や風俗・習慣を示す場合でそれ自体が当時無くなりつつあったものを含む。C茨城県に限らず他地方でも使われていた方言を含む。 |
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東北方言またはそれに類するもの。 |
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@茨城を中心にした限定的方言(東関東方言)またはA茨城弁の代表的方言。ただし若年層ではあまり使われなくなっていると思われる方言を含む。標準語や他県の訛と比較して僅かな相違(濁音化・清音化・長音化・省略・一文字違い等)しか無いものは、独自方言とはしない。ただし文化的な言葉は敢えて含める。 |
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@茨城県内の狭い地域でしか使われない方言。A語源の確定できない方言。B主に上方や関西語の流れを引く言葉。 |
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@古語、A上代の東国方言、B江戸方言(近世語)、C江戸時代以前からある常陸方言、D明治期の標準語、E使われなくなりつつある標準語、Fまたはそれらの影響を残した方言。現代語でも意味を正確に説明できる人は居ないことから、発音が同じ場合で意味が僅かに違う場合については、標準語の扱いにした。 |
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方言周囲論対象語。 |
(○○○○) |
県外の代表的方言。 |
上記区分色通り |
次世代に伝えたい言葉。茨城弁特有の言葉に限らず、音の響き・意味・歴史性等を総合的に判断して、独自に選んだ。 |
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◆文字の凡例等
@赤文字:茨城弁。辞書により標準語の掲載範囲が異なるため判断が難しい言葉もある。これは、網羅することを旨とする辞書と精選することを旨とする辞書の編成者の思想の違いであろうが、その境は意外に曖昧である。また、茨城弁が流行り言葉になり定着すればいつしか標準語になることもある。外来語はその典型であろう。表記は全て平仮名とした。
A太黒文字:標準語(辞書掲載語で方言や使われる地域の説明の無い言葉)、または標準語の口語で、昭和35〜40年頃、土浦市近辺で使われていた言葉、死語となっているか若い人達はあまり使わない言葉。()内は文化的内容や逆引きの場合の言葉。
B太紺文字:鼻濁音又は半濁音(ぱぴぷぺぽ(pa,pi,pu,pe,po)を示す。濁音・鼻濁音の双方の例がある場合は特記する。黒文字の場合は、濁音を示す。
C茨城弁覧の()書き
茨城弁覧の()書きの言葉は、(1)逆引きの場合、(2)当時の文化や風習の随想、(3)辞書の中で見つけた上代方言、等、茨城方言では無い場合の語を表現した。
D出展区分
当辞典に当初からあって書籍掲載語と一致したもの、または書籍から引用した場合は、出典先をマークを付けてで表現した。
・◆:土浦市発行の土浦市史(S55)(民俗編)を母体としてさらに加筆されて編纂されている土浦の方言(H9) 及び続土浦の方言(H16)に掲載された共通の言葉。ただし語句の解説や内容は構成の関係で必ずしも一致しない。
・■:『土浦市史(S55)』(民俗編)にのみ掲載されているものに限って同様の方法で■印で紹介した。
・▲印:茨城方言集覧(M37)に掲載されている茨城方言。旧仮名使いを現代仮名使いに変えて記載した。略称は『集覧』とした。
・□印:新編常陸国誌に掲載されている方言。
・▽:茨城弁今昔掲載語。略称は『今昔』とした。
・◎印:茨城方言民俗語辞典に掲載されている方言。略称は『民俗』とした。
・●印:ネット公開されている『国立国語研究所・日本語情報資料館・電子資料館・日本言語地図・日本文法地図』に掲載されている茨城方言。尚、備考蘭に明記がある場合は、マークを記載していない。略称は『方言地図』とした。
・▼印:日本方言大辞典掲載語。略称は『大辞典』とした。
・△:日本方言辞典掲載語。略称は『辞典』とした。
・○印:江戸時代の方言集である『物類称呼』を引用した場合は、そのの略称は『称呼』とした。
・◇:浪花聞書掲載語。『聞書』とした。
・☆:俚言集覧掲載語。略称は『俚言』とした。
E★印:使用例とその標準語訳。なるべく忠実に訳したが、中には適切な標準語表現にならない場合もあり、表現を変えたものもある。
F《》内:お遊びの解説
G解説文中の『土』は長塚節の小説『土』の引用文。青空文庫を参照し、現代仮名使いに書き換え、促音便の表現を是正してある。解説文は、茨城県人としてではなく、標準語圏からの視点で表現している。従って『若い人達』と表現した場合の主体は、茨城の若い人達ではなく、都心の若い人達の意味である。事例として紹介した単語は、黒文字は標準語である。
H仮名遣い:出来る限り正しい仮名遣いに徹するよう心がけたが、『じ』と『ぢ』、『ず』と『づ』は歴史的にも混乱している傾向がある一方、できるだけ標準語を原型に表現した。しかし、例えば『そうじゃない』の場合原型の『そうではない』を意識すると『そうぢゃない』となるが現代語の表記に従って表現しているものもある。
I単語の順番:茨城方言は、標準語と異なり長音化・単音化がおおらかに使われる。その結果、標準語が単に変化した場合、国語辞典の一般的な順番形式を採用すると、本来の順番からかけ離れた位置になってしまうことがある。そのため、暫定的に長音・単音を無視して順番を配する方法をとった。ただし、語源がはっきりしている単語については、逆に本来の順番からかけ離れた位置になってしまうものもあることから、今後時間をかけて整備して行く予定である。
J品詞の分類:日本語の品詞の分類については素人の解る範囲で表現した。略称は以下の通り。
・【名】【固名】:特に明記の無いものは、名詞・固有名詞とした。誤解の招きやすいものに限定して略称を明記した。
・【代】:代名詞。
・【数】:数詞。
・【動】:動詞。
・【形】:形容詞。
・【形動】:形容動詞。名詞と形容動詞を兼ねた単語は【形動】として表現した。
・【助】:助詞。助詞はさらに細かく区分されるが、特に特徴的なものについてはその名称を明記した。
・【接頭】接頭語。
・【接尾】:接尾語。
・【副】:副詞。
・【接】:接続詞。
・【感】:感動詞。
・【連体】:連体詞。
・【複】:複合語(連語を含む)。
・【慣】:慣用句。
・【擬】:擬態語・擬音語。特に特徴的なものに限って明記した。
・【流】:流行語。
・【文】:文語(標準語世界では死語となりながら文学世界では使われている言葉)。
・【古】:古語。
付記1)【形容動詞】:形容動詞は、広辞苑に『事物の性質・状態を表現する形容詞の活用の不備を補うために発達した語をいう。文語では、形容詞連用形に「あり」の結合した「良かり」(第一類)、名詞に「にあり」の結合した「静かなり」(第二類)、名詞に「とあり」の結合した「泰然たり」(第三類)の三種があり、活用はラ行変格活用に同じ。口語では、第一類は未然形「かろ」、連用形「かっ」と活用し、第二類は「だろ・だっ(で・に)・だ・な・なら」と活用し、第三類は連体形だけが用いられる。ある説では、口語の第一類を形容詞の活用と認め、第二類だけを形容動詞とし、第三類を連体詞に含める。また、別説では、文語の第一類は形容詞連用形と「あり」とに還元し、第二類・第三類は名詞と指定の助動詞との結合とみなして形容動詞を認めない。』とありその定義に諸説あることが解る。一般に、形容動詞は、自立語で活用する用言の一つで活用形は@『だ』型活用(だろ、だっ・で・に、だ、な、なら(命令形はない))、A『たると』型活用(連用:と、連体:たる、命令:たれ)、Bなり活用(なら、なり・に、なり、なる、なれ、なれ)、Cたり活用(たら、たり・と、たり、たる、たれ、たれ)がある。このうち、現代語の口語で使われるのは、『だ』型活用(だろ、だっ・で・に、だ、な、なら(命令形はない))とたり活用・たり活用の連用形『〜と』に限られる。そのため名詞と助詞の複合語とする見方があり、連用形は副詞のようにも見える。ただし、その場合であってもその名詞は一般の名詞とは異なり、状態・様子・動きを表す名詞なのであって、本サイトでは、敢て単独では形容動詞として扱い、その連用形については副詞として扱うことにした。
付記2)【古語】:古語は、広辞苑に『@古言(コゲン)に同じ。A過去の時代に行われ、今は用いられないことば。B古人の言ったことば。』とある。古言とは『@古い時代の言語。昔のことば。古語。A古人の言ったことば。古人の言辞。』とある。従って、その境界は曖昧であり、ビジネス用語では通常使われなくとも日常語でしばしば使われる言葉や引用等でしばしばあるいはまれに使われる古い言葉もある。従って、本サイトでの表記は参考表記である。
K長音・半長音・長音化した方言の表現と取り扱い
・長音:多くの茨城方言の長音は、平坦に発音されるため、『ー』で表現した。ただし単語によってはそうで無い場合もありそれらは実際の発音に従い表記した。ただし標準語同様語源の関係で特に異なる音韻が使われることがあり、その場合は、それに応じて表現した。
・半長音の取り扱い:茨城方言には、単音とも長音とも言えないリズムがあることがある。そのような単語については、特に代表的な単語のみ掲載した。
・単音化した方言の順番の取り扱い:標準語に対して単音化したものについては暫定的に単音を無視して順番を配する方法をとった。ただし、語源がはっきりしている単語については、逆に本来の順番からかけ離れた位置になってしまうものもあることから、今後時間をかけて整備して行く予定である。
L外来語・動植物:標準語訳欄や解説文中、外来語や動植物の場合は主としてカタカナを用いた。
M標準語:広辞苑には『一国の公用文や学校・放送などで用いる規範としての言語。多くは首府の方言を基礎にする。わが国では、大体、東京の中流階級の使う東京方言に基づくものと考えられている。』とある。
そこで、解説に当たっては、以下の区分で明記した。かなり感覚的な区分である。著名な国語辞典では、明治以前の文献に掲載された言葉で、方言に属する言葉であっても、方言の記載が無いものが多いのは困る。
・死語となった標準語:主に明治期の小説などに見られる言葉で、現在では殆ど使われない言葉。
・死語になりつつある標準語:明治期に標準語とされたと思われる言葉で、現代口語ではあまり使われない言葉。
・古い標準語:明治期に標準語とされたと思われる言葉で、特に若年層を中心に現代では使われない言葉、または文語世界を除き口語では使われない言葉。
・やや古い標準語:明治期に標準語とされたと思われる言葉で、特に若年層を中心に現代では使われない言葉、または文語世界を除き口語では使われない言葉。
・近世語:江戸時代を中心に使われた言葉。
・上方語:関西を中心にした言葉。
・古語:近世より前に使われた言葉。古語辞典にしか無い言葉。
N標準語の口語:標準語の口語は略して『標準口語』とした。しかし注意して聞くと国会答弁は今でも方言の坩堝である。これを厳密に采配すれば、誰もが方言をしゃべっていることになる。敢えて言えば、NHKのアナウンサーの発音(NHKの発音マニュアル)をよそに置いて、
O標準語の俗語:俗語の取り扱いも大変難しい。方言の中にも俗語がある。現代のように流行語が氾濫すると流行語と俗語の識別も難しい。流行語には時間とエリアの要素が入るが、俗語には、メジャーな階層に対して利用階層の要素が入って来る。広辞苑には『@歌や文章に用いられて来た、洗練された文字言葉に対して、それと異なる日常の話し言葉。A雅語。標準となる口語に対して、それと異なる方言や卑俗な言葉。さとびことば。俚言。B仏法に関係のない俗人の言葉。〈日葡〉。Cことわざ。俗諺。』とある。この定義は曖昧模糊の定義であり、一方では個人の感じ方にもよる定義でもある。このサイトでの表記は、かなり主観的である。
P新語:テレビ等を通じて標準語や他県の方言の影響を受けたりそのまま導入されたと思われる言葉は、敢えて茨城弁の『新語』と称して表現した。
Qイントネーションの表現:解説文中の(41114)等の数字は、標準語も茨城弁も4つの音で構成されているという前提で試験的にイントネーションを表現したもの。感動詞や慣用句、文例を中心に拡充する予定。
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◆茨城弁の五十音
1.いとえの混同/この訛りは茨城に限らない。
『あいういお、かきくきこ、さしすしそ、たちつちと、なにぬにの、はひふひほ、まみむみも、やいゆいよ、らりるりろ、わ、お、ん』
2.強調のための長音化やリズム感の表現/強調表現を大事にする茨城弁は、冒頭で長音化する。
『あーいういお、かーきくきこ、さーしすしそ、たーちつちと、なーにぬにの、はーひふひほ、まーみむみも、やーいゆいよ、らりるりろ、わー、おー、んー』
3.標準語にはない『ti、tu』の発音がある。/イ段とウ段は全く区別できない人とそうでない人がいた。実態に合った表現をすると、
『あーいぃうぅえぃお、かーきぃくぅけぃこ、さーしぃすぅせぃそ、たーてぃとぅてぃと、なーにぃぬぅねぃの、はーひぃふぅへぃほ、まーみぃむぅめぃも、やーいぃゆぅいぇぃよ、らーりぃるぅれぃろ、わー、おー、んー』
4.次に『か行』の濁音化を加味すると、
『あーいぃうぅえぃお、かーぎぃぐぅげぃご、さーしぃすぅせぃそ、たーでぃとぅでぃと、なーにぃぬぅねぃの、はーひぃふぅへぃほ、まーみぃむぅめぃも、やーいぃゆぅいぇぃよ、らーりぃるぅれぃろ、わー、おー、んー』
5.『お』段が、『う』段に収束する傾向がある。前後の関係で発音が変わってしまう茨城弁であるが当時の最も典型的な発音を再現すれば、以下のようになる。
『あーいぃうぅえぃおぅ、かーぎぃぐぅげぃごぅ、さーしぃすぅせぃそぅ、たーぢぃつぅでぃとぅ、なーにぃぬぅねぃのぅ、はーひぃふぅへぃほぅ、まーみぃむぅめぃもぅ、やーいぃゆぅいぇぃよぅ、らーりぃるぅれぃろぅ、わー、おー、んー』
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◆表現方法
1.イ段音とエ段音の表現
現代の茨城では、イ段音とエ段音の発音は概ね区別されているが、かつては、口蓋化しない『イ』すなわち『イ段音とエ段音の中間音』であった。
とりわけ『イ』と『エ』は混同して使われた。
これらのうち、典型的なものに限って掲載した。
2.連母音表現
連母音変形は、特に江戸方言に顕著であり、茨城でも同じである。江戸方言と異なるのは、東北方言のように単音化することである。
3.他県の方言
本サイトでは、明治時代に遡る他県の方言を参考として掲載しているが、文献によっては、現代では異なる表現をしただろうと思われるものもある。現代では、外来語表現を拗音で表現する事が一般的になった。
しかし、原典こそその時代に即した重要な情報を持っていると考え、敢えて、原典そのままに表現するようにしている。
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