◆読書感想◆

ぼくは勉強ができない

山田 詠美(著)
価格:\420(税込)
評価:★★★★★
 「ぼくは勉強ができない」――印象的なタイトルだと思いました。「勉強ができない」という言葉から、そこにコンプレックスを抱いた少年の作品だと想像していました。しかし、全く違います。勉強はできなくとも、枠にはまらない思考の持ち主、女にはすごくもてる。本書の主人公・時田秀美は、ヒーローのような高校生です。

 本書は9つの短編で構成されます。そこに共通するのは、真実を抉り出そうとする秀美の姿勢、あるがままの事実を受け入れ、そこから自分の考えを築こうとする秀美の思想です。秀美は大人びた性格の持ち主です。「同世代の高校生が読んだらどう思うのだろう!?」と、わたしは疑問を持ちました。恐らく、秀美に対して好き嫌いが分かれると思います。

 著者・山田詠美さんは「私は、むしろ、この本を大人の方に読んでいただきたいと思う。何故なら、私は、同時代性という言葉を信じていないからだ。」とあとがきに記しています。わたしも同感です。時田秀美の価値観を冷静に捉えることが出来るのは、大人でなければ難しいと思います。

 時田秀美とその家族は、自由な存在であることを意識しすぎて、窮屈なほど、そのような振る舞いをします。それは不自由な行為に思えます。そこが、わたしは気になりました。しかし、こうしたマイナスの感想を含め、素晴らしい名作に出会ったことに喜びを感じました。(2009/10/10)

◆読感履歴◆
サラリーマンよ悪意を抱け
五分後の世界
ブルーベリー
しがみつかない生き方
子どもが育つ魔法の言葉
新・新幹線殺人事件
ショージ君の「サラ専」新聞
太陽の塔
終末のフール
数学物語
兎の眼
東京物語
極楽カンパニー
牛乳には危険がいっぱい?
無趣味のすすめ
最新、危ないコンビニ食
あの歌がきこえる
風に舞いあがるビニールシート
食育入門
脳が若返る30の方法
ドラママチ
ステップ
忌野旅日記
魔性ホテル
廃墟建築士

◆過去ログ◆
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