◆読書感想◆
葡萄が目にしみる
林 真理子(著)
価格:\460(税込)
評価:★★★★★
 舞台は葡萄づくりが盛んな田舎。そこに住むひとりの女子高生、乃里子の青春物語。――このように記載すると如何にも素朴で清々しいお話に思えます。しかし毒を売りにしている林真理子の初期作品で、そのようなことがあるはずありません。乃里子にとっての田舎は、純粋な場所でなく、偏見に満ちた息苦しいところです。それは以下のような描写によっても明らかです。

 「列車のなかでからんだり、万引きをするような生徒はたいてい町の学校の生徒だとされていた。乃里子の同級生が一度、私立の高校の生徒から手紙をもらったことがある。「わ、不良からだ」と乃里子たちは大騒ぎして、そのまま職員室に持っていったものだ」。

 田舎は環境に順応してしまえば、過ごしやすいところでしょう。しかし、乃里子のような自分らしく生きていきたいと願う人にとっては、出て行くべき場所なのでしょう。この作品の良さは、とりたてた良さの無い乃里子が、葛藤と嫉妬のなかで揺れ動きながらも、自立していくところにあります。

 ラストで乃里子が今後のフリーアナウンサーとしての飛躍を予感させる場面は、いささか唐突な感はありますが、全体としていい青春小説だと思いました。(2009/05/24)

◆読感履歴◆
その日のまえに
町長選挙
怪盗ジバコ
「朝に弱い」が治る本
ブランケット・キャッツ
きんぎょ
最悪
ラン
オーラの条件
スイッチを押すとき
やめたら
40-翼ふたたび
卒業
つみきのいえ
あぁ、監督
図書館の神様
超・殺人事件
かつどん協議会
アフターダーク
星に願いを
なぜか人生がうまくいく「悟り」のススメ
マドンナ
チョコレット・オーガズム

◆過去ログ◆
#241〜255
#226〜240
#181〜225
#136〜180
#91〜135
#46〜90
#1〜45

ほんのほん
かっての読書遍歴

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