内閣府は22日、国内総生産(GDP)などの経済指標だけでは測れない「幸福度」の指標を策定するための研究会を発足させた。経済指標では把握できない家族とのつながりや健康、社会との関わりといった「幸福」にかかわる分野について、新たな指標を作り、政策の立案や評価に活用する狙い。(読売新聞/2010.12.22)
●スローなコメント
 菅総理はマニフェストに「最小不幸社会」を掲げています。この言葉に対する好き嫌いは別として、なかなかユニークな言葉だと思います。というのは「最小不幸」は、文字通り「不幸」を最小化することを指しています。捉え方としては「後ろ向き」なイメージです。普通は国家のリーダーであれば、実現できるか否かは別として「最大幸福社会」を掲げるはずです。菅総理のを見ていると、時々、夢が無さそう!?に映るのは、「最小不幸社会」を掲げているからかもしれません。

 ところで、アメリカの心理学者マズローが唱えた「欲求段階説」では、人間の欲求の段階を次元の低い要素から「生理的欲求⇒安全の欲求⇒親和の欲求⇒自我の欲求⇒自己実現の欲求」と定義しています。この段階的な欲求の実現はそのまま「段階的な幸福の実現」と解釈出来ます。例えば次元の低い、生理的欲求や安全の欲求は、人間が生きるのに最低限必要な、衣食住があることを意味します。衣食住がある社会は、勿論、幸福な社会の一要素です。それは菅総理が掲げた「最小不幸社会」そのものといえます。

 即ち「最小不幸社会」を掲げることは、高次元の欲求である、自我の欲求、自己実現の欲求を満たす社会に政府は関与しないと宣言している様に思えます。

 その視点から見ると、今回の記事で政府が「幸福度」の指標を研究することに、やや違和感を感じます。わたしは今の政府は高い「幸福」の追求は、国民ひとりひとりに委ねられ、政治と切り離されていると思えるからです。
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