◆読書感想◆


サウスバウンド(上)

サウスバウンド(下)
奥田 英朗(著)
価格:\1,120(税込)
(上・下合計)
評価:★★★★★
 「この心地よさをいつまでも味わっていたいなぁ〜」――「サウスバウンド」を堪能しながら、わたしの頭の片隅には、そんな思いが渦巻いていました。長編とはいえ、いつかは終わってしまうのは分かっているのに・・・。

 文庫版は上・下巻に分かれています。上巻は東京・中野を拠点とした家族生活。父親(一郎)は、昔過激派でしたが、今は仕事をせず、騒動ばかり起こす厄介者です。余りの厄介ぶりに、ついに家族は東京にいられなくなります。そして、移住先が沖縄の西表島!

 下巻は島での生活が描かれます。東京では単なる厄介者だった父が、輝いて描かれます。不思議と周囲と馴染んでいます。下巻を読みながら「幸せな生活って、何なんだろうなぁ〜」と考えてしまいました。

 奥田英朗は多彩な変化球を持つ作家です。例えば「ガール」「空中ブランコ」「最悪」――いずれも名作ですが、これらの作品が同じ作家により、書かれたモノとは思えません。作品の特徴が異なります。しかし「サウスバウンド」は、前述した作品全ての特徴を盛り込んでいます。本書こそ奥田作品の集大成です。(2010/05/30)

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