消費が冷え込むなか、ユニクロやマクドナルドの販売が好調だ。価格設定だけでなく、品ぞろえやサービスで来店客を増やすことに成功した結果だ。苦戦が続く百貨店と明暗を分けている。(朝日新聞/2009.11.02)
●スローなコメント
 ユニクロやマクドナルドというと「安い」イメージが先行します。安いブランドが好調ということは、それだけ不況であることを感じさせます。

 ただ、ユニクロやマクドナルドの好調を「安さ」のみで捉えるとビジネスの本質を見失います。両社が「安さ」を提供出来るのは、安くてもいいものを提供出来るシステムがあるからです。

 ユニクロは製造小売業(SPA)と呼ばれます。製造小売業とは、小売業であるにも関わらず、自社ブランドの生産まで関与する業態を指します。消費者の需要をダイレクトに生産に反映させることが出来る業態です。その為、ニーズのある商品を適切な量とタイミングで供給出来るのです。

 どういった商品がヒットするのか!?――市場に投入してみなければ分からないのがアパレル商材です。その為、需要をキャッチする小売と、供給を実現する生産・物流が連携していることは大きな優位店となります。

 一方、マクドナルドの様な外食産業は、食品の廃棄ロスを減らすことが収益の向上につながります。その役割を担っているのが「メイド・フォー・ユー」の調理システムです。これは、顧客から注文をもらってから、50秒以内に届ける仕組みです。顧客から見れば、会計をしている間に出来たてのハンバーガーを食べられるので、速さは保ちながら、美味しさはより向上します。店舗にとっては、作り置きによる廃棄が無くなる為、原料コストが抑えられます。

 ユニクロやマクドナルドに共通するのは、商品の供給における無駄を徹底的に排除することで、顧客ニーズをつかみながら、資源のロスを無くそうとする試みです。

 それに比べ、百貨店は改革を怠っていたといえます。例えば、実際に百貨店で勤務する販売員は、アパレルメーカーの社員であったりします。また、消化取引という制度が定着し、百貨店は売れた分しか、仕入計上をしません。こうした仕組みは一見、営業のリスクを回避している様に思えますが、労務費をかけず、品揃えの責任も負わない「逃げの経営」です。百貨店はただの場所貸しでしかありません。現在は経営統合により、規模の拡大を行っていますが、長い目で見れば、百貨店に未来がない様に思えます。
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