内覧会同行業務についての依頼があった場合は、基本的にとある知人を紹介しています。彼は、『マンション博士』の異名をいただき、2005年1月末の雑誌『AERA』でその仕事振りが紹介されました。しかし、2月・3月入居物件になると知人の業務情況が混雑するため、当事務所で対処することが多くなりました。しばらく内部資料としての案内ガイドを用意しておりましたが、ガイドの一部を公開することにしました。
一般の方はどうしても見た目(傷や汚れ等)でしか判断がつかないようですが、私達専門家の目は、さらに使い勝手や機能、設計思想まで立ち入って見て行きますから、細かな部分まで満足いただけるよう心がけております。準備段階と内覧会当日の検査マニュアルとして、『アクションマニュアル』を整備して対処しています。
『自分の買い物と思って見る』それが、門屋総合設計のマンション内覧会立会いのスローガンです。また、売主に対しての不具合に対しては客観的な主張を押し通すことを旨としています。ただし、当然の事象に対しては買主側の立場に偏った折衝は致しません。
当事務所の職能は、設計・監理を主体としておりますので、業務に支障の無い範囲でお受けするようにしております(月に多くとも4件以内)から、業務の状況によっては辞退させていただく場合もありますので、ご容赦ください。
依頼を受けてから当事務所が発行する文書は以下の通りです。
1.マンション内覧会の同行業務の概要と報酬
2.アクションマニュアル
3.依頼主ヒアリングシート
4.売主ヒアリングシート
5.住宅性能ヒアリングシート
6.事前調査報告書(ご要望に応じ事務文書審査結果報告書)
7.検査結果報告書
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・マンション内覧会アクションマニュアル
・音環境ガイド
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1.問題が多いメディアと法令の実態
1)近年の情況
近年のマンションブームは底なしの状態にあります。政府による様々な不況対策の中で建築基準法の大幅改正や緩和税制と地価下落によって、この情況がいつまで続くのか解かりません。バブル期と比較するとマンション価格は半分以下になっています。
一方で一部のメディアによる、マンションの欠陥騒ぎがクローズアップされています。しかし、木造一戸建ての場合と異なり、鉄筋コンクリートのマンションは、行政による大変厳しい検査を受けていること、品確法の制定により瑕疵責任が厳しくなり、さらに10年保証が義務づけられました。しかし、中には、自社基準の『アフターサービス基準』を設けて、上位法の品確法に抵触する基準を堂々と掲げているケースもあります。
また、大きな不安を覚えて当事務所に沢山の問い合わせがあるのは大変気になることです。
2)欠陥マンション
中にはとんでもない欠陥が発見されるマンションがあります。これは、零細ディベロッパーに限りません。だからこそ瑕疵に対する責任が売主にはあり、その点を義務化したのが品確法と言って良いでしょう。
2・3月の内覧会物件では、工事が間に合わず、内覧会の時に専用部の残工事がある物件があります。
3)大手だからといっって信用するのは間違い
また、設計段階の検討が不十分だった物件では、現場に入ってから専用部内の様々な変更が発生したケースもあります。一般にデザイナーズマンションは注意が必要です。
致命的な問題があるのはそう多くはありません。しかし、大手ディベロッパーと著名な設計事務所、そしてスーパーゼネコンであっても致命的な問題があるか無いかは蓋を開けてみないと解からないところに問題があると言えます。
4)性能表示制度の欠陥
性能表示制度は、鳴り物入りで施行された制度ですが、今の法令では、任意であるため性能表示を受けたことがあたかも高性能であるがごとく、売りのツールに利用されていることが問題です。この(2005年)2月に東京都ではマンションのチラシに一部の性能に限定して表示しなければならない条例を施行しました。
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2.マンション内覧会立会いの基本方針
当事務所では、依頼主から一式を請け負って内覧会に立ち会うのではなく、事前に様々な調査を行い、依頼主との共同体制を組み、様々な情報交換によって内覧会に臨むようにしております。また、依頼主の支援に徹して事前の折衝は依頼主にしていただくようにしております。アドバイスをするのは勿論のことです。その理由は、様々な助言によって内覧会に向けての環境を整え、性能評価を受けていない物件の場合でも各種性能等を明らかにして、建物の実態を知っていただくことも大きな目的です。このヒアリングを実施しないと、見えない部分の性能は解からないままになってしまいます。また、売主は全てに関して高性能であるが如くパンフレットをまとめます。それらの性能が、今の平均的なマンションの中でどのような位置付けになるかを解説します。
内覧会当日は、専門的な目で確実に検査いたします。また、材料や機器等の特質を見定め、使い方についてもアドバイスします。指摘事項の内容によっては折衝が必要になる場合がありますが、内覧会当日の折衝は当事務所が行ないます。
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3.マンション入居までのプロセス
当事務所の考えるマンション内覧会立会業務は次の五つのステップに分類しております。
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1)マンション購入にあたってのコンサルティング業務
単一または複数挙げられたマンションを調査し、購入の際のアドバイスを行なうものです。間取りの良否や、隣戸・上下階の住戸との関係、共用施設(駐車場、駐輪場、集会室)、エレベーター等の輸送施設等を合わせて総合的な評価を行ないアドバイスします。 また、住戸平面に手持ちの家具を配置し、適切に配置できるかや、電気のコンセントや電話、テレビのアウトレットやスイッチ類の位置が適切かをチェックします。
ただし、この段階からの参画は実際にはまれで、契約に至らなかった場合には相応の報酬をいただきにくい現状にありますが、今後はなるべく早い段階からの参加活動に取り組んで行きたいと思っております。
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2)準備・調査・根回し
@この段階の意味と必要期間
内覧会に向けて事前の根回しを行なうこと、建物全体や住戸の間取りを評価すること、性能情報が不十分な場合は、売主に様々な質問をして性能を明らかにする段階です。内覧会までに1ヶ月あるのが理想です。過去の実績では最低2週間あれば対処可能です。その場合、情況に応じて事前調査報告書は内覧会の後日の発行になることがあります。
A依頼主との情報交換
まず依頼主の情況を、『依頼主ヒアリングシート』を用いて収集すると共に、情報交換に利用します。必要に応じて管理規約や重要事項説明書の内容についてもアドバイスします。
B事前の根回し
事前の根回しとは、『売主ヒアリングシート』を用いて内覧会に向けての様々な環境を整備することです。これが万全でないと当日の検査が不十分になることがあります。
C住宅性能について
『住宅性能ヒアリングシート』は、性能評価取得の有無に関らず実施するようにしています。
売主の回答が一通り整った段階で(ヒアリング回答が内覧会当日までずれ込んだ場合は内覧会の後)、備考欄に解説を加えて最終報告します。
D事前調査報告書
事前の調査とは、案内パンフレット、設計図書、売主へのヒアリング等を通じて、建物全体や住戸の間取りの良否、各種性能を明らかにするものです(住宅性能評価は間取り性能等に対しては対応できていないからです)。
その結果に応じて、『事前調査報告書』を発行致します。事前の調査は非常に大事なことで、内覧会当日では見えない部分のチェックができる唯一のものです。また、一般の方には読みきれない欠陥がこの段階でみつかることもあります。現地検査だけではなかなか解からないことが、この段階で予め予測することもできます。また、検査の重点個所も明らかにすることができます。
最近は、いずれの売主も忙しい中で丁寧に答えてくださるようになりました。性能に関する買主の意識が高まっているからでしょう。
E第3者立会いの伝達と必要資料の整備
ここで、第3者の立会いがあることを早めに売主に一報して下さい。
F事前に必要な資料
当日の内覧会だけの立会いでは、どんな機材を導入しても検査不十分でパンフレットや事前の根回しによって得たデータが極めて重要になります。また、『事前調査報告書』の発行や内覧会に向けての準備のために、販売パンフレットやその後の受領資料が必要になります。
G契約書・重要事項説明書・管理規約・アフターサービス基準等
管理規約を除いて契約後の改変はできないので、ご要望があれば、内容を審査します。過去の経験では@エアコン設置のルール、Aリフォームのルール、Bペットの取扱いのルールが不備があることが散見されます。
中には、品確法で構造体と漏水事故に対して10年保障の義務があるのに、漏水に対するアフターサービス基準を設けて5年とか2年とか設定している大手ディベロッパーもいるのには驚いてしまいます。
H是正履歴
自主検査書のコピーを請求するか内覧会当日閲覧するようにします。売主側の検査書は、車で言えば事故歴のようなものです。売主検査書を閲覧してくれる売主は良い方で、『社内書類はお見せできない』との回答が多いのは残念です。本来は、設計者、施工者の検査書を是非閲覧したところです。
I検査済み証
建築確認検査が済んでいれば検査済証のコピーを請求しましょう。通常は確実に下りるものですが、中には管理会社が杜撰で、紛失するケースもあるので、かならずいただいておきましょう。
J引渡し時の引渡し機器
引渡し時には、書類のほか機器類もあります。内覧会時は確認できませんから、事前にその内容を確認します。
K電気・水・ガス
また根回しとして大きな課題として挙げられるのは、水とガスを内覧会時点で供給してもらうことです。以前はまず駄目でしたが最近はかなり良くなってきました。それでも一部の売主は、なかなか受け入れてくれません。実際これが大きな分かれ道になって入居後に漏水事故が発生したケースもあります。電源供給は当然のことです。
Lスリッパと脚立
まず大半の売主はスリッパを用意してくれません。また、脚立は公平性を理由に用意するところはあまりありません。
スリッパは、ものによっては床のワックスに傷をつけます。内覧会の段階ではまだ売主が所有(実際は施工者)していますから、売主側が傷のつきにくいスリッパを用意すべきなのですが、そんなことを真剣に考える売主が少ないのは驚きです。
脚立も検査の重要なツールです。手の届かない場所の検査と天井点検口内の検査、エアコンの電源の通電検査の際に必要です。内覧会当日に住戸の所有者は売主にあるわけですから、万全に養生した脚立を用意するのが売主の勤めのはずですが、意外にそうではありません。脚立はわずか20分くらいあれば十分ですから、粘り強く折衝します。
M仮設照明
最近のマンションは、建築基準法の大幅緩和で、昼でも暗い個室が多くなりました。特に北側個室が問題です。居室の照明は一般にオプションですから、仮設の照明(ローゼットに差し込む簡易照明)を用意してもらいます。中には全室に仮設照明をつけてくれる売主もいます。
N遮音体験
現地での遮音性能体験は、大変重要だと考えています。一番の理想は、上下・左右の燐戸の方と話し合ってお互いに体験することですが、@隣戸の方が居ない時に隣戸に入ってそれが後で発覚して問題になったケース、A話し合いがこじれてその後の感情問題になってしまったケースを聞いています。そのため、売主側立会い者に隣人の代わりになっていただけるよう事前に根回しします。
ドアや収納扉類で大きな音がする場合は、隣戸で開け閉めしていただき確認します。
O内覧会の時間延長の承諾
内覧会の時間設定も重要です。だいたい1時間の設定が多いのですが、メールボックス等の説明等で30分程度要をしますし、実質の検査は最低でも3時間程度かかります。これは、完成度が極めて高い物件の場合で、施工情況が悪いと5時間以上も要することがあります。結局総時間は合計4〜6時間を要します。そのため、超過した場合の取り扱いについて事前に売主に折衝しておく必要があります。午後開始の物件は、場合によると夕刻を過ぎることがあります。そのため、通常内覧会で行なわれる共用施設の説明を受けることができなくなる場合があります。
P内覧会の立会い者
内覧会の売主側同行者が誰かを確認します。大半が施工者の担当者一人に立ち合わせますが、設備的な指摘事項や、設計や売主の思想に関ること、性能上の欠陥が発見されるケースもあり、控えの体制を確認することと、少なくとも検査指摘事項の確認の際は現地で売主に立ち会っていただくよう折衝します。
Q内覧会スケジュール
売主側が考えている再内覧会や再々内覧会のスケジュールも確認します。引越し予定が迫っている場合は、調整が必要です。内覧会から引越しまでは、最低1ヶ月は必要です。引っ越してからの手直しとなるような場合は、責任が曖昧になりますから、余裕のあるスケジュールを立てる必要があります。施工情況によっては内覧会の延期もあり得ますから、1ヶ月半程度を見込んだ方が万全です。
R場合によっては内覧会の延期も
内覧会の数日前に、工事の進捗情況を確かめてください。もし未済工事がある場合は、内覧会の延期も考えに入れておきます。
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3)内覧会当日
@事務的手続き
いよいよ、内覧会当日になります。まず受付をします。次に、メールボックス類の簡単な説明があります。その後直ぐ部屋に連れて行かれることがありますが、その前に懸案事項の積み残しや受領資料があれば、別室で事前の打ち合わせを行ないます。
この時、事前にやり取りしているからと言って担当者に話が伝わっているかというと、まず伝わっていないと考えた方が無難です。それほど売主側には企業としての体制は良くありません。積み残しがあった場合は、当事務所で『内覧会事前確認事項』を用意しますから、それに従って打ち合わせます。事前に約束されたことを確かめます。また図面や各種資料を受領します。設計図面を閲覧して設計内容を確認します。
A検査の方法
次に本検査の開始です。当事務所は、機械的に行なうチェックリストは用意していません。その理由は、そもそも間取りが異なり、様々なオプションがあるマンションでは、チェックリストを一律にまとめることは無理だからです。部屋単位でチェックリストを作ると、かえって欠落個所が出てしまいます。部位別リストを作成し、それを部屋別に用意するのが良いようにも思えますが、実際は検査シート倒れになってしまいます。むしろそれより、経験ある検査者が目の前にあるものを徹底的に見ることの方が重要だと考えています。
B間取りや造作のチェック
検査はまず間取りを確かめます。造作類の施工情況をチェックします。オプション仕上げや機器が指示通りになっているかについても確かめます。
C目視検査
全ての個所の傷、汚れ、ひび、浮き、ふくれ、清掃状態、シール切れ、サッシュ・ドア類の気密材の目切れ、施工状態、がたつき、外れ、水勾配、垂直水平確認、残存物等。収納類も全て扉を開け中をチェックします。簡単に外れるものは全て外してみます。レンジフードの上のカバー、浴槽のエプロンと排水カバーも外してみます。
汚れ・傷類はきちんと指摘します。建築物は工場で作るわけではないので、どうしても小さな傷が残ります。傷は指摘すれば普通直してくれますが、あまり目立たない細かな傷等をやみくもに指摘していくと手直し後に返って仕上がりが悪くなったり、数年後に目立つようになることもあります。そのような細かな傷は、入居直後からどんどん増えていきますから、ある程度寛大になることも大切です。
D施工情況検査
タイルや石、フローリング等の浮き(ハンマーの柄や木槌で叩いたり、足で叩きます)、壁の下地状態をチェック(手で軽く叩きます)します。タタミは、剥がしてみます。二重床は、全ての個所を歩き、不自然な音鳴りをチェックします。稀に支持脚の欠落があることもあります。機器類はすべて力を入れて動かしガタツキやたわみのチェックを行います。
E動作試験
動くものは全て動かします。ドア、収納類の扉等を全て動かします。その際に、ラッチのかかり具合、玄関ドアは開閉時の重さやドアチェックの調整状態をチェックします。この時の音の発生状況を知り、日常生活で注意しなければならない個所を知っていただきます。あまりに大きな音がする場合は是正対象にすることも考えます。
ドア相互のぶつかり、ぐら付き等が無いかをチェックします。無用に壁などに当たる個所は透明緩衝材(涙目)をつけてもらいます。照明器具に当たるような場合は、是正要求します。サッシュの開け閉めに伴う遮音性能の実体験や指つめ等の安全性も確認します。
吊戸棚やドアの回転軌跡内にダウンライトがあるケースは危険です。ダウンライトの下に扉が長時間置かれると炭化して出火の危険を伴います。
Fコンロの着火試験
コンロに火を付けて確認します。IHの場合は、ステンレス製のカップ(底が平たいもの)を利用すると良いでしょう。
G水とお湯
水とお湯を出して、水質や水量、漏水等のチェックを行ないます。トイレも流してみます。排水管がつまっていることもあります。浴室給湯が全自動の場合は、停止までお湯を張ってみます(設定湯量調整が適切か)。
Hバルコニーの水勾配、サッシュの結露排水
カップ等に水を入れ、バルコニー等の排水勾配をチェックしたり、サッシュの結露排水の流れ等のチェックをします。
I分電盤の回路構成
分電盤の回路構成を確認します。特にキッチン周りは入念に確認します。
J設備スイッチ・機器類の操作・動作
スイッチ類を全てON・OFFし照明類の点灯と換気扇の動作確認します。バス乾燥機類の操作方法についてこの時説明を受けましょう。給湯器のスイッチを入れます。この時給湯器の説明を受けておきましょう。エアコンが設置済みの場合は運転します。非常通報装置やインターホンも可能なら試験します。換気扇や乾燥暖房機もモード毎に全てチェックします。床暖房がある場合はスイッチを入れて確認します。
Kコンセント
通電機器(何でもかまいませんが携帯電話の充電器が小さくて便利です。)を用意し、コンセントにプラグを差し込んで通電確認をします。
L換気システム
換気システムの図面を用意していただき、空気の流れを確認します。給気口の仕様、フィルターの有無、ベントキャップの状態、扉のアンダーカットの状態等を確認します。また、サッシュを全て閉めて給気口からの音の侵入状態をチェックします。レンジフードを『強』にしてエアバランスやサッシュの音鳴りを確認します。
Mビルトイン浄水器
ビルトイン浄水器のテストは微妙です。工事中は配管内に様々な異物質がある傾向があり、通水チェックをする際に、フィルターが汚染されることがありますので、あまりお勧めしていません。
N壁・床の遮音性能の実体験
できるだけ大きな音がでるラジカセを使って遮音性能の体験をします。燐戸や上階の方と折衝して話し合いがつけば、双方のテストが可能になります。壁をたたいたりするのも効果的です。上階の住人の方に、飛び跳ねたりしていただいて、床の重量衝撃音をチェックできれば尚良いと思います。隣戸の方が居ない場合は、代わりに売主側の同行者にお願いします。
ラジカセご用意できない場合は、売主側同行者に怒鳴り声を出していただいて体験します。
内覧会同行業務を行なう企業では、計器類を駆使して騒音測定をしたりしているところがありますが、騒音測定は専門家のためのものであって、何dbの結果になりましたと一般の方が言われても何の判断材料にもなりません。
当事務所では、まだ経験はありませんが、友人が関った物件で壁が18cm、床が20cmの二重床の物件で、音がまるで漏れてしまう物件があり、調べたら床に穴が開いていた事例もあります。発見できたのは、遮音実験があったからこそと言えるでしょう。
O点検口
浴室等の点検口を覗き、普段見えない部分をチェックします。コンクリート躯体が唯一見える場所でもあります。清掃情況、ダクトの接続情況も確認します。
P積極的な質問
見えないところの状態や設備機器類の操作等について、積極的に質問します。
Q共用部(専用使用部)
バルコニー類や玄関ドア、サッシュ等は、財産上は共用部ですが、専用使用部分ですから積極的に検査します。バルコニーの隔て壁に隙間があると、プライバシー上問題があります。外壁がタイル等の場合は、叩いて浮きをチェックします。バルコニーの長尺シートの浮きがが散見されます。
サッシュや外壁貫通部廻りのシール打ちを入念にチェックします。またエアコンの室外機・室内機の置き場とスリーブの関係、取り付けボルトの有無等を確認します。メーターボックスの配管状態や配管類の貫通部処理もチェックします。
その他の共用部も本来検査すべきなのですが実現はできていません。
R検査ツール
平成15年7月にシックハウス対策法令が施行されて以来、マンションの室内の空気環境は新たな時代に入って、内覧会の時の新築臭がなくなりました。施工精度は、レーザーを使うことで格段に向上しました。遮音性能は、測定データより実体験する方が最も信頼できると考えています。そのため、最低限の検査ツールでも問題無いと考えるようになりました。
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4)検査指摘事項の確認
販売代理店や施工業者だけの立会いの場合、設計や売主の思想に関る指摘事項は、『それは私たちでは解かりません。』と返答があります。売主やまれに設計者が同行していても、必ず的確な答えが返って来るとは限りません。
検査後、検査指摘事項の確認を行い捺印します。折衝事がある場合は、販売代理店や施工者が相手では無理です。必ず売主に現地に来ていただき、状態を確認してもらいます。多いのは、音問題(建具関係が多い)と安全対策、そして大きな手直しが発生する場合です。
これらは、事前の根回しにかかっています。根回しが出来ない当日限りの検査では十分な検査ができないと思って間違いありません。
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5)良くある不具合
1)清掃不良
清掃不良は、共用部(共用廊下・バルコニー)と天井内や床・壁の点検口内、メーターボックス内、レンジフードの幕板内部に多く見られます。残材やビス等が沢山出てくる場合があります。
2)汚れ、傷、凹み、ふくれ、剥がれ、隙間、欠け、割れ、塗装やワックスのだま、異物の付着
見れば解かるものです。中には玄関ドアに大きな傷や凹みががある事例も少なくありません。完全交換です。
エンボス仕上げのシンクの傷は手直し不可能なのでトップ毎、工場に持ち帰り交換します。
一方巾木上の隙間が目立つ物件があります。またコーナー部の隙間がある物件があります。これは主として施工上の問題によりますが、あまり見苦しい場合は、きちんと指摘します。
あまりに綺麗な床なのでおかしいと思ったらワックスの硬化時間が不足していて、内覧会が終わったら細かな傷が無数について事例もあります。
サッシュ類等の外部金属部分傷は、皮膜が形勢されていないことになるので、きちんと補修していただきます。
3)タイル・石・長尺シート類の浮き
これらは、道具を使って入念にチェックしないと解かりません。玄関の石の半数が浮いていた事例もあります。石が厚ければさほど問題にしませんが、10mm強の石の場合は、貼り直します。
長尺シートの浮きは雨水の排水管周りや壁際に多く見られます。
4)タイル・石類の目地込め忘れ
5)シール忘れ
サッシュ周りや床の長尺シートのシール忘れがあることがあります。長尺シートに防水性を期待している物件ではジョイント部の溶接状態が悪かったり、溶接未完だったり、シールを忘れていると漏水の原因になります。長尺シート下に防水材がある場合は、無くても良い場合もあります。
6)掃き出し窓下の水きり板のモルタル充填不良・端部キャップ忘れ
ハンマーの柄で叩くと不良個所が解かります。樹脂を注入して改善します。
端部のキャップは単なる忘れです。
7)外壁スリーブ周りの断熱材不良
外壁周りに点検口がある場合に発見できるものです。ダクトや配管が後から施工したあと、断熱材を充填していないケースです。
8)金物・機器類のぐらつき・がたつき・硬過ぎ・外れ
面格子や給気口、網戸のぐらつきやがたつきが発見されます。面格子のぐらつきは支持個所を増設します。
金物類ではビスが抜けていることもあります。特にバルコニーの雨水ドレーンのストレーナーが無かったりビスが止まっていなかったり、雨水ドレーンの支持金物がぐらついていたりすることが多くあります。
また、取り外しできる収納金物類が硬すぎて取れない事例もあります。
9)サッシュの結露排水口のつまり
嵌め殺しサッシュの結露排水口がつまっている場合があります。
10)サッシュ・網戸類の気密材(ゴム等)の欠け、隙間
しばしば発見される不具合です。
11)玄関ドア類のドアチェックの調整不良
調整が悪くて重すぎたり、バタンと閉まった時の振動で室内の各部がビリビリ鳴るようなケースもあります。
12)施工精度不良
最近は少なくなりましたが、それでも様々な部分で見かけます。垂直水平の精度が悪いと不具合がでます。多くは隙間となりますが、中には大きな手直しを伴うケースもあります。
最近では、戸境壁が10mm近く倒れているのに、モルタル補修をしなかったことが原因になった事例があります。和室の襖枠との間には約10cmの小壁があったのですが、大工さんが、その倒れに馴染ませて取り付けてしまったので、襖を開けると大きな隙間が開いてしまうものです。一旦、戸境壁の仕上げを撤去して、タタミも剥がした後、モルタルを全面的に塗りなおして、タタミも一部作り変えた事があります。
施工者は、最初なかなか受け付けてくれませんでしたが、それでも施工上の不具合であるのは明らかなので是正いただきました。
13)居室のドアのラッチがきちんと掛からない
緩衝材が悪さしている場合と、丁番の取り付け位置が悪い場合があります。調整していただきます。
枠まできちんとドアを送らないとラッチが掛からないドアは、大人だけのご家庭ならば、きちんと閉めれば良いのですが、お子様のいらっしゃる家庭ではそうは行きません。閉まらないままだと煽られる可能性があります。緩衝材(ピンチブロック)が硬いケースです。無駄な緩衝材を取り去って、クッション製の高い緩衝材に替える方法がありますが、緩衝材自体が外れないケースもあります。この場合は売主は中々折衝に応じません。その場合は、ホームセンター等で小型のドアチェックを購入し、自分で取り付けるしかありません。
14)床や壁の異音
フローリングのジョイント部分や和室の敷居周りで僅かな軋みがある場合がありますが、あまり大きな問題ではありません。問題は床の下や壁内から聞こえる異音です。そのような場合は、下地材に不具合があるので、剥がして確認する必要があります。
15)シャワー水栓下のキャッチパンからのホースの外れ
キャッチパンが小さくホースが長い場合に起こります。ストッパーの位置を調整します。
16)吊り戸棚を開けると照明に当たる
幼稚なミスです。必ず是正していただきます。
17)特殊な事例/欠陥
@居室の給気口忘れ
役所の検査にも通らない欠陥です。
Aキッチンコンセントの容量不足
電子レンジや食洗機をビルトインしない場合でキッチンの使用可能なコンセントが1回路(15A)分しかない場合は、容量不足でブレーカーが上がってしまうことがあります。20Aの場合は、実際に使用機器の容量を計算して確認します。一般には15A2回路分あるのがベストです。
B二重床の支持脚の固定忘れ
通常は異音の発生で発見できますが、収納内部などで歩行できない部分では発見が難しいこともあります。
Cダウンライト直下のドア
ドアの回転軌跡の直上にダウンライトがあり、ドアが天井一杯ある場合は、出火の危険を伴います。距離がある程度あり出火の危険性はないことが立証された場合でも変色の可能性があるので、ダウンライトの位置を変えるか、ドアにドアチェックをつける方向で折衝します。
D層間区画の耐火充填材の不良
メーターボックス内は不良個所がしばしば発見されます。一般に施工状態が悪いのでしっかりチェックしますが、法律で定められている層間区画の充填材が施工不良だったケースもあります。
18)設計の問題・課題
以下は、設計自体の問題です。中には出来上がってしまったらどうしようも無いものもあります。
@共用廊下の滑り出し窓から人が入れてしまう。
他の窓には、面格子があるのに、滑り出し窓の開放角度が多き過ぎて人が入れる窓になっているケースです。角度を小さくしなければ、換気窓にもならない防犯上問題のある窓です。
A収納扉とドアが干渉する
平面図を見れば解かりますが、数件に1件がこのような欠陥があります。指摘しても『図面通り』との回答が返ってきます。しかし、ドアに緩衝材の付いた戸当たり(帽子掛け)を付けて対処しているところもありますから、粘り強く折衝します。
B戸境壁の断熱材折り返し部分のGL工法
最近ではめったに見られない不具合です。仮に18cmの鉄筋コンクリート造の壁の場合、12cm厚と同等の性能まで落ちてしまいます。ペーパーハニカム付きボードならあまり性能は下がりません。実際に遮音実験して確かめます。
Cドア・収納扉・網戸の異音等
ドアの閉鎖時の異音は、まれに輸入品の金物を使っているような場合に起きます。ラッチが音を発生させているので金物の交換だけでは済まずドアを全面的に替えない限り解決されません。モデルルームで良く確認しておくしかありません。しかし、パンフレットで遮音性能の良さをうたっていながら、このような音を平気で許してしまうのは理解できないとしか言いようがありません。特に居室のドアの開閉頻度は、収納扉の頻度とは比べ物になりません。戸境壁は一般に18cmありますから、Rr−50(空気伝搬音の等級)で性能表示の等級に換算すると4等級のうち3等級になります。それでもこの音ははっきり聞こえますから、問題にしない方がおかしいと言えるでしょう。
アームストッパーの異音は、比較的隣戸に伝わりにくい傾向にありますが、二重床でない場合は躯体の振動として伝わる場合があります。二重床の場合は、ドアが住戸の中央にあればあまり気にしないでも良いと思います。アームストッパーを付けるドアは、トイレが多く、次に平面上煽り止めを付けられない個所に使われます。隣戸に面する場合は、実際に隣戸のドアを開けていただくと、実際の音の具合が解かります。
和室の引戸や襖は大きな音がします。日本人は昔から襖は静かに閉めるよう教育されてきましたが、戸境壁に直接縦枠が付いていると致命的な問題になりかねません。
水周りの引戸類も大きな音がする事例があります。隣戸との関係や、二重床か否かによって個別に判断しますが、緩衝材でかなり改善されます。
収納扉類の異音は、パネルがフラッシュ構造で、マグネットキャッチを用いずクイックキャッチ付きのスライド丁番を使う場合に発生します。扉が繊維板等の1枚板の場合は、収納本体が鳴る場合もあります。パネルが太鼓現象を起こしてしまうものです。片開きの場合はより大きな音がするのが一般的です。そのため、両開きの両方を開けて片方を閉めると大きな音になります。また、吊戸棚のように小さな扉の方が音が大きくなります。キッチンや脱衣室の大型スライド引き出しでも大きな音がすることがあります。涙目程度の緩衝材での解決は無理で、スポンジゴムで対処していただきます。稀にそれでも消えない場合があります。本体の幕板や巾木部分のほぞが鳴ってしまうケースです。その場合は、何らかの方法で隙間を埋めるか、マグネットキャッチ仕様に替えていただくしかありません。丁番の調整によって多少改善されることもあります。最善の方法は、消音ダンパーを付けることです。
プリーツ式網戸はとんでもない音がすることがあります。この音は回り込みによって、サッシュから簡単に隣戸に伝わります。
ドアの煽り止めが無かったり、一部限定だったりする場合があります。住まい手の使い勝手は様々です。売主によってはこれが当社の仕様ですと胸を張って言うところがありますが、煽られた時の音はとんでもない音がすることを知らないはずはありません。このケースはなかなか折衝に応じてくれません。煽り止めはホームセンター等で購入できます。
収納扉類を開けた時、鉄筋コンクリートの戸境壁に当たる場合があります。その場合は、涙目では解決にはなりません。丁番の開き角度を制限するか、アームストッパーで角度を制限する方法、ゴムの緩衝材付き戸当たりを付ける方法が考えられます。
以上の音は、売主に実際に聞いていただいた上で折衝します。良く考えて見るとこれらの問題はマンション全体の問題で当該住戸を改善しても、隣戸への迷惑が少なくなるだけで、隣戸が是正しなかったら、こちらが迷惑をこうむる事になります。後々隣人とのいさかいの原因にもなりかねない問題なので、簡単に諦めてはいけない問題だと思います。
D直床なのに便器下に緩衝材が無い
直床の場合は、便器のコック音が意外に響くことがあります。
E開き勝手が逆のドア
トイレにまれに見られます。手直しは、ドア及び枠を交換し、スイッチ位置を変えなければならないために壁の壊しが発生しますので、まず受け入れてもらえません。購入段階で、良く見抜いて置きたいところです。
Fバルコニー隔て板の隙間とドアスコープ
プライバシー上問題になります。また、ドアスコープは、外から簡単に内部が覗けるルーペが市販されています。カバー付きが理想ですが、対処されている物件は多くありません。
Gレンジフード排気に対応した給気が無い
24時間換気の給気風量の合算量がレンジフード排気用の法定風量を満たしているからと、専用の給気口を設けないケースです。レンジフードを回した途端にサッシュが『ヒューヒュー』鳴り出します。
H給気口の不具合
フィルターがある事例は残念ながら多くありません。花粉症の方は、購入前に確認すべき事項です。後から無理にフィルターを付けると法定給気風量が減ってしまいます。
給気口の多くはエアコンの室外機近くにありますから消音対策をしてあるのが理想ですが、これも大半がされていません。
給気口とレンジフードの排気が近過ぎるため、ルーバーの方向を変えた事例があります。
I照明の無いトランクルーム
夜懐中電灯を持っていかないと中が見えないトランクルームです。
J浴室シャワーのホースの異音
世界的に有名な某外国製シャワーホースは、金属蛇腹のままなので、床やデッキを擦って傷になるばかりでなく音が発生します。
K安全対策不足
引き違いサッシュや引戸類の指つめ防止対策が無い事例、開きドアに組み込まれた大型ガラスが通常のガラスになっている事例があります。
特に大型ガラスがはめ込まれたドアはあおり止めがあっても、子供のいる家庭では危険を伴います。さすがに大手の売主は、ガラスサイズを抑えますが、一部の売主に見られます。飛散防止フィルムが貼られているか、強化ガラスや樹脂ガラスになっていれば、安心です。
L巾木の出隅の不具合と巾木の周りの納まり不良
最近の大半の物件がシート貼りの既製品を使っています。そのため出隅部分が業界用語で『ピン角』になり、掃除機等がぶつかると欠けてしまう物件が殆どです。
最も安価なビニル製の巾木が最近全く無くなってしまったのが不思議です。
巾木と床の取り合い、巾木と壁のビニールクロスの取り合いも問題があります。巾木と床の取り合いは二重床全盛の今は隙間を設けるのが一般的です。二重床自体が動くので競ったときのきしみ音の発生を防ぐためには、目地逃げが理想です。
Mぶらぶらのスライディングウォール
ぶら下がっているだけでぶらぶらのスライディングウォールです。ポリカーボネート樹脂板にアルミフレームなので安全性の点では大丈夫ですが、カーテンでは無いのですから、ストッパーで止めるべきです。
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6)再内覧会・再々内覧会
内覧会の指摘事項は、一般に2週間後に確認検査(再内覧会)を行ないます。内覧会の後に多くの職人が出入りしますから、再内覧会時に新たな傷等が見つかる場合がしばしばあります。また手直し忘れもありますので、その場合は再々内覧会になります。
再内覧会や再々内覧会への同行については原則として行わない方針です。なかには、指摘内容に対する手直しの意思が曖昧になったり、処置方法の難しい物件があります。その場合は、対策方法について電話やメールでアドバイスします。
指摘事項に対して売主が後で態度を変えたり、対応が悪い等の場合は、要望を受けて再内覧会や再々内覧会の同行に応じます。
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7)入居後の各種トラブル
入居後の問題発生に対してもお気軽にご相談下さい。
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4.内覧会立会い業務の費用
マンション内覧会の立会い業務は、資格制度もまだ無いために、大方の営利企業は、当日のみの検査で報酬設定をする例が多いようです。やや良心的な企業は、再内覧会をセットにしていることがあります。
当事務所は、建築の設計・監理を本業としておりますから、それを生かして、現地で見たものをただ検査するのでなく、事前の調査に力をいれており、内覧会に向けて環境を整備し、パンフレット情報が不十分な場合は、売主に様々な質問をして性能を明らかにし、依頼主にその物件の実態を把握していただくことを重視しています。
費用は、個別の状況、特に依頼を受ける時期によって異なります。過剰な受注は避けたいので、費用の公開は致しておりませんが、安価に設定しておりますのでお気軽にお問い合わせ下さい。
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5.内覧会立会いの限界と対策
1)内覧会での検査の限界
準備段階で、売主にできるだけの確認(情報提示)をするよう心がけています。内覧会の検査では、床や壁を叩いて異音がしたら指摘し、点検口類は全て中を確認するようにしていますが、構造体・見えない部分・通信設備(電話、テレビ、LAN等)・各種感知器等の検査及び専用使用部以外の共用部の検査・ドライバーを使って開けなければならない部位等の検査には限界があるとご理解下さい。
2)問題が多い音と安全対策
内覧会での検査指摘事項で最も数が多いのは、施工上の問題です。これらは、業者側の問題なので指摘すれば対処されます。
最も問題になるのは、設計や性能に関るものです。代表的なものは音と安全対策です。
床や壁の遮音性能は格段に良くなってきましたが、開きドアの閉鎖時の発生音(戸当たり部の緩衝材が無いために起こる衝撃音やラッチの衝撃音)と煽り止めの有無、引戸や引き違い戸の戸当たり音、収納ドアのアームストッパーの衝撃音、吊戸棚の耐震ラッチの衝撃音、網戸のうち特にプリーツ網戸の閉鎖音等が驚くほど大きいのに気がつきます。これらの音は、昼間ならさほど気になりませんが、夜間寝静まるとかなりはっきりと聞こえます。モデルルームを作っているのに何故改善しないのかが不思議でなりません。また、遮音に対して敏感でなければならないサッシュメーカーが何故発生騒音に無関心であるかは、発生騒音の社会的基準が無いためと推測しています。また、性能表示制度で音環境性能が任意であるためか、売主の大半が音に対して関心を示さないのが問題です。また、設計者側からすれば、発生騒音の基準が無いために、設計図に性能仕様を明示しにくいために、現場での監理行為に委ねられる傾向があるようです。中には消音ダンパーを用いて完璧な消音対策を施している物件もあります。昔から戸境壁のGL工法は遮音性能が1ランク下がることが解かっていますが、相変わらず採用しているところもあります。
次に、安全対策があります。引き違いサッシュや引戸類の指つめ防止、開きサッシュの煽り止めストッパー、バルコニーや廊下に面しない腰窓の落下防止手摺、開きドアに組み込まれた大型ガラスの割れや落下防止対策が挙げられます。
3)売主の反応
上記のような指摘を行なうと、売主は、『モデルルームの通りですから。』、『今まで問題が発生したことはありません。』、『気をつけて使っていただければよいと思います。』、『取扱い説明に加えておきます。』、『外のお客様に対する公平性の観点からお受けできません』といった答えが返ってきます。そして次の物件では改善されていたりします。
しかし、明らかな不良が見つかる場合があります。その場合は、ひるまず必ず直していただきます。明らかな欠陥で構造体に穴を開けなければいけないようなこともありますが、欠陥商品である以上必ず是正してもらいます。音の発生については、ちょっとした工夫で是正できる場合が多いのでねばり強く折衝します。
4)万全な対策
万全な対策はあるかと問われれば、契約前にきちんと確認しておくことしかありません。そのためには、モデルルームを漫然と眺めるのではなく、2時間位検査のつもりでチェックしておくのが良いと思います。またその段階で専門家に調査依頼をするのがベストだと思います。
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