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  2005年2月
   マンション内覧会/遮音性能ガイド

 品確法に基づく住宅の性能表示制度策定のきっかけは、家電製品が必ず各種性能を表示しているのに、住宅には無かったことから導入された制度です。
 『設計性能評価』は、買い手が複数のマンションを比較しながら望みの性能のマンションを選択する判断材料になるものです。
 オプションやメニュープランで間取りを変えた場合は、厳密には評価書は有効ではありませんので売主によっては、情報を開示しない場合があります。評価書に『参考』等を明記する条件で粘り強く折衝して入手します。
 性能評価を受けているからといって性能が高いとは言い切れませんので注意が必要です。
 住宅に求められる性能の中には、建物規模や周辺環境によって要求性能値が異なる(構造の安全では超高層か否か、火災時の安全では規模や複合用途か否かが無視されている)ものがあります。劣化軽減では、高層になればなるほど高強度コンクリートが使われるために自動的に性能がアップするのに評価対象になっています。温熱環境では日当たりが無視されています(隣接敷地との関係があるため将来的な難しいのですが、何らかの判断基準があって良かったはずです。)。空気環境では、ホルムアルデヒド対策の新法が施行され世界一厳しい基準にもかかわらず使用材料の等級だけで評価されています。音環境では鉄道や高速に面しているか否か・繁華街か閑静な住宅街か否かが評価軸にありません。光・視環境では、そもそも新法の採光基準に欠陥があるのが問題です。高齢者への配慮では、最低限の仕様なので、個別の情況に応じたものになっていません。これらの理由で、家電製品の性能表示とは自ずと異なることを認識しておく必要があります。
 評価書には、性能項目毎に等級と種類が記載されています。設計住宅性能表示制度は、性能を単純に比較できる面では大きな意味がありますが、詳しい評価内容を見ていくと、建築専門の人間でも理解するのがかなり難しいものになっています。
 評価を受けていても、住宅でもっとも問題になる音環境性能は任意項目なのでまず受けていないと思って間違いありません。
 超高層住宅は、耐震性、耐風圧、劣化軽減(高耐久コンクリート)、防災、火災時の安全と避難等がより高いレベルで法的に規制されます。サッシュやガラスも風圧力や雨に耐えるために遮音性能も自動的に高性能になります。北側住戸の光環境も天空日照を受けて良い環境になりますので中高層住宅との比較はできないと言えます。
 『建設住宅性能評価』は、施工中と施工後に検査が行なわれ発行されるものです。入居後、表示の事実と異なるなどのトラブルが生じた時に、国土交通大臣が指定する『指定住宅紛争処理機関』に申請すれば紛争処理の仲裁役になっていただき、円滑に問題解決が可能となるものです。当然、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価の内容は一致するのが基本です。その意味で建設住宅性能評価を取得した物件は、性能面においては、評価書の内容通りに正しく出来ている可能性の高い物件ということになります。ただし、これを取得している事例は大変少ないのが現状です。
 遮音性能がどんなに高くても、充分ではありません。各部の性能を明らかにしてどこが弱いかを知り、日常生活でどのように注意を図れば良いかを確かめることが大切です。

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1.明らかになっていない音環境性能
 マンションの性能は、品格法の施行に伴い、新しい時代を迎えました。
 ところが、遮音性能は、任意であるため、まず評価対象にはなっていません。
 当事務所では、敷地周辺環境によって異なる内外(サッシュ類)の性能を任意で残しても、室内の音環境を義務化すべきだと思っています。いずれ改善が望まれることです。



2.音環境性能の実態
 品格法の音環境性能は、内外の遮音基準と室内に関しては床・壁の基準だけになっています。間取りの評価は含まれていません。
 そのためドアや造作類による騒音発生についても新たに評価対象にすべきだと考えています。
 面材の遮音性能は、空気伝搬音衝撃音(重量賞芸音・軽量衝撃音)に分けられます。空気伝搬音は、外部騒音が内部に伝わる場合と人の声やステレオの音等が一旦壁や床を介して隣戸に伝わる音です。衝撃音は、直接または間接的に壁や床が衝撃を受けてそれが隣戸に伝わるものです。いずれも本来は床・壁に性能値が与えられるべきですが、壁は一般に空気伝搬音で、床は衝撃音で代表されます。
 音問題は、マンションで最も大きな問題なので、いずれのディベロッパーもかなり意識して住戸の床壁に性能はかなり高性能になっています。
 マンションの騒音問題は、一般に環境騒音より内部騒音でもめる傾向があり、閑静な環境のマンションで発生しやすいと言えます。そのため、音問題に関して高性能なためにかえって問題になる可能性も秘めています。



3.外部遮音/サッシュ・玄関ドア
 立地条件と、敷地内条件(環境騒音)で決まる性能です。性能評価では、B25db(JIS:T4〜T2)、A20db(JIS:T4〜T1)、@その他の三段階で方位別に表記されます。JISでは以下のT(4〜1)で表されます。
等級(T) T4 T3 T2 T1 その他
サッシュ区分 二重サッシュ 防音サッシュ+複層ガラス 遮音性能に優れたサッシュ+単層ガラス 複層ガラス 単層ガラス
環境の想定(目安) 線路に面する等 繁華街や幹線道路に面する等 住宅街 特に閑静な住宅街
注)サッシュ区分はメーカーの商品によって厳密なものではありませんんが、一般的な区分です。この性能は、むしろその建物が置かれている環境に適した性能になっているかが重要です。
 また一般に引き違い戸は性能が劣ります。T2クラスまではサッシュ枠で決まり、T3になると複層ガラスにしないと性能が確保できません。また、コストバランスや結露対策から、北側住戸のみ複層ガラスにしているケースもあり、方位で性能が異なる場合もあります。
 敷地内騒音の関係で低層階では性能アップが求められることもあります。



4.内部遮音

(1)間取り

@設備等の発生騒音との関係
環境騒音とは別に、建物内のエレベーターやエレベーター機械室、自動ドア、各種設備機械室、機械駐車設備等との関係によって判断されるものです。実際の発生騒音がどの程度住戸に影響するかは、様々なデータを集めないと判断できません。
A隣戸との関係
・隣戸、上下階の隣接する部屋が同じ用途(居間、個室、水廻り)になっているのが理想です。
・隣戸の個室に脱衣室や浴室が面している場合は、特に問題があります。
B浴室・脱衣室・便所等の遮音対策(住戸内遮音)
・個室に浴室・脱衣室・便所が直接面しないのが理想です。
・個室に面する浴室・脱衣室・便所の壁は、ボードを二重にしたり、壁内に遮音材(グラスウールやロックウール等)を充填していれば少し緩和されます。
・専用部に共用パイプシャフト(通常排水管)がある場合は、配管仕様と配管の周りにグラスウール等が巻かれているか確認します。個室に面する場合は、加えて壁の遮音対策を講じてあれば安心です。

(2)床遮音
 床の音問題が一番発生し易い傾向があります。そのためいずれのマンションもかなり性能がアップしています。
1)床重量衝撃音(LH)
 重量衝撃音とは、かかと歩きをしたり、子供が飛び跳ねたりする時の騒音です。主として床スラブ(床板)の厚みで決まります。表内の丸数字が性能評価の等級です。最近のマンションは大半がC等級です。
等級(LH) D50 C55 B60 A65 @その他
学会基準解説 遮音性能上望ましい 遮音性能上ほぼ満足し得る 遮音性能上最低限度 遮音性能に劣る
スラブ厚cm 25* 20 15 12
注1)上記は、均質単板スラブを想定したもので、小梁で囲まれた面積や特殊スラブ(アンボンド工法、中空スラブ等)等の採用によって異なります。また、厳密には仕上げ材の影響もあること、生活上は部屋の用途によっても異なること、上下階の部屋の用途によっても推奨値が変わるので上記の数値は目安です。
注2)*印は、手元に根拠ある資料が無いので推定寸法です。
2)床軽量衝撃音(LL)
軽量衝撃音とは、椅子の擦れる音やサンダル・スリッパ音、小くて硬い物(スプーン等)を落したりするときに発生する音です。ほとんど仕上げ材で決まります。表内の丸数字が性能評価の等級です。最近のマンションは大半がD等級です。
等級(LL) D45 C50 B55 A60 @その他
学会基準解説 遮音性能上特に優れている 遮音性能上望ましい 遮音性能上ほぼ満足し得る 遮音性能上最低限度
注)厚手のカーペットを使えば、12cm程度のスラブでもLL40(最上級のさらに上)になります。リフォーム時に既存の仕上げ材より低い性能の材料に変えると問題が発生しやすくなります。管理規約に明記され許可制になっていることが重要です。
3)床の詳細
@床遮音の測定データ
床遮音の測定データがあれば受領します。
A直床と二重床
床仕上げは、直床の場合と二重床の場合があります。
直床はシンプルで良さそうですが、発生騒音源が床に接していると、簡単に下階に伝わってしまうことがあります。例えば洗濯機騒音やドアが煽られた時の音です。
二重床の意味はもともと設備配管を床上配管しながら、段差解消も目的として使用するものです。ところが古くは、木材等による根太組工法によっていたため、かえって床が共振現象を起すことが問題でした。そこで、ゴム系の緩衝材を使ってある程度の解決を見ていますが二重床だからと言って安心はできません。二重床自体が太鼓現象を起こすことがあるからです。また、軽量衝撃音が重量衝撃音のように共鳴して聞こえることもあります。この他、浮き床工法と言って床全面に緩衝材を敷き詰めたあと、再度コンクリートを打つ工法がありますが、コスト面で住宅で採用されたケースは聞きません。最近の二重床は、下部に吸音材を置く方法が一般的になってきました。これは二重床の弱点をカバーするためのものです。
B小梁の配置
小梁の配置を設計図で確認します。床スラブの小梁で囲まれた面積は通常25uが標準で、住戸面積が100u前後なら十文字や3分割になっていれば安心です。面積が大きくなると板振動を起こし易くなり重量衝撃音に対して弱くなります。
C特殊な床
特殊な床(中空スラブ等)の場合は同じ厚みのスラブでも遮音性能が悪くなります。
4)床の空気伝搬音
 床の空気伝搬音が問題になるのは、比較的少ないのですが、情況によっては起こり得ます。床の重量衝撃音の性能が低い場合です。また、二重床は伝搬音を減衰させますが直床は不利になります。

(3)戸境壁の遮音
@戸境壁の遮音(D、Rr、TLD)
表内の丸数字が性能評価の等級です。最近のマンションは大半がB等級です。
等級 C55 B50 A45 @その他
RC換算戸境壁の厚みcm 26 18 12
注)RCの戸境壁でC等級の場合、コンセントボックス等は壁に埋め込むことはできないことになっています。
A戸境壁の詳細
@戸境壁の設計遮音性能値
戸境壁の設計遮音性能値があれば確認します。ボードのみの工法(スタッド有りとスタッドレスがあります)の場合ボードメーカーが遮音性能値を公開しています。その場合、コンセント等の壁埋め込みが無いことが条件になります。
A戸境壁遮音の測定データ
戸境壁遮音の測定データがあれば受領します.
BRC壁とボード壁
戸境壁は、RCの壁だけの場合と、ボードを使って仕上げる場合、ボードだけの場合があります。RCの壁だけの場合は、壁厚で類推できます。
CRC壁+ボード壁
RCの壁にボードを使って仕上げている場合は、販売図面の戸境壁の表現が二重になっているので解かります。RC壁の仕上げにGL工法(だんご状の接着剤でボードを貼る)を採用すると太鼓現象が発生して1段階程度性能が下がってしまいます。また、木やスチール製の軸組(下地材)を壁に直接取り付ける場合も性能が落ちます。軸組が上下支持であることを確認します。ただし、ペーパーハニカム付き石膏ボードを用いたGL工法は、RC直仕上げとほぼ同等の遮音性能が保持される実験結果があります。
D戸境壁の断熱材の折り返し部分
戸境壁の断熱材の折り返し部分の納め方が重要です。全面二重壁として、断熱材を敷設している場合は問題ありませんが、直仕上げの場合の納め方(断熱モルタル、断熱材+GL工法等)を確認します。断熱モルタルが理想です。さすがに最近はGL工法は少なくなりましたが遮音性能体験も含めてチェックします。
Eアウトレットボックス類の打ち込みの有無
等級Cになると戸境壁面に電気のアウトレットボックスがあると、遮音上の欠損になります。アウトレットボックスがある場合は、木やスチール製の軸組(下地材)を使った二重壁(図面で線が二重になっているかが重要)になっている必要があります。
3)戸境壁の衝撃音
壁の遮音性能は、通常空気伝搬音だけで評価されますが、衝撃音が問題になるケースもあります。鉄筋コンクリートの直仕上げの壁でゴルフボールを壁に当てたり、収納扉類の取っ手が壁に当たる場合等です。この音は高周波で『ピシッ』というような音になります。そのような場合は、いくら空気伝搬音の性能が高いからといって安心はできません。またこの音は隣戸だけでなく広範囲に伝わる傾向があります。そのため、管理組合で問題になり、調査したら上の隣戸ではなくさらにその上だったりすることもあります。

(5)その他
 以下は大変些細な内容の様ですが、過去の経験からしばしば指摘事項になる項目です。改善される場合は多くないのですが、高性能物件でも落とし穴になっていることが多いのは残念です。それではモデルルームを作った意味がありません。高額高性能物件でも意外に配慮もれになることが多い項目です。
@二重天井
 遮音上の性能アップはほとんどありませんが、特に高性能スラブで直天井になると、埋め込みボックスが遮音上の欠損になることがあります。
A引戸や折れ戸類の閉鎖音
サッシュを含めた引戸や折れ戸類を締めた時の音は意外に響きます。対策を講じているか確認します。
B戸当たり部分の諸消音、ラッチの仕様、煽り止めの有無
ドア類の戸当たり部分の音鳴り対策はゴム製の通しの緩衝材(ピンチブロック等)があると防げます。また、ドアのラッチが消音仕様になっているか確かめます。煽り止めが無い場合、強風時に煽られ一気に閉まる場合、大きな音が発生するばかりでなく、ガラスが嵌めこまれたドアではガラスが割れることもあります。
Cアームストッパー類の音鳴り
アームストッパー類はかなり大きな音がすることがあります。隣戸に近い場所に無いかを確認します。また直床の場合は音が下階に伝わり易くなります。
D戸境壁に当たる扉類
開けた時に戸境壁に当たる扉類の音発生の防止の工夫があるか確認します。
E収納扉類の閉鎖時の音鳴り
収納扉類の音では、閉鎖時の音鳴りが代表的です。引き出し類では開けた時に音がする場合もあります。@マグネットキャッチの音、Aクイックキャッチによるフラッシュドア当の共鳴です。マグネットキャッチだけならばさほど大きな音は出ませんが、最近はマグネットキャッチを使わず、クイックキャッチ付きのスライド丁番が大半のため、驚くような音がすることがあります。繊維板等の1枚板の扉を使っている場合音は小さい傾向がありますが、収納本体が共鳴してしまう場合もあります。一番簡易で良いのはクイックキャッチを使ってスポンジゴムを緩衝材に使うことです。さらに配慮された物件では、クイックキャッチと消音ダンパーの併用です。これは完璧と言って良いでしょう。
F吊り戸棚類
吊り戸棚類も上記同様でさらに耐震ラッチが大きな音をたてる場合があります。
G便器の消音対策または遮音対策
便器の消音対策または遮音対策を確認します。サイホン式でもコックをひねる音が結構下に響くことがあります。直床の場合は、便器下の緩衝材があるのが理想です。
H洗濯機の振動発生時の消音対策
洗濯機の振動発生時の消音対策が講じてあるか確認します。二重床は有効です。
Iディスポーザー
ディズポーザーがある場合はその遮音対策について確認します。
Jウォーターハンマー対策(減圧弁等)
防止水栓の採用や減圧弁が有効です。
K消音型給気口
換気の給気口周りにエアコン室外機があるのは良くありません。 消音型になっているか確かめます。
L閉鎖時のラッチのかかり
ドア類は軽く締める動作でラッチがカチッと掛かるのが理想です。しかし、調整が不十分だったり固めのピンチブロック(緩衝材)の場合、ラッチがかからないことが良くあります。その場合、煽り止めは役に立ちません。閉まらない場合は、確実に手で閉める必要があります。
      
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