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  2005年11月
   地下室の作り方


 平成6年の基準法改正で、住宅の地下室は容積率の対象から除外されることになりました。以来、地下付き住宅がかなり建設されるようになりました。
 例えば、敷地面積120u、建ぺい率50%、容積率100%の敷地には、最大で、地下60u、1階60u、2階60u、合計180uの住宅になります。これに駐車場や小屋裏収納を加えればかなりのスペースが建設できるようになったわけです。



1.地階(地下)の定義

 建築基準法には地階(地下)の定義があります。地階の定義を満たさないと、地面を掘っても地下にはなりません。
@天井が地盤面から1m以下にあること
A床が地盤面以下にある階で床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上あること。 
 
注1)斜面地の場合の地盤面は、建築物が周囲の地盤面と接する位置の平均の高さにおける水平面とし、その接する位置の高低差が3mを超える場合は、その高低差3m以内毎の平均の高さにおける水平面をいう。
注2)ドライエリア(からぼり)を設けた場合、その水平距離が2mを超えると地盤面算定位置がドライエリアの床面になる自治体があるので注意が必要。



2.地下に設けられる部屋の用途
 地下室は、採光、換気、非常時の避難等に相応の工夫をしないと居住性の良い部屋にはなりません。そのため、部屋の四周が地中にあって窓が設けられない部屋は寝室としての利用はできません。一方音楽室やオーディオルーム、陶芸や絵画のアトリエのほか、悩ましい収納の場所としてかつての蔵や作業場に適する場所として有効に利用できます。
 地下室に水周り(トイレ、流し台)を設けるのはできれば避けたいところです。公共排水桝とのレベル関係によるのですが、それより低い場合は2重ピットを設けて、排水を一次貯留しポンプアップするといった大型建築並の細工が必要であり、床付け面(構造体の最下端)が深くなって大幅なコストアップにつながります。また、定期的清掃費用も馬鹿にならないでしょう。



3.地下のメリット・デメリット
1)メリット

@土地の有効利用
 単純に今までの5割増しの空間が得られることになります。土地の有効利用という視点で極めて意義のある法改正であったと思います。
A地下の特性を生かした利用

・遮音性
 遮音性の高い部屋にできます。音楽練習室やリスニングルーム等に最適です。
・温度安定性
 地中にあるので年間を通じて温度が安定しています。。このメリットを利用した貯蔵庫として利用する場合は、ドライエリアは設けず断熱も避けます。
・プラスαの空間
 余剰スペースが生み出されたことによって生まれる新しい生活像が実現できます。絵画・陶芸・日曜大工等の趣味の空間、トレーニングジムや卓球等の室内スポーツスペース等に利用できます。


2)デメリット
@建設費は割高になります。水周りの設置は特に避けたいところです。
A採光・換気に配慮しないと、良い居住性は得られません。
B結露し易い傾向があります。



4.地下付き住宅に適する土地

 平坦な敷地に地下を設ける場合、掘削工事が大変なこと(工事費が高くつく)、湧水(壁床から進入した地下水)の排水のためにポンプが必要なこと、通風条件が悪いため24時間換気が必要になること等のデメリットがあります。
 地下付き住宅に適した土地は、道路面から地盤が2m前後上がっている土地です。地下条件を満たし易く、掘削工事車両も直接入ることができ、水周りを設けても、2重ピットやポンプなしで自然勾配で排水できることが多いからです。



5.地下の作り方
 地下室は、鉄筋コンクリート造が一般的ですが、ドライエリアをきちんと設ける場合、木造やプレハブ製品も考えられます。その場合、地下1階・地上2階であっても構造上は、3階建ての扱いになりますので注意が必要です。
 また貯蔵庫としての利用の他は、できる限りドライエリアを設けて良好な環境を作るのが理想と言えます。

1)地下の止水

 ボーリング調査で地下水位が低い位置にあっても地下の湧水対策は行った方が万全です。
@外防水
 最も推奨できる防水。ただし、敷地に余裕が無いため作業ができないような場合は止水壁でカバーしたり、内防水または2重壁方式を採用します。住宅では、小型の地下室の場合に適した工法と言えます。
A内防水
 地下の被圧水による防水層の剥離が考えられるので、押さえこみが必要になります。かなり重装備になるので、最近は殆ど施工例がないのではないでしょうか。住宅では10年保証が得られる浸透型内防水(土木工事でよく使われている)を利用し、断熱剤として現場発泡ウレタンを吹付ける工法を推奨しています。
B躯体防水+二重床・2重壁
 防水を躯体防水程度で済ませて、2重床・2重壁を構築し、間に入った水をため桝からポンプアップまたは排水する方法です。大規模建築で多く用いる工法です。
床の湧水対策
 ドライエリアを設ければ、床面の湧水対策だけですみます。床面の湧水は、湧水マット(メーカーによって呼び名が異なる)がお勧めです。
 大規模建築物では、地下に2重の床(ピット)を設けそこに各種の水槽を作って、一次貯留します。地下に水周りをどうしても設置したい場合は、傾斜地を選ぶか2重ピット方式になるでしよう。
・壁の湧水対策 
 ドライエリアがあれば、室内の湧水対策は必要ありません。ドライエリアを設けない場合は、二重壁や二重壁に代わる各種の既製品(薄型なのでスペース的に有利)が用意されているので、それを利用します。



・地下の止水は万全に行った方が懸命です。せっかく作っても使えなかったというような話も耳にするからです。門屋総合設計では、開設者が経験して来た数々の有地下建築物のノウハウを活かします。













躯体防水とは、コンクリート構造体に防水性能のある混和剤を混ぜて打設し、Pコーン(型枠を押さえるための鉄筋の穴)廻りの止水加工等で対処するものですが、防水としては完璧でないため、必ず別の止水工法を併用します。

2)結露対策

 地下の結露対策は、夏季が中心になります。結露の現象を良く理解しないと、日常生活の中で逆の運用をしてしまうことがあるので注意が必要です。
@結露
 結露は、温度と湿度の関係で決まります。結露するとカビがはえてしまいます。
A壁・床が冷える理由と結露対策
 夏の地下室は、地中温度の影響を受けてかなり涼しい環境になります。断熱材を施してあっても定常状態(安定状態)になればひんやりします。
 四周を地面に接する地下室の床・壁、ドライエリアを設けた場合の地下室の床と床から30〜50CM内外の壁は、地中の冷気を受けて表面温度が下がり結露する可能性が高くなります。そのため安易に換気すると逆効果になります。結露が発生しにくい仕上げ材を選ぶと同時に、除湿機を設けると多少効果がありますが、最も確実なのは冷房によって冷えた床や壁に接する空気温度を下げると同時に、冷房による除湿効果によって結露を防ぐ方法です。梅雨時の洗濯物を室内で乾かす最も有効な方法が冷房することと似ています。
B他階との関係
 他の階と吹き抜け等で一体の地下を作る場合は、特に注意が必要です。空気中の水分は一体の空間ではどこも同じ(絶対湿度は同じ)になるため、上階は問題なくても地下部分では相対湿度が上がって結露条件がそろってしまいす。この条件で結露しにくい環境を作るには、断熱対策は勿論のこと、地下の床・壁仕上げを結露しにくい材料(木質系材料、厚手のカーペット、珪藻土、ゼオライトパネル等)の選定が不可欠です。



・断熱・気密・結露へのリンク
3)換気と気流
 換気は生活空間として最小限必要ですが、もともと地下のメリットである温度安定性を利用する目的があるのならば、換気は逆効果になります。また、結露の原因にもなります。しかし、せっかくの地下ですから、音楽室や音を発生する各種アトリエ等の作業スペースに相応しい環境を提供してくれるスペースでもあります。そのような場合は、結露の原因となるのを承知で換気する工夫が必要になります。
@換気
 換気は、一般には機械換気に頼るしかありません。特に夏季の場合、高温多湿の外気を取り込むと結露します。それを防止するためには全熱交換機のついた換気扇を使います。自然換気は、外部の風のなりのままになるので、安定した環境を作ることはできません。理想的には冷房機を併用し、室内温度を下げて除湿するのが一番です。
A気流
 室内の空気は、気流が無いとそれが接する床、壁の温度条件になじんでしまいます。同一空間内の絶対湿度は一定ですから、冷やされた壁や床に接する空気の温度は、その影響を受けます。そこで気流を発生させることで、室内温度を平均化し結露防止の効果を期待する方法は、一般的に一応の効果はあります。結露した部分あるいは結露しかけた部分の水分を別の空気に常に置き換える考え方です。
 ところがこの方法は万全ではありません。気流による蒸発効果と気流による表面温度の低下による結露発生は実は表裏一体で、なかなか簡単には解決策を見出せません。温度と湿度をコンピュータシステムで解析し露点に達しないシステムは技術的には可能ですが、建設コストとの相談になるでしょうから、運用を気にせず期待値の高いシステムは冷房しかありません。
B地中の有毒ガス
 地域や外部条件によって空気より重い有害ガスが地下に流れ込むことがあるので、適切な換気設備を選択します。都心の埋立地等では、要注意です。


・通風・換気へのリンク

4)採光

 暗室やホームシアターとして利用する場合も、完全な行燈部屋は避けるべきです。
@出きる限り自然採光が得られるよう工夫します。
Aドライエリアを設け、壁面から採光する方法と、トップライトを設けたり、1階との間を吹き抜けにしてそこから採光する方法があります。建築基準法では敷地境界線からの距離に応じて採光に有効な窓の規定があります。従って窓を作っても採光上有効にならなければ、無採光居室の扱いになります。



・採光へのリンク

5)遮音対策
 地下の多くはコンクリートにしますので、壁は自ずと遮音性能の高い構造となります。窓を設ける場合は使用条件に応じた性能の防音サッシュを選択します。
 ドライエリアがあれば、音がさらに減衰するかと思うと必ずしもそうではなく、特定の周波数帯域で共鳴することが予測されます。特に換気扇部分が弱点になりますので、遮音性の高いダクトや消音ボックスを設置して減衰させます。

6)火災時等の避難ルート

@火災等の場合に避難ルートをどのように確保するかがポイントになります。
A法律で定められた与件を満たすだけてなく、リスクに対してどのように対処するかを、設計者と共に考えておきましょう。
本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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