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  2005年3月
   アレルギー/カビとダニ


 日常生活の中でカビとダニが嫌われるのは、カビによる汚れやダニに刺される不快感でした。
 カビは木造住宅の構造体を腐らせ、かつて高断熱を推進した北海道で大騒ぎになったことがあります。またダニは、各種の伝染病の媒体になる動物です。
 一方、住まいのカビとダニはアレルギー症状の原因であることが解って以来、建築業界では、結露防止のための工夫に全力を尽くし、家庭用品業界では様々な、除湿剤、除去剤、殺虫剤が考案されてきました。
 このページは、主としてアレルギーに焦点を当てその原因となるカビ・ダニの紹介と発生防止を中心に解説しています。



1.アレルギー疾患
1)アレルギー疾患の種類
 アレルギー疾患は、花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、小児喘息、気管支喘息等、医学のプロでなくともそれぐらいは浮かんで来ます。



・健康住宅へのリンク

2)アレルギー疾患とは

 アレルギーとは、人体の免疫系反応(抗原抗体反応)のうち、本来ならば人体を守るしくみのはずが、反応にともなって人体に有害な物質を放出してしまう過剰反応です。そのときの抗原をアレルゲンと言います。誰にでもおきるわけではなく、個人によって異なります。
 アレルゲンには、花粉や食物、ハウスダストやダニあるいはダニの糞、カビを始め、金属などもあって全ての物質にあると言われています。従って住まいを設計する際には、住まい手が反応しやすいアレルゲンチェックしておく必要があります。

3)アレルギー発生を避けることは自分を知ること

 全てのアレルゲンを排除することが理想ですが、生活そのものが成り立たないでしょう。成立してもとんでもないものになるでしょう。それより、自分にとってのアレルゲンが何かを知っておくことが最も合理的です。
 花粉やカビ、ダニのアレルゲンには加齢とともに反応しやすくなるといわれていますが、花粉は換気設備の工夫、カビは通風・換気や断熱、ダニは清掃によってかなり排除できます。



2.カビ
 カビは人間にとって最も関わりの深いもののひとつです。酒、味噌、納豆、チーズ等は人間にとってカビが貢献しているものです。
 そのようなカビが実は、アレルギーの原因になっているのはシックハウス症候群のVOCにも良く似ています。


1)カビ発生の原因
 カビは、温度相対湿度栄養源の3要素が揃えば発生します。食品等の場合は、酸素が加えられますが、住まいでは、完全密封は人間の生活があるために、ここでは3要素に限っています。温度は、25度を中心に20〜30度、湿度は70%以上、栄養源は住まいの中のほとんどのものが成り得ます。中には、0度近辺を好むものもあります。種類によって多少の差異がものの、人間の好む環境に比べて、やや高湿度で暗い部分を好む傾向があります。
 高湿度部分とは、温度が相対的に低く風の流れが悪い場所です。キッチンや浴室、トイレ等の水を使う場所のほか、押し入れや家具の裏、木造の壁内などの結露しやすい部分が危険個所になります。また、建物の部位だけではなく、寝具や収納物、食材等にも発生しますから、単に建築的な対策だけでは不充分で、日常的な清掃や換気等住まい手の日常作業に頼らざるを得ない部分もあります。

2)カビ発生を防止する方法
 カビ発生を防止する方法は、前項の3条件を満たさないようにする工夫にあります。1つでも欠ければ発生を抑制できます。
@栄養素
 カビの栄養素は、家庭内のほとんど全てのものが対象になるので、栄養素を無くすことはできません。しかし、汚れをまめに取り除くことで、多少の効果が得られます。
A温度
 一部のカビを除き、人間と良く似た環境を好むので、退治のためにわざわざ、好まない環境を作るのは懸命ではありません。
B湿度
 カビの好む生息環境が、相対湿度70%以上であるのは、ダニと同じです。さらに一部のダニは、カビとの関係が深いので、湿度を70%以下に押さえることに最も効果が期待されます。
 局部的に湿度100%になっている部位が結露部分です。結露防止は、カビ発生に絶大な効果があるといえるでしょう。

3)カビの種類と発生場所一覧

俗称 名称 特徴
青カビ ペニシリウム 押し入れ等。低温を好む。
赤カビ フザリウム 水場や結露部分、エアコン内部を好む。
黒カビ クラドスポリウム 水場や結露部分エアコン内部を好む。
あずき色カビ ワレミア 比較的乾いているところ。押し入れ・畳・カーペット。
コウジカビ アスペルギウス 押し入れ等。低温を好む。アレルギーの代表的な原因となっているカビ。
カワキコウジカビ ユーロチウム 比較的乾いているところ。押し入れ・畳・カーペット。
ススカビ アルテルナリア 水場や結露部分、エアコン内部を好む。

4)カビの発生し易い場所・時期と対処方法
 カビの発生し易い場所は、通風が悪く、比較的低温で暗い場所や水を使う場所です。タイトルの/以降のコメントは特に注意しなければならない時期を示しています。人的な補助努力や機械換気によって必ずしもそのとおりではありませんが、気をつけなければならない時期を重要度順に表しています。
@押し入れ、家具の裏/梅雨、冬季、通季
 北側の押し入れや家具の裏は、カビの発生し易い場所の代表例です。理由は、多くが北側にあり温度条件が低いために室内の他の部分より相対湿度が上がってしまうこと、特に布団には、夜間の人体からの発汗による水分を多量に含んでいること、換気がしにくい構造になっていること等です。こまめに布団を干すことが最も効果的です。
 押し入れや納戸は、建築的な手法としては、調湿機能を持つムクの木材を仕上げ材として使ったり二重壁にして通風孔を設ける方法が考えられます。また同様の方法で住まい手側で木製のスノコを用意して、通風を得る方法が考えられます。
 家具裏は、5cm程度あけると良いと言われています。また、天気の良い日中には、部屋全体の換気を心がけると効果があります。
A部屋のコーナー/冬季、長期不在時
 時々室のコーナー部分も発生することがありますが、これも室内気流がコーナーには廻りこみにくいために、温度が下がり相対的に湿度が上昇することによって起こります。
Bタタミ/竣工後の一期間、梅雨
 日本では、タタミは年に1回虫干しする習慣がありました。特に鉄筋コンクリート造の住宅で、コンクリートスラブに直接敷いている場合は、竣工後2〜3年は必ず行っておいた方が万全です。ダニ発生防止にも効果が期待できます。
C水廻り
・浴室/通季、特に夏季
 水廻りのうちで最もカビが発生しやすいのは、浴室です。特に冬季は、温度が低くなりますから、何もしないで給湯すれば、空気は簡単に露点に達して結露してしまいます。また、壁が冷たくなっていれば表面結露します。
 もっとも賢い方法は、まず適切な断熱です。窓は複層ガラスにします。給湯時は、浴室暖房機を使って浴室内を暖めておきます。入浴時は、換気扇に切り替え、廊下や脱衣室の空気を取り入れて換気します。脱衣室には、できれば暖房機を設置しておきます。
 実際は、カビが発生し易いのは、むしろ夏の方です。これは、温度条件が夏の方が揃い易いためです。

 浴室は、その性格上必ずカビが生えると言っても良いでしょう。そのため、カビが生えても除去しやすい材料が選定されているのは、ご存知の通りです。そのため、定期的な清掃が不可欠になります。
・キッチン/特に冬季
 ガスの燃焼や沸かしものによって、多量の水蒸気が発生します。換気扇は必ず回すように心がけます。また、食材のほかにも、料理作業に伴って様々なものが飛び散りますから、日常の清掃が大切です。
・物干し場/梅雨、冬季
 室内を物干し場に使う場合は、湿気がこもってカビ発生の原因を招くことがあります。換気に注意しながら湿気がこもらないようにします。換気扇を設置した専用の物干し室を設ければ万全です。
 夏季の乾燥は、実は冷房による除湿が効果があることも報告されています。
Dエアコン機器内部/通季
 空気清浄機の内部が実は、カビの巣になっていた、なんて笑えない話しがあります。エアコンは使い方が悪いとカビ発生の巣になります。特に夏季は、冷却部分に水滴がたまり易いために、運転後は、送風運転を行って乾燥させると効果があります。
 フィルターはこまめに清掃するようにします。
E木造の床下/夏季
 木造の場合の床下は、布基礎の場合地面の湿気に直接さらされています。古い民家の縁の下は、独立基礎のため開口率100%の場合や、木造の格子をつけた場合でも30%位はありましたから、理想的な環境にありました。
 現在の住宅は、最低でもコンクリートの布基礎が基本です。布基礎の場合は、換気口をつけても風の状況によっては、換気能力に限界があります。したがって、地面の湿気を受けないためにはベタ基礎にするのが1番です。
 ベタ基礎の場合、冬は、外気温より地盤温度が高いので、床下は乾燥状態になります。夏は外気温が地盤温度より高いために、床下空間は低温状態になっています。換気が有効に行われれば、床下が外気温になじむことになりますが、換気量が少ない場合、かえって高湿度になってしまう危険性があります。
 そこで、湿度70%を超えないように高断熱仕様にして床下を完全に隠蔽してしまう方法と、機械的に床下換気を行ったり、除湿する方法があります。
F壁の内側/特に冬季
 壁の内側のカビが、実は最も大きな問題です。一部には、内断熱工法をカビ発生の最大原因などと、決め付ける方がおられるようですが、これは、社会不安を招く極めて無責任な発言であって、地域や環境条件に合わない断熱処理が招いたもので、内断熱工法そのものに原因があるわけではありません。
 木造では、断熱材が壁内でずり落ちて、断熱層や気密層が形成されていなければ、結露が発生してカビが発生するのはあたりまえです。この場合は、欠陥住宅そもものです。また、鉄筋コンクリート造では、断熱材付きボードをGL工法(団子状の接着剤でコンクリート壁に直接接着する工法)で取りつける工法を採用した時期があって、北側の部屋で結露によって壁の剥離やカビがはえたケースが報告されています。現在では、打ちこみ工法や現場発泡断熱材を採用するケースが大半で、あとは、細部まで配慮された設計と施工がされていれば、まず大きな問題はありません。
 いずれにしても、壁の内側のカビは、木造では、構造体の耐久性自体にもかかわる深刻な問題を引き起こします。壁内のカビは、見えないために日常生活行為の中で除去することもできませんから、工事期間中に十分な乾燥を行うこと、気密層の適性配置、適切な断熱材の選定、開放型暖房機使用の回避、適切な換気等によって、ある程度は防止できるものです。

G寝室の窓廻り/特に冬季
 特に冬季の寝室、子供室、客室等の夜間就寝に用いられる室は、就寝中に水蒸気が発散され、窓廻りで結露が発生します。


3)カビの好む湿度を避け、結露を防止する条件

@湿度を下げる。
・夏季/除湿
 外気の湿度の高い夏特に、梅雨の時期は、自然換気だけで湿度を下げることはできません。梅雨時に外気を取り入れるとかえって逆効果になってしまします。天気の良い比較的湿度の低い日に限定して自然換気を行うほか、除湿機能のついたエアコンや除湿機利用が効果的です。
・冬季/換気
 冬期は、外気が乾燥していますから、通常の暖房を行っていれば、湿度は低くなります。開放型暖房機(石油ストーブ等)を用いたり、キッチンでの料理中に換気を怠たると水分が室内にこもるので、カビ発生に繋がります。寝室等では、夜間人体から発生した湿気が室内にこもります。その多くは、サッシュ廻りで結露します。高断熱住宅でも夜間の機械換気を行っていない限り湿気はこもります。午前中は、その湿気を換気で追い出し、午後は窓を閉めて、太陽光をたっぷり受けて室内を暖めておくようにすると効果的です。
 また、あたりまえですが、断熱も重要です。暖かい室内に冷たいものがあれば、その周辺の相対湿度が高くなり表面結露する可能性が高くなります。
A適切な換気
 換気には、2つの方法があります。自然の風を利用する方法と換気扇等の機械力によって換気する方法です。
・自然換気 
 日本の古い家屋は、自然の風の恵みをじつにうまく利用していました。今でも、風の外気の温度・湿度状況を良く見定めながら、自然の力をうまく利用して室内の湿気を除去することができます。
 窓の開け閉めをこまめに行い、湿気た個所を乾かすようにしましょう。
・機械換気
 現代の住宅は、アルミサッシュの普及によって気密性能が向上しました。その結果、今シックハウス問題が浮上しています。一方、省エネルギー施策の中で、高断熱・高気密化が叫ばれています。室内環境はますます、恒温・恒湿が求められています。
 高断熱・高気密化によって結露は発生しにくくなりますが、一歩間違えるとカビが発生し易い環境を作っているとも言えます。そのためにどうしても機械力に頼った適切な換気設備が必要になります。





・通風・換気へのリンク







B結露させない。
 結露を防止する方法は、断熱/気密・結露との関係を参照下さい。

4)発生したカビの除去

 ダニ同様、カビ発生を全面的に防止するためには、現代技術を駆使して、建物全体をシステム制御された人工環境におかなければなりません。技術的には可能であっても、経済状況が許してくれないでしょう。
 それより、日常の清掃や除去行為の方が投入費用対効果は高いと言われています。
@清掃による除去
 定期的な清掃によって除去します。水廻りなどでは、塩素系のカビ取り剤が最も普及しています。清掃の際には換気に注意しましょう。
 壁等のカビは、アルコールでまず殺菌します。完全に乾燥したら、薄めの漂白剤を使って色素のシミを落します。
A虫干し
 押入れや納戸の中は、どうしても換気状態が悪くなります。条件が揃えば多少なりともカビは発生します。虫干しによる乾燥によって菌糸を殺すと同時に、胞子を除去します。



3.ダニ

 ダニは、カビ同様、人間が望む生活環境に近い環境を好みます。従って、ダニとカビは良く似た環境で発生するということができます。

1)ダニの種類と発生原因
@家の中のダニの種類と生態
 ダニの種類は世界で約50万種(推定)、そのうち住居内に生息するのは、約150種程度とが発見されています。ダニは、寄生するもの、吸血するもの、自由生活性のものが居て、そのうち日本の住まいに多いものは、チリダニ、コナダニ、ニクダニ、ツメダニが挙げられます。
・チリダニ類
 住まいの中のダニの70〜80%を占める最も多い種類です。多いということは、人間の生活環境と最も良く適合したダニといえます。チリダニにの代表的なものは、コナヒョウダニとヤケヒョウダニがいます。いずれも温度10〜32度、相対湿度70程度で生息可能と言われています。このダニは、水分を空気中から採取しており、臨界平衡湿度といって、その湿度付近でないと生息できない性質があります。いずれも概ね70%程度が、臨界平衡湿度です。時に大発生するのはそのためです。餌は人間の皮膚などの室内塵です。生息するのは、タタミやカーペット等の床面、寝具類や座布団、椅子やソファーの繊維部分、ぬいぐるみなどです。箱物家具や窓枠に居るものは、風や室内気流で運ばれてきたものと考えられ、基本的には、床か繊維質什器等の這いあがれる部分を主な生活エリアにしています。
・コナダニ類
 自由生活型のダニで、チリダニに比べ少ないのですが、時に半数近く(10〜50%)を占めることがあります。主として稲科の植物を好み、湿った穀類や干草に大発生します。またアオカビやコウジカビ等の真菌類の菌糸をよく食べるので、畳での発生が多いことが解ってきました。気温25〜30度、相対湿度85〜90%の環境で生育します。
・ニクダニ類
 室内塵中の特に有機物のほか、煮干、鰹節などを餌にします。相対湿度85%でよく生育します。10〜50%を占めます。
・ツメダニ
 紹介したダニの中で唯一捕食性のダニで人を刺す事があります。他のダニを餌にします。住まいの中で占める割合は比較的少なく0.1〜10%程度になります。

2)ダニの防除
 ダニは、人間の好む温湿度環境生活環境と最も良く適合していますから、人間にとって気持ちの良い環境にすればするほどダニが発生しやすいと断言できます。高断熱・高気密住宅が結露を防ぎ、結露しないことによってカビの発生を防ぎ、カビを食べるダニの増殖を押さえることができますが、同時に住まいの中で最も多いチリダニが生息し易い環境を作っていることも忘れてはなりません。
 一般の住まいには、平均で1uあたり1200匹生息しており、多いところでは1万匹を超えることがあるそうです。アレルギー症状を軽減させるためには、100匹程度に押さえる必要があります。
 ダニの防除には、薬剤を使う方法、餌を除去する方法、温湿度を調整する方法があり、ダニの種類によって組み合せて除去します。定期的に、一定時間湿度を70%以下にしたり、低温または高温にする方法もありますが、それらより最も効果があるのは、清掃や天日乾燥による除去だと言われています。

3)ダニ発生の防止
@床仕上げを考える
 床材では、カーペット類とタタミに生育しやすい傾向があります。アレルギー症状の出やすい家庭では、カーペット類は、避けると良いでしょう。カーペットは、室内塵を吸着するので一時的には良いのですが、清掃を怠るとその分ダニの住みかになり易いからです。
 タタミは、乾燥していれば問題ないようなので、コンクリート床に直に敷くような場合は、十分乾燥養生したり床下の換気や湿気防止に配慮した設計が必要です。虫干しも効果があります。
Aダニの発生を押さえる
 コナダニやニクダニは、食料品を中心に餌とします。食料品はなるべく密閉容器に入れておきましょう。またコナダニは、カビを食べます。カビの発生し易い環境は、種類によっても異なりますが、概ね人間の好む環境よりやや高温で暗い個所、相対湿度70%より高湿度の環境を好みます。特に高湿度になる室や結露部位に発生しやすいので、適切な換気を行うと同時に、結露を発生させない工夫が必要です。




4.これからの住まい
1)究極のノンアレルギー住宅
 一般的な日常生活を前提にしながら、室内でのカビ・ダニの発生を最小にする究極の住まいを考えてみます。
@湿度を50〜60%程度に維持する
 室内の湿度は、40%あたりから、人間の生活にも支障をきたすようになります。従って、最低湿度は50%程度にしておいた方が無難です。一方、カビ・ダニとも70%または、70%以上で繁殖しますから、室全体では温度の偏分布も考慮して50〜60%程度の湿度を維持する必要があります。温度の他に湿度も安定的に調節するとなると、ダクトを用いた除湿・加湿機能のある高性能の空調システムが必要になります。
A気流を維持する
 湿度を維持するために温度を維持し、そのために室内の温度分布を一定に保つためには、室内全体に気流を作ることが必要になります。天井面で空気を噴出し、室の4隅で吸いこむ簡易ラミナーフローシステムです。
B押入れや収納の内部
 押入れや収納の内部にも機械的な気流を作り、温湿度を制御しなければなりません。
 以上のシステムを良く考えてみると、特殊工場や研究所並のとんでもない空調システムが浮かんできます。エネルギー使用量は莫大になり、フィルターもロール式フィルターを使ってメンテナンスフリーにする必要があるでしょう。温湿度条件を室内の隅々まで制御することは、それほど大変なことなのです。

2)高気密・高断熱・計画換気住宅で、カビ・ダニの発生を防止し、アレルギーはなくなるか?

 高気密・高断熱・計画換気住宅にすれば、今までの住宅に比べて、結露発生はかなり少なくなるのは確実です。しかし、本当にカビ・ダニは発生しないのでしょうか。
 答えは、NOです。まず、浴室には、確実にカビが生えるでしょう。押入れに湿ったままの布団を毎日しまっていたら、条件次第で発生すると考えられます。また、ダニは、湿度70%以上の環境がある限りは、発生を防ぐことはできません。開いた窓から風に乗って室内に侵入することもしばしばです。

3)これからの住まい
 カビやダニは、人間が好む生活環境より僅かに湿度が高い環境を好みます。さらに人間にとって住まい易い環境の中で、室内温度の偏分布によって、比較的低温の部分の相対湿度が高くなった個所でカビが発生します。ダニは、清掃によるハウスダストの削除が原点になります。
 梅雨時期は、外気自体がカビやダニに適した環境になるので、ある程度の換気遮断が必要になり、除湿をする必要があります。
 冬季の結露防止のためには高断熱をはかり、室内気流を確保するための機械換気システムの構築が必要になります。
 また、春・夏の一部・秋の3季では適切な自然換気をすれば、かなり防止できます。
 いずれ、宇宙生活に至ればカビやダニの根絶は完璧な人工的環境によって実現できるようになるかもしれませんし、エネルギー政策の抜本的な技術革新によって、可能になるかもしれません。そのときまで、単に機械に頼ることなく、日常の楽しみも合わせながら、努力して住まうことが大切だと思います。
 すでにカビやハウスダストによって極めて厳しい疾病にかかっている場合は、医学的な措置を選択するか完全空調システムを選ぶことになるでしょう。
本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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