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 2005年3月
   近隣環境・隣地との関係を考える

 地域環境を考えることと同時に、来訪者が建物のそばまでやって来たときの景観や隣地との関係を検証します。地域環境との関係とは明確に分けられるものではありませんので、ここでは建物の正面の顔と足元廻りをどのように作り、隣地との関係を考えるポイントをまとめました。



1.アイストップとはなにか

1)アイストップの構築の意味

 アイストップを構築することは、都市や空間を構成する上で極めて重要な手法です。都市や空間の秩序を明らかにし、ポイントとなる部分を段階的にアイストップが構築されていることによって、訪れる人々の移動中の楽しさばかりでなく自然に目的の場所にたどり着けることができれば、その地域の街づくりの構成と建物はかなり優れたものだと言えるでしょう。言いかえれば秩序を伴った暗示性のようなものだと思います。過去の歴史建造物は、必ずそれが意識されていました。


2)ランドマーク

 余談ですが、目的の建物を目指して、最初に目標にするのは、地域のランドマークです。ランドマークも広義のアイストップと言えます。日本であれば、五重の塔や現代の超高層ビル、西欧では教会のカリヨン(鐘楼)が当てはまるでしょう。ベネチアに行くと解りますが、道路というより路地に近い迷路のような道、方向も方位とはかなり振れていますから、建物の狭間を歩いていると完全に方向感覚を失うことがあります。そのとき役にたつのは、カリヨン。目的地に到達するこつは、林立するカリヨンの特徴を頭に刻み込むことです。デザインや傾き方(どれもこれもみんな傾いています)を頭に叩き込めば、ベネチアの即席案内人になれます。
 アイストップは、通行人や来訪者の空間移動によって段階的に移り変わって行くのが自然です。空間の結界=門、玄関、内部の扉というような結界を間に置いて、目的地に至る距離に応じて象徴的な建造物・構築物や樹木、建造物の部分、空間の装置というように移動していきます。
 さらにスケールダウンすると、住宅では、最初は建物シルエットや全体、次に建物の正面、そして門やシンボルツリー等に移って行くのが自然です。門がなければ玄関先付近のシンボルツリー等に目が止まるのが自然な構成になると思います。



2.建物の顔づくり

 周辺地域の中での顔とは別に、建築物には足元の顔があります。建物付近に近づいた時見える景観と言って良いかもしれません。『正面性』という言葉が良く使われます。人間に正面の顔と横顔と後ろがあるように、建物にも正面と側面と後ろがあります。また人が人を迎えるときは、必ず挨拶があり、迎え入れます。同じ様に、門や玄関の周辺には、それを促す空間と装置が必要になります。
1)正面性 
 正面性は、道路に向いた建物全体の表現です。よくあることですが、北側道路の住宅には、正面性が無いものが非常に多いですね。。大きな壁に水回りの小さな窓が散在し、下の方に玄関庇があるだけでは顔にはなりません。
 正面性は、かなり感覚的なところがあります。大きな窓があればそれで正面になるかというとそうでもありません。設計の際には、プランができた段階で、様々な検討(スタディと言います)を行い、適切な顔を見出し、さらにプランにフィードバックして行きます。





都筑の家正面

2)威圧感の軽減
@威圧感を感じる学問
 道路を歩いているとき、気持ちの良い道路が必ずあります。勿論並木の緑や立ち並ぶ建物のデザインが優れていれば、それが大きな理由とも言えますが、実は、仰角の心理的効果があるのは確実だと思っています。
 建物のシルエットによって描かれた風景の仰角が小さいと大らか(=散漫)で開放的・地方的な空間になります。大きい場合は、活性観があり、威圧的・都市的な印象があります。
 これについては、調査研究不足のため、具体的数値の公開はもうすこし時間をいただきたいと思っているのですが、経験的にどうやら1:1=端部で45度のあたりにターニングポイントがあるようです。
A威圧感を軽減する手法
 道路が狭い地域では、威圧感の軽減は重要です。威圧感は、恐らく人間に自然に備わった太陽光を取り入れる限界値がDNAにインプットされているのではないかと思っているのですが、まだそのような学問は聞いたことがありません。
 威圧感を軽減する手法は、道路に対して接する建物の部分が比較的近い方が活動的で、建物を階層毎にセットバックするのが最も優れた手法なのではないかと考えています。開放感はひなび感すなわち関係性より個が中心となる世界感に通じますから、物理的側面で活性化に結びつきません。




3.道路に面する部分の構築物
1)門・門扉

@門・門扉の作り方

 住まいの格式を重んじたり、伝統文化のひとつとして捉えれば、門や門扉は重要な位置付けになります。その場合は、建物の一部としてだけではなく、周辺環境を意識したデザインと素材選定が求められます。設備引き込みのメーター類は、この門にからめて1箇所にまとめ、目隠しを施した上で体裁良く収めると入り口周りが豊かになります。
 シンボルツリーや低木・地被類によす植栽、四季を感じさせる花々で演出します。
 また、地面の舗装にも気を配りましょう。アクセントパターンをつけると効果的です。

A門の設置位置
 門は、来訪者の安全性に配慮し、道路から少し離れた位置に設けます。塀より後退させると小さくてもちょっとした空間が生まれ、入り口らしさが生まれます。
B門扉のないオープンな住まい

 結界や到達観の表現ツールとして位置付けるのであれば、門扉を作らず独立した構えだけを建築的な表現で作ことができます。二本の象徴的な門柱、ミニ凱旋門のような構え、クライミングローズを這わせたアーチ型のゲート、作り方はいろいろです。
 日本ではあまり見かけませんが、西欧では、門も門扉も塀も無い作り方があります。敷地に余裕があって道路と建物の距離が大きければ可能です。セキュリティに心配があれば、塀と門を思いきり後退させる方法があります。前庭を2つのゾーンに分け、道路側をパブリックスペースとの緩衝領域とする方法です。


・門・門扉の作り方へのリンク

2)塀
@塀の作り方
 かつての住宅は、周りにブロック塀を作るのが一般的でしたが、ブロック塀は地震時の倒壊の危険性があり最近では、少なくなりました。通風上も不利になります。
あまり高くしないほうが威圧感が無くなります。透過性のある塀と植栽を植えればかなり効果的です。
 地域によっては、建築協定や条例によって透過性の無い塀が禁止されているところもあります。
 下の写真は、イタリアのフォルテ・デ・マルミで見かけた改修中の民家の塀です。透視性の良い穴明きレンガを使っています。恐らく長いこと空家になっていた様子で道路側は雑草が茂っていますが、日本ではあまりみかけない素材なので紹介しました。
A塀の設置位置
道路に面する塀は、歩道が無い場所や道路が狭い場合は、歩行者の安全を考えて少しでも後退したいものです。特に透過性の無い塀の場合は、間に植栽や花壇を設ければ、道路の環境形成に貢献できるでしょう。低木をリズミカルに植えれば、小さな街路樹になり潤いが生まれます。



・外部施設へのリンク


イタリア/フォルテ・デ・マルミの民家の塀

3)通行する人、迎え入れる人への配慮
@門まわり

 門や塀まわりの構成は、迎え入れる心を表現することが大切です。舗装材、植栽に気を配って、到達観を表現します。住まい手の手でちょっとした置物をさりげなく備えるのも良いと思います。

A塀周り
 草花で四季を感じさせる演出も大事です。


・アプローチの作り方へのリンク


飛騨高山


御手洗の門


角館の民家入口


都筑の家 玄関周り

4)カーポートの作り方

@住まいの中に取り込む
 カーポートを道路に面して作ると、いたずらされる危険や、景観の点にも難があります。なるべく建物内に入れる努力をします。車の寿命も長くなるでしょう。
A住まいの外に作る
 道路に面して設置する場合は、カーポートらしくしないのが肝心です。舗装も工夫します。車が出払っていれば、あたかも庭のように見えるスペースにしましょう。
専用の屋根を設ける場合は、建築面積に算入される場合がありますので注意が必要です。



4.隣地との関係

 隣家との関係の中で検討を要するのは、日照、視線、騒音、匂い等が挙げられます。
1)隣地への日照/建物の配置・位置

 住宅地で問題が発生するトップは、日照です。可能な限り距離をとるようにします。工事中の足場の問題もありますから、最低75cm以上とりたいものです。周辺建物が同じように並び、それらと同じように作ってあれば、問題も起きにくいでしょうが、北側住宅が、北側道路に面し、駐車場の関係で南側に建てられている場合で、当該敷地が長い間空地であったような場合は気を付けなければなりません。そのような場合には、それまでの日照はどうしても確保できなくなりますから、法律上日影規制が無くても、図面上に隣接住宅のプランを書き入れ、実質的な日影チェックはしておいた方が無難です。余談ですが、10mを超えていない住宅でも、実際に日影チェックしてみると、クリアできないことがあります。
 本来仲良く暮らさなければならない関係ですから、紛争防止のため、重点的にチェックを行い、建物高さを押さえる等の工夫が必要だと考えています。

2)隣地からの(隣地への)視線

 視線も同様で、隣地の建物の窓との位置関係は、チェックする必要があります。自分達が見られるチェックと同時に、隣地側の生活も考えておかなければなりません。

3)騒音
 騒音を生むものには、空調室外機、給湯ボイラーが挙げられます。燐戸になるべく近接しないように工夫します。ただし、日常的な生活騒音(声、浴室の水かけ音、子供の泣き声等)は、常識的な範囲で許されるべきでしょう。長くマンションに住んでいた方には、意外に思われるかもしれませんが、一戸建ての生活騒音は、良く聞こえるものです。
 ピアノやステレオは、夜10時を超えたら控えるのが常識です。もし、それ以降の利用がある場合は、遮音対策が必要になります。

4)臭い
匂いは、キッチン排気が代表的です。排気口の位置には注意が必要です。一時的に生ごみなどを室外に置くような場合は、運用で必ず蓋をしないと流れてしまいます。

5)地下を作る際の注意点

 地下を作る場合、『山留』という地盤の崩落防止対策をします。その際、紛争防止のため、工事に先だって、隣宅に事情をお話し『隣地家屋調査』を行っておきましょう。工事前と工事後で隣地(隣宅)への悪影響が無かった事を立証する調査です。



・敷地に余裕がある時は、オープンカット(掘り込んだ周辺は斜面になる)による方法がある。

6)隣地間の塀の作り方
隣地との距離が狭い場所に塀を作ると、死角ができるだけでなく、足がかりになって返って防犯上は逆効果になります。隣家とも相談しながら、塀を設けないのも一つの解決策です。

本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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