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  2005年3月
   外部施設(外構)の作り方


 住まいの外周り(外構)の設計は、建物と一緒に考えます。隣地や道路との関係を意識しながら、そこで行われる生活のイメージを考えていきます。



1.外部施設(外構)計画のポイント
 外構設計の上手なやりかたは、建物設計と同時に進行することです。植栽の実施設計は、遅くなってもかまいません。
1)地域に向けた風景づくり
 外構設計のスタート地点は、地域環境とどのように調和するかを考えることから始めます。また、地域に向けた修景づくりや、来客を迎え入れる場をどのように構成するかも考えます。
 街を歩いていると、目にとまる住まいは必ずと言って良いほど、外構が豊かです。覗いて見たいと思わせるような、景観になれば大成功です。

2)室内から見える風景づくり
 美しく整えられた庭は、室内から眺めても気分を和らげてくれます。樹木の他に四季おりおりの草花を植えれば、年間を通じて楽しむことができます。

3)団欒・くつろぎの場

 敷地に余裕のない場合を除いて、せっかく作る庭であれば、日常生活に取りこんで積極的に利用したいものです。これらの場が積極的に利用されるためには、目隠しスクリーン等の存在が欠かせません。
@団欒の場/居間・食堂の延長
 特に天気の良い日は、家族でゲームをしたり、お茶を飲んだり、野外パーティもできます。食事を外でとるのも新鮮です。 
Aくつろぎの場

 良い季節であれば、寝転んで本を読んでも良いでしょう。イスとパラソルがあれば万全です。

4)生活機能空間

 生活のための機能空間としては、玄関や勝手口に至る道の要素のほか、カーポートや作業スペースなどが考えられます。上下足のエリア分けが明快で、独立した下足エリアがある場合は、靴置き場が確保されていることがポイントです。

パーゴラのある庭



2.各施設の設計


1)門・玄関周り

@設備引き込み位置の調整

 引き込み位置を念頭において、設計します。
A門、門扉
 住まいの格式を重んじたり、伝統文化のひとつとして捉えれば、門や門扉は重要な位置付けになります。その場合は、建物の一部としてだけではなく、周辺環境を意識したデザインと素材選定が求められます。設備引き込みのメーター類は、この門にからめて体裁良く収めると入り口周りが豊かになります。
 結界としてあるいは、到達観の表現ツールとして位置付けるのであれば、門扉のない独立した構えを現代的な表現で作ることができます。

2)目隠し装置
@塀、生垣による目隠し

 かつての住宅は、周りにブロック塀を作るのが一般的でしたが、ブロック塀は地震時の倒壊の危険性があり最近では、少なくなりました。また、一見防犯上も有利に思われ勝ちですが、かえって死角を作ったり、足場代わりになったりするので逆効果になる事も知っておく必要があります。通風上も不利になります。
 よくあるフェンスでは目隠しにはなりません。
 むしろ、必要なところに樹木を植えたり透過性のある目隠しを設けた方が上手なやりかたです。
 地域によっては、建築協定や条例によって透過性の無い塀が禁止されているところもあります。
A上手な目隠しの方法
 外部空間の目隠しは、プライバシーを確保するために必要なものです。樹木による目隠しがもっとも望ましいのですが、敷地に余裕がない都市部ではとても望めません。そこで伝統建築の格子やヨシズのように、見えるようで見えないありかたにヒントがあります。
 目隠しスクリーンは、外構の独立した装置としてではなく、建築物の一部として考えるとうまくまとまります。具体的には様々な素材や方法があり、敷地の周辺状況に応じて適宜考えます。
(目隠しスクリーンの典型例)
・木製の格子やルーバー(縦・横・斜め)
・コンクリート格子・ルーバー
・FRPグレーチング
・金属メッシュやワイヤーにツタやツル性植物を這わせる。

3)カーポート

 建物内に収容する場合を除き、カーポートは、カーポートらしく作らないのがポイントです。また車が出払っている時のことを考えて子供の遊び場や作業スペースとしても利用できるです。
 詳しくはカーポートのページをご覧下さい。




4)その他の施設

@アプローチ
 道路から玄関に至る道の構成は、迎え入れる空間として、最も重要な空間です。緑や花々、ちょっとした演出で暖かく迎えましょう。敷地条件によって様々なケースが考えられます。大事なことは来訪者への気配り。建築的な手法をとらなくても、住まい手自らの手で演出することもできますが、その場合でもそれを実現するための受け皿は、設計の中で考えておく必要があります。
 詳しくは、アプローチのページを参照下さい。
A勝手口への道
 勝手口を設けて、御用聞き、今で言えば日常的な各種サービス(宅配便、出前等)はそこから受け取るようにすれば主婦の負担は軽減されます。敷地に余裕がないとなかなか作るのが難しいのですが、工夫次第です。
B階段・スロープ
 高低差のある敷地の場合は階段が必要になる場合がありますが、なるべくスロープにします。階段の場合は、室内よりゆるく作ります。
C前庭、中庭
 前庭や中庭は、団欒やくつろぎの場として最も重要な候補になります。そこで行われる行為を予め考えておくことが大事です。
 中庭は、住まいに囲われたスペースだけでなく、1〜2面を目隠しスクリーンで囲われたスペースも含めています。
Dテラス、デッキ
 テラス・デッキの定義は別にして、ここでは、土の空間ではなく、タイルや木製デッキの床で仕上げられた空間という位置付けにします。内部とも外部とも定義しにくい空間として、屋根や庇が部分的にあってもかまいません。ちょっとしたくつろぎや、雨天時の物干し場として利用できるスペースです。
 屋根のないスペースを拡大すれば、前庭や中庭になるでしょう。
Eガゼボ
 ガゼボって何なのという方もいらっしゃると思いますが、外部にある小さな休憩スペースで屋根のあるもの言えば理解できると思います。庭に大きなパラソルとテーブル・イスのセットを置けば、仮設のガゼボになります。暑い陽射しも避けられます。遊び心のある住まいの延長に是非据えておきたい装置です。
 屋根があって地面に緊結すると建築物になります。
Fパーゴラ
 藤棚のようにフレームを棚状にしたものに鶴性の植物を這わせたものです。目を楽しませるだけでなく日よけにもなります。
G池
 庭園の定番です。水はなぜか心をなごませます。作りたくてもできないと考えてはいけません。土木工事で用いられる止水シートを使って、雨水をうまく利用し、必要に応じて水道水を補給すれば経済的な池ができます。魚を生かす場合は、日常的な監視が必要です
H表札
 設置位置と内容を予め考えておきましょう。門・門扉の有無によって、設置位置が変わります。
Iメールボックス
 アメリカ産の映画を見ていると、広い芝生の前庭の手前に唐突に独立した小さなメールボックスがあります。うっかりすると新聞はずぶぬれです。何故そのような習慣が成立したかは知りません。
 新聞や郵便物、宅配便をどのように扱うかは、住宅に限らず、全ての建築物の検討課題です。
 傘をさして取りにいくのも風情がありますが、玄関や玄関ポーチにあった方が明らかに便利です。
Jサービスヤード
 勝手口付近に設けます。キッチンの作業には、できれば外でしたいものがあります。土のついた野菜洗いや魚をさばく時等です。地流しと簡単な収納があると便利です。サービスヤードは、一戸建てだからこそ作れるもの、忘れないようにしましょう。
K地流し

 ガーデニングや車洗浄後の器具の洗浄、長靴の洗浄等に用意してあると便利です。室内カーポートや勝手口付近が良いでしょう。
L収納

 地流し同様、ガーデニング等の物品を収納する場所が必要になります。いずれもダーティなものですし、乾燥する必要もありますから、玄関周りは避けたいところです。既製品の物置はやめましょう。地流し同様、室内カーポートや勝手口付近が良いでしょう。




・アプローチへのリンク

5)外部設備

@排水設備
 敷地に降った雨は、敷地の中で排水するのが原則です。隣地に流すのはやめましょう。トラブルの原因になります。できる限り土を残しておくのが良いですが、浸透型の舗装(床仕上げ)もあるので覚えておきましょう。
 浸透型床材の選定だけではなく、排水設備をきちっと設けましょう。
A給水設備
 外部空間の清掃には水が必要です。また樹木や草花には水がいりますから、計画の段階で水栓の必要な位置を考えておきましょう。
B照明設備
 外部の照明設備設計は、その場の使い方と景観、防犯等がポイントになります。パーティや娯楽に外部空間を利用するケース、クリスマス時期の情報発信、植栽の照明演出、玄関周りのフラッシュライト等があります。また、用途に応じて適切な灯具を選択します。
C電源
 使い方を考えて電源を用意します。
Dインターホン設備

 カメラを設置することで玄関先にいる人が誰なのか知ることができます。



3.材料選定


1)構造材
 花壇の縁等低くて簡易なものは、コンクリートブロックやレンガが使えます。その他の場合は、木材や鉄筋コンクリートを用います。
 木材を使う場合は、ヒノキやヒバ類が望ましく防腐処理を施せばさらに長持ちします。
 カーポートの床は、荷重を考えるとアスファルトコンクリートや土間コンクリートが望ましいのですが、路盤をきちっと作れば、厚ものであれば直接仕上げ材を用いることもできます。

2)仕上げ材
 仕上げ材選びのポイントは、床の場合は滑りにくいことが最も重要です。面積が大きい場合は、雨水を浸透させることも考えます。
 風雨に曝されますから、耐久性の高い素材を選びます。以下に代表的な素材を挙げました。
@石/花崗岩や鉄平石、大谷石、ライムストーン類が考えられます。大理石類は用いないほうが良いでしょう。形状は、板状のものから角が丸いもの、高価ですがピンコロ石のように10cm四方ほどのものもあります。豆砂利をモルタルに入れて洗い出す方法(豆砂利洗い出し仕上げ)もあります。下地は素材に応じて適宜選択します。
Aタイル沢山の種類があります。下地は土間コンクリートにする必要があります。
Bレンガ/白華が発生しにくい吸水率の少ないものを選ぶのがこつです。空洞のあるものもあります。
隙間を空けて貼ることで芝やタマリュウを隙間に植えることもできます。
Cコンクリート平板
30〜40cm角のコンクリート板に仕上げを施したもの。 
Dインターロッキングブロック
雨水が浸透するので歩道などによく使われます。
E浸透型舗装材
豆砂利などを樹脂でかためて施工します。勾配や形状が自由にできます。
F木材
構造材同様ヒノキやヒバ類のほか、ユーカリ類(メーカーによってジャラやチタンウッドなどと呼ばれる)は、何の加工もせずそのまま使うことができます。最近流行りの商業施設のボードウォークは、大半がこれです。

3)雑部材

 金属類の雑部材は、ステンレスやアルミ、胴など腐食しにくい材料を選択します。スチールの場合はなるべく厚いものに溶融亜鉛めっきを施したものを使います。



4.色彩計画

 景観形成を考えて計画します。門など部分的なものは、アクセントカラーがあっても良いかもしれません。大半の材料は、素材をそのまま使っていますから、色彩計画=素材選びということになります。
本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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