頑張り過ぎない
 わたしがまだ20代前半の頃(20年前!)、ある上司から「ビジネスの掟」を学びました。その上司は誰よりも集中して仕事に取り組んでいました。また、人間関係を大切にするため、毎日のように同僚を誘って飲み歩いていました。「重要な話は、喫煙コーナーで行われる」というのが口癖で、煙草もよく吸っていました。わたしはその上司を大変尊敬していましたが、自分自身は酒も煙草もやりたいと思わないので、真似出来ない芸当だと感じていました。

 しかし40代半ばでその上司は糖尿病を患い、それ以降、無理な仕事が出来ず、会社も休みが続く状態となりました。仕事をする能力はあるのですが、体がついていかないように思えました。結局、上司は50前にしてリストラの対象となりました。

 「『仕事が出来る』とはどういうことだろう!?」―わたしは、その上司を思い浮かべながら自問自答することがあります。ビジネスマンなら誰もが、仕事が出来るようになる為、努力するべきでしょう。会社は人間関係で成り立っていますので「飲みにケーション」も重要なのでしょう。

 しかし、人間の体には限界があります。その限界を超えて、無理を継続すると体を壊します。壊れた体では、出来る仕事も出来なくなります。それは結果的に「仕事が出来ない」のと同じです。本来であれば40代は最も仕事の油がのりきった年代だと思います。しかし若い頃の無理がたたって、40代から能力を発揮出来なくなるケースが多いようです。

 「がんばらない」という本で有名な医師の鎌田實さんは、「疲れてしまったときは、上手に頑張れない自分を受け入れることが大切」。といいます。

 この言葉は奥が深いと思います。社会の進化は物質的な豊かさをもたらしましたが、それにより、どれほどの人が幸せを感じるようになったのでしょうか!?――物質的な豊かさが精神的豊かさに必ずしも結びつかないところに、「頑張らなければいけない!」という脅迫観念があるように思えるのです。

 このことは昨今の健康ブームにも当てはまると思います。健康を維持する為にマクロビするなど、食事に気を配り、エクササイズをすることは素晴らしいことです。しかし時に、そのことが精神的・肉体的に負荷をかけることがあります。わたしたちは幼い頃から、競争社会で育った為でしょうか?なにかを始めると、目標を達成することに躍起になります。逆にそのことで、ストレスを感じ、心の病になってしまう場合があります。

 若い頃は頑張ることが自らの成長につながり、自らの財産として蓄積されるかもしれません。しかし、40歳を過ぎ、徐々に体力の衰えを感じ始めたら、頑張り過ぎないことも大切です。

がんばらない/鎌田實

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