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  2005年3月
   木造住宅の耐久性向上術/木材の基礎知識・木材腐朽菌・シロアリ

 長生き住宅に示したように、住まいの寿命を決定づける要因は様々で、寿命が解らないというのが実態です。
 一方、木造住宅は、鉄筋コンクリート構造に比べるとプレファブ化が進行し、在来工法でも工場でのプレカット工法が浸透して、ますます大工さんの力量を生かす現場が少なくなりつつあり、素材選定が重要になります。さらに、木材はその中に含まれる水分の量が問題であり、いかに乾燥状態を維持するかが課題になります。何らかの原因で水分含有量が多くなると、木材腐朽菌やシロアリ被害に遭う確率が高くなります。



1.住宅寿命とローンの関係
 突然ローンの話になっているので、違和感を感じられる方もおられるでしょうが、住まいの生涯収支計画を考えると、今の木造住宅にはメリットがないということをいきなりお話しします。
 企業経営では、税制との関係があって、一般には原価焼却のしくみによって木造が有利といわれています。しかし個人住宅の場合は寿命が最も大きく影響します。木造住宅には様々なメリットがあり、永く培って来た歴史もありますが、今もし寿命論を言われれば、鉄筋コンクリート造を勧めてしまいます。

1)ローン返済シミュレーション
 木造住宅の寿命は平均30年位で、ピークは20年位にあるそうですが、ここで、ちょっとシミュレーション(住宅金融公庫のHPを利用した結果)をしてみましょう。
 面積40坪、工事費2,400万の木造住宅を自己資金426万円で公庫の最低ベースで計画すると、諸費用166万円、総額2566万円になり借り入れ金2140万円を33年ローンで返済すると、総返済額は約3579万円、総投入資金額は4171万円になります。これだけ低金利になっても、借入すると何と70%近い資金を余分に支払いしなければならないのです。仮に金額をそのまま年間換算すると139万円、1日当り何と3800円になります。これに光熱費や建物修理費を加えたら恐らく5000円は超えるでしょう。毎日ホテル住まいをしているようなものです。そして、完済するころには寿命が来てしまい、経て替えるというようなことで本当に良いのでしょうか。

2)長生き住宅が鍵
 それでは、鉄筋コンクリート造並に60年の寿命があれば、返済が完了すると年間投入換算投資金額修繕費用やエネルギー費用だけで済むので、返済後の年間投入資金は激減します。長寿命化すると、それなりの工事費アップにつながりますが、年換算すれば明らかに寿命が長い方が得なのです。


・計画修繕へのリンク



2.木造住宅の寿命を阻害する要因

1)他構法との比較

 鉄筋コンクリート造の耐久性は、耐久性向上に配慮した設計とコンクリート調合、現場の施工に大きく左右されます。また鉄骨造は、鉄骨の錆防止と接続部分の設計・施工、雑部材の耐久性向上が鍵になります。
 それでは、木造の寿命に影響するのは何かと言えば、適材適所の樹種選定、出来あがり後の乾燥状態の維持に鍵があると言えるでしょう。乾燥状態を維持することで、金物の耐久性も向上できると考えられます。
 さらに30年と言われる寿命を延ばすためには、長寿命に応じた耐震性や耐火性が求められるほかに、金物類の材料や仕上げのグレードアップが考えられます。






・鉄筋コンクリート造住宅の耐久性へのリンク


2)阻害要因の分類
 長生き住宅のページで示した内容のうち特に機能的要因に限って列挙すると次のようになります。
 地盤、耐震性、材料耐久性、耐火性、施工、利用状態、維持管理です。このうち特に木造特有なものは、木材腐朽菌による腐れとシロアリ被害の防止にあると思います。そこで、次項からは、木材そのものの基本知識を知ったうえでその対策をまとめました。



3.在来木造に使用する木材の基礎知識

1)針葉樹と広葉樹

 樹木は大きく針葉樹と広葉樹に分けられます。
@針葉樹
 針葉樹は、比較的柔らかく成長が早い傾向があります。加工もし易いので、多くの住宅の構造材として利用されています。ヒノキ、スギ、マツが代表的です。特にヒノキは腐りにくくシロアリにも強く、地方では、総ヒノキ作りなどと言って、坪100万から150万も使った豪邸も見かけます。
 国産材の針葉樹は、北米産の輸入材とのコスト競争の点で押されぎみですが、総じて国産材の方が良質で緻密です。
A広葉樹
 ケヤキ、ナラ、クリが代表的です。特にケヤキは、地方では今でも大黒柱の代表として用いられており、硬くて強度があり、腐りにくい性質があります。高価なため、最近は構造材には用いられることは少なくなり、床の間や上り框等の内装化粧材として多く用いられています。

2)心材と辺材
 木材には、同じ樹種でも年輪を中心にした(樹芯)赤みを帯びた<芯材(赤み)辺材(白太=しらた)部分があります。心材は硬く腐りにくいので構造材に用い、辺材は柔らかく、節が少ないので、下地材や鴨居、長押等の化粧材に使われます。

3)早材と晩材
 木材には、適切な伐り旬があり、早材は春から夏にかけてできる部分で柔らかく、晩材は秋から冬にできる部分で、硬く腐れにくい性質があります。
 早材と晩材の見分けは、恐らく経験豊かな材木商と目利きの棟梁でもなければ、解らないでしょう。

4)元口と末口
 木材には、上下があります。木の根の側を元または元口、枝葉の側を末または末口と呼んでいます。元口の方が密度が高く材質も良いとされ、柱では必ず元口を下にして用います。

5)製材方法による種類
@芯持ち材
 柱材等で断面に年輪の中心があるものを芯持ち材と呼んでいます。芯持ち材の良い点は、腐りにくくシロアリに強いことです。ただし、節が多いこと、乾燥するとひび割れ(干割れ)が発生するで真壁造で柱が表しになる場合は一般に表しにならない部分に背割り(中心部まで刻みを入れひび割れが見え掛り部分に出ないようにする)を施します。
 芯持ち材を使う場合、固定金物との取り合いに注意を要します。背割り部分にボルト類が来ると全くきかないことになるからです、そのため金物に大きく頼った新工法の木造住宅では集成材を用いるのが多くなっています。
 最近は、乾燥技術が発達し、背割りなしでも殆ど割れの発生しない商品も出ています。
A芯去り材(割角)
 樹芯を持たない材を言います。一般には見え掛かりの化粧材を兼ねて使われます。節が少ないものの白太(しらた)を含んだ材(源平材)になったりしますが、厳選されたものには、4面柾(四方柾)があり非常に高価になります。
 現代住宅では、大壁が多くなったので、使用場所をうまく選定すれば、低価格材でも問題なく仕上げることができます。
 初期の材料強度は、芯去り材の方が高い傾向にありますが、劣化によって、いずれ芯持ち材と逆転すると考えられています。
B柾目と板目
 板材をとる場合、樹芯から順に製材して行くと、樹芯の通りに木目が直線的に通った柾目材、その外側はやや木目巾の広い追柾材、外側からは、タケノコとも言われる等高線状の木目のある板目材がとれます。外側ほど狂い易い傾向があります。
C木表と木裏
 板目材に現れる性質で、木材の外側が木表</FONT></B>、内側が木裏になります。木材は、外側の乾燥が速いので内側がささくれ立つ傾向があります。そのため、室内の手に触れる側に木表面を使うのが常識です。

@目視等級区分
 木材の等級は、主として針葉樹構造材等級としてJASで定められています。目視等級区分製材では、梁や桁などの高い曲げ性能を求められる部分を甲種構造材、柱などの垂直材用を乙種構造材に分類して規定しています。甲種構造材は、さらに、甲種構造材構造用T(板材、小角材)、甲種構造材構造用U(厚い板材、角材)に分けられ、それぞれ目切れ(木目の通り)の程度によって1級・2級・3級に分かれています。

・目切れとは、木材の木目(繊維)が、直線的な製材によって切れてしまことで、古来の建物は、目切れが起きないよう割って使った。木材の構造耐力は目切れが少ないほど良い。

A機械等級区分
 機械等級区分は、木材の材料強度と相関関係のある曲げヤング係数を用いて、等級分けしているもので、特に荷重が集中する個所(1階等)等に使用する場合の目安になります。
機械等級区分(JAS)
等級 曲げヤング係数(tf/cu)
E150 140以上
E130 120以上140未満
E110 100以上140未満
E90 80以上100未満
E70 60以上80未満
E50 40以上60未満

B構造用製材の日本農林規格
 平成8年に建設省通達により定められたもので、木造で許容応力度計算を行う際の材料強度が保証されるものです。目視等級に応じた甲種・乙種区分と樹種の組み合わせ毎に1〜3級の等級が定められ、各々の圧縮、引っ張り、曲げ応力度(kgf/cm)が指定されます。材種は、アカマツ、ベイマツ、カラマツ、アフリカカラマツ、ヒバ、ヒノキ、ベイツガ、エゾマツ・トドマツ、スギが指定されています。

C構造用製材の寸法規格(JAS)
 木口の短辺と長辺の組み合わせバリエーションによって129種類の規格品と、さらにその寸法精度の許容差が定められています。

7)一般に流通している針葉樹規格材
 上記のJASの規格に対して、実際の市場での流通品は、鋼材市場同様に使用されない規格寸法の製品は自然に市場から姿を消していくため、実際に流通しているのは材種毎にかなり偏った構成になります。国産の木材は芯持ち材が多いため、見かけが重要視される理由もあると考えられます。
@正角材:断面が正方形の材
 ヒノキ、スギ、ベイヒバ、ベイツガが大半で、ベイマツも少し流通しています。
A平角材:断面が長方形の材
 梁、桁、小屋組み材に使われることが多いので、マツ、ベイマツが主体になります。
B小屋丸太材:和風小屋組みの丸太材
 マツが代表的です。
C小割材:造作用の小断面材
 ヒノキ、スギ、ベイツガ材が主です。
D大・中貫材:貫材、胴縁材等
 ヒノキ、スギ等
E平割材:根太、根太掛け、筋交い、間柱等
 ヒノキ、スギ、ベイツガ等

8)市場の流通規格等級
 実際の市場では、上記のJAS等級とは全く異なる等級も合わせて用いられています。多くは、節の有無とヤニ等の見え方や丸みだけの区分で、強度上の区別ではありません。高級な順番に説明します。
 無節(無地)とは、節のまったく無い物(ヤニ、カスリ等が極小の材)です。上小節とは、節の直径がエンピツの芯大程度でヤニ、カスリ等が若干あるものです。特に丸みの無いものを特上小節(丸みなし)と言います。上小節は、節の直径が約10mm程度で1m間隔に一個ぐらいの場合です。このうち1等上小節は丸みのあるものです。小節は、節の直径が約25mm程度で1m間隔に一個ぐらいが標準です。その他、特1等(正角の中で節があるが良質のもの)、1等(正角で構造的に問題のない程度の若干の死節や虫食い穴等がある)、2等(押し角)等があります。
 また、さらに4面の見かけの状態毎に最上級は四方柾、四方無節、三方無節、ニ方上小節等、細かく区分され相応の価格がつけられています。柱の上下の状態まで細かくする例もあります。
 ヒノキの場合、無節は2等の10倍、四方柾はさらにその10倍といった具合です。
 木材の流通値段は、このように樹種と見え方でピンキリの値段になっています。そのため、真壁造の数奇屋で最高級のものでは、坪1000万円(私の親戚の宮大工に聞きました)などということになることもあります。
 これらの等級を設計で特記することは、純和風住宅でもなければありません。ただし、部分的に白木の柱を露出したいような場合は、できればきちんと指定したいものです。

9)節の取り扱い
 節は枝払いの後、生きたまま幹の中に取り込まれたものを生節、枯れた状態で取りこまれると死節と言い、死節は最初から欠損していたり、製材の段階でこぼれ落ちることがあるため、補修が必要になります。

10)集成材/JAS
 最近は、集成材の利用がかなり多くなってきました、集成材とは、2〜3cm厚の木材を木表・木裏と交互に貼り合わせ、所定の断面の木材を人工的に作ったものです。一般に狂いが品質が少なく安定していると言われますが、稀に接着面の剥がれが発生することがあり、そのような場合は交換しないと構造上の欠陥となってしまいます。
大きく下記のように分類されています。
1)一般的分類
@造作用集成材
 主として、手摺やパネル類、壁材等に用いるもので、1等、2等があります。
A化粧貼造作材
 和室廻りの長押、鴨居、敷居、その他造作材に用いるもので、化粧材が貼られます。1〜2等があります。
B化粧貼構造材
 主として、柱等で化粧材の貼られた柱等に用います。
C構造用集成材
 木造用の化粧が無い構造用集成材で、柱、貼り、桁、アーチ、シェル用等に用います。E、Fに分類されます。
2)構造用集成材の分類
 構造用集成材は、使用樹種に応じた曲げ強度、せん断強度による分類のほか、1〜4級のラミナの等級、ラミナの積層数と構成、接着剤等が規定されています。
@ひき板の構成による規格
・異等級構成
 構成するひき板の品質が同一でない集成材で、曲げ応力を受ける方向が積層面に直角になるように用いられます。・同一等級構成
 構成するひき板の品質が同一の集成材で、ひき板の積層数が2または3枚の場合は、曲げ応力を受ける方向が積層面に平行になるように用いられるものです。
・対称構成>
 異等級構成で、ひき板の品質構成が中立軸に対して対称になっているものです。
・非対称構成
 異等級構成で、ひき板の品質構成が中立軸に対して対称でないものです。
A断面の大きさによる規格
 断面の大きさによって、大断面、中断面、小断面に分類されています。
集成材の規格(JAS)
区分 短辺寸法(cm) 断面積(cm
大断面 短辺15以上 300以上
中断面 短辺7.5以上、長辺15以上で大断面以外
小断面 短辺7.5未満、長辺15未満

B使用環境の分類
・使用環境T
 集成材の使用環境が、長期間に渡ってまたは継続的に19%を超える環境や直接外気にさらされる環境、太陽熱等によって長期間に渡ってまたは継続的に高温になる環境、構造物の火災時に、高度の接着性能が要求される環境、その他構造物の耐久部材として接着剤の耐久性、対候性、耐熱性に高度の性能を要求される環境を指します。
・使用環境U
 構造材としての耐力部材として、接着剤の耐水性、対候性、耐熱性について、一般的な使用環境の場合を指します。
C集成材自体の構造強度区分
 曲げヤング係数(E)と材料強度(F)で表示されます。

11)積層材(合板)(JAS)
 積層材(合板)は、木材を薄くスライスしたものを数層貼り合わせたものです。
 積層材には、造作用としての単板積層材と構造用単板積層材があります。接着の程度,含水率,寸法精度やホルムアルデヒド放散量等の他、構造用積層材では、接着、含水率、曲げ性能等の強度等級として特急、1級、2級、3級に区分されています。在来木造、2×4工法のいずれの場合も、壁面にクギ打ちすると、材料に応じた壁倍率がが得られ、構造計算を行います。屋根の野地板としても用いられます。
 様々な薬剤を単板の段階で塗布したり、接着剤に混入し防虫、防腐処理されたものもあります。

12)構造用パネル(JAS)
 構造用パネルは、木材を細かく粉砕したものに接着剤を加えて加熱プレス成型したものと、さらにその両面に単板(ベニア)を貼ったものがあります。用途は構造用積層材と全く同じです。接着の程度、含水率、曲げ性能、吸水膨張性、釘耐力性能、寸法精度、外観の品質、ホルムアルデヒド放散量の規準が定められています。1級、2級、3級、4級があります。

13)JISで定義されている各種ボード類
 パーティクルボード、ハードボード、硬質木片セメント板、石膏ボード、シージングボード、ラスシートがあります。それぞれの厚みや種類に応じて、壁倍率が定められています。使用条件・使用個所に応じて、耐水性、耐火性、仕上げ条件等に関して相応しい材料を選定するようにします。



4.枠組壁工法(2×4)使用する木材の基礎知識
1)枠組壁工法(2×4工法)構造用製材の規格
 枠組壁工法は、もともと北米の標準在来工法を日本に取り入れたものなので、在来木造の規格体系とは全く異なります。共通しているのは、構造材としての面材(合板やパネル、ボード類)だけで、独自の規格になっています。主用材料は、土台を除いて、SPF(ベイヒノキ、ベイマツ、ベイヒバ)材が大半です。
 基本的に構造材は全て隠すのが原則なので、表面仕上げはプレーナー仕上げ程度で多少ざらついています。含水率は、19%以下の乾燥剤または、25%以下の未乾燥材を用いています。
@甲種枠組材
 主に、高い曲げ性能を必要とする、土台、床根太、側根太、まぐさ、天井根太等の横架材を指しています。
A乙種枠組材
 主に、壁を構成する、甲種以外の竪枠、上枠、下枠、頭つなぎ等を指します。
枠組壁後方(2×4工法)の構造用製材の規格(JAS)
構造部材の種類 規格(等級)
甲種枠組材 乙種枠組材
土台、床根太、端根太、側根太、まぐさ、天井根太、垂木、棟木 特急・1級・2級
壁の縦枠、上枠、頭つなぎ
特急・1級・2級・3級 コンストラクションスタンダード
壁の下枠 特急・1級・2級・3級 コンストラクションスタンダード

2)枠組壁工法(2×4工法)構造用製材の寸法規格(JAS格付け)
 上記の表とは別に、寸法規格があり、日本の在来木造に比べてかなり合理化された体系になっています。

 枠組壁工法構造用製材の寸法規格
区分 寸法型式 未乾燥材 乾燥材
製材 104 20×90 19×89
106 20×143 19×140
製材及び集成材
*1)
203 40×65 38×64
204 40×90 38×89
206 40×143 38×140
208 40×190 38×184
210 40×241 38×235
212 40×292 38×286
404 90×90 89×89
集成材 406 89×140
408 89×184
410 89×235
412 89×286
414 89×336
416 89×387
606 140×140
610 140×235
612 140×286
*1)許容誤差は±1.5mm
*2)各材の数字は厚さ×巾(単位mm)を示す
*3)含水率は、未乾燥材で25%以下、乾燥材で19%以下



5.木材の含水率
 木材の含水率は、木材の性能に最も大きく関わるものです。JASの改訂も含めて、含水率が木材に与える影響を解説します。
1)木材の含水率と性質
 木材は、一般に伐採されたあと葉がらしを行い、山の中で半年程度寝かされ、ある程度自然乾燥してから原木市場に運ばれます。この生材の状態では、ヒノキで約40%前後、スギでは80%程度の含水率があります。
 生材を乾燥する課程で、細胞内の水分が抜けて、木材繊維間の隙間にある水(自由水)が満たされている状態を繊維飽和点と呼び、これを境に乾燥するほど材料強度が向上する性質があります。どの樹種でも概ね30%前後になります。
 生材を大気中に放置すると、やがて一定の含水率になります。この状態を気乾状態といい、その木材を気乾材と呼んでいます。放置する場所の気候によって異なりますが概ね15%と言われています。
 木材は、湿度の変化に応じて、水分を吸ったりはき出したりしますが、ある一定の温湿度条件では、含水率が一定値に安定します。これを平衡含水率と呼びます。一般に室内では8〜10%程度になると言われています。

2)含水率と木材性能の関係
 木材の含水率と性能には大きな関係があります。耐震性確保のための材料強度や腐れ防止のためには、絶対に維持しなければならない条件です。
@材料強度
 木材は繊維飽和点を境に、急激に収縮すると同時に材料強度が増加する性質があります。そのため予め所定の乾燥状態にしておけば、クギやビスの保持力やボルトの締め付けの緩みが発生しにくくなります。
 このことは、結露によって、部分的に高湿度状態になった場所では、木材の含水率が上昇し、強度低下や軸力によるめり込みが発生することが予測されます。
A腐れ
 木材を腐らせる腐朽菌は、含水率20%以下ではまず発生しないといわれています。
B狂い、隙間、割れ、目違い等
 狂いや隙間、割れ、目違い等は、当初の製作・施工状態と、最終利用状態の含水率の差による収縮・膨張によって発生します。そのため、出きる限り最終利用状態を想定した乾燥が求められます。
 また造作材等、室内空気に直接触れる材料は、乾燥がさらに進行し、狂いや隙間が生じることがあります。そのため、ある程度の隙間や目違いは避けられないと言えます。そのような部位には、しばしば集成材を芯として化粧材を貼ったいわゆる貼り物を用いることが多いのはそのためです。
C加工性、接着性、塗装性
 接着剤が最大の効果を発揮する含水率は、一般に7〜15%といわれています。
D含水率の罠
 前B項でも示したように、木材は、環境条件に応じて水分を吸いこんだり、出したりするので、常に息をしている材料です。この性質は、逆に室内の湿度を安定させる調湿機能として利用されています。
 含水率の数字を良く見て行くと、最近の住宅はますます高気密になり室内の乾燥化が進んでいるのでJASで規定されている25%の含水率が果たして機能するのかどうかという問題があります。それに関連して、プレカット全盛の時代、JASで規定している寸法許容差の±の規準が実は機能しなくなりマイナスが問題になっていました。
 また含水率で気をつけなければならないのは、実は木材の中心と周辺では含水率が異なるということです。今までの含水率は実は平均含水率だったのです。たとえば、含水率15%の芯持ち材は、中心部分は25%のことも有り得るということです。そのため、商品として含水率の均質な集成材に頼る方向になるのは自然なことでしょう。
 昨年10月30日、JAS改定の告示が発表されました。今年(平成14年)3月1日にいよいよ施行されます。改訂内容は、寸法精度規格のマイナス規定が無くなることと、含水率25%規準が除外されることです。残念ながら含水率規定は今回の改正には、含まれていませんが、大きな進歩だと思います。

3)木材の含水率規格(平成14年3月改訂予定)
 木材の含水率規格(JAS)
区分 含水率
針葉樹構造用製材 D25 25%
D20 20%
D15 15%
枠組み壁工法(2×4)構造用材 19%以下
構造用集成材等 15%以下
合板、単層積層材等 14%以下
構造用パネル 5〜13%




6.適材適所の材料利用
1)構造材と造作材
 まず、構造材と造作材に明確に区分します。耐久性に大きく影響するのは、構造材です。
 1階の床廻りの構成は、在来工法も2×4工法も概ね同じですが、在来木造の壁を構成する柱と筋交いの代わりに2×4の場合は、パネル状にした枠組みと面材で構成され、梁の代わりに細かく組まれた根太で構成されます。住まいの構造的耐久性はこれらの材料と継手や仕口部分を固定する金物で決まります。

2)代表的樹種による一般的性質
 木材の耐久性は、断面寸法のほか、樹種に大きく左右されます。断面寸法は、構造計画上から定まります。
@樹種による腐りにくさの度合い
 下記の表は、代表的な樹種毎の腐りにくさの度合いを表したものです。
樹種 腐りにくさの度合い
国産材 ヒノキ × ×
ヒバ × ×
スギ × ×
コウヤマキ
カラマツ × ×
クロマツ × ×
アカマツ × ×
ケヤキ × ×
クリ × ×
北米材 ベイヒノキ × ×
ベイヒバ × ×
ベイスギ
ベイツガ
ベイマツ × ×

A代表的樹種によるシロアリに対する強さ一覧
樹種 シロアリに対する強さ
国産材 ヒノキ ×
ヒバ × ×
スギ × ×
コウヤマキ
カラマツ ×
クロマツ × ×
アカマツ × ×
ケヤキ ×
クリ
北米材 ベイヒノキ ×
ベイヒバ ×
ベイスギ
ベイツガ
ベイマツ ×


3)建築部位と適切な材料
 木造住宅の構成部位に対して、国産ヒバ材がシロアリに対して極端に抜きん出た性質がある他は、腐りにくい樹種やシロアリに強い材料は輸入材を含めてかなり限定されます。松類は性能は良いのですが、ヤニが出るので主として見えない部分や手に触れない梁・小屋組みに用いられます。実際に流通している材料(輸入材を含めて)の中から、規格形状と使用部位に応じて適切に選定します。
 国産ヒノキは万能の木材です。また若干性能が劣るもののベイヒノキやタイワンヒノキも使われます。前項の表を参考にしてコストとのバランスの中で決めていきます。残念ながら、コストの関係から多くは外材に頼る傾向があります。
 在来木造住宅の各部の代表的材料一覧
部位 優れた材料
土台 ヒノキ・ヒバ・コウヤマキ・クリ・ケヤキ・ベイヒノキ・タイワンヒノキ又はこれらを使用した構造用集成材・・保存処理製材・土台用加圧式(または加圧注入式)防腐処理製材
火打ち土台 ヒノキ・ヒバ・スギ・カラマツ・ベイマツ・ベイツガ
ヒノキ・スギ・ツガ・ベイヒノキ・スプルース・ベイツガ・(アカマツ・カラマツ・エゾマツ・トドマツ・ベイマツ:大壁の場合)・構造用集成材・化粧貼構造用集成材
胴差し・桁 アカマツ・クロマツ・ベイマツ・ベイツガ・スギ・カラマツ・構造用集成材
筋交い スギ・ベイツガ
スギ・ヒバ・カラマツ・アカマツ・クロマツ・ベイマツ・ベイツガ・構造用集成材
大引き ヒノキ・スギ・カラマツ・アカマツ・クロマツ・ベイマツ・ベイツガ
根太 スギ・カラマツ・アカマツ・クロマツ・ベイマツ・ベイツガ
火打ち梁 スギ、ベイマツ・ベイツガ
小屋梁(丸太) アカマツ・クロマツ・ベイマツ
小屋梁 カラマツ・アカマツ・クロマツ・ベイマツ
母屋・垂木 スギ・カラマツ・アカマツ・クロマツ・ベイマツ・ベイツガ



8.木造の劣化原因
 木造の劣化は、木材腐朽菌による腐れ、シロアリによる被害、金物の錆による劣化が代表的です。いずれも水分に深く関わっており、普段の換気によって常時乾燥状態にするのが1番の対策手法です。住まいは手入れが悪いと長持ちしないと言われるのはそのためです。そのため、最近では高断熱・高気密化し24時間換気する手法が多くなりつつあります。これは、良し悪しの問題というより確実な乾燥を目的にすれば、結果的に出て来る解であり、将来は主流になるだろうと考えられます。
1)木材腐朽菌
 建物(木材)の腐れとは、木材腐朽菌によって木材繊維が破壊されることです。木材腐朽菌はキノコの一種ですが表面にだけ発生するカビとは区別されます。代表的なものは白色腐朽菌と褐色腐朽菌です。
 木材は、骨格を形成するセルロース部分とそれを補強しているリグニンで構成されています。鉄筋コンクリートで言えばセルロースは鉄筋でリグニンはコンクリートにあたります。
 白色腐朽菌は、このうちのリグニンを主としてを食べ、あとにセルロースが残り白っぽくなるのでこの名がつけられています。この菌は屋外等の風雨に曝された木部に発生します。カワラタケ、カイガラタケ等がこれにあたります。侵された木はまるで糸束のようになってしまいます。
 褐色腐朽菌は、セルロース</FONT></B>を食べ、あとに褐色のリグニンが残ります。ナミダタケ、オオウズラタケが該当します。かつて北海道で大発生し、大きな被害をもたらしたのはナミダタケです。建物の木材腐朽菌の大半がこの褐色腐朽菌によるものです。湿気があって暗いところに発生しやすいと言われています。
(コラム覧)数年前、中国産の木製椅子を購入して屋外に置いておいたら、ある夏に腐り始めました。これはまずいと思って塗装を施してその年は乗り切りましたが、翌年の夏、気がつくと木材の小口から褐色のキノコが出てきて、木はばさばさした破片に壊れてしまいました。これは典型的な褐色腐朽菌の被害です。塗装によってが水分を密閉したのが悪さしたのかも知れません。

A腐朽菌に侵された木材
 前記したように、腐朽菌に犯された木材は、これが木なのかと思われるほど軽く、脆くなってしまいます。恐らく強度はゼロと言っても良いでしょう。

2)腐れが発生し易い場所
@腐朽菌発生の条件
 木材腐朽菌は、水と酸素の存在によって発生します。環境温度が5〜45度で、木材の含水率が30%(繊維飽和点)あたりから発生します。特に20〜35度当りで最も活発に繁殖すると言われています。水に浸かった木材が腐りにくいのは、酸素が無いからです。
A発生し易い場所
 含水率の高い木材があれば発生するので、カビの発生個所にほぼ一致します。床下周り、浴室やキッチン等の水周り、配管からの漏水個所、雨漏りしているところ、結露部分等が代表的です。床下の場合、シロアリ被害との同時発生も考えられます。

3)腐れ防止
@腐りにくい材料を使う
 以下のいずれも決め手にはなりませんが、少しでも腐れ防止にはつながります。
・腐りにくい樹種の木材を選定する
・木材は芯持ち材を使う
・乾燥材(15〜20%)を用いる
・防腐処理を施す

A湿気を防止する
 湿気をもたらす原因は、雨水と内部結露水、地面からの湿気、設備配管からの漏水等が考えられます。
 木材が含水率30%以上にならないためには、様々な方法があります。様々な方法があるということは、逆に様々な要因によって条件が揃ってしまうということにもなります。そのため、合わせて防腐対策を施すのが一般的です。
・通風換気の良い間取りを考える
・ベタ基礎にして土中水分の侵入を押さえる
・適切な断熱設計によって結露を押さえる
・床下換気、屋根裏換気が十分に得られるようにする(ベタ基礎にして、完全に密閉し、補助的に機械換気する方法も考えられる)
・床下に調湿剤(木炭、ゼオライト等)を敷設する
・外壁通気工法を採用し、乾燥状態を維持する
・24時間換気システムを導入する
・工事中に適切な養生を行い木材への水分侵入を防止する
・雨漏り、配管漏水防止に配慮した設計と入念な施工を行う

B防腐処理した木材を使用する
 防腐対策は、通常防蟻対策も同時に行うために、JASでは、防腐・防蟻の薬剤処理は同時に定義されています。このうち、K1はヒラタキクイムシのみをを対象にしているもので、数字が大きいほど防腐効果が高くなっています。
 JASによる薬剤処理木材の種類
性能区分 性能の目安 薬剤の記号 薬 剤
K1 広葉樹防虫辺材用(ラワン材)(従来の防腐3種処理に相当する) ホウ素化合物
K2 気候が比較的寒冷な地域における住宅部材用(従来の防腐・防蟻3種処理に相当する) CCA クロム・銅・ヒ素化合物
AAC アルキアンモニウム化合物
ACQ 銅・アルキアンモニウム化合物
NCU ナフテン酸銅
NZN ナフテン酸亜鉛
K3 土台などの住宅用部材用(従来の防腐・防蟻2種処理に相当する) CCA クロム・銅・ヒ素化合物
AAC アルキアンモニウム化合物
ACQ 銅・アルキアンモニウム化合物
NCU ナフテン酸銅
NZN ナフテン酸亜鉛
K4 土台などの住宅用部材用(従来の防腐・防蟻1種処理に相当する) クレオソート油
K2・K3に示す薬剤
K5 屋外または接地用(鉄道の枕木などの用途) クレオソート油
CCA クロム・銅・ヒ素化合物

C地域に応じた適切な木材防腐・防蟻処理を行う
 建設省住宅局建築指導課監修による木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説によって、地域別の防腐・防蟻処理の適用区分が示されています。
 一般に現場吹付けより工場での加圧注入木材の方が優れていると言われています。しかし、現場加工は必ず発生するので、切断面や穴あけ個所等では、薬剤が十分に浸透していない部分が出てしまうため、補助的な現場塗りが必要になります。また今後シロアリの活動地域が拡大するこが考えられるので、境界区域では場合によりこのことを加味する必要があります。
 建設地別の木材防腐・防蟻処理の適用区分
建設地の区分 木材 土壌
加圧注入処理木材 現場で行う処理
T 静岡県・愛知県・近畿・中国・四国・九州地方の各県・沖縄県 製材のJAS規格の保存処理K3以上 塗布または吹付けによる防腐・防蟻処理 土壌処理を行う
U 関東地方の各県・山梨県・長野県・岐阜県 製材のJAS規格の保存処理K3以上、またはJIS規格による木材 ほとんどの地域で土壌処理を行う
V 岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県・新潟県・富山県・石川県・福井県 一部の地域で土壌処理を行う
W 北海道・青森県 製材のJAS規格の保存処理K2以上、またはJIS規格による木材 塗布または吹付けによる防腐・防蟻処理 必要に応じて土壌処理を行う

D防腐・防蟻処理の方法と範囲
・土壌処理
 公庫仕様では、いくつかの選択肢の中から選ぶことができますが、土壌処理は、地下水汚染等の危険を伴いますから、ベタ基礎にするのが基本だと思います。
・1階廻り
 防腐・防蟻処理の範囲は、通常地盤面から1m以内の土台及び火打土台、柱、間柱、筋かい、構造用面材、胴縁及び下地板、大引、根太、根太掛、床束、根摘み等に処置するようにします。処理対象となる木材の木口や割れの入った部分、欠き込み部分、ほぞ孔、ボルト孔、仕口・継手部分、接合部、建築金物の取付箇所や木材とコンクリート等が接する部分については、特に入念に処理するようにします。室内に露出する部分は、除かれます。
 1階に浴室がある場合は、壁の下地を補強コンクリートブロックまたは、鉄筋コンクリートの腰壁を設けるべきだと思います。その場合、断熱処理をきちんと施します。
・2階の浴室廻り
 浴室及び脱衣室が2階にある場合は、ユニットバスを用いるようにします。その他2階廻りで、間取りや設計内容、使い方の関係から湿気発生が予測される個所は、仕上げ下地材、仕上げ材は耐水性の高い材料とするようにするか、1階同様に防腐処理を施します。



9.シロアリの知識と防除
 シロアリは、日常的に住まいの周辺にいます。ここでは、シロアリの好まない材料の使用、侵入を防御する方法、防蟻剤等について説明します。
 シロアリによる被害は、木造住宅の宿命とも言えます。きちんと管理すれば被害は防止できると言われますが、実際にはそのきちんとができないから発生しているものです。

1)住まいを食べるシロアリの生態と種類
@シロアリの種類
 シロアリは、日本に約12種類が生息していると言われています。そのうち住まいの木材に被害を与えている代表的なもののはヤマトシロアリとイエシロアリです。また沖縄県には、ダイコクシロアリが生息しています。
 ヤマトシロアリは、日本の在来種で北海道を除く全域で生息しています。イエシロアリは、インド原産で、神奈川県以西の太平洋側の海岸に近い地域に生息しますが活動領域が広がる傾向があります。特に生息域の広いヤマトシロアリによる被害が最も多いといわれています。
Aシロアリの生態
 シロアリは、クロアリと同様に、女王アリを中心に階級社会を構成し、90%を占める働きアリが建物に被害を与えます。冬季の一部を除いてほぼ1年中活動しています。
 一般に水分の多い木材を好み、特に木材腐朽菌によって腐り始めた木材を好む傾向があります。また風の無い暗く湿気た場所を好みます。暖かい夏には最も活動的になります。アリとムカデが天敵です。

2)シロアリの侵入ルート
 シロアリは、多くが土壌性で目がありません。そのため、ものの形を頼りにしながら最終的には水分と餌を目当てに垂直部分をたどって上がって行きます。侵入ルートには、土で作った蟻道と呼ばれるトンネル状の構築物や泥線をつくりそれをたどって行動します。垂直部分の高さを軸にした被害調査によると45cm位がまでが最も多く、65cm位を超えたあたりから殆どなくなります。

3)シロアリ被害を防ぐ方法
 シロアリ被害を防ぐ方法は、まず設計段階から考えておく必要があります。物理的なバリアを設ける方法と、シロアリ被害を受けにくい木材選定、土壌への防蟻剤散布、地上1m程度までの木部の防蟻剤塗布が代表的です。また、もし万が一侵入された場合を考え、床下を目視点検できる工夫も必要になります。
@耐蟻性の高い材料を使う
 基礎上の土台は、木造住宅全体を支える重要な部分です。土台には芯持ち材でシロアリに強い木材を使うのが常識です。
 次に床を支える補助的な束材や大引きにも芯持ち材やシロアリに強い材料を使うことをお勧めします。
A床下換気
 床下を換気し、木材を乾燥状態に保つことは重要なシロアリ対策になります。しかし、中途半端な床下換気は、場合によると、梅雨どきにかえって結露を招くこともあります。金物部分は、特に結露の危険性が高くなります。また、換気を目的に作った換気口は実はシロアリの侵入ルートにもなります。せっかくベタ基礎にしたのならば高断熱仕様の密閉型の床下にして、補助的に換気ファンを設置する等の方法が考えられます。


(コラム欄)私の生家はもうじき築100年を迎えようとしています。典型的な束立て床で、地盤補強した上に置いた楚石の上に床束が立っている構造です。しゃがんで床下を覗くと家の裏まで見渡せます。子供の頃は這いずく廻って遊んだこともあります。床下は、雨露を防ぐ格好の場所なので常に乾燥状態になっていますから、様々な虫達の棲み家になっています。アリが住んでるからシロアリが入る余地がありません。それを狙ってアリ地獄がいたるところにあります。古い住宅の床下換気は、このように生体系まで取りこんで賢いことをやってのけていました。今で言えば床下ビオトープでしょう。

B物理的バリア
 物理バリアは、以下のように様々なものが考案されていますが、木材腐朽菌の防止や結露の発生を考えると、ベタ基礎にして、床下断熱をしっかり行い、床下換気口を設置しないのがベストだと思います。
・土壌の薬剤処理
 効果は期待できますが、それに伴う二次被害が予測されます。
・防蟻シート
 防蟻効果を持ったシートを床下全面に敷設するものです。公庫等の権威ある機関による認定品であることが不可欠です。
・ベタ基礎
 基礎を布基礎ではなくベタ基礎にして隙間無くすると、建物下からの侵入は押さえられます。ただし、コンクリートを密実に打ちこむことが条件になります。
・防蟻板
 基礎や、束廻りに横に連続して設けるものです。ネズミ返しならぬアリ返しです。ベタ基礎にして、床下換気口を設けず、水切り材を兼ねたアルミ型材を用いて外装仕上げ下端に連続して設けるのが最も確実な方法です。隙間のない施工が求められます。

C防蟻剤/防蟻処理
 防蟻剤は、防腐剤と同時施工されるので、8-Dでは防腐・防蟻処理の方法と範囲として扱っています。公庫仕様でも表現上の理由なのかもしれませんが同時に扱われています。また使われる薬剤が共通だということもあるかも知れません。しかし、湿気による木材腐朽菌の発生防止とシロアリ防除は本来別ものです。
 今後学術研究が進めば、もしかしたら別扱いされることもあるでしょう。
 防腐・防蟻剤はシックハウス問題と連動してかなり複雑な状況にあります。また、外壁通気工法を採用した場合公庫基準では、防蟻剤の塗布は必要がないことになっています。これは、木材の乾燥状態が維持できれば、防蟻措置は必要無いという考え方に基づいているように思えます。しかし、これは実は片手落ちで、床下防蟻は必ずやっておくべきだと思います。ベタ基礎であっても同じです。
 防蟻剤の今の主流は、シックハウス問題から有機リンを含まない薬剤に移行しつつあります。ピレスロイド系薬剤のうちで揮発性の低いビフェトリン等が優れていると思われますが、採用の際は、(社)日本シロアリ対策協会または木材保護協会認定の商品の中から選ぶようにし、さらにMSDS(化学物質安全データシート)を取り寄せて、人体に対する安全性と、固定金物に対する腐食の危険性が無いかどうかチェックするようにします。

D防蟻に関するその他の注意点
・施工時のおが屑類を床下に放置させないようにする
・土間立ちあがり配管もシロアリの進入ルートになるので、防蟻板や土間スラブ貫通部の穴埋めは入念におこなう
・玄関や勝手口も侵入ルートになるので、留意する
・敷地内の切り株はシロアリを呼びこむので早めに処置する



10.接合金物の劣化防止
@Z・C・Mマーク表示制度
 接合金物は、益々重要になって来ています。阪神・淡路大震災の被害調査では、接合部の不良が倒壊原因の1つに挙げられています。
 (財)日本住宅・木材技術センターでは、在来木造、枠組壁工法(2×4)、丸太組工法(ログハウス)のそれぞれに見合った金物を製造する者を認定し、その金物にそれぞれマークの表示が許されるしくみになっています。それぞれZマーク、Cマーク、Mマーク表示金物として、信頼できる金物が流通するようになっています。
A認定の条件
 接合金物の認定条件は、一律の規格になっており、加えて同等認定と性能認定によるDマーク、Sマーク表示制度もできました。
B求められる性能バリエーション
 しかし、許容応力度以外にも、材料や表面処理方法にはもっとバリエーションがあっても良いのではないかと思われます。例えば、結露し易い1階廻りの足元付近や水周りには、少し表面処理のグレードをアップしたものが求められるし、床下に露出するものや、木材の防腐・防蟻剤との取り合わせ、湿気に対する耐久性を考えていくと、その関係には不安が残ります。公益団体が認めたものですから信頼して使いたいとは思うのですが、様々な薬剤が開発されている昨今、取り合わせの悪いものが必ず出てくるのではないかと推測してしまいます。
 今はまだ木造住宅寿命30年の時代ですが、もっと高寿命の木造住宅が求められるようになっています。そう考えると、少なくとも2段階程度の規格があっても良いのではないかと思います。
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