コンクリートの耐久性を決定づけるのは、ほとんどがコンクリートそのものの質(生コン)とコンクリート打ち込み、養生等の施工内容、、必要な補修にかかっています。設計図で適切な指定がされているのと同時に施工がいかに適切に行われるかによっています。そのため、いくら高耐久コンクリートを使ったからといって、これらが適切に実施されないと、100年の保証はできないのです。
生コンクリートの内容から詳しく解説していくと、膨大な内容になってしまうでしょうから。ここではコンクリートにはどのような性質があり、どうすれば耐久性を高くできるかを解説します。
従って、なるべく簡易にしたつもりですが、一般の方には少々面白くないかもしれませ。今、何が問題で、現場どのように動いているのだということをご理解いただければ良いと思います。
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1.コンクリート自体の耐久性の向上
1)コンクリートの構成
コンクリートは、セメントと骨材(粗骨材:砂利、細骨材:砂)、水、混和材(性能向上のための材料)、混入空気で構成されています。
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2)コンクリートの種類
コンクリートの種類は、一般に骨材の種類によって普通骨材を用いた普通コンクリートと軽量骨材を用いた軽量コンクリートに分けられます。住宅では、100%普通コンクリートを用いると思います。その他に、施工環境が特殊な場合や施工性を良くしたり、特殊な施工方法を行ったりするための様々なコンクリートがあります。そのうち代表的なのが、打設時の締め固めがいらない高流動コンクリートや100年の耐久性があると言われる高耐久コンクリートが挙げられます。
コンクリートは、構造設計内容に応じた強度が求められること、もともと硬化する時に収縮をおこしひび割れが入りやすいこと、丁寧な施工を行わないと様々な欠陥が発生すること、時間が経過するにつれ劣化して行く等の性質があるために、様々なものが考案され、物件の特質に応じた適性な選定が求められます。 |
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3)コンクリート製造から現場荷下ろしまで
コンクリートは設計図に指定された内容に基づいて、JISで認定された生コン工場で調合され、水を加えてミキサー車に移し、混合攪拌しながら現場に到着します。コンクリートの打設はポンプによって行いますが、打設のためには混合攪拌を開始してから最も適切な時間が選ばれます。 |
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4)生コンの性能チェック
コンクリートの性能は、まず生コンの性能確保をどのようにするかから始まります。
@生コン工場の選定
生コン工場は、まずJIS認定工場であることが絶対条件です。しかし、認定を受けているからと言って全て同じ品質の生コンが供給されているわけではありません。工場の選定は、通常施工者が行いますが、設計事務所の監理者がいる場合は、入念なチェックが行われます。ミキサー車の輸送時間はJISで90分以内と定められていますから、地域限定になります。過去の実績と製造能力、運搬能力、主要な材料の貯蔵能力、技術力(技術者の人数と構成)、評判等をチェックします。必要に応じ試験練りを実施して実際に生産されたものの品質と工場スタッフの技術力や意欲をチェックします。
A水セメント比
コンクリートの質を最も大きく左右するものに水の量があります。水は、コンクリートが固化する時に必要で、施工性の決め手となるワーカビリティ(作業性)向上に役立ちますが、水が多くなると強度が低下するばかりか、粗骨材とモルタルが分離してジャンカが出易くなってしまいます。
適切な水の量を表すものに水セメント比があります。
A塩分含有量
コンクリート中に塩分や塩化物があると、鉄筋が錆び易くなるほかアルカリ骨材反応の引き金にもなります。そのため塩分含有量の上限値を設計図で指定します。塩分は、以前は海砂が問題でしたが、水や、混和材などにも含まれることがあるため、コンクリート中の総量で表します。一般に、0.3kg/m3が上限値です。
Bコンクリート強度(圧縮強度)
コンクリート強度の設定は、鉄筋コンクリート造の構造設計の基本となります。設計図で強度を指定します。多くの場合、試験結果は指定強度より高くなります。
高耐久コンクリートを使用する場合は、強度も自動的に高くなります。
Cアルカリ骨材反応
コンクリート中に入れる骨材の中には、化学的に不安定な物質(反応物質)を含むことがあります。多くの方が耳にしたことがあると思います。アルカリ骨材反応は、その骨材中の物質とセメント中のアルカリ不純物が反応して、骨材が膨張しひび割れが発生します。かなり大きなひび割れなので、雨水が侵入し鉄筋が錆びてしまいます。コンクリート中の塩分が多いとこの反応を促進したりや塩害地域でも発生し易くなります。
不安定物質には、クリストバライト、オパール、火山ガラス、石英、トリジマイト等があります。生コン工場が決まったら、これらの物質含有測定データとセメント中のアルカリ不純物の含有データの提出を求めましょう。反応物質を含む骨材を使用しないのが良いのですが、現実にはゼロというわけにはいかず、アルカリ不純物含有量の小さいセメント(低アルカリ型ポルトランドセメント:0.6%以下)を用いる方法もあります。
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5)生コンの施工と施工性チェック
昭和40年頃から、コンクリートをポンプ圧送によって打ちこむようになってから、打ち込み作業が飛躍的に簡単になった反面、水量が大きくなり、実際のコンクリートの質は悪くなったと言われています。今でも、沖縄では、バケット打ちを行っていると聞きましたが(?)、そのようなコンクリートは密実で防水もいらないほどです。そのかわり、粘性の高いコンクリートはジャンカや空洞が発生し易いというデメリットも持っています。
一般に施工性を良くすることは、施工時の欠陥や不具合を少なくすることですが、それに全面的に頼ってしまうことは決して良い結果を生みません。施工性の良いコンクリートを選定することは必要条件であって、同時に入念な施工が必要になります。
@スランプ値とフロー値
コンクリートの施工性の良さは、ワーカビリティと言います。流動性が高いほど施工し易い性質をもっています。ところが施工性を優先すると、コンクリートの品質が低下するだけでなく、骨材とモルタルが分離してしまうという欠点があります。
そこで、適切な柔らかさや流動性を定め、それを試験する方法にスランプ試験があります。専用の容器(コーン)に入れたコンクリートを逆さにして、ゆっくり引き抜くと、コンクリートはそのままの形状を維持できずに崩れます、その特のコーンの高さと崩れたコンクリート上端の距離をスランプ値と言います。スランプ値は、設計図で指定されます。共用範囲に入っていれば合格です。18cmが一般的ですが、もうすこし硬め(15cm)にする場合は、入念な施工が必要になりますが、成功すれば密実で耐久性の高いコンクリートが得られます。
流動化コンクリートを用いる場合は、フロー値といってスランプ試験時のコンクリートの広がり具合も検査することがあります。
BAE減水剤(AE剤)
混和材のうち比較的多く用いられるものに、AE減水材があります。コンクリート中に細かな気泡を発生させ、作業性や硬化後の凍害防止性向上のため使用されます。また水密性が向上し中性化を抑制するはたらきもあります。実際には、設計図にプレーンコンクリートまたはノンAEコンクリートの指定が無い限り、4.5±1.5%の空気が混入されるしくみになっています。
空気量が1%増えると、コンクリート強度は1%低下する試験結果が報告されており、コンクリート強度の設定と合わせて、調合することになります。
C流動化剤
もうひとつの代表的な混和剤に流動化剤があります。水分の少ないぱさぱさのコンクリートに流動化剤を入れると、みるみる柔らかくなっていきます。流動化剤は数十分の時間しか反応維持しないため、手早い打ち込みが必要になります。
さらに流動性を高めたものを高流動コンクリートと言います。高流動コンクリートは、水分が少ないだけひび割れしにくく、耐久性の高いコンクリートが得られます。
D粗骨材の最大寸法
粗骨材の最大寸法とは、粗骨材が鉄筋と鉄筋の間をきちんと通りぬけるために定められている寸法です。特にRCラーメン構造の柱配筋では、大口径鉄筋が密に配置されることが多いので、設計の際には、構造計算だけでなく、鉄筋と鉄筋の離隔距離を必ずチェックしておく必要があります。あまり狭いと、コンクリートが廻らず空洞が発生することがあります。 |
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3)打ち込み後の養生
打ち込み後(0日〜7日程度)は、散水等で湿潤状態を保ちます。良いコンクリートを得る大きな秘訣は、コンクリート中の水量を少なく、硬化したコンクリートは、水をたっぷりかけることです。
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2.生コンクリートの検査
コンクリートは、大半が、JISの認定を受けた工場で生産されます。施工業者は、その工場から生コンを購入し、現場で打設します。そのため工場内での検査、打設前のサンプリングによる検査、硬化後の現物検査に分けられます。
1)受け入れ検査と打ちこみ前検査
本来は、生産者が施工者に渡す前の受け入れ検査(JISで規定)と、ポンプの筒先から出てくる打ち込み直前のコンクリートを採取して施工者自身が検査(JASSで規定)を行うものですが、同じことを2回繰り返すことになるので、一般には、生産者と施工者(監理者も立ち会うことがある)立会いのもとで、試料を採取し、スランプ、空気量、塩化物含有量、強度試験用共試体の採取を行います。一部省略することもあります。最近は、検査内容の第3者性を目的として、専門の試験会社に委託して行うことも増えています。
2)硬化後の検査
コンクリートが固まった後の検査です。打ち込みや養生環境が悪かった場合に適用することがあります。実際の壁等から丸く繰り抜いたサンプル(コア)で強度試験を行う場合と、シュミットハンマーを用いて強度推定する場合があります。
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3.コンクリート打ち込み前後の現場チェック(検査)
コンクリート工事にあたっては、予め必ず施工計画書の提示を求めます。施工計画書には、コンクリート調合計画、打設量、ポンプ圧送配管計画、生コン車の停車位置、現場の人員体制や打ち継ぎ計画のほか、配筋・型枠の施工要領書も作成させて、入念にチェックします。
また特殊形状の場所や配筋納まりが複雑な個所は、配筋納まり図を作成させます。
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1)打ち継ぎ計画
1回でコンクリートが打ち込みできれば、密実なものになるのですが、構造上そうはいきません。住宅では概ね階毎に打ち継ぎが発生します。場所によっては、垂直打ち継ぎが出てくることがあります。打ち継ぎ部分は、本来設計段階で考えておくべきものですが、設計内容によって複雑な形状の部分で打ち継がざるをえないこともあります。
打ち継ぎ部分は、レイタンスと脆弱なコンクリートを取り除き、外壁側には目地を設けて最終的にはシーリング材で止水します。
現場では、打ち継ぎ計画をきちんと決定することで、1回のコンクリート打ち込み量が決まる重要な作業です。 |
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2)配筋チェック(検査)
設計図・施工図に基づいて、配筋径、配筋ピッチ、フックや重ね継ぎ手、定着長さ、補強筋等が指示通りに組みたてられているかチェックします。この検査で見逃しがあると最早完全に見えなくなってしまいます。
また、この時合わせて設備・電気関係のスリーブ(壁や梁、床に開ける配管やダクトのための穴)、埋め込み電気配管・ボックス類もチェックします。内断熱の場合、外壁面の埋め込みボックスは、熱を持ちやすく、結露の心配があるため断熱ボックスにします。
コンクリート化粧打ち放しの場合、鉄筋と鉄筋を固定する結束線(針金)が型枠側に突出していないかどうか、全数確認します。耐久性には影響しませんが、突出していると、竣工後必ず錆が出てきます。 |
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3)型枠チェック(検査)
型枠が正常に取りつけられ、スペーサー(鉄筋のかぶりを確保するための道具)によってかぶりがきちんと確保されているか確認します。鉄筋の組み立て状況が悪いと、無理やり押しこんで、スペーサーがつぶれてしまっていることもあります。
窓等の下面は、特にコンクリートが廻りにくいところです。そのような場所は空気抜きを設ける方法と、コンクリートが廻った時点で板で押さえる方法があるので、相応しい方を選択します。いずれの場合も専任の職人を配備し吹き出しを防止する必要があります。
また内部に異物があることがあります。空き缶や図面が良く落ちていることがあります。強力な懐中電灯を用意し見付けたら除去させます。 |
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4)打ち込み中のチェック
施工計画書に基づいて適切な人員配置がされているか監視します。監理者以外に施工業者の総合監視役が絶対必要になります。
コンクリート打ち込みには、筒先操作、バイブレーター、たたき、左官均しがあります。そのうち特にバイブレーター役が重要です。良質なコンクリートを打ちこむためには、バイブレーターによる流しこみと充填、締め固めの機能が有効に発揮します。流しこみは、筒先操作の補助作業で、あまりかけすぎると分離してしまうので注意が必要です。充填とは、コンクリートが型枠の隅々まで行き渡る作業です。特に壁や柱の下の方が充填されにくい傾向があります。締め固めは、バイブレーターの振動を与えることによって、コンクリート内にある気泡や鉄筋の下にたまった水分、空隙を除去し、ブリージング(重いものが下に軽い水分等が上に浮き上がること)を防止するものです。
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4.打ち込み後のコンクリートの欠陥と予防法
打ち込み後のコンクリートには、ひび割れ、コールドジョイント、ジャンカ、空洞、かぶり厚さ不足等があります。100%防止することは困難ですが、出きる限り減らすことはできます。
1)ひび割れ
ひび割れは、コンクリートが水和反応を起こして硬化するときに、温度や湿度の影響がありますが、1番の原因は水の量だと言われています。ひび割れ防止のためには、水量の少ない調合とすること、水セメント比が小さく高強度のコンクリートを採用すること、打ち込み後の散水養生を確実に行うこと等が挙げられます。 |
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2)コールドジョイント
コールドジョイントとは、コンクリート打ち継ぎの際に、間を置きすぎて、先行打設部分が硬化しはじめてから、打ち継ぐと発生します。この部分には、レイタンスと言って、ブリージングによって発生した水分と一緒に、浮き上がって来た粉末状の物質が堆積したもので、コンクリートとしての結合力を持たないために、ひび割れ状態と同じものになってしまいます。
原因は、ミキサー車の到着遅れ、ポンプ車のトラブルが考えられます。ミキサー車の配車は、緻密な計画によって防止できます。ポンプ車のトラブルは、複数のポンプ車を用意することで対処できますが、住宅では費用が掛かりすぎてなかなか難しいことです。
コールドジョイントが発生してしまったら、凝結遅延剤を用いたり、レイタンスの除去等の対策を施します。
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3)ジャンカ
ジャンカは、モルタルが廻り込んでおらず、粗骨材だけが見えている状態を指します。俗に豆板と言ったりします。ジャンカが発生する原因は、バイブレーターの操作不良、隙間不足が挙げられます。隙間不足は、設計の問題でもあります。隙間不足のためにバイブレーターが入りにくいのも原因です。そのため、6cm程度のかぶり厚を確保する方法があります。かぶり厚の確保は、コンクリートの中性化を遅延させる効果もあります。
また電気配線が集中する個所等も危ないところですから、予め場所が特定できていれば、その部分のバイブレーター作業を入念に行うようにします。 |
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4)空洞、充填不良
ジャンカが小さな空隙だとすると、空洞はかなり大きなものです。基本的にはジャンカ発生原因と同じです。 |
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5)かぶり厚さ
かぶり厚さJASSで定めら、下記のようになっています。かぶり厚さがとれなくなる原因には、鉄筋や型枠の精度不良、ポンプ圧送時の衝撃、スペーサーのピッチ不足等が考えられます。鉄筋の組み立て状況が悪くて、無理やり押しこんで、スペーサーがつぶれてかぶりがとれなくなっているような場合は、もう一度型枠をばらし、配筋調整を行う必要があります。またポンプ圧送時の衝撃を考慮した支保計画が必要になります。スペーサーは、樹脂製を用いるのが普通になりました。樹脂製スペーサーは、強度に乏しいものが多いので、ピッチを割増するなどの措置を施します。
かぶり厚さは、コンクリートの中性化に深く関係があります。特に外部は重要です。かぶり厚さの確保は、コンクリート構造体の基本ですが、様々な危険があるので、耐久性を高めるために、下記寸法に10〜20mm程度の増し打ちをすべきだと思います。増し打ち仕様にすると、施工者は管理が甘くなることがあるので、施工の不具合を予測して増し打ちしているのではなく、高耐久の建物を目指していることを周知徹底するようにします。
コンクリートのかぶり厚さ(JASS5) |
部位 |
かぶり厚さ(mm) |
土に接していない部分 |
屋根スラブ、床スラブ、非耐力壁 |
屋内 |
30 |
屋外 |
40 |
柱、梁、耐力壁 |
屋内 |
40 |
屋外 |
50 |
擁壁 |
50 |
土に接する部分 |
柱、梁、床スラブ、耐力壁 |
50 |
基礎、擁壁 |
70 |
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5.経年劣化の種類と防止、補修
コンクリートの耐久性を低下させる最も代表的要因はひびわれです。ひび割れ原因は様々なものがありますが、耐久性に最も影響を及ぼすのは中性化です。中性化がひび割れを起こし、ひび割れが中性化を起こす関係にもあります。その他のもいくつかの劣化要因があるので解説します。
1)表面劣化
コンクリート打ち放しのままの外壁は、コンクリートの表面が、雨水や炭酸ガスで劣化し、下部の細骨材が露になっていきます。短期的には特に構造的な影響は受けませんが、中性化の始まりと言えます。撥水剤等で短期の劣化は防止できますが、基本は塗装を初めとする仕上げ材を用いて、劣化を防止します。塗装は、簡易な塗装からクラックが発生しても良い弾性塗装、20年もつと言われるフッ素やアクリルシリコン塗装があります。建物の設計内容や維持保全を考え、適切な塗装を選択します。タイルに代表される仕上げ材は、表面劣化を防ぎます。 |
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2)中性化によるひび割れ
鉄筋コンクリートは、引っ張りに強い鉄筋が圧縮に強いアルカリ性のコンクリートによって保護されていることで成り立っています。中性化とは、そのアルカリ性のコンクリートが外部要因で少しずつ中性に近づくことを言います。コンクリートが中性化するとやがて鉄筋が錆びて、錆びの膨張応力によって、コンクリートにひびが入りさらに錆びが進行していきます。その時が、鉄筋コンクリート構造の寿命です。
外部要因は、空気中の炭酸ガスや雨水中の酸があります。最近は酸性雨が問題になっており、環境条件が悪くなっています。
中性化の促進を防止し、コンクリートの寿命を全うするためには、十分な鉄筋のかぶりを確保することや、タイル等の別の仕上げ材を外壁に採用することが考えられます。最近は、雨水や炭酸ガスをシャットアウトする浸透性の皮膜剤がいくつか開発され、延命工事でも有効に利用できます。 |
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3)塩害による塩化物の浸透に伴うひび割れ
海岸線から200m以内を強塩害区域、4km以内を軽塩害区域と呼んでいます。強塩害区域では、風に乗った潮水が、直接構造体に振りかかる区域です。表面についた塩分はイオン化して内部に浸透してしまいます。また塩分はアルカリ骨材反応を促進する性質もあります。このような地域では、アルミやステンレスも錆びる場所ですから、必ず耐久性向上に有効な仕上げ材を用いることが鉄則です。 |
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4)温度影響によるひび割れ
地球上の大半の物質は、温度や湿度によって体積の膨張収縮を起こします。住宅の構造物では鉄筋コンクリート構造が特にその影響を受けやすい性質を持っています。
高温の夏には、日射による屋根面の膨張が著しく、その他との膨張率の差によってひび割れが発生することがあります。また、外壁面は、夏に高温となり、内部が冷房で冷やされると内外で温度差が生じ面外への反りによってひび割れが発生することがあります。
これらを防ぐ方法には、まず、大きく長い屋根や大きな壁面を作らないことが挙げられます。幸い住宅は小規模なので、膨張収縮による変形が小さいのが救いです。
次に、特に日射を受け易い屋上は断熱防水を採用する方法があります。屋根スラブの上部に断熱層を設ける方法です。
最も信頼性の高い方法は、外断熱工法です。外断熱工法は信頼性の高い工法ですが、夏の日射を遮るための庇やバルコニーといった外部装置が作りにくい側面を持っており、むしろマンション等の大型住宅に適しています。
一戸建て住宅では、あまり目くじら立てて外断熱する必要性はないと考えています。 |
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5)凍害によるひび割れ
凍害とは、僅かなひび割れ部分に水分が侵入し、侵入した水分が、凍結することによってさらにひび割れを促進してしまうことです。一般の関東圏では、あまりありませんが、北海道全域と東北地方の北部、東北・関東・中部の内陸部での発生が予測されます。 |
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6)その他の劣化
酸性土壌や酸性河川による酸や塩化物による劣化、火災・強度の地震によるひび割れや破損が考えられます。
酸性土壌や酸性河川については、設計段階の調査と設計内容への反映が必要です。火災は、火災予防措置を考える方法しかありません。
地震や火災により被害を受けたときは、必ず診断を受け、必要に応じて修繕や補強を行います。 |
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7)補修
コンクリートの欠陥を補修する材料や工法は沢山あります。ひび割れ補修、欠損充填、構造補強、アルカリ回復、表面コーティング等があります。アルカリ回復は、ある程度中性化が進んだコンクリートのアルカリ性を回復するものです。表面コーティングは、塩害や中性化を抑制するために多くは浸透性をもったコーティング材です。設計段階から考えておくこともあります。
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