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  2005年3月
   部位別耐用年数と計画修繕の方法


 住まいは、手入れを怠ると寿命が縮むと言われます。これは、早いうちならば簡単な補修ですむものが、手入れを怠ると、不良個所がその他の部分にも波及して修繕範囲が大きくなったりするからです。



1.法定耐用年数と部位別耐用年数
 法定耐用年数は、税法に基づく原価償却を基本に作られているほか、経済施策としての減税対策も盛りこまれているために実態にあわない部分があります。
 構造種別毎の法定耐用年数は、平成10年税制改正がありました。またそれ以外の部位毎の法定耐用年数は企業の会計処理場の数値なので参考です。 

1)住まいの構造形式別法定耐用年数
 平成10年の税法改正で、法定耐用年数は、下表のように短縮されました。
構造形式 改正前 改正後
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 60 47
れんが造、石造又はブロック造のもの 45 38
金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートル以下のものに限る) 20 19
木造又は合成樹脂造のもの 24 22

2)部位別法定耐用年数(参考)

構造又は用途 細  目 年数
電気設備(照明設備を含む) 蓄電池電源設備 6
その他のもの 15
給排水又は衛生設備及びガス設備   15
冷房、暖房、通風又はボイラー設備 冷暖房設備(冷凍機の出力が22キロワット以下のもの) 13
昇降機設備 エレベーター 17
消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備    8
日よけ設備 主として金属製のもの 15
その他のもの 8
可動間仕切り 簡易なもの 3
その他のもの 15
前掲の区分によらないもの 主として金属製のもの 18
その他のもの 10

3)構築物の法定耐用年数(参考)

構造又は用途 細  目 年数
緑化施設及び庭園 その他の緑化施設及び庭園(工場緑化施設に含まれるものを除く) 20
舗装道路及び舗装路面 コンクリート敷、ブロック敷、れんが敷又は石敷のもの 15
アスファルト敷又は木れんが敷のもの 10
ビチューマルス敷のもの 3
コンクリート造又はコンクリートブロック造のもの(前掲のものを除く) へい 15
その他のもの 40



2.現実的な部位別耐用年数

 各々の部位や機器は、年々の性能向上や丁寧な維持・管理によって耐用年数にはかなりのばらつきがあります。特に内装仕上げ材は、使用状況によってかなりばらつきが考えられるので以下の一覧表は目安としてとらえてください。
区分 名称 備考 年数
@建築部位 屋上防水・屋根 16
外壁 タイル・石 20
吹付けタイル 15
塗装 5〜20
シーリング 8
内装 天井 15
15
15
建具 30
外部金物・塗装 4
A電気設備 インバータ 7
分電盤 30
配線 30
照明器具 15
B空調設備 空調機 本体 15
部品交換 6
換気扇 本体 15
軸受交換 5
熱交換機 15
C衛生設備 給湯器 本体 15
部品交換 5
衛生器具 本体 15
付属備品 5
給水・給湯管 15
排水・通気管 15
ガス管 20
D防災設備 消火器 10
熱感知器 15
E昇降機設備 扉開閉装置 15
扉開閉モーター 23
ワイヤーロープ 7
制御ケーブル 17
カゴ内電気機器 12

2.計画修繕

1)維持保全の種類
 住まいの維持・保全は、大きく2つに分けることができます。
@竣工時の状態を維持するために行う維持・保全
 住まいは、時間の経過とともに少しずつ劣化していきます。前項の部位別耐用年数を見ても解る通り、早いものでは4〜5年したら交換しなければならないものがあります。これらの部位別耐用年数に応じて補修や交換を行い、竣工当初の状態を維持する維持・保全のありかたがあります。
A生活ニーズの変化や家族の成長に伴って発生する維持・保全
 ITの普及に伴って、電話配線を追加したり、子供の成長に伴って個室化の必要があった場合等に発生する修繕やリフォームを指します。予算の関係で竣工時に予め残工事として残しておいたものも含めて良いでしょう。
 この場合は、設計段階にどのように計画しておいたかが大変重要で、全く想定されていなかった場合、いわゆる道連れ工事が発生して大変大きな出費を伴う場合があります。

2)維持・保全の内容

@日常清掃
 日常的な清掃のほか、カビの除去等が考えられます。
A定期点検
 汚れや錆の発生状況の確認、横樋や排水ドレーン内の枯葉や土の除去も重要な作業です。基本的に見える部分の点検作業です。梯子が必要になります。
 入居した以降、放りっぱなしにしておくと、知らないうちに大変な事態になっているかも知れませんから、年末の大掃除の時でも良いですから、1年に1回チェックすることをお薦めします。
B事後保全
 電球の玉交換が代表的です。玉が切れたら交換すれば良いわけで、大きな問題はありません。
C予防保全
 設備機器類、例えば空調機や換気扇類は、耐用年数が過ぎると突然動かなくなるわけではありません。しかし、いざ運転停止という事態になっても、すぐに交換できるものではありません。冬の寒い時期に突然のエアコンの故障が起きたら、家族中大騒ぎになるでしょう。
 また、鉄でできている外廻りの仕上げ材や部品は、錆が進行すると、補修工事費が高くつくことがあります。
 そのような事態にならないよう、耐用年数が切れる時期になったら、計画的に部品や機器の交換、塗装の塗り替えを行うことを予防保全と言います。

3)部位による特徴

 竣工後5年位経過すると、外部金物の塗装、換気扇の軸受け交換、衛生機器の部品交換などが必要になります。シーリング材が8年程度であることも重要です。15年経過すると屋根防水や大半の設備機器類の交換時期を迎えます。内装仕上げについては、状況を見ながら判断すると良いと思います。

4)中・長期大規模修繕計画表の作成

 計画修繕表は、ワープロソフトや表計算ソフトを使って簡単につくることができます。横軸は経過年数、縦軸は部位にして作成します。また竣工時の引渡し書類に加えておく事も考えられます。
 計画修繕表があれば、いつ頃何をすれば良いか、一目瞭然です。これに予測される子供部屋のリフォームを合わせれば、住まいの修繕計画表として十分なものになるでしょう。
本ページは、作成者が20年に渡る建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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