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  2004年2月更新
   地域環境/町並みを考えた住まい


 魅力ある町には、どこか共通点があります。
 写真7は、関の町並みです。屋根にはいずれも瓦を使って似たような屋根形状と色になっているのが解ります。
 写真8は、ベネチアの町並みを高い位置から見たものです。全ての屋根が屋根は茶色の瓦で覆われているのがわかります。
 写真9は奈良井の町並みです。漆喰の白い壁下見板の壁が見えます。どの家も時間の経過とともに程よく日に焼けています。建具類も皆同じ色に見えます。
 写真10は、ヨーロッパの町並みです。各々の住まいには少しづつ違いがあるのですが、素材や形態に共通点があります。
 これらに写真1〜3を加えて考えてみると、歴史や風土の特性が感じられること、デザインモチーフや素材の使い方に共通点があることです。
 このようなことから、優れた町並みは地域が供給できる限られた自然素材と地域にある限られた技術によって
作られていることが解ります。
・建物の道路側の顔、門や塀、隣地との関係については、近隣環境・隣地との関係を考えるをご覧下さい。

1.都市計画の知識
1)都市インフラ
 まず都市インフラが構築されます。交通系の施設(鉄道や道路)、エネルギー関連(電力、ガス)、上下水道等がります。
給水、排水、ガス設備を計画します。また相応しい行政管理施設、学校、文化施設(図書館、博物館、美術館、その他)、公園等が法律にのっとって、建設されます。ゴミ処理施設や墓地、火葬場も必要不可欠な施設です。
 それらの適正配置を経て、民間活力が投入されることになります。

2)都市軸

 本来は地域環境で解説すべきことですが、都市を構築する際の需要な要素があります。都市軸です。都市軸などというと一般の方は『なんなのそれ!』ということになりがちですが、実際はさほど難しいものではありません。地域の特性に応じて都市構成の基本骨子を予め定めて、方位やエリアを理解しやすくするために作られた、設計手法のひとつなのです。実際は主要な幹線道路が都市軸と同一になるのが一般的です。
 地軸を意識している生物は沢山います。私達人類にとって理解しやすい方位は、東西南北、それに沿った都市軸ができれば、都市の合理的活動の基本構成ができたようなものです。

3)その他の軸とエリア

 都市軸が決まると、その次にゾーニングが定まります。基本的には、地域に相応しい施設を行政の施策によって限定することです。一般には経済原理がはたらきますので、概ね定めた地域に相応しくない施設はあまり構築されないのですが、まれに行政の意図や経済原理に反して、相応しくない建物が建造されることがあります。
 優れた町並みには、どこか共通点がります。秩序と言っても良いかもしれません。また、住まい手の想いや心を感じさせる建物が集まると、地域の景観になっていきます。

4)住宅地の都市計画
 住宅地の都市計画手法のひとつにクルドサックがあります。歩車分離のために通りぬけ道路を別に作って、袋小路状の街区を形成するものです。袋小路そのものを指すこともあります。ラドバーンシステムということもあります。


2.町並みを構成する要素
 一つ一つの家々、その他の建築物、道路、街路樹などによって、景観が構成されます。特に建築物は、地面に座った時から、景観の良し悪しを決める要素になります。

1)自然の恵み/水と緑と大地の起伏
 昔から長く使われているものは、そのまま生かします。川は流れを調整しようとするから様々な問題が発生します。樹木のしっかりした根と腐葉土によって山々は雨水をたっぷりと吸収し、ゆっくりと水を吐き出すことによって洪水が避けられています。長く使われた土地は、すっかり固まって地震に強い地盤が作られています。敷地内の緑や起伏はなるべくそのまま生かしましょう。もし、涌き水があるのなら、止めるのではなく何かに利用したいものです。
 そのような努力によって、地域の特徴を生かした景観を作る基礎が出来あがっていくと思います。


写真1 近江八幡

写真2 白川郷

写真3 椎葉村
4)目に見える都市インフラ
 道路、高速道路、陸橋、歩道橋、ぺデストリアンデッキ、街路樹、歩道、ガードレール、電柱等があります。このうち特に都市景観をそこねているのは、高架の高速道路やペデストリアンデッキ、電柱です。世界の有名都市、たとえば、ニューヨークやパリ、ロンドンの中心地にはには高速道路も、ペデストリアンデッキも電柱もありません。
 都市インフラの大半は行政によって形成されます。それに対しては、今後の行政の努力とNPOや住民参加のまちづくりを推進することによって少しずつ良くなって行くでしょう。

5)建築関係構築物
 
 建物本体、門、塀、生垣、植栽を含めた非構築空間等があります。さらに建物は、屋根、外壁、窓、及び各々の大きさや形、素材、テクスチャー、色彩等があります。また建物が敷地に対して建っている位置の問題もあります。このうち遠景の景観形成に及ぼす影響が大きいのは屋根・外壁・窓及び緑化が挙げられます。また近景になると、門、塀、生垣、建物の足元廻りの作り方、緑化の影響が大きいでしょう。
 建築関係構築物に関しては、行政による緑化の条例や都市景観条例等によって少しづつ進歩しつつありますが、個人の住まいについての行政側の姿勢は、まだまだ明快になっていません。住まいが作る景観を良くするのは、住まい手と設計者の努力です。
 


3.町並みづくりの一員として意識する
 優れた町並みに対して、現代の日本の町並みは混沌として、新しいもの・古いものが渾然一体となり、誰が見ても美しい町といえるところは少ないでしょう。著名な世界の建築家の中には、この混沌のエネルギーに価値を見出している人もいますが、それはシステムの問題であって、明らかに醜いのが日本の町並みです。
 このような現象は、工業技術が発展して、安価で施工性の良い材料の開発と多様な色彩、新しい建築構法(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、補強コンクリートブロック造等)が生まれたことによって発生したと言えるでしょう。
 しかし、この認識が、現代の技術を否定することに繋がってはいけません。重要なのは、住まい手と私達建築設計を業とする者とがこの現実をよく話し合い、努めて都市や町並みの景観形成に寄与しようとする努力であって、それによって解決できる道が開けているわけです。

1)大規模災害を考えた
住まいづくり/都市防災

 これは、都市景観という観点より都市機能の問題になります。行政施策と設計者の思想、住まい手の防災意識にかかわる問題ですが、いつ発生してもおかしくない大規模地震とそれに伴う火災に対しては、意識して考える必要があります。
 都市防災の主眼点は、災害地のメガ的な火災の延焼防止や交通問題の解決が挙げられます。密集市街地などでは法律に従うだけでなく、それ以上の耐火性能を住まいに取りこむ必要があります。また都市居住者の一員として、道路拡幅等に積極的に協力する姿勢が重要になります。
 もっとも、それによって全く予想外の出費や建物自体の存続が危うくなるケースについては、設計者としてのコメントは複雑になります。

2)地域の町並みを意識する/歴史と伝統の継承/風土を意識する

 最近の町並みには、地域性が少なくなりました。北海道を中心にした寒冷地域と沖縄を除くと、悲しいことに都市部には地域性が全くなくなってしまったのが事実です。農村地域ではまだまだ地域性が残っているのがせめてもの救いです。
 この現象は、巨大化した建材生産企業による全国展開、グローバル化による海外製品の台頭、品質のばらつきをなくすための国の施策等、時代の趨勢であると言えばそれで終わりになるわけですが、一方では地方自治体の主体性が叫ばれて、少しずつ変化しつつあります。
 個人としての私達ができることは、可能な範囲で地域を考え、魅力ある景観を作り出すためにひとりひとりが努力することです。

写真4 沖縄伝統の民家/竹富島

3)道路との距離や緑化、地域との調和を意識した住まい/地域に潤いを与える景観形成

@道路と建物の距離/隣家との距離
 低密度の町並みの場合は、さほど問題になりませんが、日本の郊外型住宅地で大変気になるのが、建物の道路との距離です。これは、建ぺい率制限がむしろゆるいところに顕著に現れます。建物の壁面線がある程度統一された町並みは、美しく見えます。写真5は、ロンドン市街で見かけたアパートの例でちょっと特殊ですが、階層毎にリズムと秩序のある壁面線が作る表情が見事に感じられました。
 日本には、壁面線を後退する規制はあっても壁面線を指定する条項は私の知るかぎりありません。良好な住環境を形成すべく定められている建ぺい率制限ですが、景観形成には、むしろ逆効果になっているのは残念です。
 良く言われるのですが、中央に中庭を作って隣地境界線から50cm(民法の規定)離すような設計も可能なわけで、そのような独り善がりの住まいがつい最近までまかり通っていたのは、不思議としか言い様がありませんでした。数年前、用途地域が抜本的に見直されたとき、第1・第2種低層住居専用地域に限って、壁面後退距離を自治体の判断で定めて良い事になりました。遅すぎたのではないかと思われる位です。
















写真5 ロンドンのアパート
A建築が刻む非建築空間を作る/緑化
 町並み形成のもうひとつのキーワードは、緑化。行政側で設置する並木道があるのと無いのでは大きな違いがあります。また緑化された住まいは、見るだけでも優しく感じられます。写真6は、シカゴの郊外にあるオークパークの町並みです。見事に成長した樹木を見ていると、森の木陰の住宅街と言っても良いくらい美しいですね。避暑地として代表的な軽井沢より緑が豊かなのではないかと思えるくらいです。敷地に余裕があるからと言ってしまえばそれまでですが、本当に羨ましい限りです。
 私達も住まいを作る際には、出きる限り緑化に心がけていきたいと思います。建築の設計をしていると、初期段階は建築を設計しているのか、建築で刻まれた外部空間を作っているのか錯覚を覚えることがあります。環境や景観を考えると、建築する行為は、建築の無い空間をどうやって作るかにあると言えるでしょう。
 また、緑化は都市部で問題になっている
ヒートアイランド現象を抑制する働きがあると言われています。東京都では、条例が定められました。


写真6 シカゴ・オークパーク
B地域環境との調和/景観形成
 建築物は、建物全体とそれらの部分の大きさと形態、色彩、素材から構成されています。地域景観に調和するようなデザインに努めます。この考え方は、デザインなどせずに隣の建物と同じ建物を作るという意味ではありません。周辺建物を良く観察し、努めて共通点を見出して意識して住まいを考え、地域の景観形成に努めるということです。
・屋根
地域景観に最も大きく影響するものは、屋根です。屋根の大きさや形は、建物の輪郭線を決定づけ、遠くから眺めた時の屋根の素材と色が地域景観のうちの遠景を形成すると言えます。
地域のランドマークとなる高い建物や高台から見える家並みが、写真の関やベネチアのようであれば、美しい家並みと言えるでしょう。

写真7 関の町並み

写真8 ベネチアの町並み
・外壁
 エッセイの欄でも少し降れていますが、外壁の素材、色彩も町並み形成に寄与しています。最近見た住宅展示場は、形も色彩も種々雑多なのですが、一般の町並みには無い独特の景観を作っていました。最も大きな理由はカーポートが無いことでしたが、もう一つは、タイル(模様)や石等テクスチャーの感じられる外壁材が多用されているのも大きな理由でした。つるつるピカピカではなくテクスチャーのある素材を使うという共通点があったのです。
 下の写真5は古い町並みです。壁面線が統一されていること、外壁の素材が木材と漆喰だけでまとめられているという好例です。

写真9 奈良井の町並み
・窓
 写真6は、建物のシルエット、外壁の素材、白い窓と、ドーマーウィンドウに似たテラスが共通点になっています。特に外壁のレンガと白い窓が見事なコントラストを表現していて、仲良く暮らしている住まい手像が浮かんできます。

写真10 ヨーロッパの町並み

4)住まい手が作る町並み

 住まい手が町並みの景観形成に、運用のなかで寄与する場を考えることも設計行為のひとつです。最近、クリスマスが近づくと家々で競うように点滅ランプを点している住まいをみかけます。昼間はわかりませんが、近くに行くとちょっと佇んでしばし眺めることがあります。
 設計上は外部にたった一つのコンセントを設けるだけですが、その設計者がそれを見ればつけておいて良かった思うことでしょう。
 厳しい経済状況の中でささやかな飾りですが、なぜか住まい手はどういう人なのかと想いを巡らせてしまう瞬間は大切だと想います。
 住まい手が自ら何かの手で住まいを飾る、なにかの情報を発信する、とても貴重な行為だと思います。その行為が群としての行為に変わると、町並みを形成して行きます。
@塀の演出
 ガーデニングが趣味の住まいは素敵です。つい最近NHKで放送された、千葉の菊の花の家。毎年テーマを変えて塀を利用して見事な菊屋敷を作る。自分たちだけではなく地域の人にも見てもらいたい、そんな心遣いを見事に表現していました。
A玄関へのアプローチ
 何気なく外から見える玄関へのアプローチ。高木や地被の緑の中に見事なガーデニング。四季折々の花々。
B窓辺の演出
 スイスは、窓辺の演出の国。あれだけ緑と高山植物であふれる国なのに、窓には必ず花々があります。写真8は、サイパンのリゾートホテル。ちょっと見にくいですが、バルコニーにブーゲンビリアの赤い花びら(実はガク)が見えます。写真9はベネチアの古いアパートの窓辺。あまり手入れの良くない朽ちかけた外壁(モーツアルトの家だったかも?)に穿たれた小さな窓辺に花々と緑がしつらえてあります。花越しに見える景色は水と建物だけの世界。きっと緑と花々を求めて飾る窓辺なのでしょうが、何も無いアパートよりひときわ目を引く建物になっていました

写真11 ホテルニッコーサイパンの窓辺

写真12 ベネチアのアパートの窓
B夜のクリスマスの演出 
 クリスマスを前に早々と地域に情報を発信する点滅灯。西洋から伝わった様式は、新しい伝統を作ろうとしています。



4.グローバル化の波/地域性は何処に

 今、世界に国境がなくなりつつあります。かつて、西洋列強が植民地政策によってできた都市が、実はロンドンであり、パリであり、ニューヨークであることは歴史が証明しています。植民地政策が無くなると、為替レート制という経済政策によって、産業の空洞化=擬似的な植民地政策が生まれました。グローバル化と文化交流を通じていづれは世界がひとつになる時代を迎えることになるのでしょうが、具体的にどのようになるかは興味のあるところです。
 グローバル化の代表的なものが、トイレです。和式トイレは今や洋式トイレに駆逐されつつあります。トイレの例はあまり相応しくないかもしれませんが、私達を取り巻いていた文化が、博物館でしか見れない遺物にしないよう、歴史と文化を親から子へ孫へと、住まい手が伝えなければならないと思います。すでに捨て去ってしまった日本古来の様々な伝統や習慣も同じです。もう1度見直して、復活することもできるし、精神だけを伝えることもできます。個人々々が真剣に考える時期に来ています。
 インターネット技術によって、あらゆる情報が得られる環境になりました。多くは無償の努力によって世界に発信されている情報です。その恩恵を素直に受け取るのは当たり前のことです。しかしそれらをどう受け取り、どのように利用するかは、個人の自由に任されているわけです。



5.地域環境・都市計画・都市景観・ランドスケープ・土木関係
1)リンク集
AIJ J都市計画委員会都市形成・計画史小委員会
JIA都市デザイン部会
JUDI/都市環境デザイン会議 中国ブロック
JUDI/都市環境デザイン会議
JUDI/都市環境デザイン会議関西ブロック
あいち☆すまい・まちづくり情報広場
アリスセンター
まちづくり関係リンク集
学芸出版社
学芸出版社/社会学検索
学芸出版社/住居学検索
学芸出版社/人文地理検索
学芸出版社/地域計画
学芸出版社/都市計画基本事項
学芸出版社/都市計画検索
学芸出版社/都市論検索
学芸出版社/土地利用
学芸出版社/土木工学検索
学芸出版社/統計資料検索
月刊まちづくりの焦点
建築リンク集 [建築・都市:都市計画]
交通工学研究会
国際都市研究フォーラム
新建築家技術者集団
新都市ハウジング協会
森林都市づくり研究会
神奈川県環境影響評価条例
神奈川県環境影響評価条例施行規則
神奈川県環境基本条例
神奈川県生活環境の保全等に関する条例
神奈川県生活環境の保全等に関する条例施行規則
千代田区街づくり公社
都市開発協会
都市計画協会
都市住宅学会
土木学会
東京都公園協会
東京都防災・建築まちづくりセンター
東京都立衛生研究所
日造協ホームページ
日本園芸療法研究会
日本交通計画協会
日本公園緑地協会
日本造園学会
日本造園組合連合会
日本庭園学会
日本都市計画学会
日本緑化工学会

2)学芸出版社/都市計画・都市環境URL集

街区・建築探訪
基本事項
景観まちづくり
健康・福祉のまちづくり
建設総合案内所
交通からみたまちづくり
公園・緑のまちづくり
行政からのまちづくり
阪神・淡路大震災
市民まちづくり
次世代都市整備技術研究組合
鹿島:サスティナブル都市コミュニティ
住宅・住環境まちづくり
循環型まちづくり
情報化
生態環境のまちづくり
地域活性化
農村漁村まちづくり
防災まちづくり
歴史を生かしたまちづくり

その他
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