幸福な食卓
 作家で中学教師の瀬尾まいこさんの作品「幸福な食卓」は、崩壊した家族の唯一の絆として食卓が描かれています。「我が家は朝ご飯は全員がそろって食べる。母さんがいなくなってからも正しく守られている(幸福な食卓より)」。では、――朝ごはんを家族そろって食べることは教育的に意味があるのでしょうか!?

 独立行政法人「日本スポーツ振興センター」のHPには児童・生徒の食生活に関する実態調査を公開しています。そこに大変、興味深いデータが記載されています。

 たとえば「身体のだるさ・疲れ」を感じるという事象に対し、朝食を毎日食べる子どもは15.3%が「しばしば」と答えています。一方、ほとんど食べない子どもは23.1%もいます。また、同じく「身体のだるさ・疲れ」を感じる事象に対し、朝食を家族と一緒に食べる子どもと、一人で食べる子どもを比較すると、家族そろって食べる子どもは14%が「しばしば」と答えるのに対して、一人で食べる子どもは22.8%となっています。(平成17年度/児童生徒の食生活等実態調査結果より抜粋)

 このことは朝ごはんを家族そろって食べることが、健康に役に立つことを示しているといえます。

 文部科学省は、子どもの生活習慣の乱れを学習意欲や体力、気力の低下の要因の一つとして捉えています。このため「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進しています。この問題を個々の家庭だけで解決するのではなく、社会全体で取り組んでいくことを訴えています。そして本運動を通じ、食育の普及を目論んでいます。

 このキャンペーン活動には、ファストフード大手のマクドナルドが協力しています。マクドナルドは「食育の時間」というデジタルコンテンツを開設し、学校の授業を支援しています。食育といえばスローフードをイメージするので、そこにマクドナルドが絡むことに違和感を覚える人も多くいそうです。わたしも感じます。

 ただ、食育に限らず物事は白と黒に分かれる訳ではありません。スローフードが正しく、ファストフードが誤っているという単純な論理は危険です。大切なことは朝、家族がそろって朝ごはんを食べるというかっては当たり前にあった光景を取り戻し、健康的な社会を築くことです。

陰山英男先生の 早寝・早起き・朝ごはんノート

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