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  2005年3月
   子供室の作り方


 子供室は、子供の成長に応じて柔軟に取り扱い、最終的には寝室と同じに作りこんでいきます。段階的に考えるのが基本です。
 一方、近年までの日本での子供室のありかたは、勉強部屋としての位置付けしかなく、その弊害としての引きこもり問題や親とのコミュニケーションをどのように確立するかが話題になったりしています。そのため、旧来からのワンルーム寝室の良さを見なおすべきではないかというような意見まで出て来たりします。
 ところが、そのような弊害は自立できないまま部屋を与えられたのが原因ではないかと言われたりします。欧米では、子供が個室を与えられるのは日本よりはるかに早い時期に行われているからで、それが子供の成長と自立を促しているという見方もあります。欧米には『子供室』という概念が無いことを理由に、日本での子供室の考え方そのものが間違っているかのような意見も出てきます。
 子供の教育に関する諸課題の中で、子供室のありかたに関する問題は、子供の成長環境のほんの一部です。まず子育ての基本理念を良く考えたうえで、具体的な建築のありかたを議論するようにすべきでしょう。



1.子供室の機能
1)収納機能
 幼児期や個室にならないうちは、収納や着替え室の機能の方が大きい時期です。子供が1人の場合は、最終形を意識して作ることも考えます。 
 子供が2人以上の場合は、収納類にはあまり投資せず簡易なキャスター付き段積みコンテナ類を利用してうまく乗り切り、大きくなってからきちんと作る方法があります。ユニット家具は便利ですが、将来もその商品が存続するとは限らないのが難点です。
 子供数が多い場合も小さなうちは仮設的に考え、大きくなってからきちんと作るのが良いでしょう。
 収納付きベッドも便利なものです。
 子供室の収納物は、衣服、おもちゃ、書籍、マンガ、CD、オーディオテープ、ビデオテープ、宝物(石、葉っぱ、コイン、切手、その他)、学校での工作や絵の作品等であふれています。なるべく自分で簡単に整理・整頓できるように誘導します。

2)遊び場機能
 幼稚園頃は、友達を呼ぶこと少ないのですが、小学校になると、かなり友達を呼んで家で遊ぶ頻度が多くなります。子供室を当てる場合と居間をあてる場合と両方あると思いますが、一人っ子の場合は、特に多用途利用が良いでしょう。
 多人数の場合は、子供室が有効に利用できます。様々な年齢が共存しあうことによって、子供たちの遊びの秩序を長男(女)がになってくれるでしょう。

3)学習室機能
 小学校低学年頃までは、親の居るところでしたい傾向があるようです。小学校入学を契機に学習机を買い与えても、親がそばにいる場合は別に、そこではあまり勉強しません。まだ独立心が芽生えていませんから、居間や食堂が重宝します。学習の際のテーブルと椅子の高さ(差尺)の関係があまり良くないので視力に悪影響があるのではないかとか、必要な照度をとって上げなければならないとか神経質に考える向きもあるようですが、学習時間を考えればさほど神経質になる必要はないと思います。小学校高学年からは、書斎に準じて考えます。
 多人数の場合は、個別寝室と共用学習室を分けて考える方法もあります。長男(女)が自分の学習に並行して弟妹達の面倒を見るありかたです。その場合は、寝室だけはプライバシーが保たれながら、学習については共同体あるいは、長男(姉)がリーダーシップをとる方法です。

4)寝室機能
 子供室の寝室機能は、小学校低学年までは簡易な考え方で良いと思います。特に複数の場合は2段ベッドやロフト利用を考えます。 

5)子供室への動線・他室との関係
 子供の生活を見守るために、必然的に親に顔を合わせなければならないようなプランニングをしたいという要望があります。2階に子供室を設けた場合に、居間に階段を設けたり、居間に接して子供室を設けるケースまであります。このような考え方は、大切なことですが、子供の側にとっては良いことばかりではありません。成長した子供にはプライバシーがあります。また、成長に伴って自立心を養うためには、幼い頃からプライバシーを尊重する必要があるとも言われます。部屋のあり方についても、成長に応じた自発的な使い方を誘導する必要も出てきます。
 ある著名な作家は、このような情勢の原因は、屋根裏部屋に代表されるかつての子供部屋は、孤独と退屈さによって、成長に必要な瞑想の時間が醸成されたのが、今や電話やテレビ、パソコン、冷蔵庫等の他ありとあらゆる物が氾濫して、考える余地を与えていないことを指摘しています。しかし、かつて『一億総薄痴化』すると問題になったテレビによって実際薄痴になった事例は聞きません。
 このような近年の傾向は、建築的な対処だけで実現できるものではなく、むしろ、子育て思想と日常生活のありかたに多く依存しているように思います。
 建築的には、プライバシーはある程度守りながら、気配が感じられるファジーな住まいが求められることになりますが、考え方次第であり方は変わるということも理解しておく必要があります。



2.子供室の建築的考え方
 子供室は成長に応じて段階的に考えます。親の考え方によって様々なケースがあると思いますが、門屋総合設計の考え方を加えながらまとめてあります。
1)子供室はフレキシビリティが原則
 1人の場合は、固定的でも良いのですが、多人数の場合は、成長に応じて考えていきます。子供には子供の社会があり、また長兄(姉)のリーダーシップによって親の育児負担が軽減されます。
 子供室は、フレキシビリティが原則です。成長に応じた簡単なリフォームや住み替えが必要になります。
 幼児期:親の育児期間、小学校低学年:大部屋時期、小学校高学年(または中学校)以降:個室時期、の3段階に分け、年次シミュレーションを行います。大学生等で別居する時期も予測が立てられれば加えます。これによって、リフォームや住み替えのタイミングをつかみ、最小の投資で対処できるようにします。


2)多人数子供室の作り方

@1ルーム型
 小学校低学年に集中する場合の構成は、1ルーム型にして家具類を周りに並べ、部屋を広く使うと、遊び場としても機能します。2人程度の場合は、予め扉を2枚用意しておき、所定の場所を間仕切れば個室とになるような工夫が考えられます。
A共用学習室+ベッドルーム型
 ベッドルームと共用学習室として分ける方法です。生活行為が明快になるので、親の側からの管理がし易い構成です。また、1ルーム型でコーナー分けする方法もあります。1ルーム型との比較を考えるというより、部屋の縦横比によって、適不適があると言えます。




3.年代別子供室の注意点

1)乳幼児期(0〜1歳児)

@位置と意義
 0歳児の頃は、寝室に余裕がある場合は安全を考え、寝室にベビーベッドを持ち込んで、養育することになります。この頃は、専用の子供室を設けても、納戸代りにして様々な育児用品を収容するのが整理しやすいでしょう。寝室に持ちこむ用品は必要最小限に留めておかないと、親の生活が大変なことになります。
 夜泣きが激しい子供の場合は、夫のビジネス生活も考えて家庭内別居をする家庭が増えているといいます。予備室が生きるステージです。
A乳幼児期の生活の注意点
 はいはいをするころになると、ベビーベッドは多少危険な存在になってきます。這い出すようになったら、親のベッドか、和室利用が便利です。
 何でも口に入れるようになるので、収納類の引出しには、市販されている簡易ロックをかけたり、コンセント類にはプラスチックの蓋をしておいた方が安全です。
 この頃は子供の遊び場の多くは居間やダイニングになることが多いですから、対面型キッチンやオープンキッチンの本領が発揮できる時期でもあります。

2)2歳児から小学校低学年頃まで
 子供の数や親の考え方によって、かなり様々なケースが考えられます。長男(女)の場合の寝室の多くは、親の寝室か、2世帯の場合は老夫婦が面倒をみることが考えられます。
 早くから独立心を育成するために、欧米方式に習って敢えて個室に寝かせる方法、続きの間に寝かせる方法、少子化や育児観の変化によって、出きる限り一緒に寝泊りする方法があります。少なくとも幼稚園児ぐらいまでは、就寝中も親の目の届く範囲におきたいものです。
 兄弟(姉妹)が多いと、兄(姉)が面倒を見れるため、大部屋の子供室に一緒に寝かせる方法があります。その場合の子供室は、寝室と学習室、着替え室、遊び場が渾然一体になった子供の城のようなものになるでしょう。
 この頃は、大部屋にしておいて後で区切ったり、ロフトの利用を考えます。

3)小学校高学年・中学生以上
 小学校高学年から、中学校になるといよいよ個室を欲しがります。それまで寝室、学習室、着替え室、遊び場が渾然一体になっていた部屋は、寝室、学習室としての専用用途に応じたプライバシーが保たれた部屋を考える必要があります。親の寝室同然の環境づくりが必要になります。



4.子供室づくりのその他のポイント
 幼年時代、特に2〜3歳時の体験が、青年期に多くの影響があることが解ってきました。過度のストレスは脳疾患の原因にもなるといわれています。そのためか、甘やかしは禁物といわれた昔の育児と違って、今は出きる限り愛情を注ぐ傾向になっています。
 設計者は、そのような住まい手の意向を的確に捉えると同時に、前項にも記載した、成長にともなう年次シミュレーションを考える必要があります。

1)屋根裏(ロフト)利用
 子供が小さな時は、ロフト(屋根裏)を利用するとスペースを有効に利用できます。また、子供はロフトが大好きで友達が来たらターザンごっこが始まります。
 ロフトは、収納やベッドスペースに利用できます。ただし、有効高さが1.4mを超えたり、収納スペース以外の目的で利用すると階や面積に算入されてしまうので注意が必要です。

2)内装
 汚れにくい堅牢な材料を使いましょう。汚れても簡単にふき取れる材料を選定します。場合によっては、落書きがそのまま残るような工夫も考えます。自由で多彩な色彩や形態が子供の成長に影響するといわれていますが、子供の心に最も大きな影響を及ぼすのは親の愛情と接し方、教育方針だと思います。 

3)色彩
 子供は白いキャンバスのようなものです。自由な発想は大事にします。しかしながら、成長とともに社会性を学ばなければなりません。落書きや傷つけの意味を良く話して、言い聞かせます。
 色彩は、特に子供室らしく作る場合と、寝室と同じ構成にする場合があります。将来の成長に応じたリフォームを考えると、敢えて子供室らしさを出さない方が合理的だと考えています。

4)アレルギー
 アレルギーに関する詳しい内容は、右のリンクをご利用下さい。
 住まいの室内アレルギーの大半は、カビとダニによって引き起こされます。カビとダニの発生条件は、人間の好む環境にかなり近く、やや高湿度を好む傾向があります。従って、結露防止の対策や換気が重要な要素になります。また、日常生活での清掃や除去作業も大切です。





・アレルギー/カビとダニへのリンク



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