門屋総合設計  〒224-0006 横浜市都筑区荏田東4-37-22 TEL 045-948-3007
 横浜市営地下鉄センター南下車徒歩10分  FAX 045-948-3008
e-mail こちらへ
TOP PAGE 理 念 業務内容 プロフィール 作品紹介 住まいINDEX 問合せ マップ リンク集
   2005年3月
   地盤の基礎知識


 地盤状況によって建物の構造形式や形状まで影響する場合があります。当然なことですがそれらが建設コストに大きく影響します。
 堅固な地盤は、地震に強く耐久性の高い住まいを作る重要な条件です。土地探しの場合も注意し、その土地の歴史や、敷地造成の状況も漏れなく調査するようにしましょう。
 一般に地盤情況は土地購入の際に土地販売会社から提示されることはあまりありません。これは、今の行政の怠慢だと私は思っているのですが、法治国家の宿命なのかもしれません。
 2004年末、新潟県中部地震で私たちが学んだ事は、建築基準法に基づいて建設しても、跡形も無く建物が土砂とともに流されることもあるということです。
 実例から私たちが学ぶことは沢山あります。例えば、最新の英知を投入して建てた建物と古い建物が揃って並んでいたのが、大震災で新しい建物が崩壊したという実例があります。後で良く調べると、古い建物は岩盤の上にあって、新しい建物は法律に従って、深い支持地盤(建物を支えられる地盤)に向かって杭を打った建物だったのです。これは、一般の方に不安を与えるだけのことになりますが、@地面の下のことは、きちんと調査をしなければ解からない、A特に木造建物は建物重量が軽いために、地盤に対する行政の指針や対応が遅れているといえるでしょう。



1.地盤の知識

1)地層の構成

 地学の範疇になりますが、東京から神奈川にかけての地層は、再下層に第4期更新世紀初期の上総層群が広く分布し、その上に比較的新しい洪積層が分布しているのが一般的です。さらにその上に沖積層が堆積している場合の多くが、いわゆる軟弱地盤です。
 古い地層は山側に新しい地層は海側に分布します。一般に古い層程堅く締まっており、建物の支持地盤として望ましいものです。

2)土質の特徴

 岩盤や砂礫層、ローム層(赤土)などは、基礎の支持地盤として最も適した土質です。砂層・粘土層は、洪積層に該当する場合は、一般に直接基礎が可能ですが、沖積層の場合は、地盤改良や杭基礎とする必要があります。特に砂室地盤の場合液状化(さらには流動化)しやすいので、必要に応じて対策をほどこします。
 その他、人為的に盛り土したり、後から堆積した表土の場合は、軟弱です。

3)地盤の液状化と流動化

 液状化は、地震が発生すると震動により地盤間隙水圧が上昇し、砂質粒子間の結合力が失われて液状になる現象をいいます。流動化は液状化した地盤が低い方向に動き出す現象をいいます。液状化しない地盤が流動化することはありません。ただし、液状化層の上の非液状化層は流動化によって動くことになります。
 液状化、流動化し易い地盤か否かの判定は、ボーリング調査のデータが不可欠です。

4)地盤の固さを示す指標の知識

@N値
 標準貫入試験で得られる数値で、数値が大きければ堅く良い地盤です。N値50が5m以上続く地盤に達したらそこが支持地盤となります。
A地耐力
 地耐力は、地表地盤が1uあたりどれだけ(単位はトン)の重量を支える力があるかを示すものです。平板載荷試験でデータを得ることができます。地耐力が5t/u以上あればOK判定されます。




2.敷地周辺調査

 敷地内や周辺建物等をよく見ると、ある程度地盤状況が推測できることがあります。設計者が始めて敷地調査する場合も全く同様な作業を行います。写真もとっておきましょう。敷地選定時の調査より少し詳細に行います。

1)敷地内調査

 古くから、長く宅地として使われて閉め固められた敷地であれば、かなり安定した良い地盤と考えてかまいません。樹木の根がしっかりと這っているようなところ、古いしっかりした家があったところ等です。
 スコップを持参して、地面を少し掘ってみましょう。コンクリートガラ、木材などの廃材等が出て来れば、新しく盛り土した可能性が高いと考えられます。

2)敷地外周確認

 コンクリートの擁壁等が無いかどうか確認しましょう。擁壁がある場合は、埋め戻しによって地盤が緩んでいる可能性があります。

3)敷地周辺状況確認

@建物等確認/周辺建物の外壁にクラック(ひび割れ)や補修跡、擁壁や塀などの隙間等があれば、あまり良い地盤ではないと考えられます。
A道路等調査/道路がうねっていたり、マンホールが突出したりしているところは、軟弱である可能性があります。地下を作る場合は、涌き水などにも注意を払いましょう。

4)河川、水田、池、勾配等

 河川や水田、池などが近くにあると、軟弱な水気を含んだ地盤の可能性があります。勾配の関係も良く見て、谷筋にあるかどうか等をチェックします。




3.地盤調査

 土地購入の際にすでに地盤調査資料がある場合は別ですが、地盤調査資料が無い場合は、専門業者に地盤調査を依頼します。

1)資料調査

 特別な地盤調査をしなくとも、当該敷地の状況が解る場合があります。
 地盤図、地形図、古地図などを比較しながら分析してみると、概略の地層構成やかつての状況が解ります。
 また、隣接する敷地の地盤調査結果を参照する方法です。役所で閲覧する方法と地盤調査会社を訪ねる方法があります。地盤調査方法を決定する上で貴重なデータとなります。その程度なら、設計事務所でも無償で協力してくれると思います。
 最近では、インターネット上でデータ配信しているところもあります。
 安定した堅い地盤であろうことが判明した場合は、念のため平板載荷試験か、スエーデン式サウンディング試験を行いましょう。
 あまり良い地盤でないと判明したら、スエーデン式サウンディング試験か標準貫入試験を行いましょう。
 支持地盤が深い場合は、標準貫入試験が最適です。

2)地盤調査の方法

@平板載荷試験
 最も簡易な地盤試験で地耐力を知るための試験方法です。地表面の強度しか解らないので、予め近隣の地盤データを収集しておきましょう。
Aスエーデン式サウンディング試験
 住宅等の小規模建築物の地盤調査として、実績があり経済的な地盤調査方法です。地盤が柔らかい場合は、深さ10m程度までの調査に適しています。 土の層土の強さ、地下水位のデータが得られます。軟弱地盤ではないことが解っていても念のため地盤調査する場合に向いています。試験個所は3箇所以上必要になります。信頼性に乏しい検査試験です。
B標準貫入試験
 最も信頼性が高く、一般的な地盤調査方法。合わせてボーリングを行い、土質試料を採取します。地下水位データも得られます。これによって深さに応じた土質とN値を得ることができます。N値50が5m以上続くとそこで調査を打ち切ります。
 住宅では、通常1箇所で良いのですが、敷地が大きな場合や支持地盤のレベル差が予測される場合は、2箇所以上の調査を行います。




4.地盤改良と基礎計画


1)直接基礎

 建物の基礎位置に所定の強度を持つ地盤がある場合は、直接基礎となります。少し掘削した部分に直接基礎を設けます。
 地下を設ける場合で、支持地盤が2mから3m位に位置していれば、直接基礎も可能です。

2)基礎設計の見直し、地盤改良と杭基礎の選択

 地盤が所定の耐力を満たさなかった場合は、基礎設計の見なおしか、地盤改良または杭を打つ場合があります。3つの選択は、コスト比較によって判断します。
 木造住宅で地耐力3〜5t/u程度のやや軟弱な地盤の場合は、基礎ベースの拡幅で対応できます。また、2〜3t/uの場合は、ベタ基礎にして不同沈下を均等化させる方法がありますが、将来の沈下そのものは避けられないので沈下しても良い対処(配管仕様、外部施設との取り合い)が必要です。

3)杭基礎

 杭は、支持地盤まで達する支持杭と摩擦力によって耐力を得る摩擦杭があります。これも支持地盤との関係で、コスト比較によって選択します。
 支持杭は、強度上は打ちこみ工法が望ましいのですが、騒音や振動問題から、近年では場所打ち杭かPHC杭のいずれかを選択します。一般には、プレボーリング拡大根固め工法が良いでしょう。

4)地盤改良

 地盤改良は、建物総重量や地盤の軟弱度、土質、軟弱地盤の深さに応じて適切な改良工法を選定します。
 木造住宅で地耐力が2t/未満の超軟弱地盤で、軟弱層が浅い(2m以内程度)場合は、表層土にセメント系固化剤を混合・攪拌する方法が有効です。軟弱層がそれより深い場合は、柱状改良工法(ソイルセメントや鋼管を使う)が一般的です。



5.地盤に関するその他の知識

 地盤に関する性能表示の行政上の動きもあるようです。今後、きちんと法制化して欲しいものだと思います。建物の基本条件のひとつが、実は地盤条件にあると認識する必要があります。土地選定の際に安いからといって地盤状況をチェックしないで済ましてしまうと、後で大きなコスト負担を強いられることがあります。
 地盤はマクロに考えると、地球というひび割れだらけの球体の上に、硬い層があり、その上に薄く柔らかい地盤がのっているようなものです。超高層建築物はそのすこし硬い地盤の上に建っていて、普通の住宅はその上の豆腐の上に建っているようなものです。

1)地盤沈下

 地盤は、長い時間に少しずつ締め固められ、必ず沈下していきます。特に、盛り土等の荷重により地中の間隙水が押し出されたり、地下水位の低下によって地盤が下がることを、厚密沈下と呼んでいます。
 地盤沈下は、建物と地盤が少しづつ均等に沈下するのであれば大きな問題は発生しません。しかし建物重量によって、建物だけが沈下する場合や、堅固な基礎や杭によって建物はそのままで、地盤だけが沈下する場合は問題が生じます。かつて都市部の工場地帯や、大規模地下工事付近等で地下水のくみ上げによる事故が多発した時期がありました。最近は地下水のくみ上げ規制のため少なくなっています。それでも超大型物件等で20〜30mの地下を掘るような工事では、地下掘削に伴う、湧水のくみ上げに伴って周辺地域の地盤沈下が発生することがあります。都心部の建物の足元廻りを良く観察してみると、随分多くの場所で、発生していることが解ります。
 住宅では、地盤が良くない場合、建物重量による建物の沈下が心配になります。僅かであれば問題ありませんが、ある程度の沈下量がが予想される弱い地盤の場合は、建物に接続されている配管をフレキシブル管にしたり、ポーチ、ステップ部分等に沈下しても良いような工夫が必要になります。
 ここで、地球規模で考える必要があるのは、例えば高さ1000mの建物は技術的にはできても、その重さで建物が沈んでしまうと言われています。そのために、地球規模の地盤が絶えられる単位重量にするために、建物の基盤を作る必要があるのです。
 土木工事の世界では、人工の山を作ると、その重みである時からいくら積んでも高くならない高さがあると言います。地球の引力が風船の皮より重くなった時です。そのため、山の心材として超軽量の発泡材が使われる所以です。






・土地の選定方法


2)沈下と不同(等)沈下

 建物は、余程堅固な地盤でない限り必ず僅かな沈下を伴います。沈下とは、地盤が建物重量によって短期または長期に渡って圧密をおこし、それに伴って建物が沈むことです。
 建物が何らかの理由で、不均等に沈下し傾いたりすることを不同沈下とか不等沈下と呼んでいます。
@地盤条件が不揃いによる場合
 地盤調査をしなかったり、調査地点が不足したために、地盤条件が敷地内で不揃いであるを知らず、そのまま建築してしまった場合に発生します。
A傾斜地での切り盛り 
 造成地でよくあるケースですが、傾斜地の造成工事を行ったときに、片側(山側の擁壁側)は切り土、片側(海側擁壁側)は盛り土を行った例です。土地購入の際は必ずチェックしておきたい項目です。
B建物形状の片寄り
 建物形状が偏っているために、発生するケースです。住宅では、軟弱な地盤の場合は気をつけます。大規模建築で、断面形状がL型になっている場合などは、地下の底盤(再下部のコンクリート板)の一部を1〜2mもの厚みにしてバランスを保つといった例もある位です。建設コストとの相談になりますが、単にデザインだけで建物の設計ができるわけではないことを良く理解しておく必要があります。
C異種基礎による不同(等)沈下
 異種基礎とは、ひとつの建物の中で杭基礎と直接基礎が混在するようなケースです。このような場合は確実に不同沈下が発生するので、通常エクスパンションジョイントと呼ばれる構造上の縁切りの措置を取ります。
 たまに見かけるのですが、急傾斜地で、片側は平坦、片側が3m位の敷地段差があるので、これは良かったとばかり、地下駐車場を設け、そこに建物を半分掛けて木造住宅を建てている例です。そのような構成の場合は、相応の地盤改良が求められることがあります。地盤耐力によって対処策は様々ですが、安易に行わないようにするのが大切です。
D不同(等)沈下による不具合
 不同沈下が発生すると、様々な不具合が生じます。建物全体が傾いたりすると、建物自体に常に横方向の力がかかることになります。建具が自然に動いてしまったり閉まらなくなったり、外壁にひび割れができたりします。地震時には倒壊しやすくなります。建物が折れ曲がるような曲げ応力がかかる場合は、さらに深刻になります。

本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
  メール:こちらへ 
  電話 :045-948-3007