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 2005年3月
   土地探しのポイント


 設計プロセス欄でも解説してありますが、土地にまつわる問題は、やっかいです。私の20年間の組織設計事務所での業務の中でも数回ありましたし、700人を要する会社の中では、しばしば土地問題のうわさが聞こえてきました。土地には、過去の歴史が積み重なっています。隣地同士や行政、あるいは地主の先代の口約束等もあります。土地購入の際には、それらの状況を不動産会社に念入りに確認する必要があります。
 以下に列挙したものは、それら民法上の舞台裏とは別に、客観的に判断ができるものを中心にまとめてあります。




1.敷地の基本情報と接道・現地確認
1)基本情報

 まず、地目敷地面積(公簿面積、実測面積)、測量図の有無を調べておきましょう。地目は宅地、実測面積が表示され、測量図があると出費が少なくて済みます。
 建築物をする敷地は、2m以上道路に接していなければなりません。またやや専門的になりますが、道路法や都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法による一定の条件を満たした道路(法1号道路、2号道路、計画道路)、既存道路(建築基準法施行時にすでにあった道路)、位置指定道路(私道で行政が指定した道路)、みなし道路(2項道路、建築基準法施行時にすでにあった道路で幅員が4m未満の道路)、その他を含めると概ね10種類の道路が建築基準法で定められた道路です。

2)土地の歴史と地盤の状態

 その土地の歴史も調べましょう。特に地盤の状態は最も重要です。無い場合は、地盤調査費の他、地盤状態によっては、地盤改良工事もしなければなりません。鉄筋コンクリート造の場合は、杭も必要になるかも知れません。その場合は大変な出費を余儀なくされます。安いからといって安易に飛びつかないようにしましょう。

3)現地の確認

 契約の前に必ず現地を確認しておきましょう。雨水や汚水のマンホールがあれば、だいたいは道路ですが、そうでない場合は、役所に出向き道路台帳を閲覧しておいた方が万全です。また、敷地の中に道路らしきものがある場合も同様です。
 まれに、地方部で、明らかに道路として利用されているのに、道路台帳に登録されていない場合があります。そのような土地には関わらない方が良いでしょう。もし、すでに購入してしまった場合や立替え時に事実が判明した場合は、昭和25年(建築基準法施行の年)以前の航空写真や近隣のお年寄りのヒアリングなどを行い、調査書を作成して、道路認定を行う必要があります。
 近隣の環境も見ておきましょう。周囲より低い土地は、水害の危険を伴います。日当りの悪い土地では、せっかくの新居の夢も台無しになってしまうかもしれません。

4)敷地の高低差

 道路との高低差も重要です。住宅の地下が認められるようになりましたから、段差を利用すると、うまく地下を設けられる場合があります。都筑の家は、その典型的事例です。




2.道路幅員

 敷地が面する道路幅員は、崖地等で拡幅困難な場合、緩和を受けているもの以外は4m以上必要になります。現状が4m以下の場合は、道路の中心線から2mまで敷地を後退する必要があります。既存建物があるからといって、そのままで良いかというとそうではなく、新築の際に必ず後退しなければなりません。例えば2.7mの幅員だったとすると、65cm分損をすると思いがちですがそうではなく、本来道路である部分を借りていたわけで、新築の際には、後退しましょうというのが、行政の考え方なのです。
 また、実際の道路利用を考えると、4mでも車庫入れは大変です。宅急便や引越車両等が駐停車する事を考えると、6mは欲しいところです。最近の大規模宅地は、概ね6mが最小幅員になっています。




3.敷地・道路境界の確認

 古くからの住宅地では、隣地や道路の境界線がはっきりしない場合があります。境界杭が無いケースです。法務局で登記簿を調べても、古い登記の場合、形状がかなり異なることさえあります。境界が明快でない場合、敷地面積や道路協会も定まりませんから、そのような土地は避けるべきです。土地の境界問題については、境界鑑定研究会のHPを覗いてみると生々しい事例が紹介されています。
 もし、自己所有しているものであれば、土地家屋調査士に依頼し、官民立会いの元、境界認定を行い登記します。測量図がなければ合わせて測量しておきましょう。最近、ある有名な先生の講演会を聴講しました。その中で、首都圏の土地の境界が確定しているのは、全面積の20%にも満たないとを知りました。山林なども含めてのことだと思いますが、まったく驚きました。
・境界鑑定研究会へのリンク

境界杭



4.土地・道路の高低差

 不動産会社で、土地の図面をもらったら、必ず現地に行きましょう。土地の高低差は、プロであっても、数字こそ頭に入っても、状況をつぶさにイメージに描くのは、余程熟練した人でないとできません。
 道路の勾配、道路と敷地の高低差、敷地内の高低差、隣地との高低差を調査します。北側斜面は、あまり望ましくありません。南斜面であっても、隣地が高く上がっていると、通風障害が懸念されます。
 特に道路との高低差については、住宅の地下が認められるようになりましたから、段差を利用してうまく地下を設けられる場合があります。都筑の家は、その典型的な例です。購入の際は、わざわざ高低差がある敷地を選んだのです。
・都筑の家へのリンク

擁壁のある土地



5.既存建物

 既存の建物(多くは古家)があるまま、売りに出されることがあります。そのまま使えるのであれば、それに越したことはありません。ただし、建物が古い場合は、耐震性の問題や設備機器の更新が必要になります。特に耐震性については、1度チェックする必要があると思います。既存建物の確認申請書(図面共)があれば、書類審査でもある程度は診断できます。
 それなりに使えそうであれば、数年我慢して、蓄財した上で新築するのも懸命な策だと思います。
 見るからに住めそうもない建物であれば、解体費が必要で、負の要因になってしまいます。古材を利用すると、解体費が余分にかかりますがなるべくなら利用したいものです。




6.土地の平面形状

 一般に土地の平面形状は、矩形が良いとされています。プランニングし易いからです。しかし、異形の土地形状であっても、豊かな設計が可能になることもあります。設計の最初の仕事は、土地をどう読むかから始まると言われています。土地には、地霊(ゲニウス・ロキ)が住んでいるなどとも言います。興味のある方は、キーワード検索してみて下さい。以下に道路との関係を中心に一般的な傾向をまとめました。これらは、いずれも東西面を向いている場合の傾向なので、実際には隣地との関係や土地の方向・形状によって、様々なケースが考えられます。

1)北側道路

@玄関が北寄りになるので間取りが作りやすい。
Aカーポートをうまく取りこまないと、建物が南側に寄って、日当りが悪いプランになる。

2)南側道路
@素直に計画ができる。
A北側道路に比べ、玄関が南寄りになるので1階の作り方に工夫を要する。

3)角地

@間取りの自由度が増す。
A自由度がある反面、2方向の道路からの視線があるので、プライバシー確保の点で工夫を要する。




7.特殊条件

 土地の売買については、特殊な条件が付くことがあります。
1)建築条件付き
 イサイズの『住宅大辞典』によると、『売買契約の際に「契約後3カ月以内に住宅の建築の請負契約を締結すること」を条件として、土地の売買契約を結ぶことで、「停止条件付き宅地」ともいう。建築請負契約が成立しないと売買契約は白紙に戻り、それまでに支払った代金は返却される。この建築請負契約での請負人(建築業者)は、「土地の売主」か「売主の100%出資の子会社」か「販売代理」の三者に限られる。購入者が勝手に建築業者を見つけてきて、その業者に頼むことはできない』とある。
このような土地は、事情あって出きる限り早く住宅を作るには適しているが、時間をかけて思い通りの住宅を建てたい方には、当然適切ではありません。

2)定期借地権

 新借地借家法によって、生み出された土地の権利方式で、契約内容によっていくつかの種類があります。戸建て住宅の場合は、『一般定期借地権付』の借地権が多く利用されています。50年以上の契約で土地を地主から借り、住宅を建設するものです。契約時には、保証金または権利金を支払い、契約が切れるまでは、借地料を払い、契約が満了すると、建物を取り壊し、更地にして、地主に返すしくみです。
 地主側は、土地を所有しながら、定期的な地代が得られ、50年経過すれば、自分の手に戻ります。借り手側は、土地を購入する場合に比べ、初期コストがかなり低減でき、数年前かなり話題になりました。この考え方は、有期限建築として、主に商業施設で多用されています。
土地の不動産神話が崩壊した今、確かに有効な手法ですが、50年経過した時に否応無し(更新の余地は話し合いによって可能)に更地にしなければならないのは、ちょっと抵抗がある人も多いと思います。その選択は、住まい手の考え方次第と思います。




8.法規制の状況

 法規制は、必ずチェックしておきます。良心的な不動産会社の場合、自分で足を運んで調査してくれますが、落ちが無いとも限らないので、役所で確認しておきましょう。最小限下記の情報が必要です。
 特に容積率は最も重要です。これによってその土地に建てられる建物の大きさの限度が決まってしまうからです。
 
 @都市計画
  ・都市計画区域(内・外)、市街化区域、市街化調   整区域、指定なし
  ・都市計画事業(有・無)、事業計画・事業決定      年 月 日 第  号
  ・事業の種類(道路・公園・区画整理・その他(     )
  ・再開発予定区域(内・外)
  ・開発許可(有・無)、区画形質変更内容(  )
 A地域
  ・用途地域 
  ・防火地域 
  ・建ぺい率 %
  ・容積率  %
 B日影規制(有・無)、 5m 時間、GL= m
             10m 時間、GL= m  
 C特別用途地区
 Dその他の規制
  



9.その他環境・立地条件の特性

 @気候条件一般
 A風害・水害・雪害等の過去の特性
 B電波の受信状況
 C日照条件、方位
 Dごみ収集場所
 Eその他
 



10.設備引き込みその他

 設備関係の引き込みは、電力、電話、テレビ(テレビ共聴、ケーブルテレビ等の有無)、水道、下水道、ガスなどです。

11.地域環境・利便施設
 
土地は、土地単体では判断できません。隣地や道路、近隣の諸施設、公園、鉄道網、バス路線等を調べておく必要があります。不動産会社は、プラス要員は良く教えてくれますが、マイナス要因も是非聞いておくべきです。
 いくつかの候補地が上がったら、下記の施設を地図上にプロットすることをお勧めします。
 
 @交通網

  ・鉄道
  ・高速道路、インター
  ・幹線道路
  ・バス路線
  ・その他
 A公共施設
  ・市役所、区役所
  ・郵便局
  ・警察署
  ・病院
  ・学校
  ・図書館
  ・公民館
  ・公園
  ・その他
 B利便施設
  ・デパート、スーパー
  ・コンビニ
  ・飲食店
  ・その他
 Cその他マイナス要因
  ・日照障害
  ・騒音
  ・墓地
  ・その他




12.土地価格
  
 土地価格は、路線価による価格と市場価格があります。路線価は地価税や相続税の算出ベースになりますが、実際の取引価格(市場価格)とは異なります。最近は、路線価と市場価格がかつてより近づいていますが、場所によってはまだまだ開きがあるようです。
 市場の土地価格は、利便性の高いところ程高くなりますが、同時に建築基準法上の容積率も高くなりますから、住宅地の場合、建築可能な面積に対する土地価格の単価は、不思議と同じようなものになったりします。土地を選定する際、手持ち資金と想定借入金額を合計金額から想定建築工事費を差し引いたものが、土地に要する予算ということになります。それと要求建物面積に見合う土地は、必ず得られるとは限りません。つまり、想定借入金が個人毎に異なるからです。
 したがって、土地選定の最大の決定要因は、残念ながら予算要因が最もウエイトが高いと言えるでしょう。特に首都圏とその他の都市圏では、土地価格に大きな差がありますから、関東圏ほど購入土地面積が狭いということになります。
 そうして、土地にかけられる予算が定まり、購入地域を定めると、候補はかなり絞られて来ます。今は、インターネットが普及して、土地情報は、家に居ながらにして調べられます。不況とは裏腹に、良い時代になりました。



13.比較検討

  下表は、5つの候補を挙げて、比較項目毎に評価し、◎、○、△、×を付けた例です。×がついた場合は、その時点で候補から除外されることにしてあります。Bは、最も大きな容積を確保できるが、周辺に飲食店があり、騒音が懸念され、単価が最も高い土地。物件Dは、閑静な環境ですが、鉄道駅まで徒歩30分を要し×。Eは墓地が近くにあり×。こうして、AとCに絞られ、結局Cに決まったというシミュレーションです。
 土地比較表
比較内容 物件A 物件B 物件C 物件D 物件E
接道
道路幅員
敷地・道路境界 ×
高低差 ○(フラット) ○(フラット) ◎(2m) △(3m) ○(フラット)
既存建物 △(有)
特殊条件 △(定借)
法規制
設備引き込み
地域環境 △(騒音) ×(不便) ×(墓隣接)
土地単価・面積 ×
評価順位
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