◆物件概要
渋谷区内の地下3階、地上7階のビルの内装改修物件である。知人の設計事務所から応援依頼によって参画したが、既存建物は3層分が飲食店舗、地上はオフィスビルであった。その地下3層分をクラブに改修するということは、遮音性能をどうやって確保するかが問題であった。
残念ながら、知人は、このような極めて特殊な遮音性能が求められる物件の設計経験が無かったので、当事務所の助言に最初は疑心暗鬼になっていたが、いよいよ音響コンサルタント事務所が参画する段階になって、クライアントを含めて非常に重装備の遮音対策が必要であることを始めて理解いただいた。
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◆遮音設計の内容
音響設計と遮音設計は全く異なる。音響設計は、いかにニーズに合った音を作り出すかが鍵になるが、今回のような巨大が発生する場合は、遮音こそに命があると言って良い。実際には遮音の領域を超えて、コンクリートの構造体の振動を抑えるために既存の構造体と内装材を完全絶縁する方法を採用した。絶縁して遮音し、そして適切な吸音を行なうのが一般的である。
1)床の構造
床は、既存のコンクリート床板の上に一旦高密度(96kg/m3)の厚さ25mmのグラスウールを二重貼りした後、新たに15cmのコンクリートを打設することにした。そのコンクリート床と既存の壁とは、同様に25mmのグラスウールで絶縁した。
2)壁の構造
既存の壁から15mm放した場所に、軽量鉄骨のスタッドを立て、それに厚さ15mmの石膏ボードを三重貼りした上で裏面には高密度(80kg/m3)の厚さ5cmのロックールを充填した。スタッドは上下共緩衝材を介して上下を支持した。
3)天井の構造
天井は防振ゴムの付いた防振吊りボルトに下地組みとして、軽量鉄骨を回した後、合板12mm+石膏ボード15mm+硬質木毛セメント板の3重構造とした上で、天井内には、3cmの珪砂を敷き詰めた上にさらに高密度(80kg/m3)の厚さ5cmのロックウールを置いた。
ボードと壁や梁の取り合いは10mmの防振ゴムを用いて絶縁した。
4)吸音方法
吸音は、すれば良いというものではない。あまりに吸音すると、音響環境が悪くなってしまうからである。
吸音は壁の上半分を吸音仕様(80kg/m3、厚さ5cmのガラスクロス付きグラスウールボード2枚構成/千鳥貼)とし、天井はボード下に千鳥貼りのガラスクロス付きグラスウールボード(80kg/m3、厚さ5cm)を設けた。一方、ステージ以外の壁の上半分は、全面吸音仕様とした。
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