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 2002年1月21日初出
   住宅に関するQ&A集/2002年1月号
メールで問い合わせのあった内容を紹介します。表現については、多少変えていますので質問者の方はご了解下さい。


Q1.ハウスメーカー、工務店、設計事務所の違いを教えて下さい。
2002.1.17

 ハウスメーカー、工務店、設計事務所の違いについては、様々な書籍やホームページでも紹介されています。当事務所では、このホームページの客観性を維持したい旨、それについては触れないようにしてきましたが、お問い合わせがあったのでお答えします。尚、ここで紹介するのは、比較的表面的なものに限定していますが、実際の建設業界の多重構造は、もっと複雑なものです。これは建設業界に限らずだいたいどの業界でも同じで、下請け、孫請け、曾孫請けの構造が存在しています。適材適所と言われますが、特に建築物を構成する部材や材料は膨大な点数と多岐にわたるメーカーによって支えられているのですが、その構造の紹介については、ここでは行いません。
 設計事務所の立場で、何が良いとか何が悪いとか業界の仕組みを論じることはできません。業界構造の実際は、互いが助け合う構造になっているのが実情だからです。また、素晴らしい技術力と思想を持ったハウスメーカーや住まい手の心を良く理解した優秀な工務店ならば、一般の設計事務所より優れた設計能力を備えたところもあります。極端な例ですが、住めない家を平気で作る建築家(=設計事務所)もいます。
 以下は、一般的な傾向だけの紹介に留めておきたいと思います。

1)ハウスメーカー

 ハウスメーカーは、まず事業展開が全国展開しているところが、他と異なります。中には、エリア限定のハウスメーカーもあります。多くのハウスメーカーは、実際はホワイトカラーで、提携している設計事務所や施工会社使って事業展開しています。優れた営業力と資本力によって支えられています。
 大きく2つの種類に分けられます。
@固定プランまたはメニュープランを用意し、販売活動を行っているハウスメーカー
 プレファブ化の進んだ建築構造方式を採用し、多くが複数のメニュープランを用意して、その商品販売のなかで活動しています。建物は、例えば店頭に並んだ商品だと考えて下さい。
 商品は、他社との差別化のための商品開発を行い、実大実験等の多くの技術に支えられています。また、販売促進のため住宅展示場やテレビ放映、新聞広告その他の多くの営業経費を費やしています。その代わり、材料の大量仕入れによるコストダウンが可能なために、一般には、高品質でありながらローコストの住宅が可能です。また、品質も安定しています。ただし、ハウスメーカーに共通の傾向として、エアコンや照明器具、カーポート、門扉などの外構、植栽工事などは別途扱いなので、実際の完成価格は、カタログ価格よりその分高くなります。
 また基準の内装仕上げや造作を基準外仕様にすると、大量仕入れのシステムに乗らないのでその分高くなります。
 固定プランやメニュープランのために、不整形な土地や小さな土地では建てられないことがあります。
A自由設計を旨としたハウスメーカー
 自由なプランを構築しやすい特定の建築構法を採用し、高耐久、高断熱、高気密、健康住宅等を売り物として、企業活動しているところが趨勢です。
 多くは、自社の施工部門のほかに、提携の設計事務所や施工業者を使って、設計・施工を行います。基準仕様を守るほかは自由な設計が可能です。
 設計事務所に直接依頼するのと異なり、ユーザーの予算措置の不安解消のため、自由設計とは言っても標準の仕様(材料や機器のメーカー指定)を持っているところが多くあります。それによって、目安が明らかになるというメリットがあります。
 組織力を生かした体制によって、特定の建築工法や付加機能を相応の開発コストを投入しながら、高品質な住宅が提供されています。品質も安定しています。
 設計事務所が関わることが多いので、設計行為は一見同じです。しかし、建物性能の基幹となる構造体等の仕様が決まっているので、その仕様は通常変更できない一方、最低限の性能は保証されます。また、現場の管理は、ハウスメーカーの独自の管理体制で行われるのが通例です。
B複合化したハウスメーカー
 実際は、上記の両方を備えたハウスメーカーもあり、分類やそれに伴う傾向は一義的に断定することはできません。

2)工務店

 〜工務店といったり〜建設といったりしていますが、内容は同じです(法律にもとづく資格制度の詳細については調査中です)。木造を得意とするところと鉄筋コンクリート造を得意とするところ、両方こなすところがあります。建築士法と建設業法の両方の資格を持っているのが一般的です。
 全国展開している大手総合建設業(ゼネコン)とは異なり、多くは地域に根ざした事業展開を行っています。設計以外に施工を伴うところが、設計事務所と異なるところです。敷地の形状や顧客の意向に応じて、自由な設計が可能な点は設計事務所が設計する場合と同じです。中には、ハウスメーカー同様独自の工法や付加価値のある高性能の住宅を手がけているところもあります。
 また、設計については特に建築士法に基づいた資格がない場合は、別の設計事務所と提携したり、設計事務所を下請けで使っているところもあります。資格があっても企業経営の観点から、設計事務所を外注に使う場合もあります。

3)建築設計事務所

 建築設計事務所には、3っつの資格があります。建築士事務所登録しているハウスメーカーや工務店の場合も全く同じです。一級建築士、二級建築士、木造建築士があります。木造建築士は延300u以下で2階建てまでしか設計できません。二級建築士は、木造以外の建築物も設計できますが、用途と規模に制限があります。一級建築士はあらゆる規模と用途、構造の設計が可能です。
 また、建築設計は、医療業界と同じように技術革新がどんどん進んでいるので専門分化の傾向があります。一般的な設計事務所は、意匠系の設計事務所(デザインを中心として事務所で、プロジェクトを総合的に推進します)のことを指しています。ほかに、構造設計事務所、空調・衛生等の設備設計事務所、電気設備系の設計事務所、施工会社の現場の施工図作成を専門にする事務所、建築積算や耐震診断等を主な業務とするコンサルタント会社、さらにそれらを支援するパースや3Dを作成する会社、模型会社等が一般的です。実はこのほかにも沢山の関連業種がありますが、ここでは割愛します。
 工務店が建築士事務所の資格を持っていれば、法律上の取り扱いは同じです。これに建設業法上の資格が加わるだけです。
 設計事務所は一般に零細です。数百人から1000人を超える設計事務所もありますが、住宅設計の多くは零細な設計事務所が行います。
 理由は極めて簡単で、企業収益を考えると住宅は手間隙がかかって企業経営のうえでは、マイナスになりやすいからです。零細な設計事務所であるが故に、間接経費(営業経費、光熱費、建物維持管理費、その他間接業務の人件費)があまりかからないので、比較的安い単価でも可能になります。
 設計事務所が、住まい手から住宅の設計を直接受ける場合は、沢山の打ち合わせを通じて住まい手の意向に従って、夢を具現化していきます。
 それでは零細な設計事務所が万全かというと、最も大きな弱点は、もし万が一瑕疵(設計の不備)があったときに、零細なので保証ができないことがあげられます。しかし、これも建築家保険に加入している設計事務所なら安心です。
 このようにお答えしてくると設計事務所が最も良いという答えだと思われそうですが、私はそのように申し上げているわけではありません。

4)大事なことは信頼関係とトータルマネジメント

 ハウスメーカーや工務店、設計事務所のいずれにも、能力の較差はあります。特に零細であるが故に設計事務所のばらつきが実際は最も大きいのではないかと考えるのは自然だと思います。ハウスメーカーと比較すると設計事務所による設計は、カスタムメイド=一品生産です。経験ある極めて優秀な設計事務所であれば、高品質の住まいを提供できますが、中には図面や仕様指定がいい加減で施工者にお任せの事務所もあると聞きます。そのような事務所は一般にデザイン志向の事務所に多いと聞きます。
 設計行為は、個人の資質によるところが大きいのは、誰でも推測できるところだと思います。また若い感性を信じて、デザイン重視の住まいを求めることもあるでしょう。そのような観点から多数の実績があり、信頼性の高いハウスメーカーや工務店に依頼する方もいるのだと思います。これらは仕方がないことで、たとえば、デザイン能力の高い設計事務所と施工能力の高い業者を使うというプロジェクトマネジメントの考え方を推進するのは、社会生活の長い方は誰でも考えることです。


Q2.コストのしくみが良く解りません。建設業者に依頼すると直ぐ見積りが出てきます。設計事務所に依頼すると、設計ができてもいないのに見積りができるのはおかしいといわれますが、どういうことですか?。
2002.1.17

 それは、恐らく住まいを単なる商品のようにお考えだからだと思います。 住まいが店頭に並んだ商品なのか、手作りでこころをこめて作りこんでいくかの違いです。 商品と考えれば、選択すれば良いわけで、性能を良くみてニーズに合えば購入するだけです。設計事務所が設計する住宅は商品ではなく、住まい手との対話を通じて一つ一つ丁寧に作り上げていく1品生産の手作りの構造物です。
 ただ、一般的な相場はありますから、概ね坪いくらというのは言えますが、地盤状態や設計内容も決まっていないのに、見積書が出るのがおかしいというのは妥当な意見だと思います。

Q3.先日、鉄骨ハウスメーカーに見積り依頼したら、700万近い差がありました。どうしてこんなことになるのでしょうか。
2002.1.17

 もう少し詳しい情報がないと、回答が難しいのですが、建設業界は競争社会ですから、そのような見積りの差はしばしば発生します。この仕事を特に取りたいと考えれば、努力して安い値段をつけてくるでしょう。またラフな図面で見積もった場合ほど価格差は顕著になります。材料のグレードは業者が決めているのですからあたりまえです。まれに見積り落ちや計算ミスのこともあります。
 ただ、気をつけなければならないことがあります。一般的に必要な図面のほか、詳細図や材料を具体的に指定した仕様書(図面に書きこむこともある)等がきちんと整った設計図に基づいたものであれば問題ありませんが、簡単な図面だけで作成された見積りの場合、あとで具体的なもの決めになった時、かなりの制約が発生します。安い見積りほどそれは顕著になるでしょう。一方、安く作ることが目的ならば、それで良いという方もおられると思います。


Q4.今考えている敷地は、三角形なのですがハウスメーカーに検討依頼したらうまく行きません。一度も、現状を見ないでプラン・見積もりを出してくるところもあれば、丁寧に現状をみて、奇抜なプランを作ってきてくれたところもあります。一番気に入った設計士の話だと、やっぱり、鉄骨だと小さい三角形の土地には向かないと言っていましたがそうなんですか。
2001.1.17

 現状をみないでプラン・見積りを出すとは、随分いいかげんな会社だと思います。その場合の見積り金額は、参考程度でしょう。あとでいろいろな注文を出すと、どんどん追加請求が来ます。どのような三角形なのか解りませんが、三角形の土地には、ハウスメーカーの軽量鉄骨では対応できません。重量鉄骨ならば、Gコラムといって、丸柱を使った鉄骨で対応可能です。鉄筋コンクリート造の場合、どんな形でも可能ですが、地盤が悪いと基礎工事にお金がかかります。

Q5.ハウスメーカーや建設会社に間取り検討をお願いすると必ず、〜会社+〜設計事務所と書かれています。その設計事務所は、普通よくある一級建築士や二級建築士とどこが違うのですか。同じなのですか。
2002.1.20

 設計事務所は、建築士法という法律にもとづいて登録されているもので、ハウスメーカーや建設会社と提携あるいは下請けしてしていても全く同じです。設計事務所は、多くが零細で営業力に乏しく、経営が厳しい場合はハウスメーカーや建設会社を頼った結果だと思います。

Q6.手抜き工事や欠陥住宅を避けるためにはどうしたら良いでしょうか。
2002.1.20

 難問です。手抜き工事や欠陥住宅は多くがその住宅を施工した会社の企業理念に関わる問題だからです。よく現場に足を運んで現場をみましょうなどと言われますが、余程勉強していないと、プロでもなければ見ぬけないでしょう。事後処置になりますが、写真を一杯とっておくと良いでしょう。
 多くの施工会社は、良心的によい仕事をしているので、一概に言えませんが、第3者として設計事務所が監理するようにすれば、手抜きはなかり防止できると思います。

Q7.コストダウンするにどうしたら良いですか。
2001.1.20
 まず、安さだけを重要視するならば、メニュー住宅を供給しているハウスメーカーにお願いする方法があります。120uで1000万の住宅もあるそうです。
 敷地が不整形の場合や敷地が狭い場合は、ハウスメーカーの住宅では敷地に入らない場合もあります。そのような場合は、工務店や設計事務所にお願いして設計します。予算をはっきりしておきましょう。建物全体を整形にしたり、既製品だけを使ったり、材料の種類を少なくしたり、全体から細部に渡ってひとつひとつを工夫します。空調や照明器具はディスカウントショップ等で直接購入する方法もあります。また、施工会社間の競争原理を働かせてコストダウンする場合は、設計事務所に依頼するのが懸命です。

Q8.業者の競争原理によってコストダウンがはかれるとのことですが、手抜きされたりしませんか。
2002.1.20

 設計事務所(ハウスメーカーの下請けでない)が設計して、別の施工会社が施工する場合は、工事現場の管理は(設計事務所が行う管理は監理と書きます)、建築主の代行として、設計事務所がきちんと行います。設計図がきちっと作成された上での契約に基づいての施工であれば、設計図の内容に従う義務がありますし、コスト競争による手抜きが無いよう、設計事務所が責任をもって監理しますので、心配いりません。


Q9. 木造従来工法だと、最近やたら安いものがありますね。今日も、新聞のチラシをみて 驚きました。なにか裏があるのでしょうか。
2002.1.20

 裏はないと思います。企業努力でしょう。多くは大量仕入れのたまものだと思います。そのかわり、自由が制限され、敷地に入らない建物がでて来るわけです。その場合の住宅は、店頭に並んだ商品だと思えば、ご理解いただけると思います。

Q10.ハウスメーカーだとそれなりに便利なところもあって、仮住まいの準備から・引越しのことまで、なんでもやってもらえそうでした。「設計事務所」にすべてを依頼したとしたら、なにが起きるのでしょうか。
2002.1.20
 なんでもやってもらえると思われるのは、心の健康上大切なことですが、実はそれらのフィーは、全て建設コストに上乗せされていると考えるのが正しい理解です。『ただ』などということは企業経営上あり得ないことです。設計料も恐らく『ただ』という答えが返ってくると思いますが、実際は、それも、建設費に含まれています。
 また、設計事務所に全てを依頼したらどうなるかとの問いですが、正直なところ、それらの業務に自前で対応できる設計事務所は皆無だと考えられます。もともとそれらの業務にを行う資格が無いからです。ただし、不動産会社や引越し業者との間にたって、その窓口業務をすることはできると思います。

Q11.設計事務所は、ハウスメーカーとはこんなところが違いますといった話が聞けるといいと思います。実際に建築する人は?コストは?
2002.1.20
@ハウスメーカーとの違い
 ハウスメーカーとの概略の違いは、前記しました。ハウスメーカーはモノを売り、設計事務所はソフトを売っています。さらに理解しにくい面は、そのハウスメーカーの下請けをその設計事務所がやっているということだと思います。これらの重層構造は、実際は建設業界だけのものではなく、零細で賃金が安く営業能力に乏しい設計事務所の生き残りの手建てとお考え下さい。
A実際に建築するひとは?
 設計事務所が設計した場合に、実際に施工するひとは自由です。住まい手側で個人的な繋がりのある業者を使うこともあれば、建物の内容に応じて数社を選定し、見積りをとって競争させたり、入札させたり、方法は様々です。
Bコストは?
 設計事務所に設計を頼んだときにコストが安いか高いかということだと思われますが、これから設計をするのであれば、安い高いは言えません。設計内容に応じてコストが決まっていくからです。お仕着せの住宅と手作り住宅のコスト比較をしても意味がありません。設計内容のレベルが高ければ当然コストはあがります。そのレベルの設定は、設計段階で設計者と住まい手がじっくり時間をかけて一つ一つ決めていくものです。設計者は、予算を見ながら、できる限りのアドバイスを行います。住まい手の意向によって安くも高くもなるのが、設計事務所の設計です。予め予算が決まっている場合は、それに合わせた設計を行います。
 自由設計のハウスメーカーに依頼する場合は、同じ設計内容であれば、企業努力でコストダウンが図られている一方、企業経営に必要な、開発費・広告宣伝費・社員人件費・各種経費・企業収益の分が必要になるため、その差し引き分だけ設計事務所に依頼したほうが安いと考えるのが一般的です(厳密には、設計事務所にも経費があり、工事費と設計費を合わせた金額で比較すべきですが)。また、設計事務所が設計し、別の施工会社に施工させる場合は、競争原理を働かすことによって、コストダウンをはかる道があります。

Q12.業者を選定するにあったって、設計事務所の技量が問われますね。
2002.1.20

 候補となる業者をどこにするか、建築主から依頼された場合は、設計事務所の情報網があるかないかの能力の差は大きいと思います。最終的にどの業者に選定するかは、経歴書を初めとして見積り内容の査定を行い、適切な業者を推薦します。2社程度に絞って、推薦することもあります。必ずしも1番安いところを推薦するとは限りません。ただし、最終意思決定は、住まい手によります。


Q13.安くても悪質業者では困るし、といって、高い業者でもこまるし。業者の選択(これは、私が今、設計事務所の選択に似ていますが)は、今までの実績等で選択するのでしょうか?実績は別にしても、現場管理等で、補えるものなのでしょうか?
2002.1.20
@業者選定
 業者選定は、まず適切な規模の会社を見付けることです。大きな会社ほど大きな物件をこなす傾向がありますから、今計画している物件に近い規模を得意としているところが良いと思います。次になるべく地元の業者が良いでしょう。何かあった時の対応も迅速にできるでしょうし、小回りがききます。他の建築主の評判も聞いておきましょう。そのような中で数社に絞ったら、経歴書等を取り寄せて、過去の実績を良く調べ、類似物件の状況や得意とする工法、デザインの傾向(設計が自前の場合)、社員数等をチェックしましょう。
A設計事務所選定
 設計事務所の選定の方法は、業者選定と基本的には同じだと思います。けれども実績の少ない設計事務所がだめかと言えば、若若しいフレッシュな設計者に道はないと言っているようなものですから、若さも魅力の一つなのではないでしょうか。現場でのもの作りは、住まい手と設計者と施工者が一体になり、信頼関係があって始めて良いものが出来上がります。設計事務所には、そのような体制を作ったり、良好な関係を作ることも求められます。建物規模にもよりますが、住宅の場合はだいだい担当者1人でやりますので、担当者の人となりと意欲をチェックしておきましょう。
B実績は別にしても、現場管理等で、補えるものなのでしょうか?
 現場監理で補えるかというのは、設計者の未熟な設計内容を現場の品質管理能力でカバーできるかという問いだとすると、何とも答えられません。一般に業務実績の多いところは個人のノウハウもあるでしょうから、そのようなところは、設計もしっかりしているのではないでしょうか。良い仕事をするところは、コストも良い(高い)傾向があります。これは当然なことで、そうでなければ企業経営は成り立ちません。そのようなところであれば、管理もしっかりしているでしょう。
 良い評判も聞けず、実績の不安があるような業者の場合は、誰が監理するかが重要です。その次に監理者に権限が与えられているかが鍵になります。あまり良い表現ではありませんが、設計事務所を下請けに使って設計図を書き、設計者とは名ばかりで、監理の権限が与えられない場合は、業者主導で現場が流れていきます。また、自社の設計部が設計した場合も、力関係から設計者が現場から押しきられてしまうケースもあるようです。そうすると手抜きが有ったか無かったかは誰にも解りません。大半の良心的な施工者はきちんとやってくれますが、実際、そういうような仕組みが主たる原因で欠陥住宅や欠陥建築ができているのは事実です。
 建設省(国土交通省)は、そのような業界の実態を重視して、よくある代願(名前貸し)による弊害を排除するために、建築確認時に提出する書類に記載された監理者は、現場の監理の全ての責任を負わせるという強硬な姿勢をとり始めました。業者と監理契約していなくても責任を負わせるということです。これは、代願によって、細々と生計をたてている設計事務所には大変なことで、恐らく代願をする設計事務所は少なくなるでしょう。
 現場での中立な立場での監理行為をお求めならば、設計事務所に設計を依頼して監理させるのが、最も適切だと思います。その場合は、築主の代理人として権限を与えられ、相応のフィーをいただいて、きちんと監理します。

本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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