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  2001年11月16日
   原風景について


 原風景とは、建築業界でかつて議論になった言葉です。誰が言い始めたかご存知の方は教えて下さい。きっと小説家か心理学者あたりが考えた言葉のような気がします。私は原風景とは、人が誰でも持っている自分のルーツともなるべき懐かしいシーンだと理解しています。その風景は、記憶に刻印されていることもあるし、もしかしたらセピア色になった写真に原点があるかもしれません。今の子供達が大人になったらビデオかも知れません。思い起こすだけでいつも優しく、光に満ちあふれた光景か、思い起こすだけでいやになるシーンもあるかもしれません。それが、人々あるいは建築を設計する人に大きな影響を及ぼしているという、論理です。懐かしく思う人、いやだと思う人、でも多くの人は肯定的でしょう。
 人が、過去を思い起こしただ時、浮かんでくる光景と言ってしまえばそれまでですが、過去の光景は良くも悪くも、私達に影響を与えています。
 設計者が、住まい手の環境や生まれを知りたがる理由はそこにあります。 私の原風景は、一言で言えば田園風景です。遠くにかすむ筑波山、広い屋敷とせみ時雨の裏山、四季折々の屋敷の花々、初夏の林の花々とまむし、夏の草いきれ、蛙の声、かびと石灰の匂いのする蔵、臭い味噌蔵、田んぼの香り、菜の花の匂い、風が吹くたびにうるさく鳴る窓、脱穀の音、大工さんの電気カンナの音、もちつきの音・合いの手の声、坂を下る自転車のブレーキ、伝染する犬の遠吠え、隣のおばさんのくしゃみ、汽車の警笛、度々の停電、ろうそくの光、屋根裏のねずみ、枕本にいた青大将、屋根に干したの布団の上での昼寝、瓦の隙間の雀の巣、春のつばめのさえずり、こたつの煉炭に酸欠になった可愛そうな猫、首筋を切られて血抜きされ料理されるのを待つ吊られたにわとり、抱っこして育てた可愛い豚の子、屋根を突き破った竹、木小屋にある納豆、ウサギに噛まれた思い出、牛のためのノルマの藁の裁断、つるべ井戸と手押しポンプ、薪で風呂をたくときのついでの楽しみ=焼き芋・焼きニンニク、腹がへったら漬物石をどけるか畑に行って芋を生で食う、魚取りやきのこ取りの楽しみ、粉末ジュースに塩を入れて冷たくして飲んだ夏のソフトドリンク、洗濯板でごしごししてもなかなか落ちないオネショ、このまま書き上げれば何ページになるか、数え挙げればきりがありません。それにしてもいやいややらされた野良仕事の後食べるお握りのうまいこと。田舎は静かでゆったりしているのかと思うとそれだけではない。生活騒音は都会の住宅地よりあったし、怖い思いをすることもたびたびあった。
 私は、自然や家族や近所の人達や動物達に囲まれて、季節が送ってくれた贈り物(災いもの)をあたりまえに受け取っていました。
 けれども今住んでいる家は、ゴキブリ一匹もおらず快適な家。何の不自由もなく主役はテレビとインターネット。こんなに情報が得られて、こんなに静かでいいのだろうかと時々思います。