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  2002年3月12日
   Eメールにご用心


1.Eメールにご用心
 メールで気をつけなければならないのは、今はワーム系のウィルスですが、その話ではありません。住まい作りの情報交換の際は、『メールにご用心』です。これは、住まい手と設計者双方に関わる極めて重要なことです。1度経験すれば、『なるほどなあ。』と解るのですが、まだ未体験の方は是非参考にして下さい。設計事務所と住まい手が信頼関係を大事にし、長く付き合うためにはきちんと認識しておく必要があります。当事者の関係もあるので詳しくは書けませんが、メールの怖さと合わせて、住まい作りのポイントをまとめました。

2.土地探し
 ある住宅物件の話。来年末の住宅減税の有効期限を最終目標に、土地探しから始める比較的気の長い仕事を積極的に受けました。土地の選定は、軽視できない重要なものです。建築の素人でも、ちょっと気を配れば周辺の環境や利便施設など、日常生活に直結するものは判断できます。また、建蔽率や容積率の知識があれば、建設可能な規模が算定できます。それくらい解ればだいたい大丈夫などと思ったら大間違いです。まず地盤条件、次に隣地との関係や実際にプランニングした時の不具合をチェックしておく必要があります。描いてみないとプロでも正確のところは解りません。依頼主とは、めぼしい土地が見つかるたびに断続的なお付き合いをさせていただいておりました。土地探しから設計者の協力を得る考え方は、賢いと思います。

3.シミュレーション
 最初に作ったのは、建蔽率・容積率、土地予算、土地単価、土地面積、建築工事費、建築単価、法定延面積、予算から導いた延面積という、多変数のシミュレーションでした。このシミュレーションをしてみると、かなりターゲットが絞られてきます。総予算から導き出される土地の購入金額の目安を作ったわけです。 予算も厳しいためになかなか良い土地は見つからなかったのですが、やっと比較的良い物件(土地費が予定より高かったため、建築工事費が圧迫される物件でもあった)がみつかりました。時間的な制約があったので、詳細な打合せを行う前にまず、標準的な条件でその土地にどれだけの住宅が建つかを提案することにしました。予算の関係もあるので出来る限り無駄のないプランをまとめて提出しました。その土地に建物を建てる場合の最大の面積でどの程度のものが建てられるかを見定め、どのような特性があるかを見出し、土地を購入する判断材料にするために作りました。基本構成の典型事例を設定し、その案毎の特性の文書解説も用意しました。

4.メールは便利
 私自身、メール利用歴は4年ほどになります。メールは便利です。@直ぐ届く、A距離感がない(海外も一瞬)、B話中が無いので送れば確実に届く、C記録に残る、D大量のデジタルデータを送受信できる、E文書なので考えながら丁寧に意思を伝えられる、F1度に大量の相手に一瞬に送れる、Gセキュリティ操作もできる、H相手が読んだかどうか確認ができる(迷惑がる方もおられますが、緊急の場合に便利)等数々のメリットがあります。ビジネスには最適で、今まで何の違和感もなく、実に便利なツールとして使ってきました。

5.メールの一般的デメリット
 ところが、依頼主はメールに慣れきった方でした。少し依存気味のところがありました。昼間は教師としての仕事があるので、電話するのを躊躇されたのかもしれません。初期案を作って提出したまでは良かったのですが、長くふくらませていた夢が予算という現実にぶつかって、大変不安な状況だったと思います。厳しい予算と大きな夢。これらは始めて住まいを作る場合には良くあることです。問題は、毎夜送られて来る膨大なメール責めでした。余程せっかちな方で次の面談まで待てなかったようです。
 住まい作りの打合せは、面談が基本です。課題や要望事項は整理してメモし、図面を見ながら調整するものです。面談なら相手の反応を見ながら不安を払拭し、臨機応変で信頼関係を維持しながら対処できたはずです。
 メールには、メリットをそのまま裏返したデメリットがあります。一般的なデメリットとして、@一方的に届く、A関係無いのにどこからでも来る、B出せば終わりに思われる、C記録に残さない方が良い場合もある、Dデータ管理をきちんと行なわないと混乱が起こる、E文書なのでうわべだけのうそもつける、F操作を間違えると関係無い人のアドレスが公開される、Gセキュリティは万全でない、Hメール開封確認は迷惑等があります。

6.結局どうなったか
 面談ならば相手とのやり取りの中で、臨機応変に信頼関係を維持できますが、メールでは、消えて無くなる面談の言葉と違い、過剰に利用すると、文章が一人歩きし、本人と別の人格を持ち始めてしまいます。
 実際、当事務所の対応にも、その悩みが出てしまったのかも知れません。悩んでいる最中に、『別の設計士さんの案』(これはその時の状況から間違い無く方便)と称するものが出て来て、そちらには遊びこころがあったという理由で一方的に断られました。思いがけない伏兵でした。その結果、要望をある程度反映した新案は無駄になり、提示することをやめました。私には、不公平感と無駄な130時間(内メール対応の時間は40時間)の業務日誌だけが残りました。恐らく依頼主も自らが書いた過剰メールの被害者です。一方『関係性の検証』を理念としている事務所が、関係性で敗北してしまいました。
 住まい作りのうまいやり方は、まずテーマ(コンセプト)を決めることです。テーマは、一つの場合と、総数でせいぜい3〜5つ位に押さえ優先順位を決めるのがこつです。
 しかしこのテーマは、なかなか決められないのが、住まい手の心情です。多くは細かい内容で、互いに干渉してしまう要素を沢山思い描いてしまいます。そのため設計者のアイデアに頼る方が多いのも事実です。テーマ間の関係性は、熟練した設計者でないとなかなか理解できません。前記した遊び心以前に考えなければいけないことが沢山あるのです。
 一方、淡々と進める設計の場合であっても、計画の初期段階の案は、設計者側の要因としては、その後の様々な検討(外観、屋根形状、玄関廻りの構え、内部の空間性、詳細な法チェック等)によってどんどん変わって行きます。住まい手側では、優先順位をきちんとつけていても時には、4番手が2番手に勝つこともあります。心変わりもしばしばです。最初はシンプルで綺麗なプランも設計が進行する途程で少しずつ崩れていきます。大事なことは周辺環境や隣地との関係性を綿密に分析し、最適な基本構成を見出すことだと思っています。この基本構成の理解(=納得)こそ重要で、その後の円滑な進捗が保証されます。またこの事例の場合は、整理されていない要望内容を提示プランを通じて再構築し、納得の上でスリム化していくこともポイントでした。もしかするとそのスリム化が、夢の崩壊として受けとめられた可能性がありますが、避けて通れない障壁でした。その障壁は、住まい手と設計者の双方の努力で通り抜けるものです。
 紹介した事例は、まず住まい手側のテーマが明快ではありませんでした。テーマが明快であれば、細部の要素は取捨選択できます。設計者側で独自に設定したテーマの意味が、きちんと理解されていたかどうかは今思えば定かではありません。実際は時間の余裕はありすぎるほどでした。それなのにあまりに先を急ぎすぎたのも災いしました。
 土地情報の入手から僅か1ヶ月、過剰なメールでのやりとりを通じて感じ始めた違和感のようなものが、今後の不安に繋がって、その後なるべくしてなった結果でした。

7.メール利用の鉄則
 その後、大手ハウスメーカーに勤務する同窓生と情報交換をしました。案の定、『メールを多用する方の場合はうまくいかないことが多いですよ。』。メールは便利ですが、使い方を誤ったり過剰利用すると災難が待ち受けています。以下、メール利用の鉄則を列挙しました。
@面談、電話とのコンビネーション利用をする。
 対面打合せが基本です。電話ですむものは、電話で済ませます。生の声のコミュニケーションは大事です。もし、メール交換で不可解な文章があったら、電話か面談できっちり確認し関係を修復しましょう。電話で明るい声のやりとりができれば、それだけでも効果があります。
A文章量は出来る限り少なく簡潔に
 微妙なニュアンスのある内容の情報交換は、メール利用はやめましょう。文章量を出来る限り少なくし簡潔な表現にします。それができないものは、面談で解決します。データ送信や事務連絡なら全く問題ありません。
Bプラン等の具体的な内容はFAXで
 間取りや外観の案ができたら、情報交換は可能な限りFAXを利用し、ミスコミュニケーション防止をはかります。言葉による情報交換の伝達率は、僅か30%と言われています。プロの間でも、言葉だけのコミュニケーションは危険です。必ず図面をベースに当該議論の場所を具体的に特定することが重要です。
Cメール慣れしている方は、特に注意
 日常生活の中でメル友がおられる方や、ビジネス上フル活用されている方は要注意です。このような方が、住まい作りの際にメールを多用すると災難に見まわれる可能性が高くなります。特に、せっかちな性格の方はメールの即応性に頼る傾向があるので注意が必要です。
 双方がその条件を備えている場合は、最初の段階でメールの多用はあまりしないことを双方で確認しておいた方が万全です。努めて面談か、電話を利用するようにしましょう。ビジュアルなFAXも併用しましょう。

8.出来上がった建物/追記
 計画地は、事務所から車で10分足らずのところにあり大通りに面しているので、1年ほど経過した頃近くを通りかかった折りに現地を見てみました。何と、建物は敷地の南側ぎりぎりの位置に建てていました。西側は約3m程の擁壁があり、眺望が良かったのですが、出来上がった西側の外観は小さな窓と高窓しかない構成でした。
 建築設計の常識を全く無視した設計になっていました。敷地はほぼ正方形で、無理して南側に寄せる理由は、まず見当たりません。また、無理をした設計ですから、そのデメリットが解消されていたとしたら、相応のコストがかかったはずです。どのような経緯でそのようになったかは解かりませんが、今ごろ、後悔しているのは確実でしょう。