主婦の作業は、キッチンでの調理のほか、洗濯・物干し・布団干しを加えて、日常の事務作業があります。
ユーティリティは、多くの事例を見ると、キッチンの奥のせいぜい1〜2畳の押しやられたスペースが当てられているようで、ちょっと息がつまる思いがすることがあります。まるでトイレか廊下のようなスペースで物書きすることが主婦にとって相応しい場所とは思えません。中途半端に作るのならば、多少面倒でもダイニングを使いたいと思うのが自然なのではないでしょうか。
ユーティリティを作る際には、そこで行われる作業像をしっかりと考えることから始めます。
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1.ユーティリティのありかた
1)キッチン付属室としてのユーティリティ
浴室がプラン上離れてしまったり、事務作業スペースを夫婦書斎として独立してしまえば、独立したユーティリティスペースの必要性は少なくなります。また、狭いスペースで様々な作業をするより、広く暖かい場所に物を持ちこんで作業した方が気持ち良いという方や、洗濯・乾燥スペースは、水を使うスペースなので、事務作業スペースにはなじまないと考える方もいらっしゃいますから、住まい方のスタイルを良く考えて検討していきます。
簡易なユーティリティであれば、既製品のユニットを装備する方法もあります。 |
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2)ダイニングユーティリティ/プライベートダイニングをユーティリティとして兼用する
コンパクトなプライベートダイニングを設置してユーティリティ機能のうち水を用いない作業と兼用する方法です。プライベートダイニングは、LD型のプランで来客があった場合や朝食等に利用するものですが、キッチンの奥に設ける専用ユーティリティより環境も良く、多目的に利用できます。最も推薦したい方式です。 |
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3)総合家事室としてのユーティリティ
一般的に考えられているユーティリティは、洗濯、乾燥、簡単な事務作業が代表的です。調理と掃除、物干しを除いた主婦の作業を集約した場所と言えばよいかもしれません。浴室とキッチンの間にユーティリティを設け、勝手口が接続されれば理想のユーティリティが構築されます。
ここでちょっと業界の常識に反する異論があります。まず一般に作られているユーティリティは、作業スペースとして狭すぎます。また、環境が良くありません。そこで主婦が日常の家事作業の大半を過ごすとしたら住まいのアメニティを忘れています。住まい内部の歩行距離は大したことはありません。階段を上り下りし、景色の良い廊下を歩いた方が気分転換がはかれることもあります。ユーティリティに便利さを求め機能集約をすればするほどその弊害が発生します。
ユーティリティ自体に快適な環境が保証されている場合は別にして、主婦の日常生活を動線だけでなく、心理的、医学的見地に立って総合的に考える必要があります。 |
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4)総合維持運営管理センターとしてのユーティリティ
ユーティリティは、言わば住まいのサービスセンターです。その考えをもっと発展すれば、総合維持管理センターとして捉える発想が浮かびます。主婦の家事以外の作業がありますから、それら住まい内に分散している維持管理用品やスペア用品をユーティリティに集中配備し、その末端が各々の部屋にあるというシステムが浮かびます。
そのように考えるとユーティリティは、勝手口を含めればキッチンに匹敵するスペースが必要になるでしょう。その代わり、各々の部屋の余分な収納類を総合的に管理し、無駄なスペースや余剰品を減らすことができると考えています。
また、主婦の日常生活環境の要となる空間として、もっと恵まれた環境を選択すべきだと思います。
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2.書斎・勝手口との関係
1)書斎との関係
書斎は、一般に夫が利用します。しかしユーティリティの事務作業の要素が膨らんで来ると主婦のための書斎が必要になります。そうなると共用物が沢山あるのに気づきます。
@共用書斎を作る
ユーティリティの事務作業を独立させて、夫の書斎と共用する方法です。別々に作る場合よりもコンパクトにできます。
設置場所はユーティリティか居間近辺に設けます。
A独立して作る
サイドワーク等をされている主婦の場合は特に必要になります。 |
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2)勝手口との関係
勝手口を設置した場合は、ユーティリティに面するのが合理的です。踏み込みは上下足の履き替えのためだけですから最小にするとスペースロスが少なくなります。
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3.ユーティリティでの作業等
1)洗濯・乾燥
洗面脱衣室に繋がれば、洗濯・乾燥スペースができます。最近は、垂直回転ドラム式の洗濯乾燥機も多く出回り始めたので、脱衣室と繋げるだけで良い場合もあります。 |
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2)洗濯流し
子供のオムツや土付きの野菜類の下洗いをするスペースとして便利です。勝手口があれば、外に地流しを設ける方法もあります。
洗濯流しは、なるべく容量の大きなものを選びます。 |
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3)事務作業
日々の事務作業のうちどの程度の作業を行うかで作り方が異なるでしょう。家計簿や手紙書き、キッチン関係の事務作業等に限定するのであれば、大きな作業台にしてアイロン台や裁縫台を兼用することもできるでしょう。パソコンを置くほどの作業になれば、別に書斎を設けた方が良いと思います。 |
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4)アイロン掛け
アイロン掛けは、作業台のほかに仕上げ前・仕上げ後の衣服を収容する場所が必要になります。作業量によっては別の場所で行うことも考えましょう。 |
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5)裁縫
本格的な、裁縫を行う方は、かなりの収納が必要になります。書籍や型紙、布類を分類分けして保管します。 |
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6)備品の補修
家庭によっても異なると思いますが、住まい内の備品や家電類の補修作業もユーティリティで行うことが考えられます。機械物の補修は苦手の奥様もいらっしゃるとすれば、ここで、主人の出番が生まれます。ユーティリティを住まいの総合維持管理室としてとらえることも必要だと思います。
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4.ユーティリティの収納
ユーティリティの収納設計は、まず住まい手の現状調査から始めます。調査結果の分析と話し合いを通じて設計に反映します。
以下はユーティリティを、家族全員が利用するの住まいの維持管理センターとした場合の収納として考えられるものを以下に列挙しました。
@事務書籍
A文具
B清掃用具、清掃用洗剤
C洗濯用品、洗剤
D汚れ物
E買い置きの食材
Fアイロン他それに関連する物品
G裁縫用具及びそれに関連する物品
H住まいの維持管理備品(照明灯具、工具類、補
修備品)
I防災備品
Jリネン類
K雑巾干しスペース
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5.ユーティリティの設備計画
1)洗濯乾燥設備
家電製品として、備品として扱われることが多いかもしれませんが、垂直ドラム式の洗濯乾燥機の場合は、給水、給湯、排水設備が必要になるので、工事に含めた方が無難です。また上部を収納等で利用できます。
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2)洗濯流し設備
洗濯流しと給水、給湯、排水が必要になります。周辺の壁・床仕上げにも配慮しましょう。スペースが無ければ洗面のボールをできるだけ大きくととって代用することも考えられます。 |
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3)電源盤設備
ユーティリティが、住まいの維持管理センターと考えれば、電源盤の設置場所として最も相応しい場所です。 |
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4)空調設備
室内の滞留時間が長ければ、専用の冷暖房設備があった方が便利です。夏は通風で我慢しても冬は最低限局部暖房が必要になります。 |
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5)照明
日中は出きる限り自然光を利用しましょう。夜は事務作業なら500ルクス、裁縫作業であれば1000ルクスは欲しいところです。作業の状況を考え手暗がりにならないように計画します。 |
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6)通信設備
電話類をユーティリティに設置する方法があります。ユーティリティの利用頻度によります。また、インターネット等のパソコン端末までユーティリティに設ける場合は、水ものがある場合は避けた方が良いでしょう。
ホームセキュリティを設置して、勝手口がある場合は、付近に空間センサー類が必要になります。
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