キッチンの計画にあたっては、他の室との関係や環境を良く考えて、住まいのどのような位置に置きたいかを大まかに決めておきます。次にダイニングやユーティリティとの関わり方のイメージを作ります。関わり方によっていくつかのパターンがあるからです。
主婦が、現在のキッチンの何に満足し、何に不満があるかをまず明快にしておくことも重要です。それによって、大まかなプランを描いておいて、間取りに反映させます。
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1.設置位置
1)他室との関係/動線
キッチンは、水周りのひとつです。水周りゾーン内に納めるのがポイントになります。
家事動線を考えると、ユーティリティ、ダイニングと密接な関係にあります。ユーティリティは、脱衣室との関係が深いので、浴室〜脱衣室〜ユーティリティ〜キッチン〜ダイニング〜居間という一連の関係性の図式が生まれます。 |
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2)設置位置
昔は、冷蔵庫がなかったので、台所は必ず北側の日当りのない冷所を狙って作られました。今は、キッチンが北側にある必然性はなくなり、位置の自由度は高くなっています。
一般に、東側にキッチンを設け、南東にダイニングをというのことが望まれています。専業主婦の家庭では、キッチンでの滞留時間は、かなり長くなりキッチンを中心にした、生活動線になるでしょう。そのことから、キッチンを住まいの中央に位置させる考え方も生まれてきます。その場合のプランは独特のものになりますが、従来からある習慣にあまりこだわらず、柔軟な発想でキッチンを考えることが重要だと思います。
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2.キッチンの形式
1)独立型
ダイニングやリビングと独立したキッチンで、代表的なものです。キッチンでの調理作業では、換気扇を運転していても、臭いの全ては排気できず、室内にこもることがあります。また、整理整頓が行き届いたキッチンならば良いのですが、男性にとっての書斎同様、どうしても目と手の届く場所に物を置きたがる傾向があって、不意の来客があった時など困る場合があります。そのような点で独立型キッチンは大きなメリットがあります。
一方、閉じてしまう分だけ、閉鎖的で部屋が暗くなりがちになり、子供が幼い時などは目が行き届かないこともあります。 |
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2)セミオープン型
一般に、1/3から1/2程度の開口があるものがセミオープンと言われていますが、実際には明快な定義があるわけではないので、便宜的な分類になっています。言葉の定義に捕らわれないようにするのが大切です。
@一般型セミオープンキッチン
キッチンとその他の部屋との間が、比較的大きく開いているものです。
セミオープン型キッチンは、他の室と有機的につながるため、視覚的な一体性がある一方で、キッチンの独自性もある程度確保することができます。工夫次第で料理の裏方の様子を見えないようにすることができます。
A対面型セミオープンキッチン
セミオープン型キッチンのメリットを生かしたものに、対面型オープンキッチンがあります。ダイニング側にシンクやコンロを設けます。窓状の開口に向かっての作業が大半なので。窓を通じてコミュニケーションが可能で、子供の様子を見守ることができます。
実際には、配膳作業があるので、窓状の開口だけでは機能しないため、配膳のための通路を確保します。幼い子供の様子を見ながら作業ができますから安心です。
B閉じられるセミオープンキッチン
臭いは、開口が小さくても物理的に流れてしまいます。そこで、普段はセミオープンでありながら、引き戸等によって必要な時だけ独立型キッチンに衣替えする方法があります。
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3)オープン型
オープン型キッチンは、大きく2種類に分けることができます。代表的なI型キッチンをベースにして、壁面にシンクやコンロを配置する場合と対面型キッチンにする場合がります。
@一般型オープンキッチン
壁面にシンクやコンロを配置します。オープン型の良さが必ずしも生かされないキッチンです。DK型によくあった形式で、煩雑な環境の中で食事をしなければならないこともあります。そのため、今は、LDKタイプが多くなっています。
LDK型オープンキッチンの良さは、比較的臭いの拡散が避けられることです。しかし、ダイニングとの関係性は弱くなります。
A対面型オープンキッチン
LDKを完全一体にして、一部にキッチンコーナーがあり、作る人と食べる人が一体になって、料理談議に花を咲かせたり、時には食べる人と作る人が入れ替わったりしてしまう雰囲気を作ってくれます。料理に興味のなかった御主人が、対面型オープンキッチンにした途端にお手伝いを始めたという話しも聞きます。
オープンであることの、定量的な尺度はありません。
四角四面のスペースに納まったLDKを原点として、作り方には無限のバリエーションがあること、それが大きな魅力です。
オープンキッチンは良いことずくめと思われるとそうではなく、まず臭気の点で難があります。ところが、セミオープンキッチンとの比較の中でオープンであればより問題があるかというと、必ずしもそうではありません。LDK形式の場合は、気積が大きくなりので、臭気が薄まる傾向になるからです。
B閉じられるオープンキッチン
臭気を気にする場合は、引き戸等で臨機応変に閉じられる工夫をします。閉じられる工夫は不意の来客の場合にも対応できます。
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4)これからのキッチンのタイプ
キッチンの形式は、ダイニングとリビングと一体であるか別であるかが議論されてきました。ところが実は、一体か別かという議論から全く外れたファジーな関係性が今のLDKのスタイルです。個室ではないので、ファジーな関係でも、成立するのでしょう。オープンキッチンとセミオープンキッチンは、アナログ的に繋がっていて、同じものであると考えてても良いと思います。関係性の大小が少しずつ異なる関係です。そのバリエーションは無限にあると考えても良いでしょう。
関係性に関わる検証は、門屋総合設計の理念です。住まいの部屋の微妙な関係性は、この他にもいくつかあって、住まい方のイメージに直結する課題でありながら、ファジーな関係の中で臨機応変に関係性を制御できる住まいを作れるかどうかにあるような気がしています。
古い民家の住まい方は、部屋の用途を限定せず、臨機応変に障子1枚で用途を変えるという、見事なフレキシビリティを実現していました。今でも沢山学ぶべきことがあります。
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2.キッチンの配置形式
キッチンの配置形式には様々な形式があります。代表は、I型と呼ばれる原初的な形式です。核家族化の結果生まれた形式と言ってもよいでしょう。コスト的にも安価であり、一人で調理するのに向いています。間取りによっては、二の字型が望ましい場合もあります。2人以上で調理する場合は、L型やU型が相応しい形式です。それ以外にも様々な形式がりますので、参考にしてください。
料理キットや調理済み商品が、自分で作るより美味しく安くなってしまった現代、親の味を受け継ぐことと、現代の便利さを利用することの格差は大変大きなものがあります。 |
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1)I(一文字)型
大半の住まいは、I型になるでしょう。背面に食器棚やサブカウンターを設けると調理作業が楽になります。3mから3m60cmを超えるあたりから、二の字型やL型、U型に切り替えた方が良いと言われています。また、複数で調理を行う際は、作業を分担することによってさらに長いキッチンも考えられます。 |
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2)U(ニの字)型
二の字型は比較的コンパクトに収まります。作業動線や動態を考えても有効な形式です。作業台の間隔は一人の場合は80〜90cm、複数で作業する場合は、110〜120cm程度の間隔が必要になります。 |
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3)L型
L型の特徴は、カウンター有効長さに対して作業動線が短くて済みます。U型と並んで、かなり大きな住まいか、手の込んだ調理をされる方か、アイランド型と組み合せて利用する場合に適しています。また作業者が複数いる場合にも適しています。コーナー部分は、炊飯器やポット等を常置するスペースとして有効です。
L型での注意点は、コーナー部の収納です。回転収納棚等を選択して有効に使えるようにします。
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4)U型
L型よりさらに、カウンター有効長さに対しての作業動線が短くて済みます。その他の特徴は、L型に似ています。対面するカウンターの距離は少なくとも90cm程度は確保しましょう。
カウンター有効長さが長くなり、収納量が増える分だけコストがかさむため、事例は決して多くありません。 |
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5)アイランド型
中央に独立した調理台を設けて、L型やU型と組み合せて配置します。複数の作業者がいる家庭や、使用人がいる場合に向いています。キッチン面積はかなり大きくなります。中央の調理台は、配膳台としても有効に使えます。 |
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6)ペニンシュラ型
オープンキッチンのうちの一角をカウンターにした対面キッチン(ダイネットカウンター)やテーブル(ダイネットテーブル)にする場合が考えられます。
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7)配置形式の注意点
配置形式の代表は、何と言ってもT(一文字)型です。一文字型の場合、十分な長さが確保できないために調理スペースが小さめになる傾向があります。ところが、そこに炊飯器や電気ポット、ミキサー等を所狭しと並べたら、調理スペースはますます小さくなってしまいます。
キッチンの設計では、キッチン内のそのような機器類の配置も予め考えておくことが大切です。I(一文字)型のカウンターの裏面は、多くが食器棚ということになりますが、むしろ40cm程度のサービスカウンターを設けて、ワークトップ長さを最小限に押さえ、それらの機器を集中配置する方法があります。
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3.動線
動線には、他室との関係を考えた動線のほかにキッチン内での作業動線があります。
1)調理作業のトライアングル
キッチンでの調理作業は、シンク・コンロ・冷蔵庫の3箇所での作業と移動がポイントになると言われます。この3点を結んだ長さの合計が無用に長くなると、作業性が悪くなります。概ね6m以内、できれば4m程度が良いと言われています。通常のキッチンであれば、まず心配はいりません。
大型のキッチンの場合は、一度チェックしておきます。6mを超えるような場合は、複数の作業者による分業作業に適しているということになるでしょう。
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2)調理の流れと配置との関係
調理は、購入した食材を収納や冷蔵庫に収めたり、所定の場所に移すことから始まります。必要な場合は、料理本やレシピを確認します。食材をシンクで洗浄、下ごしらえをしたあと、調理台で加工します。生物は盛りつければ完了です。煮物・焼き物は、コンロで加工します。
これら一連の作業は、冷蔵庫〜シンク〜コンロという関係があることを示しています。そのため、入り口から、冷蔵庫・シンク・コンロの順に配置した方が良いということになります。
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3)その他配置上の注意点
@右ききと左きき
調理作業は、利き手側に移動するのが良いと言われています。そのため、右利きの場合と左利きの場合では、裏返しのプランになります。しかし、作り方によっては、せっかく上手に出来あがった間取りがそれだけで成立しないということにもなりかねません。
現在の使い勝手がどのようになっているか、逆の使い勝手になった場合はどうかを、一度チェックしておく必要はあると思いますが、利き手によって右回り、左回りを決定するのは、あまり得策ではないと思います。
Aコンロの位置
作業の流れのほかに、コンロの位置があります。特に独立型キッチンの場合は気をつけます。キッチンには、新鮮空気を供給する目的と、レンジフードのファン排気に伴うエアバランスを保つために給気口が必要になります。しかし、実際には、給気口以外からも空気の流れが生じます。コンロがキッチンの手前にあると、キッチン全体の空気の流れがうまくできず、部分的にこもることがあります。そのような場所には、臭いや油が沈着し易くなります。コンロの位置は、室内全体に気流が発生する位置を選びましょう。
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