キッチンの計画にあたっては、各部の寸法知識が必要です。また、ワークトップの高さは、身長によって適切な高さがあるため、特に身長の高い方、小柄の方は、既製品に適当なものがなかった場合、半特注にしたり特注することも考えましょう。
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1.天井の高さ
既製のシステムキッチンは、多くが天井高さ240cmを想定されて作られています。恐らくマンションのニーズが大きな理由なのではないかと思っています。既製品をうまく使う場合は、240cmを守った方が有効に利用できます。あまり天井が高いと、上部がゴミたまりになったりということになりかねません。これは衛生上も好ましくありません。
240cmがなかなか確保できない場合も考えられます。その場合は、あえてトールキャビネットを使わず、吊り戸棚とベースキャビネットだけで構成する方法があります。
別の理由で天井を高くする場合は、特注製作を考えましょう。
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2.ワークトップ
1)奥行き
従来のキッチンユニットを用いる場合は、奥行き55cmで、水栓を取り付けるデッキと配管スペースを考えて合計65cm程度で設計するのが一般的です。
システムキッチンでは、従来60cmが標準でしたが、今では、65cm、70cm、75cmの商品まであります。奥行きを大きくすることで、ワークトップがより有効に使えるというだけでなく、食器乾燥機や浄水機等の水配管を要する機器が増えて、背面に横引き配管スペースを設ける必要が出てきたという技術的理由もあります。
また奥行きが大きいと、ベースキャビネットの収納量が増すだけでなく、吊り戸棚を比較的低い位置まで下げられることから、収納面でも有利になります。 |
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2)高さ
ワークトップの高さの標準は、85cmです。これは、身長160cmを基準にはじき出されたものです。一般に、最適な高さは、身長÷2+5cmと言われ、簡単に一覧表にすると下記のようになります。高すぎても低すぎてもいけません。調理される方が複数おられる場合は、どちらに合わせるか決めておきましょう。
今では、規格が定められて、80cm、90cmの商品があります。また、車椅子使用者用の足元が奥まっていて低いタイプ(70〜75cm)や電動昇降装置付きキッチンまで登場しています。 |
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身長 |
最適高さ(cm) |
150cm |
80.0 |
155cm |
82.5 |
160cm |
85.0 |
165cm |
87.5 |
170cm |
90.0 |
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既製品の高さにバリエーションが無い場合は、いくつかの調査と工夫が必要になります。
@高くする方法
高くするのは比較的簡単です。まず、大輪の仕上げ材の巾のバリエーションを確認します。もともと大きな材料を既製品に合わせて加工しているので、大半は広幅のものがあるはずですが、工場のラインの一部を変えなければならないので、折衝次第です。次に、本体の高さですが、工場のラインで高くしてもらうのと、現場で嵩上げして仕上げだけ既製品を利用する方法です。ただし、レンジ類で金属で床まで製作されているものについては、化粧材で嵩上げする工夫が必要になります。
A低くする方法
低くする場合は、ちょっと厄介です。やり方は、高くする方法と同じで本体は工場でカットするか現場でカットするかになります。レンジ類で金属で床まで製作されているものについては、カットは不可能なので、個別に相談しましょう。配管を台輪下で横引きする仕様になっているものは、勾配がとれなくなる可能性があるので、一旦後ろに回して横引きする必要があります。場合によっては、ワークトップ後ろにデッキを作って、配管スペースの化粧を施します。
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3)加熱器回りの高さ
一般に、ワークトップより10cm程度低い方が作業性が良いと言われています。見かけ上の問題や、一部ワークトップの断面が出てしまうので、どのような納まりになるか確認する必要があります。無理して特注製作する必要があるかどうか考えましょう。
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4)長さ(巾)
ワークトップの寸法は、I型で180cm位から360cm位まであります。モジュールは15cmと30cmが基本になっているものが多いようです。
ワークトップの各部の寸法を分解すると下記のようになります。
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部位 |
寸法(cm) |
準備スペース |
30〜75 |
シンク |
60〜120 |
調理スペース |
60〜90 |
加熱調理器 |
45、60、90 |
配膳スペース |
30〜90 |
合計 |
225〜465 |
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上表の合計寸法は、あまり意味のある数字ではありませんが、180cmのワークトップは、極めて簡易なものであることが解るでしょう。加熱器の標準は、一般には60cmですから、一般的な戸建て住宅のI型プランでは、240cmから360cmあたりが使いやすいキッチンと考えられます。上表でも解るように、最大長さは、465cmになりますので、360cmを超えたら、L型やU型に切り替えなければならないことが解ります。
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5)その他の部分
基本のワークトップの長さが決まったら、収納量アップのための食器棚や壁面収納(トールキャビネット)、配膳台を兼ねたり機器(炊飯器、ポット、ジューサー・ミキサー、オーブントースター等)を置くサービスカウンター、ちょっとした飾り棚や配膳を兼ねた収納カウンター、家族の食事を考えたダイネットカウンターやダイネットテーブル等の必要性を考えます。
むやみに様々なものを並べるのではなく、住まい方を良く考えて総合的に計画します。
また、複数で調理する場合は、シンクを2つ用意することも考えられます。
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2.吊り戸棚
1)奥行き
既製品の吊り戸棚の奥行きは、だいだい35cm前後になっています。
2)高さ
吊り戸棚の高さは、50cm、70cm、80cm、90cmが代表的です。
住宅の火災のうちで、キッチンの加熱器による出火は、全体の20%弱を占めているという調査報告があります。そのため、マンションやアパート等の集合住宅では、自治体の火災予防条例で細かに規定されています。加熱器回りは、炎による吊り戸棚等への延焼が考えられるので、80cm以上を確保する方が無難です。その場合は、高さ70cmタイプを使用します。万全を帰するならば、吊り戸棚を不燃材で覆いましょう。念のため、排気ファンはシロッコファンを使いましょう。シロッコファンは静圧が高く炎を確実にフードに導くからです。明るく大きな窓をつけるのならば、この部分が有効です。
加熱器回りを除けば、吊り戸棚はある程度低い方が有効に使用できます。ワークトップの奥行きを70〜75cmの広幅タイプを使用して、敢えてトールユニットを設けず、天井高さを2250程度に押さえ、90cmの吊り戸棚を使用して、下端の高さを130cm程度にしても問題ありません。そのようにすると、踏み台なしで吊り戸棚の下段の収納を有効に利用することができます。手元が暗くなるのが難点なので、補助照明が必要になります。
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