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  2005年3月
   和室の作り方


 和室は、なぜかの心をゆったりさせる場所です。白木の色、土の肌触り、柔らかい障子からの光、そしてイグサの香が漂うタタミ。
 子供がいる家庭であれば、日本の伝統を伝えるために1室は和室にしたいと思います。




1.和室の利用用途

 専用寝室としての利用を除けば、和室を1室余分に設けることによって、実に様々な用途に利用できます。それが和室の大きな魅力です。

1)寝室

 長く住み慣れた和室にこだわる老夫婦がいらっしゃいます。できればゆったりした面積をとって、縁側も併設したいものです。

2)家族の団欒の場所

 リビングとは別に家族の団欒の場所として利用することができます。季節の節目に家族パーティをするのも良いと思います。

3)客間

 リビングが一つの場合は、接客スペースとして和室を利用できます。配膳距離は少し長くなりますが毎日のことではありませんから苦にはなりません。

4)客用寝室

 接客の後、そのまま客用寝室に早代わりします。和室ならではの変身です。

5)文化継承・趣味の場

 子供が居れば、雛人形や五月人形の飾り付け場所になります。日本の文化は長く受け伝えたいものです。
 炉を切ってお茶会を催したり、華を生けたり日本古来の茶道や華道の趣味の場にもなります。庭と連続させれば野だてもできます。

6)イベントスペース

 純和風住宅の場合は、和室を連続して作っておけば、2室を一体にして宴会や祭事にも利用できます。

7)仏壇・神棚
 仏壇や神棚がある場合は、位置を予め決めておきます。多くは和室になるでしょうが、洋室でも工夫によってうまく納めることができます。



2.他室との関係


1)居間との関係
 
 完全に独立して作る場合と居間に隣接して連続的に利用する場合、居間の一部として小上がり風に作る場合があります。
@完全独立
完全に独立設置する場合は、
老夫婦等の寝室等に利用するケースや来客者用の寝室が考えられます。
A居間に連続
居間に隣接して連続して設置する場合は、居間の延長として利用することができます。使い方によって完全に一体利用することも考えましょう。
B居間内のコーナー
居間内のコーナーとして設置する場合は、ちょっとした小上がり和室になります。ちょっと気分を変えた接客や鍋物を囲んだ食事などでは雰囲気にぴったり似合います。

2)外部との関係

 できれば縁側スペースを作りたいものです。和室としての効果だけでなく、縁側は冬の陽だまりの空間になりますし、夏は夕涼みの場所にもなります。屋外と連続させて、和風庭園に出られるようにすれば完璧です。濡れ縁も用意すると良いでしょう。



3.和室の構成要素解説

和室の構成要素は、和室が少なくなった今、特に若い世代を中心に忘れ去られようとしています。以下簡単に解説しました。

1)天井
 最も一般的に用いられる木目の化粧石膏ボードのほか、面の天井材を45cmピッチ程度の木製の角材や竹等で押さえた竿縁天井、三角形の船底天井、平らな天井と勾配天井を組み合わせた掛込天井などがあります。

2)壁
 一般に壁は、大壁と真壁に分類されます。大壁柱の見えない洋室の場合、真壁は柱が見える和室に用いられます。
 仕上げは、京じゅらく壁が代表的で、ビニールクロスや砂壁もあります。あまり事例にこだわらず様々な素材にトライしましょう。

3)床
@タタミ

 心材区分からは、稲藁畳サンドイッチ畳化学畳があります。JISで定義されています。
 畳表は、JASで等級が区分されています。一般品は、経糸の品質から麻経糸表綿経表に分類できます。また特殊なものとして市松表琉球表があります。流鬢表は床の間に用います。
 畳縁の素材は、絹・麻・木綿の他様々な素材でできています。色や模様も様々です。
 一口にタタミと言っても様々な種類があり、また琉球表のように半畳で用いるのもあります。
Aタタミ寄せ
 壁と畳の取り合い部分に入れる部材。
B板タタミ
 畳割りの余った部分等に用いる板敷きの部分。

4)押し入れ
天袋付きと無しの場合があります。最低1間巾は欲しいところです。

5)床の間

@床板 
床の間に用いる床板。畳を用いる場合もあります。
A床柱

床の間の脇に建てる化粧柱。角材のほか、絞り丸太、錆丸太・皮付き丸太・釿目(ちょうなめ)丸太などが用いられます。和材のほか南洋材も用います。
B地袋
床の間の下部に設置する収納。
C違い棚
床の間に設ける段違いの棚。飾り棚になります。
D落し掛け
床の間の上部前側に床の間と平行に設ける部材のことです。桐を用いるのが代表的です。
E無双四分一
掛け軸を吊る和風ピクチャーレール

6)書院

床の間の脇にある棚と障子で構成された部分のことえす。数奇屋風和室では用いません。

7)壁廻りの雑部
@鴨居

障子、ふすまなどの上部の部材で溝を設けます。。
A付鴨居
壁面に鴨居と同じ高さ取りつけた横材。寄せ付鴨居と同義語です。
B長押
鴨居の上部に部屋面を取り巻くように取りつけた化粧部材。
C敷居
鴨居と対をなして、開口部の下に付きます。昔から敷居は踏んではいかないと言われてています。
D廻り縁
天井と壁の間に入れる納まり部材。

8)開口部
@障子

組子で固めた戸の片面に和紙を張った建具。組子の組み方から、荒組、横組、竪組、横繁、竪繁、本繁、桝組、吹寄、変り組等がある。また、形状によって、腰付、腰高、直ガラス、横額入り、竪額入り、摺り上げ、引き分け猫間、片引き猫間などがある。摺り上げ、引き分け猫間、片引き猫間障子は、雪見障子とも言われています。
A格子戸
障子より少し大きな角材を使い、貫で固めたもの。現在ではガラスを入れて用いる。前室を設ける場合は、まず格子戸から入ります。
B襖
組子で固めた戸の両面に布や紙を貼った建具。上貼り材はとりの子が代表的。軽いのが特徴。紙貼りなので衝撃に弱いものの補修が簡単にできます。
C戸襖
板を貼った戸に襖紙や壁紙を貼ったもの。襖と違い壁紙が貼れるので、洋室と和室の間に用いられます。
D欄間
天井と鴨居の間に設ける採光や通風機能を兼ねた部分で、透かし彫りや格子などを入れます。横長の障子を入れてもかまいません。

9)その他
@炉

お茶を沸かすために畳の一部を掘りこんだ部分。
A水屋
 お茶のための道具を収納したり水を用意する部屋。住まいで水屋を設ける和室は本格的な茶室です。




4.和室のデザイン

書院風や数奇屋風がありますが、現代和室はあまり洋式にこだわる必要はありません。使い勝手、好み、予算に合わせて設計します。
 和室をさらに和室らしくするためには、縁側や前室、あるいは踏み石等が考えられます。



5.和室の設備

1)空調
 ビルトイン方式の空調機を使えば、全く姿を見せずに設置できます。多くは、押し入れの上に設けます。

2)ガス

 鍋物等のためにガスカランを用意します。その場合はガス漏れ警報機を設置すると万全です。最近では、カセットコンロがあるので、それでも十分機能します。

3)照明

 シンプルな天井の場合は、天井に埋めこんで光天井にするとすっきりします。網代天井や竹竿縁を用いる場合は、吊り下げ型が適しています。床の間には、ダウンライトやスポットライトをつけると効果的です。

4)テレビ・電話

 和室の設計でいつも頭を悩ませるのがテレビ、次に電話。電話は壁掛け型にしたり前室を作って対応できますが、普通の和室のエレメントでは、テレビだけは、床の間以外に設置場所がない。この次の設計では是非トライしてみたいと思っています。

5)炉

 お茶用に炉を切ることができます。炉は既製品があります。裸火は危険なので電気炉にし電源を用意します。

本ページは、作成者が20年間の建築設計監理の業務を通じて得た情報と経験をもとに作成したものですが、不具合やご意見・ご要望がございましたら、お手数ですが下記までご連絡下さい。
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