1.構造形式選定の一般的な考え方
住宅の構造形式の選定の判断基準は、地盤条件や耐火性、将来対応性、地下を作る場合、地震時の剛性、経済性などが考えられます。
現在、地上部分の構造は3階建てまではあらゆる構造が可能になりました。大変喜ばしいことだと思います。
一方、一般的に言われている特徴もあります。以下、それらの傾向をまとめました。
またコラム欄でも紹介しましたが、医療業界のインフォームドコンセント思想の浸透を考えると、建設業界の構造概念は極めて遅れている状況にありました。これは、重要度係数の考え方が行政の重要施設を中心として考えた思想であって、一般に普及・浸透していなかったことに起因していました。
建築基準法の精神は、最低限の基準を定めていますが、ニーズが多様化した今、やっと『住宅新法』(品確法:住宅品質確保促進法)の施行され、耐震性の選択の巾が一般の方に解かりやすく示されました。そのため、今まで耐震性の相互比較ができなかったハウスメーカーやディベロッパーの住宅の耐震性能が横並びで比較できるようになりました。
2012年の東日本大震災が発生して以来、耐震性に対する構造形式の考え方は一変しました。地震と津波に対する耐力は別物なのです。また鉄筋コンクリート建築物は津波に強いと言われて来ましたが、中には基礎毎洗い流された鉄筋コンクリートや外壁が悉く破壊された鉄骨造の建物も有りました。
少なくとも当面は津波に耐えられる木造住宅の基準など考えられませんから今後の動向を見定めるしかありません。 |
・構造計画のポイントリンク
|
1)地盤条件
地盤条件が悪い場合は、建物重量が軽い木造や鉄骨造が適しています。 |
|
2)耐火性
万全な耐火性能を期待する場合は、鉄骨造か鉄筋コンクリート造が適しています。
在来木造、2×4工法は、準耐火構造にできます。 |
|
3)耐久性
構造体としての耐久性は、JASS5の改訂に伴い、100年建築が可能になった鉄筋コンクリート造に軍配があがります。 |
|
4)将来対応性
木造は、材料が木材ですから、改修やリフォームには比較的簡単に対応できます。もともと、木造や鉄骨造は、プレファブの度合いが進んでいます。それだけ将来対応の性能を備えていると言えます。
また、鉄筋コンクリート造は、堅牢にできているだけ、構造体部分の加工はしない方が懸命です。
鉄筋コンクリート造の場合の将来対応は、構造体とその他を完全に分離した設計を行えば、かなり自由な対応が可能になります。 |
|
5)地下を作る場合
地下は、木造や鉄骨造の建物でも基本的に鉄筋コンクリート造になります。ただし周囲にドライエリアを設けた場合は、木造も可能になりますがその場合は、構造上3階建て扱いになります。 |
|
6)耐震性
建築基準法で定める最低限の設計基準で設計が行われた場合、耐震性に優劣があるとは言えません。一般に木造住宅は地震に弱いのではないかと言われますが、必ずしもそうではありません。以前は筋交いや壁量だけで簡易計算していましたが、現在では偏心率もチェックしなければならなくなったからです。大事なことは、バランスの良い構造計画を行うことです。
現行法令を満たした建物であっても、絶対倒れないとの保証はありません。特に簡易な構造計算による木造住宅は、強度に大きなばらつきがあると思って良いでしょう。法令の目標は、人命確保が目的であって、想定した地震に対して倒壊は免れることを目的としたものだからです。勿論、家具等による二次災害は想定されていません。
それでも、テレビ報道等で木造の実態調査をすると耐震性に問題のある建物が過半数あるのは、第1は、古い法律によって建設されているものが多いこと、第2には、老朽化による耐震性の低下によると考えられます。
いずれの構造であっても住まい手の希望により耐震性の割増は可能です。
ただし、後記にもあるように、いくら耐震性があっても震災時の建物倒壊は実は火事による倒壊の方が多いので、総合的には木造は地震に弱いと言えるでしょう。 |
|
7)地震時の剛性と脆性(ぜいせい)
木造は、一般に柔らかい傾向があります。鉄筋コンクリート造は、剛性の高い構造です。住宅では、揺れの少ない剛性の高い構造が求められます。
もうひとつの性質として脆性があります。粘り強さを表すものです。高層建築物に求められる性質です。鉄筋コンクリート構造物は、剛性が高い反面脆性に乏しく、想定された地震を超えた超巨大地震のような大きな揺れが来ると一気に破壊される性質を持っています。鉄骨造は脆性の高い構造ですが、外装材の挙動(地震時の動き)に配慮した設計でないと、外装材のひび割れや落下が発生します。
|
|
8)地震と火災
耐震性が勝れているからといって耐火性を無視するわけにはいきません。なぜかというと、特に都市部の木造密集地で食事の時間帯で地震が発生するようなことがあった場合には、地震には耐えても火災によって、全倒壊数の8割が火災による倒壊によると言われているからです。また死者も全死者のうち地震自体で亡くなる人より火災でなくなる人が上回ると言われています。
そのため、木造住宅の不燃化や耐火構造化が望まれるところですが、法制が整っていないことと、予算とのかねあいでなかなかそうなっていないのが実情です。
火災は、建物内から発生する場合と隣戸から延焼する場合があります。建物内から発生する場合は、火の勢いの段階によって@不燃化する方法と、さらにA耐火構造とする方法があります。@は不燃とは言いますが実は燃えないのでは無く、有害ガスが発生しにくい材料を内装材として選ぶことです。実は、火災による死者は、就寝時に逃げ遅れて一酸化炭素中毒で亡くなるのが圧倒的に多いからです。しかし、震災時は、多くの人がすぐに目を覚ますはずですから、火災原因は火を使っている台所から発生するものよりはむしろ、延焼が主になるでしょう。
震災時の火災による建物の倒壊をすこしでも避けるためには、(準)耐火建築物にするとが有効です。また隣戸からの延焼防止のため、延焼のおそれのある部分を(準)耐火構造とするのが有効です。しかし、数時間もの火災には鉄筋コンクリートでも崩壊は免れてもその後の耐震性が激減します。そのため、初期消火が大切になります。震災時のように道路が寸断されると消防車も入れず消火活動もままならない状態になるからです。こうなると鉄筋コンクリート造も安心できない構造となってしまいますが、木造は地震時の火災に弱いのは確かです。 |
|
9)耐風性
木造は、もともと軽量のため、風には弱い傾向があります。沖縄の住宅は、大半が鉄筋コンクリート造になっているのもそのためです。 |
|
10)荷重対応性
180kg/uを超える重量物を収容する場合は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に軍配が上がります。
設置位置が1階であれば、木造でもある程度は対応できます。 |
|
11)対津波性
津波被害は、20世紀に入ってから北海道西方沖地震による津波被害があった位で記憶に新しい被害はありません。
一般に鉄筋コンクリート造の建物は津波に強いといわれて来ましたが、それ以前に住んでいる人間が亡くなってしまっては何もメリットはありません。
2011年の東日本大震災では、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物の建物だけが残された無残な映像が各局で放送されましたが、ぷかぷか浮かび津波に翻弄される映像を見る限り、津波による建物の構造耐性は無意味に思われます。 |
|
12)リサイクル性
直接住まい手には、関係ありませんがリサイクル性では、鉄骨が最も優れています。ただし、分別解体をきちんとすれば、木造も鉄筋コンクリートもリサイクルできます。今後建設リサイクル法の運用によってあまり差異はなくなると思います。
解体工事費は、木造、鉄骨、鉄筋コンクリート造の順に高くなります。 |
|
13)施工性
市街地などで、隣地との間が狭く施工しにくい場合などは、木造や鉄骨造が優れています。 |
|
14)工期
工期を考えれば、圧倒的にメーカーのプレファブ住宅に軍配があがります。1週間程度で建ってしまうものもあります。2階建ての場合、木造では一般に4〜5ヶ月、鉄筋コンクリートで6〜7ヶ月程度かかります。 |
|
15)経済性
一般的に木造やプレファブ化された軽量鉄骨造はコストメリットがあり、鉄筋コンクリート造は比較的高くなります。しかし、地盤が堅固であるという条件で木造や軽量鉄骨造を準耐火構造にする場合は、かなり鉄筋コンクリート造や鉄骨造に近づいていきます。
ローコスト住宅を目指すならば、木造が最もお勧めです。 |
|
|
|
2.構造形式による比較一覧表
住宅に用いられる代表的な構造形式を、3項以降に各々の構法の特徴と一般的な特徴に分けて簡単に解説しました。比較するために、一般的な傾向を記述していますが、実際は、設計の仕方で解決できる部分もありますので、注意してご覧下さい。
また、下記は、それを一覧表にしたものです。これも一般的な傾向を示したものであって、建物形状や規模、設計内容によってかなり変わるものであることをお断りしておきます。
一方、建築基準法の大改訂によって、建築性能が、仕様規定から性能規定に変わって、住宅の構造性能に関わる新規構造発案の可能性の道が開けています。 |
|
住宅の代表的な構法比較
構造形式 |
耐火性 |
重量 |
剛性 |
自由度 |
経済性 |
在来木造 |
△、○ |
◎ |
△、○ |
○ |
◎ |
2×4 |
△、○ |
◎ |
○ |
△、○ |
◎ |
軽量鉄骨 |
△、○ |
◎ |
△、○ |
△、○ |
◎ |
鉄骨 |
○、◎ |
○ |
△、○ |
○ |
○ |
RC壁 |
◎ |
△ |
◎ |
○、◎ |
△ |
RCラーメン |
◎ |
△ |
○、◎ |
◎ |
△ |
|
|
凡例 ◎非常に優れている ○優れている △やや劣る
|
|
|
|
3.在来軸組木造(W)
1)構造上の特徴
木製の柱、梁等の軸組みで構成する工法。水平耐震要素は筋交い、平面の剛性は火打ち梁で抵抗すします。接合部は、かつては複雑な仕口や継手で繋いでいましたが、現在の耐震基準では、安定的な性能が期待できる金物に変わっています。180kg/uを超える重量物がある場合は、相応の対応を行います。
2×4工法と同様に構造用合板や構造用パネルを用いて、面で地震力に抵抗することもできるようになりましたから、筋交いと併用すれば、かなりの高耐震住宅が実現できるようになっています。 |
|
2)一般的特徴
・日本古来からある在来の構法に、現代的な技術を加えて完成した安定的な木造構法。
・比較的安価である。
・3階建てまで。
・建物重量も軽く軟弱な地盤にも対応可能。
・比較的大きなスパン(4.5m)も可能。
・気密性にやや劣るが、工夫すれば性能アップできる。
・耐火性は、準耐火構造まで。
・構造体は柔らかい傾向がある。2階に浴室を設ける場合は、ユニットバスが懸命。構造用合板、構造用パネルを併用する場合は、2×4工法同様の剛性が得られる。
・将来対応は、筋交いのある壁量を確保しなければならないので制限があるが、比較的自由。
・工期に余裕が無い場合は、予め工場で部材をカットし現場に持ち込む方法(プレカット工法)がある。これによって2×4工法とほぼ同様の工期で建設可能になる。
・現在の法律では、筋交いと壁パネルの耐力を合算できることになっている、筋交いは柱梁にめり込んで始めて耐震材として生きるもので、最初は壁材で耐え、壁材が破断しないと筋交いはきかないために、厳密には問題があると言える。 |
|
|
|
4.2×4構法(2×4)
1)構造上の特徴
2×4インチの枠と合板等の面材を合わせ、現場組み建てによって建て起こす木造としては合理的な構法。工期も比較的短くできます。
一時期日本の気候風土には合わないのではないかというような風評もありましたが、今それを議論する人はいません。
|
|
2)一般的特徴
・壁面と床面による六面体によって成立しているので、木造としては剛性が高く、気密性の高い住宅が実現できる。
・在来木造よりさらに安価である。 ・3階建てまで。
・建物重量も軽く軟弱な地盤にも対応可能。
・工夫すれば、60uの大空間が得られる。
・準耐火構造が可能。
・壁で構築するので比較的剛性が高い。
・1・2階の壁のずれは1m程度なら許容される。
・一般的に求められる間取り構成の自由度はある。
・180kg/uを超える重量物がある場合は、相応の対応を行う。
・もともと壁・床のパネル(面)で構成しているため、外壁の大きな開口部、吹き抜け、床・壁双方に影響する階段室周りに構造的な工夫を要する。
・将来の間仕切り替えの際、耐力壁の撤去や移動は、相応のチェックを要する。
注)2×4構法に似たものにを発展させ、工場でパネル化したものを、現場で組みたてる木質系パネル構法があります。メーカーにより認定を受けた個別の構法です。
|
|
|
|
6.鉄骨構造(S)
1)構法上の特徴
厚手の鉄骨を用いて柱・梁を形成します。ブレス無しも可能です。剛性や経済性を考え、一般にはブレスを併用します。地盤条件等から建物を軽量化する必要があり、かつ万全な耐火性が求められる場合はこの構法が最適です。 |
|
2)一般的特徴 ・Gコラム等を用いて特殊平面にも対応可能で、設計の自由度はRCについで高い。
・設計次第で安価な建築が可能。
・建物重量は比較的軽いので、軟弱地盤に適する。
・超大スパン(30m程度)が可能。トラス構造の梁やシェル構造にすれば、巨大ドームもできる。
・法定耐火被服を施せば、耐火構造になる。
・一般に柔らかい傾向があるが、設計次第で堅くもできる。高層・超高層建築物のように柔らかさが求められる場合の外装材は、パネル類の動きを予想し、適切な取り付け金物(ファスナー)の設計が求められる。
・外装材は、パネルやALC、コンクリートパネル類を用いる。
|
|
|
|
7.鉄筋コンクリート壁構造(RC壁)
1)構法上の特徴
鉄筋コンクリートの壁と床で構成する構造です。水平力は壁で負担しますが、スラブの役割も重要です。構造の力の流れは、2×4に似ています。壁とスラブの剛性、開口部の補強のために、比較的小さな梁が必要になります。 |
|
2)一般的特徴
・設計の自由度の高い構法。平面形状、外壁形状ともに極めて自由度が高い。
・耐火性がある。
・剛性が極めて高いため地震時の揺れは少ない。硬いだけに脆性(ねばり強さ)がないので高層建築物には適していない。
・荷重条件もかなり自由に設定できる。
・建物重量が重いので軟弱地盤で用いる場合は、杭や地盤改良を行う。
・異なる階の壁位置はなるべく合わせる必要がある。
・大空間は無理。
・将来対応を考える場合は、耐力壁は手がつけられないので、その範囲の中で考える。予め、構造体と将来対応部分を明快に分けて対応することは可能。
|
|
8.鉄筋コンクリートラーメン構造(RCラーメン)
1)構法上の特徴
鉄筋コンクリートの柱と梁・床で構成する構造です。水平力は柱で負担しますが、壁を耐震要素に加えた方が経済的です。 |
|
2)一般的特徴
・柱・梁だけで構成する場合は、純ラーメンと言う。
・柱(及び壁)だけで構成するので、平面プランの自由度は極めて高い。
・耐火性がある。
・剛性が比較的高いため地震時の揺れは木造や鉄骨造に比べ少ない。外壁周りの短柱破壊に注意。
・荷重条件はかなり自由に設定できる。
・材料の関係で、建物重量が重いので軟弱地盤で用いる場合は、杭や地盤改良を行う。
・将来対応を考える場合は、純ラーメン構造は大変効果的である。壁式ラーメンの耐力壁は一般に手がつけられないので、その範囲の中で考える。
・RCの雑壁は、実は耐震要素になることが解ってきたので、現在では、構造設計上耐震壁に含めない壁は、他と絶縁(耐震スリット)する手立ててが必要なった。実はこれが、外部デザインに大きな影響を及ぼすことになってきている。
|
|
|
|
10.その他の構造
1)組積造
組積造は、もともとは石やレンガを用いて作る伝統的な西洋建築の構法です。コンクリートブロック類やレンガを用いて構成します。内外装仕上げを省くことができるので、コスト的にも優れています。組積造はもっと普及しても良い構造だと思います。
@補強コンクリートブロック造
コンクリートブロックと補強筋で壁を構成します。鉄筋コンクリートの梁(臥梁)が必要になります。断熱性・耐火性に優れています。
A型枠コンクリートブロック造
二重のコンクリートブロックを型枠として、間に鉄筋コンクリートの壁を一体化して耐震壁を構築するものです。合板型枠使用を削減できるので、環境問題に貢献できます。壁はかなり厚くなる反面、断熱性・耐火性に優れています。
BRMブロック(補強組積)造
コンクリートブロックより少し頑丈なRMブロックと補強筋によって壁を形成します。性質は@Aに似ています。意匠性の高いものもあるのですが、なぜかあまり普及していません。もっと普及しても良い構法だと思います。
C補強レンガ造
レンガと補強筋によって構成する工法。 |
|
2)軽量鉄骨構造(LGS)
@構法上の特徴
軽量形鋼(厚さ6mm以下の鉄骨)を利用して柱・梁を形成します。水平耐力は、鋼材ブレースで抵抗します。一般にメーカー住宅に多い構法です。工場生産部分をさらに進めるとプレファブ工法になります。
A一般的特徴
・プレファブ住宅の代表的構法。
・比較的安価である。 ・3階建てまで。
・建物重量も軽く軟弱な地盤にも対応可能。
・比較的大きなスパンも可能。
・耐火性は、準耐火構造まで。
・プレファブ化が進んでいるので、工期に余裕が無い場合にメリットがある。 |
|
3)壁式プレキャストコンクリート造
プレファブ建築のひとつで、メーカー住宅で供給されています。構法的には、木製パネル工法に似ています。一般的な特徴は鉄筋コンクリート造と同じです。軽量発泡コンクリートと普通コンクリート等があります。コンクリートパネルは工場で製作するので、安定した品質と性能が得られる一方、自由度がかなり限られます。 |
|
4)鉄骨鉄筋コンクリート造
高層住宅や事務所ビルなどで用いられる構法です。 |
|
5)免震構造
基礎を二重にして、その間に地震の揺れを吸収する免震装置を取り付ける構造です。地震の被害は、構造体だけでなく内装にも及びます。家具の転倒や物の落下で怪我、時には命を落す場合もあります。
免震構造は、建物の揺れそのものを少なくしますから、二次災害防止の点で大きなメリットがあります。免震装置は、一般に建物寿命より短いので定期的に点検し必要に応じて交換する必要があります。また免震部分とその他の部分の揺れの差はかなり大きなものになるので、エクスパンションジョイント(構造上の絶縁装置)を設けます。 |
|
6)制震構造
大規模建築物で、地震や風の揺れに応じて抵抗する装置を設けた構造です。@水槽を置いて、地震波や風の逆の動きを水槽に与えて抵抗するものや、Aダンパーや粘性体、柔らかい金属等を用いて吸収するものがあります。入力加速度に応じて複合的に使用する場合があります。@を特に区別してアクティブ制震構造と呼ぶことがあります。
いずれも、構造体としては揺れに拮抗または吸収する目的が主眼であって、現行法令では構造材そのものとしての評価を得ているわけではありません。従ってあくまで付加的な二次構造の扱いになっています。しかしいずれ、解析によって構造体として認知される日が来ると思われます。
下の写真は、木造住宅用に開発された壁内に収める金属製の制震装置の例です。特殊な粘性体を使っています。揺れが大きな木造建物のリフォーム工事でも性能を発揮します。コストその他の情報は、メーカーに直接お尋ね下さい。
|
|
潟Nレールの『ゆれないくん』 |
|
|
|
11.未来の構造形式
過去に蓄積された構造に関わる課題は20〜3年の間業界で蓄積されています。その間様々な構造形式が提案され、実験的な住宅が作られて来ました。
@新たな材料を使ったもの、A新たなたな構法によるものが代表的でした。ところが、それまで新たな構造形式を規制してきた建築基準法が撤廃され、建築構造は自由度7を増すことになりました。実質的な違いは無いとの見方もありますが、こと木造建築分野では特に可能性が高まりました。
門屋総合設計では、それらの社会的な環境変化と技術的なノウハウによって、過去に考え出された概念的なものもふまえて、未来の住宅造を描いています。それについてここで解説します。
1)構造体と非構造体の分離
この概念は100年以上もも前から考え出されたものです。石を使ったヨーロッパの代表的な建築家の思想です。その当時は、ライフサイクルという概念はなく、建築的な自由度が優先された時代でしたし、近年ではメタボリズムという思想もありました。これらは、その思思想の違いはあるものの、構造体と非構造体を分離することに特徴があります。
2)日本の建築構造体の概念の推移
木造建築物は、日本ではあたりまえのものでしたが、戦後、すっかり概念が変わりました。あたりまえですが火事に弱いことが解ったからです。
今、木造建築物は、補助的な部材によって法律で定められた耐火性能を満たすことができるほか、実験手法によって軸組の大きさによっても耐火性能認められる可能性も出て来ました。 |
|
|
|
12.門屋総合設計が考える新たな構造形式 |
|
門屋総合設計は、構造体の寿命を末永く維持する=できることを大きな目標としています。その理由は、ライフサイクルコストの概念にあります。構造体の維持管理を最低限居抑える一方、時代・世代に応じたニーズにどれだけ応じられるかというところにあります。 |
|
1)無視できない機能
@住宅のライスサイクルコスト
|
|
A予防保全と事後保全
|
|
B簡単に変えられる内装と設備
|
|
C簡単に変えられない内装と設備
|
|
2)
|
|
|
|