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  2005年3月
   2世帯住宅の作り方


 2世帯住宅は、2つの異なる世帯がひとつの屋根の下で生活するわけですから、複数の家族の十分な話し合いの上での合意が前提となります。2家族の話し合いが不充分のままプランが進行したり、窓口が定まっていないために、打ち合わせ毎に考え方が変わってしまったり、と様々な問題事例が聞かれます。かと言って、単に面積的な制限のために器の中に生活を当てはめることは、危険があると思わなければなりません。



1.2世帯住宅の典型例

1)完全分離

 水周りから玄関まで、完全に分離する方式。上下階で分ける方法と平面的に2棟を合体させる方法がある。

2)部分分離

 住まいの一部を分離する方法。分離する部分の大小によって様々なパターンが考えられる。話し合いを通じて積極的に関わりをもつ意味を明らかにし、双方が納得する必要がある。面積的な制限のためにプランだけが一人歩きしないよう、注意して進める。

3)すべて共有

 従来からの住まい方の形式。一般には2世帯住宅とは言われない。



2.2世帯住宅のメリット・デメリット

 2つの世帯が共同で住まうことによって、いくつかのメリットが考えられる。

1)外壁・屋根の共用によるコストメリット等

@まとまる外部空間
 完全分離の場合でも、別棟で建設するよりまと  まった外部空間が得られる。
A豊かな共用スペース
 部分分離の場合は、共用部分が広くなればなるほどコストメリットがある他、豊かな共用スペースが得られる。
B機器・備品類の共用利用
 建築だけでなく、車や家電等を有効に利用したり、台数を減らしたりすることができる。
Cエネルギー利用の低減
 電気や水道、ガスその他の使用量を個別の場合より削減できる。

2)生活支援

 2つの家族がお互いに生活を支援することで、別々に住まうより合理的な生活ができる。
@子供(孫)の面倒、車の運転、家事、その他を分担して行動時間を拡大できる。
A病気のときのバックアップが可能。
B老後の在宅介護がしやすくなる。

3)子供(孫)の教育
 

@老夫婦の知恵の継承
 かつての孫は、『おじいちゃん子』『おばあちゃん子』という言葉があったように、老夫婦の教育に果たす役割は重要な位置付けにあった。老夫婦の昔からの知恵が伝えられる。
A社会生活の擬似体験
 2人の親だけでなく老夫婦との生活を通じて社会生活の擬似体験ができる。

4)日常生活交流

@豊かな団欒
 2つの家族が一緒になって、団欒すれば小人数では得られない豊かな団欒が得られる。
A孫とのふれあい
 老夫婦は、孫とのふれあいを通じて充実した生活を送ることができる。

5)登記上のメリット

 玄関が二つあれば、少しの工夫で別々に登記できる。

6)デメリット
 以上は、一般に言われているメリットをまとめましたが、その裏返しとしてのデメリットがあります。デメリットは、生活の中で、2つの全く異なった家族の遠慮や小さな衝突、ミスコミュニケーション、違和感、僅かに干渉されあうプライバシー、生活パターンの違い、寛容心不足、その他を通じて軋轢が発生することです。結局メリットとデメリットが背中合わせの関係にあるということができるでしょう。これは、建築的な問題というより、住まい方・行き方の問題と言えます。デメリットだけに注視せずメリットがあることを忘れないこと、生活干渉をしないこと、敢えて2世帯住宅を選んだ意味と意思を再確認すること等が解決の道と言われています。



3.プランニングの注意点

1)完全分離の場合
@2つの玄関
玄関が別であることが条件。
A計画上のポイント
完全分離の場合の注意点は、集合住宅(マンション等)の計画とほぼ一致する。
B明確なゾーニング
ゾーニングを明快にし、生活干渉が生じないようにする。
C上下階分離
上下階分離の場合は、下階の寝室の上に生活騒音の発生し易い居間等を位置させないようにする。どうしても避けられなかった場合は、床の構造・仕上げに特別の配慮を施す。
D平面分離
平面分離の場合は、戸境壁は遮音性能の高い仕様を選択する。
E相互交流の工夫
完全分離であっても、交流を促進する手だてを考える。運用上の解決でも良いので、それが可能な場を予め決めておくべきである。
F完全分離から部分分離に変わる場合の注意
完全分離要望にしたがって作成したプランが、面積的な制約からイメージに満たない場合が考えられる。その場合は良く話し合い、部分分離を選択するかどうか結論を出す。

2)部分分離の場合

@共用部分の範囲の確認
住宅のゾーンを個室類とその他共用部分に分ければ、単純に2つの領域に分けられる。2世帯住宅では、その共用部分を繋ぐ領域が必要になる。仮にその部分を全体共用と呼ぶとすると、2つの世帯は、その全体共用部分を介して繋がりを持つことになる(ドア1枚の場合は完全分離形式になる)。
A相互交流スペースの確保
玄関だけが全体共用部分になる場合の、薄ら寒い生活像はだれでも想像できます。そこで、その玄関または、玄関に連続する交流スペースを設けることが望まれる。 

3)部分分離の典型パターン
@玄関に付属する共用リビングの設置
 この場合、リビングでの団欒に合わせた水周りが必要になる。超大邸宅向き。機能分離型。
A一方のリビングを共用リビングとする方法
 全体共用スペースそしての共用リビングと一方の居間を兼用する。玄関と一体になったロビー、ラウンジと考えれば良い。一方の居間スペースは小規模に押さえる。共用リビング設置の代償として主寝室の充実が必要。
B全体共用ゾーンの延長にさらに浴室等を加える
 全体共用ゾーンとして、パブリックリビングのほかに浴室をを加える方法。建設費や運用費をさらに低減できる。
C個室群住宅の発想
 上記の矛盾を解決する方法のひとつ。共用となるスペースを介して、個室が接続する方法。階層構成は2つ。プライベートリビング・キッチン等は個室扱いになる。



4.隠居制度に学ぶ

 世代の相違や世代交代を積極的に生かす昔からの住まい方の知恵があります。隠居制度です。法律的な拘束はありませんが、住まいの主として長く君臨した老夫婦が、実質的権限を息子または娘婿に与え、自分は第2の人生を歩む人生観を支援する制度または考え方です。
 このホームページの作成者は、幼年時代を茨城県土浦市で過ごしましたので、幼年時代には隠居制度は色濃く残っていました。隠居すると
『隠居』と呼ばれる建物を作りました。敬意を表して入母屋化粧垂木の伝統的住まいが一般的でした。農家の次男・三男が分家して親から作ってもらった『新宅』とは明らかに区別されました。新宅はかなり簡易に作られました。交流スペースは、庭になります。
 隠居制度の最も良いところは、その作り方も含め長い人生経験のある老夫婦の威厳が保たれながら、新たに構築された新世代の考えが尊重されることにあると思います。
 建築的には、別棟で作られるのが常識でした。その時が嫁が姑から開放される時でもありました。
 日本の家族制度が大家族だけで維持されたと思うのは実は認識違いで、土浦だけではなくその他の地方でも似たような世代の交代のシステムを明快に構築していたはずです。
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