設計事務所にも様々な種類があると言って良いでしょう。いわゆる数百人から千人以上の所員を要する大手設計事務所から数人の小規模設計事務所、著名建築家と言われる設計事務所と一般の設計事務所、大手設計事務所やゼネコン、ハウスメーカーの下請けをしている設計事務所等様々です。しかしこれらは、いずれも同じ職能(1級・二級建築士)によって業務を行っているものです。
門屋総合設計は、大手設計事務所での経験を生かして、環境に配慮した建築物を目指すのと同時に、地に足のついた、高品位の建物を作る方針で取り組んでいます。
ところが、当事務所のホームページを見て問い合わせして来られる住まい手の方々は、様々な検討を通じて、ハウスメーカーや工務店との比較検討の途上でお問い合わせされておられるのだと思うのですが、月に平均10件程度の問い合わせの中で、半数以上の方が工務店と間違えておられます。また設計事務所とつきあったけれど、結局ハウスメーカーにしたというような事例も聞かれます。そこで今までの経験を通じて、工事発注までの住まい手と設計事務所の関係に焦点を当てまとめました。
|
|
|
|
1.設計事務所はコンサルタント
多くの方々が誤解されているようですが、設計事務所はコンサルタントです。弁護士さんの職能と似ていると考えると良いでしょう。そのため、設計・監理の契約は、『建築設計・監理業務委託契約書』という名称になります。建築の設計・監理行為は、『請負行為』ではなく、『委任に基づいた行為』であり、設計料とはその行為に対する報酬ということになります。
建築基準法とその関連法令は膨大なものになりますから、住まい手に代わってそれらの法律を遵守した建物にまとめ上げることが設計事務所の職能上の第1の仕事です。次に直接の対話を通じて住まい手の要望を実現して行くことが第2の職能(住まい手にとってこの仕事が最も重要な職能と思います)になります。デザイン能力は評価に大きく影響する能力です。ご要望を伺いながら安心して建物を実現していく環境を構築することも重要だと思っています。スケジュールや予算設定の適切なアドバイスも重要です。その意味で住まい手と設計事務所は互いに協力し合って建物を作って行くことになります。 設計内容と予算に大きなずれが発生した場合は、予算の増額をお願いしたり、面積削減を助言することもあります。設計・監理に伴う技術力は、当然必要なものです。住まい手の様々なご要望に対して的確に応じられるノウハウが必要になります。住宅産業の最も大きな問題は、耐震性や耐久性です。設計事務所はその要望に対して的確に応じなければなりません。
現場での設計事務所の仕事は住まい手に変わって監理を行うことです。施工に伴う施工図が設計図に基づいてきちんとできているか、施工者が施工計画に基づいた適切な施工を行っているか、設計図通りに現場が出来ているか、契約に基づいた工事行程が適切になされているか等をチェック・指導するのが現場段階の仕事です。
様々な情報によると、住宅産業界の監理に対する意識は、今でも随分低いようです。建築設計・監理の行為の中で、設計の質は設計で決まりますが、物としての品質は、適切な監理が無ければ、大変大きなリスクを背負うことになるということを是非住まい手の方々には知っていただきたいと思っています。 |
|
|
|
2.門屋総合設計の理念
設計事務所が掲げる理念は様々です。その中で門屋総合設計の建築に関わる基本理念は、『関係性の検証』にあります。
社会的・歴史的関係性を常に意識し、設計・建設に関わる空間的関係性、組織的関係性を中心にした6つの概念を必ず検証し、常に念頭に置いて作品づくりを行っていく行為=関係性の検証=に基本理念を置き、総合的な視点を最重要命題として、社会に貢献して行きたいと思っています。
その意味でプロジェクトに関係する様々な関係者の技術力とノウハウを統合し最善の建物を作り上げていくことが大きな手法のひとつだと考えています。 |
門屋総合設計の理念へのリンク |
|
|
3.住まうことの意味/コンセプト設定
1)住まうことの意味
数多くの建築家達は、住まうことの意味を良く議論し、この命題に対して住まい手と共に様々な解を提示し様々な建物が世に問う話題作として送り出されて来ました、住まうという意味は何なのかを当事務所も常に考え、固定概念に捕われないよう心がけています。
どのように住まうかは、住まい手の哲学の発露したものと思います。住まうことには最適解があるわけではありません。個々に導き出される個別の解です。
この住まうことの意味の設定は設計コンセプトを超えた人生設計につながり、具体的な形を作ることよりむしろ住まい方のプログラム造りのことです。数十年から100年程度の時間軸を含めた人生観に近いものと言えるでしょう。住宅の設計プロセスの中で、この領域まで立ち入って議論することは、あまり多くはありませんが、一度は目を通しておくべき課題だと思っています。
2)コンセプト作り
『この建物を作るに際して、何を一番大切に思われますか。』という問いをプロジェクトのなるべく早期の段階でお尋ねするようにしています。それこそが、コンセプトに直結するものであり、設計行為の根幹をなすものであると思います。
ところが、建物を作るコンセプトは何かと問われた時に、実際に明快にお答えになられる方はそう多くはありません。むしろ住まい方や日常の使い勝手の迷いからスタートされる方が圧倒的です。そのような『迷い』は、言い換えれば『問題意識』と考えても良いでしょう。そのような場合は、迷いの要因を分析して優先順位を明快にしておくと自ずと明快な答えが出てくることが多いものです。
優先順位の中でより高位に属し、建物全体の作り方に影響を及ぼすものを『基本方針』あるいは『コンセプト』と呼んでいます。コンセプトは、住まい手側の方針を受けて、設計者側で新たに提案することもあります。このコンセプトの設定は設計の初期段階で最も重要課題であり、曖昧なまま設計を進めてしまうと、論理性に乏しくなり、迷いが迷いを生んで行きます。たまに耳にしますが、A案に始まってH案まで行ったら、堂々巡りして結局A案にもどったなどと言うケースは、正にこのコンセプトレスの結果と言えるでしょう。
このようなことから、コンセプトが確立できていない場合は、専門家としてアドバイスしながら、誘導させていただくことも設計事務所の大きな仕事だと思っています。
|
|
|
|
4.信頼関係こそ大事
ゼネコンや工務店・ハウスメーカーに依頼する場合も同じですが、信頼関係こそ大事です。設計行為は設計者に任せればすべて出来上がるというようなものではありません。最近は、多くの企業が『コーラボレーション』を理念に掲げるようになっていますが、これは、信頼関係の中で『共に作る』ことを大事にしようというものです。企業戦士の中堅や管理職なら誰でも知っていますが、ちょっとしたことで感情的になるようでは、『モチベーション』(勤労意欲)を損ねることも考えなければなりません。できることも出来なくなってしまうこともあります。そのようなことから、冷静な態度で設計者をうまく誘導して行く大人の付き合い方が重要になってきます。
現場段階になると施工業者が加わって、三位一体の信頼関係を築き、お互いの職能に応じた職務を遂行していくものです。たまに、設計者が頭ごなしに業者を叱咤している光景を見かけることがありますが、そのようなやり方では決して良い建物はできません。その意味で、三位一体の関係造りを促す仕事も設計事務所の重要な仕事であると考えています。 |
|
|
|
5.説明責任=納得設計
平成10年に『建築士法』が改正され、説明責任が明確にされました。医療業界の『インフォームドコンセント』と同じです。実際、住まい手と設計事務所のトラブルの多くは、説明不足が最も大きな原因になっていました。また、信頼関係こそが大切であることは前項で申しあげましたが、数ヶ月に及ぶ設計期間を考えると、信頼関係が築かれていても記憶違いや思い違いが起きないとも限りません。信頼関係は一度崩れると回復はなかなか困難になります。そのような事態は、双方にとって悲劇に繋がります。
門屋総合設計では、常に住まい手の立場に立って考えることを最重要の課題と考えています。図面を基本に事例写真や材料サンプル、カタログ等を補助手段として用いて、一つ一つの設計内容を丹念に説明するよう心がけています。設計事務所は、技術的側面で特殊なご要望があれば、時間をいただいて各種調査を行い、実現に向けてできる限りの努力行います。
必要に応じショールーム等に同行します。また、打合せ記録は必ず残して、ミスコミュニケーションを可能な限り回避するようにしております。
門屋総合設計に依頼すれば、必ずや安心して建物ができあがるこよう努力します。 |
|
|
|
6.予算枠はなるべく早めに決める
予算は、建設に関わる総予算を押さえた上で、工事費に当てられる金額をきちんと算出しておかないと後で苦労することになります。予算はあくまで予算であって、事業計画の視点からは、なるべく無理のない予算設定をするのが基本です。特殊な構造形態や石貼りの外壁などにしない限り、概ねの建物の相場はありますから、相場とあまりかけ離れた予算設定は危険です。
門屋総合設計では、予算立ては標準相場をベースにお勧めしていますが、せいぜい5%減程度に押さええておいた方が無難だと思っています。1割減程度になると場合によりかなりの減額調整が必要になることがあります。それ以上の開きがある場合は、面積縮小も視野に入れなくてはなりません。こういう時代ですから、中には予想外(下回る意味)の見積が上がって来ることもありますが、それを前提にしてしまうと大きなリスクを伴います。きちんとした設計図ができていれば、金額が大きくばらつくことはありません。逆に、ばらつきが大きい場合は、それだけ設計図がいい加減であることを証明しているようなものです。
ただし、1割程度の格差であれば、減額のリスクを覚悟の上で見積依頼を行う方法もあります。これは、ある意味で最もコストパフォーマンスが期待できる発注方法とも言えます。 |
|
|
|
7.設計契約
契約は、『建築設計・監理委託契約書』を締結します。契約に際しては、委託者(住まい手)の様々な事情を真摯に受け入れ、個別に対応するように致します。契約対象については、解かりやすくきちんと説明し、住まい手のご要望を反映します。
設計に関わる瑕疵については常に回避するよう努力しておりますが、もし、万が一設計者の瑕疵発生した場合に際しては、きちんと住まい手の立場に立って保証等が確実に可能となるよう各種保険に加入するようにしております。
また、住まい手側にも様々な事情が発生することがあります。そのような予測される事情に対しても、片務契約にならないよう対話を通じて定めていきます。 |
|
|
|
8.間取りを決める
規模や間取りを決めることは、基本構想段階の最も大きな要素です。この段階で基本方針が決まり、規模や生活のイメージが決まります。
この段階では、物を決めることより、『こと』が大事です。言い換えればどのように住まわれるかを検証することを重要視しなければいけないということです。
最近は、実に様々な生活パターンががあることが当たり前になりました。10年前とは雲泥の差があります。当設計事務所は、そのようなご要望を率直に受け入れると同時に、それに伴う生活上の助言も行うようにしています。
|
|
|
|
9.詳細な使い方を考える
間取りが決まると、こんどは、各々の部屋毎に詳細な使い方の打合せの段階に入ります。それに合わせて使用する材料を一つ一つ決めていきます。
建築士法の改正によって、設計者には説明義務があります。材料の一つ一つの内容についてカタログや材料サンプルを用いて話し合いをします。しかし住まい手にとっても大変な負担になります。信頼のできる相手なら内容によってはある程度、お任せいただくこともあります。
|
|
|
|
10.予算調整
最初に設定した予算通りに進めばそれに越したことはありませんが、打合せを詳細に詰めて行くと多くの場合は増方向になって行きます。そのためにも成るべく確実な予算設定が必要になりますが、金額が大幅に上がるような場合は、予算の見直しが必要になることもあります。
そのような時は、なるべく早めに話し合いの場を設け、その後の進め方に対してアドバイスします。 |
|
|
|
11.業者の選定
業者選定の基本は、住まい手の仕事です。特に懇意にしている業者がある場合は、早めに設計者に伝えるようにします。
特にそのような業者が無い場合は、設計事務所がアドバイスします。
設計事務所の中には、早い段階から施工業者を紹介して進めていくところがあります。このようなケースは、一般にスケジュールが厳しい場合や早期にコストを確定したい場合は有利です。しかし予算が厳しい場合は、複数の業者を選定し競争原理を働かせることになります。その場合は、最後にならないとコストが確定しないというデメリットもあります。これらのどの方法が良いかについて、設計事務所がアドバイスします。
|
|
|
|
12.工事発注・見積依頼
業者(あるいは複数の業者)が決まったら、見積依頼をします。業者に対する見積依頼業務は、通常は発注者の仕事になりますが、図面内容に対する質疑やその回答については、設計者でないと難しいので、設計者に任せることになります。
住宅の様に個人の場合は、別に仕事があってのことになるので、設計事務所が代行することになります。
見積書が上がって来ると設計事務所が内容を査定します。
標準相場に対して予算とのの開きが是正されないままこの段階を迎えると、ここでかなりの減額が必要になることがあります。特に個人の場合は、身を削がれるような思いを抱いてしまう場面ですがこの山場を通り抜けないと建物は出来上がりません。根気良く設計事務所と打合せを行い、また業者からのVE(バリューエンジニアリング)提案も納得できる範囲で受け入れることが大事です。 |
|
|
|
13.設計事務所の弱点
建築設計事務所の仕事は、建築士法に基ずく職能と資格によって定められています。しかし、ハウスメーカー等の場合は、提携銀行やインテリアコーディネーター、提携工務店、提携運輸会社等との一体のサービス体系を構築し、住まい手の煩わしさを軽減できるようになっています。このことの裏返しの現象として、設計事務所は、コンサルタントとしての第3者性(=客観性)がある一方、弱点もあると言わなければなりません。以下に、設計事務所に一般的に言えることと、門屋総合設計の取り組みについてまとめました。
1)銀行融資/事業支援
銀行融資に対する支援は、建築設計事務所の業務ではありません。そのために、住まい手側の縁故やお付き合いの関係の中で手続きをしていただくことになります。ただし、必要な書類整備に対しては、設計事務所として可能な協力は致します。
門屋総合設計は、融資に際して早い段階で業者見積が必要な場合は、見積聴取に積極的に協力致します。特約業務として、賃貸住宅等の事業としての計画・立案等に際しては、事業計画の支援業務を行っております。ご要望に応じて長期修繕計画の立案も行います。
2)引越し手配
引越し手配等も銀行融資同様に設計事務所の業務ではありません。
門屋総合設計では、設計段階で既存家具の利用計画や家具配置計画をきちんと行いますから、引越しに際しては、その計画が有効な資料として利用できます。
ご要望があれば、引越し計画や見積聴取の協力を行います。
3)仮住まいの手配
建て替えの場合は、仮住まい場所を探す他、総合的なスケジュール調整が必要になります。スケジュール調整は設計事務所の業務です。また、ご要望に応じて、仮住まい場所等の手配については、提携の不動産会社を紹介させていただきます。
4)別途工事(住まい手が直接発注する工事)に対する作業
一般に、既製の置き家具の選定や特注の置き家具設計、カーテン・ブラインドの計画・選定、電話器、家電製品、ホームセキュリティの計画・設計等は、建築設計事務所の業務ではありません。しかし、それらに伴う各種調整業務は設計業務の範囲に含まれるのが一般的です。
門屋総合設計では、ご要望に応じてこれらを本体工事に含めたり、特約業務として契約内容に含めることも可能です。
5)予算設定
よく言われることですが、設計事務所が設計・監理を行う場合、工事請負金額が、業者見積上がって来るまで確定しないという問題があります。そのため、標準的な単価に基づいた参考予算金額を提示させていただきます。
銀行融資その他の関係で工事請負金額の目途をなるべく早く必要とする場合は、基本設計段階等で概算見積を聴取し協力致することになります。 |
|