21世紀に入ったなら、世界はばら色に変わってくれればと誰もが期待していましたが、残念ながら世界的な経済不況と誰もが考えてもみなかった同時多発テロを垣間見、あらゆる業界が大競争の時代に突入し、リストラの嵐はついに日本政府にまで至りました。年金、健康保健の不安、老後不安、将来が見えなくなって、多くの方が買い控えに走っています。
一方、バブル時期にマンションを購入され、今買い換え需要にある方は、本当に気の毒だと思います。売りたくても売れない、売ろうとすると借金が増えてしまうという考えられない事態が起きているのに余り話題にもならない風潮はどういうことなのかと、首をかしげてしまいます。
その中で今、住まいを購入あるいは建設しようと考えておられる方は、実に幸いだと思います。
このページでは、住まいに、今何が求められているのかをささやかながら検証してみたいと思っています。
|
|
|
|
1.目にあまる住宅産業業界の誹謗合戦
私は、20年間一戸建て住宅業界とは縁のない中で、設計監理業務を行ってきたので、ほとんど知らなかったのですが、ここ4ヶ月間、時間を割いて住宅産業業界の情報雑誌やホームページを覗いて状況を見ました。じつにスマートに着実な経営をされている企業が多いなかに、名前こそ出さないものの、誹謗中傷に近い表現で他社製品をなぶり倒し、自社商品の優位性を売っている企業がいくつかありました。先日、久しぶりに学生時代の同窓生で大手住宅企業に勤務している友人に電話してみました。答えは、『われわれ技術職の人間には良く解らないけれども、いろいろあるみたいだよ』でした。建設省が性能表示制度法制化した真の理由がここにあったのかと思いました。ワークシェアリングが叫ばれている世の中で、そのような倫理観を持った企業の生命は長くないでしょう。
まだまだ、言いたいことは沢山あるのですが、当事務所の客観性を念頭にこの程度でとどめておきたいと思います。
|
|
|
|
2.ローコスト住宅と購買タイミング
今、多くの住宅需要層が模様眺めに走っているのは、着工動向から明らかなようです。他の業界も例外ではありません。将来を考えてお仕着せローコスト住宅に手を出すのもひとつの方法ですが、不動産の流動化が始まった現在、ちょっと我慢して様子を見た方が懸命なのかもしれません。
|
|
|
|
3.高断熱・高気密が今の流行
高断熱・高気密住宅の売りは、@エネルギーロスが少ないので省エネルギーにつながること、Aとりわけ木造住宅の大敵である木部のカビや腐れの原因となる結露を防止できること、Bまたカビ発生の防止はアレルギー対策になること、C計画換気によって室内気温差を少なくして冷ショックを防止すること、D少ないエネルギーで得られる冬寒くない快適な室内、E自然素材との抱き合わせ使用で良質な室内空気環境が得られることが挙げられ、いずれの企業も目的においては大差がありません。大きく違うのは、構造構法(在来、2×4)、断熱工法(充填断熱、外断熱)、及び換気・通気の方法です。
いずれも夏冬は空調し、春秋は自然換気、夏冬は計画換気するのが前提になっています。
|
・結露によって発生するカビを無くせば、ダニ発生が押さえられるというのは全くの間違いで、カビを食べるダニの発生だけは押さえられるというのが正しい表現です。温度10〜30度、湿度70%以上の環境があればダニは繁殖してしまいます。
|
|
|
4.これからの住まいは、適断熱・高気密・3季自然通風型住宅か?
今の流行りがそのまま進行すると、夏冬は常時空調運転、ヒートショック、冷ショック防止のため、高齢者は家にいて外出は控えた方が良いということになります。
しかしまさかそのようなことにはならないでしょう。高断熱・高気密住宅でも、断熱と通風に配慮した設計によって、盛夏の一時期を除けば、風の恵みを享受することができます。普通の家でも大きな窓があれば、天気が良い冬の日中は、暖房なしでも20度を下ることはないことを多くの人が知っています。私の家も全く同じです。
そのようなことを考えていくと、次は適断熱・高気密・3季自然通風住宅が待っていると思わせます。古来の家のように夏を旨とした作りと、冬に強い断熱・気密性能を複合的に考えた住まいです。開口部がどうしても大きくなるので、複層ガラスを使ってもせいぜい地域区分Wが限界でしょうが、関東圏から九州の大半をカバーする最も販売領域の大きな地域です。
|
|
|
|
5.木造の耐火性はどこまで可能か?/コストの差が無くなる構造形式
石膏ボードや珪酸カルシウム板で2時間の耐火性能のある壁は随分以前からありましたから、木造もかならず耐火構造になる日が来ると思っていました。今はまだ準耐火までですが、新法の制定によってそのうち木造耐火構造がお出ましするのも時間の問題のような気がします。。
鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造にされる多くの方は、まず耐火性能を第一条件に挙げるでしょう。また、耐久性の点でも金物と接着剤だらけの現代木造には限界があります。木造住宅の弱点であった気密性を向上させて来た結果どんどんコストが上がり、準耐火仕様にしたら鉄筋コンクリート造や礎積造と同じ単価になるでしょう。
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、礎積造には夫々特徴ががありましたが、最後に残されるのは耐久性と建物重量の差(地盤が悪い時コストに差が出る)しかない状況を迎えようとしているのでしょうか。
|
|