Sound of Music
 小さな子どもと一緒にいける演劇は余りありません。しかし、劇団四季がやっているサウンド・オブ・ミュージック(主演:井上智恵)であれば、息子も喜んで観ると思いました。サウンド・オブ・ミュージックは沢山の子役が出ます。息子(6歳)と同年代の子どもも登場します。きっと興味を持つだろうと思いました。また、有名な歌――「ドレミの歌」は、確実に知っています。「私のお気に入り」もテレビCM(JR東海)で使われているので、きっと聴いたら分かるだろうと思いました。

 観劇の日は前日から降り続くみぞれの影響で、あいにくの空模様でした。寒さで身を震わせながら、竹芝にある四季劇場(秋)に行きました。しかし、劇が始まってしまえば、寒さなんんてなんのそのです。興奮と感動で体中が熱くなりました。なんといっても生歌で聴く名曲の数々は、映画よりずっと迫力があります。なかでも修道院長(秋山知子)が歌う「すべての山へ登れ」は、別格の声量感がありました。歌が劇場全体にこだまして、わたしは鳥肌が立ちました。

 有名なジュリー・アンドリュースの映画版と、劇団四季の演劇版では大筋は一致していますが、細部にいささかの違いがあります。映画を知っていると、演劇を観たときに、その違いを発見するのも楽しいことでした。特に顕著だったのは、トラップ大佐とエルザの別れの原因です。映画版では、トラップ大佐が愛しているのはエルザでなく、マリアであるという事実に気付いたことです。演劇版は、大佐はナチスの侵攻に対し、あくまでオーストリア人の誇りを貫こうとしたのに対して、エルザはナチスに迎合することで、生き抜こうとする価値観の違いにあります。

 サウンド・オブ・ミュージックといえば、エーデルワイスなど名曲が多いことで、知られていますが、国家指導者のエゴによる悲劇も、重要なモチーフです。ナチスに祖国の誇りを奪われたオーストリア人は、どのような心情だったのでしょうか!?――戦争はその国で育った人間の尊厳を簡単に壊します。今も戦争・紛争は各地であります。いつになったら、世界は平和になるのでしょうか!?――四季の劇はこの問いかけをしているように感じました。

 わたしは劇を見ながら、時々息子の表情を観察しました。流石に「ドレミの歌」が出たときは、嬉しそうな顔をして、リズムをとっていました。それを見て、微笑ましくありました。演劇が終わったあと「何が一番良かった?」と息子に聞くと、「グレーテルが良かった」と言いました。グレーテルはもっとも小さな子役です。やっぱり、同年代に興味を持つと思いました。

 サウンド・オブ・ミュージック(東京公演)は今年の3月12日が千秋楽です。あと1ヶ月余りです。ファミリーで観に行くのに、素晴らしいミュージカルです。事前に映画を見れば、ザルツブルグの雄大な自然と歴史的な建造物がイメージ出来ます。演劇では、この部分は流石に表現が難しいところです。もし、時間があれば映画も演劇も観るといいでしょう。(2011/2)
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「サウンド・オブ・ミュージック」オリジナル・サウンドトラック

第38回アカデミー賞10部門ノミネート、5部門受賞を受賞したジュリー・アンドリュース主演ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』の公開40周年を記念したレガシー・エディション。

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