死神れすとらん
「前菜よ」
銀のワゴンの上には、
グリーンサラダとコーンポタージュスープ。
(どちらにしよう・・・?)
どちらも別に嫌いでもないし、
特に好きでもない。
でもこれは好き嫌いを言っている場合ではない。
(正しいものを選べ・・・・か)
どちらが正しいなんかわからない。
(グリーンサラダのほうが健康によさそうだな)
グリーンサラダという名の通り、
レタス・きゅうり・アスパラ・ブロッコリーなど
緑のものばかりである。
そこにかすかに交ざっている真紅のトマト。
彼女の唇の色を意識した。
そういえば、なぜ彼女の唇はあんなにも真っ赤なんだろう・・・
だんだん道が外れてきた。
「そんなに悩む?」
そんなことを考えていたら、
本人が声をかけてきたので驚いた。
(いや・・・食事のことより貴女のことに悩みます)
なんて口には出せない。
「えぇ、まぁ・・・なにせ命がかかっていますから」
これは本当である。
「あまり深く悩まないほうがいいわよ?」
ちらりと彼女はグリーンサラダの方に目をやった。
(・・・・?)
「貴女はどちらが正解か知ってるんですよね?」
「もちろんよ」
・・・・・分かった。
やはりグリーンサラダだ。
「・・・じゃ、じゃぁグリーンサラダで」
「そう・・・?」
彼女は銀のフォークを渡してくれた。
「さぁ、残さず食べてね」
味は普通だった。
ドレッシングはあっさり和風で、
ほのかに梅の香りがした。
最後の真っ赤なトマトをフォークに突き刺し、
一口で口の中に入れた。
梅の香りとトマトの酸味が混じって、
不思議な感覚に襲われた。
全部食べ終え、
フォークをテーブルの上に置いた。
「正解よ」
彼女は少し悔しそうに答えた。
「よくわかったわね」
(そりゃぁ、貴女ちらりと正解のほう見たから・・・)
「あの・・・でも正解ってどういうことなんですか?」
「さぁね」
彼女は短くそう答え、
左の指をぱちんと鳴らした。
すると、さっきの銀のワゴンは
ひとりでに動き始め、
消えていった。
(マジかよ・・・・)
あまり深く考えたくはない。
彼女がもう一度指を鳴らすと、
また新しい銀のワゴンが出てきた。
「さぁ、そろそろ難しくなるわよ?」
それから何故かオレは
自分の直感と彼女の何気ないしぐさなどで次々と正解を出して、
その度に残さず食べていった。
やはり彼女はちらりと正解の方を見ている。
(これならいける)
それが絶対だと思っていた。
彼女の不敵な笑みにも気がつかず。
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