死神れすとらん





















「目、覚めたかしら?」



その声ではっきりと意識が戻った。

頭が割れるように痛い。

異常な痛さにくらくらした。

気がつけば椅子に座らされていて、

両足は椅子のあしに縛り付けられていた。



「キミは・・・!!」

間違いなくあの女の子だった。

着ているものはノースリーブからエプロン姿になっていた。

黒い服と白いエプロンが対比されイヤに目に付く。

ウェイトレス・・・・

いや、昔のメイドみたいな格好だ。



「オレ・・・どうしてここに?」

ここはどう見たってレストランだ。

彼女の手をとってからここまで、

全く記憶がない。

オレは何故こんなところにいるんだ・・・?







「貴方は死んだのよ?」

そう囁いて、さも可笑しそうに彼女は笑った。

死んだ?オレが?

彼女の真紅の唇の端は上がったまま。



「・・・・何で?」

そう聞くのが精一杯だった。

「貴方・・・あたしの手をとったでしょ?」

確かに。

こくりと頷く。

「バカな人・・・」

嬉しそうに目を細める。

「あたしの手をとった人間はここに連れてこられるの」

「何のために?」





ここはレストランだ。

まさか最期の晩餐でもさせようというのか?

冗談じゃない!!

なぜ彼女の手をとっただけで死ななくてはならないのだ?










彼女はオレに見せたあの虚ろな瞳で、

あの甘い声で、

「ここは死神れすとらん

最期の晩餐次第で行き先が決まる。

天国か、それとも地獄か・・・

貴方はどちらかしら?」






なんてことだ。

これは全て夢だ。

頭ではそう考えているのに、

現実はこうなのだ。



狂っている!!





「キミは一体何者なんだ?」

声が震えている。

「あたし?あたしはタダの死神」

「死神?」

「そう・・・貴方みたいな人間をここに連れてこさせるのがあたしの使命」

「オレみたいな・・・?どういうことだ?」

「昨日、会議で貴方が死ぬって決まったのよ」

あっけらかんと言う彼女に絶句した。




会議?決まった?

「あたしは死ぬって決まった人間を迎えに行かなきゃいけないの」

そう言って彼女はまっすぐ瞳をオレの方に向けた。

「貴方を迎えに来たの」

























ふいに運ばれてきた銀のワゴン。

「前菜よ」

「前菜?」

「貴方の選択肢は二つ」

そう言って彼女は人差し指を立てた。

「一つは注文をして残さず食べる」

注文?

「あるいは今ここであたしに殺される・・・か」




何ですと?!



「どちらを選ぶかは貴方が決めていいわ」

「あの・・・オレはまだ死んではいないんですか?」

つい敬語になる。

彼女の口ぶりからすると、

とりあえずはオレはまだ死んでいないということになるのだが・・・・




「そうね、仮死状態ってとこかしら」

悪戯っぽく笑う。

そしてこうも言った。

「正しいものを注文すれば還してあげるわよ」

「ホントですか?」

「えぇ、、そういうキマリだから」

どういうキマリなのかはあえてつっこまないが、

こうしないどうも普通の世界には戻れないような気がする。

「オ、オレ・・・やります!!」

こうなったらなんだってしてやる!!

オレはまだ死ぬわけにはいかないんだ。








「さぁ、選んで」

ワゴンを指差す。

「前菜をサラダにするか、スープにするか」















オレの戦いは今始まった・・・!!