学校へ行こう!!体育祭編
『神様の微熱』



1.体温上昇。





















いよいよ体育祭の時期となった。
最後の体育祭ということで、皆はりきりすぎるくらいとはりきっている。
中でもうちのチームはノリがいい奴というか、負けず嫌いの奴が集まっているので
応援歌や旗まで作ってる始末だ。





「だからって何でオレが応援団なんだよ?」
「団長じゃないだけマシじゃない?」
打てば響くように隣から可憐な声が聞こえた。
(可憐な声と容貌の持ち主はもちろん我らの生徒会長である。)



そうなのだ。
応援団はチームに何人いても誰がやってもいいんだが、
何も生徒会の仕事で忙しい自分も巻き込まないで欲しい。



松田が灰原を誘い、灰原が歩美を誘い、歩美がオレを誘い…
そんなこんなで何故か例のメンバーで応援団をやることになってしまった。
ちなみに応援団長は声がでかい(図体もでかい)という理由で元太となった。

光彦だけが、何故か立候補して体育祭実行委員などという面倒なことを引き受けていた。
しかも後で聞いた話、委員長にまでなっちゃったとか。
どう見たって体育会系ではないのに。





―どうなってんの?!







































「で、オレらは競技何やるわけ?」
数学の時間、席替えで前後となった光彦に小声で話しかける。

「えぇと、確か三年生は徒競走・ムカデリレー・学年演技・・・・」
「面倒だな」
光彦の言葉を遮って一喝する。
「他にも選抜で騎馬戦とかもありますけど」

「あとは棒倒し」
ちゃっかり話に加わってきた光彦の隣の席の歩美が続けた。
「棒倒し、か・・・・・・」



棒倒しというのは三年生の男子だけがやる競技で、
毎年ケガ人が出てるという、かなりデンジャラスな競技である。
その分、得点も高いのでかなり重要な競技とも言えよう。





「学年演技って何やんだよ?」
「今年は組体操らしいですよ」
「組体操?!」



オレの素っ頓狂な声が響いたのと、数学教師からチョークが飛んできたのはほぼ同時だった。

「江戸川、退場!」
























昼休み、早速組体操の練習をさせられた。
体育の授業だけでは間に合わないのだ。

「江戸川、おまえ軽いから上ね」
なんて勝手に決められ、野郎共が組んだ人櫓の上に乗せられる。
本番よりも低いが、充分な高さだった。



その場に立ったら世界が違って見えた。
こんな高さから校舎を眺めるなんて夢にも思わなかった。
ついでに下を向いたら地面が遠く見えた。

「ちょっと怖いんですけど」























「どうでもいいけど、何で今年からチーム名変わったんだよ」

放課後の生徒会室。
今日は生徒会は無いのだが、何故か皆ここに集まって勝手気ままに過ごしている。
「うちのクラスは仮面ヤイバーね」
生徒会用に配られた体育祭の概要プリントに目を通しながら、哀はどこか楽しげな様子だ。
「例年通り赤・黄・白でいいじゃねーか」



中学三年生にもなって仮面ヤイバーチームはないだろう。
ちなみに他はウルトラマンだったりアトムだったり・・・・・
昔のアニメのキャラクター名がそのままチーム名なのだ。

「何でも校長の趣味らしいですよ」
仮面ヤイバーチームになれた光彦は哀と同様、ちょっと嬉しそうだ。(中学生だぞ?)
「今年から校長変わったからなー」
「とっても変わった人よね」
元太の声に歩美も頷く。

「昔のアニメが好きなんて、この作者みたいな性格だな」
オレは小さく鼻を鳴らした。



























「で?本当にこんなの歌うのかよ」
翌日、放課後の屋上では応援歌の練習中。
我が仮面ヤイバーチームの応援歌はヤイバーの主題歌の替え歌である。

「オレが徹夜で考えたんだぞ?」
不満を言うと団長である元太に睨まれた。

ヤイバーのメロディーに、「勝利」だの「優勝」などといった単語が並べてある。
単純な元太らしく、最後は「ビクトリー」と決めポーズ。
恥ずかしいこと、この上ない。

灰原や歩美が可愛らしく決めているのが、何だか憎らしかった。














「何でオレがおまえの馬をやらなくちゃいけないんだよ?」
「それはこっちの台詞だ。何でおまえの上に乗らなくちゃいけないんだよ?」
何ってもちろん騎馬戦の話である。
じゃんけんで負けて、選抜の騎馬戦に出場するハメになってしまった。
体格などの理由で何故かオレは松田の馬になることになった。
「組体操では上だけどな」

応援歌の練習のあとは騎馬戦の練習。
身体が受け付けないのか、お互い上手く呼吸が合わない。
「江戸川、しっかりやれよ!」

―おまえもな。
















「江戸川、もっと胸張って!」
「いや、だからマジで怖いんだけど」

騎馬戦の練習に続き、今度は学年演技である組体操の練習。
オレはまだ人櫓の上にきちんと立てないでいた。
倒立・サボテン・扇・塔などはバッチリなのだが、どうも櫓だけは上手く出来ない。
恐怖で足が竦んでしまうのだ。

「特訓・・・・・か」





そんなこんなで、体育祭に向けてますますヒートアップしていくのだった。





















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