プロジェクトX−1
〜クリスマス五日前〜











「ヤベ〜」

江戸川コナンは独り、体温計を見ながら呟いた。

さっきまで脇の下に突っ込んでおいた体温計は、

三十九℃を指している。

とてもじゃないが、動ける状態ではない。

「まいったなぁ〜」

世間はクリスマス前。

このままでは寝ているだけのクリスマスになってしまう。

今年もなぜか阿笠博士邸でパーティーをやるのだが、

これでは行けなさそうだ。

仮に熱が下がって行けたとしても、

プレゼントを買う時間がない。

「今年も私物にでもするか」

なんてコナンが独りぶつぶつ言っていると、

ピンポーン

毎度のことである。





















「具合はどう?工藤君」

「灰原・・・?」

てっきり元太達も一緒かと思ったら、

以外にも彼女一人だった。

「コレ、今日のノートと吉田さんからのラブレター」

あまりにも彼女が淡々と言うから、

最後の言葉を聞き流してしまった。

三秒後、

「あ、歩美からのラブレター?!」

思わず声が裏返ってしまった。

「モテモテね」

口元に微笑を浮かべながら、

そう言って彼女は出て行ってしまった。

(もっといてくれてもいいんだけどな)

ふと視線を落とすと、歩美ちゃんからのラブレター。

かわいいうさぎの便箋に

『早くよくなってね 歩美』

なんて書いてあったから大変。

(歩美、元太達に見られてないよな?)

もし見られていたら、後が怖い。

可愛い歩美の字を見ていたら、

胸が痛くなった。

気を紛らわそうと、灰原が貸してくれたノートをぱらぱらめくる。

だいたい、内容なんか小学生レベルなんだから

わざわざノートを貸してくれなくてもいい。

「アイツ、変なところに気が利くな」

彼女の几帳面な字を見ながらまた呟く。

風邪のときはこうも独り言が増えるものなのだろうか?

(いや、もしかしたらアイツからかいにきただけだったりして・・・?)

十分ありえる。

案の定、ノートの最後に

『名探偵さんは算数はお好き?』

などと書いてやがる。





「・・・早く風邪直そ」





















ちょうどその頃警視庁では、大変な騒ぎになっていた。

というのも、あの怪盗キッドが予告状を出してきたからである。

彼が盗むというのは、米花駅前にある大きなツリー。

「どうやって盗むというんでしょうかね?中森警部」

「知るか!!」





こうしてクリスマス五日前の夜は過ぎていく・・・