プロジェクトX−1
〜クリスマス五日前〜
「ヤベ〜」
江戸川コナンは独り、体温計を見ながら呟いた。
さっきまで脇の下に突っ込んでおいた体温計は、
三十九℃を指している。
とてもじゃないが、動ける状態ではない。
「まいったなぁ〜」
世間はクリスマス前。
このままでは寝ているだけのクリスマスになってしまう。
今年もなぜか阿笠博士邸でパーティーをやるのだが、
これでは行けなさそうだ。
仮に熱が下がって行けたとしても、
プレゼントを買う時間がない。
「今年も私物にでもするか」
なんてコナンが独りぶつぶつ言っていると、
ピンポーン
毎度のことである。
★
「具合はどう?工藤君」
「灰原・・・?」
てっきり元太達も一緒かと思ったら、
以外にも彼女一人だった。
「コレ、今日のノートと吉田さんからのラブレター」
あまりにも彼女が淡々と言うから、
最後の言葉を聞き流してしまった。
三秒後、
「あ、歩美からのラブレター?!」
思わず声が裏返ってしまった。
「モテモテね」
口元に微笑を浮かべながら、
そう言って彼女は出て行ってしまった。
(もっといてくれてもいいんだけどな)
ふと視線を落とすと、歩美ちゃんからのラブレター。
かわいいうさぎの便箋に
『早くよくなってね 歩美』
なんて書いてあったから大変。
(歩美、元太達に見られてないよな?)
もし見られていたら、後が怖い。
可愛い歩美の字を見ていたら、
胸が痛くなった。
気を紛らわそうと、灰原が貸してくれたノートをぱらぱらめくる。
だいたい、内容なんか小学生レベルなんだから
わざわざノートを貸してくれなくてもいい。
「アイツ、変なところに気が利くな」
彼女の几帳面な字を見ながらまた呟く。
風邪のときはこうも独り言が増えるものなのだろうか?
(いや、もしかしたらアイツからかいにきただけだったりして・・・?)
十分ありえる。
案の定、ノートの最後に
『名探偵さんは算数はお好き?』
などと書いてやがる。
「・・・早く風邪直そ」
★
ちょうどその頃警視庁では、大変な騒ぎになっていた。
というのも、あの怪盗キッドが予告状を出してきたからである。
彼が盗むというのは、米花駅前にある大きなツリー。
「どうやって盗むというんでしょうかね?中森警部」
「知るか!!」
こうしてクリスマス五日前の夜は過ぎていく・・・
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