学校へ行こう!!

〜第六話 ニ年生になったよ!編〜











魔の体育祭から永い冬が過ぎ、
季節はいつの間にかまた春になっていた。
ネクタイを結んでトーストをかじる。
今日から新学期だ。
春は人を新しくさせるとか言うけれど、
全然そんな気分じゃない。
ニ回目の中学ニ年生。
「さ〜て、今年も一年頑張るかっ!!」
カラ回りの元気で出ていく。





四月五日午前八時ちょっと過ぎ。阿笠邸。
去年はえらい待たされたが、
今年は彼女の方が待っていた。
「遅かったわね」
「そうか?おまえが早すぎるんだよ」
見慣れた制服姿。
毎朝一緒に通うのが習慣となってしまった。
それはそれで嬉しいのだけれど、
朝からこんなに緊張すると一日体力がもたないのだ。





「おはようございます!!」
五人で待ち合わせて学校へ行く。
これもオレの日常。
光彦が元気に挨拶してくる。
元太の姿が見えない。
どうせ今日も遅刻だろう。
「ったく・・・始業式ぐらい時間通りに来いよな」
それから十分後に来た元太に文句を言う。
「今年こそは同じクラスになれるといいね、コナン君」
「う、うん・・・そうだね」
歩美ちゃんが寄り添ってくる。
(なんで女の子の肌ってこんなに柔らかいんだろう)
健全な中学生らしいことを考えつつ、進む。
今年もぜひ同じクラスになりたい。
もちろん赤髪の女の子と。





そんな淡い期待はあっさりと裏切られた。
オレは歩美ちゃんと一緒のA組。
元太はD組。
そして光彦と哀はG組だった。
A組とG組じゃぁ階数はもちろん、
校舎まで違う。
去年はA・B・Cと並んで別れたが、
今年はどうも上手く別れなかった。
「離れちゃったわね」
少し淋しそうに彼女が声をかけてきた。
「ま、部活で会えるし行き帰りだって・・・」
自分も含め励ます。
「そうね」
彼女は短く答え、光彦と共に自分達のクラスへと去っていった。
「コナン君、一年間よろしくね」
とびきりの笑顔を向けられたら、何も言えない。
このクラス発表に一番嬉しいのは歩美ちゃんだろう。
ちょっと複雑だ。





「今日から君たちの担任の剛田だ。一年間楽しいクラスを作っていこう」
担任はいつぞやの体育教師。
<第三話参照>
何でニ年連続で担任が体育教師なんだ?!
とツッコミたいところだが、
そんなことは頭の中だけにしておく。
「松田と灰原、同じクラスなんだってな」
急に前の席のヤツに声をかけられ、驚く。
「あぁ、藍沢か・・・」
「よっ!今年もよろしく!!」
藍沢啓吾は小学校時代からの友人だ。
去年も同じクラスで、よくつるんでいた。
<第一話で名前だけ出ていました>
「あぁ、こっちこそよろしく・・・・って松田と同じクラス?!
最後の部分だけが教室中に響いた。
「コラッ!!江戸川静かにしろ!!!」
今年もこれでバッチリ名前は覚えてもらった・・・





そんなことより、こっちの方が心配だった。
灰原とあの松田が同じクラス?!
<松田君を覚えていますか?哀ちゃんのことを好きな、コナン君のライバルの男の子です>
今日は始業式だけだったから、帰りは早い。
HRが終わるとすぐに教室を飛び出し、
G組の教室まですっ飛ぶ。
G組までは階段をひとつ上がり、
渡り廊下を通り過ぎなくてはいけない。
階段が憎らしい。
G組もちょうどHRが終わったところらしく、人がたくさん出てきた。
その中に彼女の姿が。





急に問いただしたオレを不審そうに見つめる彼女。
「松田君とは今年も同じクラスだけど、それがどうかしたの?」
確かに教室には松田の姿があった。
ニヤニヤとこちらの方を見ている。
「・・・おまえアイツに変なことされなかったか?」
「はっ?!」
ますます不審がる彼女。
「イヤ・・・何もないならいいんだけど・・・・」
思わず彼氏っぽいことを言ってしまった自分が恥ずかしい。
「何か変なことを考えているみたいだけど、何もされていないわ」
相変わらず涼しい彼女の声。
「おまえ分かってんのか?」
「何を?」
全く心当たりがないように彼女が首を傾げる。
「・・・・・だから、松田はおまえのことが好きなんだよ」
言ってる自分が恥ずかしく、小声で彼女に囁く。
「知ってるけど?」
(何ですと?!)
あっさり認めた彼女に絶句した。
「それを心配してるの?あたしが彼と付き合うかどうか・・・」
「バーロ・・・心配なんかしてねーけど・・・」
しどろもどろになる。
本当は心配で心配でしょうがない。
「・・・付き合わないわよ」
そんなオレの心情を察知したか、彼女が呟く。
「えっ・・・・?」
思わず顔が明るくなる。
「だってまだ告白されてないもの」
「・・・・・・っ!!」
爽やかな風を一心に受け、
スカートをゆらゆらとなびかせて彼女は行ってしまった。





『だってまだ告白されてないもの』
鼻で笑って言った彼女の言葉。

告白されたら付き合うんかい?!




















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