文化祭一ヶ月前―「名探偵、古畑コナ三郎登場」






「歩美、コナン君のことが好きなの」


いつからだっただろう。
彼女からこんな相談をされたのは。
自分の気持ちを押し殺すようになったのは。




















壱萬打特別企画
『学校へ行こう!!』番外編
―帝丹中学文化祭―





の嫌いな彼女たち


























「ってことで、来月の文化祭でうちのクラスは劇をやることに決まりました」
(劇ねぇ・・・・・)
クラス委員の女子の方である歩美が黒板に書かれた劇の項目に花丸をつける。
今年は上手いように体育館のステージ権を得ることが出来たのだ。
教卓では同じくクラス委員の男子の方である藍沢が指揮をとっている。
「劇と決まりましたが、何の劇がいいですか?手を上げて意見を言って下さい」
なかなか板についてるクラス委員である。
(どうせシンデレラとかそういうお伽話系だろ)
ふぁ〜と大きな欠伸をひとつし、机に突っ伏す。
最近、生徒会の引継ぎだの何だのでお疲れモードなのである。
「白雪姫がいいです!」
(ほら見ろ。女子はこういうのやりたがるんだよな)
「桃太郎なんかどうっスかね〜」
(どうもこうもないだろう。中ニにもなって桃太郎はないだろう)
「ドラクエ」
(どんな劇だよ)
「太陽にほえろ」
(渋いよ)
「アラジン」「三匹の子豚」「人魚姫」「踊る大捜査線」「日本昔話」「ダイハード」・・・・・
和洋折衷、お伽話から刑事モノ、アクションまで出てきた。
どんどん黒板に演目が埋まっていく。
あちこちから声があがるのでおちおち寝てられない。
「江戸川〜寝てないでオレのために考えてくれよ。だいたい副会長だろ?」
「・・・・・・・寝かしてれよ」
藍沢の声に顔を上げ、黒板を睨む。
「だいたいオレはどうぜ生徒会の仕事でクラスの出し物は出れないかもよ?」
いつのまにか、もう黒板はいっぱいになっていた。
しかしどれもお決まりだったり、劇に出来ないような話だったり使えないものばかり。
「それは大丈夫。意地でもおまえ出させるから」
・・・・・一体どの辺が大丈夫なのだろうか。
「何かねぇ?おまえの頭ですっごいアイディア出してくれよ」
文化祭でニ日間あるクラス発表では、
最後にお客さんにどこのクラスが一番優れていたか投票してもらう。
そこで投票一位のクラスには校長から何かご褒美があるらしい。
なのでどこのクラスでも演目決めは重要なのである。
藍沢の頼みだから何とかしてやりたいが、特に何も浮かばない。
「そういや、この前明智小五郎のスペシャルやってたな」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「明智小五郎?!」
「それいいんじゃん?やろうぜ、明智」
「いいねぇ」
クラス内は明智モードに包まれていたが、
「あ、ごめん・・・だめ。三年生が明智小五郎ショーやるんだって」
黒板とにらめっこしていた女子のクラス委員、歩美が口を挟む。
他のクラス、学年と出し物がかぶってはいけないのだ。
というか何だよ?!その明智小五郎ショーって。
「どうするよ?江戸川」
「何でもかんでもオレを頼るなよ・・・・・・・・・・・・・・古畑とかは?」
皆の反応が少し怖く、恐る恐る提案してみる。
前から一度やりたいと思っていたネタである。
探偵なら誰でも憧れる名探偵たち。
その中でも一際異彩を放つ、古畑任三郎。
結構どこもやらなそうであるがどうだろうか?





「「古畑?!」」





「いいねぇ」
「いいかも、自転車乗ってくるの

「いや、吉田さん・・・・・・・・自転車は持ってこれないからね?」
「えー、古畑任三郎でした」
「似てねぇよ」
あちこちから歓声が上がる。
ダメモトでも言ってみるもんである。
「じゃぁ明智小五郎みたいに、古畑と誰か対決させようぜ」
こんな声が聞こえてきた。
「でもよ、怪人二十面相みたいなヤツいるか?」
藍沢の声に誰もが静まり返る。
「・・・・・ル、ルパン三世とか?」
「ルパンは作者が他のシリーズで使いたいって言ってたぞ」
「じゃぁ、だめだな」
またもや静まり返る。
「・・・・・・・・・・・怪盗キッド」
コナンのぼそりとした独り言が、静まり返ったクラス中に響いた。





「「怪盗キッド?!」」





「いいねぇ」
「いいかも、空飛ぶの

「いや、吉田さん・・・・・・・・ワイヤーアクションは出来ないからね?」
「手品やれよ」
「誰がやるんだよ?」
何ともノリのいいクラスである。
これで赤髪の彼女がいたらもっと最高なんだろうけど。
「じゃ、演目は『古畑VS怪盗キッド』でいいですか?」
「「いいでーす」」
見事全員一致。
クラスがこうだと、クラス委員も悩まずにすむんだよな。
「じゃぁ、次は配役を決めたいと思います」
(オレは他にも仕事があるから裏方ってことで)
今度こそ安堵の時間。ってことでおやすみなさい。
「まず主役の古畑やりたい人ー!」
藍沢の声だけがやたら響いた。
シーン。
しばしの沈黙。
(ん?)
またもや静まり返ったので顔を上げてみると、
クラス全員の視線がこちらに注がれていた。
(えっ?!オレ?)
無言のまま自分を指差すと、
クラスメイトたちも無言のまま頷いた。
『言い出しっぺが主役やらなくてどうするんだよ?』
藍沢の歪んだ口元が物語っている。
無理。
だって文化祭は生徒会の仕事が・・・・
「じゃぁ劇の題名は『古畑コナ三郎』で

歩美の笑顔が弾けてる。





マ、マジ?!






























「じゃぁ、貴方が古畑を演ることになったの?」
「あぁ、全員一致でな」
放課後の部活中、リフティングの練習をしながら灰原に報告する。
あの事件以来ぎくしゃくしていた仲はいつの間にかこんな和やかになった。
今はこうして普通にしゃべれるのが嬉しくて仕方ない。
「おまえのクラスは何やるんだよ?」
「アリスのティーパーティーですって」
どうやら喫茶店らしい。
「何?アリスのコスプレでもやんのかよ?」
「・・・・・・コスプレって言わないでくれる?女子全員やるみたいよ」
彼女のアリスのコスプレは個人的にものすごく見たいが、
反面誰かに見せるのが嫌である。
ましてや文化祭。
我が校だけでなく他校の連中もやってくるのである。
面白くない。
で、彼女が運ぶお茶を飲むヤローの姿など見たくない。
そんな好奇の目にこれ以上晒してはいけない。
「・・・・・・・・・・止めとけよ、そんなコスプレ」
頬を膨らまして主張する。
「だからコスプレじゃないってば」




















「えっ?!コナン君古畑を演るんですか?!」
光彦の驚いた声。
「おまえらはティーパーチーだろ?いいよな」
「えぇ、
ティーパーティーです。って言っても男子は裏方だけなんですけどね」
ウェイトレスは女子たちに任せて、男子は裏で軽食を作ったりするそうだ。
「おい、光彦・・・・・・・・・・灰原のやつを店に出すなよ?」
ウェイトレスなんてさせたくない。
自分のクラスは劇なものだから一日中忙しくて、
灰原の様子を見には行けなさそうである。
ここはクラスメイトである光彦に頼むしかない。
「そんなこと言われても」
光彦が口ごもる。
「そういうわけにもいきませんよ・・・・・・・・」
困ったように眉を下げる。
「灰原さんは美人ですから客寄せが出来るからって一日中やらされるみたいですよ?」
「バっ!!誰だよ?!そんなこと言ったの」
だいたい彼女は生徒会長だ。
他にもやなねばならない仕事が山ほどある。
「松田君です」










チーン。










「あ、ちなみに元太君のクラスは日本昔話の劇なんですよ」
どうやら元太は金太郎を演じるらしい。
そんなことはぶっちゃけ、どうでもいい。
(松田のヤロー)





そしてそれぞれの思いを胸に秘めたまま、
文化祭準備が着々と進んでいくのであった。








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