2010/4/23
JA1PTO

FCCライセンスで運用出来る国や地域について。

よくFCCライセンスを持っていると多くの国や地域で運用することが出来る、と言わ れていますが本当でしょうか。確かFCCの受験勉強をしていたときに米国市民でないとヨーロッパで運用出来ないと書いてあったはずなんだけど、思い違いかも、ということで調べてみました。
JA1PTOのExtra受験の記事

 

まず日本はいくつかの国と相互運用協定なるものを結んでいます。アメリカとも締結しており、日本のコールサインを持っていれば、その免許の範囲で米国とそのテリトリーで運用することが出来ます。 ということで米国で運用したいなら特にFCCの免許を取る必要はありません。

 
1. アメリカの免許について
まずFCCライセンスですが、これは米国市民でなくても試験に受かれば誰でも取る事が出来ます。日本では日本人であっても米国FCCのライセンスを根拠に日本でアマチュア無線局 を開局することが出来ます。私の取ったExtra級は日本では一級扱い、というこ とで、例えばExtra級のライセンスで日本国内で1KWの無線局を開局することも出来 ます。

アメリカのFCC試験は、上級クラスのライセンスを持っていれば下位クラスの試験の監督が出来る、というボランティア・エグザミナーという制度の下で行われています。最上位のExtraクラスについてはExtraライセンス者が監督します。

ボランティア・エグザミナーという制度はアメリカ政府の経費削減のために行われているもので、従来FCCが行っていた試験の実施と監督をARRLなどに民間委譲したも のです。受験者にとっても試験の場所や回数が増えるのでとてもメリットのあるも のです。アメリカ国内のみならず日本でも行われていますので多くの日本人がこの試験によりFCCのライセンスを取っています。先日北京で中国初のVE試験が行われた、というニュースもありました。

日本のVEによるFCC試験の詳細はARRL VEC TOKYO VE TEAMのHPから入手することが出来ます。
 
2. アメリカの免許で運用出来る地域
FCCのライセンスで運用出来る範囲は米国本土の他にFCCにより管理されている地域 (米国テリトリー)で運用することが出来るとなっています。例えばグアムとかですね。
一方アメリカとの相互運用協定により日本本のコールサインで運用出来る地域も同じくFCCにより管理される地域、とあり、FCCライセンスの有無に関わらず運用出来る地域に変化はありません。

ちなみにFCCのアマチュア無線に関する法律(FCC Rule Part 97-Amateur Radio)に定義されているFCCが管理する地域とは具体的には以下のようになっています。
In ITU Region 2: 50 United States, District of Columbia, Caribbean Insular areas [Commonwealth of Puerto Rico, United States Virgin Islands (50 islets and cays) and Navassa Island], and Johnston Island (Islets East, Johnston, North and Sand) and Midway Island (Islets Eastern and Sand) in the Pacific Insular areas.
In ITU Region 3: Pacific Insular territorial limits of American Samoa (seven islands), Baker Island, Commonwealth of Northern Mariannas Islands, Guam Island, Howland Island, Jarvis Island, Kingman Reef, Kure Island, Palmyra Island (more than 50 islets) and Wake Island (Islets Peale, Wake and Wilkes).

注意事項ですが、一旦FCCのライセンスを取得した人は、米国と米国のテリトリーで運用する際には、このライセンスでしか運用出来ません。すなわち、たとえ日本で1 級の免許を持っていたとしてもFCCのGeneralクラスやAdvancedクラスのライセンスを保有している場合、本来は1級免許の相互運用協定で最高のExtraクラスのライセ ンス範囲で運用出来るにも関わらず、そのクラスの範囲でしか運用が出来なくなり ます。
 
3. 米国とその他の国との相互運用について
ARRLのWebページのUS Amateurs Operating Overseasに海外での運用についての解説が書いてあります。

(1)カナダ
カナダについては相互協定により特別の書類なしにお互いの国で運用することが出来ます。但し、この協定はお互い相手の国の市民である必要がありますので、カナダ人がアメリカのコールサインでカナダで運用したり、アメリカ人がカナダのコールサインでアメリカで運用したりということは出来ません。ということでFCCライセ ンスを保有する米国市民以外(日本人)がカナダでアメリカのコールサインで運用することは出来ないことになります。

(2)欧州と南米
米国は欧州各国や南米諸国とも特別な相互運用協定を結んでおり、米国市民に限りこれらの国でFCCライセンスに相当するそれらの国の範囲で運用することが出来ます。欧州(CEPT協定国: European Conference of Postal and Telecommunications Administrations)と南米(CITEL協定国: Inter-America Telecommunication Commission)で運用する場合にはFCCライセンスのオリジナル、パスポートなど米国市民を示す書類とCEPTの場合にはFCCが提供する英語、フランス語、ドイツ語三ヶ国 語で書かれたCEPTに基づいた運用であることを証明する文書、南米の場合にはARRLの発行する許可書(IARP: International Amateur Radio Permit )を携帯する必要があります。

ということでFCCライセンスを持っていても米国市民でなければアメリカのコールサ インで欧州各国や南米各国で運用することは出来ません。

(3) その他の国々
ARRLのHPにアメリカと相互運用協定を結んでいる国々のリストが紹介されていますが、国籍などの条件については個別に確認する必要があると思われます。ちなみに私は中国の免許を取ったことがありますが日本の免許証のコピーの他に日本のパスポートのコピーの提出が求められました。恐らく米国のコールサインで申請する際には米国のパスポートのコピーを要求する国が大半ではないでしょうか。 OH2MCNのHPにも各国の状況を入手出来ます。
 

ということでFCCライセンスを取得することのメリットは日本で1級を取らずに1KWの無線局を開局する早道、という以外にはあまりないのではないでしょうか。

ところがWebを探していたらスイス駐在のJAの某OMですがFCCのライセンスを使ってスイスで現地のライセンスを取得出来た、という情報がありました。相互運用のおかげではないと思いますがFCCライセンスのごりやくはあるようです。

 
 
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