〜2004年5月号〜

  <10日(月)> 

 4月の終わりのある夜、六本木PIT-INNの店長さんからお電話をいただきました。「実はウチ、7月終わりで一旦店を閉めるんだけど・・・」。「とうとう来たか・・・」そんな寂しい思いでいっぱいになりました。ここ何年かの間に何度かそんなウワサは出たことがありましたが、その度に存続してきては胸をなでおろしていました。今回は六ピの入っているビルの取り壊しが正式に決まったとのこと、覆りそうもありません。

 六ピの思い出はたくさんあります。東京に出てきて初めて六ピに足を踏み入れた時、ただライブを見に行っただけなのにその歴史と伝統の重みに緊張してしまったコト。その2年後、スクェアの年末ライブで初めてステージに立つことができた時の感動。「みなさんのおかげです」も六ピがスタートだったし、スクェア退団後の最初のFOMFも自分の誕生日の六ピからスタートしました。また、2001年の「Request Session」に何度も呼んでいただいたおかげで、たくさんのミュージシャンとの交流が拡がり、現在の秀景満やTRIXの活動に繋がっています。六ピなくしては今の須藤はあり得ないと言っても過言ではないでしょう。

 店長さんからの電話の続き。「・・・そういったワケなんで、須藤くんにも何か演って欲しいんだけど。でも、忙しいよね、きっと。」僕的にもゴスペラーズのツアーにKORENOSのレコーディング、他にもライブがいくつか決まっており、あまり空いている日にちがなくて、正直難しいかな、でも是非もう一回ステージに立ちたいなと思いながら、おそるおそる「7月13・14日ならなんとか」と言うと、なんとその日は大丈夫!ということで、僕にとって現六ピ最後になるライブを2daysで演ることにしました。

 13日は「STEPS night」。80年代の人気ジャズ・フュージョン・バンド「STEPS」の曲のカヴァーだけでお送りしようという企画です。「STEPS」(後にSTEPS AHEADと改名)は、ビブラフォン奏者のマイク・マイニエリが主宰してマイケル・ブレッカーやスティーブ・ガッド、エディ・ゴメスなどのそうそうたるメンバーで結成されたバンドで、六ピでのライブを収録した「Smokin' In The Pit」という2枚組のアルバムは、名盤の呼び声の高いものです。僕らぐらいのミュージシャンの間でもこのバンドのファンは多く、秀景満で一緒の村井秀清くんとは、以前から「六ピで STEPS night 演りたいよねぇ」と話をしており、このチャンスを逃しては!ということで、この日の企画になりました。

 14日は僕のリーダーセッション「おかげです Of My Friends」(笑)。米川氏のスケジュールが合わなかったのが残念ですが、お馴染みの高橋・小森両氏に「みなさんのおかげです」時代には欠かせなかったギターの大橋君を久々に迎え、さらに前日から引き続きの宮崎君にも参加してもらい、FOMFのスペシャル版としてお送りします。

 日本の音楽界に永年に渡り間違いなく貢献してきた六ピ。そして僕にとっても思い出深い現在の六本木PIT-INN。その姿を目に焼きつけながら、精一杯演奏しようと思います。たくさんの皆さんに「現六ピ最後の須藤」を見に来ていただきたいなぁ。そして、いつの日か六本木の街に再び「PIT-INN」の看板が掲げられることを祈っています。