<曲解説>

1.Waking Up
 アコースティックギターの涼やかなストロークからスタートするこの曲は、今回のアルバムの1曲目を念頭に書き下ろした曲です。ホントはフォークソングっぽいスリーフィンガー弾きを僕自身で録りたかったんだけど、ヘタすぎて断念せざるを得ず。「ユニゾンもありつつ、ベースでメロディもソロも取る」という目標を実現しながら、バンド編成の曲として成立するようアレンジするのに苦労しました。福原・松本・熊谷という札幌出身メンバーが集まったのはたまたまです。いくら僕が札幌好きだからって、ねぇ。あと、宮崎くんのEWIが加わったことで、長年お世話になったT-SQUAREっぽい雰囲気の曲になったかもです…なんて言ったらスクェアファンの皆さんに怒られますかね。タイトルには「頑張ろう日本」的な気持ちを込めてます。

2.Bass'n Voice
 スクェア卒業の翌年からサポートに就いて、今年で丸10年の付き合いになったゴスペラーズ。以前から、機会があったら彼らのハモリをバックに従えたベースフィーチャーの曲を作りたいと密かに画策していたストウ、今回がチャンス!とばかりにお願いしてハモってもらった次第です。5人の声のパワーに1本のベースで対抗できるか不安でしたけど、エンジニアの大迫くんが良い具合に作ってくれました。まぁ、こっちのベースには弦が5本ありましたしね。酒井くんのボイパの上でバキバキとスラップソロをかましたいという野望も同時に実現、さらにはスクェア時代からの盟友・則竹くんの素晴らしくグルーヴィなドラムも加わって、面白いトラックができました。こんな企画、きっと世界初のハズ!

3.Sunny Afternoon
 こちらは2002年からずっと活動を続けている秀景満でのトラック。このトリオをやるようになって6弦ベースの使用頻度も格段に増えましたし、メロディやソロのみならずバッキング時でも常に「フレーズの唄い方」というものをより強く意識するようになりました。多い年には年間60本を超えるライブで全国を回る精力的なトリオですが、ブッキング隊長ストウの組んだキツイ行程のツアーでも文句言わずにやってくれてる二人ですし、そういった諸々の部分の感謝の意味も含めて、今回のアルバムには是非このトリオでのトラックを残したいな、と。この曲は2008年頃に書いた曲、秀景満のライブで演奏しているCD未収録の曲は何曲かあるんですが、今回のアルバム制作に至る「思い」に通じるものを感じてこの曲を選曲しました。

4.March , 2011
 20113月、元々スケジュールがあまり入っておらず自宅にいる日が多かったこの月。あの日以降テレビはほぼつけっ放し、目にする映像が信じられず…画面を見ているだけなのにいつのまにか手をグーにして握りしめていました。我に返り手を緩め、側にあったベースを抱えてポロポロと爪弾くと、不思議とスーッと落ち着いて。そうやって過ごしていた日々の中で、ある時何気なく弾き始めたのがこの曲の冒頭の1フレーズ。そこからどんどん繋がって、曲…というよりはモチーフの連鎖のようなこのトラックの原型が出来ました。途中ベースが2本になる所がありますが、ライブではフレーズをループさせるエフェクターを使い、6弦ベースに装着したV-Bassでフレットレステイストのソロを弾きます。

5.You've Got A Friend
 2010年の3〜4月、ゴスペラーズのリーダー・村上くんが「てつやの旅路」と銘打って8ヶ所行ったソロツアーに僕もメンバーとして同行しました。ヴォーカリストにとってはあまり音に包まれない「ギタートリオ」というバンド編成を彼自ら志願し、それでも遺憾なく実力を発揮し曲を歌い上げただけでなく、「歌い手/バンド」という垣根なくステージ上の4人がコラボレートできる環境をリードしてくれて。村上てつやという男のミュージシャンシップに感銘を受けながら、連日のステージがホントに楽しく、演奏し甲斐のあるものになりました。そのツアーで「ベースとデュオで」と村上くんが持って来たこの曲、今回のレコーディングでもいい雰囲気出ました。誰かさんのコーラスが全ての録音作業の最後だったのも良い思い出です。

6.Welcome Home
 「SLAP×SLAP」というベース2本でのユニットをやってまして。2010年、猛暑の夏真っ盛りにツアーをした時に新曲を持って来た相方の下野人司くんに負けじと書いたのがこの曲。その後、自分的にすごく気に入って他のセッションなどにも持って行くようになり、「いつかソロアルバム作る時に収録できたらいいなぁ」と思っていたのが、こんなに早く実現するとは。この曲のレコーディングメンバーに松本くんと福原くんをチョイスしたのは大ヒット、素晴らしく味わい深い演奏を加えてくれて、曲が2ランクくらいアップした感じがしてます。「おかえり」という意味合いのつもりで付けたこのタイトル、慣れ親しんだ土地を離れて暮らさなくてはならなくなった人たちが元の場所に帰って来れる日が一日も早く訪れるようにとの願いを込めました。

7.Bridge Over Troubled Water
 せっかくゴスのみんなに参加してもらったのに「パッパ〜♪」だけじゃ何だし、何かメッセージになる曲を歌って欲しいと思い選曲したのがこの曲。数年前、秀景満で演奏することを前提にアレンジしていたものをベーシックにしましたが、リレー形式にしたリードヴォーカルの順番を考えたりコーラスのラインを考えたりといった作業は、インスト一辺倒でやってきた須藤にはかなり大変な作業でした。アマチュアが作ったハモリやコーラスのラインはゴスのみんなにはきっと物足りなかったと思うけど、僕のイメージに沿った形でコーラスの重ね方を変えてくれたりしながら録音を進めてくれて、心から感謝してます。バックの演奏を務めるのは秀景満、いつかこの組み合わせでライブがお送りできる機会があればなぁ、と妙な妄想が膨らんでいます。

8.Hot Rod
 しっとりしたアルバム中盤の雰囲気を台無しにするべく、歪んだチョッパーベースで始まるこの曲は「熊谷くんとでドラム&ベース炸裂のデュオ曲を」というリクエストにお応えして書き下ろしました。ベースソロを取る曲としては須藤史上最速だし、ベースの音を全編歪ませてお送りしたのも人生初です。亜土さんに入れてもらったオルガンが曲全体にナイスなテイストを加えてくれています。この曲だけ解説が短いですけど、まぁ曲も短いので。

9.The Funky Trip
 前作「Favor Of My Friends 2003」の続編的なこの曲は、2010年秋に須藤リーダーライブで久々にツアーを回ることを決めた頃、そのツアーが楽しい旅になることをイメージして書いた曲です。2000年にフリーになって以降、自分のリーダーライブのギターをほとんどお願いしている米ちゃんに20年来の付き合いの亜土っちゃんの2人のFOMFお馴染みメンバー、そしてドラムに則竹くんを加えたほぼ同年齢カルテットによる「フュージョンらしいサウンド」のトラックが出来上がりました。しっとりめの曲が多くなった今アルバムですが、元気を出してもらえそうなこういった曲も一つのメッセージとして送りたいと思い、収録曲に加えました。それにしても米ちゃんも亜土っちゃんも、ぶっ飛んだソロを弾いてくれたもんです。

10.上を向いて歩こう
 震災以降多くのアーティストが取り上げているこの曲ですが、僕自身も当時一番に思い浮かんだ曲はこの曲でしたし、3月末にライブを控えていた僕は素直な気持ちでソロベース仕様のアレンジを施しました。そして原型が出来、その後の色んなライブで機会あるごとに演奏して行く中、とある友人から「♪ひとりぼっちの夜〜♪のメロディで終わっちゃうのは寂しいなぁ」という意見をもらい。それからしばらく終わり方をいろいろ悩んだ末、「♪上を向〜いて♪」のメロディを最後に出す形で収録しました。この曲のソロベースアレンジができたことで今回のアルバム制作への第一歩が踏み出せたし、そんな意味も含めてこれからも事あるごとに演奏し続けて行きたい、そんなレパートリーになりました。


戻る