Movie Review
題名 | 年 | 原作 | 監督 | 主演 | |
4/23 | Jane Eyre | 1996 | 「Jane Eyre」シャーロットブロンテ | フランコ・ゼフィレッリ | ウィリアム・ハート |
5/1 | 鉄コン筋クリート | 2006 | 「鉄コン筋クリート」松本大洋 | マイケル・アリアス | 二宮和也・蒼井優 |
5/4 | First Knight | 1995 | ジェリー・ザッカー | ジュリア・オーモンド, リチャード・ギア,ショーン・コネリー | |
5/6 | 戦慄の楽譜 | 2008 | 青山剛昌 | 山本泰一郎 | 高山みなみ |
5/16 | ジョンQ | 2004 | ニック・カサヴェテス | デンゼル・ワシントン, ロバート・デュヴァル | |
6/26 | 27のドレス | 2008 | アン・フレッチャー | キャサリン・ハイグル |
幸せになるための27ドレス
世の中の女性に夢を与えてくれるシンデレラストーリー的な映画はたくさんあります。それは、
最近女性も働くようになるなど女性に結婚以外の選択枠ができたことで、逆に結婚への理想も高
くなったからだと思います。この映画もそんな女性におとずれる恋のお話。面倒見がよくて、結
婚式に友情出演ばかりしている主人公ジェーンが、結婚を題材とした記事を書いている新聞記者
と交流することで、次第に自分の幸せをつかんでいくという内容です。しかし、この映画は特に
その内容よりも、結婚式の衣装など画面の鮮やかさが売りだと思います。ジェーンは友人の結婚
式に友情出演した際に着たドレスを、自宅のクローゼットに全部取っておいてあります。そのド
レスを着て喜ぶ姿は、見ていて綺麗で楽しそうで、元気をもらいました。
ジョンQ
この映画を見た多くのアメリカ人は、このジョンQの悲劇は自分にも起こりうるものだと思った
と思います。一般市民の典型的な家に住む、ボディービルダーと野球好きの子供、パートタイ
マーである母、不況から半日労働にさせられた工場勤務の父、幸せな家庭。日曜日の子供の野球
の試合は日本人の私でさえ親しみを覚えました。彼らはまた、映画のようにハッピーエンドにな
ることもないだろうとも思ったでしょう。映画で起きてしまった病院占領事件を現実に起こそう
と思う人はあまりいないからです。一方で、彼らアメリカ人が、この自分にも起こりうるような
悲劇をどう感じたかは分かりません。アメリカ人には能力主義、機会の平等といったようなアメ
リカンドリームの感覚が浸透しているようなので、この悲劇を「金にこだわらない敗者としては
仕方ない」出来事としてとらえるかもしれません。
しかし日本で育った私は、「ジョンQ」を見て、映画の中の大衆と同じように心からジョンQに
同情しました。起こりうるという現実感からというよりはむしろ、偶然被害者になってしまった
ジョンQがあのような行動を起こさざるを得なくした社会への絶望感からくる同情です。いまの
国民皆保険の日本では、映画のように保険がきかなくて治せたはずの治療が治せずに死に至ると
いうことはありません。それが私の育ってきた環境で、日本での常識です。したがって私も含め
多くの日本人は、その常識から大きく外れたジョンQの悲劇に同情し、憤ることでしょう。しかし、
その国民皆保険がなくなったら、あるいは混合診療になったらこの悲劇は起こりうる現実となり
ます。絶望感が同情でなく、現実に自分が味わうことになるかもしれません。そう思ってジョンQ
をみれば、いまの日本の医療事情が重大な岐路に立とうとしていることが、実感できました。
名探偵コナン 戦慄の楽譜
毎年GWおなじみの名探偵コナンの映画化シリーズで、今年は音楽がテーマになっていました。内
容は、プロの音楽家が殺人犯から狙われるというもので、特にピアニストからパイプオルガン奏
者へと転進した音楽家堂本と、プロの女性声楽家の秋葉が、殺人犯から狙われつつも、コンサー
トへの想いから、舞台に立とうとするストーリーでした。
まだ公開中でしかもサスペンスなので、結末はあえてふせますが、緊迫した内容を一流の音楽に
のせて描いていたので、とても心に訴える、感動的な作品に仕上がっていました。映画のなかでa
mazing graceが何回か流れてくるのですが、私は、最後の被害者の「amazing graceは赦しの曲だ
から、その罪を許しました」というセリフが一番印象に残りました。社会の秩序を保つためには、
規律やら、義務やらいろいろしなければいけないことはありますが、自分、そして他人が真に幸
福に生きるためには、人間にはこのような精神が必要なのかなと、一流のamazing graceを聞きな
がら思いました。
「First knight」はアーサー王と円卓の騎士についての映画です。内容は円卓の騎士と、アー
サー王と政略結婚した皇女のロマンスをメインにして仕上がっていますが、5,6世紀のイング
ランドの人たちの生活を知るという点でとても面白かったです。なかでも一番びっくりした場面
が、皇女がサッカーらしきゲームをしていた場面です。チームに分かれて、かなり大きな玉を足
だけで穴に入れるというルールだったのですが、今でいうサッカーの前身だと思います。これを
見て、1500年も前からサッカーをやっている国とサッカーを渡り合うとはとても大変なことだな
と変なところで感動してしまいました。
ジェインエアはシャーロット・ブランテの原作(1847)を映画化した映画です。舞台は19世紀
前半のイングランドで、幼少を厳格な寄宿学校で過ごした孤児のジェインエアが、家庭教師とし
てお屋敷に勤め、その主人と結ばれるまでの人間関係を描いています。原作と比べるとかなりカ
ットされているようですが、映画では屋敷での生活を主にして、社会の規律の厳しい近世で、良
い家柄の末息子として利用されて心を閉ざしてしまった貴族と、継母に虐待された後、規律に追
い込まれた学校で思春期を過ごすことで自分への希望を失ってしまった女性が、お互いに本来の
自分の良さを取り戻していく様子が描かれていたように思います。
このようにこの映画は近世が舞台で、近世ならではの社会的背景を持っていますが、そのなかで
も今の私たちとあまり変わっていない人間の一面も感じました。それは、どの時代であれ、人間
ひとりひとりは完全に社会と相容れるものではないということ。しかし人間は社会で生きていく
しかできないため、そのために忍耐や知性、そして孤独感を分かち合えるパートナーが必要だと
いうことです。
私たちは近世と比べたら、社会での強制的な価値観の強制もなく、独立して自由に生きている
ようですが、しかし自分本来の持ち味を生かして、幸福を得ることの難しさは変わりません。ど
うやって生きていくことで、自分は幸福を感じることができるのかは分かりませんが、ジェイン
エアを見ることで、少し夢をみることができました。
鉄コン筋クリート(2006)
鉄コン筋クリートを見るのは二回目なのですが、この映画ではなんといっても、現実離れしてい
るようで、とてもリアルに描かれている画が好きです。昭和の町並みなんて知らないのですが、
なんとなく懐かしくて寂しい感じのする画です。ストーリーの主人公は、純粋無垢で現実的なこ
とが何もできない子供シロと、その兄貴分でシロを守ることを生きがいにしている子供クロです。
その強くて自由な力をもって寄り添うようにして生きている二人の子供が、自分たちが住んでい
て縄張りのようにしている宝町を開発していく勢力に抵抗して戦っていく、という映画です。
この映画は比喩が多くて、何が言いたいのか分からない場面も多いのですが、私はこの映画
を見て哀愁を感じました。町も人間もどんどん変わっていくなかで、鋼鉄の精神で不変を望んで
も無意味に終わります。「鉄コン筋クリート」では、人間はその寂しさを補うように、自分のさ
さやかな幸せを、ささやかな家族や相棒と分かち合って生きている、ということを描いているの
だと思いました。